(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129908
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】扉構造およびブース
(51)【国際特許分類】
E05D 11/06 20060101AFI20240920BHJP
E05F 3/22 20060101ALI20240920BHJP
E05F 5/00 20170101ALI20240920BHJP
E05F 3/20 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
E05D11/06
E05F3/22 A
E05F5/00 C
E05F3/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039288
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 孝一朗
(72)【発明者】
【氏名】武田 絢子
(72)【発明者】
【氏名】今井 良輔
(72)【発明者】
【氏名】平野 佑太
【テーマコード(参考)】
2E032
【Fターム(参考)】
2E032BA01
2E032BA03
2E032CA02
2E032DB06
2E032DC03
(57)【要約】
【課題】大きな開度で扉部10を静止させることができる扉構造110およびブース100を提供する。
【解決手段】扉構造110は、扉部10と、縦枠部20と、ヒンジと、開き止め機構と、を備える。扉部10は、略平板の戸板部1と、吊元側端部2と、を有する。扉部10は、吊元側端部2において高さ方向(上下方向)Vに延びる回転軸Rを中心に回動可能である。ヒンジは、縦枠部20に対して扉部10の吊元側端部2を回動可能に支持する。ヒンジは、扉部10が第1角度θ1以上に開いた状態で扉部10の回動を静止させる。開き止め機構は、扉部10の開き角度を第1角度θ1および90°より大きい第2角度θ2に制限する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部空間と内部空間とを連通する開口部を開閉可能な扉構造であって、前記扉構造の開閉時に最も移動する自由端側を幅方向における第一側、前記第一側と反対側を幅方向における第二側としたとき、
略平板の戸板部と、前記戸板部の側端部に設けられて高さ方向に延びる吊元側端部と、を有し、前記吊元側端部において前記高さ方向に延びる回転軸を中心に回動可能な扉部と、
前記開口部の前記第二側の縁部に配置され、前記高さ方向に延びる縦枠部と、
前記縦枠部に対して前記扉部の前記吊元側端部を回動可能に支持し、前記扉部が第1角度以上に開いた状態で前記扉部の回動を静止させるヒンジと、
前記扉部の開き角度を前記第1角度および90°より大きい第2角度に制限する開き止め機構と、を備える、
扉構造。
【請求項2】
前記ヒンジは、前記扉部が前記第1角度未満に開いた状態で、前記扉部が閉じる方向に力を作用させる、
請求項1に記載の扉構造。
【請求項3】
前記開き止め機構は、
前記吊元側端部から前記第二側に延出する突部と、
前記縦枠部に設けられ、前記扉部が前記第2角度に開いた状態で前記突部に当接する当接部と、を有する、
請求項1または2に記載の扉構造。
【請求項4】
前記内部空間を囲う壁体および前記壁体に設けられた前記開口部を有する箱体と、
前記開口部に取り付けられた請求項1または2に記載の扉構造と、を備える、
ブース。
【請求項5】
前記第2角度は、前記開口部の開口面の法線方向から見て、前記扉部の前記第一側の端部が、前記箱体と重なる角度以下である、
請求項4に記載のブース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉構造およびブースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
外部からの騒音に影響されずに執務ができる内部空間を備えた個室(ブース又は防音室)がある。このようなブースは、扉を有している。建築物の開き扉として、ストッパ部と、当接部と、を有する構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ストッパ部は、扉の吊元部分に設けられ、扉の開き動作によって動く。当接部は、扉の吊元部分近傍の扉枠(建築物に固定され、扉の開き動作によって動かない)に設けられる。扉が一定角度に開いた際に、ストッパ部が当接部に当接することで、それ以上に扉が開くことを防ぐ。
【0003】
また、回転扉のヒンジとしては、ドアクローズ機能およびフリーストップ機能の両機能を備えたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。ドアクローズ機能は、扉が一定角度未満に開いた状態で、扉が閉まる方向に力を発生させる。フリーストップ機能は、扉が一定角度以上に開いた状態で、摩擦力により扉の開閉を停止させる。このようなヒンジを用いた扉では、扉を一定角度未満に開いた状態では、扉を閉じることが容易になる。一方で、扉を一定角度以上に開くと、扉が開いた状態で維持されるため、開口部を通した移動が容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-220104号公報
【特許文献2】特開2021-055526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
扉は、90°まで開けば開口が最大となり、それ以上開いても開口は大きくならない。扉を開けた時に扉が周辺の設置物へ衝突することを避けるためには、開き角度が90°程度でストッパが機能するように、ストッパを設定することが望ましい。
【0006】
一方、扉のヒンジの回転軸が鉛直方向に対して傾いていると、重力により扉の開閉方向に力が働く。回転軸の傾き方向によっては、扉が閉まる方向に力(モーメント)がかかってしまう。特に、開き角度が90°の位置で、扉が閉まる方向に最大の力がかかる。この場合には、フリーストップ機能を備えたヒンジを扉に用いていても、開き角度が90°の位置でフリーストップの摩擦力以上の力がヒンジにかかり、その位置でフリーストップが効かなくなる。
【0007】
建物の扉は、ヒンジの回転軸を垂直とした(鉛直方向と平行にした)状態で建物に設置される。そのため、重力により扉の開閉方向に力が働くことはない。建物の扉では、開き角度が90°でストッパが機能するように設定しても、その位置でフリーストップが効かなくなるという問題が発生しない。
【0008】
しかしながら、ブースは移動可能である必要があり、かつ設置される床の不陸の影響を受けるため、建物に設置する場合と比較して扉回転軸を垂直とすることが難しい。ブースに対して扉は固定された状態であるため、扉回転軸を垂直とするには、ブースを垂直とするように調整する必要がある。そのため、扉回転軸を垂直とすることは困難である。さらに、ブースそのものの剛性も通常の建物より小さいため、ブースそのものが微少に傾いてしまいやすく、扉回転軸を垂直とすることは極めて困難である。そのため、ブースの扉では、開き角度が90°でストッパが機能するように設定すると、その位置でフリーストップが効かなくなる可能性がある。
【0009】
一方、ブースは移動可能であることから、ブース設置箇所の周辺の設置物はさまざまである。そのため、ブースの扉においては、開き角度が90°程度でストッパが機能するように設定することが一段と望ましい。しかしながら、上述したように、開き角度が90°でストッパが機能するように設定すると、その位置でフリーストップが効かなくなる可能性がある。
【0010】
上記事情を踏まえ、本発明は、大きな開度で扉部を静止させることができる扉構造およびブースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の態様1の扉構造は、外部空間と内部空間とを連通する開口部を開閉可能な扉構造であって、前記扉構造の開閉時に最も移動する自由端側を幅方向における第一側、前記第一側と反対側を幅方向における第二側としたとき、略平板の戸板部と、前記戸板部の前記第二側の側端部に設けられて高さ方向に延びる吊元側端部と、を有し、前記吊元側端部において前記高さ方向に延びる回転軸を中心に回動可能な扉部と、前記開口部の前記第二側の縁部に配置され、前記高さ方向に延びる縦枠部と、前記縦枠部に対して前記扉部の前記吊元側端部を回動可能に支持し、前記扉部が第1角度以上に開いた状態で前記扉部の回動を静止させるヒンジと、前記扉部の開き角度を前記第1角度および90°より大きい第2角度に制限する開き止め機構と、を備える。
【0012】
開き止め機構は、扉部の開き角度を90°より大きい第2角度に制限する。使用者が扉部を最大に開くとき、扉部は90°より大きい第2角度まで開く。扉部の回転軸が鉛直方向から傾いた状態でも、扉部が90°より大きい第2角度まで開けば、重力により扉部に作用するモーメントが小さくなり、ヒンジのフリーストップ機能が効力を発揮する。これにより、扉構造は、大きな開度で扉部を静止させることができる。
【0013】
本発明の態様2は、態様1の扉構造において、前記ヒンジは、前記扉部が前記第1角度未満に開いた状態で、前記扉部が閉じる方向に力を作用させる。
扉部は、第1角度未満に開いた状態から閉位置まで自動的に閉じる。扉部が開いたままになることが抑制される。
【0014】
本発明の態様3は、態様1または2の扉構造において、前記開き止め機構は、前記吊元側端部から前記第二側に延出する突部と、前記縦枠部に設けられ、前記扉部が前記第2角度に開いた状態で前記突部に当接する当接部と、を有する。
扉構造自体が扉部の開き止め機構を備えるので、扉構造の外部に扉部の開き角度の制限機構を設ける必要がない。扉構造の設置の自由度が高まる。
【0015】
本発明の態様4のブースは、前記内部空間を囲う壁体および前記壁体に設けられた前記開口部を有する箱体と、前記開口部に取り付けられた態様1から3のいずれか1つの扉構造と、を備える。
前述した扉構造は、扉部の回転軸が鉛直方向から傾いた状態でも、大きな開度で扉部を静止させることができる。大きな開度で扉部を静止させてブースを利用することができるので、ブースの利便性を高めることができる。
【0016】
本発明の態様5は、態様4のブースにおいて、前記第2角度は、前記開口部の開口面の法線方向から見て、前記扉部の前記第一側の端部が、前記箱体と重なる角度以下である。
ブースは様々な場所に設置されるので、ブースの第二側には障害物が存在する可能性がある。扉部は、第2角度まで開いた開位置において、ブースの第二側にはみ出さない。扉部は、ブースの第二側に存在する障害物に衝突しない。
【発明の効果】
【0017】
本発明の扉構造によれば、大きな開度で扉部を静止させることができる。
本発明のブースによれば、利便性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係るブースの概略を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る扉構造を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態について、
図1から
図6を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るブース100の概略を示す斜視図である。ブース100は、ブース100の外部にある外部空間S1と、ブース100の内部にある内部空間S2とを分割可能な個室ブースである。ブース100は、箱体120と、扉構造110と、を備える。箱体120は、壁体30と、開口部40と、を備える。壁体30は、内部空間S2を囲う。開口部40は、壁体30に設けられ、外部空間S1と内部空間S2とを連通する。扉構造110は、箱体120の開口部40に取り付けられる。使用者は、扉構造110を開けることで、開口部40を通ってブース100の内部空間S2へ入ることができる。使用者は、扉構造110を閉じることで、ブース100の外部空間S1と内部空間S2とを分割できる。
【0020】
本実施形態では、
図1に示すように、ブース100における鉛直方向を「高さ方向(上下方向)V」、鉛直上向きを高さ方向Vにおける「上側UP」、鉛直下向きを高さ方向Vにおける「下側LO」と定義する。また、ブース100における前後方向を「前後方向D」、ブース100において扉構造110が配置されている側を前後方向Dにおける「前側FR」、前側FRと反対側を前後方向Dにおける「後側RR」と定義する。また、ブース100における左右方向を「幅方向(左右方向)H」、扉構造110の開閉時に最も移動する自由端側を幅方向Hにおける「第一側(左側)LT」、第一側と反対側を幅方向Hにおける「第二側(右側)RT」と定義する。
【0021】
扉構造110は、開口部40を開閉可能な片開きの扉構造である。扉構造110は、扉部10と、縦枠部20と、ヒンジ50(
図2参照)と、を備える。扉部10は、縦枠部20に対して回動可能である。
扉部10は、戸板部1と、吊元側端部2と、を備える。戸板部1は、略平板状である。戸板部1の第一側(左側)LTにおける前側FRおよび後側RRには、ドアノブ等が装着される。
【0022】
図2は、実施形態に係る扉構造110を模式的に示す正面図である。
図3は、扉構造110の閉位置P1を示す断面図である。
図4は、扉構造110の開位置P2を示す断面図である。
【0023】
吊元側端部2は、
図2に示すように、戸板部1の第二側(右側)RTの側端部に設けられ、高さ方向(上下方向)Vに延びている。扉部10は、吊元側端部2において高さ方向(上下方向)Vに延びる回転軸Rを回転中心に回動可能である。吊元側端部2は、アルミニウム材料等を押出成形したものである。
図3に示すように、回転軸Rに垂直な吊元側端部2の断面形状は、高さ方向Vに略一定である。吊元側端部2における回転軸Rより第二側RTおよび内部空間S2側の範囲2sは、回転軸Rを中心とする円弧形状である。円弧形状は、吊元側端部2の外部空間S1側の表面まで伸びている。
【0024】
縦枠部20は、
図2に示すように、高さ方向Vに延びる略棒状であり、開口部40の第二側RTの縁部に配置されている。縦枠部20は、アルミニウム材料等を押出成形したものである。
図3に示すように、回転軸Rに垂直な縦枠部20の断面形状は、高さ方向Vに略一定である。縦枠部20の断面形状は、第一側LTに開口する略U字形状である。吊元側端部2は、第一側LTに延出する内側延出部3および外側延出部4を有する。内側延出部3は、内部空間S2側にあり、略U字形状の後側RRの端部を形成している。外側延出部4は、外部空間S1側にあり、略U字形状の前側FRの端部を形成している。
【0025】
図2に示すように、縦枠部20は、吊元側端部2を支持する。吊元側端部2は、上側UPに延びる軸部2aおよびヒンジ50の中心軸を通る回転軸Rを中心に回動可能である。すなわち、扉部10は、吊元側端部2において高さ方向Vに延びる回転軸Rを回転中心として、縦枠部20に対して回動可能である。
【0026】
ヒンジ50は、縦枠部20に対して扉部10の吊元側端部2を回動可能に支持する。
図2に示すように、扉構造110は、中心吊型のヒンジ50を有する。ヒンジ50は、吊元側端部2の下側LOであって、縦枠部20との間に配置される。ヒンジ50は、本体部51と、本体部51に対して回動可能な軸部52と、を有する。本体部51は吊元側端部2に固定され、軸部52は縦枠部20に固定される。扉構造110は、中心吊型のヒンジ50に代えて、蝶番型のヒンジを有してもよい。
【0027】
図5は、扉部の開き角度を示す平面図である。
ヒンジ50は、フリーストップ機能を備えたトルクヒンジである。フリーストップ機能は、扉部10が第1角度θ1以上に開いた状態で、摩擦力により扉部10の回動を静止させる機能である。フリーストップ機能により、扉部10は、第1角度θ1以上に開いた状態に維持される。第1角度θ1は、90°未満の角度であり、例えば85°である。
【0028】
ヒンジ50は、ドアクローズ機能を備えたオートヒンジである。ドアクローズ機能は、扉部10が第1角度θ1未満に開いた状態で、扉部10が閉じる方向に力を作用させる機能である。ドアクローズ機能により、扉部10は、第1角度θ1未満に開いた状態から閉位置P1まで、自動的に閉じる。扉部10が開いたままになることが抑制される。
【0029】
図4に示すように、扉構造110は、開き止め機構60を有する。開き止め機構60は、突部5と、当接部6と、を有する。
突部5は、扉部10が閉位置P1にある状態で、前後方向Dに垂直な平板状であり、高さ方向Vに延びる。突部5は、吊元側端部2の第二側RTの側端面から第二側RTへ延出している。
【0030】
当接部6は、幅方向(左右方向)Hに垂直な平板状であり、高さ方向Vに延びる。当接部6は、縦枠部20の内側延出部3の第一側(左側)LTの端部に設けられる。内側延出部3は、前側FRに溝7を有する。扉部10が閉位置P1から開位置P2へ回動するとき、突部5が溝7に進入して、当接部6の第二側(右側)RTに当接する。扉部10は、開位置P2を超えて回動しない。
【0031】
図5に示すように、扉部10の開位置P2は、開き角度が90°より大きい第2角度θ2となる位置である。例えば、第2角度θ2は95°である。
図4に示す開き止め機構60は、扉部10の開き角度を、第2角度θ2に制限する。扉部10が第2角度θ2に開いた状態で、突部5が当接部6に当接する。扉構造110自体が扉部10の開き止め機構60を備えるので、扉構造110の外部に扉部10の開き角度の制限機構を設ける必要がない。これにより、扉構造110の設置の自由度が高まる。
【0032】
図5に示すように、第2角度θ2は、開口部40の開口面の法線方向である前側FRから見て、扉部10の第二側(右側)RTの端部10aが、ブース100の箱体120と重なる角度以下である。ブース100は様々な場所に設置されるので、ブース100の第二側(右側)RTには、壁や他のブースの扉などの障害物が存在する可能性がある。扉部10は、第2角度θ2まで開いた開位置P2において、ブース100の第二側(右側)RTにはみ出さない。扉部10は、ブース100の第二側(右側)RTに存在する障害物に衝突しない。
【0033】
図6は、扉部10に作用する力の説明図である。以下の説明では、扉部10の局所座標系である直交座標系のr方向、s方向およびt方向が、以下のように定義される。t方向は、回転軸Rと平行な方向である。s方向は、扉部10の厚さ方向である。r方向は、t方向およびs方向に直交する方向である。
【0034】
図6(a)および
図6(b)は、回転軸Rが鉛直方向と平行な状態であって、扉部10の開き角度が0°の(扉部10が閉じた)状態である。
図6(a)は平面図であり、
図6(b)は正面図である。扉部10の重力Wが、扉部10の重心Gに対して鉛直方向に作用する。重力Wの方向は、t方向であり、s方向に直交する。重力Wがs方向に作用しないので、扉部10にはs方向の力が作用しない。したがって、回転軸Rの周りに扉部10を回動させるモーメントは発生しない。
【0035】
図6(c)および
図6(d)は、回転軸Rが鉛直方向と平行な状態であって、扉部10の開き角度が90°の状態である。
図6(c)は平面図であり、
図6(d)は正面図である。扉部10が閉じた状態と同様に、扉部10の重力Wが、扉部10の重心Gに対して鉛直方向に作用する。回転軸Rの周りに扉部10を回動させるモーメントは発生しない。
【0036】
図6(e)および
図6(f)は、回転軸Rが鉛直方向から傾いた状態であって、扉部10の開き角度が90°の状態である。
図6(e)は平面図であり、
図6(f)は正面図である。前述したように、床の不陸の影響を受けて、ブース100が傾いて設置される場合がある。ブース100の傾きに伴って、扉部10の回転軸Rが鉛直方向から傾いた状態になる。
図6では、扉部10の回転軸Rの上側UPが、第一側(左側)LTに傾いている。開き角度が90°の扉部10に作用する重力Wの方向は、s方向に直交しない。重力Wはs方向に分解され、扉部10にs方向の力Fsが作用する。s方向の力Fsにより、回転軸Rの周りに扉部10を回動させるモーメントが発生する。
【0037】
図6(e)および
図6(f)と同様に、回転軸Rが鉛直方向から傾いた状態であって、扉部10の開き角度が0°の(扉部10が閉じた)状態を想定する。開き角度が0°の扉部10に作用する重力Wの方向は、s方向に直交する。扉部10にs方向の力が作用しないので、回転軸Rの周りに扉部10を回動させるモーメントは発生しない。
図6(e)および
図6(f)と同様に、回転軸Rが鉛直方向から傾いた状態であって、扉部10の開き角度が180°の状態を想定する。開き角度が180°の扉部10に作用する重力Wの方向は、s方向に直交する。扉部10にs方向の力が作用しないので、回転軸Rの周りに扉部10を回動させるモーメントは発生しない。
図6(e)および
図6(f)に示すように、扉部10の開き角度が90°の状態では、扉部10に作用するs方向の力Fsが最大になる。回転軸Rの周りに扉部10を回動させるモーメントが最大になる。
【0038】
前述したように、
図2に示すヒンジ50は、フリーストップ機能を備えたトルクヒンジである。フリーストップ機能は、
図5に示すように、扉部10が第1角度θ1以上に開いた状態で、摩擦力により扉部10の回動を静止させる機能である。第1角度θ1は90°未満の角度であり、例えば85°である。
【0039】
扉部10が90°に開いた状態では、ヒンジ50のフリーストップ機能の摩擦力が作用する。しかしながら、
図6(e)および
図6(f)に示すように、回転軸Rが鉛直方向から傾いた状態では、開き角度が90°の扉部10に作用するモーメントが最大になる。このモーメントが、ヒンジ50のフリーストップ機能の摩擦力を上回り、扉部10が90°に開いた位置で静止しない可能性がある。なお、扉部10が90°に開いた位置で静止するように、摩擦力が大きいフリーストップ機能を有するヒンジ50を採用することが考えられる。しかし、フリーストップ機能の摩擦力が大きくなると、扉部10を閉めるときに大きな力が必要になる。
【0040】
図6(g)および
図6(h)は、回転軸Rが鉛直方向から傾いた状態であって、扉部10の開き角度が90°を超える(180°未満の)状態である。この状態の扉部10に作用する重力Wの方向は、s方向に直交しない。重力Wはs方向に分解され、扉部10にs方向の力Fsが作用する。開き角度が90°を超える状態の扉部10に作用するs方向の力Fsは、開き角度が90°の状態の扉部10に作用するs方向の力Fsより小さい。重力Wにより扉部10に作用するモーメントが、ヒンジ50のフリーストップ機能の摩擦力を下回ることが容易となる。これにより、扉部10が90°ではわずかに動き出すような状態であっても、90°を超えて開いた位置であれば静止する。扉構造110は、大きな開度で扉部10を静止させることができる。
【0041】
以上に詳述したように、実施形態の扉構造110は、外部空間S1と内部空間S2とを連通する開口部40を開閉可能な扉構造110である。扉構造110の開閉時に最も移動する自由端側を幅方向(左右方向)Hにおける第一側(左側)LTとする。第一側(左側)LTと反対側を幅方向(左右方向)Hにおける第二側(右側)RTとする。扉構造110は、扉部10と、縦枠部20と、ヒンジ50と、開き止め機構60と、を備える。扉部10は、略平板の戸板部1と、吊元側端部2と、を有する。吊元側端部2は、戸板部1の第二側(右側)RTの側端部に設けられて高さ方向(上下方向)Vに延びる。扉部10は、吊元側端部2において高さ方向(上下方向)Vに延びる回転軸Rを中心に回動可能である。縦枠部20は、開口部40の第二側(右側)RTの縁部に配置され、高さ方向(上下方向)Vに延びる。ヒンジ50は、縦枠部20に対して扉部10の吊元側端部2を回動可能に支持する。ヒンジ50は、扉部10が第1角度θ1以上に開いた状態で扉部10の回動を静止させる。開き止め機構60は、扉部10の開き角度を第1角度θ1および90°より大きい第2角度θ2に制限する。
【0042】
開き止め機構60は、扉部10の開き角度を、第1角度θ1および90°より大きい第2角度θ2に制限する。使用者が扉部10を最大に開くとき、扉部10は90°より大きい第2角度θ2まで開く。扉部10の回転軸Rが鉛直方向から傾いた状態でも、扉部10が90°より大きい第2角度θ2まで開けば、重力Wにより扉部10に作用するモーメントが小さくなり、ヒンジ50のフリーストップ機能が効力を発揮する。これにより、扉構造110は、大きな開度で扉部10を静止させることができる。
【0043】
ヒンジ50は、扉部10が第1角度θ1未満に開いた状態で、扉部10が閉じる方向に力を作用させるドアクローズ機能を有する。
扉部10は、第1角度θ1未満に開いた状態から閉位置P1まで自動的に閉じる。扉部10が開いたままになることが抑制される。扉部10を90°に開くと、重力Wにより扉部10に作用するモーメントが大きくなる。扉部10の開き角度が第1角度θ1未満まで小さくなり、扉部10が自動的に閉位置P1まで閉じる可能性がある。扉部を90°より大きい第2角度θ2まで開くことにより、扉部10を静止させることができる。
【0044】
実施形態のブース100は、箱体120と、前述した扉構造110と、を備える。箱体120は、内部空間S2を囲う壁体30および壁体30に設けられた開口部40を有する。扉構造110は、開口部40に取り付けられる。
【0045】
ブース100の内部の機材を入れ替える場合などには、扉部10を大きく開いた状態で静止させる必要がある。扉構造110は、扉部10の回転軸Rが鉛直方向から傾いた状態でも、大きな開度で扉部10を静止させることができる。大きな開度で扉部10が静止するので、使用者が何度も扉部10を開ける必要がない。ブースの利便性を高めることができる。
【0046】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0047】
H…幅方向
LT…第一側
R…回転軸
RT…第二側
S1…外部空間
S2…内部空間
θ1…第1角度
θ2…第2角度
1…戸板部
2…吊元側端部
5…突部
6…当接部
10…扉部
20…縦枠部
30…壁体
40…開口部
50…ヒンジ
60…開き止め機構
100…ブース
110…扉構造
120…箱体