(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129940
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】X線検査装置及びX線検査装置の感度補正方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/083 20180101AFI20240920BHJP
G01N 23/04 20180101ALI20240920BHJP
G01T 1/24 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01N23/083
G01N23/04
G01T1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039353
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100186761
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】杉本 一幸
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】万木 太
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 修
【テーマコード(参考)】
2G001
2G188
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001FA08
2G001HA13
2G001JA11
2G188AA25
2G188BB02
2G188CC29
2G188CC32
2G188DD05
2G188EE01
2G188FF18
2G188FF30
(57)【要約】
【課題】直接変換型検出部を利用した場合であっても、適切な感度補正を実施可能なX線検査装置及びX線検査装置の感度補正方法を提供する。
【解決手段】X線検査装置は、物品を搬送する搬送部と、搬送部に搬送される物品にX線を照射するX線源と、X線をフォトンカウンティング方式で検出可能な直接変換型検出部であるX線検出部と、X線検出部の出力結果に基づき、物品の検査を実施する検査部と、を備え、X線検査装置の起動時に実施されるX線検出部の感度補正において、X線検出部は、X線の検出開始から所定期間経過後に、感度補正の基準となると共に物品を透過していないX線を検出し、X線源は、所定期間中にX線照射を開始し、所定期間は、X線源の照射が安定化する期間と同じかそれより長い。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送する搬送部と、
前記搬送部に搬送される前記物品にX線を照射するX線源と、
前記X線をフォトンカウンティング方式で検出可能な直接変換型検出部であるX線検出部と、
前記X線検出部の出力結果に基づき、前記物品の検査を実施する検査部と、
を備えるX線検査装置であって、
前記X線検査装置の起動時に実施される前記X線検出部の感度補正において、
前記X線検出部は、X線の検出開始から所定期間経過後に、前記感度補正の基準となると共に前記物品を透過していないX線を検出し、
前記X線源は、前記所定期間中にX線照射を開始し、
前記所定期間は、前記X線源の照射が安定化する期間と同じかそれより長い、
X線検査装置。
【請求項2】
前記X線検出部は、前記所定期間経過後の前記物品を透過していない前記X線に基づいてブライトレベルを取得する、請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記感度補正において、前記X線検出部によるX線の検出開始と同時に前記X線源による前記X線照射が開始される、請求項1または2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記所定期間は、10秒以上である、請求項1または2に記載のX線検査装置。
【請求項5】
物品を搬送する搬送部と、
前記搬送部に搬送される前記物品にX線を照射するX線源と、
前記X線をフォトンカウンティング方式で検出可能な直接変換型検出部であるX線検出部と、
前記X線検出部の出力結果に基づき、前記物品の検査を実施する検査部と、
を備えるX線検査装置の感度補正方法であって、
前記X線検査装置の起動時に、前記X線検出部によるX線の検出を開始するステップと、
X線の検出開始から所定期間経過後、前記X線検出部の基準となると共に前記物品を透過していないX線を検出するステップと、
を備え、
前記所定期間中に、前記X線源によるX線照射を開始すると共に、当該X線照射を安定化させる、
X線検査装置の感度補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、X線検査装置及びX線検査装置の感度補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のX線検査装置として、例えば、下記特許文献1に記載された装置が知られている。下記特許文献1に記載のX線検査装置は、検出器の素子上にX線が検査物なしに照射されているか否かを判断する手段を備え、コンベアの移動中に再補正データ取得スパンの期間に、X線OFF時にオフセットデータと、X線ON時のデータから感度補正係数を演算する。また、当該X線検査装置は、X線ON時に再補正データ取得スパンの期間に生データを取得して、オンラインで随時、素子間感度補正テーブルを自動的に更新する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-4560号公報
【特許文献2】特開2022-49924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、X線源の出力は、特に起動直後において、発熱によって安定しない傾向がある。また、X線検査装置には、X線をフォトンカウンティング方式で検出可能な直接変換型センサが用いられるときがある。このような直接変換型センサは、自身でX線の計数処理を実施するが、当該計数処理に伴って直接変換型センサが発熱する。このため、X線検査装置の起動直後に上記特許文献1に記載されるような感度補正処理を実施した場合、センサの出力が安定しない問題があった。
【0005】
本発明の一側面の目的は、直接変換型検出部を利用した場合であっても、適切な感度補正を実施可能なX線検査装置及びX線検査装置の感度補正方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一側面に係るX線検査装置は、物品を搬送する搬送部と、搬送部に搬送される物品にX線を照射するX線源と、X線をフォトンカウンティング方式で検出可能な直接変換型検出部であるX線検出部と、X線検出部の出力結果に基づき、物品の検査を実施する検査部と、を備え、X線検査装置の起動時に実施されるX線検出部の感度補正において、X線検出部は、X線の検出開始から所定期間経過後に、感度補正の基準となると共に物品を透過していないX線を検出し、X線源は、所定期間中にX線照射を開始し、所定期間は、X線源の照射が安定化する期間と同じかそれより長い。
【0007】
このX線検査装置では、X線検査装置の起動時に実施されるX線検出部の感度補正において、X線検出部は、X線の検出開始から所定期間経過後に、感度補正の基準となると共に物品を透過していないX線を検出する。これにより、X線検査装置の起動直後に感度補正を実施する場合と比較して、X線検出部の出力が安定化し、ノイズが生じにくくなる。また、X線源は、所定期間中にX線照射を開始し、所定期間は、X線源の照射が安定化する期間と同じかそれより長い。これにより、X線検出部の出力が安定化するまでにX線源のX線照射も安定化するので、X線検出部の出力がより安定化する。したがって、直接変換型検出部であるX線検出部を備える上記X線検査装置であっても、適切な感度補正処理を実施可能である。さらには、所定期間内にX線源の出力を安定化させることによって、X線検査装置の起動から感度補正の実施までの時間を短縮化できる。
【0008】
(2)上記(1)に記載のX線検査装置にて、X線検出部は、感度補正において、所定期間経過後の物品を透過していないX線に基づいてブライトレベルを取得してもよい。この場合、より適切な感度補正を実施できる。
【0009】
(3)上記(1)または(2)に記載のX線検査装置にて、感度補正において、X線検出部によるX線の検出開始と同時にX線源によるX線照射が開始されてもよい。この場合、所定期間経過までにX線照射を確実に安定化できる。
【0010】
(4)上記(1)~(3)のいずれかに記載のX線検査装置にて、所定期間は、10秒以上でもよい。この場合、X線検出部の出力を良好に安定化できる。
【0011】
(5)本発明の別の一側面に係るX線検査装置の感度補正方法は、物品を搬送する搬送部と、搬送部に搬送される物品にX線を照射するX線源と、X線をフォトンカウンティング方式で検出可能な直接変換型検出部であるX線検出部と、X線検出部の出力結果に基づき、物品の検査を実施する検査部と、を備え、X線検査装置の起動時に、X線検出部によるX線の検出を開始するステップと、X線の検出開始から所定期間経過後、X線検出部の基準となると共に物品を透過していないX線を検出するステップと、を備え、所定期間中に、X線源によるX線照射を開始すると共に、当該X線照射を安定化させる。
【0012】
この感度補正方法では、X線検査装置の起動時に、X線検出部によるX線の検出を開始するステップと、X線の検出開始から所定期間経過後、X線検出部の基準となると共に物品を透過していないX線を検出するステップとが実施される。これにより、X線検査装置の起動直後に感度補正を実施する場合と比較して、X線検出部の出力が安定化し、ノイズが生じにくくなる。また、上記感度補正方法では、所定期間中に、X線源によるX線の照射を開始すると共に、当該照射を安定化させる。これにより、X線検出部の出力が安定化するまでにX線源のX線照射も安定化するので、X線検出部の出力がより安定化する。したがって、直接変換型検出部であるX線検出部を備える上記X線検査装置であっても、適切な感度補正処理を実施可能である。さらには、所定期間内にX線源の出力を安定化させることによって、X線検査装置の起動から感度補正の実施までの時間を短縮化できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一側面によれば、直接変換型検出部を利用した場合であっても、適切な感度補正を実施可能なX線検査装置及びX線検査装置の感度補正方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るX線検査装置の構成図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されるシールドボックスの内部の模式構成図である。
【
図3】
図3は、感度補正方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1に示されるように、X線検査装置1は、装置本体2と、支持脚3と、シールドボックス4と、搬送部5と、X線照射部6と、X線検出部7と、表示操作部8と、制御部10と、を備える。X線検査装置1は、物品Gを搬送しつつ物品GのX線透過画像を生成し、当該X線透過画像に基づいて物品Gの検査を行う。検査前の物品Gは、搬入コンベア51によってX線検査装置1に搬入される。検査後の物品Gは、搬出コンベア52によってX線検査装置1から搬出される。
【0017】
装置本体2は、制御部10等を収容している。支持脚3は、装置本体2を支持している。シールドボックス4は、装置本体2に設けられている。シールドボックス4は、外部へのX線(電磁波)の漏洩を防止する筐体である。シールドボックス4の内部には、X線による物品Gの検査が実施される検査室Rが設けられている。シールドボックス4には、搬入口4a及び搬出口4bが形成されている。検査前の物品Gは、搬入コンベア51から搬入口4aを介して検査室Rに搬入される。検査後の物品Gは、検査室Rから搬出口4bを介して搬出コンベア52に搬出される。
【0018】
搬送部5は、物品Gを搬送する部材であり、シールドボックス4の中央を貫通するように配置されている。搬送部5は、搬入口4aから検査室Rを介して搬出口4bまで、搬送方向Aに沿って物品Gを搬送する。搬送部5は、例えば、搬入口4aと搬出口4bとの間に掛け渡されたベルトコンベアである。なお、搬送部5は、搬入口4a及び搬出口4bよりも外側に突出していてもよい。
【0019】
図1及び
図2に示されるように、X線照射部6は、シールドボックス4内に配置されている電磁波照射部(X線源)である。X線照射部6から照射されるX線には、低エネルギー(長波長)から高エネルギー(短波長)までの様々なエネルギー領域のX線が含まれている。このため、X線照射部6は、搬送部5に搬送される物品Gに対して、複数のエネルギー領域のX線を照射する。X線照射部6の起動直後においては、X線の出力が不安定なことがある。このため、X線検査装置1の起動後であって物品Gの検査前に、X線照射部6によるX線照射(すなわち、X線照射部6のアイドリング)が実施されてもよい。なお、上述した低エネルギー及び高エネルギーにおける「低」及び「高」は、X線照射部6から照射される複数のエネルギー領域の中で相対的に「低い」及び「高い」ことを示すものであり、特定の範囲を示すものではない。
【0020】
X線検出部7は、電磁波を検出するセンサユニットである。X線検出部7は、シールドボックス4内であって、上下方向においてX線照射部6に対向する位置に配置される。本実施形態では、X線検出部7は、フォトンカウンティング方式でX線を検出可能な直接変換型検出部であり、例えば、物品Gを透過する複数のエネルギー領域の各々のX線を検出するセンサ11(マルチエナジーセンサ)を含む。センサ11は、例えば、少なくとも搬送部5の搬送方向及び上下方向に直交する方向(幅方向)に並べられる。センサ11は、上記幅方向だけでなく、上記搬送方向にも並べられてもよい。本実施形態では、X線検出部7は、二次元的に配置されるセンサ11の群を含む。センサ11は、例えば、CdTe半導体検出器などの光子検出型センサを含む。
【0021】
X線検出部7に含まれるセンサ11においては、例えば、X線の光子が到達することによって電子正孔対が生成される。このときに得られるエネルギー(光子エネルギー)に基づき、フォトンの計数処理(フォトンカウンティング)がなされる。当該計数処理は、X線検出部7もしくはセンサ11に含まれる演算部(不図示)によって実施される。当該計数処理の演算負荷は高いので、X線検査装置1の動作時において上記演算部は発熱する傾向がある。
【0022】
X線検査装置1の起動時に実施されるX線検出部7の感度補正(キャリブレーション)においては、物品Gを透過していないX線に基づいてブライトレベルが取得される。ブライトレベルは、物品Gを透過していないX線がX線検出部7に入射したときに検知されたフォトンカウント数である。X線照射部6の出力などに応じて、ブライトレベルが変化し得る。このため、ブライトレベルは、単数に限られず、複数でもよい。例えば、ブライトレベルは、X線照射部6の出力が100%である場合に得られる最大ブライトレベル、及び、X線照射部6の出力が50%である場合に得られる中間ブライトレベル(グレーレベル)を少なくとも有する。本実施形態では、上記感度補正にて、X線検出部7によるダークレベルの取得は実施されなくてもよい。この場合、単に検知されたフォトン数が0であることが、ダークレベルと予め設定されてもよい。もしくは、上記感度補正において、X線検出部7によって検知されたフォトン数が0である場合、ダークレベルと設定してもよい。なお、X線検出部7の感度補正は、X線検出部7に含まれる各センサ11間の出力差の補正に相当する。
【0023】
X線検査装置1の動作中、センサ11及び上記演算部の少なくとも一方の発熱によって、X線検出部7の温度が上昇する。X線検出部7の温度上昇によって、特にX線検査装置1の起動直後においてX線検出部7の出力が不安定化することがある。具体例としては、X線検出部7の温度上昇によって、少なくとも一つのセンサ11の計数処理精度が悪化し、誤ったカウンティング数を出力してしまうことがある。これにより、不適切なX線画像が生成され得る。このため、X線検出部7は、センサ11に加えて、X線検出部7を冷却する冷却素子(不図示)を有する。X線検査装置1の動作中に当該冷却素子が動作することによって、X線検出部7の温度変化を抑制できる。例えば、X線検出部7によるX線の検出を開始してから所定期間の経過後、X線検出部7は、上記感度補正の基準となると共に物品Gを透過していないX線を検出する。そして、X線検出部7は、ブライトレベルを取得する。所定期間は、例えば10秒以上、8秒以上、6秒以上または5秒以上であるが、これに限られない。X線検査装置1の種別、仕様、設置環境などによって、当該所定期間は調整されてもよい。消費電力などの観点から、上記所定期間は、極力短く設定されてもよい。なお、上記冷却素子は、例えばペルチェ素子などである。
【0024】
一般に、X線検出部7によるX線検出の開始からX線検出部7の出力が安定化するまでに要する期間は、X線照射部6によるX線照射の開始から当該X線照射の出力が安定化するまでに要する期間(X線源の照射が安定化する期間)と同じかそれより長い。このため、上記所定期間は、X線検出部7によるX線の検出の開始からX線検出部7の出力が安定化するまでに要する期間と同じかそれより長い。同様に、上記所定期間は、X線源の照射が安定化する期間と同じかそれより長い。よって、X線検出部7の感度補正短縮化の観点から、X線検査装置1の起動時、少なくともX線検出部7によるX線の検出が開始されてもよい。X線検出部7の出力安定化の観点から、X線照射部6は、上記所定期間中にX線照射を開始する。この場合、当該X線照射が上記所定期間の終了までに安定化するように、当該X線照射が開始される。感度補正においては、X線検出部7によるX線の検出開始と同時にX線照射部6によるX線照射が開始されてもよい。
【0025】
X線検出部7は、任意の閾値に基づいて検出したX線の光子エネルギーを2以上のエネルギー領域に弁別する。これにより、X線検出部7は、各エネルギー領域のフォトンカウンティングが可能になる。X線検出部7は、X線の検出結果に相当し、かつ、分別された信号(検出結果信号)を制御部10に出力する。任意の閾値は、例えば制御部10によって設定される1つ以上の値(単位:keV)である。任意の閾値は、例えば、特願2022-37999号に記載される方法によって設定されてもよいし、上記ブライトレベルを利用して設定されてもよい。
【0026】
図1に示されるように、表示操作部8は、装置本体2に設けられている部材(表示部)である。表示操作部8は、各種情報を表示すると共に、外部から各種条件の入力操作を受け付ける。表示操作部8は、例えば、液晶ディスプレイであり、タッチパネルとしての操作画面を表示する。この場合、オペレータは、表示操作部8を介して各種条件を入力することができる。
【0027】
制御部10は、装置本体2の内部に配置されている。制御部10は、X線検査装置1の各部の動作を制御する。制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成されている。ROMには、X線検査装置1を制御するためのプログラムが記録されている。制御部10は、X線検出部7の出力結果に基づき、物品Gの検査を実施する検査部としても機能する。
【0028】
次に、
図3を参照しながら、本実施形態に係るX線検査装置1の感度補正方法の一例について説明する。
図3は、感度補正方法を説明するためのフローチャートである。
【0029】
図3に示されるように、まず、X線検査装置1の起動時に、X線検出部7によるX線の検出を開始する(ステップST1)。ステップST1にて、X線検出部7によるX線の検出を開始することによって、X線検出部7が発熱する。本実施形態では、ステップST1にて、X線検出部7によるX線の検出と同時に、X線照射部6によるX線の照射が開始されるが、これに限られない。なお、ステップST1では、X線検出部7によるX線の検出結果は、感度補正にて利用されない。これにより、不安定な検出結果が利用されにくくなる。
【0030】
次に、X線検出部7によるX線の検出開始から所定期間、待機する(ステップST2)。ステップST2では、上記所定期間中、X線検出部7によるX線検出を維持する。このとき、X線検出部7の冷却素子も動作し、X線検出部7の温度調整が図られる。同様に、上記所定期間中、X線照射部6によるX線照射を維持する。これにより、X線照射部6の出力の安定化も図られる。なお、ステップST1にてX線照射部6によるX線照射が開始されない場合、ステップST2にて、X線照射部6によるX線照射が開始される。換言すると、ステップST1にてX線照射部6によるX線照射が開始されない場合、上記所定期間中、X線照射部6によるX線照射が開始される。この場合、上記所定期間中にX線照射部6によるX線照射を安定化させるように、X線照射部6によるX線照射の開始タイミングが調整される。なお、ステップST2でも、X線検出部7によるX線の検出結果は、感度補正にて利用されない。これにより、不安定な検出結果が利用されにくくなる。
【0031】
続いて、X線検出部7によるX線の検出開始から所定期間経過後(すなわち、ステップST2後)、X線検出部7の基準となると共に物品Gを透過していないX線を検出する(ステップST3)。ステップST3では、当該X線の検出結果を利用して、X線検出部7の感度補正を実施する。当該感度補正では、例えばセンサ11毎に、ブライトレベルの取得、零点の取得、スパン係数値の算出などが実施される。当該感度補正にて、ダークレベルの取得が実施されてもよい。そして、取得されたブライトレベル、算出された値などをX線検出部7の各センサ11に設定する。以上により、X線検査装置1の起動時に実施されるX線検出部の感度補正が完了する。当該感度補正の完了後、X線検査装置1による物品Gの検査が良好に実施可能になる。
【0032】
以上に説明した本実施形態に係るX線検査装置1及びその感度補正方法によれば、X線検査装置1の起動時に実施されるX線検出部7の感度補正において、X線検出部7は、X線の検出開始から所定期間経過後に、感度補正の基準となると共に物品Gを透過していないX線を検出する。これにより、X線検査装置1の起動直後に感度補正を実施する場合と比較して、X線検出部7の出力が安定化し、ノイズが生じにくくなる。また、X線照射部6は、所定期間中にX線照射を開始し、当該所定期間は、X線源の照射が安定化する期間と同じかそれより長い。これにより、X線検出部7の出力が安定化するまでにX線照射部6のX線照射も安定化するので、X線検出部7の出力がより安定化する。したがって、直接変換型検出部であるX線検出部7を備えるX線検査装置1であっても、適切な感度補正処理を実施可能である。さらには、所定期間内にX線照射部6の出力を安定化させることによって、X線検査装置1の起動から感度補正の実施までの時間を短縮化できる。
【0033】
本実施形態では、X線検出部7は、感度補正において、所定期間経過後の物品Gを透過していないX線に基づいてブライトレベルを取得してもよい。この場合、より適切な感度補正を実施できる。
【0034】
本実施形態では、感度補正において、X線検出部7によるX線の検出開始と同時にX線照射部6によるX線照射が開始される。このため、所定期間経過までにX線照射を確実に安定化できる。
【0035】
本実施形態では、所定期間は、10秒以上でもよい。この場合、X線検出部7の出力を良好に安定化できる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1…X線検査装置、3…支持脚、4…シールドボックス、4a…搬入口、4b…搬出口、5…搬送部、6…X線照射部、7…X線検出部、8…表示操作部、10…制御部、A…搬送方向、G…物品。