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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129902
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】分散剤およびそれを含有する接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 23/00 20220101AFI20240920BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240920BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240920BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C09K23/00
C09J201/00
C09J11/04
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039279
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】513026399
【氏名又は名称】三菱ケミカルインフラテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲村 太智
【テーマコード(参考)】
4D077
4J040
【Fターム(参考)】
4D077AB03
4D077AC05
4D077DB06Y
4D077DC03X
4D077DC10X
4D077DC59X
4J040DF001
4J040EC001
4J040ED001
4J040EF001
4J040HA156
4J040HD13
4J040JA03
4J040JB02
4J040KA38
4J040MA02
4J040MA10
(57)【要約】
【課題】金属化合物粒子、特に水酸化マグネシウム粒子を分散するのに適した分散剤及びその分散剤を含有する接着剤を提供する。
【解決手段】分散剤は、下記式1の構造を有し、スルホン酸またはその塩が置換したアルキル鎖に窒素原子を含まないものである。
【化1】
(式1中、SO3H(M)はスルホン酸またはその塩を示す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1の構造を有し、スルホン酸またはその塩が置換したアルキル鎖に窒素原子を含まない、金属化合物粒子の分散剤。
【化1】
(式1中、SO3H(M)はスルホン酸またはその塩を示す。)
【請求項2】
前記式1は、カンファ-スルホン酸またはカンファ-スルホン酸ナトリウムである、請求項1に記載の分散剤。
【請求項3】
前記金属化合物粒子は、水酸化マグネシウム粒子である、請求項1に記載の分散剤。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の分散剤と、前記金属化合物粒子と、硬化剤とを含有する接着剤組成物からなる接着剤。
【請求項5】
前記金属化合物粒子の全質量に対して前記分散剤0.1~40wt%が配合された請求項4に記載の接着剤。
【請求項6】
前記接着剤は、金属板と樹脂フィルムとの積層用である請求項5に記載の接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属化合物粒子の分散剤に関し、特に、金属板と樹脂フィルムとを接着する接着剤に含有させるのに適した分散剤に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板やステンレスなどの金属板などに樹脂フィルムを積層した樹脂フィルム積層体は、様々な分野で使用され、例えば、樹脂フィルムによる意匠性や複合材としての機能性などを活かして建材などに使用されている。
しかし、樹脂フィルムと金属板とを接着することは容易でなく、樹脂フィルムと金属板との接着には改良がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、溶剤を使用しないエマルジョン化した接着剤を使用することが開示されている。
特許文献2には、樹脂シート積層金属板用の接着剤として、カルボキシル基を有するウレタン樹脂エマルジョン(A)およびイソシアネート基を有する架橋剤(B)からなる樹脂成分に、シランカップリング剤(C)を、ウレタン樹脂エマルジョン(A)の固形分100質量部に対し0.1~5質量部配合してなる樹脂組成物が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂を含む樹脂層(A層)を、金属板上に設けた樹脂シート被覆金属積層体が開示され、金属板上に樹脂層を、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤等の一般的に使用される熱硬化型接着剤で積層することが例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-309216号公報
【特許文献2】特開2005-272592号公報
【特許文献3】特開2011-201303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
金属板と樹脂フィルムとを接着剤を使用して積層する場合、上述したとおり、接着性を高めることは容易ではない。その課題を解決するため、本発明者は、金属板と樹脂フィルムとを積層するのに適した接着剤として、金属化合物を含有する接着剤を開発した(例えば、特願2022-40020参照)。
【0007】
この接着剤は、金属板上に樹脂フィルムを積層するのに適したものであるが、金属化合物が接着剤中で分散しにくいという課題を抱えていた。
そこで、本発明は、金属化合物粒子、特に水酸化マグネシウム粒子を分散するのに適した分散剤及びその分散剤を含有する接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1] 下記式1の構造を有し、スルホン酸またはその塩が置換したアルキル鎖に窒素原子を含まない、金属化合物粒子の分散剤。
【0009】
【化1】
(式1中、SO3H(M)はスルホン酸またはその塩を示す。)
【0010】
[2] 前記式1は、カンファ-スルホン酸またはカンファ-スルホン酸ナトリウムである、[1]に記載の分散剤。
【0011】
[3] 前記金属化合物は、水酸化マグネシウムである、[1]又は[2]に記載の分散剤。
【0012】
[4] [1]~[3]の何れかに記載の分散剤と、前記金属化合物と、硬化剤とを含有する接着剤組成物からなる接着剤。
【0013】
[5] 前記金属化合物の全質量に対して前記分散剤0.1~40wt%が配合された[4]に記載の接着剤。
【0014】
[6] 前記接着剤は、金属板と樹脂フィルムとの積層用である[4]又は[5]に記載の接着剤。
【発明の効果】
【0015】
本発明の分散剤は、金属化合物粒子、特に水酸化マグネシウム粒子の分散に優れたものであり、本発明の分散剤及び金属化合物粒子を含有する接着剤は、金属板と樹脂フィルムとの接着性に優れたものになる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を、一実施形態に基づいて説明する。但し、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0017】
<<本分散剤>>
本発明の実施形態の一例に係る分散剤(以下、「本分散剤」という。)は、下記式1の構造を有するものであり、この式1は、スルホン酸またはその塩が置換したアルキル鎖に窒素原子を含まないものである。
【0018】
【化1】
【0019】
前記式1中、SO3H(M)はスルホン酸またはその塩を示すものである。スルホン酸塩としては、例えば、ナトリウム塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。
【0020】
また、前記式1は、上記したとおり、スルホン酸またはその塩が置換したアルキル鎖に窒素原子を含まないものである。つまり、2-アクリルアミド-2メチルプロパンスルホン酸(下記式2参照)などの窒素原子を含む化合物を除く意である。
【0021】
【化2】
【0022】
前記式1の構造を有する化合物としては、カンファ-スルホン酸(下記式3参照)、カンファ-スルホン酸ナトリウム(下記式4参照)などを挙げることができ、これらの光学異性体も含むものである。その他に、カンファースルホン酸アンモニウム、ブロモカンファースルホン酸、ブロモカンファースルホン酸アンモニウムなどを挙げることができる。これらを2種以上含んでもよい。これらカンファ-スルホン酸、カンファ-スルホン酸ナトリウムなどは市販のものを用いることができ、具定例としては、(+)-10-カンファ-スルホン酸、(-)-10-カンファ-スルホン酸、(±)-10-カンファ-スルホン酸、(±)-10-カンファ-スルホン酸ナトリウム(いずれも東京化成工業株式会社製)を挙げることができる。
【0023】
【化3】
【0024】
【化4】
【0025】
<金属化合物>
本分散剤は、金属化合物粒子の分散に適したものである。
金属化合物粒子は、接着剤に含有させることにより、水や塩水などに対する耐食性を高めることができるものが好ましい。
そのような金属化合物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バナジウム等の金属水酸化物粒子、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、重質炭酸カルシウム等の金属炭酸塩粒子、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム等の金属珪酸塩粒子、酸化バナジウム、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物粒子、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム等の金属硫酸塩粒子、燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、燐酸バリウム等の金属燐酸塩粒子、亜硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸マグネシウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム等の亜硝酸塩粒子、バナジン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウム等の遷移金属酸化物塩粒子などを挙げることができる。これらの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、貯蔵安定性の観点から、金属水酸化物または金属酸化物であるのが好ましい。その中でも、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ケイ素、亜鉛の金属水酸化物または金属酸化物であるのが好ましい。
他方、水中に溶出した際に不働態をつくり耐食性を高めることができる観点から、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、シリカ、硫酸マグネシウム、酸化バナジウム、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウムなどが好ましい。
最も好ましいのは、水酸化マグネシウムである。
【0026】
金属化合物粒子は、球状の他、針状、フレーク状なども含むものであり、中でも、均一分散性等の観点から球状が好ましい。
【0027】
金属化合物粒子は、その平均粒径が粒子の分散性安定性の観点から、1000μm以下であるのが好ましく、100μm以下であるのがより好ましく、10μm以下であるのがさらに好ましい。他方、粒子を細かくできる現実性の観点から、0.001μm以上であるのが好ましく、0.01μm以上であるのがより好ましく、0.1μm以上であるのがさらに好ましい。
なお、金属化合物の平均粒径は、例えば、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)などを使用して、接着剤を観察し、10個以上の粒子の直径を測定し、その平均値として求めることができる。その際、断面形状が円形でない場合は、最長径と最短径の平均値を各粒子の直径として測定することができる。
【0028】
金属化合物粒子は、接着剤に含有させる場合において、接着剤中0.1~80wt%の割合で含有させるのが好ましく、1wt%以上70wt%以下の割合で含有させるのがより好ましく、5wt%以上60wt%以下の割合で含有させるのがさらに好ましく、10wt%以上50wt%以下の割合で含有させるのが最も好ましい。
【0029】
(接着剤)
本分散剤を接着剤に含有させる場合、その接着剤は、主成分樹脂、本分散剤、金属化合物粒子、硬化剤などの接着剤組成物を含むのが好ましい。
接着剤組成物の主成分樹脂としては、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などを挙げることができる。
ウレタン樹脂としては、例えば水分散性ポリウレタン樹脂、水分散型ウレタンアクリレートオリゴマーなどを挙げることができる。
【0030】
なお、上記接着剤組成物の主成分樹脂とは、接着剤を構成する樹脂の中で最も質量割合の高い樹脂を意味し、接着剤を構成する樹脂の50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上(100質量%を含む)のいずれかを占める場合を想定することができる。
【0031】
接着剤組成物は、溶剤系であっても、非溶剤系であってもよい。
溶剤系の場合は、公知の溶剤を用いることができる。
非溶剤系の場合、例えば水分散性のものや、ペレット状のものなどを挙げることができる。
【0032】
接着剤組成物は、光硬化性であっても、熱硬化性であってもよい。
光硬化性接着剤又は熱硬化性接着剤である場合、主要成分樹脂のほかに、硬化剤又は架橋開始剤を含むのが好ましい。
硬化剤又は架橋開始剤は、熱架橋及び光架橋のいずれの架橋方法を選択するか、さらにはバインダー樹脂として何を使用するかによって適宜使用するのが好ましい。
【0033】
光硬化性の場合には、光重合開始剤を配合するのが好ましい。
当該光重合開始剤としては、特に制限するものではなく、例えばアセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、オキシムエステル系化合物、チタノセン系化合物、オニウム塩系化合物等を挙げることができる。
他方、熱硬化性の場合には、過酸化物、アゾ化合物などの熱によるラジカル重合開始剤や、イソシアネート硬化剤やエポキシ樹脂を含む組成を挙げることができる。
【0034】
(その他の成分)
接着剤組成物は、上記以外に、必要に応じてシランカップリング剤、その他、接着剤に配合される公知の添加剤を含有することができる。
【0035】
シランカップリング剤としては、その分子中に二個以上の異なった反応基を有する有機ケイ素化合物を挙げることができる。二個の反応基のうち、一個は金属などの無機質と化学結合する反応基とし、残りの一個は、樹脂と結合する反応基とするのが好ましい。無機質と結合する反応基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基などであり、また、樹脂と結合する反応基には、例えば、グリシド基、アミノ基、アクリル基などである。
【0036】
主成分樹脂として、ウレタン樹脂を用いる場合、当該ウレタン樹脂のガラス転移温度は-30~110℃であるのが好ましく、0℃以上90℃以下であるのがより好ましく、20℃以上70℃以下であるのがさらに好ましい。
主成分樹脂として、ウレタン樹脂を用いる場合、当該ウレタン樹脂の数平均分子量は1000~500000であるのが好ましく、5000以上100000以下、10000以上或いは50000以下であるのがさらに好ましい。
【0037】
接着剤組成物に硬化剤を含有させた接着剤を形成した場合、凝集力の向上、酸素透過の低下、透湿の低下などの効果を得ることができる。
当該硬化剤(架橋剤とも称される)としては、多官能イソシアネート化合物、多官能エポキシ化合物などを挙げることができる。これらの化合物は、活性水素を有する官能基と反応する。例えばウレタン樹脂の水酸基と反応する。
硬化剤としての前記多官能イソシアネート化合物としては、例えば芳香族系、脂肪族系、脂環族系の各種多官能イソシアネート化合物を使用することができる。具体例としては、例えば、脂肪族系のヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、芳香族系のトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等のジイソシアネートの1種類又は2種類以上をベースにして変性した多官能イソシアネート変性体などを挙げることができる。また、変性手段として、水、グリセリン、トリメチロールプロパン等の多官能活性水素化合物とのアダクト体の他に、イソシアヌレート化、カルボジイミド化、ポリメリック化等の多量化反応による多官能イソシアネート変性体を挙げることができる。これらの1種または2種以上を混合して用いることもできる。
【0038】
硬化剤の配合量は、主成分樹脂100質量部に対して0.01~70質量部であるのが好ましく、0.1質量部以上60質量部以下であるのがより好ましく、1質量部以上50質量部以下であるのがさらに好ましく、1質量部以上20質量部以下であるのが最も好ましい。
また、硬化剤の配合量は、金属化合物100質量部に対して0.1~100質量部であるのが好ましく、1質量部以上75質量部以下であるのがより好ましく、5質量部以上50質量部以下であるのがさらに好ましい。
【0039】
本分散剤の配合量は、接着剤に配合した場合において、金属化合物粒子の全質量に対して本分散剤0.1~40wt%を配合させるのが好ましい。このようにすることにより金属化合物粒子を接着剤中で適度に分散させることができる。
このような観点から、金属化合物粒子の全質量に対して本分散剤0.2~30wt%を配合させるのがより好ましく、本分散剤0.3~20wt%を配合させるのがさらに好ましい。
【0040】
<用途>
上記接着剤は、金属板と樹脂フィルムとを接着して積層した樹脂フィルム積層体を作製するために用いるのが好ましい。この他にも、金属屋根に樹脂シートを張り付けるための粘着剤および接着剤などに用いることができる。
金属板としては、例えば、鉄板、鋼板、ブリキ板、ティンフリースチール板、黄銅板、アルミニウム板、ステンレススチール板、またはこれらを一成分とする合金製板などを挙げることができる。
【0041】
金属板の形状は任意である。例えば、板状、シート状、フィルム状、その他適宜形状に成形された形状などを挙げることができる。
【0042】
金属板の表面は、例えば電気メッキ又は無電解メッキによって、例えば亜鉛、スズ、ニッケル、銅などをメッキして、メッキ層を備えていてもよい。
具体例としては、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、熔融亜鉛・アルミニウム合金メッキ鋼板、熔融亜鉛・アルミニウム・マグネシウム合金メッキ鋼板、スズメッキ鋼板などを挙げることができる。
【0043】
また、金属板の表面は、前記メッキ層を備えている如何にかかわらず、例えば、クロム酸処理、リン酸処理、クロム酸/リン酸処理、電解クロム酸処理、クロメート処理などの化学処理、または、電気化学的処理、物理的処理、シランカップリング剤処理などが施されていてもよい。
【0044】
<樹脂シート>
金属板に積層される樹脂シートは、特に限定されるものではない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリブテン、環状ポリオレフィンなどの非晶質ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、SBS、SEBSなどのスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、共重合アクリル等の(メタ)アクリレート系樹脂、ポリウレタンなどのウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド12、共重合ポリアミドなどのポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体などのポリビニルアルコール系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂、エチレン-四フッ化エチレン共重合体、三フッ化塩化エチレン重合体、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体、四フッ化エチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、パーフルオロエチレン-パーフルオロプロピレン-パーフロロビニルエーテル三元共重合体などのフッ素系樹脂などの樹脂を主成分樹脂とする樹脂シートを挙げることができる。
中でも、極性が高く、特にウレタン樹脂接着剤との相性が良いという観点から、ポリ塩化ビニルを主成分樹脂とする樹脂シート、ポリオレフィンを主成分樹脂とする樹脂シート、ポリエチレンテレフタレートを主成分樹脂とする樹脂シートなどが好ましい。中でも、ポリ塩化ビニルを主成分樹脂とする樹脂シートが特に好ましい。
なお、当該主成分樹脂とは、樹脂シートを構成する樹脂の中で最も質量割合の高い樹脂を意味し、樹脂シートを構成する樹脂の50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上(100質量%を含む)のいずれかを占める場合を想定することができる。
【0045】
樹脂シートは、一層または二層以上の積層シートであってもよい。
また、樹脂シートは、未延伸のものでもよいし、一軸方向または二軸方向に延伸したものでもよい。
【0046】
さらに、樹脂シートは、公知の表面処理、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、薬液処理を施したものであってもよく、さらには極性ポリマーコーティング処理、色模様の印刷やエンボス加工等を施したものであってもよい。
【0047】
樹脂シートの厚さは、特に限定するものではない。例えば5μm以上500μm以下が好ましく、10μm以上400μm以下がより好ましく、20μm以上300μm以下がさらに好ましい。
【0048】
<製造方法>
上記接着剤は、例えば、主成分樹脂、本分散剤、金属化合物粒子、硬化剤などの接着剤組成物に、メチルエチルケトン(MEK)などの溶媒を加えて混合することにより製造することができる。混合は、特に限定するものではないが、ビーズミル、ロールミル、ペイントシェーカーなどにより行うことができる。
この際、固形分濃度が5~50wt%になるように混合するのが好ましい。
【0049】
金属板の少なくとも片側表面に接着剤組成物を塗布し、その上に樹脂シートを重ねて樹脂フィルム積層体を製造することができる。但し、かかる製法に限定するものではない。
【0050】
金属板に接着剤組成物を塗布する方法は、特に制限はない。例えばバーコート法、エアーレス法、スプレイ法、浸漬法、ロールコート法、刷毛塗り法などのいずれを採用してもよい。
【0051】
金属板に塗布する接着剤組成物の厚さは、特に制限するものではない。例えば接着性と価格の観点からは、0.1μm以上100μm以下であるのが好ましく、0.2μm以上50μm以下がより好ましく、0.5μm以上20μm以下であるのがさらに好ましい。
【0052】
金属板に接着剤組成物を塗布した後は、必要に応じて、加熱乾燥する。例えば80~120℃の温度で10~60秒間加熱して加熱乾燥する。
【0053】
次に、金属板に樹脂シートを積層する方法は、特に限定するものではなく、従来から知られている方法によって積層すればよい。例えば、押出機先端に、コートハンガーダイ、Tダイ、Iダイなどのダイを装備し、押出機で原料樹脂を溶融させ、ダイからシート(薄膜)状に押出しながら金属板の表面を被覆する、いわゆる押出ラミネート法や、予めシートを調製し、このシートを加熱された金属板上にニップロールなどで圧着する方法などを挙げることができる。但し、これらに限定するものではない。
【0054】
<<語句の説明>>
本発明においては、「フィルム」とも称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」とも称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0055】
本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【実施例0056】
以下、本発明の一実施例を説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
下記に示す実施例1~11及び比較例1~4を作製して分散性に関する試験を行った。
【0058】
<原料>
(分散剤)
1.(+)-10-カンファ-スルホン酸(東京化成工業株式会社製)
2.(-)-10-カンファ-スルホン酸(東京化成工業株式会社製)
3.(±)-10-カンファ-スルホン酸(東京化成工業株式会社製)
4.(±)-10-カンファ-スルホン酸ナトリウム(東京化成工業株式会社製)
5.2-アクリルアミド-2メチルプロパンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)
【0059】
(金属化合物粒子)
1.水酸化マグネシウム粒子(平均一次粒子径460nm)
なお、上記粒子の平均一次粒子径は、任意に20個の粒子を選択してSEMで観察し、粒子の直径を測定し、その平均値として求めた。その際、球状でない場合は、最長径と最短径の平均値を各粒子の直径として測定した。
【0060】
<実施例及び比較例>
下記表1に示すように、上記分散剤のいずれかを用い、上記分散剤を上記金属化合物粒子に対して下記表1に示した配合割合で添加し、固形分濃度が1.7wt%となるように溶媒としてメチルエチルケトン(MEK)を加え、ペイントシェーカーを用いて混合して各実施例及び各比較例を調製した。なお、ペイントシェーカーにおいて直径1mmのビーズを用いた。
【0061】
<粒子分散性>
粒子分散性は、目視により、以下の基準で評価した。その結果を下記表1に示す。
◎:静置後3時間を過ぎても上澄みなし
○:静置後10分を過ぎ3時間未満で上澄み発生
×:静置後10分未満で上澄み発生
【0062】
【表1】
【0063】
<結果>
実施例1~11は、「○」以上の評価であり粒子分散性がよいものであった。
これに対し、比較例1~4は、上澄みが10分以内に発生し、実用上問題のあるものであった。
この結果から、上記式1の構造を有し、スルホン酸またはその塩が置換したアルキル鎖に窒素原子を含まない分散剤は、金属化合物粒子の分散性に優れるものであるといえる。
【0064】
一方、スルホン酸またはその塩が置換したアルキル鎖に窒素原子を含むものは、金属化合物粒子の分散性が悪くなるものであるといえる。
この原因は、金属化合物粒子(水酸化マグネシウム)は塩基性であるため、窒素原子によりスルホン酸が中和され、粒子表面への分散剤の吸着量が低下するのではないかと考察される。