IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特開-内燃機関の制御装置 図1
  • 特開-内燃機関の制御装置 図2
  • 特開-内燃機関の制御装置 図3
  • 特開-内燃機関の制御装置 図4
  • 特開-内燃機関の制御装置 図5
  • 特開-内燃機関の制御装置 図6
  • 特開-内燃機関の制御装置 図7
  • 特開-内燃機関の制御装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130009
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/24 20060101AFI20240920BHJP
   F02B 37/00 20060101ALI20240920BHJP
   F02D 9/10 20060101ALI20240920BHJP
   F02D 23/00 20060101ALI20240920BHJP
   F02M 26/10 20160101ALI20240920BHJP
【FI】
F02B37/24
F02B37/00 302F
F02D9/10 D
F02D23/00 J
F02M26/10 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039470
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 遼太
【テーマコード(参考)】
3G005
3G062
3G065
3G092
【Fターム(参考)】
3G005DA02
3G005EA15
3G005FA21
3G005GA04
3G005GE08
3G005HA12
3G005JA28
3G062AA01
3G062EA10
3G062ED08
3G062GA21
3G062GA22
3G065AA01
3G065AA09
3G065CA01
3G065DA04
3G065GA29
3G065GA41
3G065HA05
3G092AA02
3G092AA17
3G092AA18
3G092DB03
3G092DC08
3G092DC13
3G092EA08
3G092FA13
3G092FA36
3G092FA39
3G092HD07Z
3G092HD08Z
3G092HD09Z
(57)【要約】
【課題】排気ブレーキの作動中に、排気圧が、エンジンの信頼性等の観点から設定された制限値(クライテリア)を超えないようにする。
【解決手段】エンジン1の排気ポート51の圧力である排気圧P4を検出する排気圧センサ105を設ける。排気ブレーキの作動時、可変ノズル過給器30のVN開度(可変ノズル開度)を全閉(最少開度)にするとともにEGRバルブ82の開度を全閉にする。排気圧P4が、制限値より低い値に設定された上限値を超えたとき、VN開度を大きくして、排気圧P4を低下する。これにより、排気圧P4が制限値を超えないようにすることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ブレーキを備えた内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関の排気ポートの圧力である排気圧を検出する排気圧センサを備え、
前記制御装置は、前記排気ブレーキの作動中、前記排気圧が上限値を超えたとき、前記排気圧が前記上限値を下回るよう前記排気圧を制御する、内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記内燃機関は、タービンハウジング内の排気通路断面積を可変する可変ノズルを有する過給器を備え、
前記制御装置は、前記排気ブレーキの作動時、前記可変ノズルの開度を最少開度とし、前記排気圧が前記上限値を超えたとき、前記開度を大きくする、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記内燃機関は、前記過給器の下流の排気通路に、排気通路断面積を可変する排気バルブを、さらに備え、
前記制御装置は、前記排気ブレーキの作動中、前記排気バルブの開度を最少開度にする、請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記内燃機関は、前記排気通路に、排気通路断面積を可変する排気バルブを備え、
前記制御装置は、前記排気ブレーキの作動時、前記排気バルブの開度を最少開度とし、前記排気圧が前記上限値を超えたとき、前記開度を大きくする、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記内燃機関は、前記排気ポートから排出される排気を前記内燃機関の吸気通路に還流するEGR通路と、前記EGR通路に設けられたEGRバルブと、をさらに備え、
前記制御装置は、前記排気ブレーキの作動時、前記EGRバルブの開度を最少開度とし、前記排気圧が前記上限値を超えたとき、前記開度を大きくする、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
所定の排気ブレーキ力を達成可能な目標排気圧を算出し、
前記上限値は、前記目標排気圧より高い値に設定されており、
前記排気ブレーキの作動中、前記排気圧が前記上限値を超えたとき、前記開度を大きくし、前記排気圧が前記目標排気圧以下になると、前記開度を小さくする、請求項2、請求項4、または請求項5のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記排気圧が前記上限値を超えた場合、前記開度を所定開度大きくしたときの前記排気圧の変化量である排気圧変化量を求め、
前記排気圧変化量に基づいて目標開度を算出し、
前記開度が前記目標開度になるよう制御する、請求項6に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記排気圧が前記目標排気圧以下になった場合、前記開度を所定開度小さくしたときの前記排気圧の変化量である排気圧変化量を求め、
前記排気圧変化量に基づいて目標開度を算出し、
前記開度が前記目標開度になるよう制御する、請求項6に記載の内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関の制御装置に関し、特に、排気ブレーキを備えた内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両において、エンジンブレーキ力を高めるため、内燃機関の排気通路断面積を絞ることにより排気圧を高め、内燃機関のポンピングロスを増加させる排気ブレーキが採用されることがある。たとえば、特開2022-181282号公報(特許文献1)では、可変ノズル過給器(可変ノズルターボ)のノズル(ノズルベーン)の開度を小さくすることにより(ノズル開度を絞ることにより)、排気ブレーキの機能を備えるようにしている。
【0003】
この特許文献1では、過給器またはエンジン本体の信頼性の観点から排気マニホルド内の排気圧力の制限値を算出し、この制限値に対応するノズル有効面積を求め、このノズル有効面積に対応する可変ノズル開度(VN開度)の下限値を設定する。そして、排気ブレーキの作動時に、VN開度が下限値になるよう、VN開度を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-181282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内燃機関の排気系(排気通路)には、燃料やエンジンオイルの燃焼によって生成するデポジットが付着する場合がある。可変ノズル過給器のタービンの入出口やノズルにデポジットが付着すると、VN開度が同じであっても、排気マニホルド内の排気圧力が異なる懸念がある。また、可変ノズル過給器の個体差(ばらつき)により、VN開度が同じであっても、排気マニホルド内の排気圧力が異なる場合がある。
【0006】
このため、特許文献1のように、排気ブレーキの作動時に、VN開度が下限値になるようVN開度を制御しても、デポジットの付着や過給器の個体差等によって、排気マニホルド内の排気圧の制限値を超える可能性がある。
【0007】
本開示の目的は、排気ブレーキの作動中に、排気圧が、エンジンの信頼性等の観点から設定された制限値(クライテリア)を超えないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本開示の係る内燃機関の制御装置は、排気ブレーキを備えた内燃機関の制御装置であり、内燃機関の排気ポートの圧力である排気圧を検出する排気圧センサを備える。制御装置は、排気ブレーキの作動中、排気圧が上限値を超えたとき、排気圧が上限値を下回るよう排気圧を制御する。
【0009】
この構成によれば、排気ブレーキの作動中、制御装置は、排気圧センサで検出した排気圧が上限値を超えたとき、排気圧が上限値を下回るよう排気圧を制御する。したがって、上限値を、エンジンの信頼性等の観点から設定された制限値(クライテリア)より小さな値(低い圧力)に設定することにより、排気圧が制限値を超えないようにすることができる。
【0010】
(2)上記(1)において、内燃機関は、タービンハウジング内の排気通路断面積を可変する可変ノズルを有する過給器を備え、制御装置は、排気ブレーキの作動時、可変ノズルの開度を最少開度とし、排気圧が上限値を超えたとき、開度を大きくするようにしてもよい。
【0011】
この構成によれば、排気ブレーキの作動時、可変ノズルの開度を最少開度とすることで、排気通路断面積が絞られて排気圧が高まり、排気ブレーキが作動する。排気圧センサで検出した排気圧が上限値を超えたとき、可変ノズルの開度を大きくするので、排気圧が上限値を下回るよう排気圧が制御される。したがって、排気圧が制限値を超えないようにすることができる。
【0012】
(3)上記(2)において、内燃機関は、過給器の下流の排気通路に、排気通路断面積を可変する排気バルブを、さらに備え、制御装置は、排気ブレーキの作動中、排気バルブの開度を最少開度にするようにしてもよい。
【0013】
この構成によれば、排気ブレーキの作動中、排気バルブの開度を最少開度にすることで、排気通路断面積が絞られ、排気圧をさらに高めることができる。これにより、ブレーキ力を高めることができる。
【0014】
(4)上記(1)において、内燃機関は、排気通路に、排気通路断面積を可変する排気バルブを備え、制御装置は、排気ブレーキの作動時、排気バルブの開度を最少開度とし、排気圧が上限値を超えたとき、開度を大きくするようにしてもよい。
【0015】
この構成によれば、排気ブレーキの作動時、排気バルブの開度を最少開度とすることで、排気通路断面積が絞られて排気圧が高まり、排気ブレーキが作動する。排気圧センサで検出した排気圧が上限値を超えたとき、排気バルブの開度を大きくするので、排気圧が上限値を下回るよう排気圧が制御される。したがって、排気圧が制限値を超えないようにすることができる。
【0016】
(5)上記(1)において、内燃機関は、排気ポートから排出される排気を内燃機関の吸気通路に還流するEGR通路と、EGR通路に設けられたEGRバルブと、をさらに備え、制御装置は、排気ブレーキの作動時、EGRバルブの開度を最少開度とし、排気圧が上限値を超えたとき、開度を大きくするようにしてもよい。
【0017】
この構成によれば、排気ブレーキの作動時、EGRバルブの開度を最少開度とすることで、EGR通路を介した排気の還流が抑制され、排気ブレーキ作動時の排気圧が低下することを抑制でき、ブレーキ力を確保できる。排気圧センサで検出した排気圧が上限値を超えたとき、EGRバルブの開度を大きくして排気の還流量を増加させるので、排気圧が低下して、排気圧が上限値を下回るよう排気圧が制御される。したがって、排気圧が制限値を超えないようにすることができる。
【0018】
(6)上記(2)、(4)および(5)において、制御装置は、所定の排気ブレーキ力を達成可能な目標排気圧を算出し、上限値は、目標排気圧より高い値に設定されており、排気ブレーキの作動中、排気圧が上限値を超えたとき、開度を大きくし、排気圧が目標排気圧以下になると、開度を小さくするようにしてもよい。
【0019】
この構成によれば、制御装置は、所定の排気ブレーキ力を達成可能な目標排気圧を算出する。排気ブレーキの作動中、排気圧が目標排気圧以下になると、開度(可変ノズル開度、排気バルブ開度、あるいは、EGRバルブ開度)を小さくするので、排気圧が上昇して、所定の排気ブレーキ力を確保できる。上限値は、目標排気圧より高い値に設定されている。排気ブレーキの作動中、排気圧が上限値を超えたとき、開度(可変ノズル開度、排気バルブ開度、あるいは、EGRバルブ開度)を大きくするので、排気圧が低下し、排気圧が制限値を超えないようにすることができる。
【0020】
(7)上記(6)において、制御装置は、排気圧が上限値を超えた場合、開度を所定開度大きくしたときの排気圧の変化量である排気圧変化量を求め、排気圧変化量に基づいて目標開度を算出し、開度が目標開度になるよう制御するようにしてもよい。
【0021】
内燃機関の運転状態(たとえば、排気流量)が異なると、開度(可変ノズル開度、排気バルブ開度、あるいは、EGRバルブ開度)の変化量が同じであっても、排気圧の変化量が異なる。この構成によれば、排気圧が上限値を超えた場合、開度(可変ノズル開度、排気バルブ開度、あるいは、EGRバルブ開度)を所定開度大きくしたときの排気圧の変化量である排気圧変化量を求める。そして、排気圧変化量に基づいて目標開度を算出し、開度が目標開度になるよう制御する。これにより、開度の変化量に対する排気圧変化量が、内燃機関の運転状態によって異なっても、適切な排気圧に制御でき、より好適に、排気圧が制限値を超えないようにすることができる。
【0022】
(8)上記(6)において、制御装置は、排気圧が目標排気圧以下になった場合、開度を所定開度小さくしたときの排気圧の変化量である排気圧変化量を求め、排気圧変化量に基づいて目標開度を算出し、開度が目標開度になるよう制御するようにしてもよい。
【0023】
この構成によれば、排気圧が目標排気圧以下になった場合、開度(可変ノズル開度、排気バルブ開度、あるいは、EGRバルブ開度)を所定開度小さくしたときの排気圧の変化量である排気圧変化量を求める。そして、排気圧変化量に基づいて目標開度を算出し、開度が目標開度になるよう制御する。これにより、開度の変化量に対する排気圧変化量が、内燃機関の運転状態によって異なっても、適切な排気圧に制御でき、より好適に、所定の排気ブレーキ力を確保することができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、排気ブレーキの作動中に、排気圧が、エンジンの信頼性等の観点から設定された制限値(クライテリア)を超えないようにすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施の形態によるエンジンおよびその制御装置の概略構成を示す図である。
図2】本実施の形態において、制御装置200で実行される排気ブレーキ制御の処理の一例を示すフローチャートである。
図3】目標開度算出ルーチンにおける処理の一例を示すフローチャートである。
図4】(A)および(B)は、開度変化量Δθtを算出するためのマップの一例を示す図である。
図5】本実施の形態の動作を示すタイムチャートである。
図6】実施の形態2に係るエンジンおよびその制御装置の概略構成を示す図である。
図7】実施の形態2の動作を示すタイムチャートである。
図8】変形例3の動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施の形態について説明する。以下の説明では、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない場合がある。
【0027】
(実施形態1)
図1は、本実施の形態に係るエンジン1およびその制御装置200の概略構成を示す図である。エンジン1は、圧縮自己着火式内燃機関(ディーゼルエンジン)であり、本開示の「内燃機関」に相当する。エンジン1は、車両の駆動源であり、エンジン1の出力は、変速機3、ディファレンシャルギヤ5を介して駆動輪7に伝達され、車両を駆動する。
【0028】
エンジン1は、エンジン本体10と、エアクリーナ20と、吸気通路22と、インタークーラ26と、吸気マニホルド28と、可変ノズル過給器30と、排気マニホルド50と、排気通路52と、排気浄化装置56と、EGR装置(排気再循環装置)60と、制御装置200とを備える。
【0029】
エンジン本体10は、シリンダヘッド11と、シリンダ12と、ピストン13と、燃料噴射弁15とを含む。ピストン13は、シリンダ12内に上下往復動可能に介挿される。ピストン13の頂部とシリンダヘッド11とシリンダ12とで囲まれた空間によって燃焼室14が形成される。
【0030】
燃料噴射弁15は、シリンダヘッド11に設けられ、燃焼室14に燃料を噴霧するインジェクタである。燃料タンク(図示せず)に貯留された燃料は、高圧燃料ポンプによって所定圧まで加圧されてコモンレールへ供給される(いずれも図示せず)。コモンレールに供給された燃料は、燃料噴射弁15に供給され、燃料噴射弁15のノズル部から燃焼室14に噴射される。燃料噴射弁15は、制御装置200からの制御信号に応じて、指令されたタイミング(噴射時期)に、指令された燃料噴射量Qfを燃焼室14内に供給する。
【0031】
エンジン1の外部の空気(大気)が、エアクリーナ20を介して吸気通路(吸気管)22に吸入される。エアクリーナ20の下流の吸気通路22には、可変ノズル過給器(可変ノズルターボチャージャー)30のコンプレッサ32が設けられている。コンプレッサ32は、空気(吸入空気)を過給する。過給された空気は、インタークーラ26によって冷却される。
【0032】
インタークーラ26の下流の吸気通路22には、吸気絞り弁(ディーゼルスロットル)25が配置される。吸気通路22は、吸気マニホルド28に接続され、エンジン本体10(シリンダヘッド11)に形成された吸気ポートから、吸入空気が燃焼室14に流入する。吸気ポートは、吸気弁(インテークバルブ)16によって開閉される。
【0033】
排気マニホルド50は、エンジン本体10(シリンダヘッド11)の排気ポート51に連結される。排気弁(エギゾーストバルブ)17は、排気ポート51を開閉する。排気マニホルド50に集められた排気(燃焼ガス)は、排気通路(排気管)52を通って、可変ノズル過給器30のタービン36に流入する。
【0034】
タービン36の下流の排気通路52には、排気浄化装置56が設けられている。排気浄化装置56は、たとえば、酸化触媒、DPF(Diesel Particulate Filter)、および、選択還元触媒から構成されてよい。選択還元触媒は、図示しない尿素添加弁から供給される尿素水からアンモニア)生成し、アンモニアをもちいて排気中の窒素酸化物(NOx)を還元浄化する。排気浄化装置56の下流の排気通路52には、消音器(排気マフラー)58は配置され、排気は消音器58で消音され、大気に放出される。
【0035】
エンジン1には、EGR装置60が設けられている。EGR装置60は、ERGクーラ61と、EGRバルブ62と、EGR通路63とを含む。EGR通路63は、タービン36の上流の排気通路52と吸気絞り弁25の下流の吸気通路22とを接続する。EGRクーラ61およびEGRバルブ62は、EGR通路63に設けられる。ERGクーラ61は、EGRガス(排気)を冷却する。EGRバルブ62は、制御装置200からの制御信号に応じて、EGR通路63を流通する還流排気ガスの流量(EGR量)を調整する調整弁である。EGRバルブ62の開度が大きいほど、EGR量(排気ポート51から排出される排気が吸気通路22へ流れる還流量)が多くなる。
【0036】
可変ノズル過給器30は、コンプレッサ32とタービン36と可変ノズル機構40とを含む。コンプレッサ32のハウジング内にはコンプレッサホイール34が収納され、タービン36のハウジング内にはタービンホイール38が収納される。コンプレッサホイール34とタービンホイール38とは、連結軸39によって連結される。コンプレッサホイール34は、タービンホイール38に供給される排気の排気エネルギによって回転駆動される、吸気(空気)を圧縮し過給を行う。
【0037】
可変ノズル機構40は、タービンホイール38の回転軸を中心とした周囲の排気流入部に配置された複数のノズルベーンと、ノズルベーンを回転軸周りに回転させるリンク機構とから構成される。アクチュエータ42でリンク機構を駆動すると、隣接するノズルベーンの間の隙間(排気通路断面積)が変化し、タービンホイール38の排気流入部における排気の流路が絞られたり、拡げられたりする。これにより、タービンホイール38を駆動する排気の流速を変化させることができる。本実施の形態では、隣接するベーンノズルの間の隙間(排気通路断面積)をVN開度(可変ノズル開度)とも称する。なお、VN開度は、本開示の「可変ノズルの開度」の一例に相当する。
【0038】
制御装置200は、エンジン1の動作を制御する。制御装置200は、各種処理を行なうCPU(Central Processing Unit)201と、プログラムおよびデータを記憶するROM(Read Only Memory)およびCPUの処理結果等を記憶するRAM(Random Access Memory)等を含むメモリ202と、外部との情報のやり取りを行なうための入・出力ポート(図示せず)とを含む。入力ポートには、各種のセンサ類が接続され、出力ポートには、制御対象となる機器(たとえば、燃料噴射弁15、吸気絞り弁25、アクチュエータ42、およびEGRバルブ62等)が接続される。
【0039】
制御装置200は、各種センサおよび機器からの信号、ならびにメモリ202に格納されたマップおよびプログラムに基づいて、所定の演算処理を実行する。そして、制御装置200は、演算処理の結果に基づいて、燃料噴射弁15、吸気絞り弁25、アクチュエータ42、およびEGRバルブ62等を制御する。
【0040】
本実施の形態において、各種のセンサ類は、エンジン回転速度センサ101、エアフローメータ102、アクセル開度センサ103、車速センサ104、排気圧センサ105、排気ブレーキスイッチ106、等である。
【0041】
エンジン回転速度センサ101は、エンジン1の出力軸であるクランクシャフトの回転速度をエンジン回転速度NEとして検出する。エアフローメータ102は、吸入空気量Gaを検出する。アクセル開度センサ103は、アクセルペダルの踏込量であるアクセル開度APを検出する。車速センサ104は、エンジン1が搭載された車両の車速SPDを検出する。
【0042】
排気圧センサ105は、タービン36の上流の排気通路内の圧力である排気圧P4を検出する。排気圧P4は、排気ポート51および排気マニホルド50における圧力に相当する。排気ブレーキスイッチ106は、車両の運転者によって操作されるスイッチであり、排気ブレーキの作動要否を、運転者が選択するスイッチである。排気ブレーキスイッチ106がONであるとき、排気ブレーキが作動可能になり、排気ブレーキスイッチ106がOFFであるとき、排気ブレーキは作動しない。
【0043】
たとえば、制御装置200は、アクセル開度APとエンジン回転速度NEを用いて、メモリ202に格納された燃料噴射量マップから、燃料噴射量Qfを算出する。また、制御装置200は、アクセル開度APとエンジン回転速度NEを用いて、メモリ202に格納された燃料噴射時期マップから、燃料噴射時期を算出する。そして、制御装置200は、算出した燃料噴射時期になると、燃料噴射量Qfに相当する燃料を噴射するよう、燃料噴射弁15を制御する。
【0044】
制御装置200は、たとえば、エンジン回転速度NEと吸入空気量Ga(または、アクセル開度AP)とに基づいて、目標開度θtを求め、可変ノズル過給器30のVN開度θが目標開度θtになるよう、アクチュエータ42を制御する。なお、吸気マニホルド内の圧力を検出する過給圧センサを備える場合には、エンジン回転速度NEと燃料噴射量Qfから目標過給圧を算出し、過給圧センサで検出した過給圧と目標過給圧の差に基づいて、目標開度θtを補正するようにしてもよい。
【0045】
制御装置200は、エンジン回転速度NEとアクセル開度AP(または、燃料噴射量Qf)に基づいて、EGRバルブ62の目標開度を決定し、EGRバルブ62の開度が目標開度になるよう制御する。これにより、EGR量が制御される。
【0046】
制御装置200は、排気ブレーキスイッチ106がONであるとき、車両の走行中にアクセルペダルが開放され、アクセル開度APが0になると、排気ブレーキを作動する。VN開度θを全閉にするとともにEGRバルブ62の開度を全閉とすることにより、排気圧P4を上昇し、排気ブレーキが作動する。なお、VN開度θの全閉とは、VN開度θの最小開度(排気通路断面積が最も小さくなる開度)である。また、EGRバルブの開度の全閉とは、EGRバルブ62の最少開度(EGR通路63が遮断される開度)である。
【0047】
排気圧P4が上昇すると、EGRクーラ61の耐圧力以上の圧力上昇、排気弁17の強制開弁によるピストンスタンプの発生、ノズルベーンの前後差圧増大による可変ノズル機構40の摩擦抵抗の増加、等が生じるため、排気圧P4が、エンジン1の信頼性等の観点から設定された制限値(クライテリア)を超えないようにすることが望ましい。
【0048】
特許文献1のように、排気ブレーキの作動時に、VN開度が下限値になるようVN開度を制御しても、デポジットの付着や過給器の個体差等によって、排気圧P4が制限値を超える可能性がある。そこで、本実施の形態では、排気ブレーキの作動中に、排気圧センサ105で検出した排気圧P4が、制限値(クライテリア)より小さい値に設定された上限値を超えたとき、排気圧P4が上限値を下回るようVN開度を制御する。
【0049】
図2は、本実施の形態において、制御装置200で実行される排気ブレーキ制御の処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、エンジン1の作動中、所定期間毎に繰り返し処理される。ステップ(以下、ステップを「S」と略す)10では、排気ブレーキスイッチ106が、ONであるか否かを判定する。排気ブレーキスイッチ106がOFFである場合には、排気ブレーキを作動させないので、否定判定されS22へ進む。排気ブレーキスイッチ106がONであるときには、肯定判定されS11へ進む。
【0050】
S11では、アクセルペダルが開放されアクセル開度APが0であり、かつ、車速SPDが所定値α以上であるか否かを判定する。なお、所定値αは、車両が走行中である(停車中でない)ことを検知するための閾値である。車両の減速要求がある場合には、アクセル開度APが0であり、かつ、車速SPDが所定値α以上であるので、S11で肯定判定され、S12へ進む。車両の減速要求がない場合には、S11で否定判定されS22へ進む。
【0051】
S22では、排気ブレーキの作動を停止する(停止している場合は停止を継続する)。これにより、可変ノズル機構40(可変ノズル過給器30)のVN開度θおよびEGRバルブ62の開度は、成り行きで制御される。なお、本開示において、成り行きとは、上述のように、エンジン1の運転状態に応じて、VN開度θ、RGRバルブ62の開度が制御されることである。また、S21では、フラグFbが0に設定され、今回のルーチンを終了する。
【0052】
S12では、フラグFbが1であるか否かを判定する。フラグFbは、排気ブレーキの作動開始時、1に設定されるフラグであり、S12が最初に処理されるとき、フラグFbは0に設定されており、否定判定されS13へ進む。S13では、排気ブレーキを作動する。本実施の形態では、VN開度θを全閉にするとともにEGRバルブ62の開度を全閉とすることにより、排気ブレーキを作動させる。また、フラグFbを1に設定する。これによって、次回のS12の処理時には、否定判定される。
【0053】
続くS14では、エンジン回転速度NEと燃料噴射量Qfに基づいて、目標排気圧P4tgを算出する。目標排気圧P4tgは、目標となる排気ブレーキ力を達成するために必要な排気圧P4(排気ポート51および排気マニホルド50における圧力)である。目標排気圧P4tgは、エンジン回転速度NEおよび燃料噴射量Qfをパラメータとして、予め実験等によって設定され、マップとしてメモリ202に記憶されている。なお、パラメータとして、車速SPDを加えてもよい。
【0054】
S15では、排気圧P4iを検出する。排気圧P4iは、排気圧センサ105で検出した排気圧P4の値である。
【0055】
続くS16では、排気圧P4iが目標排気圧P4tgを超えているか否かを判定する。排気圧P4iが目標排気圧P4tgを超えている場合(P4i>P4tg)、肯定判定されS17へ進む。排気圧P4iが目標排気圧P4tg以下のとき(P4i≦P4tg)、否定判定されS19へ進み、フラグFvを0に設定したあと、S20へ進む。
【0056】
S17では、排気圧P4iが上限値P4maxを超えているか否かを判定する。上限値P4maxは、エンジン1の信頼性等の観点から設定された制限値(クライテリア)より小さな値に設定されている。排気圧P4iが上限値P4max以下のとき(P4i≦P4max)、否定判定されS10へ戻る。排気圧P4iが上限値P4maxを超えているとき(P4i>P4max)、肯定判定されS18へ進み、フラグFvを1に設定したあと、S20へ進む。
【0057】
S20では、VN開度の目標開度θtを算出する。図3は、目標開度θt算出ルーチンにおける処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートはS20が処理される毎に実行される。S201では、フラグFvが1であるか否かを判定する。フラグFvが1であるときには、肯定判定されS202へ進み、フラグFvが0であるときには、否定判定されS206へ進む。
【0058】
S202では、VN開度θをΔθだけ増加させる。Δθは、微小開度であり、予め実験等によって設定される。たとえば、VN開度θの全閉(最少開度)を0[%]、全開(最大開度)を100[%]としたとき、Δθは3[%]であってよい。
【0059】
S203では、排気圧変化量ΔP4を算出する。VN開度θをΔθ増加させたときに、排気圧センサ105で検出した排気圧P4を排気圧P4aとし、排気圧P4aから、S15で検出した排気圧P4iを減算することにより、排気圧変化量ΔP4を算出する(ΔP4=P4a-P4i)。
【0060】
S204では、排気圧変化量ΔP4に基づいて、開度変化量Δθtを算出する。図4は、開度変化量Δθtを算出するためのマップの一例を示す図である。図4(A)は、S204で用いられるマップであり、横軸は排気圧変化量ΔP4であり、縦軸は開度変化量Δθtである。VN開度θをΔθだけ増加させると(VN開度θをΔθだけ大きくすると)、排気通路断面積が大きくなるので、排気圧P4が低下する。エンジン1の運転状態(たとえば、排気流量)が異なると、VN開度θをΔθだけ変化させた際の排気圧変化量ΔP4が異なる。したがって、VN開度θをΔθだけ増加させたときの排気圧変化量ΔP4に基づいて、開度変化量Δθtを求めることにより、排気圧P4を速やかに所望の値へ制御する。図4(A)に示すように、VN開度θをΔθだけ増加した際の排気圧変化量ΔP4が負側に大きいほど、開度変化量Δθtは小さくなる。なお、排気圧変化量ΔP4が正である場合、排気流量の急激な増加等の影響が想定され、開度変化量Δθtを大きくする。S204では、S203で算出した排気圧変化量ΔP4をパラメータとして、図4(A)のマップを用いて、開度変化量Δθtを算出したあと、S205へ進む。
【0061】
S206では、VN開度θをΔθだけ減少させたあと、S207へ進む。S207では、排気圧変化量ΔP4を算出する。VN開度θをΔθ減少させたときに、排気圧センサ105で検出した排気圧P4を排気圧P4aとし、排気圧P4aから、S15で検出した排気圧P4iを減算することにより、排気圧変化量ΔP4を算出する(ΔP4=P4a-P4i)。
【0062】
S208では、排気圧変化量ΔP4に基づいて、開度変化量Δθtを算出する。図4(B)は、S208で用いられるマップであり、横軸は排気圧変化量ΔP4であり、縦軸は開度変化量Δθtである。VN開度θをΔθだけ減少させると(VN開度θをΔθだけ小さくすると)、排気通路断面積が小さくなるので、排気圧P4が上昇する。エンジン1の運転状態(たとえば、排気流量)が異なると、VN開度θをΔθだけ変化させた際の排気圧変化量ΔP4が異なる。したがって、VN開度θをΔθだけ減少させたときの排気圧変化量ΔP4に基づいて、開度変化量Δθtを求めることにより、排気圧P4を速やかに所望の値へ制御する。図4(B)に示すように、VN開度θをΔθだけ減少した際の排気圧変化量ΔP4が小さいほど、開度変化量Δθtを負側に大きくなる。なお、排気圧変化量ΔP4が負である場合、排気流量の急激な減少等の影響が想定され、開度変化量Δθtを負側に大きくする。S208では、S207で算出した排気圧変化量ΔP4をパラメータとして、図4(B)のマップを用いて、開度変化量Δθtを算出したあと、S205へ進む。
【0063】
S205では、現在のVN開度の目標開度θtに、S204あるいはS208で算出した開度変化量Δθtを加算することにより、新たな目標開度開度θtを算出する。なお、排気ブレーキの作動開始時(S13の処理時)における目標開度θtは、全閉(0[%])である。
【0064】
図2に戻り、S20において、新たな目標開度θtが算出されると、S21では、VN開度θが、新たな目標開度θtになるよう、アクチュエータ42を駆動しVN開度を制御したあと、S10へ戻る。排気圧P4iが上限値P4maxより大きく、フラグFvが1に設定されている場合には、図4(A)のマップを用いて開度変化量θtが算出され、開度変化量θは正の値になる。排気圧P4iが目標排気圧P4tg以下の場合、フラグFvが0に設定され、図4(B)のマップを用いて開度変化量θtが算出され、開度変化量θtは負の値になる。したがって、排気圧P4iが上限値P4maxより大きい場合は、目標開度θtが大きくなり、排気通路断面積が大きくなるので、排気圧P4が低下する。また、排気圧P4iが目標排気圧P4tg以下の場合は、目標開度θtが小さくなり、排気通路断面積が小さくなるので、排気圧P4が上昇する。
【0065】
図5は、本実施の形態の動作を示すタイムチャートである。図5において、横軸は時間である。図5では、排気圧P4、排気ブレーキスイッチ106、アクセル開度AP、EGRバルブ62の開度、および、VN開度θの状態を示している。なお、図5において、破線で囲まれた部分は、後述する変形例1のタイムチャートである。
【0066】
車両の走行中、排気ブレーキスイッチ106がONであるとき、時刻t1において、アクセルペダルが開放されアクセル開度APが0になると、排気ブレーキが作動する。排気ブレーキが作動する前(時刻t1になるまで)は、EGRバルブ62の開度、および、VN開度θは、成り行きで制御されている。時刻t1において、アクセル開度APが0になり排気ブレーキが作動すると、EGRバルブ62の開度が全閉になるとともに、VN開度θが全閉(最少開度)になる。これにより、排気圧P4が上昇し、排気ブレーキが作動する。
【0067】
図5において、一点鎖線は、排気圧P4の制限値(クライテリア)である。上限値P4maxは、制限値より小さい値に設定されている。排気ブレーキが作動して、排気圧P4が上限値P4maxを超えると(S17で肯定判定されると)、VN開度θがS20で算出された目標開度θtに制御され、VN開度θが増加して排気圧P4が低下し、排気圧P4が制限値を超えることが抑制される。なお、排気圧P4が目標排気圧P4tg以下になると(S16で否定判定されると)、VN開度θがS20で算出された目標開度θtに制御され、VN開度θが減少して排気圧P4が上昇し、排気圧P4が目標排気圧P4tg以上になり、良好な排気ブレーキ力を得ることができる。
【0068】
本実施の形態によれば、排気ブレーキの作動中、制御装置200は、排気圧センサ105で検出した排気圧P4が上限値P4maxを超えたとき、排気圧P4が上限値P4maxを下回るよう排気圧P4を制御する。したがって、上限値P4maxを、エンジン1の信頼性等の観点から設定された制限値(クライテリア)より小さな値(低い圧力)に設定することにより、排気圧P4が制限値を超えないようにすることができる。
【0069】
本実施の形態によれば、制御装置200は、排気ブレーキの作動時、可変ノズル過給器30のVN開度θを最少開度とし、排気圧P4が上限値P4maxを超えたとき、VN開度θを大きくするよう制御している。VN開度θが最少開度に制御されることで、排気通路断面積が絞られて排気圧が高まり、排気ブレーキが作動する。排気圧センサで検出した排気圧P4が上限値を超えたとき、VN開度θを大きくするので、排気圧P4が上限値P4maxを下回るよう排気圧P4が制御される。
【0070】
本実施の形態によれば、制御装置200は、所定の排気ブレーキ力を達成可能な目標排気圧P4tgを算出し、上限値P4maxは、目標排気圧P4tgより高い値に設定されている。排気ブレーキの作動中、排気圧P4が目標排気圧P4tg以下になると、VN開度θを小さくするので、排気圧P4が上昇して、所定の排気ブレーキ力を確保できる。
【0071】
上記実施の形態では、S11において、アクセル開度APが0であり、かつ、車速SPDが所定値α以上であるとき、車両の減速要求があると判定し、排気ブレーキを作動していた。しかし、排気ブレーキの作動条件は、これに限られない。たとえば、S11の条件に代えて、あるいは、加えて、車速SPDが設定車速以下であるとき、燃料噴射量Qfが0である(無噴射)であるときに排気ブレーキを作動してもよい。また、排気ブレーキスイッチ106を設けることなく(S10を省略して)、S11の条件が成立したとき、あるいは、前述の条件が成立したとき、排気ブレーキを作動するようにしてもよい。
【0072】
(変形例1)
上記実施の形態(実施形態1)では、VN開度θを制御することにより、排気圧P4を制御していた。変形例1では、EGRバルブ62の開度を制御することにより、排気圧P4を制御する。
【0073】
排気ブレーキの作動時、上記実施の形態では、VN開度を全閉にするとともにEGRバルブ62の開度を全閉にしている。排気ブレーキの作動中、EGRバルブ62の開度を大きくすることにより、EGR量(排気ポート51から排出される排気の還流量)が多くなるので、排気圧P4が低下する。変形例1では、排気ブレーキの作動中、排気圧P4が上限値P4maxを超えたとき、EGRバルブ62の開度を大きくして、排気圧P4を低下する。
【0074】
変形例1では、上記実施の形態の図2のS20(図3のS201~S208)およびS21における開度制御を、EGRバルブ62の開度制御に置換することによって、排気圧P4を制御する。S20(図2)では、EGRバルブ62の目標開度θtを算出する。S202(図3)では、EGRバルブ62の開度をΔθだけ増加させる。Δθは、微小開度であり、予め実験等によって設定される。また、S206では、EGRバルブ62の開度をΔθだけ減少させる。また、図4のマップは、EGRバルブ62の開度をΔθだけ変化させたときの排気圧変化量ΔP4に基づいて、設定される。これら以外の処理は、図2および図3に示した処理と同様であってよい。
【0075】
変形例1では、図5において、破線で囲まれたタイムチャートのように、排気ブレーキが作動する前(時刻t1になるまで)は、EGRバルブ62の開度、および、VN開度は、成り行きで制御されている。時刻t1において、アクセル開度APが0になり排気ブレーキが作動すると、EGRバルブ62の開度が全閉になるとともに、VN開度が全閉(最少開度)になる。これにより、排気圧P4が上昇し、排気ブレーキが作動する。排気ブレーキが作動して、排気圧P4が上限値P4maxを超えるとEGRバルブ62の開度が目標開度θtに制御され、EGRバルブ62の開度が増加して排気圧P4が低下し、排気圧P4が制限値を超えることが抑制される。排気ブレーキの作動中、VN開度は全閉に維持される。なお、排気圧P4が目標排気圧P4tg以下になると、EGRバルブ62の開度が目標開度θtに制御され、EGRバルブ62の開度が減少して排気圧P4が上昇し、排気圧P4が目標排気圧P4tg以上になり、良好な排気ブレーキ力を得ることができる。
【0076】
この変形例1によれば、排気ブレーキの作動時、EGRバルブ62の開度を全閉(最少開度)とすることで、EGR通路63を介した排気の還流が抑制され、排気ブレーキ作動時の排気圧P4が低下することを抑制でき、ブレーキ力を確保できる。排気圧センサ105で検出した排気圧P4が上限値P4maxを超えたとき、EGRバルブ62の開度を大きくして排気の還流量を増加させるので、排気圧P4が低下して、排気圧P4が上限値P4maxを下回るよう排気圧P4が制御される。したがって、排気圧P4が制限値を超えないようにすることができる。
【0077】
(実施の形態2)
図6は、実施の形態2に係るエンジン1aおよびその制御装置200aの概略構成を示す図である。実施の形態2において、エンジン1aは、排気浄化装置56と消音器58との間の排気通路52に、排気バルブ80を備える。他の構成は、上記実施の形態と同様の構成である。排気バルブ80が全閉になると、排気通路52内の排気の流れが阻害されて、排気圧P4が上昇し排気ブレーキが作動する。排気バルブ80の全閉とは、排気バルブ80の開度が最少開度(排気通路断面積が最も小さくなる開度)の状態である。
【0078】
制御装置200aは、図2に示した排気ブレーキ制御、および、図3に示した目標開度θt算出ルーチンと同様の制御を実行する。但し、実施の形態2では、S13(図2)の処理において、排気ブレーキを作動する際に、VN開度θを全閉、EGRバルブ62の開度を全閉にするとともに、排気バルブ80を全閉にして、排気ブレーキを作動させる。また、実施の形態2では、S22において、排気ブレーキの作動を停止(停止している場合は停止を継続)する際には、VN開度θおよびEGRバルブ62の開度は、成り行きで制御され、排気バルブ80は全開(最大開度)とされる。
【0079】
図7は、実施の形態2の動作を示すタイムチャートである。図7において、横軸は時間である。図7では、排気圧P4、排気ブレーキスイッチ106、アクセル開度AP、EGRバルブ62の開度、VN開度θ、および、排気バルブ80の状態を示している。なお、図7において、破線で囲まれた部分は、後述する変形例2のタイムチャートである。
【0080】
排気ブレーキが作動する前(時刻t1になるまで)は、EGRバルブ62の開度、および、VN開度θは、成り行きで制御されており、排気バルブ80の開度は、全開とされている。時刻t1において、アクセル開度APが0になり排気ブレーキが作動すると、EGRバルブ62の開度が全閉になり、VN開度θが全閉(最少開度)になるとともに、排気バルブ80の開度が全閉(最少開度)になる。これにより、排気圧P4が上昇し、排気ブレーキが作動する。
【0081】
図7において、一点鎖線は、排気圧P4の制限値(クライテリア)である。上限値P4maxは、制限値より小さい値に設定されている。排気ブレーキが作動して、排気圧P4が上限値P4maxを超えると、VN開度θが目標開度θtに制御され、VN開度θが増加する。排気バルブ80は全閉とされているが、可変ノズル機構40のノズルベーンの前後差圧によって、タービン36と排気バルブ80との間の排気通路52内の圧力は、排気圧P4(タービン36の上流の排気通路内の圧力)より低くなっている。このため、N開度θが増加すると、排気圧P4が低下し、排気圧P4が制限値を超えることが抑制される。なお、排気圧P4が目標排気圧P4tg以下になると、VN開度θが目標開度θtに制御され、VN開度θが減少して排気圧P4が上昇し、排気圧P4が目標排気圧P4tg以上になり、良好な排気ブレーキ力を得ることができる。排気ブレーキの作動中、EGRバルブ62および排気バルブ80は、全閉に維持される。
【0082】
この実施の形態2によれば、排気ブレーキの作動中、排気バルブ80の開度を全閉(最少開度)にすることで、排気通路断面積が絞られ、排気圧P4をさらに高めることができ、ブレーキ力を高めることができる。また、排気圧センサ105で検出した排気圧P4が上限値P4maxを超えたとき、VN開度θを大きくするので、排気圧P4が上限値P4maxを下回るよう排気圧P4が制御される。したがって、排気圧P4が制限値を超えないようにすることができる。
【0083】
(変形例2)
変形例2は、実施の形態2の構成において、変形例1と同様に、VN開度θに代えてEGRバルブ62の開度を制御し、排気圧P4を制御する。変形例2では、変形例1と同様に、図2のS20(図3のS201~S208)およびS21における開度制御を、EGRバルブ62の開度制御に置換することによって、排気圧P4を制御する。
【0084】
変形例2では、図7において、破線で囲まれたタイムチャートのように、排気ブレーキが作動する前(時刻t1になるまで)は、EGRバルブ62の開度、および、VN開度は、成り行きで制御されており、排気バルブ80の開度は、全開とされている。時刻t1において、アクセル開度APが0になり排気ブレーキが作動すると、EGRバルブ62の開度が全閉になり、VN開度が全閉(最少開度)になるとともに排気バルブ80が全閉(最少開度)になる。これにより、排気圧P4が上昇し、排気ブレーキが作動する。排気ブレーキが作動して、排気圧P4が上限値P4maxを超えるとEGRバルブ62の開度が目標開度θtに制御され、EGRバルブ62の開度が増加して排気圧P4が低下し、排気圧P4が制限値を超えることが抑制される。排気ブレーキの作動中、VN開度および排気バルブ80の開度は全閉に維持される。なお、排気圧P4が目標排気圧P4tg以下になると、EGRバルブ62の開度が目標開度θtに制御され、EGRバルブ62の開度が減少して排気圧P4が上昇し、排気圧P4が目標排気圧P4tg以上になり、良好な排気ブレーキ力を得ることができる。
【0085】
(変形例3)
変形例3では、実施の形態2の構成(図6)において、排気バルブ80の開度を制御することにより、排気圧P4を制御する。制御装置200aは、図2に示した排気ブレーキ制御、および、図3に示した目標開度θt算出ルーチンと同様の制御を実行する。但し、変形例3では、S13(図2)の処理において、排気ブレーキを作動する際に、VN開度を全閉、EGRバルブ62の開度を全閉にするとともに、排気バルブ80を全閉にして、排気ブレーキを作動させる。また、S22において、排気ブレーキの作動を停止(停止している場合は停止を継続)する際には、VN開度およびEGRバルブ62の開度は、成り行きで制御され、排気バルブ80は全開(最大開度)とされる。
【0086】
また、変形例3では、図2のS20(図3のS201~S208)およびS21における開度制御を、排気バルブ80の開度制御に置換することによって、排気圧P4を制御する。S20(図2)では、排気バルブ80の目標開度θtを算出する。S202(図3)では、排気バルブ80の開度をΔθだけ増加させる。Δθは、微小開度であり、予め実験等によって設定される。また、S206では、排気バルブ80の開度をΔθだけ減少させる。また、図4のマップは、排気バルブ80の開度をΔθだけ変化させたときの排気圧変化量ΔP4に基づいて、設定される。
【0087】
図8は、変形例3の動作を示すタイムチャートである。図8において、横軸は時間である。図8では、排気圧P4、排気ブレーキスイッチ106、アクセル開度AP、EGRバルブ62の開度、VN開度θ、および、排気バルブ80の状態を示している。
【0088】
排気ブレーキが作動する前(時刻t1になるまで)は、EGRバルブ62の開度、および、VN開度θは、成り行きで制御されており、排気バルブ80の開度は、全開とされている。時刻t1において、アクセル開度APが0になり排気ブレーキが作動すると、EGRバルブ62の開度が全閉になり、VN開度θが全閉(最少開度)になるとともに、排気バルブ80の開度が全閉(最少開度)になる。これにより、排気圧P4が上昇し、排気ブレーキが作動する。
【0089】
図8において、一点鎖線は、排気圧P4の制限値(クライテリア)である。上限値P4maxは、制限値より小さい値に設定されている。排気ブレーキが作動して、排気圧P4が上限値P4maxを超えると、排気バルブ80の開度が目標開度θtに制御され、排気バルブ80の開度が増加する。VN開度は全閉(最少開度)とされているが、排気バルブ80の開度が増加することにより、タービン36と排気バルブ80との間の排気通路52内の圧力が低下し、可変ノズル機構40のノズルベーンの下流側の圧力が低下するので、排気圧P4が低下し、排気圧P4が制限値を超えることが抑制される。なお、排気圧P4が目標排気圧P4tg以下になると、排気バルブ80の開度が目標開度θtに制御され、排気バルブ80の開度が減少して排気圧P4が上昇し、排気圧P4が目標排気圧P4tg以上になり、良好な排気ブレーキ力を得ることができる。排気ブレーキの作動中、EGRバルブ62およびVN開度は、全閉に維持される。
【0090】
この変形例3によれば、排気ブレーキの作動時、排気バルブ80の開度を最少開度とすることで、排気通路断面積が絞られて排気圧P4が高まり、排気ブレーキが作動する。排気圧センサ105で検出した排気圧P4が上限値P4maxを超えたとき、排気バルブ80の開度を大きくするので、排気圧P4が上限値P4maxを下回るよう排気圧P4が制御される。したがって、排気圧P4が制限値を超えないようにすることができる。
【0091】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0092】
1,1a エンジン、3 変速機、5 ディファレンシャルギヤ、7 駆動輪、10 エンジン本体、11 シリンダヘッド、12 シリンダ、13 ピストン、14 燃焼室、15 燃料噴射弁、16 吸気弁、17 排気弁、20 エアクリーナ、22 吸気通路、25 吸気絞り弁、26 インタークーラ、28 吸気マニホルド、30 可変ノズル過給器、32 コンプレッサ、34 コンプレッサホイール、36 タービン、38 タービンホイール、39 連結軸、40 可変ノズル機構、42 アクチュエータ、50 排気マニホルド、51 排気ポート、52 排気通路、56 排気浄化装置、58 消音器、60 EGR装置、61 EGRクーラ、62 EGRバルブ、63 EGR通路、80 排気バルブ、101 エンジン回転速度センサ、102 エアフローメータ、103 アクセル開度センサ、104 車速センサ、105 排気圧せんさ、200,200a 制御装置、201 CPU、202 メモリ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8