(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129969
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】真空断熱パネル並びにこれを用いた機器
(51)【国際特許分類】
F16L 59/065 20060101AFI20240920BHJP
F16L 59/12 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F16L59/065
F16L59/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039409
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河野 竜治
(72)【発明者】
【氏名】河井 良二
(72)【発明者】
【氏名】井関 崇
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓愛
(72)【発明者】
【氏名】関谷 禎夫
【テーマコード(参考)】
3H036
【Fターム(参考)】
3H036AA08
3H036AA09
3H036AB03
3H036AB18
3H036AB33
3H036AC01
3H036AD09
3H036AE11
(57)【要約】
【課題】ヒートブリッジを抑制するとともに、外包材が大気圧により変形して破断することを防止する真空断熱パネルを提供する。
【解決手段】主平面をそれぞれ有する2つの端板と、対向する2つの主平面の間の空間に配された芯材と、芯材の周囲に配された端板側面部と、2つの端板、芯材、及び端板側面部を包む外包材と、を備える真空断熱パネルであって、外包材の内部の空間が減圧されており、端板側面部は、一方の主平面から他方の主平面側に向かって延び、他方の端板から離間している第一側面部を櫛歯状に備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主平面をそれぞれ有する2つの端板と、
対向する2つの前記主平面の間の空間に配された芯材と、
前記芯材の周囲に配された端板側面部と、
前記2つの端板、前記芯材、及び前記端板側面部を包む外包材と、を備え、
前記外包材の内部の空間が減圧されており、
前記端板側面部は、一方の前記主平面から他方の前記主平面側に向かって延び、他方の前記端板から離間している第一側面部を櫛歯状に備える、真空断熱パネル。
【請求項2】
前記端板側面部は、他方の前記主平面側から一方の前記主平面側に向かって延び、一方の前記端板から離間している第二側面部を櫛歯状に備え、
前記第一側面部と前記第二側面部とが交互に配されている、請求項1記載の真空断熱パネル。
【請求項3】
前記第一側面部が、近傍の前記第二側面部の先端よりも、他方の前記主平面に近くに位置する先端を有する構成、及び/又は、
前記第二側面部が、近傍の前記第一側面部の先端よりも、一方の前記主平面に近くに位置する先端を有する構成を備える、請求項2に記載の真空断熱パネル。
【請求項4】
前記離間による隙間の、厚み方向の長さは、0超、かつ、前記空間の厚み寸法の半分以下である、請求項1に記載の真空断熱パネル。
【請求項5】
前記空間の厚み方向視で、前記主平面の一方における、互いに異なる方向に延びる2つの縁が交わる隅部に、前記第一側面部が配されている、請求項1記載の真空断熱パネル。
【請求項6】
前記芯材は、
積層されたシールドと、
2つの前記主平面を繋ぐスペーサと、を備え、
前記シールドは、予め前記スペーサを挿通する孔が形成されている、請求項1記載の真空断熱パネル。
【請求項7】
前記芯材は、
積層されたシールドと、
2つの前記主平面を繋ぐスペーサと、を備え、
前記スペーサの一方側の端部は、尖っている、請求項1記載の真空断熱パネル。
【請求項8】
前記第一側面部は、根元側よりも先端側の方が周方向に広い形状である、請求項1に記載の真空断熱パネル。
【請求項9】
前記第一側面部は、側面部内空隙を囲むアーチ形状である、請求項1記載の真空断熱パネル。
【請求項10】
前記第一側面部は、
根元側が、当該真空断熱パネルの外方向かつ前記第二側面部側に向かって延び、
先端側が、前記第二側面部側に向かって略真っ直ぐ延びている、請求項1記載の真空断熱パネル。
【請求項11】
前記離間によって形成されている隙間を辿ると、前記芯材の周囲を一周可能である、請求項1に記載の真空断熱パネル。
【請求項12】
請求項1記載の真空断熱パネルを備えた、機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、真空断熱パネル並びにこれを用いた機器に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫、給湯機等の機器に用いられる真空断熱パネル(VIP:Vacuum Insulation Panel)は、ガスバリア性を有する袋状の外包材の内部の減圧空間を維持する。真空断熱パネルの変形を防止する構成として、二つの端板を含む箱形のコアを外包材の内部に設けたものがある。
【0003】
特許文献1には、ガス不透過性を有し内部に一定の減圧空間を有する包装部材20と、内部に空間が形成され包装部材20の内側に配置されて包装部材20を支持する、箱状の本体42と本体42内に延在するリブ66を備えるコア40と、を有する真空断熱部材が開示されている。特許文献1には、コア40の厚さ方向(高さ方向)の熱伝達を抑制するために、コア40のそれぞれの側壁に貫通部47,67を形成すること、貫通部は、複数の円形孔、多角形、楕円形などであることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の真空断熱部材は、スリット状等に設定される貫通部67は熱伝達の抑制を図っているが、コア40が全体的に厚み方向で繋がっており、改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る真空断熱パネルは、主平面をそれぞれ有する2つの端板と、対向する2つの主平面の間の空間に配された芯材と、芯材の周囲に配された端板側面部と、2つの端板、芯材、及び端板側面部を包む外包材と、を備え、外包材の内部の空間が減圧されており、端板側面部は、一方の主平面から他方の主平面側に向かって延び、他方の端板から離間している第一側面部を櫛歯状に備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例1の真空断熱パネルを示す部分断面斜視図である。
【
図2A】実施例1の真空断熱パネルを示す断面図である。
【
図2B】実施例1の真空断熱パネルを示す断面図である。
【
図3】
図1の真空断熱パネルの外包材を除去した状態を示す部分側面図である。
【
図4】実施例2の真空断熱パネルの外包材を除去した状態を示す部分側面図である。
【
図5】実施例3の真空断熱パネルの外包材を除去した状態を示す部分側面図である。
【
図6】実施例4の真空断熱パネルの外包材を除去した状態を示す部分側面図である。
【
図7】実施例5の真空断熱パネルの外包材を除去した状態を示す部分側面図である。
【
図8】実施例6の真空断熱パネルを示す部分断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明においては、真空断熱パネルの側面それぞれの長手方向に沿った方向を周方向と呼ぶ。真空断熱パネルの側面の短手方向を厚み方向と呼ぶ。真空断熱パネルの厚み方向と周方向とに直交する方向を内外方向と呼ぶ。特に、真空断熱パネルの中央に近づく側を内方向、遠ざかる側を外方向と呼ぶ。
【実施例0009】
図1は、実施例1の真空断熱パネルを示す部分断面斜視図である。
【0010】
図2Aは、本実施例の真空断熱パネルを示す断面図である。
【0011】
図2Bは、本実施例の真空断熱パネルを示す断面図である。
【0012】
真空断熱パネル10は、第一端板121と、第二端板122と、スペーサ16と、シールド161と、セパレータ162と、外包材15と、を有する。本実施例では、第一端板121、第二端板122、及びスペーサ16をまとめて内包材と呼ぶことがある。また、本実施例では、シールド161及びセパレータ162をまとめて芯材と呼ぶことがある。芯材は内包材に収容されている。内包材は外包材15に収容されている。外包材15内部は減圧されている。
【0013】
本実施例の第一端板121は、矩形状の主平面P1を備えるステンレス鋼製や樹脂製の板材である。主平面P1の外縁には、端板側面部が配されている。端板側面部は、櫛歯状に複数設けられた第一側面部131を有している。櫛歯の深さは、後述するように、種々想定される。本実施例では、主平面P1を例えば略垂直に折り曲げ加工することで、第一側面部131が第二端板122側に延びるように形成されている。第一側面部131を含む第一端板121は、プレス加工により製造することができる。
【0014】
第二端板122及び第二側面部132は、第一端板121及び第一側面部131と同様の構成を有することができる。
【0015】
第一端板121の主平面P1と第二端板122の主平面P2とは、空間Vを介して対向している。主平面P1,P2の形状は、任意の形状、例えば多角形状や丸形状などでもよく、特に制限されない。
【0016】
第一側面部131と第二側面部132とは、周方向に離間して、交互に並んでいる。また、第一側面部131は、第二端板122から厚み方向に離間している。第二側面部132は、第一端板121から厚み方向に離間している。
【0017】
なお、主平面の隅の何れか、好ましくはそれぞれに、第一側面部131又は第二側面部132が配されることが望ましい。主平面の「隅」とは、主平面の正面視において、互いに異なる方向に延びる主平面の2つの縁が交わる部分をいうことができる。本実施例では主平面形状は矩形状のため、隅はそれぞれ、直角形状である。
【0018】
なお、第一側面部131の中心を通る第一端板121の主平面の法線1Sは、隙間14を通る。本実施例では、隙間14を周方向に辿っていくと、芯材周囲を一周できる。
【0019】
外包材15は、ガスバリア性を有する樹脂ラミネートフィルムである。外包材15の構成としては、最外表面から順に、OPP、PET、Al蒸着LLDPE、EVOH及びLLDPEを積層したものが例示される。ここで、OPPはOriented Polypropylene(二軸延伸ポリプロピレン)、PETはポリエチレンテレフタレート、LLDPEはLinear Low-Density Polyethylene(直鎖状低密度ポリエチレン)、EVOHはEthylene-Vinylalcohol copolymer(エチレン-ビニルアルコール共重合体)のそれぞれ略称である。ただし、外包材15の構成は、この例に限定されるものではない。積層構造を有する外包材15の厚さは、およそ100μmである。
【0020】
外包材15は、まず、予め例えば主平面形状に合わせ、矩形状に切断されて2枚重ねられた樹脂ラミネートフィルムを準備する。この三辺をヒートシールすることで製造される袋状の外包材15の内部に、内包材と芯材、スペーサ16を収容する。外包材15の内部を減圧した後、残る一辺をヒートシールすることにより、内部が高真空に維持された真空断熱パネル10を作製する。このため、内包材周囲を囲むシール部152(熱溶着部)が形成される。シール部152は、外包材15の重なった部分が例えばヒートシールされて一体となっている。
【0021】
また、シール部152より内方向には密着部151が形成される。密着部151は、外包材15の重なった部分がシールはされず、一体にはなっていない部分である。密着部151には、第一側面部131及び第二側面部132それぞれに接触している部分もある。外包材15内部は減圧されているため、密着部151やシール部152が内包材内部に引き込まれないように構成することが望まれる。密着部151やシール部152が内包材内部に大きく引き込まれると破断する虞がある。また、密着部151やシール部152が芯材に接触すると外包材15又は芯材が破損する虞があるためである。
【0022】
第一端板121と第二端板122との間には、複数のスペーサ16が挟み込まれている。なお、
図2Aにおいては、第一端板121と第二端板122との間に配置されるスペーサ16を明瞭に描いている。
【0023】
スペーサ16は、厚み方向に延在する、例えば中空円筒形状をなす紙ベースのフェノール樹脂製部材であり、第一端板121及び第二端板122の主平面P1,P2の一方又は両方に例えば接着材等で固定されている。また、インサート成形法を用いて、主平面P1、P2の一方に複数のスペーサ16を固着成形してもよい。
【0024】
スペーサ16には、第一端板121及び第二端板122を介して大気圧が作用するため、スペーサ16全体によって大気圧による圧縮に耐え得る強度を有する。
【0025】
芯材としてのシールド161及びセパレータ162は、交互に積層されている。シールド161及びセパレータ162を設けることにより、第一端板121と第二端板122との間に生じる輻射による熱移動を抑制することができる。
【0026】
シールド161としては、Alを蒸着したPET樹脂を用いている。セパレータ162としては、ポリエステルの不織布を用いている。芯材は、端板側面部としての第一側面部131と第二側面部132に周囲を囲まれている。
【0027】
スペーサ16へのシールド161及びセパレータ162の挿通に関しては、例えば、シールド161及びセパレータ162のそれぞれを、スペーサ16の位置に合わせて孔を備えるように製造しておくことが考えられる。または、スペーサ16の先端を尖らせて形成しておき、シールド161及びセパレータ162をスペーサ16の先端を押し当てることによって孔を形成させることが考えられる。ここでいう「尖らせて」とは、必ずしも先端が点状になっていることには限られず、曲率が大きいことで点に近い微小面になっている場合を許容する。
【0028】
第一端板121を第二端板122より上側に配置した場合には、積層されたシールド161及びセパレータ162のうち最上部に位置するものと第一端板121の主平面との間が離間することが望ましい。シールド161又はセパレータ162が第一端板121の主平面に接触することによる熱移動を防止することができる。
【0029】
図3は、
図1の真空断熱パネルの外包材を除去した状態を示す部分側面図である。
【0030】
第一側面部131と第二側面部132が、交互に周方向に並んでいる。第一側面部131の先端と第二端板122との間には、隙間14が形成されている。第二側面部132の先端と第一端板121との間には、隙間141が形成されている。周方向に交互に並んでいる隙間14と隙間141とは繋がっている。また、厚み方向において、隙間14よりも第一側面部131が長く、隙間141よりも第二側面部132が長い。
【0031】
第一側面部131の先端が、近傍の第二側面部132の先端よりも、第二端板122の近くに位置することができる。また、第二側面部132の先端が、近傍の第一側面部131の先端よりも、第一端板121の近くに位置している。近傍とは、例えば、或る第一側面部131に注目する場合、この第一側面部131に隣接する第二側面部132を少なくとも含む。また、この第一側面部131に最も近い第二側面部132を含み得る。
【0032】
図3中、第一側面部131の第二側面部132側の面から、第二側面部132の第一側面部131側の面までの距離を、「空間厚み」と示した。隙間14,141の厚み方向の長さはそれぞれ、0超、かつ、例えば空間厚みの半分以下や、1/3以下にすることができる。
【0033】
上記のような構成を考慮することで、外包材15が芯材側に大きく引き込まれて変形(すなわち外包材引込現象)したり、シール部152に過大な引張応力が作用し破断する不具合を効果的に防止することができる。隙間14,141が長くなるにつれ、熱伝達性を低くすることができて好ましいが、外包材引込の虞がどの程度残るかを考慮して設定することができる。
【0034】
なお、第一側面部131を通る第一端板121の主平面の法線1Sを引くと、第一側面部131の先端部と第二端板122の主平面との間には、隙間14が生じている。
【0035】
また、第一側面部131及び第二側面部132の先端部は、隅丸の形状としている。これにより、外包材15が第一側面部131及び第二側面部132の先端部に密着して破損することを防止できる。なお、当該先端部は、面取りをしておくことが望ましい。
【0036】
本実施例においては、第一側面部131及び第二側面部132が1つずつ交互に配置されている例を示しているが、第一側面部131及び第二側面部132のうちの一方を複数個連続して配置し、その隣に他方をそれと同じ又は異なる複数個、連続して配置するように繰り返す構成であってもよい。例えば、第一側面部131と第二側面部132を2つずつ以上に交互に配置する構成であってもよい。
【0037】
また、第一側面部131及び第二側面部132の個数が異なっていてもよい。また、第一側面部131及び第二側面部132の全部が本実施例の示した構成に限定される必要はなく、例えば、以降に掲げる他の実施例の構成と組み合わせてもよい。他の実施例の説明においては、同様の説明は繰り返さない。例えば法線2S~6Sは図示に留め、説明は繰り返さない。
【0038】
また、第一側面部131及び第二側面部132はそれぞれ、そのすべてが上記で示したような、ヒートブリッジ抑制や外包材の破損抑制に寄与する必要はなく、例えば極一部、例えば10%以下の割合が、これらに寄与しない構成であっても許容され得る。例えば、端板側面部の極一部が、両方の主平面P1,P2に接触していても許容され得る。また、第一側面部131及び第二側面部132の一方のみを備える態様も許容され得る。
隙間24,241の長さのうち長い方は、空間厚みの2/3以上や、4/5以上にすることができる。しかし、実施例1同様、第一側面部231の先端が、第二側面部232の先端よりも、第二端板222の近くに位置している。第二側面部232の先端が、第一側面部231の先端よりも、第一端板221の近くに位置している。
また、本実施例においては、第一端板221と第二端板222との間の隙間の最大寸法を直径20mmの円が入る程度のものとしているが、このように隙間を大きくしても、外包材引込現象が許容範囲であることを実験的に確認している。また、数値計算により、当該隙間の最大寸法を直径27mmの円が入る程度のものとしても、外包材引込現象が許容範囲であることを確認している。よって、当該隙間の最大寸法は、直径27mm以下の円が入るようにしてよい。