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特開2024-129964嗅覚受容体応答評価系の感度向上方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129964
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】嗅覚受容体応答評価系の感度向上方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20240920BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20240920BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12Q1/06
C12N5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039400
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】507219686
【氏名又は名称】静岡県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】長谷川(寺田) 祐子
(72)【発明者】
【氏名】尾城 一恵
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 豊実
(72)【発明者】
【氏名】内村 美里
(72)【発明者】
【氏名】平野 啓太
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QR77
4B063QS05
4B063QX02
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA46
(57)【要約】
【課題】高感度化された嗅覚受容体応答評価系を提供する。
【解決手段】膜移行以前の転写量の増加により膜表面発現量を向上させることができ、それにより細胞の嗅覚受容体応答の高感度化が可能である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
嗅覚受容体遺伝子の転写量を増加させることにより、嗅覚受容体ポリペプチドの細胞膜表面発現量を増加させることを含む、細胞の嗅覚受容体応答の感度を向上させるための方法。
【請求項2】
嗅覚受容体遺伝子、および嗅覚受容体遺伝子の転写量を増加させる配列を含むベクターを細胞内に導入することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
細胞がHEK293細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
嗅覚受容体ポリペプチドが:
i)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR1A1、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;
ii)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR2J3、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;
iii)配列番号6で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR6N2、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;
iv)配列番号8で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR7D4、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;
v)配列番号10で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR51B6、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;
vi)配列番号12で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR51M1、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;および
vii)配列番号14で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR52D1、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;
からなる群から選択される1以上の嗅覚受容体ポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
嗅覚受容体遺伝子の転写量を増加させることにより、嗅覚受容体ポリペプチドの細胞膜表面発現量を増加させることを含む方法により得られる、嗅覚受容体応答の感度が向上した細胞。
【請求項6】
HEK293細胞である、請求項5に記載の細胞。
【請求項7】
嗅覚受容体ポリペプチドが:
i)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR1A1、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;
ii)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR2J3、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;
iii)配列番号6で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR6N2、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;
iv)配列番号8で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR7D4、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;
v)配列番号10で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR51B6、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;
vi)配列番号12で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR51M1、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;および
vii)配列番号14で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR52D1、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;
からなる群から選択される1以上の嗅覚受容体ポリペプチドである、請求項5に記載の細胞。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか一項に記載の細胞に発現した嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定することを含む、嗅覚受容体ポリペプチドの応答の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嗅覚受容体応答評価系の感度向上方法、および嗅覚受容体応答感度が向上した細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の食品の香りの評価は、官能評価や機器分析が主流である。しかしながら、官能評価は客観性・再現性・定量性に課題があり、機器分析は結果がヒトの感覚と必ずしも相関しない、ヒトが検出できる微量な匂い物質を検出できないなどの課題がある。
【0003】
ヒトの知覚メカニズムに基づいた香りの評価法として、嗅覚受容体の応答を指標とした香りの評価が注目され始めている。これまでに、香り成分に応答する嗅覚受容体を探索する「嗅覚受容体応答評価系」の開発がなされ、いくつかの香り成分について応答する嗅覚受容体が発見されている(非特許文献1)。また、特定の嗅覚受容体の応答を測定し、嗅覚受容体に対するリガンドを検索する技術が開示されている(特許文献1)。
【0004】
嗅覚受容体応答評価系の感度は、培養細胞における嗅覚受容体の膜表面発現量と密接に関わっている。しかしながら、嗅覚受容体は培養細胞において膜表面に発現させることが非常に難しいことが知られている(非特許文献2)。
【0005】
嗅覚受容体を培養細胞の膜表面に効率的に発現させるために様々な研究がなされている。具体的には、i)膜表面に発現しやすいGPCR(ロドプシン)のN末端配列を嗅覚受容体のN末端に付加する方法(非特許文献3)、ii)膜移行促進効果のあるシャペロンタンパク質を共発現させる方法(非特許文献4)、iii)嗅覚受容体のN末端にLucyタグを付加する方法(非特許文献5)、iv)嗅覚受容体以外のGPCRを共発現させる方法(非特許文献6)、などが開示されている。
【0006】
しかしながら、ヒトの嗅覚知覚を再現できる高感度な嗅覚受容体応答評価系は未だ実現しておらず、新たな技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-39711号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Gonzalez-Kristeller, D. C., do Nascimento, J. B., Galante, P. A., & Malnic, B. Identification of agonists for a group of human odorant receptors. Frontiers in pharmacology, 6, 35. (2015)
【非特許文献2】McClintock, T. S., Landers, T. M., Gimelbrant, A. A., Fuller, L. Z., Jackson, B. A., Jayawickreme, C. K., & Lerner, M. R.. Functional expression of olfactory-adrenergic receptor chimeras and intracellular retention of heterologously expressed olfactory receptors. Brain research. Molecular brain research, 48(2), 270-278. (1997)
【非特許文献3】Krautwurst, D., Yau, K. W., & Reed, R. R.. Identification of ligands for olfactory receptors by functional expression of a receptor library. Cell, 95(7), 917-926. (1998)
【非特許文献4】Saito, H., Kubota, M., Roberts, R. W., Chi, Q., & Matsunami, H.. RTP family members induce functional expression of mammalian odorant receptors. Cell, 119(5), 679-691. (2004)
【非特許文献5】Shepard, B. D., Natarajan, N., Protzko, R. J., Acres, O. W., & Pluznick, J. L.. A cleavable N-terminal signal peptide promotes widespread olfactory receptor surface expression in HEK293T cells. PloS one, 8(7), e68758. (2013)
【非特許文献6】Bush, C. F., Jones, S. V., Lyle, A. N., Minneman, K. P., Ressler, K. J., & Hall, R. A.. Specificity of olfactory receptor interactions with other G protein-coupled receptors. The Journal of biological chemistry, 282(26), 19042-19051. (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、高感度化された嗅覚受容体応答評価系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題の解決のため鋭意研究を行った。これまでの嗅覚受容体を培養細胞の膜表面に効率的に発現させるための検討は、シグナル配列の付加やフォールディングの補助など、膜移行に関するものがほとんどであった。これに対し、本発明者らは、膜移行以前の転写量に着目した。その結果、膜移行以前の転写量の増加により膜表面発現量を向上させることができ、それにより細胞の嗅覚受容体応答の高感度化が可能であることを見出し、本発明を完成させた。細胞内のタンパク質量増加が膜表面発現量の増加につながるかどうかは不明であったため、本発見は驚くべきものであった。
【0011】
すなわち、本発明は:
(1)嗅覚受容体遺伝子の転写量を増加させることにより、嗅覚受容体ポリペプチドの細胞膜表面発現量を増加させることを含む、細胞の嗅覚受容体応答の感度を向上させるための方法;
(2)嗅覚受容体遺伝子、および嗅覚受容体遺伝子の転写量を増加させる配列を含むベクターを細胞内に導入することを含む、(1)の方法;
(3)細胞がHEK293細胞である、(1)の方法;
(4)嗅覚受容体ポリペプチドが:
i)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR1A1、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;
ii)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR2J3、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;
iii)配列番号6で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR6N2、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;
iv)配列番号8で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR7D4、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;
v)配列番号10で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR51B6、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;
vi)配列番号12で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR51M1、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;および
vii)配列番号14で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR52D1、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;
からなる群から選択される1以上の嗅覚受容体ポリペプチドである、(1)の方法;
(5)嗅覚受容体遺伝子の転写量を増加させることにより、嗅覚受容体ポリペプチドの細胞膜表面発現量を増加させることを含む方法により得られる、嗅覚受容体応答の感度が向上した細胞;
(6)HEK293細胞である、(5)の細胞;
(7)嗅覚受容体ポリペプチドが:
i)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR1A1、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;
ii)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR2J3、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;
iii)配列番号6で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR6N2、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;
iv)配列番号8で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR7D4、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;
v)配列番号10で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR51B6、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;
vi)配列番号12で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR51M1、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;および
vii)配列番号14で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体OR52D1、または当該配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチド;
からなる群から選択される1以上の嗅覚受容体ポリペプチドである、(5)の細胞;
(8)(5)~(7)のいずれかの細胞に発現した嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定することを含む、嗅覚受容体ポリペプチドの応答の測定方法、
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、高感度化された嗅覚受容体応答評価系を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例で使用したベクターの模式図である。OR:嗅覚受容体遺伝子。
図2図2は、実施例1の結果を示す図である。
図3図3は、実施例2の結果を示す図である。コントロールには、CMVプロモーターのみを搭載したベクター(pBApo-CMV Neo vector)を用いてOR1A1またはOR7D4を発現させた細胞群を用いた。mockにはOR1A1またはOR7D4が挿入されていない空ベクターを発現させた細胞群を用いた。FITC(横軸)はFITC用の光学フィルターを通して525~540nm(Alexa Fluor 488の蛍光波長)の蛍光波長を検出している。PE(縦軸)は、PE用の光学フィルターを通して585~642nmの蛍光波長を検出している。(FITCの蛍光値が高いほど、細胞の膜表面にOR1A1またはOR7D4が発現していることを示す。)各ドットは、FCM解析された個々の細胞を示す。mock細胞において存在比率が0.00%となる高FITC領域をゲーティング(各図右下の枠)し、細胞全体に占めるゲート内の細胞の割合を%で示した。
図4図4は、実施例2の結果を示す図である。FITC(横軸)はFITC用の光学フィルターを通して525~540nm(Alexa Fluor 488の蛍光波長)の蛍光波長を検出している。APC(縦軸)は、APC用の光学フィルターを通して635~695nmの蛍光波長を検出している。(FITCの蛍光値が高いほど、細胞の膜表面に嗅覚受容体が発現していることを示す。)各ドットは、フローサイトメトリー解析された個々の細胞を示す。mockには嗅覚受容体遺伝子が挿入されていない空ベクターを発現させた細胞群を用いた。mock細胞において存在比率が0.00%となる高FITC領域をゲーティングした(E-1枠)。また、嗅覚受容体発現領域の中でも特に高い蛍光値を示した領域をゲーティングした(E-2枠)。細胞全体に占めるゲート内の細胞の割合を%で示した(E-1枠:0.10%、E-2枠:0.01%)。
図5図5は、実施例3の結果を示す図である。コントロールには、CMVプロモーターのみを搭載したベクター(pBApo-CMV Neo vector)を用いて嗅覚受容体を発現させた細胞群を用いた。
図6図6は、実施例4で作成した嗅覚受容体の系統樹を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、「嗅覚受容体ポリペプチド」とは、嗅覚受容体又はそれと同等の機能を有するポリペプチドをいい、嗅覚受容体と同等の機能を有するポリペプチドとは、嗅覚受容体と同様に、細胞膜上に発現することができ、匂い分子の結合によって活性化し、かつ活性化されると、細胞内のGs系Gタンパク質(Stimulatory G-protein、例えばGαs、Gαolf等)と共役してアデニル酸シクラーゼを活性化することで細胞内cAMP量を増加させる機能を有するポリペプチドをいう。
【0015】
本明細書において、細胞で嗅覚受容体ポリペプチドが「機能的に発現する」とは、発現された該嗅覚受容体ポリペプチドが、該細胞において匂い物質受容体として機能することをいう。
【0016】
本明細書において、ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列の同一性は、リップマン-パーソン法(Lipman-Pearson法;Science,1985,227:1435-41)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(Ver.5.1.1;ソフトウェア開発)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
【0017】
本明細書において、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列の同一性に関する「少なくとも80%」とは、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、なお好ましくは100%をいう。
【0018】
本明細書において、嗅覚受容体遺伝子の転写量の増加は、例えば、CMVプロモーターのみを搭載したベクター(pBApo-CMV Neo vector)を用いたものをコントロールとし、細胞内の嗅覚受容体のmRNA量を比較することで確認することができる。具体的には、リアルタイムRT-PCRを行い、ハウスキーピング遺伝子(GAPDH)のmRNAを1とした際の相対値として各嗅覚受容体遺伝子を定量するΔΔCt法がある。
【0019】
本明細書において、嗅覚受容体ポリペプチドの細胞膜表面の発現量の増加は、例えば、嗅覚受容体遺伝子のN末端にFLAG配列を付与し、蛍光標識された抗FLAG抗体を反応させ、細胞膜に嗅覚受容体を発現している細胞を選択的に蛍光標識して、蛍光値をフローサイトメトリー解析で分析することで確認できる。この際、コントロールとしてCMVプロモーターのみを搭載したベクター(pBApo-CMV Neo vector)を用いて嗅覚受容体を発現させた細胞群を用い、mockとして嗅覚受容体遺伝子が挿入されていない空ベクターを発現させた細胞群を用いる。mock細胞において存在比率が0.00%となる高FITC領域をゲーティングし、試験細胞における同領域内の細胞の存在比率あるいは細胞全体の発光値の平均値を求める。
【0020】
本明細書において、細胞の嗅覚受容体応答の感度は、例えば、cAMP濃度依存的に活性化する改変ルシフェラーゼ(Glosensor)を利用して、嗅覚受容体の試験物質による活性化に伴って増加する細胞内シグナル(cAMP)を発光値として測定することで確認できる。コントロールとしてCMVプロモーターのみを搭載したベクター(pBApo-CMV Neo vector)を用いて嗅覚受容体を発現させた細胞群を用いることで、感度の向上を確認できる。
【0021】
ある態様において、本発明は嗅覚受容体遺伝子の転写量を増加させることにより、嗅覚受容体ポリペプチドの細胞膜表面発現量を増加させることを含む、細胞の嗅覚受容体応答の感度を向上させるための方法を提供する。本態様の方法は、インビトロまたはエクスビボで行われ得る。
【0022】
本態様の方法において使用される嗅覚受容体ポリペプチドの種類、またはそれが由来する生物種は、特に限定されない。好ましくは、本態様の方法において使用される嗅覚受容体ポリペプチドは、哺乳動物由来の嗅覚受容体ポリペプチドである。哺乳動物由来の嗅覚受容体ポリペプチドの好ましい例としては、ヒト、チンパンジー、サルなどの霊長類の嗅覚受容体、マウス、ラットなどのげっ歯類の嗅覚受容体、ならびにそれらと同等の嗅覚受容体ポリペプチドが挙げられる。より好ましい例としては、ヒト、マウスおよびラットの嗅覚受容体、ならびにそれらと同等の嗅覚受容体ポリペプチドが挙げられる。さらに好ましい例としては、ヒトおよびそれと同等の嗅覚受容体ポリペプチドが挙げられる。
【0023】
ある嗅覚受容体と「同等の嗅覚受容体ポリペプチド」としては、当該嗅覚受容体とアミノ酸配列において少なくとも80%の同一性を有する嗅覚受容体ポリペプチドが挙げられる。
【0024】
したがって、本態様の方法において使用される嗅覚受容体ポリペプチドは、好ましくは、ヒト、マウス又はラットの嗅覚受容体、あるいはそれとアミノ酸配列において少なくとも80%同一な嗅覚受容体ポリペプチドである。より好ましくは、ヒト嗅覚受容体、またはそれとアミノ酸配列において少なくとも80%の同一性を有する嗅覚受容体ポリペプチドである。
【0025】
ヒト嗅覚受容体はゲノム上では396個存在するが、その中には機能的に発現していないものも含まれるため、それらを除いたヒト嗅覚受容体は389種類である。389種類の嗅覚受容体を表1に示す。具体的な実施形態では、本態様の方法で使用される嗅覚受容体ポリペプチドは、表1に記載のヒト嗅覚受容体またはそれとアミノ酸配列において少なくとも80%の同一性を有する嗅覚受容体ポリペプチドである。また他の実施形態では、本態様の方法で使用される嗅覚受容体遺伝子は、表1に記載のヒト嗅覚受容体ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列またはそれと少なくとも80%の同一性を有する配列からなる。
【0026】
【表1-1】
【表1-2】
【0027】
ヒト、マウス及びラットの嗅覚受容体の情報は、GenBank[www.ncbi.nlm.nih.gov]より取得することができる。嗅覚受容体遺伝子およびポリペプチドのGenBank登録番号の一例を下表に示す。
【0028】
【表2】
【0029】
例えば、OR1A1は、配列番号1で示されるヌクレオチド配列を有する遺伝子にコードされる、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。OR2J3は、配列番号3で示されるヌクレオチド配列を有する遺伝子にコードされる、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。OR6N2は、配列番号5で示されるヌクレオチド配列を有する遺伝子にコードされる、配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。OR7D4は、配列番号7で示されるヌクレオチド配列を有する遺伝子にコードされる、配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。OR51B6は、配列番号9で示されるヌクレオチド配列を有する遺伝子にコードされる、配列番号10で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。OR51M1は、配列番号11で示されるヌクレオチド配列を有する遺伝子にコードされる、配列番号12で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。OR52D1は、配列番号13で示されるヌクレオチド配列を有する遺伝子にコードされる、配列番号14で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。よって、具体的な実施形態において本態様の方法において使用される嗅覚受容体ポリペプチドの例として、配列番号2、4、6、8、10、12または14で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチドが挙げられる。また、ある実施形態において、本態様の方法で使用される嗅覚受容体遺伝子の例として、配列番号1、3、5、7、9、11または13で示される配列と少なくとも80%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる嗅覚受容体遺伝子が挙げられる。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【0030】
本態様の方法における、嗅覚受容体遺伝子の転写量を増加させる方法は特に限定されない。例えば、タンパク質を高発現させる配列(エンハンサー、プロモーター等の調節配列、転写調節因子を発現する配列、等)等を組み込んだベクターを導入するなどの方法が挙げられる。このような配列の具体的な例として、TAR配列、Tat配列、CAGプロモーター配列、WPRE配列、改変CMVプロモーター配列等、より好ましい例としてTAR配列とTat配列の組み合わせが挙げられる。このようなベクターとして市販品を利用してもよい。このようなベクターの例として、pHEK293 Ultra Expression Vector(タカラバイオ社)、pCAG vector(富士フィルム社)、pcDNATM 3.4 TOPOTM vector(Thermo Fisher社)、phCMV Expression Vector(Genlantis社)等が挙げられる。具体的な実施形態において、本態様の方法は、目的とする嗅覚受容体遺伝子およびタンパク質を高発現させる配列を組み込んだベクターを細胞に導入することを含む。より具体的な実施形態において、本態様の方法は、上記の市販のベクターに目的とする嗅覚受容体を組み込んで、細胞に導入することを含む。
【0031】
本態様の方法に使用される細胞は特に限定されない。ある実施形態において、本態様の方法に使用される細胞は哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞、さらに好ましくはHEK293細胞である。
【0032】
ある実施形態において、本態様の方法における嗅覚受容体遺伝子の転写量は、コントロールと比較して2倍以上、例えば3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍以上であり得る。
【0033】
ある実施形態において、本態様の方法における嗅覚受容体ポリペプチドの細胞膜表面の発現量の増加は、2~150倍、例えば4~125倍、10~100倍、20~80倍であり得る。さらに具体的な実施形態において、本態様の方法における嗅覚受容体ポリペプチドの細胞膜表面の発現量の増加は、4倍または143倍である。
【0034】
ある実施形態において、本態様の方法における細胞の嗅覚受容体応答の感度は、ある特定の濃度の試験物質に対して、コントロールよりも向上する。具体的な実施形態において、特定の濃度とは、例えば10μM、30μM、50μM、100μM、300μM、500μM、1mM、3mM等であり得る。具体的な実施形態において、本態様の方法における細胞の嗅覚受容体応答の感度は、コントロールよりも0.2、例えば0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.5、向上し得る。
【0035】
他の態様において、本発明は、嗅覚受容体応答の感度が向上した細胞を提供する。ある実施形態において、本態様の細胞は、嗅覚受容体遺伝子の転写量が通常の細胞より増加しており、嗅覚受容体ポリペプチドの細胞膜表面発現量が通常の細胞よりも増加している。
【0036】
本態様の細胞の細胞膜表面に発現している嗅覚受容体ポリペプチドの種類、またはそれが由来する生物種は、特に限定されない。好ましくは、本態様の細胞に発現している嗅覚受容体ポリペプチドは、哺乳動物由来の嗅覚受容体ポリペプチドである。哺乳動物由来の嗅覚受容体ポリペプチドの好ましい例としては、ヒト、チンパンジー、サルなどの霊長類の嗅覚受容体、マウス、ラットなどのげっ歯類の嗅覚受容体、ならびにそれらと同等の嗅覚受容体ポリペプチドが挙げられる。より好ましい例としては、ヒト、マウスおよびラットの嗅覚受容体、ならびにそれらと同等の嗅覚受容体ポリペプチドが挙げられる。さらに好ましい例としては、ヒトおよびそれと同等の嗅覚受容体ポリペプチドが挙げられる。
【0037】
ある嗅覚受容体と「同等の嗅覚受容体ポリペプチド」としては、当該嗅覚受容体とアミノ酸配列において少なくとも80%の同一性を有する嗅覚受容体ポリペプチドが挙げられる。
【0038】
したがって、本態様の細胞に発現している嗅覚受容体ポリペプチドは、好ましくは、ヒト、マウス又はラットの嗅覚受容体、あるいはそれとアミノ酸配列において少なくとも80%同一な嗅覚受容体ポリペプチドである。より好ましくは、ヒト嗅覚受容体、またはそれとアミノ酸配列において少なくとも80%の同一性を有する嗅覚受容体ポリペプチドである。
【0039】
具体的な実施形態において、本態様の細胞に発現している嗅覚受容体ポリペプチドは、表1に記載のヒト嗅覚受容体またはそれとアミノ酸配列において少なくとも80%の同一性を有する嗅覚受容体ポリペプチドである。また他の実施形態では、本態様の細胞に発現している嗅覚受容体遺伝子は、表1に記載のヒト嗅覚受容体ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列またはそれと少なくとも80%の同一性を有する配列からなる。
【0040】
具体的な実施形態において、本態様の細胞に発現している嗅覚受容体ポリペプチドの例として、配列番号2、4、6、8、10、12または14で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチドが挙げられる。
【0041】
本態様の細胞は、典型的には、上述の細胞の嗅覚受容体応答の感度を向上させるための方法によって得られるが、限定されるものではない。また、当該方法によって得られた細胞を継代培養して得られた細胞も本態様の細胞であり得る。
【0042】
本態様の細胞の種類は特に限定されない。ある実施形態において、本態様細胞は哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞、さらに好ましくはHEK293細胞である。
【0043】
ある実施形態において、本態様の細胞の嗅覚受容体応答の感度は、ある特定の濃度の試験物質に対して、コントロールよりも向上している。具体的な実施形態において、特定の濃度とは、例えば10μM、30μM、50μM、100μM、300μM、500μM、1mM、3mM等であり得る。具体的な実施形態において、本態様の細胞の嗅覚受容体応答の感度は、コントロールよりも0.2、例えば0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.5、向上している。
【0044】
さらに具体的な実施形態において、本態様の細胞は、1mM濃度のn-ヘキサナールに対する応答が0.7以上、例えば0.8以上、0.9以上、1.0以上、1.2以上、1.4以上、1.6以上、1.8以上、であり得る。
【0045】
他の態様において、本発明は上記態様の細胞に発現した嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定することを含む、嗅覚受容体ポリペプチドの応答の測定方法を提供する。
【0046】
本態様の方法において、嗅覚受容体ポリペプチドの応答の測定には、嗅覚受容体の応答を測定する方法として当該分野で知られている任意の方法を用いることができる。そのような方法としては、例えば、細胞内cAMP量測定が挙げられる。嗅覚受容体は、匂い物質によって活性化されると、細胞内のGs系Gタンパク質と共役してアデニル酸シクラーゼを活性化することで細胞内cAMP量を増加させる。したがって、細胞内cAMP量を指標にすることで、嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定することができる。cAMP量を測定する方法としては、例えば、ELISA、レポータージーンアッセイなどが挙げられる。一方で、細胞内で活性化された嗅覚受容体ポリペプチドは、該Gq系Gタンパク質と共役して、ホスホリパーゼCを活性化し、細胞内にカルシウムイオンを放出する。したがって、細胞内カルシウムイオン濃度変化を指標にすることで、嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定することもできる。細胞内カルシウムイオン濃度変化を測定する方法としては、カルシウムイメージング法が挙げられる。
【0047】
本態様の一応用例として、目的の匂いを有する物質の探索方法が挙げられる。当該方法は、基本的には、試験物質存在下で嗅覚受容体ポリペプチドの応答を測定することを含み、該嗅覚受容体ポリペプチドは、上記態様の細胞上に発現されている。ある実施形態では、該嗅覚受容体ポリペプチドには、該目的の匂いに対して応答性を有することが確認されている嗅覚受容体ポリペプチドが用いられる。したがって、該嗅覚受容体ポリペプチドが応答した試験物質は、該目的の匂いを有する物質の候補として選択される。他の実施形態では、特定の嗅覚受容体ポリペプチドを発現する細胞を用いて、候補物質の応答性を確認する。これにより、特定の嗅覚受容体ポリペプチドに応答する物質を同定することができる。
【実施例0048】
以下、実施例等により本発明の実施形態をより具体的に説明する。
【0049】
実施例1:嗅覚受容体転写量増加の確認
嗅覚受容体として、OR1A1、OR6N2、OR51M1を選択した。pHEK293 Ultra Expression Vector I(タカラバイオ社製)に、上記嗅覚受容体遺伝子をそれぞれ組み込んで調製したベクターでトランスフェクトしたHEK293細胞を培養し、培養上清を回収した。CMVプロモーターのみを搭載したベクター(pBApo-CMV Neo vector)を用いたものをコントロールとした。ハウスキーピング遺伝子としてGPADHを用いて、ΔΔC法にてmRNA発現レベルの比較定量を行った。結果を表4、図2に示す。
【0050】
【表4】
【0051】
いずれの嗅覚受容体遺伝子についても発現量の増加がみられた。コントロールと比較して、試験細胞はOR1A1で約3倍、OR6N2で約55倍、OR51M1で約136倍の増加がみられた。
【0052】
実施例2:嗅覚受容体の細胞表面発現量の増加の確認
実施例1と同様の手順で、OR1A1、OR7D4または表1に記載の389種類全ての嗅覚受容体をランダムに発現させた細胞群を用いて、膜表面発現量の増加を検証した。
【0053】
嗅覚受容体遺伝子のN末端にはFLAG配列を付与しており、嗅覚受容体が培養細胞であるHEK293細胞の細胞膜に発現すると、FLAG配列を含むN末端配列が細胞の外側に位置する。蛍光標識された抗FLAG抗体を反応させ、細胞膜に嗅覚受容体を発現している細胞を選択的に蛍光標識した。蛍光値をフローサイトメトリー解析で分析した。結果を図3、4に示す。
【0054】
OR1A1、OR7D4、ランダムに発現させた細胞群のいずれにおいても、膜表面発現量の増加が確認された。これにより、嗅覚受容体遺伝子の転写量を増やすことでその嗅覚受容体の膜表面発現量が増加することが確認された。
【0055】
実施例3:嗅覚受容体応答評価系の感度向上の確認
実施例1と同様の手順で、OR1A1、OR2J3、OR51B6、OR51M1、OR52D1を発現する細胞を調製した。CMVプロモーターのみで各嗅覚受容体遺伝子を発現させたものをコントロールとした。
【0056】
cAMP濃度依存的に活性化する改変ルシフェラーゼ(Glosensor)を利用して、嗅覚受容体の活性化に伴って増加する細胞内シグナル(cAMP)を発光値として測定した。上記で調製した細胞に、10μM、30μM、50μM、100μM、300μM、500μM、1mM、3mMとなるようにn-ヘキサナールを含む水溶液を添加したものと、n-ヘキサナールを含まない水溶液を添加したもので測定した発光量(それぞれL、L0)の変化を応答強度(ΔL/L0)とした。結果を表5、図5に示す。
【0057】
【表5】
【0058】
全ての嗅覚受容体について、n-ヘキサナールへの応答感度が上昇した。また、OR1A1、OR2J3は通常の発現では応答が検出できなかったところ、嗅覚受容体の発現量が増加することにより検出が可能となった。これにより、これまで検出できなかった応答を検出できることが示唆された。
【0059】
実施例4:分子系統樹の作成
ヒト嗅覚受容体はゲノム上では396個存在するが、その中には機能的に発現していないものも含まれる。それらを除いた389種類のヒト嗅覚受容体発現遺伝子を人工合成により入手した。389種類のヒト嗅覚受容体のアミノ酸配列をアライメントし、結果に基づいてMEGAX(Version 10.1)により、分子系統樹を作成した。作成した分子系統樹を図6に示す。
【0060】
実施例1~3で検討したOR1A1、OR2J3、OR6N2、OR7D4、OR51M1、OR51B6、OR52D1は分子系統樹の広い範囲をカバーしており、本発明の技術が幅広い嗅覚受容体に適用されることを示す。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明により、膜移行以前の転写量の増加により膜表面発現量を向上させることができ、それにより細胞の嗅覚受容体応答の高感度化が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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