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特開2024-129917圧電振動片、圧電振動子、及び発振器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129917
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】圧電振動片、圧電振動子、及び発振器
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/215 20060101AFI20240920BHJP
   H03H 9/17 20060101ALI20240920BHJP
   H03H 9/10 20060101ALI20240920BHJP
   H03B 5/32 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H03H9/215
H03H9/17 G
H03H9/10
H03B5/32 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039308
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】713005174
【氏名又は名称】エスアイアイ・クリスタルテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅基
(72)【発明者】
【氏名】市村 直也
【テーマコード(参考)】
5J079
5J108
【Fターム(参考)】
5J079AA04
5J079BA44
5J079HA03
5J079HA07
5J079HA10
5J079HA22
5J079JA01
5J079JA02
5J108AA01
5J108BB02
5J108CC06
5J108CC08
5J108CC11
5J108CC12
5J108EE03
5J108EE07
5J108EE13
5J108EE14
5J108EE18
5J108GG03
5J108GG11
5J108GG15
5J108GG16
(57)【要約】
【課題】音叉型の圧電振動片の小型化に伴う振動効率の低下を抑制する。
【解決手段】圧電振動片3は、基部20と、基部20から平行に延びる一対の振動腕部21,22と、を備え、振動腕部22(振動腕部21も同様)は、基部20から延びるアーム部21a,22aと、アーム部21a,22aの先端に連設され、アーム部21a,22aより幅が広いヘッド部21b,22bと、を備え、ヘッド部21b,22bの長さをLh[μm]、ヘッド部21b,22bの幅をWh[μm]、ヘッド部21b,22bの体積をVh[μm]としたとき、0.13×1012≦Vh(Lh+Wh)≦0.39×1012の関係を満たす。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
前記基部から平行に延びる一対の振動腕部と、を備え、
前記振動腕部は、
前記基部から延びるアーム部と、
前記アーム部の先端に連設され、前記アーム部より幅が広いヘッド部と、を備え、
前記ヘッド部の長さをLh[μm]、前記ヘッド部の幅をWh[μm]、前記ヘッド部の体積をVh[μm]としたとき、
0.13×1012≦Vh(Lh+Wh)≦0.39×1012
の関係を満たす、
圧電振動片。
【請求項2】
さらに、
Vh(Lh+Wh)≦0.33×1012
の関係を満たす、
請求項1に記載の圧電振動片。
【請求項3】
さらに、
0.145×1012≦Vh(Lh+Wh
の関係を満たす、
請求項1または2に記載の圧電振動片。
【請求項4】
前記振動腕部の前記基部から先端までの長さをLa[μm]としたとき、
0.24≦Lh/La≦0.35
の関係を満たす、
請求項1または2に記載の圧電振動片。
【請求項5】
さらに、
Lh/La≦0.32
の関係を満たす、
請求項4に記載の圧電振動片。
【請求項6】
さらに、
0.27≦Lh/La
の関係を満たす、
請求項4に記載の圧電振動片。
【請求項7】
前記基部から延び、前記一対の振動腕部の幅方向両側に配置される一対のサイドアームを備える、
請求項1または2に記載の圧電振動片。
【請求項8】
前記基部から延び、前記一対の振動腕部の間に配置されるセンターアームを備える、
請求項1または2に記載の圧電振動片。
【請求項9】
請求項1または2に記載の圧電振動片と、
前記圧電振動片を封止したパッケージと、を備える、
圧電振動子。
【請求項10】
請求項9に記載の圧電振動子と、
前記圧電振動子に電気的に接続された集積回路と、を備える、
発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧電振動片、圧電振動子、及び発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、音叉型の圧電振動片が知られている。この圧電振動片は、基部と、基部から平行に延びる一対の振動腕部と、を備えている。圧電振動片は、小型化を図り、振動特性を高める目的で、各振動腕部の先端にハンマーヘッドと言われる錘部(ヘッド部)が形成される場合がある(例えば、下記特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6521148号公報
【特許文献2】特許第7060073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記音叉型の圧電振動片を従来よりもさらに小型化する場合、圧電振動片の全幅に対する全長の比率が小さくなり、その影響として、周波数調整のために、先端のヘッド部を相対的に大きくする必要がある。そうすると、ヘッド部が振動腕部の振動効率を低下させ、CI値(Crystal Impedance)が上昇してしまう、という課題がある。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、音叉型の圧電振動片の小型化に伴う振動効率の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1):本開示の一態様に係る圧電振動片は、基部と、前記基部から平行に延びる一対の振動腕部と、を備え、前記振動腕部は、前記基部から延びるアーム部と、前記アーム部の先端に連設され、前記アーム部より幅が広いヘッド部と、を備え、前記ヘッド部の長さをLh[μm]、前記ヘッド部の幅をWh[μm]、前記ヘッド部の体積をVh[μm]としたとき、0.13×1012≦Vh(Lh+Wh)≦0.39×1012の関係を満たす。
【0007】
本態様に係る圧電振動片によれば、ヘッド部の振動時の慣性モーメントにおける寸法起因部分を数値限定することで、CI値を低減させながら、周波数の変化を抑えることができる。
【0008】
(2):(1)の態様の圧電振動片において、さらに、Vh(Lh+Wh)≦0.33×1012の関係を満たしてもよい。
【0009】
この場合には、Vh(Lh+Wh)=0.39×1012のときよりも、CI値を5%程度低減できる。
【0010】
(3):(1)または(2)の態様の圧電振動片において、さらに、0.145×1012≦Vh(Lh+Wh)の関係を満たしてもよい。
【0011】
この場合には、Vh(Lh+Wh)=0.13×1012のときから、周波数の変化を5%以内に抑えられる。
【0012】
(4):(1)から(3)のいずれかの態様の圧電振動片において、前記振動腕部の前記基部から先端までの長さをLa[μm]としたとき、0.24≦Lh/La≦0.35の関係を満たしてもよい。
【0013】
この場合には、振動腕部の長さに対するヘッド部の長さの比率を数値限定することで、CI値を低減させながら、周波数の変化を抑えることができる。
【0014】
(5):(4)の態様の圧電振動片において、さらに、Lh/La≦0.32の関係を満たしてもよい。
【0015】
この場合には、Lh/La=0.35のときによりも、CI値を5%程度低減できる。
【0016】
(6):(4)または(5)の態様の圧電振動片において、さらに、0.27≦Lh/Laの関係を満たしてもよい。
【0017】
この場合には、Lh/La=0.24のときから、周波数の変化を5%以内に抑えられる。
【0018】
(7):(1)から(6)のいずれかの態様の圧電振動片において、前記基部から延び、前記一対の振動腕部の幅方向両側に配置される一対のサイドアームを備えてもよい。
【0019】
この場合には、一対のサイドアームを備える圧電振動片の小型化に伴う振動効率の低下を抑制することができる。
【0020】
(8):(1)から(6)のいずれかの態様の圧電振動片において、前記基部から延び、前記一対の振動腕部の間に配置されるセンターアームを備えてもよい。
【0021】
この場合には、センターアームを備える圧電振動片の小型化に伴う振動効率の低下を抑制することができる。
【0022】
(9):本開示の一態様に係る圧電振動子は、(1)から(8)のいずれかの態様の圧電振動片と、前記圧電振動片を封止したパッケージと、を備える。
【0023】
本態様に係る圧電振動子によれば、小型で品質のよい圧電振動子が得られる。
【0024】
(10):本開示の一態様に係る発振器は、(9)の態様の圧電振動子と、前記圧電振動子に電気的に接続された集積回路と、を備える。
【0025】
本態様に係る発振器によれば、小型で品質のよい発振器が得られる。
【発明の効果】
【0026】
上記本開示の一態様によれば、音叉型の圧電振動片の小型化に伴う振動効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態に係る圧電振動子の分解斜視図である。
図2】第1実施形態に係る圧電振動片の寸法関係を説明する平面図である。
図3】第1実施形態に係る圧電振動片のVh×(Lh+Wh)とR1(CI値)との関係の解析結果を示すグラフである。
図4】第1実施形態に係る圧電振動片のVh×(Lh+Wh)とF(周波数)との関係の解析結果を示すグラフである。
図5】第1実施形態に係る圧電振動片のLh/LaとR1(CI値)との関係の解析結果を示すグラフである。
図6】第1実施形態に係る圧電振動片のLh/LaとF(周波数)との関係の解析結果を示すグラフである。
図7】第2実施形態に係る圧電振動片の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[第1実施形態]
先ず、本開示に係る第1実施形態について図面を参照して説明する。
【0029】
(発振器)
図1は、第1実施形態に係る発振器100の分解斜視図である。
図1に示す発振器100は、発振子として機能する圧電振動子1と、発振器用の集積回路101と、を備えている。集積回路101は、例えば、図示しない基板を介して圧電振動子1と電気的に接続される。
【0030】
圧電振動子1に電力が供給されると、圧電振動子1の圧電振動片3が振動する。圧電振動片3の振動は、圧電振動片3が有する圧電特性により、電気信号へ変換される。この電気信号は、圧電振動子1から集積回路101へ出力される。集積回路101は、圧電振動子1から出力された電気信号に各種処理を実行することで、周波数信号を生成する。
【0031】
発振器100は、例えば、時計用の単機能発振器、コンピューターなどの各種装置の動作タイミングを制御するタイミング制御装置、時刻あるいはカレンダーなどを提供する装置などに応用できる。集積回路101は、発振器100に要求される機能に応じて構成され、いわゆるRTC(リアルタイムクロック)モジュールを含んでいてもよい。
【0032】
(圧電振動子)
図1に示すように、圧電振動子1は、内部に気密封止されたキャビティ4を有するパッケージ2と、キャビティ4内に収容された音叉型の圧電振動片3と、を備えたセラミックパッケージタイプの表面実装型振動子とされている。
【0033】
なお、圧電振動子1は、概略直方体状に形成されており、本実施形態では平面視において圧電振動子1の長手方向を長さ方向Lといい、短手方向を幅方向Wといい、これら長さ方向L及び幅方向Wに対して直交する方向を厚み方向Tという。
【0034】
パッケージ2は、パッケージ本体10と、このパッケージ本体10に対して接合されると共に、パッケージ本体10との間にキャビティ4を形成する封口板11と、を備えている。
【0035】
パッケージ本体10は、互いに重ね合わされた状態で接合された第1ベース基板12及び第2ベース基板13と、第2ベース基板13上に接合されたシールリング14と、を備えている。
第1ベース基板12は、平面視略長方形状に形成されたセラミックス製の基板とされている。第2ベース基板13は、第1ベース基板12と同じ外形形状である平面視略長方形状に形成されたセラミックス製の基板とされており、第1ベース基板12上に重ねられた状態で焼結等の方法によって一体的に接合されている。
【0036】
第1ベース基板12及び第2ベース基板13の四隅には、平面視1/4円弧状の切欠部15が、厚み方向Tの全体に亘って形成されている。これら第1ベース基板12及び第2ベース基板13は、例えばウエハ状のセラミック基板を2枚重ねて接合した後、両セラミック基板を貫通する複数のスルーホールを行列状に形成し、その後、各スルーホールを基準としながら両セラミック基板を格子状に切断することで作製される。その際、スルーホールが4分割されることで、切欠部15となる。
また、第2ベース基板13の上面は、圧電振動片3がマウントされる実装面13aとされている。
【0037】
なお、第1ベース基板12及び第2ベース基板13はセラミックス製としたが、その具体的なセラミックス材料としては、例えばアルミナ製のHTCC(High Temperature Co-Fired Ceramic)や、ガラスセラミックス製のLTCC(Low Temperature Co-Fired Ceramic)等が挙げられる。
【0038】
シールリング14は、第1ベース基板12及び第2ベース基板13の外形よりも一回り小さい導電性の枠状部材であり、第2ベース基板13の実装面13aに接合されている。具体的には、シールリング14は、銀ロウ等のロウ材や半田材等による焼付けによって実装面13a上に接合、或いは、実装面13a上に形成(例えば、電解メッキや無電解メッキの他、蒸着やスパッタ等により)された金属接合層に対する溶着等によって接合されている。
【0039】
なお、シールリング14の材料としては、例えばニッケル基合金等が挙げられ、具体的にはコバール、エリンバー、インバー、42-アロイ等から選択すれば良い。特に、シールリング14の材料としては、セラミック製とされている第1ベース基板12及び第2ベース基板13に対して熱膨張係数が近いものを選択することが好ましい。例えば、第1ベース基板12及び第2ベース基板13として、熱膨張係数6.8×10-6/℃のアルミナを用いる場合には、シールリング14としては、熱膨張係数5.2×10-6/℃のコバールや、熱膨張係数4.5~6.5×10-6/℃の42-アロイを用いることが好ましい。
【0040】
封口板11は、シールリング14上に重ねられた導電性基板であり、シールリング14に対する接合によってパッケージ本体10に対して気密に接合されている。そして、この封口板11とシールリング14と第2ベース基板13の実装面13aとで画成された空間が、気密に封止されたキャビティ4として機能する。
【0041】
なお、封口板11の溶接方法としては、例えばローラ電極を接触させることによるシーム溶接や、レーザー溶接、超音波溶接等が挙げられる。また、封口板11とシールリング14との溶接をより確実なものとするため、互いになじみの良いニッケルや金等の接合層を、少なくとも封口板11の下面と、シールリング14の上面とにそれぞれ形成することが好ましい。
【0042】
第2ベース基板13の実装面13aには、圧電振動片3との接続電極である一対の電極パッド16a,16bが幅方向Wに間隔をあけて形成されている。第1ベース基板12の下面には、一対の外部電極17a,17bが、長さ方向Lに間隔をあけて形成されている。これら電極パッド16a,16b及び外部電極17a,17bは、例えば蒸着やスパッタ等で形成された単一金属による単層膜、又は異なる金属が積層された積層膜であり、互いにそれぞれ導通している。
【0043】
すなわち、第1ベース基板12及び第2ベース基板13には、一方の電極パッド16aと一方の外部電極17aとを導通させる図示しない導通電極が形成されている。また、第1ベース基板12及び第2ベース基板13には、他方の電極パッド16bと他方の外部電極17bとを導通させる図示しない導通電極が形成されている。これら導通電極は、第1ベース基板12及び第2ベース基板13において厚み方向Tに延在し、第1ベース基板12及び第2ベース基板13の間において平面方向(長さ方向L、幅方向Wを含む方向)に延在している。
【0044】
第2ベース基板13の実装面13aには、圧電振動片3に対向する部分に、落下等による衝撃の影響によって一対の振動腕部21,22等が厚さ方向Tに変位(撓み変形)した際に、圧電振動片3との接触を回避する凹部19が形成されている。この凹部19は、第2ベース基板13を貫通する貫通孔とされているとともに、シールリング14の内側において四隅が丸み帯びた平面視正方形状に形成されている。一対の電極パッド16a,16bは、凹部19の幅方向Wの両側面から幅方向Wの内側に突出した一対の突部13b上に形成されている。
【0045】
そして、圧電振動片3は、図示しない金属バンプや導電性接着剤等を介して、基部20から延びる一対のサイドアーム23,24の一対のマウント電極が、一対の電極パッド16a,16bに接触するようにマウントされる。これにより、圧電振動片3は、第2ベース基板13の実装面13a上から浮いた状態で支持されると共に、一対の電極パッド16a,16bにそれぞれ電気的に接続された状態とされる。
【0046】
(圧電振動片)
圧電振動片3は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動する。
圧電振動片3は、基部20と、一対の振動腕部21,22と、を備えている。
【0047】
一対の振動腕部21,22は、基部20から長さ方向Lに沿って互いに平行に延在している。一対の振動腕部21,22は、延在方向における先端側が、基端側(基部20側)を固定端として振動する自由端とされている。一対の振動腕部21,22は、先端側の幅寸法が基端側に比べて拡大されたハンマーヘッドタイプである。
【0048】
一対の振動腕部21,22をハンマーヘッドタイプにした場合は、振動腕部21,22の先端側の重量および振動時の慣性モーメントを増大させることができ、それにより、振動腕部21,22を振動し易くすることができる。従って、振動腕部21,22の長さを短くすることができ、小型化が図れるメリットがある。
【0049】
一対の振動腕部21,22は、厚さ方向Tの両表面に、一対の振動腕部21,22の長さ方向L(延在方向)に沿ってそれぞれ形成された溝部25を備えている。溝部25は、例えば、一対の振動腕部21,22の基端側から先端側に至る間に形成されている。
また、一対の振動腕部21,22には、これら振動腕部21,22を幅方向Wに振動させる、互いに絶縁された2系統の励振電極が設けられている。
【0050】
基部20は、一対の振動腕部21,22の基端同士を一体に接続している。また、基部20からは、一対のサイドアーム23,24が延びている。一対のサイドアーム23,24は、平面視でL字状であり、一対の振動腕部21,22を幅方向Wの外側から取り囲んでいる。具体的に、一対のサイドアーム23,24は、幅方向Wの外側に向けて突設された後、長さ方向Lに沿って一対の振動腕部21,22と平行に延在している。
【0051】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、一対の外部電極17a,17bに対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、一対の電極パッド16a,16bを介して、圧電振動片3の一対の振動腕部21,22の励振電極に電流を流すことができる。そして、これら励振電極の相互作用により一対の振動腕部21,22が互いに接近、離間する方向(幅方向W)に所定の共振周波数で振動する。この一対の振動腕部21,22の振動は、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として用いることができる。
【0052】
なお、本実施形態においては、圧電振動片3を用いた圧電振動子1として、セラミックパッケージタイプの表面実装型振動子について説明したが、圧電振動片3を、ガラス材によって形成されるベース基板およびリッド基板が陽極接合によって接合されるガラスパッケージタイプの圧電振動子1に適用することも可能である。
【0053】
また、本実施形態においては、圧電振動片3として、一対の振動腕部21,22に溝部25が形成されているものを用いたが、溝部25が形成されていない圧電振動片を用いてもよい。
【0054】
(圧電振動片の寸法)
図2は、第1実施形態に係る圧電振動片3の寸法関係を説明する平面図である。
図2に示すように、圧電振動片3の一対の振動腕部21,22は、基部20から長さ方向Lに延伸するアーム部21a,22aと、アーム部21a,22aの先端に連設されたヘッド部21b,22bと、を備えている。
【0055】
アーム部21a,22aの外表面上には、図示しない励振電極が形成されている。励振電極は、所定の駆動電圧が印加されたときに、一対の振動腕部21,22を幅方向Wに振動させる。励振電極は、アーム部21a,22aの外表面上において、互いに電気的に絶縁された状態でパターニングされている。
【0056】
ヘッド部21b,22bの外表面上には、図示しない重り金属膜が形成されている。重り金属膜は、一対の振動腕部21,22の先端における質量を増加させ、一対の振動腕部21,22を短縮したときに、共振周波数の上昇を抑制するために設けられている。本実施形態では、重り金属膜は、励振電極と一体で形成されている。
【0057】
ヘッド部21b,22bは、アーム部21a,22aよりも幅広に形成されている。ヘッド部21b,22bは、平面視矩形状に形成されている。ヘッド部21b,22bとアーム部21a,22aとの連設部分には、角部の応力集中を緩和するテーパー部が形成されている。なお、励振電極及び重り金属膜を除けば、ヘッド部21b,22bの厚みは、アーム部21a,22aと等しい。
【0058】
この圧電振動片3は、ヘッド部21b,22bの長さをLh[μm]、ヘッド部21b,22bの幅をWh[μm]、ヘッド部21b,22bの体積をVh[μm]としたとき、下式(1)の関係を満たす。なお、下式(1)の寸法関係は、振動腕部21,22の各々で満たす。後述する式(2)も同様である。
0.13×1012≦Vh(Lh+Wh)≦0.39×1012 …(1)
【0059】
「Lh」とは、上述したテーパー部を含まない、ヘッド部21b,22bの長さ方向Lの寸法である。また、「Vh(Lh+Wh)」とは、ヘッド部21b,22bの振動時の慣性モーメントに起因する関数である。図2のように、ヘッド部21b,22bの中心(重心)に、紙面垂直方向(厚み方向T)に延びる回転中心Oを設定した場合、直方体(ヘッド部21b,22b)の慣性モーメントIは、I=ρ×Vh×(Lh+Wh)/12で求めることができる。ここで、「ρ」は、圧電振動片3の密度であり、圧電振動片3が水晶から形成される場合、ρ=2.65[g/cm]である。つまり、「Lh」、「Wh」、「Vh」以外は、定数になる。
【0060】
図3は、第1実施形態に係る圧電振動片3のVh×(Lh+Wh)とR1(CI値)との関係の解析結果を示すグラフである。
図3に示すように、Vh(Lh+Wh)が0.39×1012[μm]以下であるとき、R1を80[kΩ]以下に低減させることができる。なお、閾値の80[kΩ]とは、一般的な音叉型水晶振動子の仕様に基づく値である。
【0061】
また、図3に示すように、Vh(Lh+Wh)が0.33×1012[μm]以下であるとき、R1をさらに5%程度低減できる。したがって、Vh(Lh+Wh)は、0.39×1012[μm]以下が好ましく、0.33×1012[μm]以下がより好ましい。
【0062】
図4は、第1実施形態に係る圧電振動片3のVh×(Lh+Wh)とF(周波数)との関係の解析結果を示すグラフである。
図4に示すように、Vh(Lh+Wh)が0.13×1012[μm]以上であるとき、Fを40000[Hz]以下に抑えることができる。なお、閾値の40000[Hz]とは、一般的な音叉型水晶振動子の仕様に基づく値である。なお、40000[Hz]を超えると、圧電振動片3の振動を抑制するために、ヘッド部21b,22bに重り金属膜(例えば金)を厚く形成しなければならず、圧電振動片3の製造コストが上昇する。
【0063】
また、図4に示すように、Vh(Lh+Wh)が0.145×1012[μm]以上であるとき、Fをさらに5%程度低減できる。したがって、Vh(Lh+Wh)は、0.13×1012[μm]以上が好ましく、0.145×1012[μm]以上がより好ましい。
【0064】
図2に戻り、さらに、圧電振動片3は、ヘッド部21b,22bの長さをLh[μm]、振動腕部21,22の基部20から先端までの長さをLa[μm]としたとき、下式(2)の関係を満たすとよい。
0.24≦Lh/La≦0.35 …(2)
【0065】
図5は、第1実施形態に係る圧電振動片3のLh/LaとR1(CI値)との関係の解析結果を示すグラフである。なお、図5では、Laを固定し、Lhを変化させている。
図5に示すように、Lh/Laが0.35[%]以下であるとき、R1を80[kΩ]以下に低減させることができる。また、Lh/Laが0.32[%]以下であるとき、R1をさらに5%程度低減できる。したがって、Lh/Laは、0.35[%]以下が好ましく、0.32[%]以下がより好ましい。
【0066】
図6は、第1実施形態に係る圧電振動片3のLh/LaとF(周波数)との関係の解析結果を示すグラフである。なお、図6では、Laを固定し、Lhを変化させている。
図6に示すように、Lh/Laが0.24[%]以上であるとき、Fを40000[Hz]以下に抑えることができる。また、Lh/Laが0.27[%]以上であるとき、Fをさらに5%程度低減できる。したがって、Lh/Laは、0.24[%]以上が好ましく、0.24[%]以上がより好ましい。
【0067】
以上説明したように、本実施形態の圧電振動片3によれば、広幅のヘッド部21b,22bの寸法に制限を設けることで、音叉型の圧電振動片3の小型化に伴う振動効率の低下を抑制することができる。
【0068】
このように、本実施形態の圧電振動片3は、基部20と、基部20から平行に延びる一対の振動腕部21,22と、を備え、振動腕部21,22は、基部20から延びるアーム部21a,22aと、アーム部21a,22aの先端に連設され、アーム部21a,22aより幅が広いヘッド部21b,22bと、を備え、ヘッド部21b,22bの長さをLh[μm]、ヘッド部21b,22bの幅をWh[μm]、ヘッド部21b,22bの体積をVh[μm]としたとき、0.13×1012≦Vh(Lh+Wh)≦0.39×1012の関係を満たす。この構成によれば、ヘッド部21b,22bの振動時の慣性モーメントにおける寸法起因部分を数値限定することで、CI値を低減させながら、周波数の変化を抑えることができる。
【0069】
また、本実施形態の圧電振動片3において、さらに、Vh(Lh+Wh)≦0.33×1012の関係を満たすとよい。この構成によれば、Vh(Lh+Wh)=0.39×1012のときよりも、CI値を5%程度低減できる。
【0070】
また、本実施形態の圧電振動片3において、さらに、0.145×1012≦Vh(Lh+Wh)の関係を満たすとよい。この構成によれば、Vh(Lh+Wh)=0.13×1012のときから、周波数の変化を5%以内に抑えられる。
【0071】
また、本実施形態の圧電振動片3において、振動腕部21,22の基部20から先端までの長さをLa[μm]としたとき、0.24≦Lh/La≦0.35の関係を満たすとよい。この構成によれば、振動腕部21,22の長さに対するヘッド部21b,22bの長さの比率を数値限定することで、CI値を低減させながら、周波数の変化を抑えることができる。
【0072】
また、本実施形態の圧電振動片3において、さらに、Lh/La≦0.32の関係を満たすとよい。この構成によれば、Lh/La=0.35のときによりも、CI値を5%程度低減できる。
【0073】
また、本実施形態の圧電振動片3において、さらに、0.27≦Lh/Laの関係を満たすとよい。この構成によれば、Lh/La=0.24のときから、周波数の変化を5%以内に抑えられる。
【0074】
また、本実施形態の圧電振動片3において、基部20から延び、一対の振動腕部21,22の幅方向両側に配置される一対のサイドアーム23,24を備える。この構成によれば、一対のサイドアーム23,24を備える圧電振動片3の小型化に伴う振動効率の低下を抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態の圧電振動子1は、圧電振動片3と、圧電振動片3を封止したパッケージ2と、を備える。この構成によれば、小型で品質のよい圧電振動子1が得られる。
【0076】
また、本実施形態の発振器100は、圧電振動子1と、圧電振動子1に電気的に接続された集積回路101と、を備える。この構成によれば、小型で品質のよい発振器100が得られる。
【0077】
[第2実施形態]
次に、本開示の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0078】
図7は、第2実施形態に係る圧電振動片3の平面図である。
図7に示すように、第2実施形態の圧電振動片3は、基部20から延び、一対の振動腕部21,22の間に配置されるセンターアーム26を備える点で、上記実施形態と異なる。
【0079】
センターアーム26は、平面視で略長方形であり、幅方向Wにおいて一対の振動腕部21,22の間に配置されている。センターアーム26は、長さ方向Lに沿って一対の振動腕部21,22と平行に延在し、ヘッド部21b,22bの手前まで延びている。
【0080】
この場合、センターアーム26に形成された図示しないマウント電極が、パッケージ2の電極パッドに接触するようにマウントされる。なお、広幅のヘッド部21b,22b等の寸法制限については、第1実施形態と同様である。
【0081】
このように、第2実施形態の圧電振動片3において、基部20から延び、一対の振動腕部21,22の間に配置されるセンターアーム26を備えている。この構成によれば、第1実施形態と同様に、センターアーム26を備える圧電振動片3の小型化に伴う振動効率の低下を抑制することができる。
【0082】
以上、本開示の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらの開示は本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【0083】
例えば、上記実施形態では、上記実施形態では、圧電振動片3として、一対のサイドアーム23,24またはセンターアーム26を備えたタイプを例示したが、一対のサイドアーム23,24またはセンターアーム26が無いものであっても構わない。この場合、基部20をマウント部として、パッケージ2内に圧電振動片3を実装してもよい。
【符号の説明】
【0084】
1…圧電振動子、2…パッケージ、3…圧電振動片、4…キャビティ、10…パッケージ本体、11…封口板、12…第1ベース基板、13…第2ベース基板、13a…実装面、13b…突部、14…シールリング、15…切欠部、16a…電極パッド、16b…電極パッド、17a…外部電極、17b…外部電極、19…凹部、20…基部、21…振動腕部、21a…アーム部、21b…ヘッド部、22…振動腕部、22a…アーム部、22b…ヘッド部、23…サイドアーム、24…サイドアーム、25…溝部、26…センターアーム、100…発振器、101…集積回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7