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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129909
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】トランス及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20240920BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240920BHJP
   H01F 27/36 20060101ALI20240920BHJP
   H01F 27/26 20060101ALI20240920BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20240920BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01F30/10 D
H01F30/10 J
H01F30/10 R
H01F30/10 M
H01F30/10 T
H01F17/00 B
H01F27/36 125
H01F27/26 160
H01F27/28 104
H02M3/28 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039289
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】奥田 有記浩
(72)【発明者】
【氏名】東谷 祥平
【テーマコード(参考)】
5E043
5E058
5E070
5H730
【Fターム(参考)】
5E043AA08
5E043BA01
5E058CC05
5E070AA11
5E070BA08
5E070CB06
5E070CB12
5E070CB17
5E070DA17
5E070DB02
5E070DB06
5H730AA14
5H730AS01
5H730BB27
5H730BB37
5H730BB57
5H730DD03
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE04
5H730EE08
5H730ZZ16
5H730ZZ17
(57)【要約】
【課題】一次コイルパターンと二次コイルパターン間のエネルギーの伝送効率を向上することができる、トランスを得る。
【解決手段】トランス100は、基板1に設けられた一次コイルパターン2、および、基板1の表面に垂直な第1方向からの平面視において、一次コイルパターン2と離れて設けられた二次コイルパターン3と、基板1を貫通する第1脚部12および第2脚部13を有するコア7と、コア7の第1方向における一端および多端から、コア7を挟み込む一対の第1金属板8とを備え、第1脚部12に一次コイルパターン2が巻回されており、第2脚部13に二次コイルパターン3が巻回されており、一対の第1金属板8は、平面視において、コア7、一次コイルパターン2および二次コイルパターン3と重なるように設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に設けられた一次コイルパターン、および、前記基板の表面に垂直な第1方向からの平面視において、前記一次コイルパターンと離れて設けられた二次コイルパターンと、
前記基板を貫通する第1脚部および第2脚部を有するコアと、
前記コアの前記第1方向における一端および多端から、前記コアを挟み込む一対の第1金属板とを備え、
前記第1脚部に前記一次コイルパターンが巻回されており、
前記第2脚部に前記二次コイルパターンは巻回されており、
前記一対の第1金属板は、前記平面視において、前記コア、前記一次コイルパターンおよび前記二次コイルパターンと重なるように設けられている、トランス。
【請求項2】
前記二次コイルパターンは、前記平面視において、前記一次コイルパターンと絶縁領域を介して設けられており、前記基板は前記絶縁領域内において前記一次コイルパターンと前記二次コイルパターンの間にスリットを有する、請求項1に記載のトランス。
【請求項3】
基板に設けられた一次コイルパターン、および、前記基板の表面に垂直な第1方向からの平面視において、前記一次コイルパターンと離れて設けられた二次コイルパターンと、
前記基板を貫通する第1脚部および第2脚部を有するコアと、
一対の第2金属板部を有する金属部材とを備え、
前記金属部材の前記一対の第2金属板部の各々は、前記基板の第1表面および前記第1表面と反対側の第2表面と対向する、前記コアの第1内面および第2内面の各々を覆うように設けられ、
前記第1脚部に前記一次コイルパターンが巻回されており、
前記第2脚部に前記二次コイルパターンは巻回されており、
前記金属部材の前記一対の第2金属板部は、前記平面視において、前記一次コイルパターンおよび前記二次コイルパターンと重なるように設けられている、トランス。
【請求項4】
一対の第2金属板部を有する金属部材をさらに備え、
前記一対の第2金属板部の各々は、前記基板の第1表面および前記第1表面と反対側の第2表面と対向する、前記コアの第1内面および第2内面の各々を覆うように設けられ、
前記一対の第2金属板部は、前記平面視において、前記一次コイルパターンおよび前記二次コイルパターンと重なるように設けられている、請求項1に記載のトランス。
【請求項5】
前記金属部材は、前記一次コイルパターンと前記二次コイルパターンの間であって、前記一対の第2金属板部の間にわたって設けられた接続部をさらに備える、請求項3または4に記載のトランス。
【請求項6】
前記二次コイルパターンは、前記平面視において、前記一次コイルパターンと絶縁領域を介して設けられており、前記金属部材の前記接続部は、前記第1方向において、前記基板の前記絶縁領域を貫通して設けられる、請求項5に記載のトランス。
【請求項7】
前記金属部材は、前記第1方向からの前記平面視における、前記コアの前記第1脚部から前記第2脚部に向かう方向に対して直交する第2方向において、延伸する延伸部を有する、請求項3または4に記載のトランス。
【請求項8】
前記基板と前記一対の第2金属板部の間にポッティング材が設けられている請求項3または4に記載のトランス。
【請求項9】
請求項1から4のいずれか1項に記載の前記トランスを備えるトランス回路と、
複数のスイッチング素子を備えるインバータ回路と、
前記インバータ回路を制御する制御回路とを備えた、電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トランス及び電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気部品の一種であるトランスとして、コアとプリント基板上に形成した導体層のコイルパターンを組み合わせた、プレーナ型トランスが知られている。プレーナ型トランスは、コイルパターンを生成するパターンを精度良く形成できるため、製造ばらつきが小さく高密度にできるという特徴を有する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
プレーナ型トランスは、平面一次コイルに電流を流すことにより、平面一次コイルから空間に広がる磁界を発生させ、その一部がコアを通る磁界となる。また、コアを通る磁界が、平面二次コイル鎖交することで、平面二次コイルに電圧を生成し、平面二次コイル側へエネルギーを伝搬する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-133440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1におけるプレーナ型トランスは、平面一次コイルから発生する磁界が漏れ拡がることにより、コアを通る磁界が減ってしまう。これにより、平面一次コイルと平面二次コイルとの間の磁気結合が弱まり、電圧変換効率が低下してしまう問題がある。さらに、この問題について、特許文献1では何ら記載も示唆もされていない。
【0006】
本開示は、上記した課題に着目してなされたものであり、エネルギーの伝送効率の向上が可能なトランスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るトランスは、基板に設けられた一次コイルパターン、および、基板の表面に垂直な第1方向からの平面視において、一次コイルパターンと離れて設けられた二次コイルパターンと、基板を貫通する第1脚部および第2脚部を有するコアと、コアの第1方向における一端および多端から、コアを挟み込む一対の第1金属板とを備え、第1脚部に一次コイルパターンが巻回されており、第2脚部に二次コイルパターンは巻回されており、一対の第1金属板は、平面視において、コア、一次コイルパターンおよび二次コイルパターンと重なるように設けられている、という特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係るトランスは、一次コイルパターンと二次コイルパターン間のエネルギーの伝送効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1における、電力変換装置110の構成を示す回路図である。
図2】実施の形態1における、トランス100の外観を示す平面図である。
図3図2に示す断面線A-Aにおける断面構成を示す断面図である。
図4図2に示す断面線B-Bにおける断面構成を示す断面図である。
図5図2に示す断面線C-Cにおける断面構成を示す断面図である。
図6】実施の形態1における、トランス100を構成する回路基板6の外観を示す平面図である。
図7】実施の形態1における、トランス100を構成するコア7の外観を示す斜視図である。
図8】実施の形態1における、トランス100を構成する回路基板6およびコア7の外観を示す平面図である。
図9図2の断面線A-Aの断面構成における、一次コイルパターン2で発生する磁界を模式的に示した断面図である。
図10図2の断面線B-Bの断面構成における、一次コイルパターン2で発生する磁界を模式的に示した断面図である。
図11】実施の形態2における、トランス200の外観を示す平面図である。
図12図11に示す断面線D-Dにおける断面構成を示す断面図である。
図13図11に示す断面線E-Eにおける断面構成を示す断面図である。
図14】実施の形態2における、トランス200を構成するコア7に金属部材20を設置した外観を示す斜視図である。
図15】実施の形態2におけるトランス200において、金属部材20の一対の第2金属板部の各々と、回路基板6の間にポッティング材22を適用した断面構成を示す断面図である。
図16図11の断面線D-Dの断面構成における、一次コイルパターン2で発生する磁界を模式的に示した断面図である。
図17】実施の形態3における、トランス300の外観を示す平面図である。
図18図17に示す断面線F-Fにおける断面構成を示す断面図である。
図19図17に示す断面線G-Gにおける断面構成を示す断面図である。
図20図17の断面線F-Fの断面構成における、一次コイルパターン2で発生する磁界を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、各実施の形態に係る電力変換装置110の構成を示す回路図である。ここで、電力変換装置110は、例として、DC/DC変換装置を示している。しかし、たとえば、AC/DC変換装置やAC/AC変換装置などの、交流電圧を変換する装置であってもよい。図1に示すように、電力変換装置110は、インバータ回路111と、トランス回路112と、整流回路113と、平滑回路114と、制御回路115とを備えている。電力変換装置110は、入力端子116から入力される直流電圧Viを直流電圧Voに変換し、出力端子117において直流電圧Voを出力する。
【0011】
インバータ回路111は、4つのスイッチング素子118a、118b、118c、および118dを含んでいる。たとえば、図1においては、スイッチング素子118aとスイッチング素子118cとが直列接続されたものと、スイッチング素子118bとスイッチング素子118dとが直列接続されたものとが、並列接続されている。ここで、スイッチング素子118a、118b、118cおよび118dのそれぞれは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、またはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などである。スイッチング素子118a,118b,118c,118dの各々は、たとえば、ケイ素(Si)、炭化ケイ素(SiC)および窒化ガリウム(GaN)のいずれかが、材料として用いられる。
【0012】
トランス回路112は、トランス100を含んでいる。トランス100は、インバータ回路111と接続される高電圧側コイルである1次側コイル119と、整流回路113と接続される低電圧側コイルである2次側コイル120を含む。
【0013】
整流回路113は、4つのダイオード121a、121b、121cおよび121dを含んでいる。たとえば、図1においては、ダイオード121aとダイオード121cとが直列接続されたものと、ダイオード121bとダイオード121dとが直列接続されたものとが、並列接続されている。ダイオード121a、121b、121cおよび121dの各々は、たとえば、ケイ素(Si)、炭化ケイ素(SiC)および窒化ガリウム(GaN)のいずれかが、材料として用いられる。
【0014】
平滑回路114は、平滑コイルとしてのコイル装置122と、コンデンサ123aとを含んでいる。制御回路115は、インバータ回路111を制御する制御信号を、インバータ回路111に向けて出力する役割を有する。インバータ回路111は、入力される電圧を変換して出力する。
【0015】
電力変換装置110は、インバータ回路111の前段に、たとえば、平滑コイルとしてのコイル装置124と、コンデンサ123bとを含んでいる。電力変換装置110は、インバータ回路111とトランス回路112との間に、たとえば、共振コイルとしてのコイル装置125を含んでいる。より具体的には、コイル装置125の一端は、スイッチング素子118aとスイッチング素子118cの間に接続されている。また、コイル装置125の他端は、トランス回路112の1次側コイル119と接続されている。
【0016】
電力変換装置110には、たとえば、数100Vから数10kVの直流電圧Viが入力される。電力変換装置110は、たとえば、数Vから数100Vの直流電圧Voを出力する。具体的には、電力変換装置110の入力端子116に入力された直流電圧Viは、インバータ回路111によって第1の交流電圧に変換される。第1の交流電圧は、トランス回路112によって第1の交流電圧よりも低い第2の交流電圧に変換される。第2の交流電圧は、整流回路113によって整流される。平滑回路114は、整流回路113から出力された電圧を平滑する。電力変換装置110は、平滑回路114から出力された直流電圧Voを出力端子117から出力する。
【0017】
ここで、電力変換装置110は、入力された直流電圧Viを、直流電圧Viより低い直流電圧Voに降圧する例について説明した。しかし、これに限らず、入力された直流電圧Viを、直流電圧Viより高い直流電圧Voへ昇圧する電力変換装置110であってもよい。また、電力変換装置110は、今回、例として、インバータを用いて説明したが、これに限らず、コンバータまたは電源であってもよい。
【0018】
次に、図2から図8を用いて、電力変換装置110に備えられる実施の形態1におけるトランス100の構成について説明する。ここで、図2は、実施の形態1におけるトランス100の外観を示す平面図をある。図3は、図2の断面線A-Aにおけるトランス100の断面構成を示す断面図である。図4は、図2の断面線B-Bにおけるトランス100の断面構成を示す断面図である。図5は、図2の断面線C-Cにおけるトランス100の断面構成を示す断面図である。
【0019】
図2から図5に示すように、実施の形態1におけるトランス100は、内鉄型のトランスであり、絶縁材料から形成された基板1、基板1に形成された1次側コイル119を構成する一次コイルパターン2、および、2次側コイル120を構成する二次コイルパターン3、基板1に形成された第1孔部4および第2孔部5を有する回路基板6を備える。
【0020】
さらに、基板1に形成された第1孔部4および第2孔部5の各々を貫通するように設けられたコア7、基板1の表面に垂直な方向である第1方向における両側からコアを挟み込むように設けられた一対の第1金属板8、および一対の第1金属板8に含まれる第1金属板8aおよび第1金属板8bを互いに固定するスペーサ9を備える。ここで、第1方向は、図中に示すZ方向と同じ方向を示す。
【0021】
図6は、実施の形態1におけるトランス100を構成する回路基板6の外観を示す平面図である。図3から図6に示すように、回路基板6の基板1は、第1表面1aおよび第1表面1aとは反対側の第2表面1bを有する。また、一次コイルパターン2は、基板1の第1表面1aに設けられた一次コイルパターン2aと、第1方向において、一次コイルパターン2aと積層されるように、第2表面1bに設けられた一次コイルパターン2bを含む。また、一次コイルパターン2aおよび一次コイルパターン2bは、基板1に設けられたスルーホールにより電気的に接続されている。
【0022】
また、二次コイルパターン3は、基板1の第1表面1aに設けられた二次コイルパターン3aと、第1方向において、二次コイルパターン3aと積層されるように、第2表面1bに設けられた二次コイルパターン3bを含む。また、二次コイルパターン3aおよび二次コイルパターン3bは、基板1に設けられたスルーホールにより電気的に接続されている。ここで、スルーホールは、図示を省略する。
【0023】
ここで、回路基板6は、第1方向からの平面視において、一次コイルパターン2と二次コイルパターン3が、互いに重ならない位置に離れて設けられている。すなわち、回路基板6は、第1方向からの平面視において、一次コイルパターン2と二次コイルパターン3の間に、基板1を形成する絶縁材料で形成された絶縁領域10を有する。言い換えると、回路基板6は、第1方向からの平面視において、一次コイルパターン2と、一次コイルパターン2に絶縁領域10を介して設けられた二次コイルパターン3を有する。
【0024】
これにより、回路基板6は、一次コイルパターン2と二次コイルパターン3の間に高い絶縁性能を備える。さらに、絶縁領域10において、一次コイルパターン2と二次コイルパターン3の間にスリット11を設けることで、高い絶縁性能を維持しつつ、一次コイルパターン2と二次コイルパターン3の間の絶縁領域10の幅をより小さくすることができる。スリット11は、絶縁領域10において、一次コイルパターン2および二次コイルパターン3に沿って延びるように設けられた、基板1の第1表面1aから第2表面1bに達する孔である。ここで、基板1は、絶縁性を有する樹脂材料により形成されている。しかし、これに限らず、基板1は、セラミックなどの無機物からなる基板、または、アルミや銅を含む材料からなる金属基板であってもよい。さらに、基板1は、折り曲げ可能な、薄い絶縁材料からなるフレキシブル基板であってもよい。
【0025】
また、一次コイルパターン2と二次コイルパターン3を離れて設けることで、一次コイルパターン2と二次コイルパターン3によって形成される結合静電容量が小さくすることができる。これにより、一次コイルパターン2で発生する高周波のスイッチングノイズが、二次コイルパターン3へ伝搬することを抑制することができる。
【0026】
ここまで、一次コイルパターン2および二次コイルパターン3の各々について、基板1の表面1aおよび第2表面1bに設けられた2層のコイルパターンが積層されて形成されている構造について説明した。しかし、これに限らず、一次コイルパターン2および二次コイルパターン3の各々は、基板1の表面1aまたは表面1bにのみ形成された1層のコイルパターンであってもよいし、基板1の中に導電層を用いて形成されたコイルパターンを追加し、スルーホールで接続された3層以上が積層されたコイルパターンであってもよい。
【0027】
また、一次コイルパターン2および二次コイルパターン3を、基板1の中の導電層のみで形成してもよく、これにより、コア7と一次コイルパターン2および二次コイルパターン3との絶縁距離を確保することができる。ここで、一次コイルパターン2、二次コイルパターン3および基板1の中の導電層は、銅またはアルミニウムなどを含む導電材料により形成されている。ここで、基板1の中の導電層は、図示を省略する。
【0028】
さらに、図示は省略するが、一次コイルパターン2と二次コイルパターン3の各々を、異なる基板で構成することで、複数基板で構成されるシステムへ適用することができる。また、二次コイルパターン3を、複数の基板を用いて形成し、それら基板を積層させることで、多出力のトランスとすることができる。
【0029】
基板1に設けられた第1孔部4は、一次コイルパターン2の一部に隣接し、かつ、一次コイルパターン2によって周囲を囲まれるように形成されている。一次コイルパターン2は、第1孔部4の周りを巻回するように形成されている。また、基板1に設けられた第2孔部5は、二次コイルパターン3の一部に隣接し、かつ、二次コイルパターン3によって周囲を囲まれるように形成されている。二次コイルパターン3は、第2孔部5の周りを巻回するように形成されている。
【0030】
実施の形態1のトランス100を構成する回路基板6は、一次コイルパターン2および二次コイルパターン3の他に、実施の形態1における電力変換装置110を構成する、その他の電子部品や磁性部品を有していてもよい。ここで、その他の電子部品や磁性部品については、図示を省略する。
【0031】
図7は、実施の形態1におけるトランス100を構成するコア7の外観を示す斜視図である。図7に示すように、コア7は、U字型のコア7aおよび7bを組み合わせることで閉磁路を形成するように、第1脚部12および第2脚部13を含むO字型のコア7として構成されている。また、実施の形態1におけるトランス100は、コア7の第1脚部12において、コア7aとコア7bの間に、ギャップとして絶縁部材14を有している。しかしこれに限らず、コア7の第2脚部13にギャップとして絶縁部材14を有していてもよい。また、第1脚部12および第2脚部13の両方において、コア7aとコア7bの間に絶縁部材14を配置してもよい。コア7aとコア7bの間にギャップとして絶縁部材14を配置せず、直接接触させてもよい。
【0032】
図7に示すように、第1脚部12および第2脚部13の少なくとも一方において、コア7aとコア7bの間にギャップとしての絶縁部材14を設けることで、回路動作時の磁気飽和を防ぐことができ、回路の動作を安定させることができる。また、ここでは、コア7としてU字型のコア7aおよび7bを組み合わせたO字型のコア7について説明したが、これに限らず、たとえば、U字型のコア7aとI字型のコア7bを組み合わせてO字型のコア7を構成していてもよい。ここで、U字型のコアとI字型のコアを組み合わせたコアの形態については、図示を省略する。
【0033】
図8は、実施の形態1におけるトランス100を構成する回路基板6に、コア7を組み合わせた構成の外観を示す上面図である。回路基板6の基板1に形成された第1孔部4および第2孔部5の各々に、第1脚部12および第2脚部13の各々が貫通するように設けられている。言い換えると、基板1の表面1aに垂直な方向である第1方向(Z方向)から、コア7aおよびコア7bを組み合せ、コア7の第1脚部12が第1孔部4を貫通し、第2脚部13が第2孔部5を貫通するように設けられている。これにより、第1脚部12に一次コイルパターン2が巻回され、第2脚部13に二次コイルパターン3が巻回される。ここで、第1方向は、図中に示すZ方向と同じ方向を示す。
【0034】
次に、図2から図5に示すように、実施の形態1におけるトランスにおいて、一対の第1金属板8は、2つの同じ形の第1金属板8aおよび第1金属板8bを含んでおり、第1方向における両側からコア7を挟むように設けられている。具体的には、一対の第1金属板8は、コア7の第1方向における一端および多端から、コア7を挟み込むように設けられている。さらに、一対の第1金属板8は、図2に示すように、第1方向からの平面視において、回路基板6に設けられた一次コイルパターン2および二次コイルパターン3と重なるように設けられる。言い換えると、第1方向からの平面視において、回路基板6に設けられた一次コイルパターン2および二次コイルパターン3の各々を覆うように設けられる。
【0035】
ここで、一対の第1金属板8は、第1方向からの平面視において、回路基板6に設けられた一次コイルパターン2および二次コイルパターン3の少なくとも一部と重なるように設けられる。また、一対の第1金属板8は、第1方向からの平面視において、回路基板6に設けられた一次コイルパターン2および二次コイルパターン3のすべてと重なるように設けられてもよい。
【0036】
また、一対の第1金属板8は、コア7と直接接触する形態で、スペーサ9により固定されている。しかしこれに限らず、一対の第1金属板8は、一次コイルパターン2が生成する磁界がコア7へ流れるまでの経路を遮断しない構成であれば、一対の第1金属板8とコア7の間に距離があってもよい。また、第1方向における、第1金属板8aとコア7aの間の距離は、第1金属板8bとコア7bの間の距離と異なってもよい。
【0037】
ここで、一対の第1金属板8は、一次コイルパターン2および二次コイルパターン3で発生した磁界を通しにくい、非磁性材料や導電率の高い金属材料から構成される。さらに、トランス100で発生する熱を放熱が可能な熱伝導性が高い、銅またはアルミニウムなどを含む材料により構成するとよい。また、一対の第1金属板8を固定するスペーサ9は、たとえば、ステンレスなどの金属材料、または、発生した磁界を通しにくいオーステナイト系の材料を用いてもよい。
【0038】
一対の第1金属板8をスペーサ9により固定する構成について説明したが、これに限らず、一対の第1金属板8の各々とコア7を接着剤、または、ねじを用いて固定してもよい。ねじは、ステンレスなどの金属材料、または、発生した磁界を通しにくいオーステナイト系の材料を用いてよい。ここで、接着剤およびねじについては、図示を省略する。
【0039】
さらには、実施の形態1におけるトランス100を、数100Vから数kVといった高電圧で使用する場合、一対の第1金属板8を、フィンなどを有するヒートシンク形状とすることで、放熱性が高いトランス100とすることができる。また、コア7と一対の第1金属板8の間の接着材料として、熱伝導率の高い接着剤、両面テープまたは放熱グリスとすることで、さらに放熱効果を高めることができる。ここで、一対の第1金属板8をヒートシンク形状とした構造、熱伝導率の高い接着剤、両面テープおよび放熱グリスについては、図示を省略する。
【0040】
実施の形態1では、一対の第1金属板8は、2つの同じ形の第1金属板8aおよび第1金属板8bを含む構造について説明したが、これに限らず、第1方向からの平面視において、回路基板6に設けられた一次コイルパターン2および二次コイルパターン3と重なる
ように設けられるのであれば、異なる形状の金属板でもよい。また、電力変換装置110を収納する筐体の一部を、一対の第1金属板8として用いてもよい。また、筐体が透磁率の高い材料から形成されている場合、筐体におけるコア7と対向する面に、銅またはアルミニウムなどを含む金属の薄膜を張り付けて、一対の第1金属板8としてもよい。
【0041】
次に、図9および図10を用いて、実施の形態1におけるトランス100の効果について説明する。図9は、図2の断面線A-Aにおけるトランス100において、一次コイルパターン2で発生する磁界について、矢印を用いて模式的に表現した断面図である。また、図10は、図2の断面線B-Bにおけるトランス100において、一次コイルパターン2で発生する磁界について、矢印を用いて表現した断面図である。
【0042】
図9および図10に示すように、一次コイルパターン2に電流が流れることにより、空間に広がる磁界15と、コア7を通る磁界16が生成される。ここでは、一次コイルパターン2で発生し空間に広がった磁界15が、コア7を通る磁界16となる。また、磁界16は、二次コイルパターン3と鎖交することで、二次コイルパターン3に電圧を生成し、二次コイルパターン3側へエネルギーを伝搬する。
【0043】
空間に広がる磁界15のうち、コア7を通る磁界16とならない磁界15は、漏れ磁界となり、二次コイルパターン3と鎖交することなくエネルギーロスとなる。この漏れ磁界が多いほど一次コイルパターン2と二次コイルパターン3の結合係数が小さく、一次コイルパターンと二次コイルパターン間のエネルギーの伝送効率が低下する。一方、漏れ磁界が少ないほど一次コイルパターン2と二次コイルパターン3の結合係数が大きく、一次コイルパターンと二次コイルパターン間のエネルギーの伝送効率が向上する。
【0044】
実施の形態1におけるトランス100は、図9および図10に示すように、一対の第1金属板8が、基板1の第1表面1aおよび第2表面1bに垂直な第1方向における両側からコア7を挟むように設けられている。さらに、一対の第1金属板8は、第1方向からの平面視において、回路基板6に設けられた一次コイルパターン2および二次コイルパターン3と重なるように設けられる。また、一対の第1金属板8は、第1方向からの平面視において、回路基板6に設けられた一次コイルパターン2および二次コイルパターン3の各々のすべてを覆うように設けられるとなおよい。
【0045】
一対の第1金属板8は、一次コイルパターン2および二次コイルパターン3で発生した磁界を通しにくく、導電率の高い金属である、銅またはアルミニウムなど含む材料により構成される。そのため、一次コイルパターン2で発生した磁界15の漏れ磁界を抑制し、空間に広がった磁界15を効率よくコア7を通る磁界16とすることができる。言い換えると、一対の第1金属板8により、一次コイルパターン2の近傍に磁界15を集中させ、コア7を通る磁界16となる磁界15の割合を増加させることができる。このように、漏れ磁界を抑制することで、一次コイルパターン2および二次コイルパターン3の結合係数を大きくすることができる。
【0046】
さらに、一対の第1金属板8は、空間に広がる磁界15が必要のない場所でコアに侵入したり、トランス100に隣接する外部機器からの磁界がコア7へ侵入したりすることを防ぎ、コア内部を通る磁界16の流れを乱さない効果を有する。また、コア7を流れる磁界16がコア7の外部へ流出することも防ぐ効果を有する。
【0047】
さらには、一対の第1金属板8により、一次コイルパターン2で発生し、空間に広がった磁界15の広がりを小さくすることができるため、トランス100からの放射ノイズを抑制することができる。また、一対の第1金属板8をアースと直接接続する、または、アースと接続された金属筐体と電気的に接続することで、放射ノイズの低減効果をさらに高めることができる。
【0048】
実施の形態1におけるトランス100における回路基板6の基板1では、第1方向からの平面視において、一次コイルパターン2と二次コイルパターン3が離れて設けられている。これにより、幅広い使用電圧において十分な絶縁性能を有するとともに、静電結合容量を低減させて高周波帯域においてノイズを抑制することができる。さらに、一対の第1金属板8により、一次コイルパターン2および二次コイルパターン3の結合係数を大きくすることができる。
【0049】
このように、実施の形態1におけるトランス100は、一次コイルパターンと二次コイルパターン間のエネルギーの伝送効率を向上することができる。
【0050】
次に、実施の形態1における電力変換装置110の効果について説明する。電力変換装置110は、実施の形態1におけるトランス100を備えるトランス回路112に有する。これにより、高い電力変換効率を実現することができる。
【0051】
実施の形態2.
次に、実施の形態2におけるトランス200について、図11から図16を用いて説明する。なお、実施の形態2におけるトランス200においては、実施の形態1との構成の異なる部分のみを説明する。また、実施の形態1と同一または対応する構成については、同一の図番号を用い、その説明を省略する。
【0052】
図11は、実施の形態2におけるトランス200の外観を示す平面図をある。図12は、図11の断面線D-Dにおけるトランス200の断面構成を示す断面図である。図13は、図11の断面線E-Eにおけるトランス200の断面構成を示す断面図である。
【0053】
実施の形態2におけるトランス200は、図11から図13に示すように、金属部材20を、基板1の第1表面1aおよび第2表面1bに垂直な第1方向(Z方向)における、コア7の内側に設けられていることが、実施の形態1におけるトランス100との主な違いである。ここで、コア7の内側とは、コア7により形成される閉磁路の内方のことである。
【0054】
すなわち、実施の形態2のトランス200は、金属部材20を、第1方向における、コア7により形成される閉磁路の内方に有する。また、一対の第1金属板8の代わりに、金属部材20を用いること以外の構成は、実施の形態1のトランス100と同じであるため、詳細な説明を省略する。ここで、第1方向は、図中に示すZ方向と同じ方向を示す。
【0055】
図14は、コア7に金属部材20を設置した構成を示す斜視図である。実施の形態2におけるトランス200では、図12および図14に示すように、金属部材20が、一対の第2金属板部である第2金属板部20aおよび第2金属板部20bと、一対の第2金属板部の間にわたって設けられ、それらを接続する板状の接続部20cを含む。言い換えると、金属部材20は、第2金属板部20a、第2金属板部20bおよびそれらを接続する板状の接続部20cが、第2方向(X方向)からの平面視において、H字型を有する構造を有する。
【0056】
ここで、板状の接続部20cは、一次コイルパターン2および二次コイルパターン3の間を遮るように設けられている。また、第2方向における第2金属板部20aの一端から多端に至るまで設けられる。しかしこれに限らず、板状の接続部20cは、第2方向における第2金属板部20aの一端から多端までの少なくとも一部に設けられていてもよい。ここで、金属部材20は、磁界を通しにくい、非磁性材料や導電率の高い金属材料から構成される。さらに、トランス200で発生する熱を放熱が可能な熱伝導性が高い、銅またはアルミニウムなどを含む材料により構成するとなおよい。
【0057】
また、図12および図13に示すように、実施の形態2のトランス200は、回路基板6における基板1の表面1aおよび表面1bと、第1方向において対向するコア7の2つの内面である第1内面および第2内面の各々に、金属部材20に含まれる第2金属板部20aおよび第2金属板部20bの各々が接するように設けられている。ここで、第2金属板部20aおよび第2金属板部20bの各々は、基板1と対向するコア7の2つの内面である第1内面および第2内面の各々を覆うように設けられる。
【0058】
さらに、図11図13に示すように、金属部材20は、第1方向からの平面視における、コア7の第1脚部12から第2脚部13に向かう方向(Y方向)に対して直交する第2方向(X方向)において、コア7の内側から延伸する延伸部20dを有するように設けられていてもよい。ここで、金属部材20の一対の第2金属板部は、第1方向からの平面視において、一次コイルパターン2および二次コイルパターン3の各々の一部と重なるように設けられる。
【0059】
ここで、金属部材20は、第2方向からの平面視において、2つのT字型の金属板部材を組み合わせたものでもよいし、T字型の金属部材とI字型の金属部材を組み合わせたものでもよい。また、図12に示すように、実施の形態2のトランス200では、金属部材20に含まれる板状の接続部20cを貫通させるために、回路基板6の基板1において、一次コイルパターン2と二次コイルパターン3の間に設けられた絶縁領域10に孔21が設けられている。
【0060】
ここで、一対の第2金属板部20である第2金属板部20aおよび第2金属板部20bの各々が、第1方向において基板1と対向するコア7の2つの内面である第1内面および第2内面の各々に、接着剤を用いて接着されていてもよい。また、これに限らず、一対の第2金属板部20を、ねじによりコア7に固定してもよい。ここで、接着剤およびねじは、図示を省略する。
【0061】
また、図15に示すように、金属部材20の一対の第2金属板部である第2金属板部20aおよび第2金属板部20bの各々と、回路基板6の間に、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの絶縁材料からなる硬化型のポッティング材22を満たしてもよい。これにより、一対の第2金属板部の各々と、一次コイルパターン2および二次コイルパターン3の間の絶縁を行うことができる。また、ポッティング材22により、金属部材20を回路基板6に固定することができる。さらには、回路基板6で発生する熱の放熱性を向上することができる。
【0062】
次に、図16を用いて、実施の形態2におけるトランス200の効果について説明する。図16は、図11の断面線D-Dにおけるトランス200において、一次コイルパターン2で発生する磁界について、矢印を用いて模式的に表現した断面図である。
【0063】
図16に示すように、一次コイルパターン2に電流が流れることにより、空間に広がる磁界15と、コア7を通る磁界16が生成される。ここでは、一次コイルパターン2で発生し、空間に広がった磁界15が、コア7を通る磁界16となる。また、磁界16は、二次コイルパターン3と鎖交することで、二次コイルパターン3に電圧を生成し、二次コイルパターン3側へエネルギーを伝搬する。
【0064】
実施の形態2におけるトランス200は、図16に示すように、回路基板6における基板1と、第1方向において対向するコア7の2つの内面に接するように、一対の第2金属板部20である第2金属板部20a、第2金属板部20bおよび板状の接続部20cを含む、金属部材20が設けられている。ここで、金属部材20における一対の第2金属板部である第2金属板部20aおよび第2金属板部20bは、第1方向からの平面視において、一次コイルパターン2および二次コイルパターン3の各々の一部と重なるように設けられる。
【0065】
ここで、第2金属板部20aおよび第2金属板部20bの各々は、第1方向において基板1と対向するコア7の2つの内面の各々を覆うように設けられている。また、板状の接続部20cは、一次コイルパターン2および二次コイルパターン3間の少なくとも一部を遮るように設けられている。
【0066】
このように、金属部材20は、一次コイルパターン2が生成する磁界15が、直接、二次コイルパターン3に鎖交することを抑制しすることができる。これにより、二次コイルパターン3は、本来鎖交すべきコア7を流れる磁界16の影響のみを受けることになり、エネルギーの伝送効率を上げることができる。また、金属部材20は、第1方向からの平面視における、コア7の第1脚部12側から第2脚部13側に向かう方向(Y方向)に対して直交する第2方向(X方向)において、コア7の内側から延伸するように設けられてもより。これにより、一次コイルパターン2が生成する磁界15が、直接、二次コイルパターン3に鎖交することをさらに抑制することができる。
【0067】
このように、実施の形態2におけるトランス200は、一次コイルパターンと二次コイルパターン間のエネルギーの伝送効率を向上することができる。
【0068】
さらに、実施の形態2のトランス200は、実施の形態1のトランス100に対して、金属部材20により、一次コイルパターン2が生成する磁界15が、直接、二次コイルパターン3に鎖交することを抑制することができる。
【0069】
実施の形態3.
次に、実施の形態3におけるトランス300について、図17から図20を用いて説明する。なお、実施の形態3におけるトランス300においては、実施の形態1との構成の異なる部分のみを説明する。また、実施の形態1と同一または対応する構成については、同一の図番号を用い、その説明を省略する。
【0070】
図17は、実施の形態3におけるトランス300の外観を示す平面図をある。図18は、図17の断面線F-Fにおけるトランス300の断面構成を示す断面図である。図19は、図17の断面線G-Gにおけるトランス300の断面構成を示す断面図である。
【0071】
実施の形態3におけるトランス300は、図17から図19に示すように、実施の形態1のトランス100に加えて、実施の形態2のトランス200の特徴である金属部材20を備える。言い換えると、実施の形態3におけるトランス300は、実施の形態2のトランス200に加えて、実施の形態1の特徴である一対の第1金属板8を備える。
【0072】
図17から図19に示すように、実施の形態3のトランス300は、基板1の第1表面1aおよび第2表面1bに垂直な第1方向(Z方向)における両側から、コアを挟み込むように設けられた一対の第1金属板8を有する。また、一対の第1金属板8は、第1方向からの平面視において、回路基板6に設けられた一次コイルパターン2および二次コイルパターン3と重なるように設けられる。また、一対の第1金属板8は、第1方向からの平面視において、回路基板6に設けられた一次コイルパターン2および二次コイルパターン3の各々のすべてを覆うように設けられるとなおよい。
【0073】
さらに、実施の形態3のトランス300は、金属部材20を、第1方向における、コア7の内側に設けられている。コア7の内側とは、コア7により形成される閉磁路の内方のことである。すなわち、実施の形態3のトランス300は、金属部材20を、第1方向における、コア7により形成される閉磁路の内方に有する。また、金属部材20は、第2金属板部20a、第2金属板部20bおよびそれらを接続する板状の接続部20cを含む。言い換えると、金属部材20は、第2金属板部20a、第2金属板部20bおよびそれらを接続する板状の接続部20cが、第2方向からの平面視において、H字型を有する構造を有する。
【0074】
ここで、板状の接続部20cは、第2方向における第2金属板部20aの一端から多端に至るまで設けられる。しかしこれに限らず、板状の接続部20cは、第2方向における第2金属板部20aの一端から多端までの少なくとも一部に設けられていてもよい。
【0075】
また、図18および図19に示すように、回路基板6における基板1の表面1aおよび表面1bと、第1方向において対向するコア7の2つの内面である第1内面および第2内面の各々に、金属部材20に含まれる第2金属板部20aおよび第2金属板部20bの各々が接するように設けられている。ここで、第2金属板部20aおよび第2金属板部20bの各々は、基板1と対向するコア7の2つの内面の各々を覆うように設けられる。
【0076】
さらに、図17図19に示すように、金属部材20は、第1方向からの平面視における、コア7の第1脚部12側から第2脚部13側に向かう方向(Y方向)に対して直交する第2方向(X方向)において、コア7の内側から延伸する延伸部20dを有するように設けられていてもよい。ここで、金属部材20は、第1方向からの平面視において、一次コイルパターン2および二次コイルパターン3各々の一部と重なるように設けられる。
【0077】
次に、図20を用いて、実施の形態3におけるトランス300の効果について説明する。図20は、図17の断面線F-Fにおけるトランス300において、一次コイルパターン2で発生する磁界について、矢印を用いて模式的に表現した断面図である。
【0078】
図20に示すように、一次コイルパターン2に電流が流れることにより、空間に広がる磁界15と、コア7を通る磁界16が生成される。ここでは、一次コイルパターン2で発生し空間に広がった磁界15が、コア7を通る磁界16となる。また、磁界16は、二次コイルパターン3と鎖交することで、二次コイルパターン3に電圧を生成し、二次コイルパターン3側へエネルギーを伝搬する。
【0079】
実施の形態3におけるトランス300は、一対の第1金属板8が、基板1の第1表面1aおよび第2表面1bに垂直な第1方向(Z方向)における両側からコア7を挟むように設けられている。具体的には、一対の第1金属板8は、コア7の第1方向における一端および多端から、コア7を挟み込むように設けられている。さらに、一対の第1金属板8は、第1方向からの平面視において、回路基板6に設けられた一次コイルパターン2および二次コイルパターン3と重なるように設けられる。
【0080】
一対の第1金属板8は、一次コイルパターン2および二次コイルパターン3で発生した磁界を通しにくく、導電率の高い金属である、銅またはアルミニウムなどを含む材料により構成される。そのため、一次コイルパターン2で発生した磁界15の漏れ磁界を抑制し、空間に広がった磁界15を効率よくコア7を通る磁界16とすることができる。言い換えると、一対の第1金属板8により、一次コイルパターン2の近傍に磁界15を集中させ、コア7を通る磁界16となる磁界15の割合を増加させることができる。このように、漏れ磁界を抑制することで、一次コイルパターン2および二次コイルパターン3の結合係数を大きくすることができる。
【0081】
さらに、実施の形態3におけるトランス300は、図20に示すように、回路基板6における基板1の表面1aおよび表面1bと、第1方向において対向するコア7の2つの内面に接するように、第2金属板部20a、第2金属板部20bおよび板状の接続部20cを含む、金属部材20が設けられている。ここで、第2金属板部20aおよび第2金属板部20bの各々は、第1方向において基板1と対向するコア7の2つの内面の各々を覆うように設けられている。また、金属部材20は、第1方向からの平面視において、一次コイルパターン2および二次コイルパターン3各々の一部と重なるように設けられる。
【0082】
このように、金属部材20は、一次コイルパターン2が生成する磁界15が、直接、二次コイルパターン3に鎖交することを抑制することができる。これにより、二次コイルパターン3は、本来鎖交すべきコア7を流れる磁界16の影響のみを受けることになり、エネルギーの伝送効率を上げることができる。また、金属部材20は、第1方向からの平面視における、コア7の第1脚部12側から第2脚部13側に向かう方向(Y方向)に対して直交する第2方向(X方向)において、コア7の内側から延伸するように設けられてもよい。これにより、一次コイルパターン2が生成する磁界15が、直接、二次コイルパターン3に鎖交することをさらに抑制することができる。
【0083】
さらに、一対の第1金属板8は、空間に広がる磁界15が必要のない場所でコアに侵入したり、トランス300に隣接する外部機器からの磁界がコア7へ侵入したりすることを防ぎ、コア内部を通る磁界16の流れを乱さない効果がある。また、コア7を流れる磁界16がコア7の外部へ流出することも防ぐ効果を有する。
【0084】
また、一対の第1金属板8により、一次コイルパターン2で発生し、空間に広がった磁界15の広がりを小さくすることができるため、トランス300からの放射ノイズを抑制することができる。また、一対の第1金属板8をアースと直接接続する、または、アースと接続された金属筐体と電気的に接続することで、放射ノイズの低減効果をさらに高めることができる。
【0085】
このように、実施の形態3におけるトランス300は、一次コイルパターンと二次コイルパターン間のエネルギーの伝送効率を向上することができる。
【0086】
さらに、実施の形態3のトランス300は、実施の形態1のトランス100に加えて、実施の形態2のトランス200の特徴である金属部材20を備える。これにより、実施の形態1のトランス100に対して、一次コイルパターン2が生成する磁界15が、直接、二次コイルパターン3に鎖交することを抑制することができる。また、一次コイルパターンと二次コイルパターン間のエネルギーの伝送効率をさらに向上することができる。
【0087】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限される
ことはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態
等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0088】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0089】
(付記1) 基板に設けられた一次コイルパターン、および、前記基板の表面に垂直な第1方向からの平面視において、前記一次コイルパターンと離れて設けられた二次コイルパターンと、
前記基板を貫通する第1脚部および第2脚部を有するコアと、
前記コアの前記第1方向における一端および多端から、前記コアを挟み込む一対の第1金属板とを備え、
前記第1脚部に前記一次コイルパターンが巻回されており、
前記第2脚部に前記二次コイルパターンは巻回されており、
前記一対の第1金属板は、前記平面視において、前記コア、前記一次コイルパターンおよび前記二次コイルパターンと重なるように設けられている、トランス。
【0090】
(付記2) 前記二次コイルパターンは、前記平面視において、前記一次コイルパターンと絶縁領域を介して設けられており、前記基板は前記絶縁領域内において前記一次コイルパターンと前記二次コイルパターンの間にスリットを有する、付記1に記載のトランス。
【0091】
(付記3) 基板に設けられた一次コイルパターン、および、前記基板の表面に垂直な第1方向からの平面視において、前記一次コイルパターンと離れて設けられた二次コイルパターンと、
前記基板を貫通する第1脚部および第2脚部を有するコアと、
一対の第2金属板部を有する金属部材とを備え、
前記金属部材の前記一対の第2金属板部の各々は、前記基板の第1表面および前記第1表面と反対側の第2表面と対向する、前記コアの第1内面および第2内面の各々を覆うように設けられ、
前記第1脚部に前記一次コイルパターンが巻回されており、
前記第2脚部に前記二次コイルパターンは巻回されており、
前記金属部材の前記一対の第2金属板部は、前記平面視において、前記一次コイルパターンおよび前記二次コイルパターンと重なるように設けられている、トランス。
【0092】
(付記4) 一対の第2金属板部を有する金属部材をさらに備え、
前記金属部材の前記一対の第2金属板部の各々は、前記基板の第1表面および前記第1表面と反対側の第2表面と対向する、前記コアの第1内面および第2内面の各々を覆うように設けられ、
前記金属部材の前記一対の第2金属板部は、前記平面視において、前記一次コイルパターンおよび前記二次コイルパターンと重なるように設けられている、付記1に記載のトランス。
【0093】
(付記5) 前記金属部材は、前記一次コイルパターンと前記二次コイルパターンの間であって、前記一対の第2金属板部の間にわたって設けられた接続部をさらに備える、付記3または4に記載のトランス。
【0094】
(付記6) 前記二次コイルパターンは、前記平面視において、前記一次コイルパターンと絶縁領域を介して設けられており、前記金属部材の前記接続部は、前記第1方向において、前記基板の前記絶縁領域を貫通して設けられる、付記5に記載のトランス。
【0095】
(付記7) 前記金属部材は、前記第1方向からの前記平面視における、前記コアの前記第1脚部から前記第2脚部に向かう方向に対して直交する第2方向において、延伸する延伸部を有する、付記3から6のいずれかに記載のトランス。
【0096】
(付記8) 前記基板と前記一対の第2金属板部の間にポッティング材が設けられている付記3または7に記載のトランス。
【0097】
(付記9) 付記1から8のいずれか1つに記載の前記トランスを備えるトランス回路と、
複数のスイッチング素子を備えるインバータ回路と、
前記インバータ回路を制御する制御回路とを備えた、電力変換装置。
【符号の説明】
【0098】
1,1a,1b 基板、2,2a,2b 次コイルパターン、3,3a,3b 二次コイルパターン、4 第1孔部、5 第2孔部、6 回路基板、7,7a,7b コア、8,8a,8b 金属板、9 スペーサ、10 絶縁領域,11 スリット、12 第1脚部、13 第2脚部、14 絶縁部材、15,16 磁界,20,20a,20b,20c,20d 金属部材、21 孔、22 ポッティング材、100,200,300 トランス、110 電力変換装置、111 インバータ回路、112 トランス回路、113 整流回路、114 平滑回路、115 制御回路、116 入力端子、117 出力端子、118a,118b,118c,118d スイッチング素子、119 1次側コイル,120 2次側コイル、121a,121b,121c,121d ダイオード、122,124 125 コイル装置、123a,123b コンデンサ。
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