(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129970
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】テーブルソー
(51)【国際特許分類】
B27B 5/20 20060101AFI20240920BHJP
B23D 47/02 20060101ALI20240920BHJP
B27G 19/02 20060101ALI20240920BHJP
B23D 45/06 20060101ALI20240920BHJP
B23D 45/14 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B27B5/20 A
B23D47/02
B27G19/02 Z
B23D45/06
B23D45/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039410
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北岡 竜太
(72)【発明者】
【氏名】可児 利之
【テーマコード(参考)】
3C040
【Fターム(参考)】
3C040AA01
3C040CC02
3C040CC05
(57)【要約】
【課題】本体をテーブルに対して傾動可能なテーブルソーにおいて、本体とテーブルの干渉を抑制しながら、本体の傾斜角度に応じて刃具の切り込み深さを調整できることが必要とされている。
【解決手段】テーブルソー1は、被切断材が載置されるテーブル4と、テーブル4の下方に配設されテーブル4を貫通する刃具11を回転させる本体10を有する。テーブルソー1は、本体10を基準高さと基準高さより高い制限超高さとの間で移動させて刃具11のテーブル4からの上方突出量を変更する高さ調整機構20と、本体10のテーブル4に直交する平面に対する傾斜角度を変更する角度調整機構30を有する。テーブルソー1は、本体10の傾斜角度が規定角度または規定角度範囲内でない非規定状態の場合に高さ調整機構20を規制して基準高さからの本体10の上動量を制限超高さよりも低い抑制高さH1に抑制する高さ抑制機構46を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブルソーであって、
被切断材が載置されるテーブルと、
前記テーブルの下方に配設され前記テーブルを貫通する刃具を回転させる本体と、
前記本体を基準高さと前記基準高さより高い制限超高さとの間で移動させて前記刃具の前記テーブルからの上方突出量を変更する高さ調整機構と、
前記本体の前記テーブルに直交する平面に対する傾斜角度を変更する角度調整機構と、
前記本体の前記傾斜角度が規定角度または規定角度範囲内でない非規定状態の場合に前記高さ調整機構を規制して前記基準高さからの前記本体の上動量を前記制限超高さよりも低い抑制高さに抑制する高さ抑制機構を有するテーブルソー。
【請求項2】
請求項1に記載のテーブルソーであって、
前記高さ抑制機構を解除して前記本体が前記抑制高さを超えて前記制限超高さへ移動可能な場合に前記本体の前記傾斜角度を前記規定角度以下または前記規定角度範囲内に抑制する傾動抑制機構を有するテーブルソー。
【請求項3】
請求項1または2に記載のテーブルソーであって、
前記本体が前記非規定状態の場合に前記高さ抑制機構を常に作動させる抑制維持機構を有するテーブルソー。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載のテーブルソーであって、
前記高さ抑制機構は、先端に昇降ストッパを具備するストッパシャフトを有し、
前記ストッパシャフトを軸方向に移動させることで前記昇降ストッパが、前記高さ調整機構のストッパ当接部の上方に位置する抑制位置と、前記ストッパ当接部から離間する解除位置との間で移動するテーブルソー。
【請求項5】
請求項4に記載のテーブルソーであって、
前記ストッパシャフトが挿通される長孔が形成されたベース前面を有し、
前記長孔は、弧状のガイド孔と、前記ガイド孔に連通し前記ガイド孔より径が大きい拡張孔を有し、
前記ストッパシャフトは、前記ガイド孔に進入され前記ガイド孔に沿って案内されるシャフト本体と、前記シャフト本体に装着されかつ前記ガイド孔より径が大きくかつ前記拡張孔に挿入可能な径を備える介在部を有し、
前記介在部は、前記拡張孔に進入して、前記本体の前記傾斜角度を前記規定角度または前記規定角度範囲内に規制するテーブルソー。
【請求項6】
請求項5に記載のテーブルソーであって、
前記本体の前記傾斜角度が前記非規定状態の場合に、前記介在部が前記ベース前面に当接して前記ガイド孔に進入することが規制され、前記高さ抑制機構の作動が維持されるテーブルソー。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか1つに記載のテーブルソーであって、
前記ストッパシャフトの軸回りの回転力の一部を前記ストッパシャフトの前記軸方向の移動力に変換する力変換機構を有するテーブルソー。
【請求項8】
請求項7に記載のテーブルソーであって、
前記力変換機構は、前記ストッパシャフトの軸回りに螺旋状に延出するリード面を有するテーブルソー。
【請求項9】
請求項8に記載のテーブルソーであって、
前記力変換機構は、前記リード面と連通しかつ前記リード面と異なる方向に延出する面を含み、前記ストッパシャフトの前記軸方向の移動を規制する位置保持部を有するテーブルソー。
【請求項10】
請求項4~9のいずれか1つに記載のテーブルソーであって、
前記ストッパシャフトを前記軸方向に付勢する付勢部材を有するテーブルソー。
【請求項11】
請求項4~10のいずれか1つに記載のテーブルソーであって、
前記ストッパシャフトは、ベース前面の前方へ貫通するシャフト前部を有し、
前記シャフト前部に前記ストッパシャフトを軸回りに回転させる操作部が設けられるテーブルソー。
【請求項12】
請求項11に記載のテーブルソーであって、
前記操作部は、前記ストッパシャフトと一体で前記ストッパシャフトの軸回りに回転するレバーであるテーブルソー。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1つに記載のテーブルソーであって、
前記本体に設けられかつ円盤状の前記刃具を回転可能に支持する出力軸と、
前記本体の前記傾斜角度を前記規定角度または前記規定角度範囲内の規定状態に抑制する傾動抑制機構を有し、
前記出力軸は、前記傾動抑制機構が解除された際に前記傾動抑制機構が作動している時よりも上方へ移動可能であるテーブルソー。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1つに記載のテーブルソーであって、
前記高さ抑制機構は、軸方向に移動して前記高さ調整機構に解除可能に係合するストッパシャフトを有し、
前記ストッパシャフトは、前記軸方向に移動して前記高さ調整機構との係合が解除される際に前記本体の前記傾斜角度を抑制するテーブルソー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば木材等の被切断材の切断加工に用いられるテーブルソーに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のテーブルソーは、被切断材を載置するテーブルと、テーブルを貫通して上方へ突出する円盤状の刃具(丸鋸刃)を有する。刃具は、テーブルの下方に配設される本体に回転可能に支持される。本体には、刃具を回転させる駆動源としての電動モータと、刃具が一体に取付けられる出力軸が設けられる。電動モータを起動させて出力軸を軸回りに回転させることで、出力軸と一体に設けられた刃具が回転する。テーブルの上方へ突出しかつ回転する刃具に向けて、被切断材をテーブルに沿って送る。これにより刃具が被切断材に切り込まれ、被切断材を切断できる。
【0003】
特許文献1,2に記載されるように本体は、テーブルに対して上下方向に移動可能である。本体を上下方向に移動させることで、テーブルから上方へ突出する刃具の突出量(切り込み深さ)を変更できる。切り込み深さを深くすることで、例えば厚みの大きい被切断材を切断できる。切り込み深さを浅くすることで、例えば被切断材に溝切り加工をすることができる。本体は、テーブルに対して左右方向に傾動可能である。本体を左右方向に傾動させることで、テーブルに対する刃具の傾斜角度を変更できる。刃具をテーブルに対して直角にすることで、被切断材をいわゆる直角切りで切断できる。刃具をテーブルに対して傾斜させることで、被切断材をいわゆる傾斜切り(英語名:bevel cut)で切断できる。
【0004】
直角切りの姿勢(以下「直角姿勢」とする。)の場合、出力軸は水平方向に延出する。そのため出力軸をテーブルの下面の近傍まで移動させて切り込み深さを深くすることが可能である。一方、傾斜切りの姿勢(以下「傾斜姿勢」とする。)の場合、出力軸はテーブルに対して左右方向に傾斜する。そのため出力軸とテーブルの下面が干渉しないように切り込み深さを抑制する必要がある。特に溝切加工用の左右幅の厚い刃具を出力軸に取付け可能とする場合、出力軸をより長く延出させる必要がある。そのため傾斜姿勢の場合に出力軸とテーブルの下面が干渉しないように、切り込み深さをより抑制する必要がある。切り込み深さを調整するための装置は、通常は直角姿勢と傾斜姿勢の場合を兼ねた1つの装置で構成される。そのため従来のテーブルソーでは、直角姿勢の場合でも切り込み深さを深くすることが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-10606号公報
【特許文献2】特開2010-42474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本体をテーブルに対して傾動可能なテーブルソーにおいて、本体とテーブルの干渉を抑制しながら、本体の傾斜角度に応じて刃具の切り込み深さを調整できることが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの特徴によるとテーブルソーは、被切断材が載置されるテーブルを有する。テーブルソーは、テーブルの下方に配設されテーブルを貫通する刃具を回転させる本体を有する。テーブルソーは、本体を基準高さと基準高さより高い制限超高さとの間で移動させて刃具のテーブルからの上方突出量を変更する高さ調整機構を有する。テーブルソーは、本体のテーブルに直交する平面に対する傾斜角度を変更する角度調整機構を有する。テーブルソーは、本体の傾斜角度が規定角度または規定角度範囲内でない非規定状態の場合に高さ調整機構を規制して基準高さからの本体の上動量を制限超高さよりも低い抑制高さに抑制する高さ抑制機構を有する。
【0008】
したがって本体の傾斜角度が規定角度または規定角度範囲内である規定状態(非規定状態ではない場合)の場合には、本体を制限超高さまで上動させることができる。本体が規定状態の場合、例えば刃具を回転可能に支持する出力軸はテーブルに対して略平行である。そのため本体とテーブルが干渉しない状態で刃具の切り込み深さを深くすることができる。本体の傾斜角度が規定角度または規定角度範囲内でない非規定状態の場合には、本体は抑制高さで維持されて上動を抑制される。本体が非規定状態の場合、例えば刃具を回転可能に支持する出力軸はテーブルに対して傾斜する。そのため本体の上動を抑制することで、傾斜した本体がテーブルと干渉することを抑制できる。かくして本体の傾斜角度に依らず本体とテーブルの干渉を抑制しながら、本体の傾斜角度が規定状態の場合のみ刃具の切り込み深さを深くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施例に係るテーブルソーの斜視図であって、直角姿勢かつ高さ抑制機構が作動した状態を示す斜視図である。
【
図2】直角姿勢かつ高さ抑制機構が作動した状態のテーブルソーの左側面図である。
【
図3】
図2中のIII-III線断面矢視図である。
【
図4】抑制位置に移動したストッパシャフトの斜視図である。
【
図7】
図2中のVII部分を拡大した左側面図である。
【
図8】直角姿勢かつ高さ抑制機構が解除された状態のテーブルソーの斜視図である。
【
図9】直角姿勢かつ高さ抑制機構が解除された状態のテーブルソーの左側面図である。
【
図11】解除位置に移動したストッパシャフトの斜視図である。
【
図12】
図9中のXII部分を拡大した左側面図である。
【
図14】
図2中のIII-III線断面に相当する傾斜姿勢のテーブルソーの縦断面図である。
【
図15】
図2中のVII部分に相当する傾斜姿勢のテーブルソーの左側面図である。
【
図16】
図2中のVII部分に相当する傾斜姿勢かつ抑制維持機構が作動した状態のテーブルソーの左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の他の特徴によるとテーブルソーは、高さ抑制機構を解除して本体が抑制高さを超えて制限超高さへ移動可能な場合に本体の傾斜角度を規定角度以下または規定角度範囲内に抑制する傾動抑制機構を有する。したがって本体を制限超高さへ移動させた際、本体を非規定状態の傾斜角度へ傾動させることを抑制できる。そのため本体の傾斜角度が規定状態の場合のみ切り込み深さを深くすることができる。しかも制限超高さの本体がテーブルと干渉することを抑制できる。
【0011】
本開示の他の特徴によるとテーブルソーは、本体が非規定状態の場合に高さ抑制機構を常に作動させる抑制維持機構を有する。したがって本体が抑制高さよりも上方へ移動することを抑制できる。これにより非規定状態で傾斜する本体がテーブルと干渉することを抑制できる。
【0012】
本開示の他の特徴によると高さ抑制機構は、先端に昇降ストッパを具備するストッパシャフトを有する。ストッパシャフトを軸方向に移動させることで昇降ストッパが、高さ調整機構のストッパ当接部の上方に位置する抑制位置と、ストッパ当接部から離間する解除位置との間で移動する。したがってシンプルな構造のストッパシャフトと昇降ストッパで高さ抑制機構を確実に作動させることができる。
【0013】
本開示の他の特徴によるとテーブルソーは、ストッパシャフトが挿通される長孔が形成されたベース前面を有する。長孔は、弧状のガイド孔と、ガイド孔に連通しガイド孔より径が大きい拡張孔を有する。ストッパシャフトは、ガイド孔に進入されガイド孔に沿って案内される本体と、本体に装着されかつガイド孔より径が大きくかつ拡張孔に挿入可能な径を備える介在部を有する。介在部は、拡張孔に進入して、本体の傾斜角度を規定角度または規定角度範囲内に規制する。したがってベース前面に設けられる長孔と、ストッパシャフトに設けられる介在部のシンプルな構成で、傾動抑制機構を確実に作動させることができる。
【0014】
本開示の他の特徴によると本体の傾斜角度が非規定状態の場合に、介在部がベース前面に当接してガイド孔に進入することが規制され、高さ抑制機構の作動が維持される。したがってベース前面に設けられるガイド孔と、ストッパシャフトに設けられる介在部のシンプルな構成で、高さ抑制機構を確実に作動させることができかつ作動を維持できる。
【0015】
本開示の他の特徴によるとテーブルソーは、ストッパシャフトの軸回りの回転力の一部をストッパシャフトの軸方向の移動力に変換する力変換機構を有する。したがってストッパシャフトを軸回りに回転させるシンプルな操作でストッパシャフトを軸方向に移動させ、高さ抑制機構を作動させることができる。
【0016】
本開示の他の特徴によると力変換機構は、ストッパシャフトの軸回りに螺旋状に延出するリード面を有する。したがってストッパシャフトの摩耗等を抑制しながら、ストッパシャフトの軸回りの回転力を効率良く軸方向の移動力に変換できる。これによりストッパシャフトを軸方向に移動させる操作性を向上させることができる。
【0017】
本開示の他の特徴によると力変換機構は、リード面と連通しかつリード面と異なる方向に延出する面を含み、ストッパシャフトの軸方向の移動を規制する位置保持部を有する。したがってストッパシャフトと昇降ストッパが不用意に軸方向に移動することを抑制できる。また、リード面と位置保持部が連通することで、ストッパシャフトが軸方向に移動可能な状態とストッパシャフトの移動が規制される状態を容易に切り替えることができる。
【0018】
本開示の他の特徴によるとテーブルソーは、ストッパシャフトを軸方向に付勢する付勢部材を有する。したがってストッパシャフトと昇降ストッパを常に軸方向に付勢することで、本体の上動を抑制している昇降ストッパが振動等によって意図せずに解除されることを抑制できる。
【0019】
本開示の他の特徴によるとストッパシャフトは、ベース前面の前方へ貫通するシャフト前部を有する。シャフト前部にストッパシャフトを軸回りに回転させる操作部が設けられる。したがって操作部は、使用者が操作し易い位置に設けられる、これにより操作部の操作性を向上させることができる。
【0020】
本開示の他の特徴によると操作部は、ストッパシャフトと一体でストッパシャフトの軸回りに回転するレバーである。したがって梃子の原理を利用して操作部を回転させる操作力を小さくすることができる。これにより操作部の操作性を向上させることができる。
【0021】
本開示の他の特徴によるとテーブルソーは、本体に設けられかつ円盤状の刃具を回転可能に支持する出力軸を有する。テーブルソーは、本体の傾斜角度を規定角度または規定角度範囲内の規定状態に抑制する傾動抑制機構を有する。出力軸は、傾動抑制機構が解除された際に傾動抑制機構が作動している時よりも上方へ移動可能である。したがって本体の傾斜角度が非規定状態の場合は、出力軸がテーブルと干渉することを抑制できる。そして本体の傾斜角度が規定状態の場合のみ刃具の切り込み深さを深くすることができる。
【0022】
本開示の他の特徴によると高さ抑制機構は、軸方向に移動して高さ調整機構に解除可能に係合するストッパシャフトを有する。ストッパシャフトは、軸方向に移動して高さ調整機構との係合が解除される際に本体の傾斜角度を抑制する。したがってストッパシャフトを軸方向に移動させる1つの操作で高さ抑制機構の解除と本体の傾斜角度の抑制を同時に作動させることができる。
【0023】
本開示の実施例を
図1~16に基づいて説明する。
図1に示すようにテーブルソー1は、床等に載置されるベース2と、ベース2によって水平に支持されるテーブル4を有する。テーブル4には被切断材が載置される。テーブル4の下方には、本体10が支持される。使用者は、テーブルソー1に対して図示手前側に位置して切断作業を行う。以下の説明においては、使用者が位置する手前側を前側、使用者から見て奥側を後側として前後方向を規定する。上下左右方向については使用者を基準にして規定する。
【0024】
図1,2に示すように本体10には、チップソー(英語名:tipped saw blade)と称される略円盤形の刃具11が回転可能に支持される。テーブル4の上面には、刃口板4aが設けられる。刃口板4aの中央には、前後方向に直線状に延出するスリット状の貫通孔4bが設けられる。刃具11の上部領域は、貫通孔4bに挿通されてテーブル4の上方へ突出する。刃具11の下部領域は、本体10に一体に設けられたブレードケース13によって露出しないように覆われている。
【0025】
図3に示すように本体10は、電動モータ16と、電動モータ16を収容するモータハウジング18と、電動モータ16の駆動によって軸回りに回転する出力軸12を有する。左右方向に延出する出力軸12には、刃具11が一体に回転可能に取付けられる。刃具11は、アウタフランジ12bとインナフランジ12cに左右方向に挟まれた状態で、出力軸12の右端の雄ねじ部にナット12aを締め込むことで出力軸12に取付けられる。出力軸12には、チップソーの刃具11に代えて、例えば組カッタ(英語名:Dado Blades)と称される複数枚の略円盤形の刃が出力軸12の軸方向に並んで構成される溝切り加工用の刃具を取付けることができる。
【0026】
図3に示すように出力軸12の左部は、本体10に設けられた駆動部15に挿通される。駆動部15には、電動モータ16と、モータハウジング18内に設けられる減速ギヤ列17が設けられる。電動モータ16の回転駆動は、減速ギヤ列17を介して出力軸12に伝達される。テーブル4に載置した被切断材を、テーブル4の上方へ突出しかつ出力軸12と一体で回転する刃具11に向けて前方から後方へ送る。これにより刃具11の手前側刃先が被切断材に相対的に切込まれて被切断材を切断する。刃具11の後側の刃先に沿って、いわゆる割り刃(ライビングナイフ、図示しない)が配置されている。
【0027】
図3に示す本体10の姿勢の場合、出力軸12はテーブル4と平行に延出し、刃具11はテーブル4と直交して延出する。換言すると刃具11のテーブル4に直交する平面に対する傾斜角度が0°である。この時、被切断材をいわゆる直角切りで切断できる。
【0028】
図1に示すようにベース2の前部には、上下方向および左右方向に延出する平板状のベース前面3が設けられる。ベース前面3には、前後方向に貫通する2つの長孔3a,3bが設けられる。長孔3a,3bは、後述する角度調整機構30による本体支持部31の左右傾動中心回りにそれぞれ円弧状に延出する。長孔3bは、長孔3aの上側(円弧内周側)に設けられる。長孔3bは、所定の径で設けられる円弧状のガイド孔3cと、ガイド孔3cの左端と連通しかつガイド孔3cよりも大きい径の拡張孔3dを有する(
図6参照)。拡張孔3dは、長孔3bの延出方向に沿ってわずかに円弧状に延出する。
【0029】
図1,2に示すようにテーブルソー1は、テーブル4に対する本体10の上下位置を変更可能な高さ調整機構20を有する。高さ調整機構20は、使用者が回転操作可能な昇降ハンドル21と、昇降ハンドル21と一体に設けられた回転軸22と、回転軸22と係合する昇降ボルト23を有する。ベース2には、テーブル4の下方で本体10を支持する本体支持部31が設けられる。回転軸22は、長孔3aに挿通されてベース前面3を前後方向に貫通する。昇降ハンドル21は、ベース前面3の前方に配設される。昇降ハンドル21と回転軸22は、前後方向に延出する軸回りに回転可能に本体支持部31に支持される。回転軸22の後端には、駆動側ベベルギヤ22aが設けられる。
【0030】
図2に示すように昇降ボルト23は、上下方向に延出する姿勢で本体支持部31に回転可能に支持される。昇降ボルト23の下端には、従動側ベベルギヤ23aが設けられる。従動側ベベルギヤ23aは、回転軸22の駆動側ベベルギヤ22aと係合する。回転軸22が前後方向に延出する軸回りに回転すると、昇降ボルト23は上下方向に延出する軸回りに回転する。本体10には、昇降ボルト23と螺合する雌ねじを備えた昇降部24が設けられる。昇降部24は、昇降ボルト23を軸回りに回転させることで昇降ボルト23に対して上下方向に移動する。これにより刃具11がテーブル4の上方へ突出する突出長さを変更できる。
【0031】
図1,2に示すようにテーブルソー1は、テーブル4に直交する平面に対する本体10の傾斜角度を変更可能な角度調整機構30を有する。本体支持部31は、ベース2に左右方向に傾動可能に支持される。使用者は、昇降ハンドル21を把持して本体支持部31を左右に傾動させることができる。昇降ハンドル21を左右に移動させる際、回転軸22は長孔3aの延出方向に沿って左右に移動する。本体支持部31をテーブル4に対して左右に傾動させることで、本体支持部31に支持される本体10もテーブル4に対して左右に傾動する。本体10の傾動中心は、テーブル4の上面上に位置する仮想中心である。
図14に示すように刃具11がテーブル4に直交する平面に対して左右方向に傾斜している時、被切断材をいわゆる傾斜切りで切断できる。なお、
図14に示す刃具11のテーブル4に直交する平面に対する傾斜角度は45°である。
【0032】
図2に示すようにテーブルソー1は、前後方向に延出するストッパシャフト40を有する。ストッパシャフト40は、昇降ボルト23の前方かつ回転軸22の上方に設けられる。ストッパシャフト40には、後述する本体10の高さを抑制する高さ抑制機構と、本体10の傾斜角度を抑制する傾動抑制機構と、高さ抑制機構の作動を維持する抑制維持機構が設けられる。
【0033】
図2,4,5に示すようにストッパシャフト40は、前後方向に延出する丸棒状のシャフト本体41を有する。シャフト本体41の後端に位置する先端41aには、略L字状の板状に形成された昇降ストッパ46が取付けられる。昇降ストッパ46は、本開示における高さ抑制機構に相当する。昇降ストッパ46は、シャフト本体41に対して軸回りに相対回転可能である。昇降ストッパ46は、先端41aにナット46aを締め込むことでシャフト本体41からの脱落が防止される。昇降ストッパ46は、本体支持部31に設けられたストッパ支持部31aに挿通されることで、本体支持部31に対して回り止めされている。本体支持部31には、昇降ストッパ46の前方で突出するストッパ受け部31bが設けられる。昇降ストッパ46がストッパ受け部31bに当接することで、昇降ストッパ46の前動が規制される。
【0034】
図4,5,7に示すようにシャフト本体41のシャフト前部41bには、レバー(操作部)43が一体に取付けられる。レバー43は、ベース前面3の前方に配設される。使用者がレバー43の側部を指で押すことで、シャフト本体41が軸回りに回転する。シャフト本体41の前後方向の中間位置には、シャフト本体41の軸方向と直交するように丸棒状のガイドピン41cが装着される。ガイドピン41cの両先端は、それぞれシャフト本体41の径方向に突出する。
【0035】
図4,5,7に示すようにシャフト本体41には、円筒状の介在部42が装着される。介在部42は、レバー43の後方かつガイドピン41cの前方に装着される。介在部42は、シャフト本体41よりも大きい径で設けられる。介在部42の側面42aは、本開示における傾動抑制機構に相当する。介在部42の前面42bは、本開示における抑制維持機構に相当する。介在部42の後面は、本体支持部31に設けられた介在部受け部31cと当接可能である。介在部42が介在部受け部31cに当接することで、シャフト本体41の後動が規制される。介在部受け部31cとガイドピン41cの前後方向の間には、シャフト本体41を後方に向けて付勢する圧縮ばね(付勢部材)44が設けられる。
【0036】
図4,5,7に示すようにシャフト本体41は、円筒状のリード部45を前後方向に貫通するように挿通される。リード部45は、本開示における力変換機構に相当する。リード部45は、本体支持部31に一体に固定される。リード部45の内周面には、挿通されるシャフト本体41の軸回りに螺旋状に延出する一対のリード面45aが設けられる。リード面45aの後端は、前後方向に延出しかつ上下方向の幅が狭い溝状の軸方向案内面45bに連通される。一対のリード面45aの前端に連通して、シャフト本体41に対して略直交する平面によって形成された一対の位置保持部45cが設けられる。ガイドピン41cの先端は、リード面45aまたは軸方向案内面45bに当接する。ガイドピン41cの先端は、シャフト本体41が軸回りに回転する時にリード面45aに当接している場合、リード面45aに案内されて螺旋状に移動しながら前後動する。これによりシャフト本体41全体が前後動する。ガイドピン41cが軸方向案内面45bに当接している場合、シャフト本体41は、回転が規制された状態で圧縮ばね44によって後方へ付勢される。ガイドピン41cが位置保持部45cの前方に乗り上げて当接している場合、ガイドピン41cにはリード面45aの傾斜によって案内する作用が働かない。そのためシャフト本体41の後方への移動が規制される。
【0037】
図2,7に示すように昇降部24の上面は、平面状のストッパ当接部24aとして設けられる。昇降ボルト23には、昇降ストッパ46と同じ上下位置に切欠き形状が設けられる。昇降ストッパ46は、シャフト本体41が後動する時、昇降ボルト23の切欠き部に進入しながらストッパ当接部24aに当接可能である。これにより昇降部24を含む本体10の上動が規制される。昇降ストッパ46は、シャフト本体41が前動する時、ストッパ当接部24aから離間可能である。これにより昇降部24を含む本体10の上動規制が解除される。
【0038】
図3,7,13~15に基づいて高さ抑制機構46が作動している時のテーブルソー1について説明する。使用者がレバー43を反時計回り方向に回転させると、シャフト本体41とガイドピン41cは、シャフト本体41の軸回りに反時計回り方向に回転する。ガイドピン41cの先端は、リード部45のリード面45aに案内されて反時計回り方向に回転しながら後方へ移動する。さらにガイドピン41cの先端は、リード部45の軸方向案内面45bに案内されて圧縮ばね44に付勢されながら後方へ移動する。この時、介在部42の側面42aは、ベース前面3の長孔3bよりも後方に位置する。介在部42の前面42bは、ベース前面3よりも後方に位置する。昇降ストッパ46は、シャフト本体41と共に後方の抑制位置S1へ移動する。抑制位置S1の昇降ストッパ46は、昇降部24のストッパ当接部24aに当接する。これにより本体10は抑制高さH1よりも上に移動することが抑制される。そのため本体10は、昇降ハンドル21を操作しても抑制高さH1よりも低い基準高さから抑制高さH1までの間の領域でのみ移動可能である。
【0039】
高さ抑制機構46は、本体10のテーブル4に直交する平面に対する傾斜角度に依らず作動可能である。例えば本体10のテーブル4に直交する平面に対する傾斜角度が0°の場合、あるいは45°の場合、ナット12aを含む出力軸12は、テーブル4の下面や刃口板4aの下面よりも下方に位置する。そのため本体10の高さを抑制高さH1に抑制することで、本体10のテーブル4に直交する平面に対する傾斜角度に依らず、出力軸12とテーブル4の干渉を抑制できる。
【0040】
図8~12に基づいて高さ抑制機構46を解除しかつ傾動抑制機構42aが作動している時のテーブルソー1について説明する。使用者がレバー43を時計回り方向に回転させると、シャフト本体41とガイドピン41cは、シャフト本体41の軸回りに時計回り方向に回転する。ガイドピン41cの先端は、リード部45の軸方向案内面45bからすぐにリード面45aに進入し、リード面45aに案内されて圧縮ばね44の付勢力に抗して前方へ移動する。この時、介在部42の側面42aは、ベース前面3の拡張孔3dに進入する。介在部42の前面42bは、ベース前面3よりも前方に位置する。昇降ストッパ46は、シャフト本体41と共に前方の解除位置S2へ移動する。解除位置S2の昇降ストッパ46は、昇降部24のストッパ当接部24aから離間する。そのため本体10は、抑制高さH1(
図7参照)よりも上方の制限超高さH2へ移動可能である。これにより刃具11の切り込み深さを深くすることができる。
【0041】
介在部42の側面42aが拡張孔3dへ進入可能な時のみ、昇降ストッパ46は解除位置S2へ移動できる。介在部42の側面42aが拡張孔3dへ進入可能な時、本体10のテーブル4に直交する平面に対する傾斜角度は、例えば0°の規定角度、あるいは0°に前後して±1°の範囲内、±3°の範囲内、±5°の範囲内等の規定角度範囲内である。本体10のテーブル4に直交する平面に対する傾斜角度が上述の規定角度または規定角度範囲内の規定状態である場合、ナット12aを含む出力軸12は、テーブル4に直交する平面に対して傾斜した状態でテーブル4の下面や刃口板4aの下面よりも下方に位置する。そのため本体10を制限超高さH2まで上動させても、出力軸12とテーブル4の干渉を抑制できる。拡張孔3dへ進入した介在部42の側面42aは、介在部42よりも小径のガイド孔3cへの移動が規制される。そのため本体10の傾斜角度を規定角度以上または規定角度範囲を超える角度に変更することが抑制される。
【0042】
図13,14,16に基づいて抑制維持機構42bが作動している時のテーブルソー1について説明する。本体10のテーブル4に直交する平面に対する傾斜角度が規定角度または規定角度範囲を超えた非規定状態である場合、例えば30°,45°の場合に、使用者がレバー43を時計回り方向に回転させようとする。この時、リード部45とガイドピン41cの係合によってシャフト本体41の軸回りの回転力はシャフト本体41を前方へ移動させる力に変換される。しかしながらシャフト本体41のシャフト前部41bは、拡張孔3dから外れ、ガイド孔3cに挿通されている。介在部42の前面42bは、前方へ移動しようとしてもガイド孔3cには進入できず、ベース前面3の後面に当接する。そのためシャフト本体41の前動が規制される。
【0043】
昇降ストッパ46は、抑制位置S1よりも前方へ移動することが規制される。そのため昇降ストッパ46は、本体10が抑制高さH1よりも上方へ移動することを規制する。抑制維持機構42bを解除するためには、本体10のテーブル4に直交する平面に対する傾斜角度を規定角度以下または規定角度範囲内の規定状態まで小さくする必要がある。本体10のテーブル4に直交する平面に対する傾斜角度が規定角度または規定角度範囲を超えた非規定状態でありかつ本体10の高さが抑制高さH1で規制されている場合、ナット12aを含む出力軸12は、テーブル4の下面や刃口板4aの下面よりも下方に位置する。そのため出力軸12とテーブル4の干渉を抑制できる。
【0044】
上述するようにテーブルソー1は、
図2,9に示すように被切断材が載置されるテーブル4を有する。テーブルソー1は、テーブル4の下方に配設されテーブル4を貫通する刃具11を回転させる本体10を有する。テーブルソー1は、本体10を基準高さと基準高さより高い制限超高さH2との間で移動させて刃具11のテーブル4からの上方突出量を変更する高さ調整機構20を有する。テーブルソー1は、本体10のテーブル4に直交する平面に対する傾斜角度を変更する角度調整機構30を有する。テーブルソー1は、本体10の傾斜角度が規定角度または規定角度範囲内でない非規定状態の場合に高さ調整機構20を規制して基準高さからの本体10の上動量を制限超高さH2よりも低い抑制高さH1に抑制する昇降ストッパ46(高さ抑制機構)46を有する。
【0045】
したがって本体10の傾斜角度が規定角度または規定角度範囲内である規定状態の場合(非規定状態ではない場合)には、本体10を制限超高さH2まで上動させることができる。本体10が規定状態の場合、例えば刃具11を回転可能に支持する出力軸12はテーブル4に対して略平行である。そのため本体10とテーブル4が干渉しない状態で刃具11の切り込み深さを深くすることができる。本体10の傾斜角度が規定角度または規定角度範囲内でない非規定状態の場合には、本体10は抑制高さH1で維持されて上動を抑制される。本体10が非規定状態の場合、例えば刃具11を回転可能に支持する出力軸12はテーブル4に直交する平面に対して傾斜する。そのため本体10の上動を抑制することで、傾斜した本体10がテーブル4と干渉することを抑制できる。かくして本体10の傾斜角度に依らず本体10とテーブル4の干渉を抑制しながら、本体10の傾斜角度が規定状態の場合のみ刃具11の切り込み深さを深くすることができる。
【0046】
図9に示すようにテーブルソー1は、昇降ストッパ46を解除して本体10が抑制高さH1(
図2参照)を超えて制限超高さH2へ移動可能な場合に本体10の傾斜角度を規定角度以下または規定角度範囲内に抑制する側面(傾動抑制機構)42aを有する。したがって本体10を制限超高さH2へ移動させた際、本体10を非規定状態の傾斜角度へ傾動させることを抑制できる。そのため本体10の傾斜角度が規定状態の場合のみ切り込み深さを深くすることができる。しかも制限超高さH2の本体10がテーブル4と干渉することを抑制できる。
【0047】
図16に示すようにテーブルソー1は、本体10が非規定状態の場合に昇降ストッパ46を常に作動させる前面(抑制維持機構)42bを有する。したがって本体10の傾斜角度が非規定状態の場合に、本体10が抑制高さH1よりも上方へ移動することを抑制できる。これにより非規定状態で傾斜する本体10がテーブル4と干渉することを抑制できる(
図14参照)。
【0048】
図7,12に示すように高さ抑制機構は、先端41aに昇降ストッパ46を具備するストッパシャフト40を有する。ストッパシャフト40を軸方向に移動させることで昇降ストッパ46が、高さ調整機構20のストッパ当接部24aの上方に位置する抑制位置S1と、ストッパ当接部24aから離間する解除位置S2との間で移動する。したがってシンプルな構造のストッパシャフト40と昇降ストッパ46で高さ抑制機構を確実に作動させることができる。
【0049】
図7,12,15に示すようにテーブルソー1は、ストッパシャフト40が挿通される長孔3bが形成されたベース前面3を有する。長孔3bは、弧状のガイド孔3cと、ガイド孔3cに連通しガイド孔3cより径が大きい拡張孔3dを有する(
図6参照)。ストッパシャフト40は、ガイド孔3cに進入されガイド孔3cに沿って案内されるシャフト本体41と、シャフト本体41に装着されかつガイド孔3cより径が大きくかつ拡張孔3dに挿入可能な径を備える介在部42を有する。介在部42は、拡張孔3dに進入して、本体10の傾斜角度を規定角度または規定角度範囲内に規制する。したがってベース前面3に設けられる長孔3bと、ストッパシャフト40に設けられる介在部42のシンプルな構成で、傾動抑制機構42aを確実に作動させることができる。
【0050】
図16に示すように本体10の傾斜角度が非規定状態の場合に、介在部42がベース前面3に当接してガイド孔3cに進入することが規制され、昇降ストッパ46の作動が維持される。したがってベース前面3に設けられるガイド孔3cと、ストッパシャフト40に設けられる介在部42のシンプルな構成で、昇降ストッパ46を確実に作動させることができかつ作動を維持できる。
【0051】
図7,12に示すようにテーブルソー1は、ストッパシャフト40の軸回りの回転力の一部をストッパシャフト40の軸方向の移動力に変換するリード部(力変換機構)45を有する。したがってストッパシャフト40を軸回りに回転させるシンプルな操作でストッパシャフト40を軸方向に移動させ、昇降ストッパ46を作動させることができる。
【0052】
図5,7,12に示すようにリード部45は、ストッパシャフト40の軸回りに螺旋状に延出するリード面45aを有する。したがってストッパシャフト40の摩耗等を抑制しながら、ストッパシャフト40の軸回りの回転力を効率良く軸方向の移動力に変換できる。これによりストッパシャフト40を軸方向に移動させる操作性を向上させることができる。
【0053】
図5,7,12に示すようにリード部45は、リード面45aと連通しかつリード面45aと異なる方向に延出する面を含み、ストッパシャフト40の軸方向の移動を規制する位置保持部45cを有する。したがってストッパシャフト40と昇降ストッパ46が不用意に軸方向に移動することを抑制できる。また、リード面45aと位置保持部45cが連通することで、ストッパシャフト40が軸方向に移動可能な状態とストッパシャフト40の移動が規制される状態を容易に切り替えることができる。
【0054】
図7,12に示すようにテーブルソー1は、ストッパシャフト40を軸方向に付勢する圧縮ばね(付勢部材)44を有する。したがってストッパシャフト40と昇降ストッパ46を常に軸方向に付勢することで、本体10の上動を抑制している昇降ストッパ46が振動等によって意図せずに解除されることを抑制できる。
【0055】
図7,12,15,16に示すようにストッパシャフト40は、ベース前面3の前方へ貫通するシャフト前部41bを有する。シャフト前部41bにストッパシャフト40を軸回りに回転させるレバー(操作部)43が設けられる。したがってレバー43は、使用者が操作し易い位置に設けられる、これによりレバー43の操作性を向上させることができる。
【0056】
図7,12,15,16に示すように操作部43は、ストッパシャフト40と一体でストッパシャフト40の軸回りに回転するレバーである。したがって梃子の原理を利用して操作部43を回転させる操作力を小さくすることができる。これにより操作部43の操作性を向上させることができる。
【0057】
図10,12に示すようにテーブルソー1は、本体10に設けられかつ円盤状の刃具11を回転可能に支持する出力軸12を有する。テーブルソー1は、本体10の傾斜角度を規定角度または規定角度範囲内の規定状態に抑制する側面(傾動抑制機構)42aを有する。出力軸12は、側面42aが解除された際に側面42aが作動している時よりも上方へ移動可能である。したがって本体10の傾斜角度が非規定状態の場合は、出力軸12がテーブル4と干渉することを抑制できる。そして本体10の傾斜角度が規定状態の場合のみ刃具11の切り込み深さを深くすることができる。
【0058】
図7,12に示すように高さ抑制機構46は、軸方向に移動して高さ調整機構20に解除可能に係合するストッパシャフト40を有する。ストッパシャフト40は、軸方向に移動して高さ調整機構20との係合が解除される際に本体10の傾斜角度を抑制する。したがってストッパシャフト40を軸方向に移動させる1つの操作で昇降ストッパ46の解除と本体10の傾斜角度の抑制を同時に作動させることができる。
【0059】
以上説明した本実施例のテーブルソー1には、様々な変更を加えることができる。チップソーの刃具11に代えて、軸方向の厚みの大きい組カッタを出力軸12に取付けても良い。組カッタを取付可能とするために出力軸12の右方への延出長さは長くなる。しかしながら本実施例で示したように本体10の上動を抑制高さH1に規制することで、出力軸12がテーブル4に対して傾斜している場合でも出力軸12とテーブル4の干渉を十分に抑制できる。
【0060】
昇降ハンドル21とレバー43をベース前面3の前方に設ける構成を例示した。これに代えて昇降ハンドル21とレバー43を、例えばベース2の後部または左右側部に設けても良い。レバー43を、例えば回転操作可能なハンドル形状に変更しても良い。
【0061】
本体10の規定状態をテーブル4に直交する平面に対する傾斜角度0°、または傾斜角度0°を中心とする規定角度範囲で規定した。規定角度は例示した0°に限定されず、例えば-5°,-1°,+1°,+5°等に適宜変更しても良い。規定角度範囲の幅は例示したものに限らず、本体10を制限超高さH2へ移動させた時に出力軸12がテーブル4に干渉しない範囲であれば、例えば±10°の範囲内、±15°の範囲内等に適宜変更して良い。
【0062】
例えば圧縮ばね44の付勢力によるストッパシャフト40の不用意な移動を規制するために、位置保持部45cとしてリード部45の内周面に内方へ向けて突出した凸部を設けても良い。ガイドピン41cが凸部を乗り越えることで、ガイドピン41cの前後位置を位置決めすることができる。
【符号の説明】
【0063】
1…テーブルソー
2…ベース
3…ベース前面、3a…長孔、3b…長孔、3c…ガイド孔、3d…拡張孔
4…テーブル、4a…刃口板、4b…貫通孔
10…本体
11…刃具
12…出力軸、12a…ナット、12b…アウタフランジ、12c…インナフランジ
13…ブレードケース
15…駆動部
16…電動モータ
17…減速ギヤ列
18…モータハウジング
20…高さ調整機構
21…昇降ハンドル
22…回転軸、22a…駆動側ベベルギヤ
23…昇降ボルト、23a…従動側ベベルギヤ
24…昇降部、24a…ストッパ当接部
30…角度調整機構
31…本体支持部、31a…ストッパ支持部、31b…ストッパ受け部
31c…介在部受け部
40…ストッパシャフト
41…シャフト本体、41a…先端、41b…シャフト前部、41c…ガイドピン
42…介在部、42a…側面(傾動抑制機構)、42b…前面(抑制維持機構)
43…レバー(操作部)
44…圧縮ばね(付勢部材)
45…リード部(力変換機構)、45a…リード面、45b…軸方向案内面
45c…位置保持部
46…昇降ストッパ(高さ抑制機構)、46a…ナット
H1…抑制高さ
H2…制限超高さ
S1…抑制位置
S2…解除位置