(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129922
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】制御装置、プリンタ装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/355 20060101AFI20240920BHJP
B41J 2/32 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B41J2/355 P
B41J2/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039320
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(72)【発明者】
【氏名】北村 義雄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】宇野 隆二
(72)【発明者】
【氏名】畠山 耕一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 啓彬
(72)【発明者】
【氏名】仲 遼太
(72)【発明者】
【氏名】久田 崇弘
【テーマコード(参考)】
2C065
2C066
【Fターム(参考)】
2C065AA01
2C065AB01
2C065CZ03
2C065CZ07
2C066AA03
2C066AA08
2C066AB02
2C066AC01
2C066DA01
2C066DA08
2C066DA17
(57)【要約】
【課題】消費電力の低減と印刷品質とを両立させる。
【解決手段】制御装置は、複数のラインで構成され、ラインに含まれる画素ごとの発色状態を示す印刷データを取得する印刷データ取得部と、画素に対応する複数の発熱体で構成されるサーマルヘッドを画素ごとに加熱する電流をサーマルヘッドに供給するヘッド駆動部と、サーマルヘッドに対して感熱紙を相対移動させるモータに、ラインごとにステップ駆動させる駆動電流を供給するモータ駆動部と、印刷データの未印刷のラインのうち判定対象ラインの発色画素数に基づいて、モータが移動させる感熱紙の相対移動速度を制御する速度制御部と、判定対象ラインの発色画素数が所定値を超えるラインである特定ラインである場合に、当該特定ラインが印刷されるまでの間に、感熱紙が発色しない程度にサーマルヘッドを加熱する電流である予備加熱電流をヘッド駆動部に出力させる予備加熱制御部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のラインで構成され、ラインに含まれる画素ごとの発色状態を示す印刷データを取得する印刷データ取得部と、
前記画素に対応する複数の発熱体で構成されるサーマルヘッドを前記画素ごとに加熱する電流を前記サーマルヘッドに供給するヘッド駆動部と、
前記サーマルヘッドに対して感熱紙を相対移動させるモータに、ラインごとにステップ駆動させる駆動電流を供給するモータ駆動部と、
前記印刷データの未印刷のラインのうち判定対象ラインの発色画素数に基づいて、前記モータが移動させる前記感熱紙の相対移動速度を制御する速度制御部と、
前記判定対象ラインの発色画素数が所定値を超えるラインである特定ラインである場合に、当該特定ラインが印刷されるまでの間に、前記感熱紙が発色しない程度に前記サーマルヘッドを加熱する電流である予備加熱電流を前記ヘッド駆動部に出力させる予備加熱制御部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記予備加熱制御部は、前記判定対象ラインの発色画素数に基づいて、前記予備加熱電流を出力するライン数、およびラインあたりの前記予備加熱電流の出力時間のうち少なくとも一つを変更することにより、前記予備加熱電流による前記サーマルヘッドの加熱状態を制御する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記予備加熱制御部は、前記判定対象ラインまでの未印刷ライン数に基づいて、前記予備加熱電流を出力するライン数、およびラインあたりの前記予備加熱電流の出力時間のうち少なくとも一つを変更することにより、前記予備加熱電流による前記サーマルヘッドの加熱状態を制御する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記予備加熱制御部は、ラインあたりの前記予備加熱電流の出力時間を変更することにより、前記予備加熱電流による前記サーマルヘッドの加熱状態を制御する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記予備加熱制御部は、前記予備加熱電流を出力するライン数を変更することにより、前記予備加熱電流による前記サーマルヘッドの加熱状態を制御する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記速度制御部は、
印刷開始時における前記モータの加速度以下の減速度にして、前記相対移動速度を減速させる
請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の制御装置と、
前記サーマルヘッドと、
前記モータと
を備えるプリンタ装置。
【請求項8】
複数のラインで構成され、ラインに含まれる画素ごとの発色状態を示す印刷データを取得することと、
前記画素に対応する複数の発熱体で構成されるサーマルヘッドを前記画素ごとに加熱する電流を前記サーマルヘッドに供給することと、
前記サーマルヘッドに対して感熱紙を相対移動させるモータに、ラインごとにステップ駆動させる駆動電流を供給することと、
前記印刷データの未印刷のラインのうち判定対象ラインの発色画素数に基づいて、前記モータが移動させる前記感熱紙の相対移動速度を制御することと、
前記判定対象ラインの発色画素数が所定値を超えるラインである特定ラインである場合に、当該特定ラインが印刷されるまでの間に、前記感熱紙が発色しない程度に前記サーマルヘッドを加熱する電流である予備加熱電流を出力することと、
を有する制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、プリンタ装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サーマルヘッドを備えたラインプリンタ装置が知られている。ラインプリンタ装置は、1ラインの印字が終了するごとに感熱紙を1ライン移動させる。また、ラインプリンタ装置は、感熱紙に印字される1ラインあたりのドット数(発色画素数)の増加により消費電力が増加する。発色画素数が所定値以上の場合、発色のための消費電力が、ラインプリンタ装置が搭載している電源の供給能力を上回る場合がある。このような場合には、1ラインのドットを複数に時分割して印刷する時分割印刷が行われている。時分割印刷を行うと紙送り速度が大きく変化することで、印刷品質が低下してしまう場合がある。
このような印刷品質の低下を抑止するため、印刷動作を行わない場合にもサーマルヘッドに電流を流してサーマルヘッドの温度低下を低減することで、発色させる際の瞬間的な消費電力の増加を抑え、時分割印刷の時間を短縮することにより、紙送り速度の変動を少なくする技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術によると、印刷動作を行わない場合にもサーマルヘッドに電流を流すことから消費電力が増加してしまうという課題があった。また、消費電力を低減するため、サーマルヘッドに流す電流を少なくすると紙送り速度の変動が大きくなり、印刷品質が低下してしまうという課題があった。
すなわち、特許文献1に記載の技術によると、消費電力の低減と印刷品質とを両立させることが困難であるという課題があった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、消費電力の低減と印刷品質とを両立させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る制御装置は、複数のラインで構成され、ラインに含まれる画素ごとの発色状態を示す印刷データを取得する印刷データ取得部と、前記画素に対応する複数の発熱体で構成されるサーマルヘッドを前記画素ごとに加熱する電流を前記サーマルヘッドに供給するヘッド駆動部と、前記サーマルヘッドに対して感熱紙を相対移動させるモータに、ラインごとにステップ駆動させる駆動電流を供給するモータ駆動部と、
前記印刷データの未印刷のラインのうち判定対象ラインの発色画素数に基づいて、前記モータが移動させる前記感熱紙の相対移動速度を制御する速度制御部と、前記判定対象ラインの発色画素数が所定値を超えるラインである特定ラインである場合に、当該特定ラインが印刷されるまでの間に、前記感熱紙が発色しない程度に前記サーマルヘッドを加熱する電流である予備加熱電流を前記ヘッド駆動部に出力させる予備加熱制御部と、を備える。
【0007】
本発明の一態様に係る制御装置の前記予備加熱制御部は、前記判定対象ラインの発色画素数に基づいて、前記予備加熱電流を出力するライン数、およびラインあたりの前記予備加熱電流の出力時間のうち少なくとも一つを変更することにより、前記予備加熱電流による前記サーマルヘッドの加熱状態を制御する。
【0008】
本発明の一態様に係る制御装置の前記予備加熱制御部は、前記判定対象ラインまでの未印刷ライン数に基づいて、前記予備加熱電流を出力するライン数、およびラインあたりの前記予備加熱電流の出力時間のうち少なくとも一つを変更することにより、前記予備加熱電流による前記サーマルヘッドの加熱状態を制御する。
【0009】
本発明の一態様に係る制御装置の前記予備加熱制御部は、ラインあたりの前記予備加熱電流の出力時間を変更することにより、前記予備加熱電流による前記サーマルヘッドの加熱状態を制御する。
【0010】
本発明の一態様に係る制御装置の前記予備加熱制御部は、前記予備加熱電流を出力するライン数を変更することにより、前記予備加熱電流による前記サーマルヘッドの加熱状態を制御する。
【0011】
本発明の一態様に係る制御装置の前記速度制御部は、印刷開始時における前記モータの加速度以下の減速度にして、前記相対移動速度を減速させる。
【0012】
本発明の一態様に係るプリンタ装置は、上述の制御装置と、前記サーマルヘッドと、前記モータとを備える。
【0013】
本発明の一態様に係る制御方法は、複数のラインで構成され、ラインに含まれる画素ごとの発色状態を示す印刷データを取得することと、前記画素に対応する複数の発熱体で構成されるサーマルヘッドを前記画素ごとに加熱する電流を前記サーマルヘッドに供給することと、前記サーマルヘッドに対して感熱紙を相対移動させるモータに、ラインごとにステップ駆動させる駆動電流を供給することと、前記印刷データの未印刷のラインのうち判定対象ラインの発色画素数に基づいて、前記モータが移動させる前記感熱紙の相対移動速度を制御することと、前記判定対象ラインの発色画素数が所定値を超えるラインである特定ラインである場合に、当該特定ラインが印刷されるまでの間に、前記感熱紙が発色しない程度に前記サーマルヘッドを加熱する電流である予備加熱電流を出力することと、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、消費電力の低減と印刷品質とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態のプリンタ装置の模式的な断面を示す図である。
【
図2】本実施形態の印刷データの一例を示す図である。
【
図3】本実施形態の印刷データと印刷結果との対応関係を示す図である。
【
図4】本実施形態の制御部の機能構成の一例を示す図である。
【
図5】本実施形態の印刷データ取得部が取得する印刷データの一例を示す図である。
【
図6】本実施形態のモータ駆動計画の一例を示す図である。
【
図7】発色画素数が所定値を超えるラインが存在する印刷データの一例を示す図である。
【
図8】先読み制御を行うモータ駆動計画の一例を示す図である。
【
図9】先読み予備加熱制御を行うモータ駆動計画の一例を示す図である。
【
図10】本実施形態の制御部の動作の流れの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0017】
図1は、本実施形態のプリンタ装置1の模式的な断面を示す図である。プリンタ装置1は、サーマルプリンタ機構10と、制御部20と、用紙収納部30と、用紙排出部40とを備える。
用紙収納部30は、感熱紙310を収納する。本実施形態の感熱紙310は、例えば、ロール紙である。感熱紙310は、発色閾値th1以上の熱を与えると、熱が与えられた部分が発色する。
用紙排出部40は、サーマルプリンタ機構10によって印刷された用紙(つまり、印刷済みの感熱紙310)をプリンタ装置1の外に排出する。
サーマルプリンタ機構10は、モータ110と、サーマルヘッド120と、プラテンローラー130とを備える。
【0018】
モータ110は、制御部20の制御に基づいて、プラテンローラー130を回転駆動する。プラテンローラー130は、感熱紙310の発色面をサーマルヘッド120に押し付けつつ、モータ110の回転に伴って回転することにより、感熱紙310を移動させる。この結果、感熱紙310は、サーマルヘッド120に対して相対移動する。
すなわち、モータ110は、プラテンローラー130を介して、感熱紙310をサーマルヘッド120に対して相対移動させる。以下の説明において、モータ110が感熱紙310をサーマルヘッド120に対して相対移動させることを、紙送りともいう。
【0019】
ここで、相対移動とは、感熱紙310とサーマルヘッド120との間の相対的な移動を意味する。すなわち、相対移動には、サーマルヘッド120が固定されており感熱紙310が移動する場合と、感熱紙310が固定されておりサーマルヘッド120が移動する場合と、感熱紙310とサーマルヘッド120とがいずれも移動する場合とが含まれる。
なお、本実施形態においては、サーマルヘッド120が固定されており、感熱紙310がサーマルヘッド120に対して移動するものとして説明する。
【0020】
サーマルヘッド120は、複数の発熱体Hが1ラインに並べられた、いわゆるライン型サーマルヘッドである。サーマルヘッド120は、制御部20の制御に基づいて、プラテンローラー130に押し付けられた感熱紙310に対して熱を与えることにより、感熱紙310の所望の位置を発色させる。
【0021】
制御部20は、コンピュータ装置を備えている。制御部20は、記憶部(不図示)に記憶されているプログラムと、記憶部(不図示)に記憶された印刷データ、または外部装置(不図示)から与えられる印刷データに基づいて、モータ110およびサーマルヘッド120を制御する。印刷データの一例について
図2を参照して説明する。
【0022】
図2は、本実施形態の印刷データの一例を示す図である。同図(A)は、印刷対象の文字あるいは図形(以下、単に印刷対象ともいう。)の一例を示す図である。この一例では、印刷対象は”E”の文字である。
【0023】
同図(B)は、印刷データの一例を示す図である。印刷データは、画素PX方向と、ラインLN方向との行列(マトリクス)で構成される。この一例では、各画素PXが黒白の2値によって印刷対象を表現する2値化データである。
なお、印刷データが2値化データであることは一例である。印刷データは、各画素PXが黒と白との間の複数段階で階調表現された多値化データであってもかまわない。
【0024】
同図(B)の一例では、印刷データは、印刷対象の文字”E”を示している。文字”E”を示す画素PXのうち、感熱紙310を黒く発色させる部分を、黒画素PX-BKともいう。また、文字”E”を示す画素PXのうち、感熱紙310を発色させない部分を、白画素PX-WHともいう。すなわち、本実施形態のように2値化された印刷データにおいては、黒画素PX-BKと白画素PX-WHとによって、印刷対象を表現する。
以下の説明において必要な場合には、図中縦方向のラインLNの番号(ラインLN1~ラインLNn;nは自然数)と、図中横方向の画素PXの番号(画素PX1~画素PXm;mは自然数)とによって、印刷データの座標を示す。
【0025】
同図(C)は、本実施形態のサーマルヘッド120の発熱体H部分の構成の一例を示す図である。サーマルヘッド120は、画素PXに対応した複数の発熱体Hで構成される。同図に示す一例の場合、サーマルヘッド120は、1ライン分の画素PX1~画素PXmに対応した、発熱体H1~Hmを備えている。
【0026】
図3は、本実施形態の印刷データと印刷結果との対応関係を示す図である。同図(A)は、
図2(B)に示した印刷データと同様の印刷データである。同図(B)は、当該印刷データに基づいて感熱紙310に印刷された結果の一例を示す図である。
上述したように、サーマルヘッド120は、印刷データの画素PXに対応した複数の発熱体Hを備えている。サーマルヘッド120は、印刷データの画素PXのうち、黒画素PX-BKに対応する発熱体Hを発熱させる。サーマルヘッド120は、発熱体Hの発熱によって、黒画素PX-BKに対応する感熱紙310上の印刷目標位置に発色閾値th1以上の熱を与えることにより、当該印刷目標位置の感熱紙310を発色させる。
以下の説明において、黒画素PX-BKに対応する発熱体Hを発熱させて、印刷目標位置の感熱紙310を発色させることを、「サーマルヘッド120によって印刷を行う」あるいは単に「印刷を行う」ともいう。
【0027】
本実施形態のサーマルヘッド120は、いわゆるライン型サーマルヘッドであり、ラインLNごとに印刷を行う。同図に示す一例では、ラインLN1とラインLN2との2ラインLN分が印刷されている。以下の説明において、印刷データに含まれる複数のラインLNのうち、感熱紙310に印刷されたラインLNを「印刷済みライン」と、感熱紙310に印刷されていない(これから印刷される予定の)ラインLNを「未印刷ライン」ともいう。
これらサーマルヘッド120による印刷の制御を行う制御部20の詳細について、
図4を参照して説明する。
【0028】
図4は、本実施形態の制御部20の機能構成の一例を示す図である。制御部20は、印刷データ取得部210と、モータ駆動計画生成部220と、モータ駆動部230と、予備加熱制御部240と、ヘッド駆動部250とを備える。
【0029】
印刷データ取得部210は、記憶部(不図示)あるいは外部装置(不図示)から印刷データを取得する。上述したように、印刷データとは、複数のラインLNで構成され、ラインLNに含まれる画素PXごとの発色状態を示すデータである。印刷データの一例を
図5に示す。
【0030】
図5は、本実施形態の印刷データ取得部210が取得する印刷データの一例を示す図である。上述したように印刷データは、画素PX方向と、ラインLN方向との行列(マトリクス)で構成される。この一例では、印刷データは、各画素PXが黒白の2値によって印刷対象を表現する2値化データである。印刷データは、黒画素PX-BKと白画素PX-WHとによって、印刷対象を表現する。
【0031】
すなわち、印刷データ取得部210は、複数のラインLNで構成され、ラインLNに含まれる画素PXごとの発色状態を示す印刷データを取得する。
【0032】
図4に戻り、モータ駆動計画生成部220は、印刷データ取得部210が取得した印刷データに基づいて、モータ110およびサーマルヘッド120を駆動する計画の情報(すなわち、モータ駆動計画)を生成する。モータ駆動計画の一例について、
図6を参照して説明する。
【0033】
図6は、本実施形態のモータ駆動計画の一例を示す図である。同図の横軸は、モータ110のラインステップ数を示す。横軸の右方向が、ステップ駆動の進行方向(将来方向)である。ラインステップ数とは、モータ110によって移動された感熱紙310のラインLNの数である。同図の縦軸は、ステップ駆動時間と、ヘッド駆動時間とを示す。縦軸の上方向が、ステップ駆動時間の増加方向であり、ヘッド駆動時間の増加方向である。
【0034】
図6には、
図5に示した印刷データのうち、ある画素PXについてのサーマルヘッド120の駆動の状態を模式的に示している。同図の一例では、サーマルヘッド120の発熱体Hのうち、画素PX2を印刷する発熱体H(つまり、
図2に示す発熱体H2)の駆動の状態を示す。
図5の画素PX2に着目すると、同図の最も上のラインLNから順に、白画素PX-WH、黒画素PX-BK、黒画素PX-BK、黒画素PX-BK、白画素PX-WH…である。
図6には、
図5の画素PX2を印刷する発熱体H2の駆動の状態を示している。すなわち、同図は、最も左のラインLNから順に、白画素PX-WH、黒画素PX-BK、黒画素PX-BK、黒画素PX-BK、白画素PX-WH…を印刷する様子を示している。
【0035】
図4に戻り、モータ駆動計画生成部220は、モータ駆動計画を生成することにより、モータ110が移動させる感熱紙310の相対移動速度を制御する。すなわち、速度制御部220は、感熱紙310の移動速度を制御する速度制御部として機能する。
モータ駆動部230は、モータ駆動計画生成部220が生成するモータ駆動計画に基づいて、ラインLNごとにステップ駆動させる駆動電流を、モータ110に供給する。
ヘッド駆動部250は、サーマルヘッド120を画素PXごとに加熱する電流(つまり、ヘッド駆動電流)をサーマルヘッド120に供給する。
【0036】
上述したように、本実施形態のプリンタ装置1は、いわゆるラインプリンタである。プリンタ装置1は、印刷データのラインLNごとに、感熱紙310を1ライン移動させた後に感熱紙310の移動を停止させて、サーマルヘッド120を駆動して感熱紙310を発色させる動作を繰り返すことにより、複数のラインLNを順次印刷する。
【0037】
ここで、サーマルヘッド120の発熱体Hの駆動時間について説明する。発熱体Hは、駆動電流が供給されることにより発熱する。サーマルヘッド120の発熱体Hの駆動時間とは、発熱体Hに供給する駆動電流の供給継続時間をいう。サーマルヘッド120の発熱体Hの駆動時間のことを、ヘッド駆動時間ともいう。ヘッド駆動時間の詳細について、
図6を参照して説明する。
なお、以下の説明において、モータ駆動計画生成部220がモータ駆動計画を生成することにより、モータ110やサーマルヘッド120の駆動状態を制御することを、単に、モータ駆動計画生成部220が制御する、ともいう。
【0038】
[ステップ駆動時間について]
ステップ駆動時間とは、1ラインを印刷する際に、モータ110が感熱紙310の移動を開始してから停止させるまでの感熱紙310の移動時間T1と、感熱紙310を停止させてからサーマルヘッド120の駆動を開始するまでの待ち時間T2と、ヘッド駆動時間T3と、サーマルヘッド120の駆動を停止した後、次のラインLNを印刷するために感熱紙310の移動を開始するまでの待ち時間T4と、の合計時間である。
感熱紙310の移動(移動時間T1)、ヘッド駆動待ち(待ち時間T2)、ヘッド駆動(ヘッド駆動時間T3)、および感熱紙310の移動開始待ち(待ち時間T4)を繰り返すことにより、感熱紙310を間欠移動させることを、ステップ駆動ともいう。
【0039】
ステップ駆動時間は、モータ駆動計画生成部220が生成するモータ駆動計画が示すモータ110の回転数によって制御される。モータ駆動計画は、印刷の開始時にモータ110の回転数を0(ゼロ)から所定の加速度で上昇させる。この所定の加速度を、印刷開始時紙送り加速度a1ともいう。この結果、感熱紙310の相対移動速度は0(ゼロ)から上昇する。
つまり、モータ駆動計画生成部220は、印刷の開始時にステップ駆動時間を無限大(速度ゼロ)から所定の傾きで減少させる。この所定の傾きは、上述した印刷開始時紙送り加速度a1の逆数に相当する。
【0040】
ここで、ステップ駆動の各時間(移動時間T1、待ち時間T2、ヘッド駆動時間T3および待ち時間T4)は、いずれも極めて短時間である。このため、連続的にステップ駆動されている感熱紙310は、ある平均的な速度で移動している、ともいえる。この連続ステップ駆動中の感熱紙310の平均的な移動速度を、定常紙送り速度SP1ともいう。ここで、定常紙送り速度SP1の逆数は、定常紙送り状態でのステップ駆動時間であるともいえる。定常紙送り状態でのステップ駆動時間を定常ステップ駆動時間ともいう。すなわち、定常ステップ駆動時間は、定常紙送り速度SP1の逆数である。
【0041】
なお、
図6の縦軸において、上方向がステップ駆動時間の増加方向であり、紙送り速度の減少方向である。つまり、
図6においてステップ駆動時間のグラフが下がるほど、紙送り速度が増加していることを示す。
【0042】
同図に示す一例の場合、印刷開始後、時間の経過とともに、ステップ駆動時間を所定の傾き(印刷開始時紙送り加速度a1に相当する傾き)で減少させ、定常速度移行ラインLSにおいて、定常紙送り速度SP1(つまり、定常ステップ駆動時間)に達する。
【0043】
[ヘッド駆動時間について]
ヘッド駆動時間T3とは、黒画素PX-BKを印刷する場合に、感熱紙310の発色閾値を超える熱量を感熱紙310に与えるための時間である。以下の説明において、ヘッド駆動時間T3のことを、黒画素駆動時間TBk1ともいう。
ヘッド駆動時間T3は、感熱紙310の発色閾値th1を超える値に設定される。ヘッド駆動時間T3は、ステップ駆動時間の一部であるため、上述したステップ駆動時間を超えることはない。すなわち、ステップ駆動時間は、ヘッド駆動時間の上限値(ヘッド駆動時間上限値th2)であるともいえる。
【0044】
[サーマルヘッドの時分割駆動について]
プリンタ装置1のようなラインプリンタの場合、ラインLNごとに印刷が行われるため、1ラインあたりの発色画素数PN(つまり、黒画素PX-BKの数)によって、瞬間的な消費電力が変化する。例えば、1ラインあたりの発色画素数PNが多いほど、瞬間的な消費電力は増加する。
【0045】
図7は、発色画素数PNが所定値を超えるラインLNが存在する印刷データの一例を示す図である。同図に示す一例では、ラインL150の発色画素数PNが所定値を超えている。
サーマルヘッド120の発熱体Hの駆動には、プリンタ装置1の電源回路(不図示)から供給される電力が使用される。一般的に電源回路は、供給可能な最大電力を上回る電力を供給することはできない。プリンタ装置1の電源回路にも供給可能な最大電力が存在する。
発色画素数PNが比較的多いラインLNを印刷する場合に、黒画素PX-BKに対応するすべての発熱体Hを同時に駆動すると、サーマルヘッド120での瞬間的な消費電力が電源回路の供給可能最大電力を超えてしまうことがある。サーマルヘッド120での瞬間的な消費電力が電源回路の供給可能最大電力を超えると、発熱体Hに供給される電力が不足し、画素PXによっては発色閾値th1を超えることができず、発色ムラなどの印刷品質の低下が生じることがある。
【0046】
本実施形態のプリンタ装置1は、印刷品質が低下することを抑止するため、1ラインあたりの発色画素数PNが所定値を超えるラインLNについては、サーマルヘッド120の時分割駆動をする。ここで、サーマルヘッド120の時分割駆動とは、サーマルヘッド120が備える発熱体Hを複数のブロックに分割し、ブロックごとに駆動タイミングを分けて発熱体Hを駆動することをいう。一方、黒画素PX-BKに対応するすべての発熱体Hを同時に駆動することを、単に「同時駆動」ともいう。
【0047】
以下の説明において、印刷データのラインLNのうち、時分割駆動されるラインLNのことを「時分割駆動ラインLD」ともいう。また、印刷データのラインLNのうち、同時駆動されるラインLNのことを「同時駆動ライン」ともいう。なお、プリンタ装置1は、時分割駆動しない通常の場合には、同時駆動を行う。このため以下の説明において、プリンタ装置1が同時駆動する場合には、同時駆動であることの記載を省略する場合がある。
【0048】
本実施形態のプリンタ装置1は、1ラインあたりの発色画素数PNが所定値(発色画素数上限値th3)を超えるラインLNについて、サーマルヘッド120を時分割駆動する。プリンタ装置1は、発色画素数上限値th3を判定閾値として、サーマルヘッド120を時分割駆動するか同時駆動するかを判定する。
【0049】
図7に示す一例では、プリンタ装置1は、発色画素数PNが所定値を超えているラインL150について、時分割駆動すると判定する。
なお、上述した
図5に示す一例の場合、ラインL50は、1ラインあたりの発色画素数PNが所定値(発色画素数上限値th3)を超えていない。この場合には、プリンタ装置1は、ラインL50について、サーマルヘッド120を同時駆動すると判定する。
【0050】
[先読み制御について]
時分割駆動を行うラインLNは、同時駆動を行うラインLNに比べて、ステップ駆動時間がより長くなる。これは、ステップ駆動を構成する各時間、すなわち感熱紙310の移動(移動時間T1)、ヘッド駆動待ち(待ち時間T2)、ヘッド駆動(ヘッド駆動時間T3)、および感熱紙310の移動開始待ち(待ち時間T4)のうち、少なくともヘッド駆動時間T3が、同時駆動に比べて長くなるためである。したがって、印刷データに、同時駆動を行うラインLNと、時分割駆動を行うラインLNとが混在していると、感熱紙310の相対移動速度が変化することになる。感熱紙310の相対移動速度の変化(つまり、感熱紙310の移動の減速度および加速度)が大きくなると、印刷品質の低下を招く。感熱紙310の移動の減速度および加速度は、より小さい方が好ましい。
【0051】
プリンタ装置1は、未印字データのなかに発色画素数PNが所定値を超えているラインLNがある場合に、当該ラインLNが印刷されるよりも複数ステップ手前のタイミングから、感熱紙310の移動速度を徐々に減速する。プリンタ装置1は、感熱紙310の移動の減速度および加速度をより小さくすることで、印刷品質の低下を抑止する。このラインLNが印刷されるよりも複数ステップ手前のタイミングから、感熱紙310の移動速度を徐々に変化させる制御のことを「先読み制御」ともいう。
【0052】
図8は、先読み制御を行うモータ駆動計画の一例を示す図である。同図は、
図7で示した印刷データを先読み制御によって印刷する場合を示している。
図7に示す一例の場合、ラインL150が、発色画素数PNが所定値を超えているラインLNである。プリンタ装置1は、ラインL150について、2ブロックに分けて、時分割駆動する。すなわち、ラインL150は、時分割駆動ラインLDである。この一例の場合、プリンタ装置1は、1ブロック目の黒画素駆動時間TBk1と、2ブロック目の黒画素駆動時間TBk2とに分けて、時分割駆動ラインLD(この一例では、ラインL150)を印刷する。この結果、時分割駆動ラインLDのヘッド駆動時間T3は、1ブロック目の黒画素駆動時間TBk1と2ブロック目の黒画素駆動時間TBk2との合計時間になる。
【0053】
この場合、時分割駆動ラインLDのヘッド駆動時間T3は、定常紙送り速度SP1におけるステップ駆動時間よりも長い。つまり、時分割駆動ラインLDのヘッド駆動時間T3は、定常紙送り速度SP1におけるヘッド駆動時間上限値th2を超えている。したがって、プリンタ装置1は、時分割駆動ラインLDのヘッド駆動時間T3が、時分割駆動ラインLDにおけるステップ駆動時間内に収まるように、感熱紙310の移動速度を徐々に減速させる。
【0054】
この一例の場合、プリンタ装置1は、ラインL150が印刷されるよりも30ステップ手前のラインL120を印刷するタイミングで、ラインL150を時分割駆動すると判定して、感熱紙310の移動速度を減速させている。
この結果、感熱紙310の移動速度は、ラインL150において減速後紙送り速度SP2になる。ラインL150のヘッド駆動時間T3は、減速後紙送り速度SP2でのヘッド駆動時間上限値th2以下に収まっている。
【0055】
同図において、ステップ駆動時間のグラフの傾きa2が感熱紙310の減速度を示す。プリンタ装置1は、判定基準ラインLAと判定対象ラインLBとの間において、感熱紙310の減速度を一定に保ちつつ、感熱紙310の移動速度を減速させる。
【0056】
ここで、判定基準ラインLAとは、印刷データのいずれかのラインLNである。一例として、判定基準ラインLAとは、印刷データの未印刷のラインLNのうち、今回のステップで印刷されるラインLNである。判定対象ラインLBとは、印刷データの未印刷のラインLNのうち、判定基準ラインLAよりも先のステップで印刷されるラインLNである。判定基準ラインLAと、判定対象ラインLBとの間のライン数の差を、先読みライン数LPnともいう。
同図の一例では、ラインL120が判定基準ラインLAであり、ラインL150が判定対象ラインLBである。また同図の一例において、先読みライン数LPnは、ラインL150とラインL120とのライン数の差、すなわち、30ラインである。
【0057】
すなわち、プリンタ装置1は、印刷データの未印刷のラインLNのうち、判定基準ラインLAから、先読みライン数LPnだけ先に(つまり、将来に)印刷されるラインLNを判定対象ラインLBとして、判定対象ラインLBの発色画素数PNが所定値を超えているか否かを判定する。
同図の一例では、プリンタ装置1は、30ライン先に(つまり、将来に)印刷されるラインLNの発色画素数PNが所定値を超えているか否かを判定する。
【0058】
[先読み予備加熱制御について]
次に、先読み予備加熱制御について説明する。先読み予備加熱制御とは、上述した先読み制御に加え、時分割駆動ラインLDを印刷する駆動ステップよりも手前の駆動ステップにおいて、サーマルヘッド120の予備加熱を行う制御である。サーマルヘッド120の予備加熱とは、時分割駆動ラインLDが印刷されるまでの間に、感熱紙310が発色しない程度にサーマルヘッド120を加熱する電流である予備加熱電流を、サーマルヘッド120に出力する制御である。
【0059】
図9は、先読み予備加熱制御を行うモータ駆動計画の一例を示す図である。同図は、
図7で示した印刷データを先読み制御によって印刷する場合を示している。
図7に示す一例の場合、ラインL150が、発色画素数PNが所定値を超えているラインLNである。プリンタ装置1は、ラインL150について、2ブロックに分けて、時分割駆動する。この一例の場合、プリンタ装置1は、1ブロック目の黒画素駆動時間TBk1と、2ブロック目の黒画素駆動時間TBk3とに分けて、ラインL150を印刷する。この結果、ラインL150のヘッド駆動時間T3は、1ブロック目の黒画素駆動時間TBk1と2ブロック目の黒画素駆動時間TBk3との合計時間になる。
【0060】
ここで、プリンタ装置1は、時分割駆動ラインLDよりも手前の駆動ステップにおいて、黒画素駆動時間TBk1に加え、予備加熱時間TPh1の予備加熱電流をサーマルヘッド120に供給する。なお、同図に示す一例において、プリンタ装置1は、白画素PX-WH(例えば、ラインL122)においても、予備加熱時間TPh1の予備加熱電流をサーマルヘッド120に供給している。
予備加熱時間TPh1は、感熱紙310の発色閾値th1よりも小さい。このため、白画素PX-WH(例えば、ラインL122)において予備加熱時間TPh1の予備加熱電流をサーマルヘッド120に流しても、感熱紙310は発色しない。
【0061】
サーマルヘッド120は、予備加熱電流によって、感熱紙310が発色しない程度に加熱される。印刷対象のラインLNが時分割駆動ラインLDに達するまでの間に、サーマルヘッド120が予備加熱されているため、時分割駆動ラインLDにおいて感熱紙310を発色させるためのヘッド駆動時間T3を、予備加熱をしない場合に比べて短くすることができる。すなわち、予備加熱をすることにより、時分割駆動ラインLDにおける1ブロック目の黒画素駆動時間TBk1と2ブロック目の黒画素駆動時間TBk3の合計時間を、予備加熱をしない場合の1ブロック目の黒画素駆動時間TBk1と2ブロック目の黒画素駆動時間TBk2との合計時間よりも短くすることができる。
【0062】
上述した先読み予備加熱制御により、時分割駆動ラインLDにおける感熱紙310の移動速度を、予備加熱しない場合に比べて速くすることができる。先読み予備加熱制御をした場合の、時分割駆動ラインLDにおける感熱紙310の移動速度である減速後紙送り速度SP3は、上述した減速後紙送り速度SP2よりも速い。
すなわち、感熱紙310の移動速度は、時分割駆動ラインLD(ラインL150)において減速後紙送り速度SP3になる。時分割駆動ラインLDのヘッド駆動時間T3は、減速後紙送り速度SP3でのヘッド駆動時間上限値th2以下に収まっている。
【0063】
この結果、ステップ駆動時間のグラフの傾きa3(つまり、感熱紙310の減速度)を、上述した傾きa2(つまり、予備加熱しない場合の感熱紙310の減速度)よりも小さくすることができる。すなわち、プリンタ装置1は、先読み予備加熱制御によって、感熱紙310の減速度をより小さくすることができる。
このように、プリンタ装置1は、先読み予備加熱制御をすることによって、感熱紙310の速度変化をより小さくすることができるため、時分割駆動を行う場合の印刷品質の低下を抑制することができる。
【0064】
なお、上述した
図6、
図8および
図9に示した、ラインステップ数に対するステップ駆動時間およびヘッド駆動時間のグラフのプロファイルのことを、モータ速度計画ともいう。本実施形態の制御部20は、先読み予備加熱制御によってモータ速度計画を更新しながら、モータ110とサーマルヘッド120とを制御することにより印刷を行う。制御部20の動作の流れについて説明する。
【0065】
[制御部の動作の流れ]
図10は、本実施形態の制御部20の動作の流れの一例を示す図である。同図を参照して、上述した先読み予備加熱制御を行う場合の制御部20の動作の流れについて説明する。
【0066】
(ステップS110)印刷データ取得部210は、印刷データを取得する。この一例では、印刷データ取得部210は、
図5に示した印刷データ、あるいは、
図7に示した印刷データを取得する。
図5は時分割駆動のラインLNを含まない印刷データの一例であり、
図7は時分割駆動のラインLNを含む印刷データの一例である。
【0067】
(ステップS120)モータ駆動計画生成部220は、ステップS110で取得された印刷データのうち未印刷のラインLNについて、1ラインあたりの発色画素数PNを取得する。
より具体的には、モータ駆動計画生成部220は、印刷データの未印刷のラインLNのうち、現在の駆動ステップである判定基準ラインLAよりも先読みライン数LPnだけ先にある判定対象ラインLBの発色画素数PNを取得する。
【0068】
(ステップS130)モータ駆動計画生成部220は、判定対象ラインLBが時分割駆動ラインLDであるか否かを判定する。上述したように、時分割駆動ラインLDとは、ラインあたりの発色画素数PNが所定値を超えるラインLNである。モータ駆動計画生成部220は、判定対象ラインLBの発色画素数PNが所定値を超えていないと判定した場合、つまり、判定対象ラインLBが同時駆動ラインであると判定した場合(ステップS130;NO)には、処理をステップS150に進める。モータ駆動計画生成部220は、判定対象ラインLBの発色画素数PNが所定値を超えると判定した場合(ステップS130;YES)には、処理をステップS140に進める。
【0069】
(ステップS140)予備加熱制御部240は、サーマルヘッド120の予備加熱条件を算出する。
より具体的には、予備加熱制御部240は、判定対象ラインLBの発色画素数PNが所定値を超えるラインLNである時分割駆動ラインLD(特定ライン)である場合に、当該時分割駆動ラインLD(特定ライン)が印刷されるまでの間に、予備加熱電流をヘッド駆動部250に出力させる。
すなわち、予備加熱制御部240は、先読み予備加熱制御によって、予備加熱条件を算出する。予備加熱制御部240による予備加熱条件の算出の一例について説明する。
【0070】
(1)予備加熱制御部240は、判定対象ラインLBの発色画素数PNに基づいて、予備加熱電流を出力するライン数、およびラインLNあたりの予備加熱電流の出力時間のうち少なくとも一つを変更することにより、予備加熱電流によるサーマルヘッド120の加熱状態を制御する。
【0071】
上述したように、予備加熱制御部240は、判定対象ラインLBの発色画素数PNが所定値(発色画素数上限値th3)を超える場合に、予備加熱電流を出力するライン数、およびラインLNあたりの予備加熱電流の出力時間を、それぞれ既定値にして、予備加熱条件を算出する。
ここで、例えば、発色画素数PNの数に応じて、サーマルヘッド120の時分割駆動の分割数を、2分割や3分割に変更することもできる。この場合、予備加熱制御部240は、2分割の時分割駆動の場合の予備加熱電流を出力するライン数やラインLNあたりの予備加熱電流の出力時間と、3分割の時分割駆動の場合の予備加熱電流を出力するライン数やラインLNあたりの予備加熱電流の出力時間とを互いに異ならせて、予備加熱条件を算出してもよい。
【0072】
すなわち、予備加熱制御部240は、ラインLNあたりの予備加熱電流の出力時間を変更することにより、予備加熱電流によるサーマルヘッド120の加熱状態を制御してもよい。
【0073】
また、予備加熱電流を出力するライン数を変更することにより、予備加熱電流によるサーマルヘッド120の加熱状態を制御してもよい。
【0074】
このように構成されたプリンタ装置1によれば、時分割駆動の分割数に応じた予備加熱を行うことができるため、時分割駆動の分割数が変化した場合でも、印刷品質の低下を抑制することができる。
【0075】
(2)予備加熱制御部240は、判定対象ラインLBまでの未印刷ライン数に基づいて、予備加熱電流を出力するライン数、およびラインLNあたりの予備加熱電流の出力時間のうち少なくとも一つを変更することにより、予備加熱電流によるサーマルヘッド120の加熱状態を制御する。
【0076】
一例として、予備加熱制御部240は、先読みライン数LPnを可変にした先読み予備加熱制御を行うことができる。先読みライン数LPnの変更によって、時分割駆動ラインLDによる紙送り速度の傾きa3を変化させることができる。例えば、先読みライン数LPnを少なくすると、時分割駆動ラインLDによる紙送り速度の傾きa3が大きくなる。この場合、比較的高速な定常紙送り速度SP1でステップ駆動できる時間が長くなり、印刷の所要時間を少なくすることができる。また、先読みライン数LPnを多くすると、時分割駆動ラインLDによる紙送り速度の傾きa3が小さくなる。この場合、時分割駆動ラインLDによる紙送り速度の減速度や加速度が小さくなり、速度変化による印刷品質の低下を抑止することができる。
このように、先読みライン数LPnを可変にした先読み予備加熱制御を行う場合には、予備加熱制御部240は、判定対象ラインLBまでの未印刷ライン数に基づいて、予備加熱電流を出力するライン数、およびラインLNあたりの予備加熱電流の出力時間のうち少なくとも一つを、基準値から変更することで、印刷所要時間を優先させること、または印刷品質を優先させることを選択することができる。
また、予備加熱制御部240は、印刷所要時間を優先させることと、印刷品質を優先させることとのいずれを選択するかを、プリンタ装置1のユーザの設定に基づいて変化させてもよい。
【0077】
予備加熱制御部240は、算出した予備加熱条件をモータ駆動計画生成部220に出力する。
【0078】
(ステップS150)モータ駆動計画生成部220は、モータ制御計画を更新する。より具体的には、モータ駆動計画生成部220は、予備加熱制御部240が予備加熱条件を算出した場合には、算出された予備加熱条件に基づいて、モータ制御計画を更新する。この結果、モータ制御計画は、
図6に示した予備加熱なしのモータ制御計画から、
図9に示した予備加熱ありのモータ制御計画に更新される。
【0079】
上述したように、モータ駆動計画生成部220は、判定基準ラインLAから時分割駆動ラインLDまでの紙送り速度の減速度を、
図8に示した傾きa2、あるいは
図9に示した傾きa3にして、モータ駆動計画を更新する。ここで、
図8に示した傾きa2および
図9に示した傾きa3は、いずれも、印刷開始時紙送り加速度a1よりも傾きが小さい。すなわち、モータ駆動計画生成部220(速度制御部)は、印刷開始時におけるモータ110の加速度である印刷開始時紙送り加速度a1以下の減速度にして、相対移動速度を減速させる。
なお、
図8に示した紙送り速度の減速度(グラフの傾き)は、いずれも一例である。例えば、モータ駆動計画生成部220(速度制御部)は、印刷開始時におけるモータ110の加速度である印刷開始時紙送り加速度a1以上の減速度にして、相対移動速度を減速させてもよい。ここで、減速度(グラフの傾き)は、減速に要する時間の逆数の関係を有する。例えば、減速度(グラフの傾き)を大きくすることで、減速に要する時間は短縮される。減速に要する時間が短縮されると、先読みライン数LPnをより少なくすることができる。先読みライン数LPnが少ない場合には、制御部20が記憶部(不図示)に記憶させる情報量を相対的に少なくすることができる。つまり、モータ駆動計画生成部220(速度制御部)は、印刷開始時におけるモータ110の加速度である印刷開始時紙送り加速度a1以上の減速度にして、相対移動速度を減速させることにより、記憶部(不図示)に記憶させる情報量を相対的に少なくすることができる。
【0080】
このように構成されたプリンタ装置1によれば、時分割駆動を行う場合の感熱紙310の速度変化を抑えることができ、感熱紙310の速度変化による印刷品質の低下を抑制することができる。
【0081】
(ステップS160)モータ駆動部230は、ステップS150において更新されたモータ制御計画に基づき、モータ110を1ラインぶん駆動する。
(ステップS170)ヘッド駆動部250は、ステップS110において取得された印刷データの中から、ステップS150において更新されたモータ制御計画が示すラインLNに対応する印刷データを取得する。ヘッド駆動部250は、取得した印刷データが示す黒画素PX-BKおよび白画素PX-WHの情報に基づき、サーマルヘッド120の発熱体Hに駆動電流を供給する。
この結果、感熱紙310には、1ライン分の印刷データに対応する発色パターンが印刷される。
【0082】
(ステップS180)モータ駆動計画生成部220は、印刷データ取得部210が取得した印刷データがすべて印刷されたか否かを判定する。モータ駆動計画生成部220は、印刷データ取得部210が取得した印刷データのうち未印刷のラインLNがあると判定した場合(ステップS180;NO)には、処理をステップS120に戻して、次のラインLNの印刷処理を継続する。モータ駆動計画生成部220は、印刷データ取得部210が取得した印刷データをすべて印刷したと判定した場合(ステップS180;YES)には、一連の印刷処理を終了する。
【0083】
以上説明したように、本実施形態のプリンタ装置1は先読み予備加熱制御を行う。すなわち、プリンタ装置1は、印刷データのなかに時分割駆動ラインLDが存在する場合(つまり、予備加熱が必要な場合)にのみ予備加熱を行う。これにより、プリンタ装置1は、常時予備加熱を行う従来例に比べて、消費電力を低減することができる。また、プリンタ装置1は、先読み制御を行わない従来例に比べて、時分割駆動ラインLDが存在する場合の感熱紙310の加減速度を低減することができる。このため、プリンタ装置1によれば、時分割駆動ラインLDが存在しない場合には比較的高速な印刷を可能にしつつ、時分割駆動ラインLDが存在する場合の急減速を低減することで、印刷品質の低下を抑止することができる。
つまり、本実施形態のプリンタ装置1によれば、定常時の高速印刷および低消費電力化を実現しつつ、時分割駆動ラインLDが存在する場合の印刷品質の低下の抑止を図ることができる。
【0084】
なお、上述したプリンタ装置1の制御部20が備える機能の全部又は一部は、プログラムとしてコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録され、このプログラムがコンピュータシステムにより実行されてもよい。コンピュータシステムは、OS、周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、例えば、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置、インターネット等のネットワーク上のサーバ等が備える揮発性メモリ(Random Access Memory:RAM)である。なお、揮発性メモリは、一定時間プログラムを保持する記録媒体の一例である。
【0085】
また、上述したプログラムは、伝送媒体、例えば、インターネット等のネットワーク、電話回線等の通信回線により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。
【0086】
また、上記プログラムは、上述した機能の全部又は一部を実現するプログラムであってもよい。なお、上述した機能の一部を実現するプログラムは、上述した機能をコンピュータシステムに予め記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるプログラム、いわゆる差分プログラムであってもよい。
【0087】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明したが、具体的な構成が上述した実施形態に限られるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1…プリンタ装置、10…サーマルプリンタ機構、20…制御部、30…用紙収納部、40…用紙排出部、110…モータ、120…サーマルヘッド、210…印刷データ取得部、220…モータ駆動計画生成部、230…モータ駆動部、240…予備加熱制御部、250…ヘッド駆動部