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特開2024-129963防水シート、樹脂組成物およびシーリング材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129963
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】防水シート、樹脂組成物およびシーリング材
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20240920BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20240920BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20240920BHJP
   C08K 3/014 20180101ALI20240920BHJP
   E04D 5/06 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C09K3/10 Z
C08L27/06
C08L33/06
C08K3/014
E04D5/06 B
C09K3/10 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039399
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000223403
【氏名又は名称】住ベシート防水株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】天牛 英清
(72)【発明者】
【氏名】別宮 浩之
【テーマコード(参考)】
4H017
4J002
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AB10
4H017AC16
4H017AD03
4H017AE03
4J002BB062
4J002BB072
4J002BD031
4J002BG032
4J002CD162
4J002CF002
4J002DA030
4J002DE130
4J002DE230
4J002EH146
4J002FD022
4J002FD026
4J002FD037
4J002FD090
4J002FD200
4J002GJ02
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】躯体に防水を施すシート防水構造において、このシート防水構造が備える防水シートからの可塑剤の漏出が的確に抑制または防止された防水シート、かかる防水シートの成形に用いられる樹脂組成物、および、かかる防水シートのシーリングに用いられるシーリング材を提供すること。
【解決手段】本発明の防水シートは、躯体100に防水を施すシート防水構造10が備える防水シート30に適用し得るものであり、塩化ビニル系樹脂と可塑剤とを含有し、可塑剤は、その分子量が300以上であり、かつ、その溶解パラメーターが8.2(cal/cm31/2以上9.8(cal/cm31/2以下であることを満足する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体に防水を施すシート防水構造が備える、塩化ビニル系樹脂と可塑剤とを含有する防水シートであって、
前記可塑剤は、その分子量が300以上であり、かつ、その溶解パラメーターが8.2(cal/cm31/2以上9.8(cal/cm31/2以下であることを特徴とする防水シート。
【請求項2】
前記可塑剤は、前記分子量をXとし、前記溶解パラメーターをYとしたとき、下記式(I)~(III)で取り囲まれる領域内となる、前記分子量Xおよび前記溶解パラメーターYを有する請求項1に記載の防水シート。
Y = -5.12×10-7X+9.3 … (I)
Y = 1.01×10-6X+9.0 … (II)
X = 800 … (III)
【請求項3】
前記可塑剤は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体を含む請求項1に記載の防水シート。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、無官能のアクリル酸エステル単量重合体である請求項3に記載の防水シート。
【請求項5】
前記可塑剤は、エチレンをユニットとして含むエチレン系共重合エラストマーを含む請求項1に記載の防水シート。
【請求項6】
前記可塑剤は、前記塩化ビニル系樹脂100.0重量部に対して、20.0重量部以上90.0重量部以下の含有量で、当該防水シートに含まれる請求項1に記載の防水シート。
【請求項7】
当該防水シートは、さらに、安定剤を含む請求項1に記載の防水シート。
【請求項8】
前記塩化ビニル系樹脂は、その溶解パラメーターが9.4(cal/cm31/2以上10.8(cal/cm31/2以下である請求項1に記載の防水シート。
【請求項9】
下記評価方法Aによる前記可塑剤の残存率Aが90.0%以上である請求項1に記載の防水シート。
(評価方法A)
まず、厚さ2.0mm×縦90mm×横90mmの大きさの当該防水シートからなる第1試験片を作製した後、該第1試験片の重量[g]を、初期の重量として測定する。
次いで、上部開口を有する貯留空間を備え、該貯留空間の底部で、前記第1試験片の表面をΦ60mmの円形で露出させた状態で前記第1試験片を装着させ得る貯留槽を用意し、該貯留槽に前記第1試験片を装着する。
次いで、前記第1試験片が装着された状態の前記貯留槽の前記貯留空間に、15gの泥(JIS Z 8901の試験用粉体1(11種タイプ))と、25mLの純水とを添加した後に、前記貯留槽を80℃のオーブン内に84日間保管する。このとき、25mLの純水の添加を12時間毎に実施する。
次いで、前記貯留槽から前記第1試験片を取り出し、洗浄・乾燥した後の前記第1試験片の重量[g]を、乾湿繰り返し後の重量として測定する。そして、前記初期の重量を100.0%としたときに算出される、前記乾湿繰り返し後の重量[%]を、前記可塑剤の残存率A[%]として求める。
【請求項10】
下記評価方法Bによる前記可塑剤の残存率Bが70.0%以上である請求項1に記載の防水シート。
(評価方法B)
まず、厚さ2.0mm×幅30mm×長さ100mmの大きさの当該防水シートからなる第2試験片を作製した後、JIS A 6008に準拠した引張試験に基づいて、該第2試験片の伸び率[%]を、初期の伸び率として測定する。
次いで、前記第2試験片の一方の面に厚さ2.0mm×幅35mm×長さ110mmの大きさのブチルゴムからなるブチルゴムテープを貼付し、その後、このものを、80℃のオーブン内に28日間保管する。
次いで、前記第2試験片から前記ブチルゴムテープを剥離させた後、JIS A 6008に準拠した引張試験に基づいて、前記第2試験片の伸び率[%]を、保管後の伸び率として測定する。そして、前記初期の伸び率を100.0%としたときに算出される、前記保管後の伸び率[%]を、前記可塑剤の残存率B[%]として求める。
【請求項11】
前記シート防水構造は、躯体が有する床部および該床部から立設する壁部の少なくとも一部を覆う第1防水シートを備え、
当該防水シートは、前記第1防水シートに適用される請求項1に記載の防水シート。
【請求項12】
前記シート防水構造は、躯体が有する床部および該床部から立設する壁部の少なくとも一部を覆う第1防水シートと、該第1防水シートの一部を覆う第2防水シートとを備え、
当該防水シートは、前記第2防水シートに適用される請求項1に記載の防水シート。
【請求項13】
請求項1に記載の防水シートの成形に用いられる樹脂組成物であって、
前記塩化ビニル系樹脂と、前記可塑剤とを含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の防水シートの端部近傍を選択的に被覆する被覆層を形成するのに用いられるシーリング材であって、
前記塩化ビニル系樹脂と、前記可塑剤と、溶媒とを含むことを特徴とするシーリング材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、躯体に防水を施すシート防水構造に用いられる防水シート、かかる防水シートの成形に用いられる樹脂組成物、および、かかる樹脂組成物を含むシーリング材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の高耐久化が求められるに伴って、多くの建築物の屋上やベランダ等において、防水シート(樹脂シート)を敷設施工したシート防水構造が採用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このシート防水構造は、例えば、防水シートと複数の固定ディスクとを備えるものであり、躯体の少なくとも一部に敷設された防水シートを、固定ディスクを介して、躯体に対して接合(固定)する構成とすることで、躯体に対する雨水等に対する防水性が確保される。
【0004】
このような構成のシート防水構造では、防水シートとしては、例えば、塩化ビニル系樹脂と可塑剤とを含有するものが用いられる。この防水シートおいて、雨水や、日光に曝されることで、経年的に可塑剤が防水シートから漏出し、その結果、防水シートの柔軟性が低下することに起因して、防水シートに亀裂や破断等が生じ、躯体自体に水が浸入してしまうと言う問題、すなわち、シート防水構造の防水性が低下すると言う問題が生じる。
【0005】
そのため、防水シートの柔軟性の低下、さらには防水シートにおける亀裂や破断等が生じてしまうのを防止することを目的に、経年的な可塑剤の防水シートからの漏出が、的確に抑制または防止された防水シートの開発が求められる。しかしながら、現状のところ、この可塑剤の防水シートからの漏出が十分に抑制されているとは言えないのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-53517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、躯体に防水を施すシート防水構造において、このシート防水構造が備える防水シートからの可塑剤の漏出が的確に抑制または防止された防水シート、かかる防水シートの成形に用いられる樹脂組成物、および、かかる防水シートのシーリングに用いられるシーリング材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)~(14)に記載の本発明により達成される。
(1) 躯体に防水を施すシート防水構造が備える、塩化ビニル系樹脂と可塑剤とを含有する防水シートであって、
前記可塑剤は、その分子量が300以上であり、かつ、その溶解パラメーターが8.2(cal/cm31/2以上9.8(cal/cm31/2以下であることを特徴とする防水シート。
【0009】
(2) 前記可塑剤は、前記分子量をXとし、前記溶解パラメーターをYとしたとき、下記式(I)~(III)で取り囲まれる領域内となる、前記分子量Xおよび前記溶解パラメーターYを有する上記(1)に記載の防水シート。
【0010】
Y = -5.12×10-7X+9.3 … (I)
Y = 1.01×10-6X+9.0 … (II)
X = 800 … (III)
(3) 前記可塑剤は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体を含む上記(1)または(2)に記載の防水シート。
【0011】
(4) 前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、無官能のアクリル酸エステル単量重合体である上記(3)に記載の防水シート。
【0012】
(5) 前記可塑剤は、エチレンをユニットとして含むエチレン系共重合エラストマーを含む上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の防水シート。
【0013】
(6) 前記可塑剤は、前記塩化ビニル系樹脂100.0重量部に対して、20.0重量部以上90.0重量部以下の含有量で、当該防水シートに含まれる上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の防水シート。
【0014】
(7) 当該防水シートは、さらに、安定剤を含む上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の防水シート。
【0015】
(8) 前記塩化ビニル系樹脂は、その溶解パラメーターが9.4(cal/cm31/2以上10.8(cal/cm31/2以下である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の防水シート。
【0016】
(9) 下記評価方法Aによる前記可塑剤の残存率Aが90.0%以上である上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の防水シート。
(評価方法A)
まず、厚さ2.0mm×縦90mm×横90mmの大きさの当該防水シートからなる第1試験片を作製した後、該第1試験片の重量[g]を、初期の重量として測定する。
次いで、上部開口を有する貯留空間を備え、該貯留空間の底部で、前記第1試験片の表面をΦ60mmの円形で露出させた状態で前記第1試験片を装着させ得る貯留槽を用意し、該貯留槽に前記第1試験片を装着する。
次いで、前記第1試験片が装着された状態の前記貯留槽の前記貯留空間に、15gの泥(JIS Z 8901の試験用粉体1(11種タイプ))と、25mLの純水とを添加した後に、前記貯留槽を80℃のオーブン内に84日間保管する。このとき、25mLの純水の添加を12時間毎に実施する。
次いで、前記貯留槽から前記第1試験片を取り出し、洗浄・乾燥した後の前記第1試験片の重量[g]を、乾湿繰り返し後の重量として測定する。そして、前記初期の重量を100.0%としたときに算出される、前記乾湿繰り返し後の重量[%]を、前記可塑剤の残存率A[%]として求める。
【0017】
(10) 下記評価方法Bによる前記可塑剤の残存率Bが70.0%以上である上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の防水シート。
(評価方法B)
まず、厚さ2.0mm×幅30mm×長さ100mmの大きさの当該防水シートからなる第2試験片を作製した後、JIS A 6008に準拠した引張試験に基づいて、該第2試験片の伸び率[%]を、初期の伸び率として測定する。
次いで、前記第2試験片の一方の面に厚さ2.0mm×幅35mm×長さ110mmの大きさのブチルゴムからなるブチルゴムテープを貼付し、その後、このものを、80℃のオーブン内に28日間保管する。
次いで、前記第2試験片から前記ブチルゴムテープを剥離させた後、JIS A 6008に準拠した引張試験に基づいて、前記第2試験片の伸び率[%]を、保管後の伸び率として測定する。そして、前記初期の伸び率を100.0%としたときに算出される、前記保管後の伸び率[%]を、前記可塑剤の残存率B[%]として求める。
【0018】
(11) 前記シート防水構造は、躯体が有する床部および該床部から立設する壁部の少なくとも一部を覆う第1防水シートを備え、
当該防水シートは、前記第1防水シートに適用される上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の防水シート。
【0019】
(12) 前記シート防水構造は、躯体が有する床部および該床部から立設する壁部の少なくとも一部を覆う第1防水シートと、該第1防水シートの一部を覆う第2防水シートとを備え、
当該防水シートは、前記第2防水シートに適用される上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の防水シート。
【0020】
(13) 上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の防水シートの成形に用いられる樹脂組成物であって、
前記塩化ビニル系樹脂と、前記可塑剤とを含むことを特徴とする樹脂組成物。
【0021】
(14) 上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の防水シートの端部近傍を選択的に被覆する被覆層を形成するのに用いられるシーリング材であって、
前記塩化ビニル系樹脂と、前記可塑剤と、溶媒とを含むことを特徴とするシーリング材。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、可塑剤の分子量が300以上であり、かつ、可塑剤の溶解パラメーター(SP値)が8.2(cal/cm31/2以上9.8(cal/cm31/2以下であることを満足しており、これにより、防水シートが、雨水や、日光に曝されることに起因して、経年的に可塑剤が防水シートから漏出するのを、的確に抑制または防止することができる。そのため、この可塑剤の漏出(ブリードアウト)に基づく、防水シートの柔軟性の低下、ひいては、防水シートにおける亀裂や破断等の発生を、的確に抑制または防止し得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】躯体に施されたシート防水構造の第1実施形態を部分的に取り出した部分斜視図である。
図2】可塑剤の分子量をXとし、可塑剤の溶解パラメーターをYとしたときに、式(I)~(III)で取り囲まれる領域を示すグラフである。
図3】漏出性評価法により防水シートにおける可塑剤の残存率[%]を求める際に用いられる貯留槽の縦断面図である。
図4】躯体に施されたシート防水構造の第2実施形態を部分的に取り出した部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の防水シート、樹脂組成物およびシーリング材を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0025】
まず、本発明の防水シート、樹脂組成物およびシーリング材を説明するのに先立って、本発明の防水シートを適用し得る、躯体に施工されたシート防水構造について説明する。
【0026】
<シート防水構造>
<<第1実施形態>>
図1は、躯体に施されたシート防水構造の第1実施形態を部分的に取り出した部分斜視図、図2は、可塑剤の分子量をXとし、可塑剤の溶解パラメーターをYとしたときに、式(I)~(III)で取り囲まれる領域を示すグラフ、図3は、漏出性評価法により防水シートにおける可塑剤の残存率[%]を求める際に用いられる貯留槽の縦断面図である。なお、以下の説明では、図1図3中の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、図1では、説明の便宜上、シート防水構造が施された躯体の全体を示すことなく、躯体が備える床部と壁部とを部分的に図示している。また、図1図3では、それぞれ、シート防水構造および貯留槽を視認性よく図示しているため、実際の寸法とは大きく異なる。
【0027】
シート防水構造10は、床部101と、この床部101の外縁を取り囲むように沿って立設して設けられた壁部102(立ち上がり部)とを有する躯体100に対して施工されるものであり、床部101と壁部102とに敷設された防水シート30と、配置部材50と、固定ディスク(図示せず)とを有している。
【0028】
配置部材50は、それぞれ全体形状が長方形状をなす底部51と立ち上がり面52とを有するものであり、床部101と壁部102との境界部に配置され、さらに、複数の固定ディスクは、所定(一定)の間隔を開けて床部101に固定ビスにより固定されており、この状態で、塩化ビニル系樹脂を主材料として構成される防水シート30は、配置部材50、固定ディスクおよび固定ビスとともに床部101と壁部102とを覆った状態で、配置部材50および固定ディスクに固定されており、これにより、躯体100の防水性が確保される。
【0029】
すなわち、日光や雨水には防水シート30が曝されることとなり、躯体100が直接的に日光や雨水に曝されることが防止されるため、躯体100の防水性が確保される。また、固定ディスクの上面と防水シート30との下面とが接合されており、これにより、固定ディスクを介して床部101と防水シート30とが接合され、その結果、風等に対して防水シート30が引き剥がされることなく躯体100に固定されている。
【0030】
配置部材50および固定ディスクは、ともに、金属板と、この金属板の表面を被覆する樹脂層とで構成される。
【0031】
この金属板は、例えば、ステンレス鋼板、鉄板のような鋼板、アルミ板、銅板等で構成されるが、鋼板であるのが好ましい。
【0032】
また、金属板の厚さは、特に限定されないが、0.1mm以上、3mm以下程度であるのが好ましく、0.3mm以上、2.5mm以下程度であるのがより好ましい。
【0033】
樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニルのような塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、塩化ビニル系樹脂(特に、ポリ塩化ビニル)であるのが好ましい。すなわち、後述する防水シート30を構成する樹脂と、同種または同一であることが好ましい。これにより、樹脂層と防水シート30との密着性を向上させることができる。さらに、ポリ塩化ビニルは、溶剤溶着性や熱融着性に優れるため、前記効果をより顕著に発揮させることができるとともに、金属板の腐食をより確実に防止することができる。
【0034】
また、この樹脂層を構成する樹脂には、後述する防水シート30の構成材料で挙げる可塑剤、安定化剤等の他の材料が含まれていてもよい。
【0035】
また、樹脂層の厚さは、特に限定されないが、0.1mm以上であるのが好ましく、0.3mm以上、0.8mm以下であるのがより好ましい。これにより、防水シート30が風で煽られることに起因して、樹脂層に応力が作用したとしても、この樹脂層において亀裂や破断が生じるのを的確に抑制することができる。
【0036】
防水シート30(第1防水シート)は、シート状(板状)をなし、配置部材50および固定ディスクとともに床部101と壁部102とを覆うものである。
【0037】
これにより、日光や雨水には防水シート30が曝され、躯体100が直接的に日光や雨水に曝されることが防止されることから、躯体100の防水性が確保される。
【0038】
このような防水シート30は、塩化ビニル系樹脂と可塑剤とを含有する樹脂シートで構成され、本実施形態では、この防水シート30に本発明の防水シートを適用し得るが、その詳細については、後に説明する。
【0039】
また、シート防水構造10は、床部101上に敷設されることで、床部101と防水シート30との間に介在する、クロスシートを有していてもよい。
【0040】
このクロスシートは、例えば、ポリエチレン製の織布からなる絶縁クロスシートで構成される。また、これに代えて、ガラス繊維製の防火用シート、ピンホール検査用のアルミ箔ラミネートシート、珪酸カルシウム板、石綿スレート板、軽量気泡コンクリート板等の高剛性板からなる歩行用ボードを床部101上に敷設してもよいし、さらに、これらを上層として備え、下層として、発泡ポリスチレン、ポリウレタンフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム、フェノールフォーム等で構成される断熱層(断熱材)を備える積層体を床部101上に敷設してもよい。これらのシートを、床部101と防水シート30との間に介在させることにより、シート防水構造10のクッション性、絶縁性および断熱性等を確保することができる。
【0041】
<防水シート>
かかる構成をなすシート防水構造10が備える防水シート30に、前述の通り、本発明の防水シートを適用し得る。
【0042】
本発明の防水シートは、塩化ビニル系樹脂と可塑剤とを含有し、この防水シートに含まれる可塑剤の分子量が300以上であり、かつ、可塑剤の溶解パラメーター(SP値)が8.2(cal/cm31/2以上9.8(cal/cm31/2以下であることを満足する。
【0043】
これにより、防水シートが、雨水や、日光に曝されることに起因して、経年的に可塑剤が防水シートから漏出するのを、的確に抑制または防止することができる。そのため、この可塑剤の漏出(ブリードアウト)に基づく、防水シートの柔軟性の低下、ひいては、防水シートにおける亀裂や破断等の発生を、的確に抑制または防止し得る。したがって、本発明の防水シートを防水シート30として備えるシート防水構造10は、優れた防水性を発揮する。
【0044】
以下、本発明の防水シートを構成する構成材料について説明する。
(a)塩化ビニル系樹脂
塩化ビニル系樹脂は、防水シートを、シート状(層状)をなすものとするために、防水シートの主材料として、防水シート中に含まれるものである。
【0045】
この塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルを含む重合体、すなわちオリゴマー、プレポリマーおよびポリマーであれば特に限定されるものではない。
【0046】
具体的には、このような塩化ビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニルの単量重合体(単独重合体)、または塩化ビニルと、酢酸ビニル、エチレン、もしくはプロピレン等との共重合体が挙げられ、その他、これら単量重合体または共重合体の主鎖に、他の重合体が側鎖として置換されてグラフト化された構成をなすものが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、単量重合体または共重合体の主鎖が、単量重合体で構成される場合、その主鎖は直鎖状をなすが、共重合体で構成される場合、共重合体がランダム共重合体、交互共重合体またはブロック共重合体からなるときには、その主鎖は直鎖状をなし、また、共重合体がグラフト共重合体からなるときには、その主鎖は分岐状をなしている。
【0047】
これらのものを塩化ビニル系樹脂として用いることにより、防水シートを、シート状をなすものとして成形することができ、防水シートとしての機能を発揮させることができる。
【0048】
また、可塑剤が防水シートから漏出(ブリードアウト)するのを抑制すると言う観点からは、塩化ビニル系樹脂は、その全体構造が直鎖状をなしているのが好ましい。このような塩化ビニル系樹脂と可塑剤との組み合わせとすることで、防水シートからの可塑剤の漏出を、的確に抑制または防止し得ることから、この可塑剤の漏出に基づく、防水シートの柔軟性の低下、ひいては、防水シートにおける亀裂や破断等の発生を、的確に抑制または防止することができる。
【0049】
さらに、この塩化ビニル系樹脂は、溶解パラメーターが9.4(cal/cm31/2以上10.8(cal/cm31/2以下であるのが好ましく、9.4(cal/cm31/2以上9.9(cal/cm31/2以下であるのがより好ましい。これにより、溶解パラメーターが8.2(cal/cm31/2以上9.8(cal/cm31/2以下である可塑剤とのより優れた親和性を、塩化ビニル系樹脂に発揮させ得ることから、防水シートからの可塑剤の漏出を、より的確に抑制または防止することができる。
【0050】
なお、本明細書における溶解パラメーター(SP値)は、ハンセン(Hansen)溶解パラメーターを表し、このハンセン(Hansen)溶解パラメーターは、ヒルデブランド(Hildebrand)によって導入された溶解パラメーターを、分散項δD,極性項δP,および水素結合項δHの3成分に分割し、3次元空間に表したものである。
【0051】
分散項δDは、分散力による効果、極性項δPは、双極子間力による効果、さらに水素結合項δHは、水素結合力による効果を示す。
δD: 分子間の分散力に由来するエネルギー
δP: 分子間の極性力に由来するエネルギー
δH: 分子間の水素結合力に由来するエネルギー
で表すことができる(なお、それぞれの単位はMPa0.5である。)。
【0052】
ヒルデブランド(Hildebrand)のSP値と、ハンセン(Hansen)のHSPの間には、以下に示す関係が認められる。
ヒルデブランドのSP2=δD2+δP2+δH2
【0053】
また、HSPの定義と計算は、Charles M.Hansen著、Hansen Solubility Parameters: A Users Handbook(CRCプレス,2007年)に記載されている。
【0054】
ここで、それぞれ、分散項はファンデルワールス力、極性項はダイポール・モーメント、水素結合項は水、アルコールなどによる作用を反映している。また、HSPによるベクトルが似ているもの同士は溶解性が高いと判断できる。
【0055】
HSP距離(Ra)は、例えば、塩化ビニル系樹脂のHSPを(δD,δP,δH)とし、可塑剤のHSPを(δD,δP,δH)としたとき、下記の式により算出することができる。
【0056】
HSP距離(Ra)=
{4×(δD-δD+(δP-δP+(δH-δH0.5
【0057】
(b)可塑剤
可塑剤は、防水シートに優れた柔軟性を付与するために含有される。
【0058】
この可塑剤として、本発明では、その分子量が300以上であり、かつ、その溶解パラメーターが8.2(cal/cm31/2以上9.8(cal/cm31/2以下であることを満足するものが用いられる。
【0059】
これにより、防水シートが、雨水や、日光に曝されることに起因して、経年的に可塑剤が防水シートから漏出するのを、的確に抑制または防止することができる。そのため、この可塑剤の漏出(ブリードアウト)に基づく、防水シートの柔軟性の低下、ひいては、防水シートにおける亀裂や破断等の発生を、的確に抑制または防止し得る。したがって、本発明の防水シートを防水シート30として備えるシート防水構造10は、優れた防水性を発揮する。
【0060】
このような分子量および溶解度パラメーターの両立が図られた可塑剤として、例えば、アジピン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、エポキシ化植物油、エチレン系共重合エラストマー、塩素化ポリエチレン(CPE)、(メタ)アクリル系樹脂(PMMA)、ポリスチレン系樹脂(PS)、ポリ酢酸ビニル系樹脂(PVAc)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、特に、(メタ)アクリル酸エステル系重合体またはエチレン系共重合エラストマーであることが好ましい。
【0061】
なお、本明細書中において、「可塑剤」とは、可塑剤として一般的に用いられる低分子領域のものばかりではなく、分子量が10,000以上のような高分子領域の「可塑化樹脂」を含めて、「可塑剤」と言うこととする。
【0062】
このように、可塑剤として、(メタ)アクリル酸エステル系重合体またはエチレン系共重合エラストマーを用いることで、可塑剤の分子量が300以上であることと、可塑剤の溶解パラメーターが8.2(cal/cm31/2以上9.8(cal/cm31/2以下であることとの双方を比較的容易に満足させることができる。したがって、防水シートからの可塑剤の漏出を、的確に抑制または防止することができる。よって、防水シートが、雨水や、日光に曝されることに起因して、経年的に可塑剤が防水シートから漏出するのを、的確に抑制または防止し得る。そのため、この可塑剤の漏出(ブリードアウト)に基づく、防水シートの柔軟性の低下、ひいては、防水シートにおける亀裂や破断等の発生を、的確に抑制または防止し得るため、本発明の防水シートを防水シート30として備えるシート防水構造10は、優れた防水性を発揮する。
【0063】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステルをモノマー主成分とする重合体であり、その単量重合体(単独重合体)、または共重合体を主鎖とするものであり、この主鎖により単独で構成されるものであってもよいし、この主鎖に、他の(官能基を有しない)重合体または官能基や、官能基を有する重合体が側鎖すなわち置換基として置換されてグラフト化された構成をなすものであってもよい。
【0064】
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの双方を含む意味で用いることとする。
【0065】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルのような(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸フェニルのような(メタ)アクリル酸アリールエステル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、特に、耐熱性に優れ、また、比較的容易かつ安価に入手できる。また、(メタ)アクリル酸エステルとして(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられた(メタ)アクリル酸エステル系重合体とすることで、可塑剤としての(メタ)アクリル酸エステル系重合体の防水シートからの漏出をより的確に抑制または防止することができる。
【0066】
また、(メタ)アクリル酸エステル系重合体が、(メタ)アクリル酸エステルをモノマー主成分とする共重合体を主鎖として構成される場合、この共重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル、酢酸ビニル、エチレン、もしくはプロピレン等との共重合体が挙げられる。
【0067】
以上のような構成とし得る(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー成分とする単量重合体が、前記置換基により置換されていない、無官能のアクリル酸エステル単量重合体であることが好ましい。これにより、可塑剤としての(メタ)アクリル酸エステル系重合体(無官能のアクリル酸エステル単量重合体)の防水シートからの漏出をさらに的確に抑制または防止することができる。
【0068】
また、無官能のアクリル酸エステル単量重合体は、その重量平均分子量が1,000以上5,000以下であるのが好ましく、1,500以上3,000以下であるのがより好ましい。
【0069】
さらに、無官能のアクリル酸エステル単量重合体は、そのガラス転移点Tgが-100℃以上-30℃以下であるのが好ましく、-95℃以上-75℃以下であるのがより好ましい。
【0070】
無官能のアクリル酸エステル単量重合体の重量平均分子量およびガラス転移点Tgを、それぞれ、前記範囲内に設定することにより、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(可塑剤)として、無官能のアクリル酸エステル単量重合体を用いることにより得られる効果を、より顕著に発揮させることができる。
【0071】
エチレン系共重合エラストマーは、エチレンをユニットとして含む共重合エラストマーであり、例えば、エチレン-酢酸ビニルブロック共重合体(EVA)や、エチレン-アクリル酸エチルブロック共重合体(EEA)、エチレン-メタクリル酸メチルブロック共重合体(EMMA)のようなエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられ、中でも、エチレン-アクリル酸エステル共重合体であることが好ましい。これにより、可塑剤としてのエチレン系共重合エラストマー(エチレン-アクリル酸エステル共重合体)の防水シートからの漏出を、より的確に抑制または防止することができる。
【0072】
また、エチレン-アクリル酸エステル共重合体は、その重量平均分子量が100,000以上250,000以下であるのが好ましく、150,000以上200,000以下であるのがより好ましい。これにより、エチレン系共重合エラストマー(可塑剤)として、エチレン-アクリル酸エステル共重合体を用いることにより得られる効果を、より顕著に発揮させることができる。
【0073】
以上のことから、塩化ビニル系樹脂と、可塑剤との好ましい組み合わせとしては、全体構造が直鎖状をなす塩化ビニル系樹脂と、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(特に、無官能のアクリル酸エステル単量重合体)との組み合わせ、または、全体構造が直鎖状をなす塩化ビニル系樹脂と、エチレン系共重合エラストマー(特に、エチレン-アクリル酸エステル共重合体)との組み合わせが挙げられ、かかる組み合わせとすることで、防水シートからの可塑剤の漏出を、さらに的確に抑制または防止することができる。
【0074】
また、このような可塑剤は、前述の通り、その分子量が300以上であり、かつ、その溶解パラメーターが8.2(cal/cm31/2以上9.8(cal/cm31/2以下であることを満足すればよいが、可塑剤の分子量をXとし、可塑剤の溶解パラメーターをYとしたとき、下記式(I)~(III)で取り囲まれる領域内となる、分子量Xおよび溶解パラメーターYを満足することが好ましい(図2参照)。これにより、防水シートが、雨水や、日光に曝されることに起因して、経年的に可塑剤が防水シートから漏出するのを、より的確に抑制または防止することができる。
【0075】
Y = -5.12×10-7X+9.3 … (I)
Y = 1.01×10-6X+9.0 … (II)
X = 800 … (III)
【0076】
さらに、可塑剤の溶解パラメーターYは、塩化ビニル系樹脂の溶解パラメーターをZとしたとき、これらの差の絶対値|Y-Z|が1.0(cal/cm31/2以下であるのが好ましく、0.6(cal/cm31/2以下であるのがより好ましい。これにより、防水シートが、雨水や、日光に曝されることに起因して、経年的に可塑剤が防水シートから漏出するのを、より的確に抑制または防止することができる。
【0077】
また、防水シート中における可塑剤の含有率は、特に限定されないが、例えば、塩化ビニル系樹脂100.0重量部に対して、20.0重量部以上90.0重量部以下であることが好ましく、50.0重量部以上90.0重量部以下であることがより好ましく、50.0重量部以上75.0重量部以下であることがさらに好ましい。これにより、防水シートに優れた柔軟性を確実に付与することができ、かつ、躯体100への水の浸入を防止する防水シートとしての機能を確実に発揮させることができる。また、主材料である塩化ビニル系樹脂により、可塑剤を確実に保持することができる。
【0078】
なお、可塑剤としては、上記のようなものの他、分子量が300以上であることと、溶解パラメーターが8.2(cal/cm31/2以上9.8(cal/cm31/2以下であることとの少なくとも一方を満足しない可塑剤を、防水シートからの可塑剤の不本意な漏出を防止し得る範囲内で、その他の可塑剤が含まれていてもよい。その他の可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジエチル(DEP)およびフタル酸ビス(2-ブトキシエチル)等が挙げられる。
【0079】
(c)他の構成材料
また、防水シートには、塩化ビニル系樹脂および可塑剤の他、さらに、安定剤、安定化助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加工助剤、滑剤、充填材、難燃剤、遮蔽材および色材等の他の構成材料を含んでいてもよい。
【0080】
なお、安定剤としては、例えば、有機スズ系安定剤、有機シリコーン系安定剤、ブチルステアレート等のエステル系安定剤、カルシウム-亜鉛系安定剤、バリウム-亜鉛系安定剤、バリウム-カドミウム系安定剤等が挙げられ、この場合の安定助剤としては、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエン、リン酸トリクレジル(TCP)、リン酸トリキシリル(TXP)、リン酸トリブチル(TBP)、リン酸トリ-2-エチルヘキシル、リン酸2-エチルヘキシル・ジフェニルのような有機リン酸エステル等が挙げられる。
【0081】
以上のような構成をなす防水シートとすること、すなわち、防水シートに含まれる可塑剤として、その分子量が300以上であり、かつ、その溶解パラメーターが8.2(cal/cm31/2以上9.8(cal/cm31/2以下であることを満足するものを用いることで、防水シートが、雨水や、日光に曝されることに起因して、経年的に可塑剤が防水シートから漏出するのを、的確に抑制または防止することができるが、その可塑剤の防水シートからの漏出の程度は、具体的には、以下に示すような、漏出性評価法(評価方法A)および移行性評価法(評価方法B)で実施される評価を防水シートが満足することが好ましい。
【0082】
ここで、漏出性評価法(評価方法A)において、防水シートからなる試験片35(第1試験片)を装着する貯留槽20は、上部開口を有する貯留空間26を備え、この貯留空間26の底部で、試験片35の表面をΦ60mmの円形で露出させた状態とし得るものであればいかなる構成をなすものであってもよいが、以下のような構成をなすものが好ましく用いられる。
【0083】
そのため、以下では、漏出性評価法(評価方法A)について説明するのに先立って、まず、この貯留槽20について説明する。
【0084】
この貯留槽20は、図3に示すように、平板状をなす底板21と、上部開口と下部開口とを備えるカバー部材22と、円環状をなすパッキン23と、クリップ24と、固定用ネジ25とを有している。
【0085】
底板21は、SUS基板で構成され、縦90mm×横90mmの大きさとされている。カバー部材22は、透明ガラスからなり、全体形状が半球状をなす殻体であり、上部開口と下部開口とを備え、上部開口の上方に突出して設けられた突出部と、下部開口の側方に突出して設けられた縁部とを有しており、下部開口は円形をなし、その直径はΦ60mmの大きさに設定されている。
【0086】
この底板21上に、厚さ2.0mm×縦90mm×横90mmの大きさに作製した防水シートからなる試験片35を載置し、さらに、この試験片35上に、パッキン23とカバー部材22とを、この順序で載置した状態で、底板21の縁部とカバー部材22の縁部とを、クリップ24で挟持しつつ、このクリップ24を固定用ネジ25でねじ止めする。これにより、底板21の縁部とカバー部材22の縁部とが、クリップ24と固定用ネジ25とで固定され、その結果、この貯留槽20において、カバー部材22と、パッキン23と、試験片35とにより貯留空間26が画成される。そして、この貯留空間26の底面において、試験片35の表面は、Φ60mmの円形状をなして、貯留空間26の内部を臨むように露出している。
【0087】
すなわち、上部開口を有する貯留空間26を備える貯留槽20において、試験片35の表面(上面)は、貯留空間26の底面(底部)で、Φ60mmの円形状をなして、その一部が露出している。
【0088】
(漏出性評価法)
そして、この貯留槽20を用いて、泥体積状態での乾湿繰り返しによる可塑剤の漏出性を評価する漏出性評価法(評価方法A)では、防水シートにおける可塑剤の残存率[%]は、以下のようにして求められる。
【0089】
すなわち、漏出性評価法では、貯留槽20の使用に先立って、まず、厚さ2.0mm×縦90mm×横90mmの大きさで作製した試験片35の重量[g]を、初期の重量として測定する。
【0090】
次いで、試験片35を貯留槽20に装着し、その後、この貯留槽20の貯留空間26に、15gの泥82(JIS Z 8901の試験用粉体1(11種タイプ))と、25mLの純水81とが添加された状態とした後に、この状態の貯留槽20を80℃のオーブン内に84日間保管する。このとき、25mLの純水81の添加を朝・夕(1日2回)の12時間毎に実施することで、乾湿繰り返しの条件下に試験片35を曝すこととする。
【0091】
次いで、貯留槽20から試験片35を取り出し、洗浄・乾燥した後の試験片35の重量[g]を、乾湿繰り返し後の重量として測定する。そして、初期の重量を100.0%としたときに算出される、乾湿繰り返し後の重量[%]を、防水シートにおける可塑剤の残存率A[%]として求めることができる。
【0092】
以上のようにして求められる、漏出性評価法での、防水シートにおける可塑剤の残存率A[%]は、90.0%以上であるのが好ましく、96.0以上であるのがより好ましい。これにより、防水シートが、雨水や、日光に曝されることに起因して、経年的に可塑剤が防水シートから漏出するのを、より的確に抑制または防止することができていると言える。そのため、この可塑剤の漏出(ブリードアウト)に基づく、防水シートの柔軟性の低下、ひいては、防水シートにおける亀裂や破断等の発生を、的確に抑制または防止し得る。したがって、本発明の防水シートを防水シート30として備えるシート防水構造10は、優れた防水性を発揮する。
【0093】
(移行性評価法)
ブチルゴムテープに対する可塑剤の移行性を評価する移行性評価法(評価方法B)では、防水シートにおける可塑剤の残存率B[%]は、まず、厚さ2.0mm×幅30mm×長さ100mmの大きさの防水シートからなる試験片Bを作製し、JIS A 6008に準拠した引張試験に基づいて、この試験片Bの伸び率[%]を、初期の伸び率[%]として測定する。次いで、この試験片Bの一方の面に厚さ2.0mm×幅35mm×長さ110mmの大きさのブチルゴムからなるブチルゴムテープを貼付し、その後、このものを、80℃のオーブン内に28日間保管した後に、試験片Bからブチルゴムテープを剥離させる。その後、JIS A 6008に準拠した引張試験に基づいて、ブチルゴムテープが剥離された試験片Bの伸び率[%]を、保管後の伸び率[%]として測定する。そして、初期の伸び率を100.0%としたときに算出される、保管後の伸び率[%]を、防水シートにおける可塑剤の残存率B[%]として求める。
【0094】
以上のようにして求められる、移行性評価法での、防水シートにおける可塑剤の残存率B[%]は、70.0%以上であることが好ましく、90.0%以上であることがより好ましい。防水シートにおける可塑剤の残存率[%]が前記下限値以上に設定されることにより、防水シートからの可塑剤の漏出が的確に抑制されていると言うことができる。
【0095】
なお、JIS A 6008に準拠した引張試験に基づいて測定される、試験片Bの初期の伸び率は、250.0%以上であることが好ましく、300.0%以上であることがより好ましい。これにより、防水シートに優れた柔軟性が付与されていると言うことができる。
【0096】
なお、上述した防水シートは、上記の構成材料で構成される樹脂シートの単層で構成されるものの他、例えば、その厚さ方向の途中に繊維層が介挿されたもの、すなわち、厚さ方向に積層された第1樹脂層と第2樹脂層との間に繊維層(繊維シート)が挾持された積層体で構成されるものであってもよい。このような防水シートは、単層または積層体で構成される場合のいずれであっても、上記の構成材料で構成される樹脂シートの層が最外層として位置することとなる。
【0097】
この繊維層は、繊維の集合体で構成されたものであり、例えば、織布や不織布等のクロス、縦糸と横糸とで複数の格子を形成したネット等の繊維シートが挙げられるが、防水シートを、このような繊維層を備えるものとすることで、防水シートの強度(引き裂き強度や引っ張り強度等)および耐久性(耐繰り返し疲労特性)を向上させることができる。
【0098】
また、防水シートの厚さは、特に限定されないが、例えば、0.5mm以上、3.0mm以下程度であるのが好ましく、0.8mm以上、3.0mm以下程度であるのがより好ましい。これにより、本発明の防水シートを防水シート30に適用した際に、床部101と壁部102とを、防水シート30により確実に覆うことができる。また、たとえ防水シートから可塑剤が不本意に漏出して、その柔軟性が低下したとしても、早期に防水シートに亀裂や破断が生じるのを的確に抑制することができる。
【0099】
さらに、防水シートは、例えば、以下のようにして成形し得る。すなわち、まず、塩化ビニル系樹脂と、可塑剤と、必要に応じて、その他の構成材料とを、ミキサーを用いて均一に混合することで、粉体で構成された樹脂組成物(本発明の樹脂組成物)を得る。その後、この樹脂組成物を、加熱・混練した後に、ロールを用いてシート状に形成することで、加熱状態の防水シートを成形する。そして、このものを、さらに熱プレスした後に冷却することで成形することができる。なお、粉体で構成された樹脂組成物を、ペレット状をなすものに成形し、このペレット状とされた樹脂組成物を用いて、シート状をなす防水シートを成形するようにしてもよい。
【0100】
<<第2実施形態>>
また、シート防水構造10は、前記第1実施形態で説明した構成をなすものの場合の他、以下に示すような構成をなすものであってもよい。
【0101】
図4は、躯体に施されたシート防水構造の第2実施形態を部分的に取り出した部分斜視図である。なお、以下の説明では、図4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、図4では、説明の便宜上、シート防水構造が施された躯体の全体を示すことなく、躯体が備える床部と壁部とを部分的に図示している。また、図4では、シート防水構造を視認性よく図示しているため、実際の寸法とは大きく異なる。
【0102】
以下、この図を参照してシート防水構造10の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0103】
本実施形態のシート防水構造10は、さらに、防水シート30(第1防水シート)を部分的に被覆する防水シート70(第2防水シート)を備えること以外は、前記第1実施形態のシート防水構造10と同様である。
【0104】
すなわち、図4に示すように、本実施形態では、シート防水構造10において、防水シート70は、短冊状をなし、床部101と配置部材50の底部51との境界部を被覆する防水シート30に形成された段差31に対応するようにして、防水シート30に貼付されている。
【0105】
換言すれば、防水シート70は、防水シート30よりも小さく形成された小片をなし、これにより、防水シート30の一部に、選択的に貼付し得るようになっており、本実施形態では、防水シート30の段差31を覆うようにして、防水シート30に貼付されている。
【0106】
防水シート30において、段差31が形成されている領域では、防水シート30に応力が掛かり易いこと、また、防水シート30上に雨水が流れる際に、砂やホコリが貯留し易いこと等に起因して、防水シート30に亀裂や破断等が生じ易い。
【0107】
そのため、段差31の亀裂や破断等が生じた領域、もしくは、予め段差31の亀裂や破断等が生じると予測される領域に対して、選択的に防水シート70を貼付することで、躯体100自体に水が浸入するのを的確に抑制または防止することができる。すなわち、防水シート70は、亀裂や破断等が生じた防水シート30を介して、躯体100自体に水が浸入するのを防止する止水シートとして機能する。
【0108】
かかる構成をなす第2実施形態のシート防水構造10において、シート防水構造10が備える防水シート30および防水シート70の少なくとも一方に、本発明の防水シートを適用することができ、本発明の防水シートが適用された防水シート30、70において、前記第1実施形態で説明したのと同様の効果が得られる。
【0109】
なお、本実施形態では、防水シート70は、防水シート30の段差31の形状に対応して、全体形状が短冊状をなす場合について説明したが、かかる形状をなす場合に限定されず、例えば、躯体100の床部101と壁部102との入隅部に位置する防水シート30に対して、選択的に防水シート70を貼付する場合には、防水シート70は、前記入隅部の形状に対応した形状に成形されたものであってもよい。
【0110】
また、本実施形態のシート防水構造10において、防水シート70の端部近傍には、防水シート30に対する防水シート70の密着性の向上を図ることを目的に、防水シート30と防水シート70とを接合するシーリング部(被覆層)が形成されていてもよい。この場合、シーリング部は、例えば、塩化ビニル系樹脂と可塑剤と溶媒とを含む、クリーム状(ペースト状)をなすシーリング材を、シーリング部を設けるべき領域に供給した後に乾燥させることで形成することができる。そして、このシーリング材として、本発明のシーリング材を用いることで、シーリング材から形成されるシーリング部を、可塑剤の漏出が的確に抑制または防止されたものとし得る。
【0111】
このシーリング材に含まれる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、n-ヘキサン、トルエン、o-キシレンのような炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノンのようなケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸イソブチルのようなエステル系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)のようなエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、1-プロパノールのようなアルコール系溶媒が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのものを溶媒として用いることで、シーリング材中において、塩化ビニル系樹脂を溶解させて、シーリング材を、クリーム状(ペースト状)をなすものとし得る。
【0112】
なお、シーリング材を用いて形成されるシーリング部(被覆層)は、防水シート70の端部近傍に限らず、防水シート30の端部近傍に形成されていてもよい。
【0113】
以上、本発明の防水シート、樹脂組成物およびシーリング材について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0114】
例えば、本発明の防水シート、樹脂組成物およびシーリング材において、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
【実施例0115】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
なお、本発明はこれらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0116】
1.原材料の準備
まず、各実施例および各比較例の防水シートの製造に用いた原材料を以下に示す。
【0117】
(塩化ビニル系樹脂)
塩化ビニル系樹脂として、塩化ビニルの単量重合体で構成される粒子(平均粒径1μm、SP値:9.5(cal/cm31/2)を用意した。
【0118】
(可塑剤1)
可塑剤1として、エポキシ化大豆油(ESBO、ADEKA社製、「O-130P」、分子量:950、SP値:9.0(cal/cm31/2)を用意した。
【0119】
(可塑剤2)
可塑剤2として、無官能のアクリル酸エステル単量重合体(東亞合成社製、「アルフォンUP-1021」、分子量:1600、SP値:9.2(cal/cm31/2)を用意した。
【0120】
(可塑剤3)
可塑剤3として、ポリエステル系可塑剤(DIC社製、「ポリサイザーW-2640-S」、分子量:2600、SP値:9.3(cal/cm31/2)を用意した。
【0121】
(可塑剤4)
可塑剤4として、エチレン-アクリル酸エステル共重合体(三井・ダウポリケミカル社製、「エルバロイHP441」、重量平均分子量:198,000、SP値:9.2(cal/cm31/2)を用意した。
【0122】
(可塑剤5)
可塑剤5として、トリメリット酸トリオクチル(TOTM、分子量:550、SP値:9.0(cal/cm31/2)を用意した。
【0123】
(可塑剤6)
可塑剤6として、エチレン酢酸ビニル共重合体(平泉洋行社製、「レバプレン700」、重量平均分子量:270,000、SP値:8.7(cal/cm31/2)を用意した。
【0124】
(可塑剤7)
可塑剤7として、フタル酸ジブチル(DBP、分子量:280、SP値:9.3(cal/cm31/2)を用意した。
【0125】
(可塑剤8)
可塑剤8として、フタル酸ジエチル(DEP、分子量:220、SP値:10.0(cal/cm31/2)を用意した。
【0126】
(可塑剤9)
可塑剤9として、フタル酸ビス(2-ブトキシエチル)(DBEP、分子量:365、SP値:8.0(cal/cm31/2)を用意した。
【0127】
(安定剤)
安定剤として、バリウム-亜鉛系安定剤(堺化学工業社製)を用意した。
【0128】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤として、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF社製)を用意した。
【0129】
(遮蔽材)
遮蔽材として、酸化チタンを用意した。
【0130】
(充填材)
充填材として、炭酸カルシウムを用意した。
【0131】
(色材)
色材として、カーボンブラック(三菱ケミカル社製、「三菱カーボンブラック#45」)を用意した。
【0132】
2.防水シートの作製
[実施例1]
まず、塩化ビニル系樹脂:100.0重量部、可塑剤1:20.0重量部、可塑剤5:50.0重量部、安定剤:6.0重量部、紫外線吸収剤:0.5重量部、遮蔽材:15.0重量部、充填材:20.0重量部、および色材:0.4重量部の混合比率でこれらを、ミキサーを用いて25℃で均一に混合することで樹脂組成物Aを得た。
【0133】
次に、樹脂組成物Aを、加熱・混練した後、ロールを用いてシート状に形成することで、加熱状態の防水シートを成形した後に冷却することで、実施例1の防水シートを得た。
なお、この実施例1の防水シートの厚さは、2.0mmであった。
【0134】
[実施例2~7、比較例1~3]
樹脂組成物Aに添加する可塑剤の種類、および、その添加量を、それぞれ、表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして実施例2~7、比較例1~3の防水シートを作製した。
【0135】
3.評価
各実施例および各比較例の防水シートについて、以下の方法を用いて評価した。
【0136】
3-1.ブチルゴムテープに対する移行性の評価(評価方法B)
まず、厚さ2.0mm×幅30mm×長さ100mmの大きさの各実施例および各比較例の防水シートからなる試験片を作製し、JIS A 6008に準拠した引張試験に基づいて、これら試験片の伸び率[%]を、初期の伸び率[%]として測定した。
【0137】
次いで、各実施例および各比較例に基づく各試験片の一方の面に厚さ2.0mm×幅35mm×長さ110mmの大きさのブチルゴムからなるブチルゴムテープを貼付し、その後、これらのものを、80℃のオーブン内に28日間保管した後に、各試験片からブチルゴムテープを剥離させた。
【0138】
次いで、JIS A 6008に準拠した引張試験に基づいて、ブチルゴムテープが剥離された各試験片の伸び率[%]を、保管後の伸び率[%]として測定した。そして、初期の伸び率を100.0%としたときに算出される、保管後の伸び率[%]を、防水シートにおける可塑剤の残存率[%]として求めた。
【0139】
そして、これら防水シートの初期の伸び率[%]、および、防水シートにおける可塑剤の残存率B[%]を、それぞれ、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0140】
(防水シートの初期の伸び率の評価)
防水シートの初期の伸び率が
◎:300.0%以上である
〇:250.0%以上300.0%未満である
×:250.0%未満である
【0141】
(移行性評価における、可塑剤の残存率の評価)
防水シートにおける可塑剤の残存率Bが
◎:90.0%以上である
〇:70.0%以上90.0%未満である
×:70.0%未満である
【0142】
3-2.泥体積状態での乾湿繰り返しによる漏出性の評価(評価方法A)
まず、厚さ2.0mm×縦90mm×横90mmの大きさの各実施例および各比較例の防水シートからなる試験片を作製し、これら試験片の重量[g]を、初期の重量[g]として測定した。
【0143】
次いで、各実施例および各比較例に基づく各試験片を、図3に示す貯留槽20に装着し、その後、この貯留槽20の貯留空間26に、15gの泥82(JIS Z 8901の試験用粉体1(日本粉体工業技術協会製、11種タイプ))と、25mLの純水81とが添加された状態とした後に、この状態の貯留槽20を80℃のオーブン内に84日間保管した。このとき、25mLの純水81の添加を朝・夕(1日2回)の12時間毎に実施した。その後、貯留槽20から各試験片を取り出し、洗浄・乾燥した。
【0144】
次いで、乾湿繰り返し後の各試験片の重量[g]を、乾湿繰り返し後の重量[g]として測定した。そして、初期の重量を100.0%としたときに算出される、乾湿繰り返し後の重量[%]を、防水シートにおける可塑剤の残存率[%]として求め、この得られた防水シートにおける可塑剤の残存率A[%]を、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0145】
(乾湿繰り返しによる漏出性評価における、可塑剤の残存率の評価)
防水シートにおける可塑剤の残存率Aが
◎:96.0%以上である
〇:90.0%以上96.0%未満である
×:90.0%未満である
これらの評価の結果を表1に示す。
【0146】
【表1】
【0147】
表1に示したように、各実施例の防水シートでは、可塑剤の分子量が300以上であることと、可塑剤の溶解パラメーターが8.2(cal/cm31/2以上9.8(cal/cm31/2以下であることとの双方を満足しており、その結果、防水シートからの可塑剤の漏出が抑制されている結果を示した。
【0148】
これに対して、各比較例の防水シートでは、可塑剤の分子量が300以上であることと、可塑剤の溶解パラメーターが8.2(cal/cm31/2以上9.8(cal/cm31/2以下であることとの少なくとも一方を満足しておらず、そのため、防水シートからの可塑剤の漏出を防止することができなかった。
【符号の説明】
【0149】
10 シート防水構造
20 貯留槽
21 底板
22 カバー部材
23 パッキン
24 クリップ
25 固定用ネジ
26 貯留空間
30 防水シート
31 段差
35 試験片
50 配置部材
51 底部
52 立ち上がり面
70 防水シート
81 純水
82 泥
100 躯体
101 床部
102 壁部
図1
図2
図3
図4