(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129996
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】複合仮撚加工糸およびその製造方法および布帛
(51)【国際特許分類】
D02G 1/02 20060101AFI20240920BHJP
D01F 6/62 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
D02G1/02 B
D01F6/62 301K
D01F6/62 306A
D01F6/62 306P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039451
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】長尾 英治
(72)【発明者】
【氏名】尾形 暢亮
(72)【発明者】
【氏名】米田 泰之
【テーマコード(参考)】
4L035
4L036
【Fターム(参考)】
4L035AA05
4L035BB31
4L035DD15
4L035DD20
4L035EE20
4L036MA05
4L036MA33
4L036MA39
4L036PA07
4L036PA42
4L036RA04
4L036UA21
(57)【要約】
【課題】単繊維繊度が小さいにも関わらず、複合仮撚加工時に糸切れが少なく、高い伸度を有するポリトリメチレンテレフタレート繊維が鞘側に交互反転状に巻き付いた複合仮撚加工糸およびその製造方法および布帛を提供する。
【解決手段】芯糸に鞘糸が交互反転状に巻き付いてなる複合仮撚加工糸であって、芯糸がポリエステル系繊維からなり、鞘糸が単繊維繊度0.3~3.2dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維からなり、総繊度が30~400dtex、かつ捲縮率が10%以上であることを特徴とする複合仮撚加工糸。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯糸に鞘糸が交互反転状に巻き付いてなる複合仮撚加工糸であって、芯糸がポリエステル系繊維からなり、鞘糸が単繊維繊度0.3~3.2dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維からなり、総繊度が30~400dtex、かつ捲縮率が10%以上であることを特徴とする複合仮撚加工糸。
【請求項2】
鞘糸の被覆率が60%以上である、請求項1に記載の複合仮撚加工糸。
【請求項3】
異型断面繊維を含む、請求項1に記載の複合仮撚加工糸。
【請求項4】
伸度10~60%の芯糸用糸条と、伸度70~200%の鞘糸用糸条とを引き揃えて空気加工後に仮撚加工を施してなる、請求項1に記載の複合仮撚加工糸。
【請求項5】
請求項1に記載の複合仮撚加工糸の製造方法であって、鞘糸用糸条として、下記(A)~(E)の要件を同時に満足するポリトリメチレンテレフタレート繊維を用いて複合仮撚加工したものである、複合仮撚加工糸の製造方法。
(A)繊維の温度-熱応力曲線において、温度40~100℃の範囲に熱応力の極大値が存在する。
(B)(A)の熱応力の極大値が0.1~0.8cN/dtexである。
(C)破断伸度が70~200%である。
(D)伸度10~30%におけるもっとも低い弾性率が0.1~2cN/dtexである。
(E)複屈折率(Δn)が0.03以上、かつ0.08以下であり、かつ比重が1.319以上、かつ1.340以下である。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の複合仮撚加工糸を含む布帛。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単繊維繊度が小さいにもかかわらず、複合仮撚加工時に糸切れが少なく、高い伸度を有するポリトリメチレンテレフタレート繊維が鞘側に交互反転状に巻き付いた複合仮撚加工糸およびその製造方法および布帛を提供する。
【背景技術】
【0002】
テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルに代表されるテレフタル酸の低級アルコールエステルと、トリメチレングリコール(1,3-プロパンジオール)を重縮合させて得られるポリトリメチレンテレフタレート(以下「PTT」と略す)は、それを用いた繊維が低弾性率(ソフトな風合い)、優れた弾性回復性、易染性といったポリアミドに類似した性質と、耐光性、熱セット性、寸法安定性、低吸水率といったポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略す)繊維に類似した性能を併せ持つ優れたポリマーであり、その特徴を生かしてスポーツ用、ファッション用の布帛の他、BCFカーペット、ブラシ、テニスガット等に広く使用されている。
【0003】
そして、PTT繊維の上記の特性を最大限に生かせる繊維形態の一つとして芯糸と鞘糸からなる複合仮撚加工糸がある。PTT繊維を鞘糸とした複合仮撚加工糸は、例えばPET繊維等のポリエステル繊維に比較してソフト性に富む。
【0004】
しかしながら、上記のようなPTT繊維を鞘糸に用いた複合仮撚加工糸はソフト性に優れるものの、複合仮撚加工の鞘糸にPTT延伸糸を用いる場合、紡糸、延伸工程を経て製造する延伸糸であるため伸度が小さく、複合仮撚加工時に鞘糸が交互反転状に巻き付く構造加工糸を作ることはできないため、風合いがソフトになりにくく、かつ芯糸との染着差が目立つため、風合い、外観とも優れたものにはならなかった。
【0005】
一方、1段階の工程で製造したPTTの部分配向繊維(以下「PTT-POY」と略す)に関する技術としては、「ChemicalFibers International」47巻、1997年2月発行、72~74頁(非特許文献1)に開示があり、この非特許文献には、ポリマーを押出して冷却固化した後、仕上げ剤を付与し、ゴデットロールを用いず、あるいは冷たいゴデットロールを介した後、3000~6000m/分で巻き取った繊維が開示されている。
【0006】
また、特開平11-229276号公報(特許文献1)には、特定の仕上げ剤を付与し、3300m/分で巻き取ったPTT-POYが開示されている。さらに、国際公開第1999/39041号パンフレット(特許文献2)には、特定の仕上げ剤を付与し、3500m/分で巻き取ったPTT-POYが開示されている。
【0007】
しかしながら、本発明者らの検討によると、これらのPTT-POYは、繊維を巻き取った糸管上で糸が大きく収縮して糸管を締め付けるために糸管が変形したり、このような変形を防止するために、強度の大きい糸管を使って糸管の変形を抑えたとしても、パッケージ側面が膨れる、バルジと呼ばれる現象が見られたり、チーズの内層で糸が堅く締まり、チーズ状パッケージから糸を解舒する時の張力が高くなると共に、張力変動も大きくなり、仮撚加工時に毛羽、糸切れが多発したり、倦縮むらや染色むらが発生したりするという問題があった。
【0008】
このような課題を解決するため、特開2001-254226号公報(特許文献3)では、巻取り前に熱をかけ歪を小さくする検討が行われている。また特開2015-7306号公報(特許文献4)では2500m/分より低い紡速での部分配向糸の検討がなされている。さらに、特開2001-348729号公報(特許文献5)では、紡速4500~8000m/分で引き取り、熱応力のピーク温度とピーク値を特定の範囲に制御することが示されている。
しかしながら、かかる部分配向糸を用いて複合仮撚加工糸を得ようとしても、鞘糸が交互反転状に巻き付いた複合仮撚加工糸を得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11-229276号公報
【特許文献2】国際公開第1999/39041号パンフレット
【特許文献3】特開2001-254226号公報
【特許文献4】特開2015-7306号公報
【特許文献5】特開2001-348729号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「ChemicalFibers International」、47巻、1997年2月発行、第72~74頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、単繊維繊度が小さいにもかかわらず、複合仮撚加工時に糸切れが少なく、高い伸度を有するポリトリメチレンテレフタレート繊維が鞘側に交互反転状に巻き付いた複合仮撚加工糸およびその製造方法および布帛を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、芯糸に鞘糸が交互反転状に巻き付いてなる複合仮撚加工糸を製造する際、特定条件で得られたポリトリメチレンテレフタレート繊維を鞘部用糸条として用いることにより、単繊維繊度が小さいにもかかわらず、複合仮撚加工時に糸切れが少なく、高い伸度を有するポリトリメチレンテレフタレート繊維が鞘側に交互反転状に巻き付いた構造となっている複合仮撚加工糸が得られることを見出し、さらに鋭意検討することにより本発明を完成するに至った。すなわち本発明によれば、以下の発明が提供される。
【0013】
1.芯糸に鞘糸が交互反転状に巻き付いてなる複合仮撚加工糸であって、芯糸がポリエステル系繊維からなり、鞘糸が単繊維繊度0.3~3.2dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維からなり、総繊度が30~400dtex、かつ捲縮率が10%以上であることを特徴とする複合仮撚加工糸。
2.鞘糸の被覆率が60%以上である、上記1に記載の複合仮撚加工糸。
3.異型断面繊維を含む、上記1または2に記載の複合仮撚加工糸。
4.伸度10~60%の芯糸用糸条と、伸度70~200%の鞘糸用糸条とを引き揃えて空気加工後に仮撚加工を施してなる、上記1~3のいずれかに記載の複合仮撚加工糸。
5.上記1に記載の複合仮撚加工糸の製造方法であって、鞘糸用糸条として、下記(A)~(E)の要件を同時に満足するポリトリメチレンテレフタレート繊維を用いて複合仮撚加工したものである、複合仮撚加工糸の製造方法。
(A)繊維の温度-熱応力曲線において、温度40~100℃の範囲に熱応力の極大値が存在する。
(B)(A)の熱応力の極大値が0.1~0.8cN/dtexである。
(C)破断伸度が70~200%である。
(D)伸度10~30%におけるもっとも低い弾性率が0.1~2cN/dtexである。
(E)複屈折率(Δn)が0.03以上、かつ0.08以下であり、かつ比重が1.319以上、かつ1.340以下である。
6.上記1~4のいずれかに記載の複合仮撚加工糸を含む布帛。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば単繊維繊度が小さいにもかかわらず、複合仮撚加工時に糸切れが少なく、高い伸度を有するポリトリメチレンテレフタレート繊維が鞘側に交互反転状に巻き付いた複合仮撚加工糸およびその製造方法および布帛を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】繊維の温度-熱応力曲線における、熱応力の極大値を説明するための模式図である。
【
図2】伸度が10~30%におけるもっとも低い弾性率の測定方法を説明するための模式図である。
【
図3】異型断面繊維において、異型度の例を示した模式図である。
【
図4】扁平断面繊維において、扁平度の例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細を説明する。本発明の複合仮撚加工糸において、特許第48054436号公報の
図1に記載されているように、芯糸に鞘糸が交互反転状に巻き付いており、芯糸がポリエステル系繊維からなり、鞘糸が単繊維繊度0.3~3.2dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維からなる。
【0017】
鞘糸の単繊維繊度は0.3~3.2dtexであることが重要であり、好ましくは0.5~3.0dtex、さらに好ましくは0.6~2.4dtexである。該単繊維繊度が3.2dtexよりも大きい場合、単繊維が太いことによって布帛の柔らかさが失われるおそれがある。また該単繊維繊度が0.3dtexよりも小さい場合、糸切れが頻発し繊維を製造することができないおそれがある。鞘糸の単繊維数(フィラメント数)としては20~150本が好ましい。
【0018】
一方、芯糸のポリエステル系繊維としては、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートとがサイドバイサイド型もしくは偏芯芯鞘型に接合された複合繊維、ポリトリメチレンテレフタレートとポリトリメチレンテレフタレートとがサイドバイサイド型もしくは偏芯芯鞘型に接合された複合繊維、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートとがサイドバイサイド型もしくは偏芯芯鞘型に接合された複合繊維などが例示される。
かかる芯糸において、単繊維繊度は1.0~5.0dtexであることが好ましい。芯糸の単繊維数(フィラメント数)としては20~150本が好ましい。
【0019】
また、本発明の複合仮撚加工糸において、総繊度が30~400dtexであることが重要である。好ましくは50~200dtexである。該総繊度が30dtexよりも小さい場合は、仮撚捲縮加工が難しくなるおそれがある。一方、該総繊度が400dtexよりも大きい場合、布帛の柔らかさが失われるおそれがある。なお、複合仮撚加工糸の単繊維数(フィラメント数)としては、40~400本(より好ましくは40~200本)が好ましい。
【0020】
また、本発明の複合仮撚加工糸において、捲縮率が10%以上(より好ましくは15~40%)であることが重要である。該捲縮率が10%未満では伸度が低すぎて十分なストレッチ性が得られず好ましくない。
【0021】
また、本発明の複合仮撚加工糸において、ソフトな風合いを得る上で、また、芯糸と鞘糸の染着差を見えにくくする上で、鞘糸の被覆率が60%以上(より好ましくは60~90%)であることが好ましい。なお、かかる被覆率は、鞘糸面積/複合仮撚加工糸全体の面積を百分率で示したものである。
【0022】
また、本発明の複合仮撚加工糸の繊度変動値U%(ノーマル%)は2.0%以下であることが好ましい。該繊度変動値U%(ノーマル%)が2.0%を越える場合、仮撚捲縮加工時に毛羽や糸切れが多発し、染めムラや倦縮ムラの大きい複合仮撚加工糸になるおそれがある。特にU%は1.5%以下であることが好ましい。もちろんU%は低ければ低いほど良い。
【0023】
前記の繊度変動値U%(ノーマル%)は、ツェルベガーウスター株式会社製ウースターテスターUT-5により繊維試料の質量の変動より求めた値である。該装置では電極間に繊維試料を通した際の誘電率の変化により質量の変動を測定することができる。一定速度にて該装置を通すとむら曲線が得られる。この結果より繊度変動値U%(ノーマル%)を求めることができる。
【0024】
さらに、本発明の複合仮撚加工糸は、芯糸および/または鞘糸に丸断面以外の異型断面を有する単繊維(異型断面繊維)を含んでいてもよい。例えば、十字型断面、三角断面、または星形断面などの異型断面繊維から芯糸および/または鞘糸を構成することもできる。こうすれば独特の風合いを得ることができるので好ましい。ここで、異型断面繊維の異型度とは、
図3に示す通り、繊維断面の最大内接円径rと最小外接円径Rを測定して、異型度=R/rで算出した値であり、本発明においては、異型度=R/rの値は1.15~10.0が好ましく、1.2~10.0がさらに好ましい。該異型度が1.15未満では、丸断面との差が小さくなるおそれがある。また、異型度が10.0を越えると、紡糸時に糸断面形状外側と内側で配向差などが大きくなり、得られた糸は毛羽・タルミが多く、加工に適さないおそれがある。
【0025】
また、異型断面繊維として扁平断面繊維も好ましく例示される。扁平断面繊維を用いることにより独特の風合いを得ることができるので好ましい。ここで扁平断面繊維の扁平度とは、
図4に示す如く、繊維断面に外接する長方形を描き、その長辺Lと短辺Hを測定して、扁平度=L/Hで算出した値であり、本発明においては、扁平度=L/Hの値は2.0~10.0であることが好ましい。該扁平度が2.0未満では、丸断面との差が小さくなるおそれがある。また、該扁平度が10.0を越えると、紡糸時、毛羽が発生しやすくなり安定性が不良となるおそれがある。
【0026】
また、本発明の複合仮撚加工糸において、鞘糸のポリトリメチレンテレフタレート繊維が伸度70~200%、芯糸のポリエステル系繊維が伸度10~60%で、引き揃えられ空気加工(インターレース加工やタスラン(登録商標)加工)後に仮撚加工が施されていることが好ましい。鞘糸のポリトリメチレンテレフタレート繊維が伸度70%未満になる場合や芯糸のポリエステル系繊維の伸度が60%超になると複合仮撚加工後に鞘糸が巻き付き構造になり難く、芯糸と鞘糸の染着差が見えやすくなるおそれがある。
【0027】
本発明の複合仮撚加工糸は例えば、以下の方法により製造することができる。
(1)鞘糸用ポリマー原料
本発明において、鞘糸用ポリマーは、90モル%以上がトリメチレンテレフタレート繰返し単位から構成されるポリトリメチレンテレフタレート(PTT)である。ここでPTTとは、テレフタル酸を酸成分とし、トリメチレングリコール(1,3-プロパンジオールともいう)をジオール成分としたポリエステルである。該PTTには、10モル%以下で他の共重合成分を含有していてもよい。
【0028】
そのような共重合成分としては、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、5-カリウムスルホイソフタル酸、3,5-ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5-ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸トリブチルメチルホスホニウム塩、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、アジピン酸、ドデカン二酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等のエステル形成性モノマーが挙げられる。
【0029】
また、必要に応じて、各種の添加剤、例えば、艶消し剤、熱安定剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤などを共重合、または混合してもよい。
【0030】
前記に用いるポリマーの極限粘度[η]は0.7~1.5が好ましく、さらに好ましくは0.75~1.2である。この範囲で強度、紡糸性に優れた繊維を得ることができる。極限粘度が0.7未満の場合は、ポリマーの分子量が低すぎるため紡糸時や加工時の糸切れや毛羽が発生しやすくなるとともに、複合仮撚加工糸に要求される強度の発現が困難となるおそれがある。逆に極限粘度が1.5を越える場合は、溶融粘度が高すぎるために紡糸時にメルトフラクチャーや紡糸不良が生じるおそれがある。なお、極限粘度[η]は、発明の実施の形態の項で後述する測定値である。
【0031】
前記ポリマーの製法として、公知の方法をそのまま用いることができる。すなわち、テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルとトリメチレングリコールとを原料とし、チタンテトラブトキシド、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸コバルト、酢酸マンガン、二酸化チタンと二酸化ケイ素の混合物といった金属塩の1種あるいは2種以上を加え、常圧下あるいは加圧下で反応させ、次にチタンテトラブトキシド、酢酸アンチモンといった触媒を添加し、250~270℃で減圧下反応させる。重合の任意の段階で、好ましくは重縮合反応の前に、安定剤を入れることが白度の向上、溶融安定性の向上、PTTオリゴマーやアクロレイン、アリルアルコールといった分子量が300以下の有機物の生成を制御できる観点で好ましい。この場合の安定剤としては、5価または/および3価のリン化合物やヒンダードフェノール系化合物が好ましい。
【0032】
(2)鞘糸用ポリトリメチレンテレフタレート繊維の製造方法
本発明の複合仮撚糸の製造方法において、下記(A)~(E)の要件を同時に満足するポリトリメチレンテレフタレート繊維を鞘糸用に用いて複合仮撚加工することが好ましい。
(A)繊維の温度-熱応力曲線において、温度40~100℃の範囲に熱応力の極大値存在する
(B)(A)の熱応力の極大値が0.1~0.8cN/dtexである。
(C)破断伸度が70~200%である。
(D)伸度10~30%におけるもっとも低い弾性率が0.1~2cN/dtexである。
(E)複屈折率(Δn)が0.03以上、0.08以下であり、かつ比重が1.319以上1.340以下である。
【0033】
まず、ポリトリメチレンテレフタレート繊維は、繊維の温度-熱応力曲線において、温度40~100℃の範囲に熱応力の極大値が存在することが好ましい。ここで、熱応力の極大値とは、
図1に示す如く繊維の温度-熱応力曲線を描いた時、該温度-熱応力曲線の微分係数が正から負へ変化する点に対応する熱応力の値である。
【0034】
該熱応力の極大値が40℃よりも低い範囲にしかない場合、繊維が巻き取った後に大きく収縮し、巻締まりが発生してしまうおそれがある。また該熱応力の極大値が100℃よりも高い場合、結晶化度が高くなりすぎ、複合仮撚加工糸としても、ポリトリメチレンテレフタレート繊維に由来する柔らかな風合いは得られないおそれがある。該熱応力の極大値が存在する好ましい範囲は50℃を越え、100℃以下である。
【0035】
なお、該熱応力の極大値は、上述のように、温度40~100℃の範囲に存在していれば、例えば100℃を越える範囲にもう1ヶ所存在していてもよい。この際、100℃を越える範囲に存在する熱応力の極大値は、温度40~100℃の範囲に存在する熱応力の極大値より大きくても小さくても構わない。
【0036】
上記熱応力の極大値は0.1~0.8cN/dtexであることが好ましい。該熱応力の極大値が0.1cN/dtexよりも小さいと仮撚捲縮加工時の張力が下がり、捲縮が小さくなってしまうおそれがある。一方、該熱応力の極大値が0.8cN/dtexよりも大きい場合は仮撚捲縮加工時の張力が高くなりすぎ、糸切れの原因となったり、柔らかさが失われるおそれがある。熱応力の極大値のさらに好ましい範囲は0.13~0.5cN/dtexである。
【0037】
また、破断伸度は70~200%であることが好ましく、さらに好ましくは80~160%である。破断伸度が70%未満では伸度が低すぎるために、複合仮撚加工時に芯糸との伸度差がなく巻き付き構造にならず芯糸と鞘糸の染着差が見えやすくなるおそれがある。一方、破断伸度が200%を超える場合は、繊維の配向度が低すぎるために経時変化がしやすく、また室温で保管していても繊維が非常に脆くなってしまう。このため工業的に品質の一定した複合仮撚加工糸を安定して得られることができないおそれがある。
【0038】
さらに、ポリトリメチレンテレフタレート繊維の伸度10~30%におけるもっとも低い弾性率は0.1~2cN/dtexであることが好ましい。伸度10~30%におけるもっとも低い弾性率が0.1cN/dtexよりも小さな場合、仮撚捲縮加工時の張力が下がり、捲縮が小さくなってしまったり、糸加工の際に張力が安定せず染色斑の原因となるおそれがある。一方、該弾性率が2cN/dtexよりも大きくなった場合、仮撚捲縮加工時の張力が大きくなり、糸切れの原因となったり、柔らかさが失われるおそれがある。
【0039】
また複屈折率(Δn)は0.03以上、かつ0.08以下であることが好ましい。複屈折率(Δn)が0.03未満では複合仮撚工程において糸条が脆化して糸切れが多発し、複合仮撚加工が困難になる場合がある。一方、複屈折率(Δn)が0.08を超えると毛羽が多発するおそれがある。
【0040】
さらに比重は1.319以上、かつ1.340以下が好ましい。比重が1.319より小さい場合、複合仮撚工程において糸条が脆化して糸切れが多発し、複合仮撚加工が困難になるおそれがある。一方、比重が1.340をこえると毛羽が多発するおそれがある。
【0041】
このようなポリトリメチレンテレフタレート繊維は、溶融後固化したポリトリメチレンテレフタレート繊維(固体マルチフィラメント)を、1000m/分以上の引き取り速度で引き取ったのち、ポリトリメチレンテレフタレート繊維のガラス転移点±20℃の加熱ローラで加熱し、続いて0.90~3.0倍延伸を行い、70~150℃の加熱ローラに巻き付けたのち2200~4000m/分の速度で巻き取ることによって得られる。溶融後固化したポリトリメチレンテレフタレート繊維の引き取り速度が2200m/分よりも小さな場合、繊維の配向が低いために、繊維を室温付近で保存しておくと、繊維が脆くなり、繊維の取扱や延伸仮撚捲縮加工が困難となるおそれがある。
【0042】
一方、溶融後固化したポリトリメチレンテレフタレート繊維の引き取り速度が4000m/分を越える場合、伸度が低くなりすぎるために、紡糸時や仮撚捲縮加工時に毛羽や糸切れが発生しやすくなるおそれがある。
【0043】
(3)複合仮撚加工糸の製造方法
次いで、鞘糸用糸条として前記ポリトリメチレンテレフタレート繊維と、芯糸用糸条として伸度60%以下のポリエステル系繊維とを引き揃え、空気加工(インターレースまたはタスラン(登録商標))で交絡(好ましくは30~150個/m)し、ローラ、セット温度が90~220℃(より好ましくは100~190℃)の熱処理ヒーターを経由して撚り掛け装置によって施撚、ローラで引き取ることによりone heater複合仮撚加工糸を得てもよいし、必要に応じてさらに第2ヒーター域に導入して弛緩熱処理することによりsecond heater複合仮撚加工糸を得てもよい。仮撚加工時の延伸倍率は、0.05~0.3の範囲が好ましく、仮撚数は、仮撚数(T/m)=(32500/(Dtex)1/2)×αの式においてα=0.5~1.5が好ましく、通常は0.8~1.2位とするのがよい。ただし、Dtexとは糸条の総繊度である。用いる撚り掛け装置としては、ディスク式あるいはベルト式の摩擦式撚り掛け装置が糸掛けしやすく、糸切れも少なくて適当であるが、ピン方式の撚り掛け装置であってもよい。
【0044】
かくして得られた複合仮撚加工糸は、鞘糸の単繊維繊度が小さくても、仮撚加工の際の熱応力が生じることから、複合仮撚加工糸の捲縮が伸長される過程での弾性率が大きく、その結果、最大捲縮応力が大きく優れたストレッチバック性が得られ、さらにポリトリメチレンテレフタレート繊維からなる鞘糸が芯糸に巻き付いた構造になっているため風合いがソフトとなる。
【0045】
次いで、前記複合仮撚加工糸を用いて製編織することにより布帛を得た後、適宜、染色加工や吸汗加工を施して布帛を得てもよい。
その際、前記複合仮撚加工糸だけで布帛を構成してもよいが、前記複合仮撚加工糸と他の糸条とで布帛を構成してもよい。その際、他の糸条は特に限定されず、非捲縮糸、仮撚捲縮加工糸、潜在捲縮糸、紡績糸などのいずれであってもよい。
【0046】
布帛の組織は特に限定されず、編物、織物いずれでもよい。例えば、天竺、ニットミス、スムース、フライス、鹿の子、添え糸編、デンビー、ハーフなどの編組織を有する編物や、平織、綾織、サテンなどの織組織を有する織物などが例示されるが、これらに限定されるものではない。層数も単層でもよいし、2層以上の多層であってもよい。
【0047】
次いで、前記の布帛を用いて、スポーツウエアー、アウターウエアー、インナーウエアー、紳士衣料、婦人衣料、介護用衣料、作業衣、カーシート表皮材、寝具などの繊維製品としてもよい。
かかる布帛や繊維製品は前記の複合仮撚加工糸を用いているので、ソフトな風合いに優れる。
【実施例0048】
以下、本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
【0049】
(1)複屈折率(Δn)
繊維便覧-原料編、p.969(第5刷、1978年丸善株式会社発行)により、光学顕微鏡とコンペンセーターを用いて、繊維の表面に観察される偏光のリターデーションから求めた。
【0050】
(2)熱応力の極大値が存在する温度及び熱応力の極大値
鐘紡エンジニアリング社製のKE-2を用いた。初過重0.044cN/dtex、昇温速度100℃/分で測定した。得られたデーターは横軸に温度、縦軸に熱応力をプロットし温度-熱応力曲線を描く。該温度-熱応力曲線の微分係数が正から負へ変化する点の温度、熱応力を求め、応力については繊度で除し、最大応力を求めた。
【0051】
(3)破断伸度(繊維破断伸度)
JIS-L-1013に基づいて定速伸長形引張試験機であるオリエンテック(株)社製テンシロンを用いて、つかみ間隔20cm、引張速度20cm/分にて測定した。
【0052】
(4)捲縮性能
複合仮撚加工糸のサンプルを、0.044cN/dtexの張力下に、カセ枠に巻き取り、太さ約3300dtexのカセ(総)を作成した。このカセの一端に、0.00177cN/dtexおよび0.177cN/dtexの2個の荷重を負荷し、1分間経過後の長さS0(cm)を測定した。
次に、カセから0.177cN/dtexの荷重を除去した状態で、100℃の沸水中にて20分間処理した。沸水処理後、このカセから0.00177cN/dtexの荷重を除去し、24時間無荷重下自由な状態で自然乾燥し、このカセに再び0.00177cN/dtexおよび0.177cN/dtexの荷重を負荷し、1分間経過後の長さS1(cm)を測定した。
次にこのカセから0.177cN/dtexの荷重を除去し、1分間経過後の長さS2を測定し、次の算式で捲縮率を算出し、10回の測定値の平均値を算出した。
捲縮率(%)=[(S1-S2)/S0]×100
【0053】
(5)交絡数
インターレース加工糸を8.82mNx表示テックス(0.1g/dtex)の荷重下で1mの長さをとり、徐重後、室温で24時間放縮後の結節点の数を読み取り、個/mで表示した。
【0054】
(6)鞘糸被覆率
複合仮撚加工糸のサンプルを筒編みにし、分散染料で100℃20分で染色し、拡大鏡を用いて鞘糸部分の濃く染まったポリトリメチレンテレフタレート繊維を測定し下記式により鞘糸被覆率(%)を求めた。
鞘糸被覆率(%)=(鞘糸面積)/(複合仮撚加工糸全体の面積)×100
【0055】
[実施例1]
テレフタル酸ジメチルと1,3-プロパンジオールを1:2のモル比で仕込み、テレフタル酸ジメチルの0.1重量%に相当するチタンテトラブトキシドを加え、常圧下ヒーター温度240℃でエステル交換反応を完結させた。次にチタンテトラブトキシドを更に理論ポリマー量の0.1重量%、二酸化チタンを理論ポリマー量の0.5重量%添加し、270℃で3時間反応させた。得られたポリマーは、トリメチレンテレフタレート繰返単位100モル%から構成され、その極限粘度は1.0であった。また、得られたポリマーのガラス転移点は51℃であった。
得られたポリマーを常法により乾燥し、水分を50ppmにした後、265℃で溶融させ、直径0.27mmの36個の孔の開いた一重配列の紡口を通して押出した。
【0056】
押出された溶融マルチフィラメントを、風速4.0m/分の風を当てて急冷し固体マルチフィラメントに変えた後、ガイドノズルを用いてステアリル酸オクチル60重量%、ポリオキシエチレンアルキルエーテル15重量%、リン酸カリウム3重量%を含んだ油剤を濃度10重量%の水エマルジョン仕上げ剤として繊維に対して油剤付着量が0.6重量%となるように付着させた。
【0057】
次いで、固体マルチフィラメントを55℃に加熱した周速度2100m/分のローラに巻き付けた後、1.3倍で延伸されるように80℃の加熱したローラに巻き付け、その後スピンドルとタッチロールの双方を駆動する方式の巻取機を用いて、巻取速度2600m/分で巻き取って145dtex/72本の鞘糸用糸条(ポリトリメチレンテレフタレート繊維)の巻かれたチーズ状パッケージを得た。得られた繊維物性を表1に示す。
【0058】
一方、芯糸用糸条として、ポリエチレンテレフタレート延伸糸総繊度56dtex/36本(帝人フロンティア社製)を用意した。
次いで、TMTマシナリー株式会社製HTS-15V(ディスク仮撚方式)を用いて、鞘糸用糸条と芯糸用糸条とを引き揃え、ローラ1(速度:462m/min)、インターレースノズル、ローラ2(速度:400m/min)、非触式ヒーター(温度:280℃)、仮撚ディスク(ディスク回転数:5900rpm、ディスク直径5.8cm)、ローラ3(ローラ2とローラ3との延伸倍率:1.05倍)、巻き取り(巻取前フィード率:3.0%)により複合仮撚加工を実施した。得られた複合仮撚加工糸の捲縮特性を表1に示す。
【0059】
[実施例2]
固体マルチフィラメントを55℃に加熱した周速度2300m/分のロールに巻き付けた後、1.2倍で延伸されるように100℃の加熱したロールに巻き付けた以外は実施例1と同様に実施して90dtex/36本の繊維が巻かれたチーズ状パッケージを得た。かかる繊維を鞘糸に用いて、芯糸にポリトリメチレンテレフタレート延伸糸56dtex/36本(帝人フロンティア社製)を用いて複合仮撚加工を実施し、実施例1と同様の条件で1.05倍で延伸複合仮撚を行った。得られた複合仮撚加工糸の捲縮特性を表1に示す。
【0060】
[実施例3]
固体マルチフィラメントを55℃に加熱した周速度2500m/分のロールに巻き付けた後、1.1倍で延伸されるように100℃の加熱したロールに巻き付けた以外は実施例1と同様に実施して145dtex/36本の繊維が巻かれたチーズ状パッケージを得た。また上記で得た繊維を鞘糸に用いて、芯糸にポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)の2成分をサイドバイサイド型に貼り合わせたコンジュゲート延伸糸110dtex/24本(帝人フロンティア社製)を用い複合仮撚加工を実施し仮撚加工を実施し、実施例1と同様の条件で1.05倍で延伸仮撚を行った。得られた複合仮撚加工糸の捲縮特性を表1に示す。
【0061】
[実施例4]
ポリトリメチレンテレフタレートポリマーの極限粘度を1.3とした以外は実施例1と同様に実施して油剤が付着された固体マルチフィラメントを得た後、周速度2160m/分のロールに巻き付け、その後1.2倍で延伸されるように80℃の加熱したロールに巻き付け巻取速度2500m/分で巻き取って90dtex/72本の繊維が巻かれたチーズ状パッケージを得た。尚、この際得られたポリマーのガラス転移点は52℃であった。得られた繊維物性を表1に示す。捲縮特性は表1に示した。また上記で得た繊維を鞘糸に用い、芯糸にポリエチレンテレフタレートとポリトリメチレンレテフタレートとサイドバイサイド型に貼り合わせた延伸糸56dtex/36本(帝人フロンティア社製)を用い複合仮撚加工を実施し、実施例1と同様の条件で1.05倍で延伸仮撚を行った。得られた複合仮撚加工糸の捲縮特性を表1に示す。
【0062】
[実施例5~7]
実施例1において、表1に示す通り、鞘糸の繊度や断面形状などを変更した。得られた複合仮撚加工糸の捲縮特性を表1に示す。
【0063】
[比較例1]
実施例1と同様の方法で油剤が付着された固体マルチフィラメントを得た後、該固体マルチフィラメントを55℃に加熱した周速度2510m/分のロールに巻き付け、その後巻取速度2500m/分で巻き取って160dtex/24本の繊維が巻かれたチーズ状パッケージを得た。かかる繊維を鞘糸に用い、芯糸にポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)延伸糸56dtex/36本を用い複合仮撚加工を実施し、得られる加工糸の捲縮率伸度が10%となるように実施例1と同様の条件で1.05倍で複合延伸仮撚を行おうとしたが、延伸仮撚工程で断糸が多発しサンプル採取できなかった。
【0064】
[比較例2]
実施例1と同様の方法で油剤が付着された固体マルチフィラメントを得た後、該固体マルチフィラメントを50℃に加熱した周速度3010m/分のロールに巻き付け、その後巻取速度3000m/分で巻き取って90dtex/72本の繊維が巻かれたチーズ状パッケージを得た。かかる繊維を鞘糸に用い、芯糸にポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)延伸糸56dtex/36本を用い複合仮撚加工を実施し、実施例1と同様の条件で1.05倍で複合延伸仮撚を行おうとしたが、延伸仮撚工程で断糸が多発しサンプル採取できなかった。
【0065】
[比較例3]
実施例1と同様の方法で油剤が付着された固体マルチフィラメントを得た後、該固体マルチフィラメントを55℃に加熱した周速度900m/分のロールに巻き付け、その後3.1倍で延伸し、巻取速度2800m/分で巻き取って90dtex/72本の繊維の巻かれたチーズ状パッケージを得た。かかる繊維を鞘糸に用い、芯糸にポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)延伸糸56dtex/36本を用い複合仮撚加工を実施し、実施例1と同様の条件で1.05倍で延伸仮撚を行ったところ、断糸等の発生はなく、サンプル採取できた。得られた複合仮撚加工糸の捲縮特性を表1に示す。捲縮率が低くストレッチ性に劣るものであった。
【0066】
[実施例8]
実施例1と同様の方法で油剤が付着された固体マルチフィラメントを得た後、該固体マルチフィラメントを周速度5650m/分のロールに巻き付け、その後、巻取速度5500m/分で巻き取って145dtex/72本の繊維の巻かれたチーズ状パッケージを得た。かかる繊維を鞘糸に用い、芯糸にポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)延伸糸56dtex/36本を用い複合仮撚加工を実施し、実施例1と同様の条件で1.05倍で延伸仮撚を行ったところ、断糸等の発生はなく、サンプル採取できた。得られた複合仮撚加工糸の捲縮特性を表1に示す。
【0067】
【0068】
本発明によれば、単繊維繊度が小さいにも関わらず、複合仮撚加工時に糸切れが少なく、高い伸度を有するポリトリメチレンテレフタレート繊維が鞘側に交互反転状に巻き付いた複合仮撚加工糸およびその製造方法および布帛を製造することができ、その工業的価値は極めて大きい。