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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129972
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】合成装置および合成方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20240920BHJP
   C07K 1/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B01J19/00 J
C07K1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039412
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】社本 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】小竹 佑磨
(72)【発明者】
【氏名】小川 潤一
【テーマコード(参考)】
4G075
4H045
【Fターム(参考)】
4G075AA02
4G075AA61
4G075AA65
4G075BA10
4G075BB05
4G075DA01
4G075DA12
4G075EC11
4H045AA40
4H045BA10
4H045FA10
4H045GA21
(57)【要約】
【課題】非定常運転時においてより適切な制御を行える合成装置および合成方法を提供する。
【解決手段】有機化学反応により合成目的物を合成する合成装置は、前記合成目的物の特性を検出するセンサーと、前記センサーによって検出された特性の時系列データである検出時系列データに基づいて制御を行う制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記合成目的物の特性の基準時系列データを記憶し、前記検出時系列データと、前記基準時系列データとに基づき、前記合成装置を制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化学反応により合成目的物を合成する合成装置であって、
前記合成目的物の特性を検出するセンサーと、
前記センサーによって検出された特性の時系列データである検出時系列データに基づいて制御を行う制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記合成目的物の特性の基準時系列データを記憶し、
前記検出時系列データと、前記基準時系列データとに基づき、前記合成装置を制御する、
合成装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記合成装置の動作開始後、前記合成装置が定常運転に達する前に前記合成装置を制御する、請求項1に記載の合成装置。
【請求項3】
前記センサーは、連続的に前記特性を検出する、請求項1に記載の合成装置。
【請求項4】
前記合成装置はフロー合成装置である、請求項1に記載の合成装置。
【請求項5】
前記有機化学反応はアミド化反応である、請求項1に記載の合成装置。
【請求項6】
前記合成目的物はペプチドである、請求項1に記載の合成装置。
【請求項7】
前記センサーは、赤外分光吸収測定装置、HPLCおよびソフトセンサーのうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載の合成装置。
【請求項8】
前記合成装置は、さらに、2種類以上の原料を反応させるためのミキサーまたは反応槽を備える、請求項1に記載の合成装置。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記検出時系列データと前記基準時系列データとの相違として、特定時刻における値の差、特定時刻から所定時間の積分値の差、または特定時刻から所定時間の変化の傾きの差を算出し、
前記相違が小さくなるように、前記合成装置を制御する、
請求項1に記載の合成装置。
【請求項10】
前記制御装置は、時間と、1つ以上の制御可能パラメータとに基づいて前記特性を算出するモデルに基づき、前記相違が小さくなるように前記制御可能パラメータのいずれかを変更することにより、前記合成装置を制御する、
請求項9に記載の合成装置。
【請求項11】
前記合成装置は、原料を供給するための原料供給装置を備え、
前記制御装置は、前記検出時系列データと、前記基準時系列データとに基づき、前記原料供給装置を制御する、
請求項1に記載の合成装置。
【請求項12】
有機化学反応により合成目的物を合成する合成方法であって、
前記合成目的物の特性の基準時系列データを記憶するステップと、
検出された特性の時系列データである検出時系列データを取得するステップと、
前記検出時系列データと、前記基準時系列データとに基づき、合成装置を制御するステップと、
を備える合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成装置および合成方法に関し、とくに有機化学反応により合成目的物を合成するものに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の原料から化学合成反応により合成目的物を合成する合成装置において、フィードバック制御を行うことにより反応条件を調整することが知られている。
【0003】
特許文献1には、合成高分子樹脂の合成工程において、赤外分光吸収を測定することで連続的に反応条件を制御する技術が記載されている。
【0004】
特許文献2には、ポリマープロセス制御において、MFI測定粘度計を使用して触媒性重合の閉ループフィードバック制御を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-222178号公報
【特許文献2】特表2002-504595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では、非定常運転時における適切な制御が困難であるという課題があった。
【0007】
化学合成をする際には、完全に制御することが難しいパラメータ(外気温、湿度、原料組成、等)の影響により、想定される化学反応が正しく行われないことがある。特にスタートアップ動作中などの非定常運転時には、合成反応が安定しておらず、想定通りの反応が行われているかの判断が難しい。このため、適切な制御を行うことが可能となるまでに時間を要する。
【0008】
特許文献1および2の技術は、いずれも合成反応の様子をセンサーにより検知し、フィードバック制御を行うものである。これらの手法は定常運転時に制御範囲内で制御を行う場合には有効に働くが、プロセスが安定する前の非定常運転時では制御範囲の定義が難しく、異常を適切に検出して制御を行うことは難しい。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、非定常運転時においてより適切な制御を行える合成装置および合成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る合成装置の一例は、
有機化学反応により合成目的物を合成する合成装置であって、
前記合成目的物の特性を検出するセンサーと、
前記センサーによって検出された特性の時系列データである検出時系列データに基づいて制御を行う制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記合成目的物の特性の基準時系列データを記憶し、
前記検出時系列データと、前記基準時系列データとに基づき、前記合成装置を制御する。
また、本発明に係る合成方法の一例は、
有機化学反応により合成目的物を合成する合成方法であって、
前記合成目的物の特性の基準時系列データを記憶するステップと、
検出された特性の時系列データである検出時系列データを取得するステップと、
前記検出時系列データと、前記基準時系列データとに基づき、合成装置を制御するステップと、
を備える。
【0011】
一例において、前記制御装置は、前記合成装置の動作開始後、前記合成装置が定常運転に達する前に前記合成装置を制御する。
一例において、前記センサーは、連続的に前記特性を検出する。
一例において、前記合成装置はフロー合成装置である。
一例において、前記有機化学反応はアミド化反応である。
一例において、前記合成目的物はペプチドである。
一例において、前記センサーは、赤外分光吸収測定装置、HPLCおよびソフトセンサーのうち少なくとも1つを含む。
一例において、前記合成装置は、さらに、2種類以上の原料を反応させるためのミキサーまたは反応槽を備える。
一例において、前記制御装置は、前記検出時系列データと前記基準時系列データとの相違として、特定時刻における値の差、特定時刻から所定時間の積分値の差、または特定時刻から所定時間の変化の傾きの差を算出し、前記相違が小さくなるように、前記合成装置を制御する。
一例において、前記制御装置は、時間と、1つ以上の制御可能パラメータとに基づいて前記特性を算出するモデルに基づき、前記相違が小さくなるように前記制御可能パラメータのいずれかを変更することにより、前記合成装置を制御する。
一例において、前記合成装置は、原料を供給するための原料供給装置を備え、前記制御装置は、前記検出時系列データと、前記基準時系列データとに基づき、前記原料供給装置を制御する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る合成装置および合成方法は、非定常運転時においてより適切な制御を行うことができる。
【0013】
具体例として、プロセスが完全に安定化する前にプロセス制御を行うことで、不適合品の生産を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態1に係る合成装置の概略的な構成。
図2】時間に応じて変化する合成目的物の濃度を表すグラフの例。
図3図1の制御装置の処理の流れを示すフローチャート。
図4】本発明の実施形態2に係る合成装置の概略的な構成。
図5】本発明の実施形態3に係る合成装置の概略的な構成。
図6】本発明の実施形態4に係る合成装置の概略的な構成。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る合成装置101の概略的な構成を示す。合成装置101は、複数の原料の化学合成反応により合成目的物を合成する。化学合成反応は、たとえば有機化学反応であり、より具体的な例としてはアミド化反応である。
【0016】
「合成目的物」とは最終的な製造物に限らず、たとえばさらに他の合成過程の原料となるものであってもよい。合成目的物は、たとえばペプチドであるがこれに限らない。
【0017】
また、図1の構成は合成装置101の一部であってもよく、図示したもの以外の構成要素が設けられてもよい。たとえば、原料を製造するための構成や、合成目的物をさらに加工するための構成が設けられてもよい。
【0018】
合成装置101は、原料を供給するための原料供給装置を備える。本実施形態では、2種類の原料を供給するために、原料供給装置としてポンプ11およびポンプ12が設けられる。ポンプ11および12は、たとえば互いに異なる原料を供給する。3つ以上の原料供給装置(たとえば3つ以上のポンプ)が設けられてもよい。本実施形態では、原料はいずれも流体(気体、液体またはこれらの混合物)または流動可能な形態にあるものとするが、原料の形態はこれに限らない。
【0019】
合成装置101は、2種類の原料を反応させるための反応装置を備える。本実施形態では、反応装置としてミキサー20を用いる。ポンプ11およびポンプ12はミキサー20に接続されており、ミキサー20に対してそれぞれ原料を供給する。ミキサー20は、これらの原料を、たとえば混合および/または撹拌することにより反応させ、これによって合成目的物を合成する。なお、ポンプが3つ以上設けられる場合には、ミキサー20は3種類以上の原料を反応させてもよい。
【0020】
合成装置101は、フロー合成装置であってもよく、すなわち、合成目的物を連続的に合成するものであってもよい。たとえば、原料および合成目的物がいずれも流体または流動可能な形態にある場合には、合成目的物を連続的に合成することができる。
【0021】
合成装置101は、ミキサー20によって合成された合成目的物の特性を検出するセンサーを備える。本実施形態では、センサーとして赤外分光吸収測定装置30を用い、これによって、合成目的物の特性として濃度を測定する。赤外分光吸収測定装置30は、たとえば合成目的物の流通経路に設けられるが、合成目的物に対して赤外分光吸収測定が可能な位置であれば、流通経路以外に設けられてもよい。
【0022】
合成装置101は、合成装置101の動作を制御する制御装置40を備える。制御装置40は、ポンプ11および12と、赤外分光吸収測定装置30とに接続され、これらとの間で情報の送受信を行ってこれらの動作を制御する。
【0023】
制御装置40は、たとえば演算手段および記憶手段を備えたコンピュータを用いて構成することができる。演算手段はたとえばプロセッサを含み、記憶手段はたとえば半導体メモリ装置および磁気ディスク装置等の記憶媒体を含む。記憶媒体の一部または全部が、過渡的でない(non-transitory)記憶媒体であってもよい。
【0024】
また、コンピュータは入出力手段を備えてもよい。入出力手段は、たとえばキーボードおよびマウス等の入力装置と、ディスプレイおよびプリンタ等の出力装置と、ネットワークインタフェース等の通信装置とを含む。
【0025】
記憶手段はプログラムを記憶してもよい。プロセッサがこのプログラムを実行することにより、コンピュータは本実施形態において説明される機能を実行してもよい。
【0026】
制御装置40は、赤外分光吸収測定装置30によって検出された濃度に基づいて、ポンプ11およびポンプ12の流量の制御を行う。とくに本実施形態では、検出された濃度の時系列データに基づいて制御が行われる。この制御は、たとえばフィードバック制御として実現することができる。なお、時系列データは、「トレンドデータ」と呼ばれるものであってもよい。
【0027】
図2は、時間に応じて変化する合成目的物の濃度を表すグラフの例である。濃度の値は、非定常範囲61および定常範囲62のいずれかに含まれる。定常範囲62は、合成装置101が定常運転している間の濃度の範囲である。これは、合成プロセスにおける合成反応が安定して継続している場合の濃度の範囲であるということができ、たとえば濃度の時系列データを参照することなく、濃度の直近の値のみで制御可能な範囲である。
【0028】
非定常範囲61は、定常範囲62以外の範囲である。上述のように、従来の制御は定常範囲62を想定しており、合成装置101が非定常範囲61において運転されている状態では、適切な制御が困難である。
【0029】
図2において、基準時系列データ51は、濃度に関する制御の基準となる時系列データ(モデルデータ)である。基準時系列データ51としては、たとえば合成装置101のスタートアップ動作が成功した場合のデータを用いることができる。検出時系列データ52は、赤外分光吸収測定装置30によって実際に検出された濃度(実測データ)の時系列データである。
【0030】
この例では、基準時系列データ51と検出時系列データ52との間に相違53が発生している。たとえば、制御が難しい要因(外気温、湿度、原料組成、等)により合成反応が想定通りに行われなかった場合に、検出時系列データ52が基準時系列データ51とは異なるものとなり、相違53が発生する。この相違53を縮小するための制御を行うことが好適である。
【0031】
たとえば、スタートアップ動作開始後、一定時間経過後の合成目的物の濃度が、基準時系列データ51より低くなる場合がある。時系列データの相違は、合成装置101のスタートアップ動作が完了する前であっても検知することが可能であり、特に、反応開始直後であっても検知が可能である。
【0032】
図3は、制御装置40の処理の流れを示すフローチャートである。以下、図3を用いて合成装置101の動作を説明する。このフローチャートは本実施形態に係る合成方法を表す。
【0033】
まず制御装置40は、基準時系列データ51を記憶する(ステップS1)。基準時系列データ51は、非定常範囲61(たとえばスタートアップ動作中)における濃度のデータを含む。また、定常範囲62における濃度のデータを含んでもよい。
【0034】
ステップS1の処理は、たとえば合成目的物の合成プロセスが開始される前に完了させることができるが、合成プロセスの開始後に記憶または更新されるような変形例もとくに除外しない。基準時系列データ51の形式は任意であるが、たとえば時間の関数として、または時間を含むキーに基づいて検索可能なテーブルとして、記憶することができる。
【0035】
ステップS1の後に、合成目的物の合成プロセスが開始されてもよい。
【0036】
制御装置40は、ステップS1の後、合成目的物の合成プロセスが実行されている間に、検出時系列データ52を取得する(ステップS2)。これはたとえば上述のように赤外分光吸収測定装置30を介して行われる。たとえば、赤外分光吸収測定装置30は、連続的に濃度を検出し、検出した濃度を制御装置40に送信する。制御装置40は、赤外分光吸収測定装置30から受信したデータに、受信時刻を関連付けて記憶することにより、検出時系列データ52を生成して取得することができる。なお、ここで「連続的に検出する」とは、たとえば制御に利用可能な時系列データを生成できる程度の頻度で検出を行うことを意味し、定期的に処理が繰り返される場合を含む。
【0037】
次に、制御装置40は、検出時系列データと基準時系列データとの相違を算出する(ステップS3)。「相違」の定義は当業者が任意に決定可能であるが、たとえば、特定時刻における値の差を相違として算出してもよく、特定時刻から所定時間の積分値の差を相違として算出してもよく、特定時刻から所定時間の変化の傾きの差を相違として算出してもよい。
【0038】
次に、制御装置40は、ステップS3で算出した相違が小さくなるように、合成装置101を制御する(ステップS4)。たとえば図2のように、検出時系列データ52における濃度が基準時系列データ51における濃度より小さい場合には、合成目的物の濃度を増加させるような制御を行うことにより、相違53を小さくすることができる。
【0039】
このような制御を実現するための具体的な処理内容は、制御分野の公知技術等に基づき、当業者が適宜設計可能であるが、以下に具体例を説明する。
【0040】
たとえば、制御装置40は、濃度を算出するモデルを記憶する。このモデルはたとえば、時間(より厳密には時刻)と、1つ以上の制御可能パラメータとに基づいて濃度を算出するものである。制御可能パラメータは、たとえば合成装置101の所定位置(たとえばポンプ11およびポンプ12であるが、これに限らない)における流量を含む。また、たとえば、合成装置101の所定位置(たとえばミキサー20であるが、これに限らない)の温度を含む。また、その他のパラメータを含んでもよい。
【0041】
このモデルは、たとえば、時間およびすべての制御可能パラメータを変数として含み濃度を与える関数、または、時間およびすべての制御可能パラメータに基づいて濃度を検索可能なテーブル、または、時間およびすべての制御可能パラメータを含む入力に基づいて濃度を出力する学習済みモデル、等とすることができる。なお、モデルそのものは、公知技術に基づいて当業者が適宜設計できるものであってもよい。
【0042】
制御装置40は、このモデルに基づいて、相違が小さくなるように制御可能パラメータのいずれかを変更することにより、合成装置101を制御する。たとえば、相違が小さくなる方向に、ポンプ11および/またはポンプ12を制御してもよく(具体例としてこれらの出力を変更することにより流量を変更する)、ミキサー20を制御してもよく(具体例としてその温度を変更する)、原料または合成目的物の流路の温度を制御してもよい。
【0043】
このように、ステップS3およびS4において、制御装置40は、基準時系列データ51と、検出時系列データ52とに基づき、合成装置101をフィードバック制御する。これによって、基準時系列データ51と検出時系列データ52との相違53を埋めるように制御を行うことが可能となる。とくに、基準時系列データ51に、非定常範囲61におけるデータを含めておくことにより、制御装置40は、合成装置101の動作開始後、合成装置101が定常運転に達する前であっても、合成装置101を適切に制御することが可能となる。
【0044】
なお、ステップS4は、ステップS3の後に必ず実行するよう構成する必要はなく、たとえば所定の条件が満たされた場合のみ実行するように構成してもよい。具体例として、相違53が所定の閾値より大きい場合にのみステップS4を実行するようにしてもよい。
【0045】
ステップS4の実行後、制御装置40は、合成プロセスが終了したか否かを判定する(ステップS5)。合成プロセスが終了していれば、図3の処理は終了する。合成プロセスが終了していなければ、処理はステップS2に戻る。
【0046】
このように、実施形態1に係る合成装置101によれば、非定常運転時においても、より適切な制御を行うことができる。このため、たとえば不適合品の生産を抑制することができる。
【0047】
上述の実施形態1では、図3に示すようにループ処理はステップS5からステップS2に戻るもののみであるが、ステップS2~S4のループ構造は、当業者が適宜変更可能である。たとえば、ステップS3の実行前にステップS2を複数回実行してもよい。または、ステップS2の処理と、ステップS3およびS4の処理とを並列的に実行してもよい。
【0048】
また、制御装置40による制御は、図2のように非定常運転(非定常範囲61)から定常運転(定常範囲62)へと遷移する場合に限らず、定常運転からさらに他の状態の運転に遷移する場合にも適用可能である。たとえば、一度定常運転に至った後、生産する品目を連続的に変更する場合(たとえば合成目的物のグレードを変更する場合)の非定常運転にも適用可能である。
【0049】
[実施形態2]
実施形態2は、実施形態1において、反応装置を変更したものである。以下、実施形態1と共通する部分については説明を省略する場合がある。
【0050】
図4は、実施形態2に係る合成装置102の概略的な構成を示す。合成装置102は、2種類以上の原料を反応させるための反応装置として、図1のミキサー20に代えて反応槽21を備える。このような構成によれば、原料を混合させるのみならず、溶液を保持することが可能となる。このような構成においても、制御装置40は、図3の処理を実行することが可能である。
【0051】
このように、反応装置の具体的構成によらず、非定常運転時における制御を行うことができるので、実施形態2においても、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0052】
[実施形態3]
実施形態3は、実施形態2においてセンサーを変更したものである。以下、実施形態1または2と共通する部分については説明を省略する場合がある。
【0053】
図5は、実施形態3に係る合成装置103の概略的な構成を示す。合成装置103は、センサーとして、図4の赤外分光吸収測定装置30に代えてオンラインHPLC31を備える。なおHPLCは高速液体クロマトグラフの略称である。このような構成においても、制御装置40は、図3の処理を実行することが可能である。
【0054】
このように、オンライン分析を用いた場合であっても、非定常運転時における制御を行うことができるので、実施形態3においても、実施形態1または2と同様の効果を得ることができる。
【0055】
[実施形態4]
実施形態4もまた、実施形態2においてセンサーを変更したものである。以下、実施形態1~3のいずれかと共通する部分については説明を省略する場合がある。
【0056】
図6は、実施形態4に係る合成装置104の概略的な構成を示す。合成装置104は、センサーとして、図4の赤外分光吸収測定装置30に代えてソフトセンサー32を備える。
【0057】
本実施形態では、反応槽21に他のセンサー(図示せず)が設けられており、これがプロセスパラメータを検出してソフトセンサー32に送信する。ソフトセンサー32は、受信したプロセスパラメータに基づき、連続的に合成目的物の濃度を推定することができる。このような構成においても、制御装置40は、図3の処理を実行することが可能である。
【0058】
このように、センサーの具体的構成によらず、非定常運転時における制御を行うことができるので、実施形態4においても、実施形態1~3のいずれかと同様の効果を得ることができる。
【0059】
[変形例]
実施形態1~4では合成目的物の特性として濃度を用いたが、測定および制御に利用可能な特性であれば濃度に代えて、または濃度に加えて、任意の特性を利用することができる。たとえば合成目的物の温度、粘度、湿度、密度、等、様々な物理量を特性として測定し制御することができる。
【0060】
また、センサーの構成を変更することも可能である。上記各実施形態では、センサーは、赤外分光吸収測定装置30、HPLC31およびソフトセンサー32のうち少なくとも1つを含むが、これらを組み合わせて用いてもよく、これら以外のセンサーを用いてもよい。とくに、測定対象となる特性に応じて適切な種類のセンサーを用いることができる。たとえば、紫外分光吸収装置、粘度計、等を用いてもよい。
【0061】
また、原料は流体でない形態であってもよく、たとえば粉体、粒子、固体、等であってもよい。原料の構成に応じ、ポンプ11および12に代えて適切な原料供給装置を用いることができる。
【0062】
また、反応装置として、ミキサー20および反応槽21以外のものを用いてもよい。とくに、原料および合成目的物に応じて適切な反応装置を用いることができる。
【0063】
さらに、当業者は、上述の各実施形態において、本発明の範囲内で、構成要素を任意に追加、変更または削除することができる。
【符号の説明】
【0064】
11,12…ポンプ
20…ミキサー
21…反応槽
30…赤外分光吸収測定装置(センサー)
31…オンラインHPLC(センサー)
32…ソフトセンサー(センサー)
40…制御装置
51…基準時系列データ
52…検出時系列データ
53…相違
61…非定常範囲
62…定常範囲
101~104…合成装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6