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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129910
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/188 20120101AFI20240920BHJP
   B60L 7/14 20060101ALI20240920BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240920BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20240920BHJP
   B60W 20/10 20160101ALI20240920BHJP
【FI】
B60W30/188
B60L7/14
B60L15/20 J
B60K6/442 ZHV
B60W20/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039291
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢倉 洋史
【テーマコード(参考)】
3D202
3D241
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202AA10
3D202BB01
3D202BB11
3D202CC02
3D202DD02
3D202DD05
3D202DD06
3D202FF12
3D202FF14
3D241BA51
3D241CA06
3D241CA08
3D241CB03
3D241CC02
3D241CC03
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DB05A
3D241DB05Z
3D241DB46A
3D241DB46Z
3D241DB47Z
3D241DD10Z
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC12
5H125BA00
5H125CA01
5H125CB02
5H125EE41
5H125EE42
5H125EE51
5H125EE53
5H125EE57
(57)【要約】
【課題】重量の変化に関わらず一定の操作感覚を運転者に与え、ユーザビリティを向上させることが可能な車両を提供する。
【解決手段】車両は、自身の基準重量Mbに対する増加重量ΔMを取得し、基準重量Mbに増加重量ΔMを加算した重量の車両自身が走行する場合、基準重量Mbの車両自身が要求駆動力(基準要求駆動力Fdb)で走行する場合に生じる基準加速度と一致する加速度を得るために必要な要求駆動力の補正値ΔFdを算出し、算出した補正値ΔFdで補正した要求駆動力で走行する。これにより、重量の変化に関わらず一定の操作感覚を運転者に与え、ユーザビリティを向上させることが可能となる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行に要求される要求駆動力で走行する車両であって、
車両自身の基準重量に対する増加重量を取得し、
前記基準重量に前記増加重量を加算した重量の前記車両自身が走行する場合、前記基準重量の前記車両自身が前記要求駆動力で走行する場合に生じる基準加速度と一致する加速度を得るために必要な前記要求駆動力の補正値を算出し、算出した補正値で補正した前記要求駆動力で走行する車両。
【請求項2】
乗車人数を検出する検出センサを備え、前記検出センサにより検出された前記乗車人数に基づいて、前記増加重量を算出する請求項1に記載の車両。
【請求項3】
搭乗者が前記増加重量に関する少なくとも一部の情報を入力する車載装置を備え、前記車載装置で入力された前記情報に基づいて、前記増加重量を算出する請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記情報は、搭載された荷物の重量の情報である請求項3に記載の車両。
【請求項5】
回生制動力を発生可能な走行用電動モータを備えた請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量の変化に関わらず一定の操作感覚を得るための車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両において重量の変化を推定する技術が知られている。例えば、特許文献1には、車両が停車状態又は駐車状態から発進した場合に、車両の走行抵抗と駆動力を用いて算出された複数の推定車重を積算平均した平均推定車重に基づいて、車両の変速制御や回生制動制御を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-21811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の車両では、推定車重に基づいて変速制御や回生制動制御を行うことで燃費向上や回生量の増加を図っている。しかしながら、車両の重量が変化した場合には、アクセル操作やブレーキ操作に伴って車両に生じる加速度が変化する。その結果、運転者が感じる車両の操作感覚が変化してしまう可能性がある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、重量の変化に関わらず一定の操作感覚を運転者に与え、ユーザビリティを向上させることが可能な車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両は、走行に要求される要求駆動力で走行する車両であって、車両自身の基準重量に対する増加重量を取得し、前記基準重量に前記増加重量を加算した重量の前記車両自身が走行する場合、前記基準重量の前記車両自身が前記要求駆動力で走行する場合に生じる基準加速度と一致する加速度を得るために必要な前記要求駆動力の補正値を算出し、算出した補正値で補正した前記要求駆動力で走行する。
【0007】
この構成により、基準重量に対して増加重量だけ車両の重量が変化した場合、基準重量で生じる基準加速度と一致した加速度を車両に生じさせることができる。したがって、本発明の車両によれば、アクセル操作やブレーキ操作に対して一定の基準加速度での走行を図ることができ、重量の変化に関わらず一定の操作感覚を運転者に与え、ユーザビリティを向上させることが可能となる。
【0008】
また、上記車両は、乗車人数を検出する検出センサを備え、前記検出センサにより検出された前記乗車人数に基づいて、前記増加重量を算出することが好ましい。この構成により、増加重量を容易に得ることができる。
【0009】
また、上記車両は、搭乗者が前記増加重量に関する少なくとも一部の情報を入力する車載装置を備え、前記車載装置で入力された前記情報に基づいて、前記増加重量を算出することが好ましい。この構成により、搭乗者が入力した情報に基づいて増加重量を精度良く、かつ、容易に得ることができる。
【0010】
また、前記情報は、搭載された荷物の重量の情報であることが好ましい。この構成により、搭乗者が把握している車両に搭載した荷物の重量を増加重量に精度良く、かつ、容易に反映させることができる。
【0011】
また、上記車両は、回生制動力を発生可能な走行用電動モータを備えることが好ましい。この構成により、重量の変化に応じて算出された要求駆動力に基づいて車両に制動力を付与する際に、走行用電動モータによって、補正値に対応する制動力の調整を細やかに行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両によれば、重量の変化に関わらず一定の操作感覚を運転者に与え、ユーザビリティを向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態の車両を示す概略構成図である。
図2】運転者のみが搭乗している車両を示す模式図である。
図3図2の状態から他の搭乗者および荷物が増加した車両を示す模式図である。
図4】ハイブリッドコントロールユニットの一例を示す概略構成図である。
図5】要求駆動力とアクセル開度との関係の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。図1は、実施形態の車両を示す概略構成図である。実施形態の車両1は、エンジン2の出力によって前輪3を駆動して走行可能であると共に、前輪3を駆動する電動のフロントモータ4(走行用電動モータ)を備えたプラグインハイブリッド(PHEV)自動車である。
【0015】
エンジン2は、減速機7を介して前輪3の駆動軸8を駆動すると共に、減速機7を介してモータジェネレータ9を駆動して発電させる。フロントモータ4は、フロントインバータ10を介して駆動用バッテリ11およびモータジェネレータ9から高電圧の電力を供給されて駆動し、減速機7を介して前輪3の駆動軸8を駆動する。減速機7には、エンジン2の出力軸と駆動軸8との間の動力の伝達を切り替えるエンジンクラッチや、フロントモータ4と駆動軸8との間の動力の伝達を切り替えるモータクラッチが内蔵されている。
【0016】
駆動用バッテリ11は、リチウムイオン電池などの二次電池で構成され、複数の電池セルをまとめて構成された図示しない電池モジュールを有する。駆動用バッテリ11には、電池モジュールの充電率(State Of Charge)などを監視するバッテリモニタリングユニット11aが設けられている。また、車両1は、駆動用バッテリ11を外部電源によって外部充電する充電機21を備え、外部給電も可能である。
【0017】
ハイブリッドコントロールユニット20は、車両1の総合的な制御を行う制御装置であり、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央演算処理装置(CPU)等を含んで構成される。ハイブリッドコントロールユニット20は、アクセル開度、ブレーキストローク、車速、車輪速といった図示しない各種センサにより検出される検出量や各種動作情報を入力する。ハイブリッドコントロールユニット20は、入力した各種検出量および各種動作情報に基づいて、車両1の走行に要求される要求駆動力といった車両1の制御に必要な情報を演算する。ハイブリッドコントロールユニット20は、演算した情報に基づいて、エンジンコントロールユニット14、フロントインバータ10、減速機7などに各種制御信号を出力し、車両1の走行モード、エンジン2およびフロントモータ4の出力、モータジェネレータ9の出力(発電電力)などを制御する。
【0018】
車両1の走行モードは、EVモード、シリーズモード、パラレルモードを含む。EVモードでは、エンジン2を停止し、駆動用バッテリ11から供給される電力によりフロントモータ4を駆動して車両1を走行させる。シリーズモードでは、エンジン2によりモータジェネレータ9を作動し、モータジェネレータ9により発電された電力および駆動用バッテリ11から供給される電力によりフロントモータ4を駆動して走行させる。パラレルモードでは、エンジン2から減速機7を介して駆動軸8に機械的に動力を伝達すると共に、モータジェネレータ9により発電した電力や駆動用バッテリ11から供給される電力によってフロントモータ4を駆動して走行させる。
【0019】
また、車両1は、アクセルオフ状態の減速走行時において、前輪3の回転力によりフロントモータ4を強制駆動して回生発電させると共に前輪3に回生制動力を付与させる回生制動機能を備えている。ハイブリッドコントロールユニット20は、車両1の減速走行時に、上記要求駆動力に基づいて回生制動トルクを演算し、フロントインバータ10を介してフロントモータ4を制御して回生発電による回生制動トルクを制御する。フロントモータ4で発生した回生電力は、駆動用バッテリ11への充電またはモータジェネレータ9によりエンジン2を強制駆動するモータリングで消費される。
【0020】
また、車両1は、車載装置30を備えている。車載装置30は、例えばカーナビゲーションシステムといった車載インフォテイメント(IVI:in-vehicle infotainment)であり、ハイブリッドコントロールユニット20に接続されている。車載装置30は、車両1の搭乗者が各種情報を入力可能な図示しない入力部を備えている。搭乗者は、例えば、車載装置30により、後述する増加重量に関する情報を入力する。車載装置30は、入力部から入力された情報をハイブリッドコントロールユニット20へと出力する。
【0021】
また、車両1は、搭乗者が着座する複数のシート15(図2、3参照)を備え、当該シート15に着座した搭乗者の人数を検出するための検出センサ40を備えている。検出センサ40は、例えば、各シート15に着座した搭乗者が使用するシートベルトの装着の有無を検出するシートベルトリマインダ装置であり、シートベルトの装着がなされた場合に対応するシート15に搭乗者が着座していると判定する。検出センサ40は、各シート15に搭乗者が着座しているか否かの検出結果、すなわち乗車人数をハイブリッドコントロールユニット20に出力する。
【0022】
以上のように構成された車両1は、搭乗者の人数や搭載される荷物によって重量が変化する。図2は、運転者P1のみが搭乗している車両1を示す模式図であり、図3は、図2の状態から他の搭乗者P2~P5および荷物L1が増加した車両1を示す模式図である。図示するように、車両1の乗車人数や搭載される荷物の重量は状況に応じて変化し、その結果として、アクセル操作やブレーキ操作に伴って車両1に生じる加速度Gも変化する。
【0023】
より詳細には、車両1に作用する加速度Gは、式(1)にしたがって算出される。式(1)の“F”は車両1の総駆動力であり、“Lr”は車両1に作用する走行抵抗であり、“M”は車両1の総重量であり、“I”は車両1全体に作用するイナーシャである。また、走行抵抗は、式(2)にしたがって算出される。式(2)中の右辺第1項は、車両1の転がり抵抗を示し、“k1”は車両1の転がり抵抗係数であり、“θ”は車両1が走行している路面の勾配である。式(2)中の右辺第2項は、車両1の勾配抵抗を示し、“k1”は車両1の転がり抵抗係数である。式(2)中の右辺第3項は、車両1の空気抵抗を示し、“V”は車速、“k2”は車両1の空気抵抗係数である。式(1)、(2)中の“k1”、“k2”、“I”は、車両諸元に基づいて設定または算出される。なお、 “I”は、後述する増加重量を考慮して算出されるものであってもよい。さらに、上記(2)式の走行抵抗Lrを上記(1)式に代入して整理すると、加速度Gは式(3)で表すことができる。ここでは、路面勾配θを0度と仮定した式を例示している。
【0024】
G = (F-Lr)/(M+I) …(1)
Lr = k1・M・cosθ+M・sinθ+V・k2 …(2)
G = (F-M・k1-V・k2)/(M+I) …(3)
【0025】
式(3)に示されるように、車両1に生じる加速度Gは、車両1の総重量Mによって変化する。例えば、図2に示す状態の車両1に比べ、図3に示す状態の車両1では、同じ程度にアクセルを踏み込みんだとしても総重量Mが大きい分だけ加速度Gが小さくなる(白抜き矢印参照)可能性があり、運転者の操作感覚が変化してしまう。そこで、実施形態の車両1では、運転者に一定の操作感覚を与えるために以下の構成を備えている。
【0026】
図4は、ハイブリッドコントロールユニット20の一例を示す概略構成図である。ハイブリッドコントロールユニット20は、要求駆動力算出部22と、増加重量取得部24と、補正値算出部26と、要求駆動力補正部28とを備えている。
【0027】
要求駆動力算出部22は、車両1のアクセル開度α、ブレーキストロークBsといった各種検出値を入力し、入力した値に基づいて、車両1自身の走行に要求される駆動力である要求駆動力を算出する。以下、ここで算出される補正前の要求駆動力を「基準要求駆動力Fdb」と称する。要求駆動力算出部22は、算出した基準要求駆動力Fdbを補正値算出部26および要求駆動力補正部28へと出力する。
【0028】
増加重量取得部24は、車両1自身の基準重量Mbに対する増加重量ΔMを取得する。ここで、本実施形態では、図2に示す運転者P1のみが搭乗している状態の車両1の総重量を基準重量Mbとする。すなわち、基準重量Mbは、車両1に搭乗者や搭載した荷物が存在しない状態での車重(車両1の諸元としての車重)に、運転者P1の重量を加算した値として、予め定められる。運転者P1の重量は、平均的な体重(例えば、60kgなど)として設定されればよい。基準重量Mbは、ハイブリッドコントロールユニット20の図示しない記憶部に予め記憶されている。なお、ハイブリッドコントロールユニット20は、運転者P1の重量を別途取得し、車両1の諸元としての車重に取得した運転者P1の重量を加算して基準重量Mbを算出してもよい。
【0029】
また、増加重量ΔMは、運転者P1以外の他の搭乗者P2~P5の総重量MPと、車両1に搭載された荷物L1の総重量MLとの合算値である。増加重量取得部24は、上記検出センサ40で検出された車両1の乗車人数のうち、運転者P1以外の人数を取得し、取得した人数に予め定められた重量を乗算して総重量MPを算出する。予め定められた重量は、平均的な体重(例えば、60kg)として設定されればよい。また、増加重量取得部24は、搭乗者が車載装置30により数値で入力した荷物L1の重量を総重量MLとして取得する。増加重量取得部24は、総重量MPと総重量MLとの合算値を増加重量ΔMとして算出し、補正値算出部26へと出力する。
【0030】
補正値算出部26は、要求駆動力算出部22から基準要求駆動力Fdb、図示しない記憶部から基準重量Mb、増加重量取得部24から増加重量ΔMを取得する。そして、補正値算出部26は、取得した基準重量Mb、増加重量ΔMおよび基準要求駆動力Fdbに基づいて、基準重量Mbに増加重量ΔMを加算した重量で車両1が走行する場合に、基準重量Mbで車両1自身が要求駆動力Fd(基準要求駆動力Fdb)で走行する場合に生じる加速度である基準加速度Gbに一致する加速度G2を得るために必要な要求駆動力Fd(基準要求駆動力Fdb)の補正値ΔFdを算出する。
【0031】
補正値ΔFdの算出手法について詳細に説明する。まず、基準重量Mbの車両1が基準要求駆動力Fdbで走行する場合に車両1に生じる加速度である基準加速度Gb(図2の白抜き矢印参照)は、上記式(3)に基づいて式(4)にしたがって算出することができる。また、基準重量Mbに増加重量ΔMを加算した重量(Mb+ΔM)の車両1が基準要求駆動力Fdbで走行する場合、車両1に生じる加速度G1(図3の白抜き矢印参照)は、上記式(3)に基づいて式(5)にしたがって算出することができる。さらに、式(5)において基準要求駆動力Fdbに補正値ΔFdを加算した場合、車両1に生じる加速度G2(図3の灰色矢印参照)は、式(6)にしたがって算出することができる。
【0032】
Gb = (Fdb-Mb・k1-V・k2)/(Mb+I) …(4)
G1 = (Fdb-(Mb+ΔM)・k1-V・k2)/(Mb+ΔM+I) …(5)
G2 = (Fdb+ΔFd-(Mb+ΔM)・k1-V・k2)/(Mb+ΔM+I) …(6)
【0033】
したがって、加速度G2を基準加速度Gbに一致させる場合、補正値ΔFdは、式(4)および式(6)に基づいて式(7)で算出することができる。補正値算出部26は、式(7)にしたがって補正値ΔFdを算出し、要求駆動力補正部28へと出力する。なお、式(5)~(7)は、上記式(3)と同様に、路面勾配θは0度と仮定した場合の式を例示しているが、路面勾配θを考慮した式を用いてもよい。このように、補正値算出部26は、基準重量Mbの車両1自身が基準要求駆動力Fdbで走行する場合に車両1自身に生じる基準加速度Gbと、基準重量Mbに増加重量ΔMを加算した重量の車両1自身が補正値ΔFdで基準要求駆動力Fdbを補正した要求駆動力Fdで走行する場合に車両1自身に生じる加速度G2とが一致するように、当該補正値ΔFdを算出する。ただし、増加重量ΔMが値0である場合、補正値ΔFdは、値0に設定される。
【0034】
ΔFd = (Fdb・ΔM-(Mb・k1+V・k2)・((Mb+ΔM)+I))/(Mb+I)+(Mb+ΔM)・k1+V・k2 …(7)
【0035】
要求駆動力補正部28は、要求駆動力算出部22から基準要求駆動力Fdbを取得すると共に、補正値算出部26から補正値ΔFdを取得する。そして、要求駆動力補正部28は、基準要求駆動力Fdbに補正値ΔFdを加算して補正した要求駆動力Fdを算出する。これにより、要求駆動力Fdを出力して走行するように、ハイブリッドコントロールユニット20から各種装置に対して制御信号が出力される。
【0036】
図5は、要求駆動力とアクセル開度との関係の一例を示す説明図である。図示するように、実線で示す補正後の要求駆動力Fdは、破線で示す補正前の基準要求駆動力Fdbに比べて補正値ΔFdだけ変動する。なお、図5では、駆動側で基準要求駆動力Fdbが補正値ΔFdだけ正の方向に変動し、制動側で基準要求駆動力Fdbが補正値ΔFdだけ負の方向に変動する一例を示している。このように、基準重量Mbに対して増加重量ΔMだけ重量が変化した場合、補正値ΔFdで補正した要求駆動力Fdを用いることで、基準加速度Gbと一致した加速度G2を車両1に生じさせることができる。したがって、車両1によれば、アクセル操作やブレーキ操作に対して一定の基準加速度Gbでの走行を図ることができ、重量の変化に関わらず一定の操作感覚を運転者P1に与え、ユーザビリティを向上させることが可能となる。
【0037】
また、上記車両1は、乗車人数を検出する検出センサ40を備え、検出センサ40により検出された乗車人数に基づいて、増加重量ΔMを算出する。この構成により、増加重量ΔMを容易に得ることができる。
【0038】
また、上記車両1は、搭乗者が増加重量ΔMに関する情報を入力する車載装置30を備え、車載装置30で入力された情報に基づいて、増加重量ΔMを算出する。また、当該情報は、搭載された荷物(例えば荷物L1)の重量(総重量ML)の情報である。この構成により、搭乗者が入力した情報、すなわち、搭乗者が把握している車両1に搭載した荷物の重量を増加重量ΔMに精度良く、かつ、容易に反映させることができる。
【0039】
また、上記車両1は、回生制動力を発生可能なフロントモータ4(走行用電動モータ)を備える。この構成により、重量の変化に応じて算出された要求駆動力Fdに基づいて車両1に制動力を付与する際に、フロントモータ4によって、補正値ΔFdに対応する制動力の調整を細やかに行うことができる。
【0040】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明は、プラグインハイブリッド自動車に限らず、ハイブリッド自動車、電動自動車または走行用電動モータを備えず駆動源としての内燃機関を備える車両に適用されてもよい。
【0041】
また、車両が走行用電動モータを備えない場合、上記補正された要求駆動力Fdに基づいて車両に制動力を付与する際には、例えば、内燃機関と駆動軸との間で動力を伝達する変速機において変速比を適宜変更することで、補正値ΔFdに対応する制動力の調整を行えばよい。この場合、変速機がCVT(Continuously Variable Transmission)といった無段変速機であれば、変速比の変更による制動力の調整を細やかに実行することが可能である。
【0042】
また、運転者P1、他の搭乗者P2~P5の重量は、例えばシート15に着座した搭乗者の重量を検出するセンサで検出された値を用いてもよい。また、運転者P1、他の搭乗者P2~P5の重量は、搭乗者が車載装置30により数値で入力した値を用いてもよい。また、運転者P1、他の搭乗者P2~P5の構成に関する情報(例えば性別や年齢に関する情報)に対応する重量を予め設定しておき、搭乗者によって車載装置30から入力された上記情報に対応する重量を、運転者P1、他の搭乗者P2~P5の重量として用いてもよい。このように、車載装置30は、搭乗者が増加重量ΔMに関する少なくとも一部の情報を入力するために用いられてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 車両
4 フロントモータ(走行用電動モータ)
20 ハイブリッドコントロールユニット
22 要求駆動力算出部
24 増加重量取得部
26 補正値算出部
28 要求駆動力補正部
30 車載装置
40 検出センサ
Fd 要求駆動力
Fdb 基準要求駆動力
G、G1、G2 加速度
Gb 基準加速度
L1 荷物
Mb 基準重量
P1 運転者
P2~P5 他の搭乗者
ΔFd 補正値
ΔM 増加重量
図1
図2
図3
図4
図5