(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129942
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】タイヤ削ぎ装置及びタイヤ削ぎ方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/06 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B29D30/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039362
(22)【出願日】2023-03-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年12月7日に鈴木隆介が筑波サーキット「REVSPEED筑波スーパーバトル」会場にて鈴木隆介が発明したタイヤ削ぎ装置の試作機及びタイヤ削ぎ方法の一部を使用してタイヤを削ぐ試験を行った。 令和4年12月7日の「REVSPEED筑波スーパーバトル」会場における試験のときに、鈴木隆介は、斉藤辰矢(「筑波タイヤサービス」の代表)から、鈴木隆介が発明したタイヤ削ぎ装置の試作機及びタイヤ削ぎ方法の一部を使用してタイヤを削いでいる様子の動画を撮影しSNSで公開したいという取材を受け、斉藤辰矢は、その取材で撮影した動画に基づいてツイッターの「筑波タイヤサービス(斉藤)」というアカウントによりそのタイヤ削ぎ装置の試作機及びタイヤ削ぎ方法の一部の試験の様子の公開を行った。公開のアドレスはhttps://twitter.com/tsukuba_tire/status/1600443048667672577。 令和4年11月29日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのツイッターにおいて、鈴木隆介が発明したタイヤ削ぎ装置の部品の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://twitter.com/zeke_kun/status/1597483761926836224。 令和4年12月1日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのツイッターにおいて、鈴木隆介が発明したタイヤ削ぎ装置の一部及びタイヤ削ぎ方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://twitter.com/zeke_kun/status/1598257926447460352。 令和4年12月22日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのツイッターにおいて、鈴木隆介が発明したタイヤ削ぎ装置の一部及びタイヤ削ぎ方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://twitter.com/zeke_kun/status/1605592547723603968。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年12月28日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのツイッターにおいて、鈴木隆介が発明したタイヤ削ぎ装置の一部及びタイヤ削ぎ方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://twitter.com/zeke_kun/status/1607990589248933888。 令和4年12月31日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのツイッターにおいて、鈴木隆介が発明したタイヤ削ぎ装置の一部及びタイヤ削ぎ方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://twitter.com/zeke_kun/status/1609123698707148800。 令和5年1月7日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのツイッターにおいて、鈴木隆介が発明したタイヤ削ぎ装置の一部及びタイヤ削ぎ方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://twitter.com/zeke_kun/status/1611574392936624128。 令和4年12月1日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのインスタグラムにおいて、鈴木隆介が発明したタイヤ削ぎ装置の一部及びタイヤ削ぎ方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://www.instagram.com/p/Clnpll6Pua4/。 令和4年12月20日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのインスタグラムにおいて、鈴木隆介が発明したタイヤ削ぎ装置の一部及びタイヤ削ぎ方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://www.instagram.com/p/CmXo7aaPZHw/。 令和4年12月20日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのインスタグラムにおいて、鈴木隆介が発明したタイヤ削ぎ装置の一部及びタイヤ削ぎ方法の一部に関する漫画を公開した。公開のアドレスはhttps://www.instagram.com/p/CmXy8qKvfcW/。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和5年2月19日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのインスタグラムにおいて、鈴木隆介が発明したタイヤ削ぎ装置の一部及びタイヤ削ぎ方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://www.instagram.com/p/Co1vPctv0V7/。 令和5年2月20日に鈴木隆介が、鈴木隆介のアカウントのインスタグラムにおいて、鈴木隆介が発明したタイヤ削ぎ装置の一部及びタイヤ削ぎ方法の一部に関する漫画を公開した。公開のアドレスはhttps://www.instagram.com/p/Co3j5j0vkqf/。 令和5年2月11日に鈴木隆介が、金鈴精工株式会社内にて、鈴木隆介が発明したタイヤ削ぎ装置の試作機及びタイヤ削ぎ方法の一部を使用して、試験を行った。 令和5年2月11日の金鈴精工株式会社内における試験のときに、鈴木隆介は、小林翔から、鈴木隆介が発明したタイヤ削ぎ装置の試作機及びタイヤ削ぎ方法の一部を使用してタイヤを削いでいる様子の動画を撮影しインスタグラムで公開したいという取材を受け、小林翔は、その取材で撮影した動画に基づいてインスタグラムの「shokobaya」というアカウントによりそのタイヤ削ぎ装置の試作機及びタイヤ削ぎ方法の一部の試験の様子の公開を行った。公開のアドレスはhttps://www.instagram.com/p/Co9PgAmp1PP/。 令和5年2月18日に鈴木隆介が、Attack筑波2023の会場内の展示ブースにおいて、鈴木隆介が発明したタイヤ削ぎ装置の試作機及びタイヤ削ぎ方法の一部を公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和5年1月24日に鈴木隆介が、金鈴精工株式会社がスポンサーとなっているAttack筑波2023のスポンサーページ中の金鈴精工株式会社のページにおいて、鈴木隆介が発明したタイヤ削ぎ装置の一部及びタイヤ削ぎ方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://www.timeattack.co.jp/partner/kanesuzu。 令和4年12月27日に鈴木隆介が、金鈴精工株式会社のホームページにおいて、鈴木隆介が発明したタイヤ削ぎ装置の一部及びタイヤ削ぎ方法の一部を公開した。公開のアドレスはhttps://www.kanesuzu.co.jp/blog/20221227122026/。 令和4年12月27日に鈴木隆介が、金鈴精工株式会社内にて、鈴木隆介が発明したタイヤ削ぎ装置の試作機及びタイヤ削ぎ方法の一部を使用して、試験を行った。 令和4年12月27日の金鈴精工株式会社内における試験のときに、鈴木隆介は、田村健一から、鈴木隆介が発明したタイヤ削ぎ装置の試作機及びタイヤ削ぎ方法の一部を使用してタイヤを削いでいる様子の写真及び動画を撮影する非公開の取材を受け、田村健一は、その取材で撮影した動画に基づいてツイッターの「Peri」というアカウントによりそのタイヤ削ぎ装置の試作機及びタイヤ削ぎ方法の一部の試験の様子の公開を行った。公開のアドレスはhttps://twitter.com/Peri787b/status/1634502132761255937。
(71)【出願人】
【識別番号】523079303
【氏名又は名称】金鈴精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159846
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 尚
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆介
【テーマコード(参考)】
4F215
4F501
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215AK02
4F215AR06
4F215AR09
4F215VA13
4F215VC11
4F215VN01
4F215VP18
4F215VR03
4F501TA13
4F501TB11
4F501TG01
4F501TL17
4F501TN02
4F501TT03
4F501TU06
4F501TU09
4F501TV21
(57)【要約】
【課題】削ぐときのタイヤの表面の熱劣化を抑制しながら、タイヤのトレッド部に接地を向上する走行面を形成できると共に、タイヤに所定の径を有する円に近づけた走行面を形成できるタイヤ削ぎ装置及びタイヤ削ぎ方法を提供する。
【解決手段】本発明のタイヤ削ぎ装置1は、タイヤの表面を削ぐブレード20と、ブレードを取り付けるブレード取付部22と、ブレード取付部を回転させるブレード回転駆動部24と、タイヤを保持するタイヤ保持部12と、タイヤを保持した状態でタイヤを回転させるタイヤ回転駆動部14と、ブレードをタイヤの中心軸線X2から所定距離に位置決め可能な位置決め部26とを備え、タイヤの表面を削ぐことにより、削ぐときのタイヤの表面の熱劣化を抑制しながら、タイヤの中心軸線から所定距離にタイヤの走行面を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの表面を削ぐタイヤ削ぎ装置であって、
上記タイヤの表面を削ぐブレードと、
上記ブレードを取り付けるブレード取付部と、
上記ブレード取付部を回転させるブレード回転駆動部と、
上記タイヤを保持するタイヤ保持部と、
上記タイヤを保持した状態で上記タイヤを回転させるタイヤ回転駆動部と、
上記ブレードを上記タイヤの中心軸線から所定距離に位置決め可能な位置決め部とを備え、
上記タイヤの表面を削ぐことにより、削ぐときの上記タイヤの表面の熱劣化を抑制しながら、上記タイヤの中心軸線から所定距離に上記タイヤの走行面を形成する、タイヤ削ぎ装置。
【請求項2】
上記ブレードの刃先に沿う刃先線は、上記タイヤの中心軸線を通る第1仮想面と平行な第2仮想面上に配置される、請求項1に記載のタイヤ削ぎ装置。
【請求項3】
上記ブレードの刃先に沿う刃先線は、上記タイヤの中心軸線と平行な状態から、上記タイヤの接線方向において+45度から-45度までの範囲内の角度で傾けられている、請求項2に記載のタイヤ削ぎ装置。
【請求項4】
上記ブレードの上記刃先は、上記タイヤの中心軸線と平行方向に延びている、請求項2に記載のタイヤ削ぎ装置。
【請求項5】
上記ブレードの上記刃先の角度は、30度から60度までの範囲内の角度である、請求項2に記載のタイヤ削ぎ装置。
【請求項6】
上記ブレード回転駆動部により回転される上記ブレード取付部の回転数は、1000回転/分から8000回転/分までの範囲内の回転数である、請求項5に記載のタイヤ削ぎ装置。
【請求項7】
上記ブレード回転駆動部により回転される上記ブレード取付部の回転数は、上記タイヤ回転駆動部により回転される上記タイヤの回転数よりも大きい、請求項5に記載のタイヤ削ぎ装置。
【請求項8】
上記ブレード取付部に取付けられた上記ブレードの周速は、150m/分から1300m/分までの範囲内の値である、請求項5に記載のタイヤ削ぎ装置。
【請求項9】
さらに、液体を溜める液溜め部とを備え、上記液溜め部は、上記タイヤの下部を液体に浸すように配置される、請求項1乃至8の何れか1項に記載のタイヤ削ぎ装置。
【請求項10】
タイヤの表面を削ぐタイヤ削ぎ方法であって、
ブレードを取り付けたブレード取付部を回転させるブレード回転ステップと、
上記タイヤを保持した状態で上記タイヤを回転させるタイヤ回転ステップと、
上記ブレードを上記タイヤの中心から所定距離に位置決めする位置決めステップと、
上記タイヤの表面を削ぐことにより、削ぐときの上記タイヤの表面の熱劣化を抑制しながら、上記タイヤの中心軸線から所定距離に上記タイヤの走行面を形成するタイヤ削ぎステップとを備える、タイヤ削ぎ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ削ぎ装置及びタイヤ削ぎ方法、特にタイヤの表面を切削するタイヤ削ぎ装置及びタイヤ削ぎ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に示すように、低下したグリップ力を回復させるため、研磨位置及び研磨量を目視しながらタイヤの表面を研磨する自動車用タイヤの表面研磨装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すような自動車用タイヤの表面研磨装置においては、タイヤの表面を研磨する場合に、研磨により熱が発生するため、研磨時に熱による劣化をタイヤ表面に生じさせてしまうという問題がある。
【0005】
サーキットでのタイムトライアル走行やレース等のようなタイヤの性能を極限まで引き出したい状況でタイヤを使用したい場合がある。このようなタイムトライアル走行等の状況では、例えば0.1秒、例えば0.01秒でもタイムを縮め、速いタイムを出すことにより勝敗が決する。よって、公道走行用の条件を満たすタイヤ性能をはるかに上回る、モータースポーツ用にタイヤのポテンシャルを限界近くまで引き出すような極限のタイヤ性能が求められる。
【0006】
他方、サーキット走行後のヒートサイクルによる熱劣化部分がタイヤ表面に生じ、タイヤの本来の走行性能が引き出せない場合がある。これに対し、本発明者は、特許文献1に示すような自動車用タイヤの表面研磨装置により、タイヤ表面の熱劣化部分を研磨しようとしても、タイヤの表面を研磨する場合に、研磨により熱が発生するため、研磨時に加熱による劣化をタイヤ表面にさらに生じさせてしまうという問題が生じることを新たに見出した。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、削ぐときのタイヤの表面の熱劣化を抑制しながら、タイヤのトレッド部に接地を向上する走行面を形成できると共に、タイヤに所定の径を有する円に近づけた走行面を形成できるタイヤ削ぎ装置、及びタイヤ削ぎ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の一実施形態によれば、タイヤの表面を削ぐタイヤ削ぎ装置であって、上記タイヤの表面を削ぐブレードと、上記ブレードを取り付けるブレード取付部と、上記ブレード取付部を回転させるブレード回転駆動部と、上記タイヤを保持するタイヤ保持部と、上記タイヤを保持した状態で上記タイヤをに回転させるタイヤ回転駆動部と、上記ブレードを上記タイヤの中心軸線から所定距離に位置決め可能な位置決め部とを備え、上記タイヤの表面を削ぐことにより、削ぐときの上記タイヤの表面の熱劣化を抑制しながら、上記タイヤの中心軸線から所定距離に上記タイヤの走行面を形成する。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、上記タイヤの表面を削ぐことにより、削ぐときの上記タイヤの表面の熱劣化を抑制しながら、上記タイヤの中心軸線から所定距離に上記タイヤの走行面を形成できる。これにより、削ぐときの上記タイヤの表面の熱劣化を抑制しながら、タイヤのトレッド部に接地を向上する走行面を形成できると共に、タイヤに所定の径を有する円に近づけた走行面を形成できる。よって、上記タイヤの走行性能を極限まで引き出しやすくなるようなタイヤの走行面を形成できる。従って、例えば、サーキットでのタイムアタック等に使用するタイヤにおいて、0.1秒等のタイムを縮めるため、タイヤの本来の走行性能を極限まで引き出しやすくできる。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、好ましくは、上記ブレードの刃先に沿う刃先線は、上記タイヤの中心軸線を通る第1仮想面と平行な第2仮想面上に配置される。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、上記ブレードの刃先に沿う刃先線は、上記タイヤの中心軸線を通る第1仮想面と平行な第2仮想面上に配置される。これにより、タイヤの表面の削ぎ落しにより、タイヤの表面に、タイヤの中心軸線の含まれる第1仮想面と平行な第2仮想面に沿った比較的平らな面が形成されやすくなる。従って、上記タイヤの表面を削ぐことによる熱劣化をより抑制しやすくできると共に、上記タイヤの走行性能を極限まで引き出しやすくなるようなタイヤの走行面をより形成しやすくできる。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、好ましくは、上記ブレードの刃先に沿う刃先線は、上記タイヤの中心軸線と平行な状態から、上記タイヤの接線方向において+45度から-45度までの範囲内の角度で傾けられている。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、上記ブレードの刃先に沿う刃先線は、上記タイヤの中心軸線と平行な状態から、上記タイヤの接線方向において中心軸線に対し+45度から-45度までの範囲内の角度で傾けられている。これにより、タイヤの表面の削ぎ落しにより、タイヤの表面に、タイヤの接線方向においてタイヤの中心軸線の含まれる面に沿った比較的平らな面が形成されやすくなる。従って、上記タイヤの表面を削ぐことによる熱劣化をより抑制しやすくできると共に、上記タイヤの走行性能を極限まで引き出しやすくなるようなタイヤの走行面をより形成しやすくできる。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、好ましくは、上記ブレードの上記刃先は、上記タイヤの中心軸線と平行方向に延びている。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、上記ブレードの刃先は、上記タイヤの中心軸線と平行方向に延び、タイヤの表面と平行方向に延びることができる。これにより、タイヤの表面の削ぎ落しにより、タイヤの表面にタイヤの中心軸線と平行方向に平らな平面が形成されやすくなる。従って、上記タイヤの表面を削ぐことによる熱劣化をより抑制しやすくできると共に、上記タイヤの走行性能を極限まで引き出しやすくなるようなタイヤの走行面をより形成しやすくできる。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、好ましくは、上記ブレードの刃先の角度は、30度から60度までの範囲内の角度である。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、刃先の角度は、30度から60度までの範囲内の角度とされている。従って、上記タイヤの表面を比較的薄く削ぎ取るときの熱の発生をより抑制できる。これにより、上記タイヤの表面を削ぐことによる熱劣化をより抑制できる。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、好ましくは、上記ブレード回転駆動部により回転される上記ブレード取付部の回転数は、1000回転/分から8000回転/分までの範囲内の回転数である。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、刃先の角度は、所定角度とされ、さらにブレード回転駆動部により回転されるブレード取付部の回転数は、1000回転/分から8000回転/分までの範囲内の回転数である。これにより、刃先がタイヤの回転方向の上流側に向けてタイヤ表面内に入るときに、刃先の先端よりもさらに上流側の位置からタイヤの表面が切れ別れ易くなる。よって、上記タイヤの表面を削ぐときの熱の発生をさらに抑制できる。従って、上記タイヤの表面を削ぐことによる熱劣化をさらに抑制できる。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、好ましくは、上記ブレード回転駆動部により回転される上記ブレード取付部の回転数は、上記タイヤ回転駆動部により回転される上記タイヤの回転数よりも大きい。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、刃先の角度は、所定角度とされ、さらに上記ブレード回転駆動部により回転される上記ブレード取付部の回転数は、上記タイヤ回転駆動部により回転される上記タイヤの回転数よりも大きくされる。これにより、ブレード回転駆動部により回転される刃先がタイヤの回転速度よりも大きな速度でタイヤ表面内に入るので、刃先がタイヤ表面内に入るときに、刃先の先端よりもさらに上流側の位置からタイヤの表面が切り分かれ易くなる。よって、上記タイヤの表面を削ぐときの熱の発生をさらに抑制できる。これにより、上記タイヤの表面を削ぐことにより熱劣化をさらに抑制できる。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、好ましくは、上記ブレード取付部に取付けられた上記ブレードの周速は、150m/分から1300m/分までの範囲内の値である。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、上記ブレードの周速は、150m/分から1300m/分までの範囲内の値である。これにより、刃先がタイヤ表面内に入るときに、刃先の先端よりもさらに上流側の位置からタイヤの表面が切れ別れ易くなる。よって、上記タイヤの表面を削ぐときの熱の発生をさらに抑制できる。従って、上記タイヤの表面を削ぐことによる熱劣化をさらに抑制できる。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、好ましくは、さらに、液体を溜める液溜め部を備え、上記液溜め部は、上記タイヤの下部を液体に浸すように配置される。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、タイヤ削ぎ装置は、さらに、液体を溜める液溜め部を備え、上記液溜め部は、上記タイヤの下部を液体に浸すように配置される。これにより、タイヤを冷却してブレードにより削ぎやすくできると共に、例えば液体の成分によりブレードの刃がタイヤをスムーズに且つ所望の形状に削ぎやすくできる。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、好ましくは、タイヤの表面を削ぐタイヤ削ぎ方法であって、ブレードを取り付けた上記ブレード取付部を回転させるブレード回転ステップと、上記タイヤを保持した状態で上記タイヤを回転させるタイヤ回転ステップと、上記ブレードを上記タイヤの中心から所定距離に位置決めする位置決めステップと、上記タイヤの表面を削ぐことにより、削ぐときの上記タイヤの表面の熱劣化を抑制しながら、上記タイヤの中心軸線から所定距離に上記タイヤの走行面を形成するタイヤ削ぎステップとを備える。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、上記タイヤの表面を削ぐことにより、削ぐときの上記タイヤの表面の熱劣化を抑制しながら、上記タイヤの中心軸線から所定距離に上記タイヤの走行面を形成することができる。これにより、削ぐときの上記タイヤの表面の熱劣化を抑制しながら、タイヤのトレッド部に接地を向上する走行面を形成できると共に、タイヤに所定の径を有する円に近づけた走行面を形成できる。よって、上記タイヤの走行性能を極限まで引き出しやすくなるようなタイヤの走行面を形成できる。従って、例えば、サーキットでのタイムアタック等に使用するタイヤにおいて、0.1秒等のタイムを縮めるため、タイヤの本来の走行性能を極限まで引き出しやすくできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のタイヤ削ぎ装置、及び、タイヤ削ぎ方法によれば、削ぐときの上記タイヤの表面の熱劣化を抑制しながら、タイヤのトレッド部に接地を向上する走行面を形成できると共に、タイヤに所定の径を有する円に近づけた走行面を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態によるタイヤ削ぎ装置の外観斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるタイヤ削ぎ装置の外観斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるタイヤ削ぎ装置の上面図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるタイヤ削ぎ装置の部分側面図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるタイヤ削ぎ装置のブレード取付部及びブレードを分解した状態で、一方側のブレード及びブレード取付部等を示す分解斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態によるタイヤ削ぎ装置のブレード取付部及びブレードの断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態によるタイヤ削ぎ装置のブレードがタイヤを削ぐためにタイヤに当たる直前の状態における、ブレード取付部及びブレードの部分拡大側面図である。
【
図8】本発明の一実施形態によるタイヤ削ぎ装置により削られるタイヤの断面の一部を拡大した部分拡大断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態によるタイヤ削ぎ方法の各ステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態によるタイヤ削ぎ装置について説明する。
先ず、
図1は、本発明の一実施形態によるタイヤ削ぎ装置の外観斜視図であり、
図2は本発明の一実施形態によるタイヤ削ぎ装置の外観斜視図であり、
図3は本発明の一実施形態によるタイヤ削ぎ装置の上面図であり、
図4は本発明の一実施形態によるタイヤ削ぎ装置の部分側面図であり、
図5は本発明の一実施形態によるタイヤ削ぎ装置のブレード取付部及びブレードを分解した状態で、一方側のブレード及びブレード取付部等を示す分解斜視図であり、
図6は本発明の一実施形態によるタイヤ削ぎ装置のブレード取付部及びブレードの断面図である。
以下、本発明の一実施形態における説明において、ブレード及びブレード取付部側からタイヤを見て手前側を前方側とし、タイヤ側(奥側)を奥側とし、ブレード及びブレード取付部側からタイヤを見て右側を右側とし、同様にタイヤを見て左側を左側として説明している。
【0021】
図1に示すように、本発明の一実施形態によるタイヤ削ぎ装置1は、タイヤ2の表面を切削する装置である。タイヤ削ぎ装置1は、タイヤ2の表面を後述するブレードで削ぐように切削する。タイヤ削ぎ装置1は、モータースポーツ用のタイヤを調整するモータースポーツ用タイヤ調整装置としても機能する。
【0022】
タイヤ2は、自動車の走行用のタイヤである。タイヤ2は、トレッド部4やショルダ部5を備えた外周部6と、外周部6を支持するホイール部8と、ホイール部8に設けられたタイヤ側取付部10とを備えている。外周部6は、主に路面と接地するトレッド部4を備えている。トレッド部4やショルダ部5は主にゴム、例えば合成ゴムにより形成されている。トレッド部4やショルダ部5は、合成樹脂等により形成されていてもよい。
【0023】
タイヤ2は、スポーツタイヤであり、例えばいわゆるハイグリップタイプのラジアルタイヤである。例えば、タイヤ2は、モータースポーツ、例えばサーキットでのタイムアタック走行やレース走行等に用いられるような、セミレーシングタイヤ、セミスリックタイヤ、スリックタイヤ、ハイグリップタイヤ等である。タイヤは、自動車の性能及びタイヤの走行性能の限界近くまでの性能を引き出して、自動車を走行する状況、例えばサーキットでのタイムアタック走行やレース走行等に用いられるようなタイヤである。よって、タイヤ2は、いわゆるコンフォートタイヤやいわゆるスタッドレスタイヤとは異なるタイプのモータースポーツ用のタイヤを対象としている。タイヤ2は、例えば590mm~720mmの範囲内の径を備えている。タイヤ2は、例えば150mm~340mmの範囲内の幅、また例えば220mm~310mmの範囲内の幅を備えている。
【0024】
本実施形態におけるタイヤ2は、スポーツタイヤ等であり、本技術は、後述するようにスポーツタイヤの走行性能を引き出す走行面を熱劣化を生じにくく形成する。よって、本技術は、いわゆる再生用タイヤ(リトレッドタイヤ)に対するトレッドゴムを削り新しいトレッドを貼付けるための接着面をつくる技術とは異なる技術である。
【0025】
タイヤ側取付部10は、ボルトやナットによりタイヤ保持部に固定される。例えば、タイヤ側取付部10は、例えば5つのボルトにより固定されるような車両のタイヤ取付部と同様の構造を有している。変形例としてタイヤ側取付部10は、例えば1つの固定部によりタイヤ保持部に固定されてもよい。
【0026】
タイヤ削ぎ装置1は、タイヤ2を保持するタイヤ保持部12と、タイヤ2を保持した状態でタイヤ2を予め定めた回転方向に回転させるタイヤ回転駆動部14と、タイヤ保持部12やタイヤ回転駆動部14を配置する構造体16と、を備えている。
【0027】
タイヤ保持部12は、タイヤを取り付ける取付部を形成している。タイヤ保持部12の中心軸線X1(
図3参照)がタイヤ2の中心軸線X2と概ね一致するように、タイヤ2がタイヤ保持部12に取り付けられている。タイヤ保持部12は、一般的な車両におけるタイヤ2の取付部と同様の構造を有し、複数のボルトやナットによりタイヤのホイール部8とタイヤ保持部12とを固定している。タイヤ保持部12は、より簡易な取付部材、例えばホイール中心の穴を利用してボルトやナット1か所で固定できるようなセンターロック方式によりホイール部8とタイヤ保持部12とを固定するように構成されていてもよい。
【0028】
図2に示すように、タイヤ回転駆動部14は、タイヤ回転伝達部15に内蔵されたプーリ(図示せず)及びベルト(図示せず)を介して、タイヤ保持部12と接続されている。タイヤ回転駆動部14は、電動式のモータである。タイヤ回転駆動部14は、モータの回転をタイヤ回転伝達部15内のプーリ(図示せず)及びベルト(図示せず)を介してタイヤ保持部12に伝達している。変形例としてタイヤ回転駆動部14は、タイヤ回転伝達部15に内蔵されたギヤ等を介して、タイヤ保持部12と接続されてもよい。他の変形例として、タイヤ回転駆動部14は、ベルト(図示せず)等を介さずに、直接にタイヤ保持部12と接続され、回転を伝達してもよい。
【0029】
タイヤ回転駆動部14は、タイヤ保持部12及びタイヤ2の回転数を例えば0.5回転/分から5回転/分までの範囲内の回転数とできるように構成されている。タイヤ回転駆動部14は、減速ギヤ等を含むことができ、タイヤの所望の回転数を実現できるように構成されている。タイヤ回転駆動部14は、外部電源に電気的に接続されているが、バッテリ等で構成され、外部との配線を省略することができる。なお、タイヤ2の回転方向Bは逆の回転方向でもよい。なお、タイヤ2の回転方向と、ブレード20の回転方向とは同じ回転方向でもよい。
【0030】
構造体16は、タイヤ削ぎ装置1の後述する構成要素を搭載する。構造体16は、タイヤ削ぎ装置1の移動をしやすくするための可動輪18を備える。構造体16は、金属、例えばアルミのフレーム及びプレートで主に形成される。よって、タイヤ削ぎ装置1は、タイヤ2を取り付けていない状態で、約70kg~約200kgの範囲内の重量、例えば約100kgの重量で形成される。従って、タイヤ削ぎ装置1は、平均的な大きさの3人程度の大人により搬送できる程度の重量で形成されると共に、平均的な大きさの大人がコンクリート面上に配置されたこの装置を押して移動できるような重量に形成されている。例えば、タイヤ削ぎ装置1は、サーキット場等において、タイヤのセッティングを行いやすくするように人の手で移動可能である。また、例えば、タイヤ削ぎ装置1は、約1m四方の大きさであり且つ約100kg程度の重要であり、移動可能な一つの装置として構成されているため、工場に限られず、サーキットに比較的容易に持ち込むことができ、現場でタイヤのセッティングを自在に調整可能である。
【0031】
タイヤ削ぎ装置1は、さらに、タイヤ2の表面を削ぐように切削するブレード20と、ブレード20を取り付けるブレード取付部22と、ブレード取付部22を回転させるブレード回転駆動部24と、ブレード20をタイヤ2の中心軸線X2から所定距離に位置決め可能な位置決め部26と、タイヤ回転駆動部14やブレード回転駆動部24を制御する制御部60と、を備えている。
【0032】
ブレード20は、ブレード取付部22に取付けられた状態で、トレッド部4を比較的平らにしようとする基本姿勢において、タイヤ2の中心軸線X2とブレード20の刃先20aに沿う刃先線とが、平行な2つの仮想面(第1仮想面及び第2仮想面)上にそれぞれ位置するように配置されている。ここで、中心軸線X2を含む第1仮想面E1は例えば中心軸線X2を含む垂直面であり、刃先20aに沿う刃先線を含む第2仮想面E2は例えば刃先20aを含む別の垂直面である。第1仮想面E1及び第2仮想面E2はそれぞれ、
図4において一点鎖線により例示されている。第2仮想面E2は後述する斜め第2仮想面E3はタイヤ2の接線方向に延びる面である。刃先20aに沿う刃先線は、第2仮想面E2上において斜めに延びてもよい。すなわち、刃先20aはこのような第2仮想面E2上において中心軸線X2と平行な方向以外の角度(例えば、刃先の右側が左側に比べて上方に位置するように5度傾けられた角度等)に設定されてもよい。変形例として記載するように、刃先20aに沿う刃先線は、中心軸線X2と平行な状態から、タイヤの接線方向において+45度から-45度までの範囲内の角度で傾けられていてもよい。
【0033】
仮想面が斜めの仮想面として設定されてもよい。すなわち、中心軸線X2を含む第1仮想面は斜め第1仮想面E4であってもよい。また、刃先20aに沿う刃先線(このときの刃先20aは、
図4の刃先の位置よりも上方のE3上に位置している)を含む第2仮想面は、斜め第2仮想面E3であってもよい。
図4において、斜め第1仮想面E4及び斜め第2仮想面E3についても例示されている。このような2つの仮想面、例えば斜め第1仮想面E4及び斜め第2仮想面E3は、互いに平行に延びている。
【0034】
さらに、ブレード20は、基本姿勢においてタイヤ2の中心軸線X2と平行方向に延びるような刃先20aを形成している。ブレード20は、ブレード取付部22に取付けられたブレード20の刃先20aがタイヤ2の表面に接するときに、刃先20aがタイヤ2の回転方向Bの上流側方向に向けられるようにブレード20が配置されている。なお、刃先20aは回転方向Bの上流側方向に向けられていなくともよい。ブレード20は、比較的薄い厚みの棒状に形成され、直線状に延びている。例えば、ブレード20は、かみそりの刃のようなブレード状に形成される。ブレード20の刃先20aは、長手方向に50mm~310mmの範囲内の長さL(
図5参照)、また例えば80mm~150mmの範囲内の長さを有している。ブレード20は、例えば1mm~3mmの範囲内の厚さA(
図6参照)、また例えば1.5mm~2.5mmの範囲内の厚さを有している。ブレード20は、刃先20aの刃物角度α1が例えば30度~60度の範囲内の角度、また例えば35度~55度の範囲内の角度、さらに例えば40度~50度の範囲内の角度、さらに例えば43度~48度の範囲内の角度となるように形成されている。また、ブレード20は、ブレード20のすくい角度α2が例えば25度~35度の範囲内の角度となるように形成されている。このように、刃先20aが、タイヤ表面の接線に対し比較的大きな角度でタイヤに挿入されることにより、タイヤの表面を切り裂くようにして摩擦を抑制しながら削ぐことができる。よって、削いだ面の熱劣化を抑制することができる。ブレード20は交換式のブレードであり、切れ味が落ちてきた場合には交換又は再研磨することができる。
【0035】
ブレード取付部22は、ブレード20を載せる本体部28と、本体部28との間でブレード20を挟持する押さえ部30とを備えている。ブレード20は、本体部28と押さえ部30との間に挟み込まれるように抑えられている。押さえ部30はボルト32により本体部28に取付けられている。ボルト32を締め付けることにより、押さえ部30が本体部28に固定され、ブレード20が本体部28に固定される。
【0036】
ブレード取付部22は、本体部28とブレード20と押さえ部30とが組み上げられた状態で、概ね筒形の断面の組立体を形成し、概ね円形の外周部を形成する。ブレード取付部22の中心軸線X3(
図3参照)は、タイヤ保持部の中心軸線X1やタイヤ2の中心軸線X2と平行に配置されている。また、中心軸線X3と中心軸線X2との高さ位置は同じ高さ位置とされている。ブレード取付部22は、ブレード20を中心軸線X3と平行な方向に延びるように取付けている。ブレード取付部22は、支持腕23の間で回転可能に支持されている。ブレード取付部22は、ブレード回転駆動部24の回転が伝達されることにより回転される。ブレード取付部22は、ブレード20を取り付けた状態で刃先20aがタイヤ2の回転方向Bの上流側方向に向かうように回転される。なお、ブレード取付部22の回転方向Cは逆の回転方向でもよい。
【0037】
ブレード取付部22は、ブレード20を取り付けた状態で、ブレード20がブレード取付部22の外周面から例えば0.5mm~2mmの範囲内の値の付き出し量、また例えば0.5mm~1.5mmの範囲内の値の付き出し量となるように形成されている。よって、タイヤ表面から突き出し量分の深さまでタイヤが削がれる。付き出し量が比較的小さい値とされているので、一回の切削によるタイヤ表面への負荷や摩擦を抑制し、熱の発生を抑制できる。また、タイヤ2の表面層の例えば0.1mm~1mm程度の深さまで、また例えば0.1mm~0.5mm程度の深さまでを削ぐように切削することにより、熱の影響を受けやすい表面部分のみを除去することができる。また、表面を刃により削ぐため、表面が鋭利な刃物で切り取ったように滑らかな表面を形成する。従って、サンダ等の砥石で研磨した後の表面に比べて、滑らかな表面が形成され、走行時にタイムを落とす原因となる表面の細かな凹凸を抑制できる。さらに、タイヤ2の表面層のみを限定的に除去することにより、走行使用後(例えばサーキットでのタイムトライアル走行後)に再度タイヤ2の表面層を除去することができるように、タイヤ2のトレッド層を残すことができ、使用回ごとに複数回にわたりタイヤ2の表面層を除去して走行に臨むことができる。もちろんタイヤの安全性に配慮して削りは行われる。なお、例えばブレード20及びブレード取付部22を組付けた状態でワークの直径φは約48mmとなっている。
【0038】
ブレード回転駆動部24は、ブレード回転伝達部25に内蔵されたプーリ(図示せず)及びベルト(図示せず)を介して、ブレード取付部22と接続されている。ブレード回転駆動部24は、電動式のモータである。ブレード回転駆動部24は、モータの回転をブレード回転伝達部25内のプーリ及びベルトを介してブレード取付部22に伝達している。ブレード回転駆動部24は、上記ブレード取付部の回転数を、例えば100回転/分から20000回転/分までの範囲内の回転数、また例えば1000回転/分から10000回転/分までの範囲内の回転数、さらに例えば1000回転/分から8000回転/分までの範囲内の回転数とできるように構成されている。例えば、ブレード回転駆動部24により回転される上記ブレード取付部の回転数は、タイヤの回転数よりも比較的大きな回転数、例えば100回転/分以上の回転数であればよい。トレッド部は金属のブレードに比べれば比較的柔らかいため100回転/分以上の回転数でも削ぎのために比較的大きな回転数となる。よって、ブレード取付部22の回転数は、例えば100回転/分から20000回転/分までの範囲内の回転数、また例えば1000回転/分から10000回転/分までの範囲内の回転数、さらに例えば1000回転/分から8000回転/分までの範囲内の回転数とされている。例えば、ブレード取付部22の回転数は、タイヤの回転数よりも比較的大きな回転数、例えば100回転/分以上の回転数であればよい。トレッド部は金属のブレードに比べれば比較的柔らかいため100回転/分以上の回転数でも削ぎのために比較的大きな回転数となる。ブレード回転駆動部24は、ブレード取付部22の所望の回転数を実現できるように構成されている。変形例としてブレード回転駆動部24は、ブレード回転伝達部25に内蔵されたギヤ等を介して、ブレード取付部22と接続されてもよい。他の変形例として、ブレード回転駆動部24は、ベルト(図示せず)等を介さずに、直接にブレード取付部22と接続され、回転を伝達してもよい。
【0039】
上記ブレード取付部に取付けられた上記ブレードの周速は、例えば150m/分から3000m/分までの範囲内の値、また例えば、例えば150m/分から1300m/分までの範囲内の値である。周速は、ブレードが回転している場合におけるブレードの接線方向の速度であり、刃先の速度を示している。「周速」=ワークの直径(例えばブレード及びブレード取付部を組付けたワークの直径φ=48mm)× π × ワークの回転数(例えば4000回転/分)÷ 1000、により求められる。例えば、ワークの直径φ=48mmのとき、周速=φ48mm×π×4000rpm÷1000=603.2m/分となる。また、例えば、ワークの直径φ=48mmのとき、周速=φ48mm×π×20000rpm÷1000=3014.4m/分となる。
また、例えば、ワークの直径φ=48mm且つワークの回転数1000回転/分のとき、周速=φ48mm×π×1000rpm÷1000=150.7m/分となる。また、例えば、ワークの直径φ=48mm且つワークの回転数8000回転/分のとき、周速=φ48mm×π×8000rpm÷1000=1205.7m/分となる。このように、上記ブレードの周速は、例えば150m/分から1300m/分までの範囲内の値であってもよい。
ブレードがこのような刃先の速度を有することにより、刃先20aがタイヤ2の表面内に入るときに、刃先20aの先端よりもさらに上流側の位置からタイヤ2の表面が切り分かれ易くなり、表面を削ぐときの熱の発生を抑制できる。
【0040】
位置決め部26は、ブレード20及びブレード取付部22をタイヤ2に向かう第1方向に移動できるように構成されている第1調整機構34と、ブレード20及びブレード取付部22を第1方向と直交する第2方向に移動できるように構成されている第2調整機構36と、第1方向と第2方向との間でブレード20の傾きを調整できるように構成されているブレード角調整機構38と、ブレード20の突き出し量を測定する計測装置40(
図3参照)と、を備えている。
【0041】
第1調整機構34は、ブレード20及びブレード取付部22とブレード回転駆動部24等とを載せた状態で第1方向に移動可能に形成されている。第1方向は、矢印D1に示すように(
図3参照)、例えば、タイヤ2の半径方向外側から中心方向に向かう方向である。第1方向は、例えば前後方向である。よって、第1調整機構34は、ブレード取付部22及びブレード20の第1方向、例えば前後方向、の位置を調整する。
【0042】
第1調整機構34は、操作者が手動操作できるハンドル部42と、ブレード20及びブレード取付部22とブレード回転駆動部24とを載せた状態で第1方向に移動可能な第1位置調整テーブル44と、を備えている。第1調整機構34は、ハンドル部42が回転操作されることにより、ねじ軸45が回転され、第1位置調整テーブル44が前後方向に移動される。第1調整機構34は、ねじ式の位置調整機構を形成している。第1位置調整テーブル44は、例えば、第1方向に前後それぞれ約100mm移動可能である。なお、第1調整機構34は、電動駆動部により第1方向の位置が調整されてもよい。
【0043】
第1位置調整テーブル44は、ブレード角調整機構38のブレード角調整テーブルの上側に配置され、第1位置調整テーブル44の下側のテーブルに対して相対的に前後に移動するように形成されている。第1調整機構34は、ブレード20の刃先20aの位置を、例えばミリ単位、さらに例えば0.1ミリ以下の単位(例えば0.01ミリ単位)まで比較的高い精度で調整するように形成されている。
【0044】
第2調整機構36は、第1調整機構34及びブレード角調整機構38を上側に載せた状態で第2方向に移動可能に形成されている。第2方向は、矢印D2に示すように(
図3参照)、第1方向と直交する方向、例えばタイヤ2の中心軸線X2に沿う方向である。第2方向は、例えば左右方向である。よって、第2調整機構36は、ブレード取付部22及びブレード20の第2方向、例えば左右方向、の位置を調整する。
【0045】
第2調整機構36は、第1調整機構34及びブレード角調整機構38を載せた状態で第2方向に移動可能な第2位置調整テーブル46を備えている。第2位置調整テーブル46は、左右方向に並行に延びるレール47上でスライド可能に配置され、操作者の手動操作によりレール上を移動可能に形成されている。第2位置調整テーブル46は、例えば、第2方向にそれぞれ約450mm移動可能である。なお、第2調整機構36は、電動駆動部により第2方向の位置が調整されてもよい。
【0046】
第2位置調整テーブル46は、構造体16上に概ね水平に配置され、構造体16の上面に対して相対的に左右に移動するように形成されている。よって、第2調整機構36は、ブレード20の刃先20aの位置を、水平面上において左右方向に調整するように形成されている。よって、ブレード20は、第1調整機構34及び第2調整機構36により位置決めされる。
【0047】
ブレード角調整機構38は、第1調整機構34を上方側に載せた状態で自身の左右方向への傾きを変更可能に形成されている。よって、ブレード角調整機構38は、第1調整機構34のブレード取付部22及びブレード20の左右方向への傾きを調整できる。
【0048】
ブレード角調整機構38は、操作者が手動操作できる把持部48と、第1調整機構34を載せた状態で水平面上で左右方向に回動可能な角度調整テーブル50と、を備えている。ブレード角調整機構38の角度調整テーブル50は、2本の弧状の溝部51を有し、この2つの溝部51内に、第2位置調整テーブルから上方に延びる突起部52がそれぞれ通されている。従って、角度調整テーブル50は、第2位置調整テーブル46上の平面内で回動可能に形成されている。角度調整テーブル50は、さらに、目盛りを指し示す目盛指示部54を備えている。目盛指示部54は、第2位置調整テーブル46の側方且つ目盛指示部54の下方に設けられた目盛板上の目盛りを指し示すようになっている。目盛りには、後述するような例えば-30度~+30度の角度が記載されている。ブレード角調整機構38は、操作者が把持部48を把持しながら自身が回動操作されることにより、ブレード20の向き(タイヤの中心軸線X2に対する角度)が変更される。なお、ブレード角調整機構38は、電動式の回動装置により形成されてもよい。
【0049】
ブレード角調整機構38は、角度が0度となる基本姿勢(
図3において角度0度の基本姿勢が示されている)において、ブレード20の刃先20aの刃先に沿う線がタイヤの中心軸線X2と平行になるように、形成されている。ブレード角調整機構38は、角度が0度となる基本姿勢において、ブレード20の刃先20aに沿う刃先線が、タイヤ2の中心軸線X2を通る第1仮想面E1(斜め第1仮想面E4)と平行な第2仮想面E2(斜め第2仮想面E3)上に配置されるようにブレードを配置している。刃先20aはこのような第2仮想面E2(斜め第2仮想面E3)上において中心軸線X2と平行な方向以外の角度(例えば、刃先の左側が右側に比べて上方に位置するように5度傾けられた角度等)に設定されてもよい。
また、ブレード角調整機構38は、角度を例えば-40度~+40度、また例えば-30度~+30度までの範囲内の角度で変更できる。ブレード角調整機構38の角度が-30度となるとき、ブレードの刃先に沿う線が、中心軸線X2に対して30度左側に傾けられる。ブレード角調整機構38の角度が+30度となるとき、ブレードの刃先に沿う線が、中心軸線X2に対して30度右側に傾けられる。ブレード角調整機構38は、このようなブレード20の角度を1度以下のレベルまで比較的正確に調整可能である。
【0050】
ブレード角調整機構38は、第2位置調整テーブル46上に概ね水平に配置され、第2位置調整テーブル46に対して相対的に角度を変更するように形成されている。よって、ブレード角調整機構38は、ブレード20の刃先20aの傾きの角度を、調整するように形成されている。他の言い方によれば、第2調整機構36は、ブレード20の向きをタイヤ2を中心として左右方向に向けることができる。また、このようなブレード角調整機構38により、タイヤ2のトレッド部4(
図8参照)やショルダ部5(
図8参照)の削ぎ面の設定角度を比較的詳細に設定できる。
【0051】
計測装置40は、第1調整機構34によりブレード20が第1方向に移動される量(ブレード20がタイヤに向けて突き出される量)を測定する。計測装置40は、第1調整機構34の第1位置調整テーブル44から立ち上がるように形成された第1テーブル側測定部56と、ブレード角調整機構38の角度調整テーブル50から延びる支持部に取り付けられた計測器58とを備える。第1テーブル側測定部56は、第1位置調整テーブル44の上面に取り付けられ、第1位置調整テーブル44から上方に立ち上がるように形成されている。第1テーブル側測定部56は、第1位置調整テーブル44の位置を測定するための基準部として使用される。
【0052】
計測器58は、第1位置調整テーブル44が角度調整テーブル50に対して相対的に移動した距離を計測できる。より詳細には、計測器58は、第1テーブル側測定部56が計測器58の計測器側測定部59と当接した位置から第1方向に移動した(突き出した)距離を計測できる。計測器58は、例えばダイヤルゲージである。計測器58は、計測58器内部に押し込まれる距離に応じて距離を計測する計測器側測定部59を備えている。計測器58は、計測器側測定部59が第1テーブル側測定部56に当接した位置から押し込まれた距離を表示する。計測器は、例えば、0.01mmの単位であっても距離を比較的に測定できる。このような計測装置40を使用することにより、削りの深さや量を所望の量に管理することができる。さらに、車両の左右のタイヤ2の削り量を同じ量とすることができる。また、車両の左右のタイヤ2の削り角度を左右対称にすることもできる。よって、左右のカーブに対応した走行性能を適切に設定できる。
【0053】
位置決め部26は、ブレード20をタイヤ2の中心軸線X2から所定距離に固定し且つ位置決めして、タイヤ2の表面を削ぐことができる。本来タイヤはゴム成形品であるため、製造時の形状の精度にばらつきがあるものであるが、本実施形態の構成により敢えてタイヤを削ることによりタイヤ2を概ね均一な径の円形(例えば真ん円の円形)に比較的高精度で形成することができる。これにより、モータースポーツにおける走行において、高速走行時のタイヤ2の接地がより安定し、サーキットの一周のタイムを例えば0.1秒のレベルでさらに縮めていくことに効果を奏することができる。
【0054】
制御部60(
図1参照)は、タイヤ回転駆動部14やブレード回転駆動部24の回転数(及びこれらの回転数を介してタイヤ2の回転数やブレード取付部22及びブレード20の回転数)やON・OFF等を制御する。制御部60は、ダイヤル操作により回転数やON・OFF等を制御するように接続された機器を制御する。位置決め部26の各部が電動装置により構成される場合には、制御部60は、電気的にこれらの機器を制御してもよい。制御部60は、タイヤ回転駆動部14やブレード回転駆動部24等と互いに電気的に接続されている。これらの電気的な接続は、無線通信等により行われてもよい。また、タイヤ回転駆動部14やブレード回転駆動部24等をプログラムに基づいて自動制御しようとする場合には、制御部60は、CPU及びメモリ等を内蔵してもよく、その場合には、メモリ等に記録された所定の制御プログラムに基づいて回転数やON・OFF等を制御するように接続された機器を制御する。
【0055】
タイヤ削ぎ装置1は、さらに、
図4に示すように界面活性剤の成分を含む液体64を溜める液溜め部62を備えていてもよい(他の図においては液溜め部62は図示を省略する)。液溜め部62は、タイヤの下方において、タイヤ2の下部のトレッド部4及びショルダ部5を液体64に浸すように配置される。液溜め部62は、上面視で四角形状に形成され、内側に例えば界面活性剤の成分を含む液体64(
図4において液面の一部を破線により示す)を溜めることができるように形成されている。界面活性剤の成分を含む液体64は、例えば、中性洗剤を水で薄めた液体、石鹸水等である。界面活性剤の成分を含むことにより、ブレードの刃がタイヤをスムーズに削ぎやすくできる。液溜め部62は、タイヤ保持部12に保持されている状態のタイヤ2の最下部が内側に収められ、液体64にトレッド部4及びショルダ部5の下端部が浸るように形成されている。よって、タイヤの表面を濡らすことができると共に、液体による冷却及び液体の蒸発に伴う冷却によりタイヤを冷却して、刃先により削ぎやすくできる。特にタイヤが比較的高温の場合には、液溜め部62によりタイヤを冷却しながらタイヤを削ぐことで、タイヤを所定の形状に形成しやすくできる。なお、界面活性剤の成分を含む液体の代わりに、界面活性剤の成分を含まない液体、例えば水等を用いてもタイヤの冷却等につき一定の効果を奏する。なお、液溜め部62は、省略されてもよい。
【0056】
次に、
図9を参照して、本実施形態におけるタイヤ削ぎ方法について説明する。
図9に示すように、タイヤ削ぎ方法においては、先ず、S1において、上述のようなタイヤ削ぎ装置1を準備する準備ステップが実行される。タイヤ削ぎ装置1において、例えばブレード20がブレード取付部22に取付けられ、タイヤ削ぎ装置1が作動可能な状態とされる。タイヤ削ぎ装置1の準備ステップS1が行われると、S2に進む。
【0057】
S2においては、表面を削ぐ対象のタイヤ2をタイヤ保持部12に取付ける取付ステップが実行される。タイヤ2はタイヤ保持部12により回転可能に保持される。取付ステップS2が実行されると、S3に進む。
【0058】
S3においては、タイヤ回転ステップが実行される。タイヤ2はタイヤ保持部12により保持された状態で、タイヤ回転駆動部14により予め定めた回転方向に回転される。タイヤ回転ステップS3において、タイヤ2は矢印B(
図7参照)に示すような回転方向に0.5回転/分から5回転/分までの範囲内の回転数で回転される。タイヤ回転ステップS3が実行されると、S4に進む。
【0059】
S4においては、ブレード20を取り付けたブレード取付部22を回転させるブレード回転ステップが実行される。ブレード回転ステップS4において、ブレード取付部22及びブレード20は、矢印Cに示すような(
図7参照)、予め定めた回転方向に回転される。また、ブレード取付部22及びブレード20は、1000回転/分から8000回転/分までの範囲内の回転数で回転される。ブレード回転ステップS4が実行されると、S5に進む。なお、タイヤ回転ステップS3とブレード回転ステップS4との実行順は逆でもよいし、ほぼ同時に実行されるように同期されていてもよい。
【0060】
次いで、S5において、ブレード20をタイヤ2の中心軸線X2から所定距離に位置決めする位置決めステップS5が実行される。位置決めステップS5においては、位置決め部26により、ブレード20、例えばブレード20の刃先20aをタイヤの中心軸線X2から所定距離に位置決めする。これにより、ブレード20によりタイヤ2の表面をどのくらいの深さ削ぎ取るか、また、最終的にどのような径(及び形状)のタイヤを形成するかを設定することができる。位置決めステップS5が実行され、ブレード20の刃先20aがタイヤ2に当たる位置に進められるとき、表面の削ぎ取りが始まり、自動的にS6に進む。すなわちS5とS6はほぼ同時に実行されてもよい。また、位置決めステップS5のうち一部は、S4までのステップと同時又は前後して行われてもよい。例えば、第2調整機構36による第2方向への位置決めは、S3の前に実行されてもよい。
【0061】
次いで、S6において、ブレード20によりタイヤ2の表面を削ぎ取るように切削するタイヤ削ぎステップS6が実行される。タイヤ削ぎステップS6において、ブレード20は、ブレード回転駆動部24により、所定の回転数で回転されている。また、タイヤ2もタイヤ回転駆動部14により、所定の回転数で回転されている。回転されるブレード20がタイヤの表面に当たることによりタイヤの表面が削がれる。よって、タイヤの表面の走行時のヒートサイクルによる熱劣化部分(硬化して劣化した部分)を全部又は少なくとも一部まで除去できる。さらに、ブレード20により、削ぎ取りに伴うタイヤの表面の加熱による劣化を抑制するようにタイヤの表面を削り取ることができる。すなわち、タイヤの表面を研磨する場合に生じる熱と比べて、タイヤの表面を削ぐ場合に生じる熱は比較的小さいので、タイヤの表面の加熱による劣化を抑制できる。ブレード20によるタイヤ2の削ぎ取りが開始された位置をタイヤ2に印をつけ、トレッド部4を一周するまで削ぎ取りが実行された後、第1調整機構34によりブレード20の刃先20aをさらにタイヤ2に進める。このように一回の削ぎ取り深さを例えば0.1mm~1mm程度に抑制し、複数回に分けて削ることでタイヤへの負荷を抑制できる。
【0062】
なお、タイヤ削ぎステップS6においては、タイヤ2の下部に、液溜め部62が設けられ、タイヤ2のトレッド部及びショルダ部の下端部が液体64に浸った状態で、タイヤの表面が削がれてもよい。液溜め部62に中性洗剤を水で薄めた液体、石鹸水等の液体をためて置き、タイヤ表面を冷却しながら表面を削ぐことにより、より効率的にタイヤの表面が加工できる。このような構成により中性洗剤の界面活性剤により削ぐときの潤滑を向上させる効果を奏すると共に、タイヤのゴムが冷却されて削ぐときに切れやすくなる効果を奏する。また、湿らせなくてもタイヤ削ぎステップS6は実行可能である。
また、ブレード20は、直線状の刃先を形成しており、タイヤ2の表面は左右方向の所定幅にわたって切り取られるように切削される。これにより、タイヤ2のトレッド部4を平坦に削りやすくなっている。ブレード20によりタイヤ2の表面を削ぎ取ることにより、リトレッド用の加工面ではなく、タイヤ2の中心軸線から所定距離にタイヤの走行面(走行用のトレッド部4の面及びショルダ部5の面)を形成させることができる。走行面は、例えばトレッド部の路面との接地面、また例えば走行用のトレッド部の路面との接地面及び又はショルダ部の路面との接地面である。また、ブレード20は、タイヤ2のひげのみの除去を行うのではなく、ひげの形成されているトレッド部に所定幅の平坦面を形成するように表面を削ぎ取る。よって、ひげの基部のわずかな凹凸がトレッド部に残ることを抑制し、ブレード20により表面のわずかな凹凸も抑制されているタイムアタック走行等用の走行面が形成できる。
【0063】
図8において、削られた後のタイヤの状態を例示している。
図8は、本実施形態のタイヤ削ぎ装置により削られるタイヤの断面の一部を拡大した部分拡大断面図である。削られる前のタイヤ2の断面の形状を実線により示し、削られた後のタイヤのトレッド部4の表面の形状を削ぎ面2aとして破線により例示している。削られた状態を分かりやすく示すことが目的であるので、削りの深さ(量)はあくまでも例として示されている。例えば、タイヤ2のトレッド部4を軸線方向に沿って平坦に削ることにより、タイヤ2の幅方向の接地面積を向上させ、タイヤの走行性能を極限まで引き出しやすくなるようなタイヤの走行面が形成されている。また、表面において走行後のヒートサイクルにより硬化し且つ劣化した部分が削られることにより、比較的柔軟且つフレッシュな面が露出され、タイヤ本来の走行性能が再び発揮されやすくなっている。さらに、タイヤ削ぎ装置1によりサーキット走行時にタイヤ2の表面に付着したごみ等を取り除くことができるので、タイヤ表面をクリーンな状態にでき、次回の走行時にタイヤ本来の走行性能が発揮されやすくなる。
【0064】
タイヤ削ぎ方法におけるS1~S6までのステップにより表面が削がれたタイヤが製造されることから、これらのステップは表面が削がれたタイヤの製造方法としても記載されている。
【0065】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、タイヤ2の表面を削ぐことにより、削ぐときのタイヤ2の表面の熱劣化を抑制しながら、タイヤ2の中心軸線X2から所定距離にタイヤ2の走行面を形成できる。これにより、削ぐときのタイヤ2の表面の熱劣化を抑制しながら、タイヤ2のトレッド部4に接地を向上する走行面を形成できると共に、タイヤ2に所定の径を有する円に近づけた走行面を形成できる。よって、タイヤ2の走行性能を極限まで引き出しやすくなるようなタイヤ2の走行面を形成できる。従って、例えば、サーキットでのタイムアタック等に使用するタイヤ2において、0.1秒等のタイムを縮めるため、タイヤ2の本来の走行性能を極限まで引き出しやすくできる。
【0066】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、ブレード20の刃先20aに沿う刃先線は、タイヤ2の中心軸線X2を通る第1仮想面(例えば第1仮想面E1又は斜め第1仮想面E4)と平行な第2仮想面(例えば第2仮想面E2又は斜め第2仮想面E3)上に配置される。これにより、タイヤ2の表面の削ぎ落しにより、タイヤ2の表面に、タイヤの中心軸線X2の含まれる第1仮想面と平行な第2仮想面に沿った比較的平らな面が形成されやすくなる。従って、タイヤ2の表面を削ぐことによる熱劣化をより抑制しやすくできると共に、タイヤ2の走行性能を極限まで引き出しやすくなるようなタイヤ2の走行面をより形成しやすくできる。
【0067】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、ブレード20の刃先20aに沿う刃先線は、タイヤ2の中心軸線X2と平行な状態から、タイヤ2の接線方向において中心軸線X2に対し+45度から-45度までの範囲内の角度で傾けられている。これにより、タイヤ2の表面の削ぎ落しにより、タイヤ2の表面に、タイヤ2の接線方向においてタイヤの中心軸線X2の含まれる面に沿った比較的平らな面が形成されやすくなる。従って、タイヤ2の表面を削ぐことによる熱劣化をより抑制しやすくできると共に、タイヤ2の走行性能を極限まで引き出しやすくなるようなタイヤ2の走行面をより形成しやすくできる。
【0068】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、ブレード20の刃先は、タイヤ2の中心軸線X2と平行方向に延び、タイヤ2の表面と平行方向に延びることができる。これにより、タイヤ2の表面の削ぎ落しにより、タイヤ2の表面にタイヤ2の中心軸線X2と平行方向に平らな平面が形成されやすくなる。従って、タイヤ2の表面を削ぐことによる熱劣化をより抑制しやすくできると共に、タイヤ2の走行性能を極限まで引き出しやすくなるようなタイヤ2の走行面をより形成しやすくできる。
【0069】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、刃先20aの角度は、30度から60度までの範囲内の角度とされている。従って、タイヤ2の表面を比較的薄く削ぎ取るときの熱の発生をより抑制できる。これにより、タイヤ2の表面を削ぐことによる熱劣化をより抑制できる。
【0070】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、刃先20aの角度は、所定角度とされ、さらにブレード回転駆動部24により回転されるブレード取付部22の回転数は、1000回転/分から8000回転/分までの範囲内の回転数である。これにより、刃先20aがタイヤ2の回転方向の上流側に向けてタイヤ2表面内に入るときに、刃先20aの先端よりもさらに上流側の位置からタイヤ2の表面が切れ別れ易くなる。よって、タイヤ2の表面を削ぐときの熱の発生をさらに抑制できる。従って、タイヤ2の表面を削ぐことによる熱劣化をさらに抑制できる。
【0071】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、刃先20aの角度は、所定角度とされ、さらにブレード回転駆動部24により回転されるブレード取付部22の回転数は、タイヤの回転数よりも大きくされる。これにより、ブレード回転駆動部24により回転される刃先20aがタイヤ2の回転速度よりも大きな速度でタイヤ2表面内に入るので、タイヤ2を回転させている場合でも刃先20aがタイヤ2の回転方向の上流側に向けてタイヤ2表面内に入るときに、刃先20aの先端よりもさらに上流側の位置からタイヤ2の表面が切り分かれ易くなる。よって、タイヤ2の表面を削ぐときの熱の発生をさらに抑制できる。これにより、タイヤ2の表面を削ぐことにより熱劣化をさらに抑制できる。
【0072】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、ブレード20の周速は、150m/分から1300m/分までの範囲内の値である。これにより、刃先20aがタイヤ2の表面内に入るときに、刃先20aの先端よりもさらに上流側の位置からタイヤ2の表面が切れ別れ易くなる。よって、タイヤ2の表面を削ぐときの熱の発生をさらに抑制できる。従って、タイヤ2の表面を削ぐことによる熱劣化をさらに抑制できる。
【0073】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、タイヤ削ぎ装置1は、さらに、液体を溜める液溜め部62を備え、液溜め部62は、タイヤ2の下部を液体に浸すように配置される。これにより、タイヤ2を冷却してブレード20により削ぎやすくできると共に、例えば液体の成分によりブレード20の刃がタイヤ2をスムーズに且つ所望の形状に削ぎやすくできる。
【0074】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、タイヤ2の表面を削ぐことにより、削ぐときのタイヤ2の表面の熱劣化を抑制しながら、タイヤ2の中心軸線X2から所定距離に上記タイヤ2の走行面を形成することができる。これにより、削ぐときのタイヤ2の表面の熱劣化を抑制しながら、タイヤ2のトレッド部4に接地を向上する走行面を形成できると共に、タイヤ2に所定の径を有する円に近づけた走行面を形成できる。よって、タイヤ2の走行性能を極限まで引き出しやすくなるようなタイヤ2の走行面を形成できる。従って、例えば、サーキットでのタイムアタック等に使用するタイヤ2において、0.1秒等のタイムを縮めるため、タイヤ2の本来の走行性能を極限まで引き出しやすくできる。
【0075】
本発明を実施するための形態は上記に限定されるものではなく、さらなる他の変形例を適用することができる。タイヤ削ぎ装置1は、さらに、ブレード20を上下方向において斜めに傾けるように構成されている第3調整機構を備えていてもよい。第3調整機構は、ブレード取付部22の右側部分と左側部分のそれぞれの支持部の高さを変更可能な機構である。これにより、例えば、ブレード20は、ブレード取付部22に取付けられた状態で、刃先20aに沿う刃先線は、中心軸線X2と平行な状態から、タイヤの接線方向において中心軸線X2に対して+45度から-45度までの範囲内の角度で傾けられている。例えば、刃先20aの右側が左側に対して、やや上方に位置し、刃先20aが約5度の傾きで配置される。タイヤのトレッド部に対してブレードは右側から左側に下るように斜めに配置される。ここで、モータースポーツにおける走行後(例えば高速走行後1日程度までは比較的タイヤの温度が高い状態となる)や外気温が高くタイヤの温度が比較的高いとき、所定幅(例えば約80mmの幅)のブレード20全体をタイヤの表面に当て、例えば0.5mm以上の深さまで削ろうとすると、ゴムが負荷に耐え切れず、ゴムがいわゆるストリングチーズのように柔らかく裂けてしまう問題が生じる場合がある。このような課題に対し、ブレードの刃先20aが中心軸線X2に対して縦方向の面(例えば仮想面E2)上において左右方向に傾けて設けられれば(例えばブレード20及びブレード取付部22を傾ける)、タイヤの表面への抵抗による負荷を抑制し、タイヤの表面が裂けることを抑制できる。また、ブレード20はわずかな程度の上下方向の傾きであるので、依然として、ブレード20によりタイヤの表面に平面を形成しやすくできる。よって、このような構造によれば、タイヤ削ぎの効率化と信頼性の向上とを両立することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 :装置
2 :タイヤ
2a :タイヤ
4 :トレッド部
6 :外周部
12 :タイヤ保持部
14 :タイヤ回転駆動部
20 :ブレード
20a :刃先
22 :ブレード取付部
24 :ブレード回転駆動部
26 :位置決め部
B :回転方向
C :回転方向
X1 :中心軸線
X2 :中心軸線
X3 :中心軸線