(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129995
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】トラップ装置
(51)【国際特許分類】
F16T 1/22 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
F16T1/22 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039450
(22)【出願日】2023-03-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】吉川 成雄
(57)【要約】 (修正有)
【課題】製造コストの上昇を抑えながら、使用期間の長短にかかわらず閉弁時における高いシール性を確保することができるトラップ装置を提供する。
【解決手段】トラップ装置1は、ケーシング10とフロート20とを備える。ケーシング10は、導入される流体を収容する収容室10aを備える。フロート20は、収容室10a内において上下動可能である。ケーシング10は、底壁内面10fからZ方向上向きに突出形成された弁座10iと、内部連通路10hにおける収容室10a側の端部であって、弁座10iの先端部に開口10jを有する弁孔10eと、をさらに備える。弁座10iは、開口10jの周辺において、平面で構成された平面部分10kを有する。フロート20は、弁座10iの平面部分10kと平行であって、フロート20が下降端に位置する状態で平行部分10kと面接触可能な平面で構成された下面20cを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気を含む流体から復水を排出するトラップ装置であって、
前記流体の流入部、前記復水の流出部、および前記流入部から導入される前記流体を収容する収容部を有するケーシングと、
前記ケーシングの前記収容室に収容され、当該収容室内の前記復水の量に応じて上下動可能なフロートと、
を備え、
前記ケーシングは、前記流出部と前記収容室とを連通する連通路と、当該ケーシングの底壁内面または側壁内面から前記収容室に向けて突出形成された弁座と、前記連通路における前記収容室側の端部であって、前記弁座の先端部で前記収容室に開口する弁孔と、をさらに有し、
前記弁座における前記弁孔の開口周辺は、平面で構成されており、
前記フロートは、前記弁座における前記弁孔の開口周辺と平行であって、当該フロートが下降端に位置する状態で前記開口周辺と面接触可能な平面で構成された下面を有する、
トラップ装置。
【請求項2】
前記フロートは、上下方向の高さ中心よりも重心が下方にオフセットするように設けられた錘を有する、
請求項1に記載のトラップ装置。
【請求項3】
前記ケーシングの前記側壁内面および前記フロートにおける前記側壁内面に対向する外面の内の一方の面は、他方の面に向けて突出するとともに、上下方向に延びるように形成された線状凸部を有し、
前記ケーシングの前記側壁内面および前記フロートにおける前記側壁内面に対向する外面の内の他方の面は、前記線状凸部の填まり込みを許容するとともに、上下方向に延びるように形成された案内溝を有する、
請求項1に記載のトラップ装置。
【請求項4】
前記フロートは、六面体の外観形状を有するように形成され、前記下面における前記弁座との接触領域を除く部分にリブを有する、
請求項1から請求項3の何れかに記載のトラップ装置。
【請求項5】
前記フロートは、それぞれが六面体の外観形状を有し、互いに接合された複数のピースを有する、
請求項4に記載のトラップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気が流通する配管設備から復水を排出するのに用いられるトラップ装置に関し、特にフロートにレバーが連結されていないレバーフリータイプのトラップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気が流通する配管設備では、当該配管設備から復水(ドレン)を排出するスチームトラップ等のトラップ装置が設けられる。トラップ装置には、ケーシング内に収容されたフロートにレバーが連結されていないレバーフリータイプのものが含まれる(特許文献1等)。従来技術に係るトラップ装置について、
図8を用いて説明する。
【0003】
図8に示すように、従来技術に係るトラップ装置9は、ケーシング90と、フロート91と、スクリーン93と、エアベント94とを備える。ケーシング90は、フロート91が矢印Cのように上下動可能な収容室90aを有する。また、ケーシング90は、蒸気や復水が流入される流入部90b、および復水が流出される流出部90cと、収容室90aに開口する弁孔90eとを有する。弁孔90eは、ケーシング90の側壁内面における下端部分から斜め上向きに突出形成されたパイプ状部分(弁座90i)の先端部で収容室90aに開口されている。弁座90iにおける弁孔90eの開口周辺は、フロート91の外面91aに接触する。弁孔90eは、内部連通路90hにより流出部90cに接続されている。さらに、ケーシング90は、フロート91が下降端まで下降した際にフロート91を保持するバルブホルダ90jも有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、
図8を用いて説明した従来技術に係るトラップ装置9では、製造コストの上昇を抑えながら閉弁時の高いシール性を確保すること、および耐久性を確保することが困難である。即ち、従来技術に係るトラップ装置9では、球形状のフロート91が採用されているため、弁孔90eの開口を閉弁する際の弁座90iとフロート91の外面91aとの接触が線接触となっている。
【0006】
また、フロート91における弁座90iとの接触箇所は、フロート91が下降する際の姿勢によって都度変化する。このため、従来技術に係るトラップ装置9では、フロート91の外面91aのどの部分が弁座90iに当接してもよいように、高い真球度のフロート91を採用することが必要となり、製造コストの上昇を招いてしまう。
【0007】
また、従来技術に係るトラップ装置9では、上述のようにフロート91の外面91aと弁座90iのバルブシート(弁孔90eの開口周辺)とが線接触するとともに、当該フロート91の外面91aにおける接触箇所が下降時におけるフロート91の姿勢によって都度変化するので、フロート91の外面91aが偏摩耗を生じることになる。このため、使用が長期に及んだ場合には、フロート91の外面91aの偏摩耗によって弁孔90eの開口を完全に閉じることができなくなるため、従来技術に係るトラップ装置9では、耐久性という観点からも問題を生じる。
【0008】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、製造コストの上昇を抑えながら、使用期間の長短にかかわらず閉弁時における高いシール性を確保することができるトラップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るトラップ装置は、蒸気を含む流体から復水を排出するトラップ装置であって、ケーシングとフロートとを備える。前記ケーシングは、前記流体の流入部、前記復水の流出部、および前記流入部から導入される前記流体を収容する収容部を有する。前記フロートは、前記ケーシングの前記収容室に収容され、当該収容室内の前記復水の量に応じて上下動可能である。
本態様に係るトラップ装置において、前記ケーシングは、前記流出部と前記収容室とを連通する連通路と、当該ケーシングの底壁内面または側壁内面から前記収容室に向けて突出形成された弁座と、前記連通路における前記収容室側の端部であって、前記弁座の先端部で前記収容室に開口する弁孔と、をさらに有する。
【0010】
本態様に係るトラップ装置において、前記弁座における前記弁孔の開口周辺は、平面で構成されている。
【0011】
本態様に係るトラップ装置において、前記フロートは、前記弁座における前記弁孔の開口周辺と平行であって、当該フロートが下降端に位置する状態で前記開口周辺と面接触可能な平面で構成された下面を有する。
【0012】
上記態様に係るトラップ装置では、弁座における上記開口周辺が平面に形成され、フロートの下面が弁座の前記平面の部分(平面部分)と平行であって、フロートが下降端まで下降した状態で前記平面部分(バルブシート)と面接触可能なように平面で構成されている。よって、上記態様に係るトラップ装置では、フロートにおける下面と弁座における上記平面部分との平行度を確保するだけで閉弁時における高いシール性を確保することができ、従来技術に係るトラップ装置のように高い真球度が必要とされる球形状のフロートを備える場合に比べて、製造コストの抑制が可能である。
【0013】
また、上記態様に係るトラップ装置では、フロートの下面と弁座の上記平面部分との面接触により閉弁されるので、小さな閉弁力Pで閉弁時における高いシール性を確保することができる。即ち、閉弁力P=シール係数ρ/閉弁面積Sの関係で定義されるので、フロートの下面と弁座の上記平面部分との面接触で閉弁する上記態様に係るトラップ装置では、フロートの外面と弁座のバルブシート(弁孔における開口周辺)との線接触で閉弁する従来技術に係るトラップ装置に対して、小さな閉弁力で閉弁時における高いシール性を確保することができる。
【0014】
また、上記態様に係るトラップ装置では、弁孔の開口を閉弁するのに際してフロートの下面と弁座の上記平面部分とが面接触するので、フロートの下面および弁座の上記平面部分のそれぞれに入力される荷重が分散され、フロートの下面および弁座の上記平面部分の磨滅を小さく抑えることができる。よって、上記態様に係るトラップ装置では、使用期間が長期に及んだ場合にも閉弁時の高いシール性を維持することができる。
【0015】
上記態様に係るトラップ装置において、前記フロートは、上下方向の高さ中心よりも重心が下方にオフセットするように設けられた錘を有する、としてもよい。
【0016】
上記態様に係るトラップ装置では、フロートが錘を有することで高さ中心(高さ寸法における中心)よりも重心が下方にオフセットするように形成されているので、収容室内の復水の量に応じてフロートが下降して行く際には、錘が設けられた側を下方に向けた姿勢が維持される。よって、フロートにおける下面が弁座における上記平面部分に対して平行な状態を維持しながらフロートを下降させることが可能である。これより、フロートが下降端まで下降した状態で、フロートの下面と弁座の上記平面部分とを確実に面接触させることができ、閉弁時の高いシール性を確保するのに優位である。
【0017】
上記態様に係るトラップ装置において、前記ケーシングの前記側壁内面および前記フロートにおける前記側壁内面に対向する外面の内の一方の面は、他方の面に向けて突出するとともに、上下方向に延びるように形成された線状凸部を有する、としてもよい。そして、前記ケーシングの前記側壁内面および前記フロートにおける前記側壁内面に対向する外面の内の他方の面は、前記線状凸部の填まり込みを許容するとともに、上下方向に延びるように形成された案内溝を有する、としてもよい。
【0018】
上記態様に係るトラップ装置では、ケーシングの側壁内面およびフロートの外面の内の一方が線状凸部を有し、他方が案内溝を有するように構成されている。即ち、上記態様に係るトラップ装置では、案内溝に線状凸部が填まり込み、案内溝に沿って線状凸部が摺動する。よって、上記態様に係るトラップ装置では、フロートの上下動の際にフロートの姿勢の乱れを抑制することができる。これより、上記態様に係るトラップ装置では、フロートが下降端まで下降した状態で、フロートの下面と弁座の上記平面部分とを確実に面接触させることができ、閉弁時の高いシール性を確保するのに優位である。
【0019】
上記態様に係るトラップ装置において、前記フロートは、六面体の外観形状を有するように形成され、前記下面における前記弁座との接触領域を除く部分にリブを有する、としてもよい。
【0020】
上記態様に係るトラップ装置では、六面体の外観形状を有するフロートを備えるので、同じ容積および同じ肉厚の球形状のフロートを備える場合に比べて、フロートの寸法(縦横方向の寸法)を小さくすることができる。そして、フロートのサイズ縮小に伴って、ケーシングのサイズについても従来技術よりも小さくすることができる。
【0021】
また、上記態様に係るトラップ装置では、フロートにおける下面の一部(弁座の上記平面部分との面接触領域)を除く部分にリブが設けられているので、収容室に導入される蒸気などからの圧力に対してもフロートの変形や破損を抑制することができる。即ち、上記態様に係るトラップ装置では、外面が6つの平面で構成される六面体のフロートを採用することで上記のような効果を得ながら、フロートの変形や破損を抑制して正確な動作が確保される。
【0022】
上記態様に係るトラップ装置において、前記フロートは、それぞれが六面体の外観形状を有し、互いに接合された複数のピースを有する、としてもよい。
【0023】
上記態様に係るトラップ装置では、複数のピースを接合することにより形成されたフロートを採用するので、ピースの組み合わせ態様によって種々の六面体形状(正六面体、一方向に長い六面体、一方向に扁平な六面体など)を構成することができる。よって、上記のように複数のピースを接合することでフロートを構成する場合には、要求仕様に応じたトラップ装置を形成するのに優位である。
【0024】
また、上記態様に係るトラップ装置では、複数のピースを接合して1つのフロートが構成されるため、内部に各ピースの壁によって構成される仕切壁が形成される。よって、上記態様に係るトラップ装置では、フロートがさらに高い剛性を有することで、収容室に導入される蒸気の圧力に対する耐性を確保するのにさらに優位である。
【発明の効果】
【0025】
上記の各態様に係るトラップ装置では、製造コストの上昇を抑えながら、使用期間の長短にかかわらず閉弁時における高いシール性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態に係るトラップ装置の構成を示す断面図である。
【
図2】
図1のII-II線断面を示す断面図である。
【
図3】(a)は開弁時における収容室内でのフロートを示す断面図であり、(b)は閉弁時における収容室内でのフロートを示す断面図である。
【
図4】(a)は変形例1に係るトラップ装置が備えるフロートを示す断面図であり、(b)は変形例2に係るトラップ装置が備えるフロートを示す断面図である。
【
図5】(a)は変形例3に係るトラップ装置の一部構成を示す縦断面図であり、(b)は横断面図である。
【
図6】(a)は変形例4に係るトラップ装置が備えるフロートを示す側面図であり、(b)は変形例5に係るトラップ装置が備えるフロートを示す側面図であり、(c)は変形例6に係るトラップ装置が備えるフロートを示す側面図であり、(d)は変形例7に係るトラップ装置が備えるフロートを示す側面図である。
【
図7】変形例8に係るトラップ装置が備えるフロートを示す展開斜視図である。
【
図8】従来技術に係るトラップ装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0028】
[実施形態]
1.トラップ装置1の全体構成
本発明の実施形態に係るトラップ装置1は、蒸気を含む流体から復水を排出するトラップ装置である。トラップ装置1の全体構成について、
図1および
図2を用いて説明する。
【0029】
図1に示すように、トラップ装置1は、ケーシング10と、フロート20と、スクリーン30と、エアベント40と、エアベントプラグ50とを備える。ケーシング10は、流入部10bと、流出部10cと、収容室10aと、ベント室10dと、内部連通路(連通路)10hと、弁座10iとを有する。流入部10bは、蒸気を含む流体が流入する部位であり、X方向左向きに開口されている。該開口にはスチーム配管等が接続される。流出部10cは、空気や復水が流出する部位であり、X方向右向きに開口されている。該開口にはドレン配管等が接続される。収容室10aは、流入部10bを通り導入された流体(蒸気、復水)が収容される部位であって、流入部10bに連通されている。
【0030】
ベント室10dは、エアベント40の一部を収容する部位であって、流出部10cと連通されている。ベント室10dは、収容室10aの上方に形成されており、上部開口がエアベントプラグ50で塞がれている。内部連通路10hは、ケーシング10における側壁内および底壁内の各一部に設けられており、収容室10aと流出部10cとを連通する。
【0031】
なお、ケーシング10は、Z方向上部のボディ11とZ方向下部のボトムカバ12とを気密接合することで構成されている。このため、ボディ11とボトムカバ12との接合部分での収容室10aおよび内部連通路10hの気密性は確保されている。
【0032】
本実施形態において、弁座10iは、ケーシング10の内底面(底壁内面)10fからZ方向上方の収容室10aに向けて突設形成されている。弁座10iには、内部連通路10hにおける収容室10a側の端部であって、弁座10iの先端部で収容室10aに開口する弁孔10eが設けられている。なお、本実施形態では、弁座10iにおける弁孔10eの開口周辺(バルブシート)が平面で形成されている。これについては、後述する。
【0033】
フロート20は、六面体(本実施形態では、一例として正六面体)の外観形状を有する。フロート20は、収容室10a内において矢印Aで示すように上下動可能に収容されている。フロート20の上下動の下降端は、該フロート20の下面20cが弁座10iにおける開口周辺の平面部分に面接触する位置である。
【0034】
図2に示すように、フロート20は、X方向の寸法がW1、Y方向の寸法がW2で形成されている。寸法W1,W2は、ケーシング10における収容室10aに面する側壁内面10g同士の間隔W3,W4に対して僅かに小さい寸法に設定されている。具体的に、寸法W1,W2は、寸法W3,W4に対して1mm~10mm程度小さい値に設定されている。
【0035】
また、フロート20は、Z方向下側の下面20cを除く領域(上面20aと4面の側面20b)に形成された複数のリブ20rを有する。各リブ20rは、各外面の角部同士を結ぶ線に沿って形成されたリブ要素同士が長手方向中央部分で互いに交差した平面視でX字形状を有する。
【0036】
図1に戻って、スクリーン30は、流体の導入経路における流入部10bと収容室10aとの間に設けられている。スクリーン30は、収容室10aへのゴミやスケールの侵入を抑制する。エアベント40は、通気初期の段階などにおいて、収容室10a内などに溜まった空気を流出部10cへと排出する。
【0037】
2.フロート20の下面20cおよび弁座10iのバルブシート
本実施形態に係るトラップ装置1におけるフロート20の下面20cおよび弁座10iのバルブシート(弁孔10eの開口周辺)の各構成について、
図3を用いて説明する。
【0038】
図3(a)、(b)に示すように、フロート20の下面20cは、Z方向に沿う軸に対して直交する面で構成されている。なお、収容室10a内をフロート20が上下動する際には、フロート20はZ方向に沿う軸に対して多少軸が振れることはあるが、側面20bがケーシング10の側壁内面10gによって案内されるので、大きく振れることはない。
【0039】
フロート20が上下動する際の、収容室10aの軸に対するフロート20の軸の振れ(ブレ)は、
図2を用いて説明した寸法W1,W2と寸法W3,W4との差を小さくすればよい。ただし、収容室10a内にゴミやスケールが侵入した場合にもフロート20の円滑な上下動を確保できるように寸法W1~W4をそれぞれ設定することが望ましい。
【0040】
図3(a)に示すように、弁座10iは、ケーシング10における収容室10aに面する底壁内面10fからZ方向上向きに突設形成されている。弁座10iには、Z方向上側の端部に弁孔10eの開口10jが形成されている。開口10jは、Z方向上方に向けて開口されている。そして、弁座10iは、Z方向上側の先端部において、開口10jの周辺(バルブシート)が平面で構成されている(平面部分10k)。そして、弁座10iの平面部分10kは、Z方向に沿う軸に対して直交する面で構成され、フロート20の下面20cと平行となるように構成されている。
【0041】
平面部分10kの面積については、特に限定はないが、大きい方が閉弁力Pを小さくすることができるため望ましい。具体的には、弁座10iのシール係数(金属材料の場合は、2.0~3.0程度)をρとし、閉弁面積をSとするとき、閉弁力Pは次の式で表すことができる。
P=ρ/S ・・(1)
上記関係式(1)より、閉弁面積(フロート20の下面20cと弁座10iの平面部分10kとの接触面積)Sが大きいほど閉弁力Pを小さくすることができる。このように閉弁力Pを小さくすることにより、フロート20が生み出すある一定の力で閉弁時の高いシール性を確保することができる。
【0042】
また、
図3(b)に示すように、本実施形態に係るトラップ装置1では、フロート20の下面20cと弁座10iの平面部分10kとの面接触により閉弁されるので、閉弁時におけるフロート20の下面20cおよび弁座10iの平面部分10kのそれぞれに入力される荷重が分散され、フロート20の下面20cおよび弁座10iの平面部分10kの磨滅を小さく抑えることができる。
【0043】
3.効果
本実施形態に係るトラップ装置では、弁座10iにおけるバルブシートが平面で構成され(平面部分10k)、フロート20の下面20cが弁座10iの平面部分10kと平行であって、フロート20が下降端まで下降した状態で平面部分10kと面接触可能なように平面で構成されている。よって、トラップ装置1では、フロート20における下面20cと弁座10iにおける平面部分10kとの平行度を確保するだけで閉弁時における高いシール性を確保することができ、従来技術に係るトラップ装置9のように高い真球度が必要とされる球形状のフロート91を備える場合に比べて、製造コストの抑制が可能である。
【0044】
また、本実施形態に係るトラップ装置1では、フロート20の下面20cと弁座10iの平面部分10kとの面接触により閉弁されるので、上記関係式(1)を用いて説明したように、小さな閉弁力Pで閉弁時における高いシール性を確保することができる。
【0045】
また、本実施形態に係るトラップ装置1では、弁孔10eの開口10jを閉弁するのに際してフロート20の下面20cと弁座10iの平面部分10kとが面接触するので、フロート20の下面20cおよび弁座10iの平面部分10kのそれぞれに入力される荷重が分散され、フロート20の下面20cおよび弁座10iの平面部分10kの磨滅を小さく抑えることができる。よって、トラップ装置1では、使用期間が長期に及んだ場合にも閉弁時の高いシール性を維持することができる。
【0046】
また、本実施形態に係るトラップ装置1では、正六面体の外観形状を有するフロート20を備えるので、同じ容積および同じ肉厚の球形状のフロート(例えば、
図8のフロート91)を備える場合に比べて、フロート20の寸法(寸法W1,W2およびZ方向の寸法)を小さくすることができる。即ち、球形状のフロート91と正六面体形状のフロート20において、容積が同じであるとし、フロート91の外径をD、フロート20の一辺の長さ(リブ20rを除く長さ)をXとするとき、次の関係を満たす。
(4π/3)×(D/2)
3=X
3 ・・(2)
上記関係式(2)より、DとXとの関係は次のようになる。
0.806D=X ・・(3)
上記関係式(3)より、フロート91の肉厚とフロート20の肉厚とが等しいとする場合に、同じ容積の内空間を確保するには、正六面体形状のフロート20の一辺の長さを球形状のフロート91の外径寸法Dよりも約20%小さくできる。よって、トラップ装置1では、フロート20のサイズ(寸法W1,W2およびZ方向の寸法)を従来技術のような球形状のフロート91の外径寸法Dよりも小さくでき、これに伴って、ケーシング10のサイズについても小さくすることができる。
【0047】
また、本実施形態に係るトラップ装置1では、フロート20における上面20aおよび4面の側面20bにリブ20rが設けられているので、収容室10aに導入される蒸気などからの圧力に対してもフロート20の変形や破損を抑制することができる。即ち、トラップ装置1では、外面が6つの平面で構成される六面体のフロート20を採用することで上記のような効果を得ながら、フロート20の変形や破損を抑制して正確な動作が確保される。
【0048】
以上のように、本実施形態に係るトラップ装置1では、製造コストの上昇を抑えながら、使用期間の長短にかかわらず閉弁時における高いシール性を確保することができる。
【0049】
[変形例1]
変形例1に係るトラップ装置について、
図4(a)を用いて説明する。なお、
図4(a)では、本変形例1に係るトラップ装置と上記実施形態に係るトラップ装置1との差異点であるフロート120のみを図示しており、他の構成の図示を省略している。また、以下では、上記実施形態との共通部分についての説明を省略する。
【0050】
図4(a)に示すように、フロート120は、上記実施形態のフロート20と同様に、正六面体の外観形状を有するとともに、内部の中空部120sに錘120wが収容されている。中空部120sは、立方体または直方体の空間である。そして、錘120wは、中空部120sに面する内面の内のZ方向下側の下壁内面120dに接合されている。
【0051】
なお、下壁内面120dへの錘120wの接合方法については、特に限定はないが、収容室10a内に導入される流体の温度に対しても接合状態が維持可能な方法(例えば、溶接など)を採用することが必要となる。
【0052】
本変形例のフロート120においても、上面120aおよび4面の側面120b(外面における下面120cを除く領域)に複数のリブ120rが設けられている。
【0053】
本変形例に係るトラップ装置では、上記実施形態に係るトラップ装置1と同じ効果を得ることができる。また、本変形例に係るトラップ装置では、錘120wを有するフロート120を採用することにより、次のような効果をさらに得ることができる。
【0054】
本変形例に係るトラップ装置では、錘120wを有するフロート120を採用することで、フロート120の重心を高さ中心(Z方向の寸法における中心)よりも下方にオフセットすることができる。これより、収容室10a内の復水の量に応じてフロート120が下降して行く際には、錘120wが設けられた側をZ方向下方に向けた姿勢が維持される。よって、フロート120における下面120cが弁座10iにおける平面部分10kに対して平行な状態を維持しながらフロート120を下降させることが可能である。よって、フロート120が下降端まで下降した状態で、フロート120の下面120cと弁座10iの平面部分10kとを確実に面接触させることができ、閉弁時の高いシール性を確保することができる。
【0055】
[変形例2]
変形例2に係るトラップ装置について、
図4(b)を用いて説明する。なお、
図4(b)では、本変形例2に係るトラップ装置と上記実施形態に係るトラップ装置1との差異点であるフロート220とケーシング210の弁座210iとを抜き出して図示しており、他の構成の図示を省略している。また、以下では、上記実施形態との共通部分についての説明を省略する。
【0056】
図4(b)に示すように、本変形例に係るトラップ装置では、弁座210iがケーシングの側壁内面(図示を省略。)の下端部から斜め上方に向けて突設形成されている。本変形例では、一例として30°~60°(具体的には、45°)の範囲の角度だけ傾いて形成されている。弁座210iにおける弁孔210eは、弁座210iの突設方向に沿って形成され、弁孔210eの開口210の周辺は、上記実施形態と同様に平面で構成されている(平面部分210k)。
【0057】
フロート220は、正六面体の外観形状を有するが、上記実施形態のフロート20に対して収容室10a内での姿勢が異なる。具体的には、フロート220は、弁座210iの平面部分210kに対して面接触可能な下面220cがZ方向に沿う軸に対して30°~60°だけ傾いた面で構成されている。そして、フロート220は、上面220aと上面220bとの境界である角部220gがフロート220のZ方向上端に位置し、下面220cと下面220eとの境界である角部220hがフロート220のZ方向下端に位置するように配されている。
【0058】
フロート220の中空部220sにも、上記変形例1と同様に、錘220wが収容されている。錘220wは中空部220sにおけるZ方向下部に収容されており、下壁内面220dの一部および下壁内面220fの一部に接合されている。なお、本変形例においても、錘220wの接合方法は特に限定されないが、収容室内に導入される流体の温度に対して接合状態が維持可能な方法(例えば、溶接など)を採用することが必要となる。
【0059】
本変形例のフロート220においても、上面220a,220bおよび下面220d(外面における下面220cを除く領域)に複数のリブ220rが設けられている。
【0060】
本変形例に係るトラップ装置では、上記変形例1に係るトラップ装置と同じ効果を得ることができる。また、本変形例に係るトラップ装置では、フロート220を
図4(b)に示すような傾斜姿勢とすることにより、次のような効果をさらに得ることができる。
【0061】
本変形例に係るトラップ装置では、フロート220の下面220cをZ方向に直交する面に平行な面ではなく、
図4(b)に示すように、Z方向に沿う軸に対して30°~60°傾く平面となるようにフロート220の姿勢を設定しているので、復水の量に応じて弁孔210eが閉弁された状態から開弁する際に必要となる浮力を小さく抑えることができる。例えば、下面220cがZ方向に沿う軸に対して45°傾く姿勢でフロート220を配する場合には開弁時に必要とされるZ方向の力を、(1/√2)に小さくすることができる。
【0062】
[変形例3]
変形例3に係るトラップ装置3の構成について、
図5を用いて説明する。なお、
図5(a)、(b)では、本変形例3に係るトラップ装置3と上記実施形態に係るトラップ装置1との差異点であるフロート320とケーシング310の一部とを抜き出して図示しており、他の構成の図示を省略している。また、以下では、上記実施形態との共通部分についての説明を省略する。
【0063】
図5(a)、(b)に示すように、フロート320は、六面体(一例として、正六面体)の外観形状を有する。そして、上面320aおよび4面の側面320bには、複数のリブ320rが形成されている。Z方向下側を向く下面320cにはリブは設けられていない。
【0064】
本変形例のフロート320においても、下面320cはZ方向に沿う軸に直交する面で構成されており、弁座の平面部分(バルブシート)に対して面接触可能である。即ち、フロート320の下面320cは、弁座の平面部分と平行であって、フロート320が下降端まで下降した状態でバルブシートに面接触して弁孔の開口を閉じる。
【0065】
ケーシング310は、収容室310aに面する4面の側壁内面310gのそれぞれに形成された案内溝310lを有する。各案内溝310lは、Z方向に延び、各壁の厚み方向内側に向けて凹入するように設けられている。なお、
図5(a)では、図示の都合上、3条の案内溝310lのみを図示している。
【0066】
図5(a)、(b)に示すように、フロート320の4面の側面320bのそれぞれは、Z方向に延び、ケーシング310の案内溝310lに填まり込むように突設形成された4条の線状凸部320iを有する。各線状凸部320iは、側面320bに設けられたリブ320rよりも横断面方向の外側に向けて突出するように形成されている。これより、線状凸部320iが案内溝310lに填まり込んだ状態においても、側面320bのリブ320rはケーシング310の側壁内面310gに対して隙間を空けて配されている。
【0067】
本変形例に係るトラップ装置3では、上記実施形態に係るトラップ装置1と同じ効果を得ることができる。また、本変形例に係るトラップ装置3では、ケーシング310の側壁内面310gに案内溝310lを設け、フロート320の側面320bの線状凸部320iを設けることにより、次のような効果をさらに得ることができる。
【0068】
本変形例に係るトラップ装置3では、ケーシング310の側壁内面310gに案内溝310lを設け、フロート320の側面320bに線状凸部320iを設けることにより、
図5(a)、(b)に示すように案内溝310lに線状凸部320iが填まり込み、案内溝310lに沿って線状凸部320iが摺動する。よって、トラップ装置3では、フロート320の上下動の際に、案内溝310lと線状凸部320iとの組み合わせでフロート320の案内機構が構成され、フロート320の姿勢の乱れを抑制することができる。これより、トラップ装置3では、フロート320が下降端まで下降した状態で、フロート320の下面320cと弁座の平面部分とを確実に面接触させることができ、閉弁時の高いシール性を確保することができる。
【0069】
なお、本変形例では、ケーシング310の側壁内面310gに案内溝310lを設け、フロート320の側面320bに線状凸部320iを設けることとしたが、逆に、ケーシングの側壁内面に線状凸部を設け、フロートの側面に案内溝を設けることにしてもよい。
【0070】
また、上記変形例2のようにフロートの下面がZ方向に沿う軸に対して30°~60°傾くようにフロートの姿勢を設定する場合においても、同様に案内溝と線状凸部とで構成される案内機構を設けることで同様の効果を得ることができる。
【0071】
[変形例4]
変形例4に係るトラップ装置について、
図6(a)を用いて説明する。なお、
図6(a)では、本変形例4に係るトラップ装置と上記実施形態に係るトラップ装置1との差異点であるフロート420のみを図示しており、他の構成の図示を省略している。また、以下では、上記実施形態との共通部分についての説明を省略する。
【0072】
図6(a)に示すように、フロート420は、球形状のフロート本体421と平板部材422とを備える。フロート本体421は、内部に中空部を有する(図示を省略)。平板部材422は、例えば金属材料から形成された平板状の部材である。
【0073】
平板部材422は、球形状を有するフロート421のZ方向下端に接合されている。フロート本体421への平板部材422の接合方法については、特に限定はないが、例えば、溶接を採用することができる。
【0074】
ここで、平板部材422の下面であるフロート420の下面420cは、弁座の平面部分(
図3(a)を参照。)に対して平行となるように形成され、フロート420が下降端まで下降した際に弁座の平面部分に面接触して、弁孔の開口を閉じる。
【0075】
本変形例に係るトラップ装置は、上述のような構成のフロート420を備える点で上記実施形態と異なるが、上記実施形態に係るトラップ装置1と同様の効果を得ることができる。
【0076】
なお、本変形例に係るトラップ装置において、上記変形例1におけるフロートの構成や、上記変形例3におけるフロートおよびケーシングの構成を採用することもできる。ただし、本変形例では、フロート本体421の下端に平板部材422を接合しているので、重心がフロート本体421の中心よりもZ方向下側にオフセットされ、敢えて錘を設けたり案内機構を設けたりしなくても下降時におけるフロート420の姿勢を安定させることが可能である。
【0077】
[変形例5]
変形例5に係るトラップ装置について、
図6(b)を用いて説明する。なお、
図6(b)では、本変形例5に係るトラップ装置と上記実施形態に係るトラップ装置1との差異点であるフロート520のみを図示しており、他の構成の図示を省略している。また、以下では、上記実施形態との共通部分についての説明を省略する。
【0078】
図6(b)に示すように、フロート520も、上記変形例4のフロート420と同様に、球形状のフロート本体421と平板部材422とを備える。平板部材422は、球形状を有するフロート421のZ方向下端ではなく、下面520がZ方向に沿う軸に対して30°~60°(一例として、45°)傾いた面で構成されるように斜め下の箇所に接合されている。
【0079】
本変形例のフロート520は、例えば、上記変形例2のケーシング(
図4(b)を参照。)と組み合わせて用いることができる。このような組み合わせで用いることにより、平板部材422の下面であるフロート520の下面520cは、弁座の平面部分に対して面接触可能とすることができる。
【0080】
本変形例に係るトラップ装置は、上述のような構成のフロート520を備える点で上記実施形態や上記変形例2と異なるが、上記実施形態に係るトラップ装置1や上記変形例2に係るトラップ装置と同様の効果を得ることができる。なお、上記変形例1,2のようにフロート520の中空部に錘を設けたり、上記変形例3のようにフロート520とケーシングの側壁内面とに案内機構を設けたりすることで、下降時におけるフロート520の姿勢を安定させることができる。
【0081】
[変形例6]
変形例6に係るトラップ装置について、
図6(c)を用いて説明する。なお、
図6(c)では、本変形例6に係るトラップ装置と上記実施形態に係るトラップ装置1との差異点であるフロート620のみを図示しており、他の構成の図示を省略している。また、以下では、上記実施形態との共通部分についての説明を省略する。
【0082】
図6(c)に示すように、フロート620は、球形状の一部(Z方向下端部分)が切り取られた外観形状を有する。なお、フロート620の下面620cは、外周縁が球形状の部分の端縁と気密接合されている。フロート620は、内部に中空部を有し、外殻が例えば金属材料から形成されている。
【0083】
ここで、フロート620の下面620cは、弁座の平面部分(
図3(a)を参照。)に対して平行となるように形成され、フロート620が下降端まで下降した際に弁座の平面部分に面接触して、弁孔の開口を閉じる。
【0084】
本変形例に係るトラップ装置は、上述のような構成のフロート620を備える点で上記実施形態と異なるが、上記実施形態に係るトラップ装置1と同様の効果を得ることができる。
【0085】
なお、本変形例に係るトラップ装置において、上記変形例1におけるフロートの構成や、上記変形例3におけるフロートおよびケーシングの構成を採用することもできる。また、下面620cを構成する部分の肉厚を他の曲面部分の肉厚よりも厚くすることで、Z方向における寸法中心よりも重心をZ方向下側にオフセットされた構成としてもよい。
【0086】
[変形例7]
変形例7に係るトラップ装置について、
図6(d)を用いて説明する。なお、
図6(d)では、本変形例7に係るトラップ装置と上記実施形態に係るトラップ装置1との差異点であるフロート720のみを図示しており、他の構成の図示を省略している。また、以下では、上記実施形態との共通部分についての説明を省略する。
【0087】
図6(d)に示すように、フロート720も、上記変形例6のフロート620と同様に、球形状の一部(Z方向下端部分)が切り取られた外観形状を有する。また、フロート720の下面720cも、外周縁が球形状の部分の端縁と気密接合されている。
【0088】
フロート720では、下面720cがZ方向に直交する面で構成されるのではなく、Z方向に沿う軸に対して30°~60°(一例として、45°)傾いた面で構成されている。
【0089】
本変形例のフロート720についても、上記変形例5と同様に、例えば、上記変形例2のケーシング(
図4(b)を参照。)と組み合わせて用いることができる。このような組み合わせで用いることにより、下面720cは、弁座の平面部分に対して面接触可能とすることができる。
【0090】
本変形例に係るトラップ装置は、上述のような構成のフロート720を備える点で上記実施形態や上記変形例6と異なるが、上記実施形態に係るトラップ装置1や上記変形例6に係るトラップ装置と同様の効果を得ることができる。なお、上記変形例1,2のようにフロート720の中空部に錘を設けたり、上記変形例3のようにフロート720とケーシングの側壁内面とに案内機構を設けたりすることで、下降時におけるフロート720の姿勢を安定させることができる。
【0091】
[変形例8]
変形例8に係るトラップ装置の構成について、
図7を用いて説明する。なお、
図7では、本変形例8に係るトラップ装置と上記実施形態に係るトラップ装置1との差異点であるフロート820のみを図示しており、他の構成の図示を省略している。また、以下では、上記実施形態との共通部分についての説明を省略する。
【0092】
図7に示すように、本変形例のフロート820は、それぞれが正六面体の外観形状を有し、互いに接合(矢印B1,B2)された8つのピース821~828によって構成されている。8つのピース821~828のそれぞれは、一部の外面にリブ821r,822r,824r,825r,826r,827r,828rが形成されている。なお、各ピース821~828の各接合面821a,822a,823a,824a,825a,828aおよびフロート820の下面となる面(ピース823,824,827,828の下面)823b,824b,827b,828bにはリブは設けられていない。
【0093】
本変形例に係るトラップ装置では、8つのピース821~828を接合してなるフロート820を備える点で上記実施形態とは異なるが、上記実施形態に係るトラップ装置1と同様の効果を得ることができる。即ち、変形例8のフロート820においても、ピース823,824,827,828の下面82b,824b,827b,828bで構成されるフロート820の下面がZ方向に直交する方向に延びる面であり、弁座の平面部分(
図3(a)を参照。)に対して平行となるように形成されている。よって、本変形例に係るトラップ装置でも、フロート820が下降端まで下降した際に弁座の平面部分に面接触して、閉弁時における高いシール性を確保することができる。
【0094】
また、本変形例に係るトラップ装置では、複数のピース821~828を接合することにより形成されたフロート820を採用するので、ピースの組み合わせ態様によって種々の六面体形状(正六面体、一方向に長い六面体、一方向に扁平な六面体など)を構成することができる。よって、複数のピースを接合することでフロートを構成する場合には、要求仕様に応じたトラップ装置を形成することが可能となる。
【0095】
また、本変形例のフロート820は、複数のピース821~828が接合された構成を有するため、内部に各ピース821~828の壁によって構成される仕切壁が形成される。よって、フロート820の高い剛性を実現することができ、収容室に導入される蒸気の圧力に対する耐性を確保することができる。
【0096】
[その他の変形例]
上記実施形態および上記変形例1~8では、スクリーン30、エアベント40、およびエアベントプラグ50を備えるトラップ装置1,3を採用したが、本発明では、スクリーン30、エアベント40、およびエアベントプラグ50は必須の構成ではない。
【0097】
また、上記実施形態および上記変形例1~3,8では、外面の一部にそれぞれX字形状をしたリブ20r,120r,220r,320r,821r,822r,824r,825r,826r,827r,828rを有するフロート20,120,220,320,820を採用することとしたが、本発明では、リブの形状はX字形状に限定されるものではない。例えば、フロートの外面における外辺に沿って延びる直線状のリブや、平面視円形のリブなどを採用することもできる。
【0098】
また、上記実施形態および上記変形例1~3,8では、正六面体のフロート20,120,220,320,820を採用することとしたが、本発明では、Z方向に長い直方体やZ方向に扁平な直方体など種々の六面体のフロートを採用することができる。
【0099】
また、上記実施形態および上記変形例1~8では、フロート20,120,220,320,420,520,620,720およびピース821~828の具体的な形成方法については、特に言及しなかったが、種々の方法で形成することができる。例えば、金属板材同士を溶接や接着剤などで接合することで形成してもよいし、AM法(Aditive Manufacturing法)を用いて形成してもよい。
【0100】
また、上記実施形態および上記変形例1~8では、弁孔10e,210eと流出部10cとを内部連通路10hで繋ぐこととしたが、本発明では、必ずしもこれに限定を受けない。例えば、ケーシング10,210の側壁外部に配設されたパイプなどで弁孔の開口と流出部とを繋いでもよい。
【符号の説明】
【0101】
1,3 トラップ装置
10,210,310 ケーシング
10e,210e 弁孔
10i,210i 弁座
10j,210j 開口
10k,210k 平面部分(バルブシート)
20,120,320,420,520,620,720,820 フロート
20c,220c,320c,420c,520c,620c,720c 下面
20r,120r,220r,320r,821r,822r,824r,825r,826r,827r,828r リブ
120w,220w 錘
310l 案内溝
320i 線状凸部
【手続補正書】
【提出日】2024-02-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気を含む流体から復水を排出するトラップ装置であって、
前記流体の流入部、前記復水の流出部、および前記流入部から導入される前記流体を収容する収容部を有するケーシングと、
前記ケーシングの前記収容室に収容され、当該収容室内の前記復水の量に応じて上下動可能なフロートと、
を備え、
前記フロートは、当該フロートの下面が前記ケーシングの底壁内面および側壁内面に対して斜めとなるように斜め下方を向く姿勢をもって前記収容室に収容されているとともに、前記姿勢を維持した状態で前記収容室内を上下動可能であり、
前記ケーシングは、前記流出部と前記収容室とを連通する連通路と、当該ケーシングの前記側壁内面から前記収容室に向けて斜め上方に突出形成された弁座と、前記連通路における前記収容室側の端部であって、前記弁座の先端部で前記収容室に開口する弁孔と、をさらに有し、
前記弁座における前記弁孔の開口周辺は、平面で構成されており、
前記フロートの前記下面は、前記弁座における前記弁孔の開口周辺と平行であって、当該フロートが下降端に位置する状態で前記開口周辺と面接触可能な平面で構成されている、
トラップ装置。
【請求項2】
前記フロートは、上下方向の高さ中心よりも重心が下方にオフセットするように設けられた錘を有する、
請求項1に記載のトラップ装置。
【請求項3】
前記ケーシングの前記側壁内面および前記フロートにおける前記側壁内面に対向する外面の内の一方の面は、他方の面に向けて突出するとともに、上下方向に延びるように形成された線状凸部を有し、
前記ケーシングの前記側壁内面および前記フロートにおける前記側壁内面に対向する外面の内の他方の面は、前記線状凸部の填まり込みを許容するとともに、上下方向に延びるように形成された案内溝を有する、
請求項1に記載のトラップ装置。
【請求項4】
前記フロートは、六面体の外観形状を有するように形成され、前記下面における前記弁座との接触領域を除く部分にリブを有する、
請求項1から請求項3の何れかに記載のトラップ装置。
【請求項5】
前記フロートは、それぞれが六面体の外観形状を有し、互いに接合された複数のピースを有する、
請求項4に記載のトラップ装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の一態様に係るトラップ装置は、蒸気を含む流体から復水を排出するトラップ装置であって、ケーシングとフロートとを備える。前記ケーシングは、前記流体の流入部、前記復水の流出部、および前記流入部から導入される前記流体を収容する収容部を有する。前記フロートは、前記ケーシングの前記収容室に収容され、当該収容室内の前記復水の量に応じて上下動可能である。
本態様に係るトラップ装置において、前記フロートは、当該フロートの下面が前記ケーシングの底壁内面および側壁内面に対して斜めとなるように斜め下方を向く姿勢をもって前記収容室に収容されているとともに、前記姿勢を維持した状態で前記収容室内を上下動可能である。
本態様に係るトラップ装置において、前記ケーシングは、前記流出部と前記収容室とを連通する連通路と、当該ケーシングの前記側壁内面から前記収容室に向けて斜め上方に突出形成された弁座と、前記連通路における前記収容室側の端部であって、前記弁座の先端部で前記収容室に開口する弁孔と、をさらに有する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本態様に係るトラップ装置において、前記フロートの前記下面は、前記弁座における前記弁孔の開口周辺と平行であって、当該フロートが下降端に位置する状態で前記開口周辺と面接触可能な平面で構成されている。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
蒸気を含む流体から復水を排出するトラップ装置であって、
前記流体の流入部、前記復水の流出部、および前記流入部から導入される前記流体を収容する収容室を有するケーシングと、
前記ケーシングの前記収容室に収容され、当該収容室内の前記復水の量に応じて上下動可能なフロートと、
を備え、
前記フロートは、当該フロートの下面が前記ケーシングの底壁内面および側壁内面に対して斜めとなるように斜め下方を向く姿勢をもって前記収容室に収容されているとともに、前記姿勢を維持した状態で前記収容室内を上下動可能であり、
前記ケーシングは、前記流出部と前記収容室とを連通する連通路と、当該ケーシングの前記側壁内面から前記収容室に向けて斜め上方に突出形成された弁座と、前記連通路における前記収容室側の端部であって、前記弁座の先端部で前記収容室に開口する弁孔と、をさらに有し、
前記弁座における前記弁孔の開口周辺は、平面で構成されており、
前記フロートの前記下面は、前記弁座における前記弁孔の開口周辺と平行であって、当該フロートが下降端に位置する状態で前記開口周辺と面接触可能な平面で構成されている、
トラップ装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の一態様に係るトラップ装置は、蒸気を含む流体から復水を排出するトラップ装置であって、ケーシングとフロートとを備える。前記ケーシングは、前記流体の流入部、前記復水の流出部、および前記流入部から導入される前記流体を収容する収容室を有する。前記フロートは、前記ケーシングの前記収容室に収容され、当該収容室内の前記復水の量に応じて上下動可能である。
本態様に係るトラップ装置において、前記フロートは、当該フロートの下面が前記ケーシングの底壁内面および側壁内面に対して斜めとなるように斜め下方を向く姿勢をもって前記収容室に収容されているとともに、前記姿勢を維持した状態で前記収容室内を上下動可能である。
本態様に係るトラップ装置において、前記ケーシングは、前記流出部と前記収容室とを連通する連通路と、当該ケーシングの前記側壁内面から前記収容室に向けて斜め上方に突出形成された弁座と、前記連通路における前記収容室側の端部であって、前記弁座の先端部で前記収容室に開口する弁孔と、をさらに有する。