特開 2024-129980 埋設型枠ユニット、及び、壁高欄の施工方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024129980

(43)【公開日】2024-09-30

(54)【発明の名称】埋設型枠ユニット、及び、壁高欄の施工方法

(51)【国際特許分類】

   E01D 19/10 20060101AFI20240920BHJP

   E04B 2/86 20060101ALI20240920BHJP

【ＦＩ】

E01D19/10

E04B2/86 601R

E04B2/86 611K

【審査請求】未請求

【請求項の数】8

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023039429

(22)【出願日】2023-03-14

(71)【出願人】

【識別番号】509174152

【氏名又は名称】協立エンジ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100107375

【弁理士】

【氏名又は名称】武田 明広

(72)【発明者】

【氏名】島津 孝一

(72)【発明者】

【氏名】新井 達夫

【テーマコード（参考）】

2D059

【Ｆターム（参考）】

2D059AA21

2D059DD16

(57)【要約】

【課題】従来方法と比較して極めて効率良く施工することができ、工期の大幅な短縮を可能とする壁高欄施工用の埋設型枠ユニット、及び、壁高欄の施工方法を提供する。
【解決手段】複数枚の上側セメント板２１及び下側セメント板２２によって形成された内側埋設型枠２と、複数枚の外側セメント板３１によって形成された外側埋設型枠３と、上側セメント板２１と外側セメント板３１とを連結するセパレータ５と、内部鉄筋６とによって埋設型枠ユニット１を構成する。上側セメント板２１は、左右の側縁部同士が接触した状態で連結固定され、下側セメント板２２は、ヒンジを介して上側セメント板２１と連結され、回動可能なように構成され、外側セメント板３１は、左右の側縁部同士が接触した状態でそれぞれ連結固定され、内部鉄筋６は、主方向鉄筋６１と長手方向鉄筋６２とによって形成されている。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

複数枚の上側セメント板及び下側セメント板によって形成された内側埋設型枠と、複数枚の外側セメント板によって形成された外側埋設型枠と、所定の間隔を置いて対向する上側セメント板と外側セメント板とを連結するセパレータと、内部鉄筋とによって構成され、
上側セメント板は、埋設型枠ユニットの長手方向に沿って並列され、左右の側縁部同士が接触した状態で連結固定され、
下側セメント板は、ヒンジを介して上側セメント板と連結され、回動可能なように構成され、
外側セメント板は、埋設型枠ユニットの長手方向に沿ってそれぞれ並列され、左右の側縁部同士が接触した状態でそれぞれ連結固定され、
内部鉄筋は、垂直方向に延在し、埋設型枠ユニットの長手方向へ一定の間隔を置いて配置された主方向鉄筋と、埋設型枠ユニットの長手方向に延在し、主方向鉄筋と結束された長手方向鉄筋とによって形成され、内側埋設型枠と外側埋設型枠の間のスペースに配置され、固定されていることを特徴とする埋設型枠ユニット。

【請求項2】

下側セメント板は、上側セメント板の下方側において、上縁部が、当該上側セメント板の下縁部に接触又は近接した状態で当該上側セメント板と連結されていることを特徴とする、請求項１に記載の埋設型枠ユニット。

【請求項3】

所定の間隔を置いて対向する上側セメント板と外側セメント板とが、上下二箇所の位置に配置されたセパレータによって連結されていることを特徴とする、請求項１に記載の埋設型枠ユニット。

【請求項4】

内部鉄筋が、セパレータに対して結束され、固定されていることを特徴とする、請求項１に記載の埋設型枠ユニット。

【請求項5】

内側上部型枠、及び、外側上部型枠とによって構成される上部型枠を有し、
内側上部型枠が、埋設型枠ユニットの長手方向に沿った向きで、並列状態の上側セメント板の上部とそれぞれ接触するように固定され、
外側上部型枠が、埋設型枠ユニットの長手方向に沿った向きで、並列状態の外側セメント板の上部とそれぞれ接触するように固定されていることを特徴とする、請求項１に記載の埋設型枠ユニット。

【請求項6】

内側上部型枠と外側上部型枠とが、連結吊り金具によって連結されていることを特徴とする、請求項５に記載の埋設型枠ユニット。

【請求項7】

内側上部型枠と外側上部型枠の裏面に、高さ位置を変更できる面木がそれぞれ取り付けられていることを特徴とする、請求項５に記載の埋設型枠ユニット。

【請求項8】

請求項１～７のいずれかに記載の埋設型枠ユニットを使用して、橋梁の床版上に壁高欄を施工する方法であって、
地覆部鉄筋を予め施工した橋梁床版の地覆部の上に埋設型枠ユニットを配置し、
外側セメント板を地覆部に対して固定し、
下側セメント板を回動させることにより、埋設型枠ユニットの内部へのアクセスが可能な状態で、埋設型枠ユニットの内部鉄筋と地覆部鉄筋とを結束し、
下側セメント板を、回動状態を解除したうえで地覆部に対して固定し、
埋設型枠ユニットの内部にコンクリートを打設し、
内側埋設型枠及び外側埋設型枠と打設したコンクリートとを一体化させて壁高欄を形成することを特徴とする壁高欄の施工方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、橋梁（道路橋、高速道路の高架橋、鉄道橋等）の床版上に壁高欄を形成する際に使用することができる埋設型枠ユニット、及び、この埋設型枠ユニットを使用した壁高欄の施工方法に関する。

【背景技術】

【0002】

従来、道路橋や高速道路の高架橋等の橋梁の壁高欄は、場所打ちコンクリートによって形成されている。一般的には、まず床版の地覆部（床版の側縁部、壁高欄の基礎となる位置）において鉄筋を組み立て、次にそれらを囲うように型枠（通常は、木製型枠）を組み立て、型枠内にコンクリートを打設するという方法が実施されている。この方法による場合、必要となる工程（鉄筋組立、型枠組立、コンクリート打設、養生、及び、型枠撤去）のうち、いずれかの工程を他の工程と同時に並行して実行することはできないため、各工程を順番に一つずつ実行していく必要があり、長い工期が必要となる。

【0003】

また、上記各工程は、専門の作業者（型枠工、鉄筋工等）によって実行されるため、適切な人数の型枠工や鉄筋工等を、各工程のスケジュールや進行状況を考慮して、適切なタイミングで現場に派遣する必要がある。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２０１９－１９０２５７号公報

【特許文献2】特許第６５６７５７４号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

しかしながら、近年では熟練した型枠工等が不足していることから、スケジュールに合わせて十分な人員を確保することが困難な場合が多く、工程管理に支障を来し、工期の遅延を招いてしまうという問題があり、また、品質の安定性や安全性を確保しようとするうえで問題がある。

【0006】

更に、上述したような従来の壁高欄の施工方法よりも、短い工期で効率的に施工できる方法の実用化が望まれている。また、使用済みの木製型枠を廃棄して焼却すると、大量の二酸化炭素が排出されることになるが、木製型枠を使用しない壁高欄の施工方法を実用化することができれば、二酸化炭素排出量の低減に貢献することができる。

【0007】

本発明は、このような従来技術における問題を解決しようとするものであって、従来方法と比較して極めて効率良く施工することができ、工期の大幅な短縮を可能とする壁高欄施工用の埋設型枠ユニット、及び、壁高欄の施工方法の提供を目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0008】

本発明に係る埋設型枠ユニットは、複数枚の上側セメント板及び下側セメント板によって形成された内側埋設型枠と、複数枚の外側セメント板によって形成された外側埋設型枠と、所定の間隔を置いて対向する上側セメント板と外側セメント板とを連結するセパレータと、内部鉄筋とによって構成され、上側セメント板は、埋設型枠ユニットの長手方向に沿って並列され、左右の側縁部同士が接触した状態で連結固定され、下側セメント板は、ヒンジを介して上側セメント板と連結され、回動可能なように構成され、外側セメント板は、埋設型枠ユニットの長手方向に沿ってそれぞれ並列され、左右の側縁部同士が接触した状態でそれぞれ連結固定され、内部鉄筋は、垂直方向に延在し、埋設型枠ユニットの長手方向へ一定の間隔を置いて配置された主方向鉄筋と、埋設型枠ユニットの長手方向に延在し、主方向鉄筋と結束された長手方向鉄筋とによって形成され、内側埋設型枠と外側埋設型枠の間のスペースに配置され、固定されていることを特徴としている。

【0009】

この埋設型枠ユニットにおいては、下側セメント板が、上側セメント板の下方側において、上縁部が当該上側セメント板の下縁部に接触又は近接した状態で当該上側セメント板と連結されていることが好ましい。また、所定の間隔を置いて対向する上側セメント板と外側セメント板とが、上下二箇所の位置に配置されたセパレータによって連結されていることが好ましい。

【0010】

また、内部鉄筋が、セパレータに対して結束され、固定されていることが好ましく、更に、内側上部型枠、及び、外側上部型枠とによって構成される上部型枠を有し、内側上部型枠が、埋設型枠ユニットの長手方向に沿った向きで、並列状態の上側セメント板の上部とそれぞれ接触するように固定され、外側上部型枠が、埋設型枠ユニットの長手方向に沿った向きで、並列状態の外側セメント板の上部とそれぞれ接触するように固定されていることが好ましい。

【0011】

また、内側上部型枠と外側上部型枠とが、連結吊り金具によって連結されていることが好ましく、更に、内側上部型枠と外側上部型枠の裏面に、高さ位置を変更できる面木がそれぞれ取り付けられていることが好ましい。

【0012】

本発明に係る壁高欄の施工方法は、地覆部鉄筋を予め施工した橋梁床版の地覆部の上に、上記のような埋設型枠ユニットを配置し、外側セメント板を地覆部に対して固定し、下側セメント板を回動させることにより、埋設型枠ユニットの内部へのアクセスが可能な状態で、埋設型枠ユニットの内部鉄筋と地覆部鉄筋とを結束し、下側セメント板を、回動状態を解除したうえで地覆部に対して固定し、埋設型枠ユニットの内部にコンクリートを打設し、内側埋設型枠及び外側埋設型枠と打設したコンクリートとを一体化させて壁高欄を形成することを特徴としている。

【発明の効果】

【0013】

本発明に係る埋設型枠ユニットは、現場近くの作業ヤードや工場等において随時製造することができ、特に、設備が整った工場で製造を行うことにより、高い品質、及び、高い生産性を期待できる。そして、本発明に係る壁高欄の施工方法によれば、事前に製造しておいた必要数の埋設型枠ユニットを施工現場へ運搬し、設置することにより、橋梁床版上において極めて効率良く壁高欄を形成することができる。具体的には、鉄筋組立、型枠組立、型枠撤去等の工程を省略（乃至は大幅に簡素化）することができ、その結果、従来技術と比較して、工期を大幅に短縮することができる。

【0014】

また、施工現場へ派遣する作業員の人数や種類を少なくすることができ、拘束時間も短縮化できるため、熟練者の不足に起因する工程管理上の問題や、工期遅延等の問題に好適に対処することができ、品質の安定性及び安全性を確保することができる。更に、高所作業時間を減らすことができるため、墜落災害等の発生リスクを減じることができ、施工時の安全性向上という効果を期待できる。また、木製型枠を使用せずに壁高欄を施工することができるため、使用済みの木製型枠（産業廃棄物）の廃棄量、焼却量を減じることができ、二酸化炭素排出量の低減に貢献することができる。

【図面の簡単な説明】

【0015】

【図1】図１は、本発明の第一実施形態に係る埋設型枠ユニット１の斜視図、及び、埋設型枠ユニット１の内部に配置される内部鉄筋６の部分拡大図である。

【図2】図２は、図１に示す埋設型枠ユニット１の垂直断面図である。

【図3】図３は、図２に示す外側セメント板３１、及び、固定金具５２の水平断面図である。

【図4】図４は、本発明の第二実施形態に係る壁高欄の施工方法の説明図であって、埋設型枠ユニット１、及び、地覆部７の斜視図である。

【図5】図５は、本発明の第二実施形態に係る壁高欄の施工方法の説明図であって、埋設型枠ユニット１、及び、地覆部７の垂直断面図である。

【図6】図６は、本発明の第二実施形態に係る壁高欄の施工方法の説明図であって、埋設型枠ユニット１の連結部を示す図である。

【発明を実施するための形態】

【0016】

本発明は、橋梁（道路橋、高速道路の高架橋、鉄道橋等）の床版上に壁高欄を形成する際に使用する「埋設型枠ユニット」として実施できるほか（第一実施形態）、この埋設型枠ユニットを使用した「壁高欄の施工方法」として実施することができる（第二実施形態）。以下、添付図面に沿って、本発明の実施形態についてそれぞれ説明する。

【0017】

（第一実施形態： 埋設型枠ユニット）
図１は、本発明の第一実施形態に係る埋設型枠ユニット１の斜視図、及び、埋設型枠ユニット１の内部に配置される内部鉄筋６の部分拡大図であり、図２は、図１に示す埋設型枠ユニット１の垂直断面図である。これらの図に示されるように、この埋設型枠ユニット１は、基本的には、内側埋設型枠２、外側埋設型枠３、上部型枠４、セパレータ５、及び、内部鉄筋６によって構成されている。

【0018】

内側埋設型枠２は、８枚の上側セメント板２１と、同数の下側セメント板２２とによって形成されている。これらの上側セメント板２１及び下側セメント板２２は、セメントを主原料とする板材、より具体的には、原材料（セメント、珪石粉、水、ワラストナイト、メセロース、及び、ポリプロピレン補強繊維）を真空押出成形機に投入して成形したもの（押出成形セメント板）である。

【0019】

上側セメント板２１は、それぞれ同一の形状及び寸法（幅５００ｍｍ）を有し、埋設型枠ユニット１の長手方向に沿って並列され、左右の側縁部同士が接触した状態で、上部型枠４及びセパレータ５によって連結固定されている。下側セメント板２２は、それぞれ同一の形状及び寸法を有するとともに、上側セメント板２１と同一の幅寸法（５００ｍｍ）を有し、上側セメント板２１と一対一の対応関係を有し、対応する上側セメント板２１の下方側において、各上縁部が、上側セメント板２１の下縁部に接触（又は近接）した状態で、ヒンジ２３を介して上側セメント板２１と連結されており、図２に示すように、実線で示す位置から、破線で示す位置まで、ヒンジ２３の軸を中心として回動可能なように構成されている。

【0020】

尚、本実施形態において、ヒンジ２３は、軸が水平となる向きで上側セメント板２１及び下側セメント板２２に取り付けられているため、下側セメント板２２は、水平軸線周りに回動可能なように構成されているが、垂直軸線周りに、或いは、傾斜した軸線周りに回動するように構成してもよい。

【0021】

外側埋設型枠３は、それぞれ同一の形状及び寸法（幅５００ｍｍ）を有する８枚の外側セメント板３１によって形成され、それらの外側セメント板３１が、埋設型枠ユニット１の長手方向に沿って並列され、左右の側縁部同士が接触した状態で、上部型枠４及びセパレータ５によって連結固定されている。尚、これらの外側セメント板３１も、セメントを主原料とする押出成形セメント板である。

【0022】

上部型枠４は、断面がコの字型の鋼材によって形成された内側上部型枠４１、及び、外側上部型枠４２とによって構成されている。内側上部型枠４１は、埋設型枠ユニット１の長手方向に沿った向きで、並列状態の８枚の上側セメント板２１の上部とそれぞれ接触するように配置されるとともに、内側上部型枠４１側から各上側セメント板２１内に打ち込まれたビス４３によって固定されている。この内側上部型枠４１を装着することにより、８枚の上側セメント板２１の連結状態を安定的に維持することができる。

【0023】

外側上部型枠４２は、埋設型枠ユニット１の長手方向に沿った向きで、並列状態の８枚の外側セメント板３１の上部とそれぞれ接触するように配置されるとともに、外側上部型枠４２側から各外側セメント板３１内に打ち込まれたビス４３（図２参照）によって固定されている。この外側上部型枠４２を装着することにより、８枚の外側セメント板３１の連結状態を安定的に維持することができる。

【0024】

尚、内側上部型枠４１と外側上部型枠４２は、連結吊り金具４５によって、複数箇所（長手方向へ間隔を置いた複数の位置）において連結されている。この連結吊り金具４５の装着により、埋設型枠ユニット１の全体の剛性を向上させることができるほか、この連結吊り金具４５にクレーンのフックを係止し、又は、ワイヤを挿通することにより、埋設型枠ユニット１の移動時（設置時を含む）において、吊り上げ作業等を簡単かつ安全に実施することができる。また、内側上部型枠４１と外側上部型枠４２の裏面には、面木４４がそれぞれ取り付けられている。これらの面木４４は、高さ位置を変更できるようになっている。

【0025】

セパレータ５は、図２に示すように、両端がネジ加工された長ボルト５１、固定金具５２（平鋼）、連結金具５３、寸切りボルト５４、Ｌ型金具５５、ナット５６等によって構成され、内側埋設型枠２を構成する上側セメント板２１と、外側埋設型枠３を構成する外側セメント板３１との間の上下二箇所の位置に配置されている。本実施形態の埋設型枠ユニット１においては、これらのセパレータ５により、対向する上側セメント板２１と外側セメント板３１とが（即ち、内側埋設型枠２と外側埋設型枠３とが）、所定の間隔を置いて連結されている。

【0026】

具体的には、上側セメント板２１の裏面（図２において右側の側面）には連結金具５３（つば付き長ナット）が固定されるとともに、外側セメント板３１の裏面（図２において左側の側面）には固定金具５２が固定されており、長ボルト５１の両端部を、連結金具５３及び固定金具５２に対してそれぞれ螺着させることにより、上側セメント板２１と外側セメント板３１とが連結されている。

【0027】

尚、連結金具５３の反対側には寸切りボルト５４が螺着されている。この寸切りボルト５４は、先端部が上側セメント板２１の表面（図２において左側の側面）から外側へ突出するように配置され、その突出部分には、Ｌ型金具５５及びナット５６が装着されている。このナット５６を締めつけることにより、Ｌ型金具５５と連結金具５３によって上側セメント板２１が挟持されて、上側セメント板２１に対して連結金具５３が固定される。

【0028】

また、固定金具５２は、図３（外側セメント板３１、及び、固定金具５２の水平断面図）に示すように、外側セメント板３１の裏面（図３において下方側の側面）に対してビス５７によって固定されている。そして、この固定金具５２には、長ボルト５１の端部を螺着可能なネジ穴５２ａが形成されている。従って、上述したように、長ボルト５１の両端部を、連結金具５３（ナット状部５３ｂ）及び固定金具５２に対してそれぞれ螺着させることにより、上側セメント板２１と外側セメント板３１とを連結することができる。

【0029】

内部鉄筋６は、図１（２）に示すように、複数本の台形枠状の主方向鉄筋６１と、複数本の直状の長手方向鉄筋６２とによって形成されている。これらのうち、主方向鉄筋６１は、壁高欄主方向（垂直方向）にそれぞれ延在し、埋設型枠ユニット１の長手方向へ一定の間隔（本実施形態においては１２５ｍｍ）を置いて配置されている。一方、長手方向鉄筋６２は、長手方向（水平方向）にそれぞれ延在し、主方向鉄筋６１の内側に挿通され、結束線により主方向鉄筋６１と結束されている。この内部鉄筋６は、図２に示すように、内側埋設型枠２と外側埋設型枠３の間のスペースに配置され、セパレータ５の長ボルト５１に対して結束され、埋設型枠ユニット１の内部において固定されている。

【0030】

本実施形態の埋設型枠ユニット１は、以上に説明したような構成に係るものであるところ、事前に製造しておいた必要数の埋設型枠ユニットを施工現場へ運搬し、設置することにより、極めて効率良く壁高欄を形成することができ、その結果、従来技術と比較して、工期を大幅に短縮することができる。

【0031】

尚、図１においては、内側埋設型枠２を構成する８組の上側セメント板２１、及び、下側セメント板２２のすべてが取り付けられている状態が示されているが、長手方向両端の上側セメント板２１、及び、下側セメント板２２をそれぞれ取り付ける前の状態（図４参照）で施工現場へ移送し、壁高欄の施工方法における特定の段階で、長手方向両端の上側セメント板２１、及び、下側セメント板２２をそれぞれ取り付けることが好ましい。

【0032】

（第二実施形態： 壁高欄の施工方法）
図４～図６は、本発明の第二実施形態に係る壁高欄の施工方法（図１～図３に示す第一実施形態の埋設型枠ユニット１を使用して壁高欄を施工する方法）の説明図である。

【0033】

図４に示すように、施工対象となる橋梁床版の地覆部７に、予め地覆部鉄筋８を施工しておく。地覆部鉄筋８は、本実施形態においては、ループ状の主方向鉄筋８１と直状の橋軸方向鉄筋８２とによって構成されている。より具体的には、主方向鉄筋８１は、下端部が地覆部７のコンクリート躯体内に埋設され、壁高欄主方向に（地覆部７の表面から上方へ突出するように）それぞれ延在し、橋軸方向へ一定の間隔（本実施形態においては１２５ｍｍ）を置いて配置されている。一方、橋軸方向鉄筋８２は、橋軸方向にそれぞれ延在し、主方向鉄筋８１の内側に挿通され、結束線により主方向鉄筋８１と結束されている。

【0034】

そして、地覆部７の上に埋設型枠ユニット１を据え付ける。このとき、埋設型枠ユニット１は、図４に示すように、長手方向両端の上側セメント板２１、及び、下側セメント板２２をそれぞれ取り付ける前の状態（或いは、一旦取り付けた後で取り外した状態）とし、内側埋設型枠２が床版の中央側、外側埋設型枠３が床版の外側となる向きで、内部の主方向鉄筋６１（配置間隔１２５ｍｍ）が、対応する地覆部７の主方向鉄筋８１（配置間隔１２５ｍｍ）とそれぞれ隣接する位置に配置する。尚、図１に示す状態（長手方向両端の上側セメント板２１、及び、下側セメント板２２が取り付けられている状態）で地覆部７の上に設置し、その後、長手方向両端の上側セメント板２１、及び、下側セメント板２２をそれぞれ取り外すようにしてもよい。

【0035】

地覆部７の上に埋設型枠ユニット１を配置する作業は、連結吊り金具４５にクレーンのフックを係止し、又は、ワイヤを挿通して吊り上げることによって、簡単かつ安全に実施することができる。

【0036】

埋設型枠ユニット１を地覆部７の上に配置したら、図５に示すように、外側セメント板３１（外側埋設型枠３）を地覆部７に対して固定する。具体的には、合板７２を、地覆部７の外側端縁から上方へ突出するように、地覆部７の外側の側面７１に対して予め固定（ビス止め）しておき、この合板７２と、外側セメント板３１の下端部とを接合させ、ビス７３により固定する。

【0037】

次に、図５に示すように、埋設型枠ユニット１の主方向鉄筋６１と、地覆部７の主方向鉄筋８１とが重なるスペースに追加鉄筋８３を挿通し、この追加鉄筋８３と、主方向鉄筋６１（又は、主方向鉄筋６１，８１）とを、結束線により結束するとともに、主方向鉄筋６１，８１同士を結束する。このとき、図５に示すように、予め下側セメント板２２の下端部２２ａを、地覆部Ｓの表面の近傍位置から上方へ回動させた状態としておくことにより、作業者において、埋設型枠ユニット１の内部へのアクセスが可能になり、追加鉄筋８３の挿通作業や、結束作業を、円滑に、効率良く実施することができる。

【0038】

尚、下側セメント板２２の回動状態は、例えば、図５に示すように、下側セメント板２２の下端部２２ａと、上段側のＬ型金具５５とを、ワイヤー２４（或いは、紐又は棒等の係止手段）で連結して、下側セメント板２２を吊り下げる（或いは、係止する）ことにより、安定的に維持することができる。

【0039】

追加鉄筋８３の結束作業が完了したら、ワイヤー２４（係止手段）を取り外して（回動状態を解除し）、下側セメント板２２を所定の位置（図５において破線で示す位置）に戻し、埋設型枠ユニット１の据え付け高さを適宜調整した後、下側セメント板２２を地覆部７に対して固定する。具体的には、合板７４を、地覆部７の表面から上方へ突出するように、地覆部７に対して予め固定しておき（例えば、アングル材７５等を使用してビス止めする）、この合板７４と、下側セメント板２２の下端部２２ａとを接合させ、ビス７６により固定する。

【0040】

このようにして、一つの埋設型枠ユニット１を地覆部７上に固定したら、次の埋設型枠ユニット１を、橋軸方向へ隣接する位置に配置して、同じ要領で据え付け作業（埋設型枠ユニット１の配置、外側セメント板３１の固定、追加鉄筋８３の挿通、鉄筋の結束、及び、下側セメント板２２の固定等）を行う。尚、この時点では、図４に示すように、埋設型枠ユニット１の長手方向両端の上側セメント板２１、及び、下側セメント板２２が取り付けられていない（或いは、一旦取り外されている）ため、隣接する二つの埋設型枠ユニット１の連結部には、セメント板二組分の開口部が形成されることになる。この開口部から、隣接する二つの埋設型枠ユニット１の内部鉄筋６同士を連結するように、誘発目地用の鉄筋（図示せず）を配置し、結束する。

【0041】

この隣接する二つの埋設型枠ユニット１の連結部（セメント板二組分の開口部の中央）に、図６に示すように、誘発目地材９１を配置する。そして、この誘発目地材９１の両側に、未だ取り付けていなかった（或いは、一旦取り外しておいた）上側セメント板２１、及び、下側セメント板２２をそれぞれ取り付けて、開口部を閉鎖する。

【0042】

以上の手順を、必要な回数だけ繰り返すことにより、すべての埋設型枠ユニット１の据え付けが完了したら、埋設型枠ユニット１の内部（図２に示す内側埋設型枠２と外側埋設型枠３の間のスペース）にコンクリートを打設する。このとき、コンクリートを打設する高さは、図２に示す面木４４の上面までとする。尚、上述した通り面木４４は、高さ位置を変更できるようになっており、従って、形成される壁高欄の天端面の高さ位置を適宜調整することができる。

【0043】

その後、必要な養生期間を経て、コンクリートが硬化したら、図２に示す上部型枠４、ナット５６、Ｌ型金具５５、寸切りボルト５４、及び、ヒンジ２３を取り外し、更に、図５に示すアングル材７５、合板７２，７４を取り外す。尚、これらを取り外すことによって形成される孔（ビス孔等）には、上側セメント板２１、外側セメント板３１等と同じ材質の補修材（例えば、スティック状補修材）を打ち込んで埋めることが好ましい。

【0044】

本実施形態の壁高欄の施工方法は、以上に説明したような構成に係るものであるところ、埋設型枠ユニット１の内部に配置されている内部鉄筋６（図１（２）参照）は、現場に搬送される前に組み立てが済んでおり、また、埋設型枠ユニット１の内部に打設したコンクリートが硬化すると、内側埋設型枠２及び外側埋設型枠３と、打設したコンクリートとが一体化して壁高欄が形成されることになるため、現場における鉄筋組立、型枠組立、型枠撤去等の工程を省略（乃至は大幅に簡素化）することができ、その結果、橋梁床版上において極めて効率良く壁高欄を形成することができ、従来技術と比較して、工期を大幅に短縮することができる。

【符号の説明】

【0045】

１：埋設型枠ユニット、
２：内側埋設型枠、
２１：上側セメント板、
２２：下側セメント板、
２２ａ：下端部、
２３：ヒンジ、
２４：ワイヤー、
３：外側埋設型枠、
３１：外側セメント板、
４：上部型枠、
４１：内側上部型枠、
４２：外側上部型枠、
４３：ビス、
４４：面木、
４５：連結吊り金具、
５：セパレータ、
５１：長ボルト、
５２：固定金具、
５２ａ：ネジ穴、
５３：連結金具、
５４：寸切りボルト、
５５：Ｌ型金具、
５６：ナット、
５７：ビス、
６：鉄筋、
６１：主方向鉄筋、
６２：長手方向鉄筋、
７：地覆部、
７１：外側の側面、
７２：合板、
７３：ビス、
７４：合板、
７５：アングル材、
７６：ビス、
８：地覆部鉄筋、
８１：主方向鉄筋、
８２：橋軸方向鉄筋、
８３：追加鉄筋、
９１：誘発目地材、

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】