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特開2024-130029ツール固定用ねじ、ホルダ装置、および、摩擦撹拌接合用工具
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  • 特開-ツール固定用ねじ、ホルダ装置、および、摩擦撹拌接合用工具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130029
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ツール固定用ねじ、ホルダ装置、および、摩擦撹拌接合用工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/107 20060101AFI20240920BHJP
   B23K 20/12 20060101ALI20240920BHJP
   B23B 31/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B23B31/107 C
B23K20/12 344
B23B31/02 601Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039510
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】523194617
【氏名又は名称】NTKカッティングツールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】宮田 英次
(72)【発明者】
【氏名】原 康
(72)【発明者】
【氏名】上木 正聡
【テーマコード(参考)】
3C032
4E167
【Fターム(参考)】
3C032DD01
4E167AA01
4E167BG05
(57)【要約】
【課題】 摩擦撹拌接合用ツールをツールホルダに対して固定するツール固定用ねじにおいて、摩擦撹拌接合の作業性を向上させる技術を提供する。
【解決手段】 摩擦撹拌接合用ツールを保持するツールホルダのねじ穴に嵌められ、ツールホルダが有する孔に挿入される摩擦撹拌接合用ツールをツールホルダに対して固定するツール固定用ねじであって、側面に雄ねじが形成されている軸部と、軸部の端部に設けられ、摩擦撹拌接合用ツールに接する押圧部であって、ツールホルダを形成する材料の熱膨張係数以上の熱膨張係数を有する材料によって形成される押圧部と、を備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦撹拌接合用ツールを保持するツールホルダのねじ穴に嵌められ、前記ツールホルダが有する孔に挿入される前記摩擦撹拌接合用ツールを前記ツールホルダに対して固定するツール固定用ねじであって、
側面に雄ねじが形成されている軸部と、
前記軸部の端部に設けられ、前記摩擦撹拌接合用ツールに接する押圧部であって、前記ツールホルダを形成する材料の熱膨張係数以上の熱膨張係数を有する材料によって形成される押圧部と、を備える、
ことを特徴とするツール固定用ねじ。
【請求項2】
請求項1に記載のツール固定用ねじであって、
前記押圧部の幅は、前記軸部の幅より小さい、
ことを特徴とするツール固定用ねじ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のツール固定用ねじであって、
前記押圧部は、
前記軸部の中心軸に沿った方向に延伸するように形成されており、
側面に、ねじ山が形成されていない、
ことを特徴とするツール固定用ねじ。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のツール固定用ねじであって、
前記押圧部は、熱膨張係数が、前記軸部の熱膨張係数よりも大きい材料によって形成されている、
ことを特徴とするツール固定用ねじ。
【請求項5】
前記摩擦撹拌接合用ツールを保持するホルダ装置であって、
請求項1または請求項2に記載のツール固定用ねじと、
前記摩擦撹拌接合用ツールが挿入される前記孔と、前記固定用ねじが嵌められる前記ねじ穴と、を有する前記ツールホルダと、を備え、
前記孔に前記摩擦撹拌接合用ツールを挿入し、前記ねじ穴に嵌められる前記固定用ねじによって、前記摩擦撹拌接合用ツールを前記ツールホルダに対して固定する状態において、前記押圧部の一部は、前記ねじ穴の内側に位置する、
ことを特徴とするホルダ装置。
【請求項6】
摩擦撹拌接合用工具であって、
請求項5に記載のホルダ装置と、
前記ホルダ装置に保持される前記摩擦撹拌接合用ツールであって、複数の被加工部材を当接させた部分を攪拌し、複数の前記被加工部材どうしを接合させる前記摩擦撹拌接合用ツールと、を備え、
前記摩擦撹拌接合用ツールは、融点が1000℃以上の金属からなる複数の前記被加工部材を接合する、
ことを特徴とする摩擦撹拌接合用工具。
【請求項7】
請求項6に記載の摩擦撹拌接合用工具であって、
前記摩擦撹拌接合用ツールは、窒化珪素系セラミック、または、サイアロンによって形成されている、
ことを特徴とする摩擦撹拌接合用工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツール固定用ねじ、ホルダ装置、および、摩擦撹拌接合用工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、部材同士の当接部分を摩擦熱によって軟化させつつ撹拌することで部材を接合する摩擦撹拌接合用工具が知られている(例えば、特許文献1)。一般的に、摩擦撹拌接合用工具は、部材同士の当接部分に押し付けられる摩擦撹拌接合用ツールと、摩擦撹拌接合用ツールを保持するツールホルダと、ツールホルダ内に挿入される摩擦撹拌接合用ツールに接触し、ツールホルダに対して摩擦撹拌接合用ツールを固定するツール固定用ねじと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-268667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、摩擦撹拌接合用工具を用いて部材を接合するとき、摩擦撹拌接合用工具は高温になりやすいため、熱膨張差によって、摩擦撹拌接合用ツールとツールホルダとの間に隙間が生じる。摩擦撹拌接合用ツールとツールホルダとの間に隙間が生じると、摩擦撹拌接合用ツールがツールホルダの内部で回転しやすくなる。また、ツール固定用ねじと摩擦撹拌接合用ツールとの熱膨張差によって、ツール固定用ねじによる摩擦撹拌接合用ツールを固定する力も弱くなるため、ツール固定用ねじにおける摩擦撹拌接合用ツールと接する位置が摩擦撹拌接合用ツールを固定した位置からずれる場合がある。ツール固定用ねじと摩擦撹拌接合用ツールとが接する位置がずれたまま、摩擦撹拌接合用工具が常温に戻ると、摩擦撹拌接合用ツールとツールホルダとの熱膨張差に起因する応力がツール固定用ねじに作用するため、摩擦撹拌接合用ツールにツール固定用ねじが食い込み、ツール固定用ねじを取り外しづらくなるおそれがある。このため、摩擦撹拌接合用ツールの交換に手間がかかり、摩擦撹拌接合の作業性が低下する。
【0005】
本発明は、摩擦撹拌接合用ツールをツールホルダに対して固定するツール固定用ねじにおいて、摩擦撹拌接合の作業性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、摩擦撹拌接合用ツールを保持するツールホルダのねじ穴に嵌められ、前記ツールホルダが有する孔に挿入される前記摩擦撹拌接合用ツールを前記ツールホルダに対して固定するツール固定用ねじが提供される。このツール固定用ねじは、側面に雄ねじが形成されている軸部と、前記軸部の端部に設けられ、前記摩擦撹拌接合用ツールに接する押圧部であって、前記ツールホルダを形成する材料の熱膨張係数以上の熱膨張係数を有する材料によって形成される押圧部と、を備える。
【0008】
この構成によれば、摩擦撹拌接合用工具が高温になり、摩擦撹拌接合用ツールとツールホルダとの間に隙間が生じても、ツール固定用ねじと摩擦撹拌接合用ツールとの間には隙間は形成されにくい。これにより、ツール固定用ねじによる摩擦撹拌接合用ツールを固定する力が低下しにくいため、使用時においても、摩擦撹拌接合用ツールは、ツールホルダに対してツール固定用ねじによって固定されたままとなり、使用後に摩擦撹拌接合用工具が常温に戻ってもツール固定用ねじに作用する応力は、比較的小さくなる。したがって、摩擦撹拌接合用ツールをツールホルダから取り外すためのツール固定用ねじの取り外しが容易になるため、摩擦撹拌接合の作業性を向上させることができる。
【0009】
(2)上記形態のツール固定用ねじにおいて、前記押圧部の幅は、前記軸部の幅より小さくてもよい。この構成によれば、押圧部は、幅が軸部の幅より小さいため、熱膨張してもツールホルダのねじ穴に接触することを抑制できる。したがって、ツール固定用ねじがねじ穴から外れにくくなることが抑制されるため、摩擦撹拌接合の作業性をさらに向上させることができる。
【0010】
(3)上記形態のツール固定用ねじにおいて、前記押圧部は、前記軸部の中心軸に沿った方向に延伸するように形成されており、側面に、ねじ山が形成されていなくてもよい。この構成によれば、押圧部がツールホルダのねじ穴に接触することを抑制できる。したがって、ツール固定用ねじがねじ穴から外れにくくなることが抑制されるため、摩擦撹拌接合の作業性をさらに向上させることができる。
【0011】
(4)上記形態のツール固定用ねじにおいて、前記押圧部は、熱膨張係数が、前記軸部の熱膨張係数よりも大きい材料によって形成されていてもよい。この構成によれば、押圧部は軸部より熱膨張しやすいため、軸部が摩擦撹拌接合用ツールに接する場合に比べ、ツール固定用ねじと摩擦撹拌接合用ツールとの間に隙間が形成されにくい。これにより、高温になっても、摩擦撹拌接合用ツールは、ツールホルダに対してツール固定用ねじによって固定されたままとなり、摩擦撹拌接合用ツールを取り外すときのツール固定用ねじの取り外しが容易になる。したがって、摩擦撹拌接合の作業性をさらに向上させることができる。
【0012】
(5)本発明の別の形態によれば、ホルダ装置が提供される。このホルダ装置は、上記のツール固定用ねじと、前記摩擦撹拌接合用ツールが挿入される前記孔と、前記固定用ねじが嵌められる前記ねじ穴と、を有する前記ツールホルダと、を備え、前記孔に前記摩擦撹拌接合用ツールを挿入し、前記ねじ穴に嵌められる前記固定用ねじによって、前記摩擦撹拌接合用ツールを前記ツールホルダに対して固定する状態において、前記押圧部の一部は、前記ねじ穴の内側に位置する。この構成によれば、押圧部が比較的大きく移動することをねじ穴によって規制することができる。これにより、摩擦撹拌接合用ツールは、ツールホルダに対してツール固定用ねじによって固定されたままとすることができるため、摩擦撹拌接合用ツールを取り外すときのツール固定用ねじの取り外しが容易になる。したがって、摩擦撹拌接合の作業性を向上することができる。
【0013】
(6)本発明のさらに別の形態によれば、摩擦撹拌接合用工具が提供される。この摩擦撹拌接合用工具は、上記のホルダ装置と、前記ホルダ装置に保持される前記摩擦撹拌接合用ツールであって、複数の被加工部材を当接させた部分を攪拌し、複数の前記被加工部材どうしを接合させる前記摩擦撹拌接合用ツールと、を備え、前記摩擦撹拌接合用ツールは、融点が1000℃以上の金属からなる複数の前記被加工部材を接合する。この構成によれば、摩擦撹拌接合用工具全体の温度が非常に高温になるものの、押圧部によって、ツール固定用ねじと摩擦撹拌接合用ツールとの間に隙間は発生しにくい。これにより、摩擦撹拌接合用ツールは、ツールホルダに対してツール固定用ねじによって固定されたままとすることができるため、摩擦撹拌接合用ツールを取り外すときのツール固定用ねじの取り外しが容易になる。したがって、摩擦撹拌接合の作業性を向上することができる。
【0014】
(7)上記形態の摩擦撹拌接合用工具において、前記摩擦撹拌接合用ツールは、窒化珪素系セラミック、または、サイアロンによって形成されていてもよい。この構成によれば、熱膨張係数が小さい摩擦撹拌接合用ツールとツールホルダとの間の隙間が非常に大きくなりやすいものの、上記のホルダ装置であれば、ツール固定用ねじと摩擦撹拌接合用ツールとの間には隙間は形成されにくい。これにより、摩擦撹拌接合用ツールは、ツールホルダに対してツール固定用ねじによって固定されたままとすることができるため、摩擦撹拌接合用ツールを取り外すときのツール固定用ねじの取り外しが容易になる。したがって、摩擦撹拌接合の作業性を向上することができる。
【0015】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、固定用ねじの製造方法、ホルダ装置の製造方法、摩擦撹拌接合工具の使用方法、固定用ねじを備える装置やシステム、これら装置およびシステムの制御方法、これら装置およびシステムを用いて摩擦撹拌接合を行う装置やシステム等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態の摩擦撹拌接合用工具の模式図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3】第1実施形態のツール固定用ねじの模式図である。
図4】第1実施形態の摩擦撹拌接合用工具の使用例を説明する図である。
図5】比較例の摩擦撹拌接合用工具の模式図である。
図6】第2実施形態の摩擦撹拌接合用工具の模式図である。
図7】第3実施形態のツール固定用ねじの模式図である。
図8】第4実施形態の摩擦撹拌接合用工具の模式図である。
図9図8のB-B線断面図である。
図10】第5実施形態の摩擦撹拌接合用工具の模式図である。
図11図10のC-C線断面図である。
図12】第6実施形態の摩擦撹拌接合用工具の模式図である。
図13図12のD-D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の摩擦撹拌接合用工具1Aの概略模式図である。図2は、図1のA-A線断面図である。本実施形態の摩擦撹拌接合用工具1Aは、ツールホルダ10と、ツール固定用ねじ20とを備えるホルダ装置2Aと、摩擦撹拌接合用ツール30と、を備える。摩擦撹拌接合用工具1Aは、複数の被加工部材の当接部分を摩擦熱によって軟化させるとともに、撹拌することで、被加工部材同士を接合する。
【0018】
ツールホルダ10は、円板形状の底部11と、底部11に接続する円筒部12と、を有する。本実施形態では、ツールホルダ10は、一般構造用鋼材、炭素鋼、工具鋼などの金属によって形成されている。ツールホルダ10は、円筒部12の内側に、摩擦撹拌接合用ツール30が挿入される孔13を有する。円筒部12には、ツールホルダ10の外部と孔13とを連通するねじ穴14が形成されている。ねじ穴14の内壁には雌ねじが形成されている。ツールホルダ10は、摩擦撹拌接合用ツール30を保持する。
【0019】
ツール固定用ねじ20は、ツールホルダ10のねじ穴14に嵌められている。ツール固定用ねじ20は、ツールホルダ10の孔13に挿入されている摩擦撹拌接合用ツール30をツールホルダ10に対して固定する。本実施形態の摩擦撹拌接合用工具1は、図2の断面図に示すように、1つのツールホルダ10に対して、4個のツール固定用ねじ20を備える。ツール固定用ねじ20は、頭部21と、軸部22と、押圧部23と、を備える。
【0020】
図3は、本実施形態のツール固定用ねじ20の概略模式図である。頭部21は、中心軸方向の長さが直径よりも小さい円柱形状を有している。本実施形態では、頭部21は、ツール固定用ねじ20において外径が最も大きい。頭部21は、一方の端部21aに、ドライバなど、ツール固定用ねじ20を回転させる工具を差込むための図示しない穴が形成されている。頭部21の側面21bには、凹凸が形成されている。これにより、頭部21の側面21bを指で直接つかんでツール固定用ねじ20を回転させることも可能である。なお、頭部21の形状や他の部分との大きさの関係は、これに限定されない。
【0021】
軸部22は、軸部22の中心軸でもある、ツール固定用ねじ20の中心軸C20に沿った方向の長さが直径よりも大きい円柱形状を有している。軸部22は、鉄によって形成されている。軸部22は、一方の端部22aが頭部21の他方の端部21cに接続されている。軸部22は、側面に雄ねじが形成されている。軸部22の雄ねじは、ねじ穴14の内壁に形成されている雌ねじと嵌合する。なお、軸部22の形状や他の部分との大きさの関係は、これに限定されない。
【0022】
押圧部23は、軸部22の他方の端部22bに設けられている。押圧部23は、ツールホルダ10を形成する材料の熱膨張係数以上の熱膨張係数を有する材料、例えば、SUS304などの鉄鋼材料によって形成される。押圧部23は、中心軸C20に沿った方向に延伸するように形成されており、側面23aに、雄ねじ(ねじ山)が形成されていない。押圧部23の中心軸C20に垂直な方向の幅(直径)は、軸部22の中心軸C20に垂直な方向の幅より小さい。
【0023】
押圧部23は、軸部22とは反対側の端部23bが摩擦撹拌接合用ツール30に接する。ツール固定用ねじ20をツールホルダ10のねじ穴14に嵌めるとき、ツール固定用ねじ20のうち、押圧部23側をねじ穴14に挿入し、ドライバなどによってツール固定用ねじ20を回転させる。これにより、ねじ穴14の雌ねじに沿ってツール固定用ねじ20がツールホルダ10の内側に向かって移動する。本実施形態では、押圧部23の一部は、ツールホルダ10の孔13に摩擦撹拌接合用ツール30を挿入し、ねじ穴14に嵌められるツール固定用ねじ20によって摩擦撹拌接合用ツール30をツールホルダ10に対して固定する状態において、ねじ穴14の内側に位置する(図1および図2参照)。
【0024】
摩擦撹拌接合用ツール30は、略円柱形状を有しており、窒化珪素系セラミック、または、サイアロンによって形成されている。これにより、金属からなるツールホルダ10の平均熱膨張係数と摩擦撹拌接合用ツール30の平均熱膨張係数との差は、比較的大きくなる。摩擦撹拌接合用ツール30は、複数の被加工部材を当接させた部分を攪拌し、複数の被加工部材どうしを接合させる。なお、摩擦撹拌接合用ツール30を形成する材料は、これに限定されない。
【0025】
摩擦撹拌接合用ツール30は、第1軸部31と、第2軸部32と、中間部33と、突起部34と、を備える。第1軸部31と第2軸部32とは、円柱形状を有しており、ツールホルダ10の孔13の内径よりわずかに小さい外径を有する。中間部33は、第1軸部31と第2軸部32との間に配置され、第1軸部31と第2軸部32とのそれぞれに接続している。中間部33は、図2に示すように、摩擦撹拌接合用ツール30の中心軸C30に垂直な断面において、断面形状が、円形状の一部を4か所切り取った形状を有している。中間部33は、外径が、第1軸部31および第2軸部32よりも小さい。中間部33には、ツール固定用ねじ20の押圧部23が接する、4つの当接面33aを有する。第1軸部31と第2軸部32と中間部33とは、突起部34を支持する。
【0026】
突起部34は、第1軸部31において、中間部33とは反対側に設けられている。突起部34は、図1に示すように、第1軸部31に設けられる側から離れるにしたがって、外径が小さくなるように形成されている。突起部34は、複数の被加工部材を当接させた部分に直接押し当てられる。
【0027】
図4は、本実施形態の摩擦撹拌接合用工具1Aの使用例を説明する図である。図4は、融点が1000℃以上の金属からなる複数の被加工部材M1を摩擦撹拌接合によって接合している状態を示している。摩擦撹拌接合用工具1Aを用いて、複数の被加工部材M1を接合するとき、摩擦撹拌接合用ツール30の第2軸部32からツールホルダ10の孔13に摩擦撹拌接合用ツール30を挿入し、ねじ穴14に嵌められるツール固定用ねじ20を用いて、摩擦撹拌接合用ツール30をツールホルダ10に対して固定する。このとき、ツール固定用ねじ20の押圧部23の端部23bが摩擦撹拌接合用ツール30の当接面33aに接触するように、ツール固定用ねじ20をねじ穴14に嵌めることで、摩擦撹拌接合用ツール30は、ツールホルダ10に対して固定される。ツールホルダ10に固定された摩擦撹拌接合用ツール30の突起部34を、複数の被加工部材M1を当接させた部分pM1に押し当て、摩擦撹拌接合用工具1を回転させる。これにより、突起部34が押し当てられた部分pM1は、摩擦熱によって軟化し、撹拌される。回転する摩擦撹拌接合用工具1Aを複数の被加工部材M1を当接させた部分pM1に沿って移動させることで、軟化し撹拌された部分が冷えて固まり、複数の被加工部材M1どうしが接合する。
【0028】
次に、本実施形態の摩擦撹拌接合用工具1Aにおけるツール固定用ねじ20の効果について、ツール固定用ねじ20とは異なる構成のツール固定用ねじを備える比較例と比較して説明する。ツール固定用ねじ20は、ツールホルダ10を形成する材料の熱膨張係数以上の熱膨張係数を有する材料によって形成されている押圧部23を備えており、温度変化による大きさの変化率は、ツールホルダ10の大きさの変化率よりも大きい。
【0029】
図5は、比較例の摩擦撹拌接合用工具の模式図である。図5に示す摩擦撹拌接合用工具90は、ツールホルダ10と、ツール固定用ねじ92と、摩擦撹拌接合用ツール30と、を備える。ツール固定用ねじ92は、頭部92aと、軸部92bと、を備えており、本実施形態のツール固定用ねじ20の押圧部23に相当する構成を備えていない。ツール固定用ねじ92は、ツールホルダ10のねじ穴14に嵌められ、ツールホルダ10の孔13に挿入されている摩擦撹拌接合用ツール30をツールホルダ10に対して固定する。
【0030】
比較例の摩擦撹拌接合用工具90によって被加工部材を接合するために、摩擦撹拌接合用ツール30を被加工部材に押し当てて回転させると、ツールホルダ10および摩擦撹拌接合用ツール30のいずれも高温となる。使用前の温度から使用後の高温への温度変化における、ツールホルダ10が有する孔13の内径の変化量は、摩擦撹拌接合用ツール30の外径の変化量より大きい。このため、ツールホルダ10と摩擦撹拌接合用ツール30との間に隙間が生じる。ツールホルダ10と摩擦撹拌接合用ツール30との間に隙間が生じると、摩擦撹拌接合用ツール30がツールホルダ10の内部で回転しやすくなる。また、熱膨張差によって、ツール固定用ねじ92による摩擦撹拌接合用ツール30を固定する力も弱くなるため、ツール固定用ねじ92における摩擦撹拌接合用ツール30と接する位置が摩擦撹拌接合用ツール30を固定した位置からずれる場合がある。摩擦撹拌接合用工具90が常温に戻ると、ツール固定用ねじ92に、ずれに起因する応力が作用し、摩擦撹拌接合用ツール30にツール固定用ねじ92が食い込み、ツール固定用ねじ92を取り外しづらくなるおそれがある。このため、比較例の摩擦撹拌接合用工具90では、摩擦撹拌接合用ツール30の交換に手間がかかり、摩擦撹拌接合の作業性が低下する。
【0031】
一方、本実施形態の摩擦撹拌接合用工具1Aでも、使用前の温度から使用時の高温への温度変化による、ツールホルダ10が有する孔13の内径の変化量は、摩擦撹拌接合用ツール30の外径の変化量より大きい。しかしながら、摩擦撹拌接合用工具1Aでは、押圧部23がツールホルダ10を形成する材料の熱膨張係数以上の熱膨張係数を有する材料によって形成されているため、ツールホルダ10の孔13の内径が大きくなっても、押圧部23が膨張することで、押圧部23と摩擦撹拌接合用ツール30との接触が維持される。これにより、ツール固定用ねじ20による摩擦撹拌接合用ツール30を固定する力が低下しにくいため、ツール固定用ねじ20における摩擦撹拌接合用ツール30と接する位置が摩擦撹拌接合用ツール30を固定した位置からずれることが抑制される。したがって、摩擦撹拌接合用工具90が使用前の温度に戻ったときでもツール固定用ねじ20を容易に取り外すことができる。
【0032】
以上説明した、本実施形態のツール固定用ねじ20によれば、ツール固定用ねじ20を備える摩擦撹拌接合用工具1Aを用いて被加工部材M1を接合するとき、摩擦撹拌接合用工具1Aが高温になり、ツールホルダ10と摩擦撹拌接合用ツール30との間に隙間が生じても、ツール固定用ねじ20と摩擦撹拌接合用ツール30との間には隙間は形成されにくい。これにより、ツール固定用ねじ20による摩擦撹拌接合用ツール30を固定する力が低下しにくいため、使用時においても、摩擦撹拌接合用ツール30は、ツールホルダ10に対してツール固定用ねじ20によって固定されたままとなり、使用後に摩擦撹拌接合用工具1Aが常温に戻ってもツール固定用ねじ20に作用する応力は、比較的小さくなる。したがって、摩擦撹拌接合用ツール30をツールホルダ10から取り外すためのツール固定用ねじ20の取り外しが容易になるため、摩擦撹拌接合の作業性を向上させることができる。
【0033】
また、本実施形態のツール固定用ねじ20によれば、押圧部23は、幅が軸部22の幅より小さいため、熱膨張することでツールホルダ10のねじ穴14に接触することを抑制できる。したがって、ツール固定用ねじ20がねじ穴14から外れにくくなることが抑制されるため、摩擦撹拌接合の作業性をさらに向上させることができる。
【0034】
また、本実施形態のツール固定用ねじ20によれば、押圧部23は、ツール固定用ねじ20の中心軸C20に沿った方向に延伸するように形成されており、側面に、ねじ山が形成されていないため、押圧部23がねじ穴14に接触することを抑制できる。したがって、ツール固定用ねじ20がねじ穴14から外れにくくなることが抑制されるため、摩擦撹拌接合の作業性をさらに向上させることができる。
【0035】
また、本実施形態のツール固定用ねじ20によれば、押圧部23は、軸部22より熱膨張しやすいため、軸部22が摩擦撹拌接合用ツール30に接する場合に比べ、ツール固定用ねじ20と摩擦撹拌接合用ツール30との間に隙間が形成されにくい。これにより、高温になっても、摩擦撹拌接合用ツール30は、ツールホルダ10に対してツール固定用ねじ20によって固定されたままとなり、摩擦撹拌接合用ツール30を取り外すときのツール固定用ねじ20の取り外しが容易になる。したがって、摩擦撹拌接合の作業性をさらに向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態のホルダ装置2Aによれば、押圧部23の一部は、ねじ穴14の内側に位置するため、押圧部23が比較的大きく移動することをねじ穴14によって規制することができる。これにより、摩擦撹拌接合用ツール30は、ツールホルダ10に対してツール固定用ねじ20によって固定されたままとすることができるため、摩擦撹拌接合用ツール30を取り外すときのツール固定用ねじ20の取り外しが容易になる。したがって、摩擦撹拌接合の作業性を向上することができる。
【0037】
また、本実施形態の摩擦撹拌接合用工具1Aによれば、摩擦撹拌接合用ツール30は、融点が1000℃以上の金属からなる複数の被加工部材M1を接合する。このため、摩擦撹拌接合用工具1A全体の温度が非常に高温になるものの、押圧部23によって、ツール固定用ねじ20と摩擦撹拌接合用ツール30との間に隙間は発生しにくい。これにより、摩擦撹拌接合用ツール30は、ツールホルダ10に対してツール固定用ねじ20によって固定されたままとすることができるため、摩擦撹拌接合用ツール30を取り外すときのツール固定用ねじ20の取り外しが容易になる。したがって、摩擦撹拌接合の作業性を向上することができる。
【0038】
また、本実施形態の摩擦撹拌接合用工具1Aによれば、摩擦撹拌接合用ツール30は、窒化珪素系セラミック、または、サイアロンによって形成されている。このため、熱膨張係数が小さい摩擦撹拌接合用ツール30とツールホルダ10との間の隙間が非常に大きくなりやすいものの、ホルダ装置2Aでは、ツール固定用ねじ20と摩擦撹拌接合用ツール30との間には隙間は形成されにくい。これにより、摩擦撹拌接合用ツール30は、ツールホルダ10に対してツール固定用ねじ20によって固定されたままとすることができるため、摩擦撹拌接合用ツール30を取り外すときのツール固定用ねじ20の取り外しが容易になる。したがって、摩擦撹拌接合の作業性を向上することができる。
【0039】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態のツール固定用ねじ40の断面図である。第2実施形態の摩擦撹拌接合用工具1Bが備えるツール固定用ねじ40は、第1実施形態のツール固定用ねじ20(図3)と比較すると、押圧部を形成する材料が異なる。
【0040】
第2実施形態の摩擦撹拌接合用工具1Bは、ツールホルダ10と、ツール固定用ねじ40とを備えるホルダ装置2Bと、摩擦撹拌接合用ツール30と、を備える。摩擦撹拌接合用工具1Bは、複数の被加工部材の当接部分を摩擦熱によって軟化させるとともに、撹拌することで、被加工部材同士を接合する。
【0041】
ツール固定用ねじ40は、頭部21と、軸部22と、押圧部43と、を備える。押圧部43は、軸部22の他方の端部22bに設けられている。押圧部43は、ツール固定用ねじ40の中心軸C40に沿った方向に延伸するように形成されている。押圧部43の側面43aには、ねじ山が形成されていない。押圧部43は、軸部22とは反対側の端部43bが摩擦撹拌接合用ツール30に接する。押圧部43は、ツールホルダ10を形成する材料の熱膨張係数以上の熱膨張係数を有するとともに、軸部22を形成する材料の熱膨張係数以上の熱膨張係数を有する。これにより、摩擦撹拌接合用工具1Bを使用して被加工部材を接合するとき、ツールホルダ10の孔13の内径が大きくなっても、押圧部43が第1実施形態のツール固定用ねじ20よりも膨張することで、押圧部43と摩擦撹拌接合用ツール30との接触を確実に維持することができる。
【0042】
以上説明した、本実施形態のツール固定用ねじ40によれば、摩擦撹拌接合用工具1Bの使用時においても、摩擦撹拌接合用ツール30は、ツールホルダ10に対してツール固定用ねじ40によって固定されたままとなる。これにより、使用後にツール固定用ねじ40に作用する応力は、比較的小さくなる。したがって、ツール固定用ねじ40の取り外しが容易になるため、摩擦撹拌接合の作業性を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態のツール固定用ねじ40によれば、押圧部43の熱膨張係数は、軸部22を形成する材料の熱膨張係数以上となっている。これにより、ツール固定用ねじ40と摩擦撹拌接合用ツール30との間には隙間はさらに形成されにくく、ツール固定用ねじ40による摩擦撹拌接合用ツール30を固定する力はさらに低下しにくい。したがって、摩擦撹拌接合の作業性をさらに向上させることができる。
【0044】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態のツール固定用ねじ50の断面図である。第3実施形態の摩擦撹拌接合用工具が備えるツール固定用ねじ50は、第1実施形態のツール固定用ねじ20(図3)と比較すると、軸部と押圧部との関係が異なる。
【0045】
第3実施形態の摩擦撹拌接合用工具は、ツールホルダ10と、ツール固定用ねじ50とを備えるホルダ装置と、摩擦撹拌接合用ツール30と、を備える。本実施形態の摩擦撹拌接合用工具は、複数の被加工部材の当接部分を摩擦熱によって軟化させるとともに、撹拌することで、被加工部材同士を接合する。
【0046】
ツール固定用ねじ50は、頭部21と、軸部22と、押圧部53と、を備える。押圧部53は、ツール固定用ねじ50の中心軸C50に沿った方向に延伸するように形成されている。押圧部53の側面53aには、ねじ山が形成されていない。押圧部53は、軸部22とは反対側の端部53bが摩擦撹拌接合用ツール30に接する。押圧部53は、ツールホルダ10を形成する材料の熱膨張係数以上の熱膨張係数を有する。
【0047】
押圧部53は、図7の白抜き矢印F3に示すように、軸部22の他方の端部22bから脱離可能なように設けられている。押圧部53は、他方の端部22bに接着剤などで固定されていてもよい。例えば、ツールホルダ10と摩擦撹拌接合用ツール30との熱膨張差に起因する応力がツール固定用ねじ50に作用することで、摩擦撹拌接合用ツール30にツール固定用ねじ50が食い込んでも、押圧部53を軸部22から脱離させることでツール固定用ねじ50の頭部21と軸部22とをツールホルダ10から取り外すことが可能である。これにより、摩擦撹拌接合用ツール30を交換することができる。
【0048】
以上説明した、本実施形態のツール固定用ねじ50によれば、本実施形態の摩擦撹拌接合用工具の使用時においても、摩擦撹拌接合用ツール30は、ツールホルダ10に対してツール固定用ねじ50によって固定されたままとなる。これにより、使用後にツール固定用ねじ50に作用する応力は、比較的小さくなる。したがって、ツール固定用ねじ50の取り外しが容易になるため、摩擦撹拌接合の作業性を向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態のツール固定用ねじ50によれば、例えば、摩擦撹拌接合用ツール30が押圧部53に食い込むことでツール固定用ねじ50が回転できなくなっても、押圧部53が軸部22から外れることでツール固定用ねじ50の頭部21と軸部22とはツールホルダ10から取り外すことができる。これにより、摩擦撹拌接合用ツール30を交換することができるため、摩擦撹拌接合の作業性を向上させることができる。
【0050】
<第4実施形態>
図8は、第4実施形態の摩擦撹拌接合用工具1Dの模式図である。第4実施形態の摩擦撹拌接合用工具1Dが備えるツール固定用ねじ60は、第1実施形態のツール固定用ねじ20(図3)と比較すると、押圧部の構成が異なる。
【0051】
第4実施形態の摩擦撹拌接合用工具1Dは、ツールホルダ10と、ツール固定用ねじ60とを備えるホルダ装置2Dと、摩擦撹拌接合用ツール30と、を備える。摩擦撹拌接合用工具1Dは、複数の被加工部材の当接部分を摩擦熱によって軟化させるとともに、撹拌することで、被加工部材同士を接合する。
【0052】
ツール固定用ねじ60は、頭部21と、軸部22と、押圧部材63と、を備える。本実施形態では、図8に示すように、軸部22は、ツール固定用ねじ60の中心軸C60に沿った方向の長さが、第1実施形態のツール固定用ねじ20の軸部22の長さよりも長い。ツール固定用ねじ60の軸部22は、孔13側の端部がねじ穴14から孔13の内側に飛び出している(図8参照)。
【0053】
押圧部材63は、軸部22の孔13の内側に飛び出している端部に設けられている。押圧部材63は、軸部22を形成する材料の熱膨張係数よりも大きい熱膨張係数を有する材料によって形成されている。押圧部材63は、摩擦撹拌接合用ツール30の当接面33aに接着剤などで固定されていてもよい。
【0054】
図9は、図8のB-B線断面図である。押圧部材63は、ツール固定用ねじ60の中心軸C60に対して垂直な方向の幅が、ねじ穴14の内径より大きい。すなわち、押圧部材63は、中心軸C60に対して垂直な方向の幅が、軸部22の幅よりも大きい。
【0055】
押圧部材63は、全体がツールホルダ10の孔13内に収容されている。押圧部材63は、図9に示すように、摩擦撹拌接合用ツール30の中心軸C30に対して垂直な断面での断面形状が、略台形形状となっている。押圧部材63は、摩擦撹拌接合用ツール30と接する側の端部63aが軸部22と接する側の端部63bよりも大きい。これにより、ツール固定用ねじ60は、第1実施形態のツール固定用ねじ20よりも広い面積で摩擦撹拌接合用ツール30に接することができる。
【0056】
以上説明した、本実施形態のツール固定用ねじ60によれば、摩擦撹拌接合用工具1Dの使用時においても、摩擦撹拌接合用ツール30は、ツールホルダ10に対してツール固定用ねじ60によって固定されたままとなる。これにより、使用後にツール固定用ねじ60に作用する応力は、比較的小さくなる。したがって、ツール固定用ねじ60の取り外しが容易になるため、摩擦撹拌接合の作業性を向上させることができる。
【0057】
また、本実施形態のツール固定用ねじ60によれば、押圧部材63の中心軸C60に対して垂直な方向の幅は、軸部22の幅よりも大きい。これにより、押圧部材63の強度を向上させることができる。
【0058】
また、本実施形態のツール固定用ねじ60によれば、押圧部材63では、摩擦撹拌接合用ツール30と接する側の端部63aが軸部22と接する側の端部63bよりも大きい。これにより、ツール固定用ねじ60による摩擦撹拌接合用ツール30を固定する力を大きくすることができるため、ツールホルダ10に対する摩擦撹拌接合用ツール30の回転をさらに抑制することができる。
【0059】
<第5実施形態>
図10は、第5実施形態の摩擦撹拌接合用工具1Eの模式図である。第5実施形態の摩擦撹拌接合用工具1Eが備えるツール固定用ねじ70は、第1実施形態のツール固定用ねじ20(図3)と比較すると、押圧部の構成が異なる。
【0060】
第5実施形態の摩擦撹拌接合用工具1Eは、ツールホルダ10と、ツール固定用ねじ70とを備えるホルダ装置2Eと、摩擦撹拌接合用ツール30と、を備える。摩擦撹拌接合用工具1Eは、複数の被加工部材の当接部分を摩擦熱によって軟化させるとともに、撹拌することで、被加工部材同士を接合する。
【0061】
ツール固定用ねじ70は、頭部21と、軸部22と、押圧部材73と、を備える。本実施形態では、図10に示すように、軸部22は、ツール固定用ねじ70の中心軸C70に沿った方向の長さが、第1実施形態のツール固定用ねじ20と同じ程度の長さとなっている。
【0062】
図11は、図10のC-C線断面図である。押圧部材73は、接続部分731と、当接部分732と、を有する。接続部分731は、軸部22の他方の端部22bに設けられている。接続部分731は、ツール固定用ねじ70の中心軸C70に垂直な方向の幅が、軸部22の中心軸C70に垂直な方向の幅より小さい。接続部分731の軸部22側の端部は、ねじ穴14の内側に位置し、軸部22とは反対側の端部は、孔13の内側に位置する。
【0063】
当接部分732は、接続部分731の軸部22とは反対側の端部に設けられている。当接部分732は、ツール固定用ねじ70の中心軸C70に垂直な方向の幅が、軸部22の中心軸C70に垂直な方向の幅より大きい。これにより、ツール固定用ねじ70は、第1実施形態のツール固定用ねじ20よりも広い面積で摩擦撹拌接合用ツール30に接することができる。当接部分732は、摩擦撹拌接合用ツール30の当接面33aに接着剤などで固定されていてもよい。
【0064】
以上説明した、本実施形態のツール固定用ねじ70によれば、摩擦撹拌接合用工具1Eの使用時においても、摩擦撹拌接合用ツール30は、ツールホルダ10に対してツール固定用ねじ70によって固定されたままとなる。これにより、使用後にツール固定用ねじ70に作用する応力は、比較的小さくなる。したがって、ツール固定用ねじ70の取り外しが容易になるため、摩擦撹拌接合の作業性を向上させることができる。
【0065】
また、本実施形態のツール固定用ねじ70によれば、ツール固定用ねじ70の押圧部材73は、摩擦撹拌接合用ツール30に接する当接部分732と、当接部分732と軸部22とを接続する接続部分731と、を有する。接続部分731は、軸部22側の端部がねじ穴14の内側に位置しており、軸部22とは反対側の端部が孔13内に位置し、当接部分732を支持する。これにより、接続部分731の長さは、接続部分731が摩擦撹拌接合用ツール30に直接接することができる長さに比べれば短くなるため、接続部分731が破損しにくくなる。
【0066】
<第6実施形態>
図12は、第6実施形態の摩擦撹拌接合用工具1Fの模式図である。第6実施形態の摩擦撹拌接合用工具1Fが備えるツール固定用ねじ80は、第1実施形態のツール固定用ねじ20(図2)と比較すると、ツールホルダの形状と押圧部の構成とが異なる。
【0067】
第6実施形態の摩擦撹拌接合用工具1Fは、ツールホルダ10と、ツール固定用ねじ80とを備えるホルダ装置2Fと、摩擦撹拌接合用ツール30と、を備える。ツールホルダ10は、円筒部12の内側に、摩擦撹拌接合用ツール30が挿入される孔13と、孔13の外側に孔13に連通する窪み15と、を有する。
【0068】
図13は、図12のD-D線断面図である。窪み15は、孔13の開口部分13aに連通する開口部分15aを有しており、ねじ穴14に連通する。本実施形態では、図13に示すように、円筒部12は、4つの窪み15を有する。
【0069】
ツール固定用ねじ80は、頭部21と、軸部22と、押圧部材83と、を備える。本実施形態では、ツール固定用ねじ80の軸部22は、押圧部材83側の端部がねじ穴14から窪み15の内側に飛び出している。
【0070】
押圧部材83は、軸部22の窪み15の内側に飛び出しているに設けられている。押圧部材83は、ツールホルダ10を形成する材料の熱膨張係数より大きく、かつ、軸部22を形成する材料の熱膨張係数以上の熱膨張係数を有する材料によって形成されている。押圧部材83は、全体がツールホルダ10の窪み15の内側に収容されている。押圧部材83は、図13に示すように、摩擦撹拌接合用ツール30は、中心軸C30に対して垂直な断面での断面形状が、略台形形状となっている。押圧部材83では、摩擦撹拌接合用ツール30と接する側の端部83aが軸部22と接する側の端部83bよりも大きい。これにより、ツール固定用ねじ80は、比較的広い面積で摩擦撹拌接合用ツール30に接することができる。押圧部材83は、摩擦撹拌接合用ツール30の当接面33aに接着剤などで固定されていてもよい。
【0071】
摩擦撹拌接合用工具1Fを使用するとき、ツールホルダ10が有する孔13の開口部分13aから、摩擦撹拌接合用ツール30を孔13に挿入する。このとき、4つの押圧部材83のそれぞれも、4つの窪み15のそれぞれの開口部分15aから窪み15に挿入される。摩擦撹拌接合用ツール30と4つの押圧部材83をツールホルダ10にセットしたのち、4つのねじ穴14のそれぞれに、ツール固定用ねじ80を軸部22側から挿入する。ねじ穴14に挿入される軸部22は、窪み15の内側において、すでにセットされている押圧部材83に当たり、さらに、軸部22を回転させることで押圧部材83を摩擦撹拌接合用ツール30に押し付け、摩擦撹拌接合用ツール30をツールホルダ10に固定する。
【0072】
以上説明した、本実施形態のツール固定用ねじ80によれば、摩擦撹拌接合用工具1Fの使用時においても、摩擦撹拌接合用ツール30は、ツールホルダ10に対してツール固定用ねじ80によって固定されたままとなる。これにより、使用後にツール固定用ねじ80に作用する応力は、比較的小さくなる。したがって、ツール固定用ねじ80の取り外しが容易になるため、摩擦撹拌接合の作業性を向上させることができる。
【0073】
また、本実施形態のツール固定用ねじ80によれば、押圧部材83では、摩擦撹拌接合用ツール30と接する側の端部83aが軸部22と接する側の端部83bよりも大きい。これにより、ツール固定用ねじ80による摩擦撹拌接合用ツール30を固定する力を大きくすることができるため、ツールホルダ10に対する摩擦撹拌接合用ツール30の回転をさらに抑制することができる。
【0074】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0075】
[変形例1]
上述の実施形態では、押圧部または押圧部材には、雄ねじ(ねじ山)が形成されていないとした。雄ねじは形成されていてもよい。雄ねじが形成されていないと、押圧部または押圧部材がツールホルダ10のねじ穴14の雌ねじに接触することを抑制できる。
【0076】
[変形例2]
第2実施形態では、押圧部43は、ツールホルダ10を形成する材料の熱膨張係数以上の熱膨張係数を有するとともに、軸部22を形成する材料の熱膨張係数以上の熱膨張係数を有するとした。しかしながら、押圧部を形成する材料の熱膨張係数の大きさはこれに限定されない。ツールホルダ10を形成する材料の熱膨張係数以上であればよい。
【0077】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0078】
(適用例1)
摩擦撹拌接合用ツールを保持するツールホルダのねじ穴に嵌められ、前記ツールホルダが有する孔に挿入される前記摩擦撹拌接合用ツールを前記ツールホルダに対して固定するツール固定用ねじであって、
側面に雄ねじが形成されている軸部と、
前記軸部の端部に設けられ、前記摩擦撹拌接合用ツールに接する押圧部であって、前記ツールホルダを形成する材料の熱膨張係数以上の熱膨張係数を有する材料によって形成される押圧部と、を備える、
ことを特徴とするツール固定用ねじ。
(適用例2)
適用例1に記載のツール固定用ねじであって、
前記押圧部の幅は、前記軸部の幅より小さい、
ことを特徴とするツール固定用ねじ。
(適用例3)
適用例1または適用例2に記載のツール固定用ねじであって、
前記押圧部は、
前記軸部の中心軸に沿った方向に延伸するように形成されており、
側面に、ねじ山が形成されていない、
ことを特徴とするツール固定用ねじ。
(適用例4)
適用例1から適用例3のいずれか一例に記載のツール固定用ねじであって、
前記押圧部は、熱膨張係数が、前記軸部の熱膨張係数よりも大きい材料によって形成されている、
ことを特徴とするツール固定用ねじ。
(適用例5)
前記摩擦撹拌接合用ツールを保持するホルダ装置であって、
適用例1から適用例4のいずれか一例に記載のツール固定用ねじと、
前記摩擦撹拌接合用ツールが挿入される前記孔と、前記固定用ねじが嵌められる前記ねじ穴と、を有する前記ツールホルダと、を備え、
前記孔に前記摩擦撹拌接合用ツールを挿入し、前記ねじ穴に嵌められる前記固定用ねじによって、前記摩擦撹拌接合用ツールを前記ツールホルダに対して固定する状態において、前記押圧部の一部は、前記ねじ穴の内側に位置する、
ことを特徴とするホルダ装置。
(適用例6)
摩擦撹拌接合用工具であって、
適用例5に記載のホルダ装置と、
前記ホルダ装置に保持される前記摩擦撹拌接合用ツールであって、複数の被加工部材を当接させた部分を攪拌し、複数の前記被加工部材どうしを接合させる前記摩擦撹拌接合用ツールと、を備え、
前記摩擦撹拌接合用ツールは、融点が1000℃以上の金属からなる複数の前記被加工部材を接合する、
ことを特徴とする摩擦撹拌接合用工具。
(適用例7)
適用例6に記載の摩擦撹拌接合用工具であって、
前記摩擦撹拌接合用ツールは、窒化珪素系セラミック、または、サイアロンによって形成されている、
ことを特徴とする摩擦撹拌接合用工具。
【符号の説明】
【0079】
1A,1B,1D,1E,1F…摩擦撹拌接合用工具
2A,2B,2D,2E,2F…ホルダ装置
10…ツールホルダ
11…孔
14…ねじ穴
20,40,50,60,70,80…ツール固定用ねじ
22…軸部
23,43,53…押圧部
30…摩擦撹拌接合用ツール
63,73,83…押圧部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13