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特開2024-130031半導体装置、半導体装置の製造方法及び電力変換装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130031
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】半導体装置、半導体装置の製造方法及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/28 20060101AFI20240920BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20240920BHJP
   H01L 23/48 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01L23/28 A
H01L25/04 C
H01L23/48 P
H01L23/48 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039512
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】日下部 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】内田 祥久
(72)【発明者】
【氏名】柳本 辰則
(72)【発明者】
【氏名】池田 一貴
【テーマコード(参考)】
4M109
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109BA04
4M109CA02
4M109CA21
4M109EA02
4M109EA10
4M109FA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リード電極と半導体素子とを接合層を介して直接接合された構造において、接合層が所定の厚みを有しているか否かを、外観検査によって確認する半導体装置、半導体装置の製造方法及び半導体装置を搭載した電力変換装置を提供する。
【解決手段】半導体装置10は、絶縁基板12又はリードフレーム上に載置された半導体素子15と、半導体素子15上に形成された接合層13aと、外部電極19cに電気的に接続された本体板部19aと、本体板部19aとの接続部分として一端が繋がった状態で本体板部19aから切り出された片持ち板部19bを有するリード電極19と、を備え、片持ち板部19bは、本体板部19aに対し半導体素子15の方向に向かって屈曲し、他端が接合層13aの中に入り込んでおり、上面の少なくとも一部が接合層13aにより覆われている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板又はリードフレーム上に載置された半導体素子と、
前記半導体素子上に形成された接合層と、
外部電極に電気的に接続された本体板部、及び前記本体板部との接続部分として一端が繋がった状態で前記本体板部から切り出された片持ち板部を有するリード電極と、
を備え、
前記片持ち板部は、前記本体板部に対し前記半導体素子の方向に向かって屈曲し、他端が前記接合層の中に入り込んでおり、上面の少なくとも一部が前記接合層により覆われていること、
を特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記片持ち板部は、前記上面に目盛りが設けられた請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記片持ち板部は、前記一端から前記他端にかけて段構造で形成された請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記片持ち板部は、可撓性を有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記片持ち板部は、前記半導体素子と接触し変形している、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体素子を収容するケースと、
前記ケースに一部が支持され、前記リード電極と電気的に接合された外部電極と、
を有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
半導体素子上に接合層を形成する、接合層形成工程と、
リード電極の本体板部との接続部分として一端が繋がった状態で前記本体板部から切り出された片持ち板部の他端を、前記接合層内に入り込ませ前記半導体素子上に接合する、直接接合工程と、
前記接合層から露出した前記片持ち板部の外観検査によって、前記接合層が所定の厚みを有しているか否かを判定する、判定工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記判定工程は、前記外観検査が画像認識を用いて行われる、
請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の半導体装置を搭載した電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置、半導体装置の製造方法及び電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置などに用いられる半導体装置は、大電流化、長寿命化、高信頼性を実現する技術として、リード電極と半導体素子とを金属ワイヤによって接続するのではなく、リード電極と半導体素子とを接合層を介して直接接合する技術が知られている。リード電極と半導体素子とを接合層を介して直接接合された構造の場合、リード電極及び半導体素子などは熱膨張係数の異なる材質で構成されているため、熱膨張係数の違いに起因する応力が接合層に加わる。それゆえ、接合層で剥離が生じないよう、接合層が一定の厚みを有していること、ボイドの発生が抑制されていることなどが重要である。例えば、従来技術の一つとして、特許文献1のように、はんだ溶融時に発生するガスを外部へ逃がすための孔がリード電極の接合面に設けられる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63-090160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された従来技術では、リード電極の接合面に設けられた孔から接合層を目視することは可能だが、実際に形成された接合層の厚みまでは確認できない。それゆえ、接合層が所定の厚みを有しているか否かを、外観検査で確認することができないという課題があった。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、リード電極と半導体素子とを接合層を介して直接接合された構造において、接合層が所定の厚みを有しているか否かを、外観検査によって確認することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る半導体装置は、絶縁基板又はリードフレーム上に載置された半導体素子と、半導体素子上に形成された接合層と、外部電極に電気的に接続された本体板部、及び本体板部との接続部分として一端が繋がった状態で本体板部から切り出された片持ち板部を有するリード電極と、を備え、片持ち板部は、本体板部に対し半導体素子の方向に向かって屈曲し、他端が接合層の中に入り込んでおり、上面の少なくとも一部が接合層により覆われていること、を特徴とする半導体装置である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、リード電極と半導体素子とを接合層を介して直接接合された構造において、接合層が所定の厚みを有しているか否かを、外観検査によって確認することができる半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る半導体装置10の断面模式図。
図2】実施の形態1に係る半導体装置10の上面図においてリード電極が示された範囲を抜粋した図。
図3】実施の形態1の変形例1に係る半導体装置20の断面模式図。
図4】実施の形態1の変形例2に係る半導体装置20の上面図においてリード電極が示された範囲を抜粋した図。
図5】実施の形態2に係る半導体装置30の断面模式図。
図6】従来技術を適用した半導体装置において、半導体素子15とリード電極41との距離が離れた場合の断面模式図。
図7】実施の形態2に係る半導体装置において、半導体素子15とリード電極31との距離が離れた場合の断面模式図。
図8】実施の形態3に係る片持ち板部の構造例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示に係る半導体装置の一例を示すが、以下に示す実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変形して実施することができる。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る半導体装置10の断面模式図であり、図2は、半導体装置10の上面図においてリード電極19が示された範囲を抜粋した図である。
まず、図1に示すように半導体装置10は、ベース板11、絶縁基板12、接合層13a、接合層13b、接合層13c、バンプ14、半導体素子15、接着剤16、封止材17、ケース18、リード電極19及び外部電極19cを有している。ベース板11において絶縁基板12が接合される面の方向を上とし、ベース板11において絶縁基板12が接合されない面の方向を下として、半導体装置10の具体的な構成を以下に示す。
【0011】
半導体装置10は、ベース板11上に、接合層13cによって絶縁基板12が接合されている。絶縁基板12は、絶縁層12bの下面に回路パターン12cが形成され、絶縁層12bの上面に回路パターン12aが形成されたものである。また、絶縁基板12の上面にはバンプ14が形成されており、絶縁基板12上にはバンプ14を介して載置された半導体素子15が、接合層13bによって接合されている。半導体素子15上には、接合層13aによってリード電極19が接合されている。リード電極19には、半導体素子15の方向へ屈曲して接合層13aに埋没し、片持ち板部19bの上面の少なくとも一部が接合層13aによって覆われている。ここで、片持ち板部19bの上面とは、片持ち板部19bが半導体素子15と対向する面とは反対の面である。したがって、片持ち板部19bの下面は、片持ち板部19bが半導体素子15と対向する面である。さらに、半導体素子15を収容するケース18が設けられ、ケース18は、ベース板11上に接着剤16によって接合されている。また、ケース18は、リード電極19と電気的に接続された外部電極19cを支持している。ケース18内に収容された半導体素子15は、封止材17によって封止されている。
【0012】
ベース板11は、熱伝導性に優れる材料が好ましく、具体的には、アルミニウム(Al)又は銅(Cu)等が用いられる。
絶縁層12bは、熱伝導性に優れる絶縁体が好適である。絶縁体は、セラミック又は樹脂が使用される。具体例としては、窒化アルミニウム(AlN)又は窒化ケイ素(Si)等が用いられる。絶縁層12bの上面の回路パターン12a及び絶縁層12bの下面に回路パターン12cの材料には、例えば、アルミ二ウム(Al)、銅(Cu)等が用いられる。
【0013】
また、接合層13a、13b及び13cとしては、はんだが用いられ、バンプ14は、例えばアルミ二ウム(Al)が用いられる。尚、はんだに代えて、銀等の金属粒子を有機溶媒に分散させたペースト材を用いてもよい。
【0014】
半導体素子15は、Siを用いた半導体素子に加え、Siに比べて大きなバンドギャップを有するワイドバンドギャップ半導体を用いた半導体素子も含まれる。ワイドバンドギャップ半導体の具体例としては、例えば、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンド(C)等である。また、半導体素子の種類としては、特に限定されるものではなく、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT及びダイオードが1つの半導体チップとして集積されたRC-IGBT(Reverse Conducting IGBT)又はHEMT(High Electron Mobility Transistor)等の半導体素子について、適用可能である。尚、簡単のため、図1では絶縁基板12上に搭載されている半導体素子の個数が、半導体素子15の1つのみの場合を示しているが、これに限定されず、用途に応じて必要な種類と必要な個数の半導体素子を搭載してよい。
【0015】
接着剤16は、代表例として、シリコーン系又はエポキシ系の接着剤が使用される。
【0016】
封止材17は、ケース18内に収容された半導体素子15及びリード電極19等との密着性を確保できる弾性率を有し、信頼性を確保できる耐熱温度を有していることが望ましい。封止材17は、例えば、200mPa・s程度以下の弾性率を有し、150℃程度以上の耐熱温度を有していることが望ましい。封止材17の具体例としては、シリコーンゲル又はエポキシ樹脂等が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0017】
ケース18は、半導体装置の使用温度領域において熱変形しない軟化温度を有し、絶縁性を有した樹脂で構成される。ケース18の具体例としては、軟化温度が280℃以上であるPoly Phenylene Sulfide(PPS)などがあるが、これに限定するものではない。
【0018】
リード電極19は、本体板部19a及び片持ち板部19bを有し、厚みが0.5mm程度以上2.0mm程度以下の平板であり、材料としては、例えばCuまたはCuを含む材料で構成される。リード電極19及び外部電極19cは、図1においては一体形成された一つの電極としての形態を示しているが、電気的に接続されていればよく、個別に構成されたリード電極19と外部電極19cとが、はんだ、溶接又は超音波接合等を用いた接続をはじめ、半導体装置内の回路パターンを介して電気的に接続された形態でもよい。また、図1及び図2に示す通り、リード電極19には、外部電極19cに電気的に接続された本体板部19a、及び本体板部19aとの接続部分として一端が繋がった状態で本体板部19aから切り出された片持ち板部19bを有する。片持ち板部19bは、本体板部19aに対し半導体素子15の方向に向かって斜めに屈曲し、他端が接合層13aの中に入り込んでおり、接合層13aを介して半導体素子15と電気的に接続されている。ここで、接合層13aの厚みは、片持ち板部19bの厚み以上であって、0.5mm程度以上10.0mm程度以下であり、接合層13aの一部が片持ち板部19bの上面の少なくとも一部を覆っている状態である。これは、接合層13aが所望の厚みを満たす場合に、接合層13aが片持ち板部19bの上面の少なくとも一部を覆うよう、例えば片持ち板部19bの厚み、長さ及び屈曲角度並びにリード電極19と半導体素子との距離が設計されたものであり、半導体装置毎に応じた仕様を適用可能である。つまり、接合層13aが所定の厚みを満足する場合は、片持ち板部19bの上面の少なくとも一部が接合層13aによって覆われ、接合層13aが所定の厚みを満足しない場合は、片持ち板部19bの上面は接合層13aによって覆われない仕様を適用できる。すなわち、超音波、X線又はレーザー等を利用した検査装置による非破壊検査を行わなくとも、片持ち板部19bの上面の少なくとも一部が接合層13aによって覆われているか否かを外観から確認することによって、接合層13aの厚みが所定の厚みを満足しているか否かを確認できる構造である。尚、図2では、片持ち板部19bの形状は、本体板部19aと接続された一辺を固定端とし、自由端となる対辺を含む他の三辺を打ち抜いた四角形の場合を示しているが、これに限るものではなく、片持ち板部19bの上面の少なくとも一部が接合層13aによって覆われているか否かが判断可能であれば、台形、三角形、その他任意の形状を適用可能である。
【0019】
尚、図1では、バンプ14と接合層13bとを介して、絶縁基板12上に半導体素子15を載置しているが、バンプ14を有さない構成としてもよい。また、後述する実施の形態1の変形例1でも示すが、半導体素子15を載置した絶縁基板12の代わりにリードフレームを適用しても良い。さらに、図1では、本開示の説明を目的としており、半導体装置10内において半導体素子15等を電気的に接続するための信号線、ワイヤ、信号端子等は図示を省略している。また、上述した各材料は代表例を示すものであり、本開示の効果を得られる範囲であれば、これらに限定するものではない。
【0020】
次に、半導体装置10の製造方法を以下に示す。
まず、半導体素子接合工程として、絶縁基板12の下面とベース板11とを接合層13cを介して接合し、絶縁基板12の上面と半導体素子15とを接合層13bを介して接合する。接合方法としては、接合層13b及び13cに適用される接合材が融点を超える温度に加熱され、ベース板11、絶縁基板12及び半導体素子15は接合層13b及び13cを介して接合する。尚、接合層13b及び接合層13cを形成する接合材としては、あらかじめ成形された板はんだ等を使用しても良く、スクリーン印刷又はディスペンス等によって塗布するはんだペースト等でも良い。
【0021】
次に、ケース接着工程として、ケース18とベース板11とを接着剤16を用いて接合する。接合にあたっては、クランプ治具等でケース18とベース板11とを固定し、接着剤16を加熱により固化させる処理等が含まれても良い。また、ケース18とベース板11はタッピングねじ(図示しない)等でさらに固定しても良い。
【0022】
次に、接合層形成工程として、半導体素子15上に接合層13aを形成する。接合層13aは、リード電極19を半導体素子15上に載置する前に、半導体素子15上にディスペンス塗布、スクリーン印刷又は他の方法で供給しても良く、リード電極19を載置した後に片持ち板部19bを形成によって生じたリード電極19の開口部分からディスペンス供給してもよい。尚、半導体素子接合工程及びケース接着工程等、他の工程において、予め半導体素子15上にはんだを流しておいても良い。
【0023】
次に、直接接合工程として、接合層13aを介して半導体素子15上に片持ち板部19bを有したリード電極19を接合する。ここでは、簡単のため、リード電極19にはプレス加工等によって予め片持ち板部19bが形成されているものとする。接合層13aを介して半導体素子15上にリード電極19を載置した後、接合層13aを構成する接合材の融点を超える温度に加熱することによって、半導体素子15上に片持ち板部19bを有したリード電極19が接合される。
【0024】
次に、判定工程として、接合層13aから露出した片持ち板部19bの外観検査によって、接合層13aの厚みが所定の厚みを満足しているか否かを判定する。判定方法としては、目視検査により、片持ち板部19bの上面の少なくとも一部が接合層13aによって覆われているか否かを確認することによって、接合層13aの厚みが所定の厚みを満足しているか否かを判定する。尚、外観検査の方法としては、光学顕微鏡を用いた目視によって判定する方法のほか、カメラを用いて撮像した画像により判定する方法でもよい。さらに、自動検査装置等において、撮像した画像に対して画像認識を用い、予め決められたパターンと撮像した画像との比較により自動判定する方法又はAI技術により学習したパターンと撮像した画像との比較により自動判定する方法等も使用可能である。
【0025】
次に、接続工程として、半導体装置内の半導体素子15、回路パターン12a、回路パターン12c及びその他信号回路(図示せず)等に対して、制御に必要な電気的接続を行う。具体的には、アルミニウム(Al)、金(Au)等のワイヤを超音波接合することで電気的接続を行うが、これに限るものではない。
【0026】
次に、封止工程として、ケース18内を封止材17によって封止する。封止材17としては、上述の通りシリコーンゲル、エポキシ樹脂等を用いることが多いがこれに限定するものではなく、所望の耐熱温度、線膨張係数、弾性率等の物性値を有した封止材を適用可能である。また、必要に応じて、封止材17を硬化させるためのキュア処理を行う。
以上により、半導体装置10を製造することができる。尚、製造過程及び製造後における電気特性検査等については、任意に追加可能である。
【0027】
このように構成された半導体装置を適用することにより、片持ち板部19bの上面の少なくとも一部が接合層13aによって覆われているか否かを外観から確認することによって、接合層13aが所定の厚みを満足しているか否かを判断することができる。
【0028】
以上のとおり、実施の形態1に係る半導体装置10は、絶縁基板12又はリードフレーム上に載置された半導体素子15と、半導体素子15上に形成された接合層13aと、外部電極19cに電気的に接続された本体板部19a、及び本体板部19aとの接続部分として一端が繋がった状態で本体板部19aから切り出された片持ち板部19bを有するリード電極19と、を備え、片持ち板部19bは、本体板部19aに対し半導体素子15の方向に向かって屈曲し、他端が接合層13aの中に入り込んでおり、接合層13aが所定の厚みを超える場合、上面の少なくとも一部が接合層13aにより覆われており、接合層13aが所定の厚み以下の場合、上面が接合層13aにより覆われていないこと、という特徴を備える。
【0029】
このような構成によれば、リード電極19と半導体素子15とを接合層13aを介して直接接合された構造において、接合層13aが所定の厚みを有しているか否かを外観検査によって確認できる半導体装置を得ることができる。また、外観検査を適用できることにより、非破壊検査を適用する場合に比べ製造コストの増大を抑制することができる。
【0030】
また、実施の形態1に係る半導体装置10の製造方法は、半導体素子15上に接合層13aを形成する、接合層形成工程と、リード電極19の本体板部19aとの接続部分として一端が繋がった状態で本体板部19aから切り出された片持ち板部19bの他端を、接合層13a内に入り込ませ半導体素子15上に接合する、直接接合工程と、接合層13aから露出した片持ち板部19bの外観検査によって、接合層13aが所定の厚みを有しているか否かを判定する、判定工程と、を備える。
【0031】
このような構成によれば、リード電極19と半導体素子15とを接合層13aを介して直接接合された構造において、接合層13aが所定の厚みを有しているか否かを外観検査によって確認できる半導体装置の製造方法を提供できる。
【0032】
実施の形態1の変形例1.
図3は、実施の形態1の変形例1に係る半導体装置20の断面模式図である。
図3に示す通り、半導体装置20は、リードフレーム21、接合層13a、接合層13b、バンプ14、半導体素子15、封止材17、リード電極19及び外部電極19cを有している。リードフレーム21において半導体素子15が接合される面の方向を上とし、リードフレーム21において半導体素子15が接合されない面の方向を下として、半導体装置20の具体的な構成を以下に示す。半導体装置20は、絶縁基板ではなくリードフレーム上に半導体装置等を載置し、ケースを有さずに封止材で半導体装置全体を封止された、リードフレームパッケージの形態としている点で実施の形態1で示した半導体装置10と異なる。他の構成は、実施の形態1と同様である。半導体装置20は、リードフレーム21上に、バンプ14を介して載置された半導体素子15が、接合層13bによって接合されている。半導体素子15、リード電極19及びリードフレーム21は封止材17により封止され、封止材17からは外部電極19cが露出している。それ以外の構成は実施の形態1と同様である。尚、半導体装置20では、半導体素子15を載置していないリードフレーム21の裏面は、封止材17のみで封止された構成を示したが、これに限らず、リードフレーム21の裏面に絶縁シートを介してヒートスプレッダを搭載した構成等を採用しても良く、限定されるものではない。また、リードフレーム21の一方の面に、回路パターンを有していてもよい。
【0033】
このように構成された半導体装置を適用することにより、リードフレームパッケージの形態をした半導体装置であっても、片持ち板部19bの上面の少なくとも一部が接合層13aによって覆われているか否かを外観から確認することによって、接合層13aが所定の厚みを満足しているか否かを判断することができる。
【0034】
以上のとおり、実施の形態1の変形例1に係る半導体装置20は、リードフレーム21上に載置された半導体素子15と、前記半導体素子15上に形成された接合層13aと、前記接合層13aを介して前記半導体素子15に接合され、前記半導体素子15の方向へ屈曲して前記接合層13aに接触する片持ち板部19bを有するリード電極19と、を備え、前記接合層13aは、所定の厚みを超える場合、前記片持ち板部19bの上面の少なくとも一部を覆い、所定の厚み以下場合、前記片持ち板部19bの上面に乗り上げない、という特徴を備える。
【0035】
このような構成によれば、実施の形態1と同様に、リード電極19と半導体素子15とを接合層13aを介して直接接合された構造において、接合層13aが所定の厚みを有しているか否かを外観検査によって確認できる半導体装置を得ることができる。
【0036】
実施の形態1の変形例2.
図4は、実施の形態1の変形例2に係るリード電極22の上面図である。
図4に示す通り、実施の形態1の変形例2に係る半導体装置は、片持ち板部22aの上面に目盛り23が設けられている点で、実施の形態1と異なる。他の構成は、実施の形態1と同様である。目盛り23の形成方法としては、打刻、インクによる印字又はレーザーマーキング等による形成方法が挙げられるが、これに限られるものではなく任意に適用可能である。また、図4においては、簡単のため、目盛り23が単純に等間隔の場合を示している。これにより、接合層13aが所定の厚みを満足しているか否かだけでなく、例えば、接合層13aが所定の厚みの許容範囲内に収まっているか否か等も、外観検査によって判断することができる。他の例としては、接合層13aが収まるべき厚みの上限値と下限値を示す目盛りを設ける場合や、製品毎の仕様に応じた独自の基準線を設けることも可能となる。これにより、目盛りを設けない場合に比べ、外観検査による接合層13aの厚さの検査精度を向上することができる。
【0037】
以上のとおり、実施の形態1の変形例2に係る半導体装置は、実施の形態1に記載の半導体装置の構成に加え、片持ち板部22aは、上面に目盛り23が設けられたことを特徴とする。
【0038】
このような構成によれば、リード電極22と半導体素子15とを接合層13aを介して直接接合された構造において、実施の形態1と同様の効果に加え、片持ち板部22aの上面が接合層13aによって覆われた範囲について、目盛り23を用いて確認することができるため、接合層13aが所定の厚みを満足しているか否かをより精度良く外観検査によって確認できる、半導体装置を得ることができる。
【0039】
実施の形態2.
図5は、実施の形態2に係る半導体装置30の断面模式図である。図6は、従来技術を適用した半導体装置40において、半導体素子15とリード電極41との距離が離れた場合の断面模式図であり、図7は、実施の形態2に係る半導体装置30において、半導体素子15とリード電極31の距離が離れた場合の断面模式図である。尚、図6図7とにおいては、簡単のため、半導体素子とリード電極との接合箇所を中心に拡大した図である。
図5に示す通り、実施の形態2に係る半導体装置30は、可撓性を有した片持ち板部31aが半導体素子15の上面に接触し、変形している点で、実施の形態1と異なる。他の構成は、実施の形態1と同様である。片持ち板部31aが半導体素子15の上面に接触し、変形することによって、半導体素子15とリード電極31との距離が短くなる方向に変化した場合も長くなる方向に変化した場合も、半導体素子15の上面に対して片持ち板部31aが追従することができる。例えば、直接接合工程においては、半導体装置30を構成する部品の形状や寸法の公差及び加熱による変形等に伴い、半導体素子15とリード電極31との距離に変化が生じ得る。従来技術の半導体装置では、半導体素子とリード電極との距離に変化が生じた場合、接合層13aが距離の変化に追従できずに接合不良や破損等の不具合が生じる原因になり得る。一方で、実施の形態2に係る半導体装置では、片持ち板部31aを含むリード電極31は可撓性を有するため、半導体素子15とリード電極31との距離の変化に片持ち板部31aが追従できるため、従来に比べ不具合の発生を抑制することができる。
【0040】
より具体的な一例として、半導体装置とリード電極との距離が長くなる方向へ変化した場合について、図6図7とを用いて示す。図6に示すように、従来技術を適用した半導体装置においては、半導体素子15とリード電極41との距離が長くなった場合、半導体素子15とリード電極41との間における接合層13aの一部の断面積が小さくなる方向に変形する。接合層13aにおいて断面積が小さくなった箇所は、変形前に比べて単位面積当たりの電流密度が高くなり、大電流が流れた場合等に局所的な発熱を生じて故障の原因になり得るため、結果として半導体装置の寿命の低下につながり得る。一方、図7に示すように、実施の形態2に係る半導体装置においては、半導体素子15とリード電極31との距離が長くなった場合であっても、半導体素子15の上面に対して片持ち板部31aが追従する方向に変形する。半導体素子15の上面に対して片持ち板部31aが追従する方向に変形することにより、半導体素子15とリード電極31との間における接合層13aの断面積が小さくなることを抑制し、電気的接続が従来に比べ維持されやすくなる。これは、半導体素子とリード電極との距離が短くなった場合であっても同様のことが言え、従来技術の半導体装置では、半導体素子15とリード電極31との間で応力が生じることによって半導体装置の損傷が生じ得る。一方、実施の形態2の半導体装置では、可撓性を有した片持ち板部31aが変形することによって、半導体素子15とリード電極31との間の応力を吸収するため、半導体素子15の損傷を防止することができる。つまり、可撓性を有した片持ち板部31aが半導体素子15の上面に接触し、変形した状態の半導体装置30を構成することにより、半導体素子15とリード電極31との距離が短くなる方向へ変化した場合であっても長くなる方向へ変化した場合であっても、半導体素子15とリード電極31との間で生じる不具合を防止することができる。尚、半導体素子15とリード電極31との距離が短くなる方向の変形のみが懸念される場合は、半導体素子15とリード電極31との距離が短くなることによって生じる応力を吸収できる機能があれば良いため、可撓性を有した片持ち板部31aが半導体素子15の上面に必ずしも接触している必要はない。
【0041】
以上の通り、実施の形態2に係る半導体装置30は、実施の形態1に記載の半導体装置の構成に加え、片持ち板部31aは、可撓性を有することを特徴とする。
【0042】
このような構成によれば、リード電極31と半導体素子15とを接合層13aを介して直接接合された構造において、実施の形態1と同様の効果に加え、半導体素子15とリード電極31との距離が短くなることによって生じる応力を吸収できる、半導体装置30を得ることができる。
【0043】
また、実施の形態2に係る半導体装置30は、実施の形態1に記載の半導体装置の構成に加え、片持ち板部31aは、半導体素子15と接触し、変形していることを特徴とすることもできる。
【0044】
このような構成によれば、リード電極31と半導体素子15とを接合層13aを介して直接接合された構造において、実施の形態1と同様の効果に加え、半導体素子15とリード電極31との距離が短くなる方向へ変化した場合であっても長くなる方向へ変化した場合であっても、半導体素子15とリード電極31との間で生じる不具合を防止することができる、半導体装置を得ることができる。
尚、実施の形態2では片持ち板部31aが可撓性を有する場合を示したが、応力を吸収できる効果が得られれば良く、片持ち板部31aが弾性を有する場合であっても良い。
【0045】
実施の形態3.
図8は、実施の形態3に係る片持ち板部の構造例を示す斜視図である。図8(a)は、本体板部に接続された一端から他端にかけて半導体素子の方向に向かう階段状の段構造を有した片持ち板部である。図8(b)は、本体板部に接続された一端から他端にかけて半導体素子の方向に向かう螺旋状の段構造を有した片持ち板部である。図8(c)は、本体板部に接続された一端から他端にかけて半導体素子の方向に向かう入れ子状の段構造を有した片持ち板部である。
図8(a)、(b)及び(c)に示す通り、実施の形態3に係る半導体装置は、片持ち板部が、本体板部に接続された一端から半導体素子の方向に向かう段構造を有している点で、実施の形態1と異なる。他の構成は、実施の形態1と同様である。
図8(a)、(b)及び(c)に示した片持ち板部を適用することにより、接合層13aが片持ち板部を覆う範囲に応じて、接合層13aから露出した片持ち板部を上から見た形状が異なる。つまり、接合層13aから露出した片持ち板部の形状を確認すことによって、接合層13aが所定の厚みを満足しているか否かだけでなく、例えば、接合層13aが所定の厚みの許容範囲内に収まっているか否か等も、外観検査によって判断することができる。これにより、片持ち板部に目盛り線を設けなくとも、実施の形態1の変形例2と同様に、外観検査による接合層13aの厚さの検査精度を向上することができる。
さらに、実施の形態3の場合、接合層13aから露出した片持ち板部を上から見た形状は、接合層13aの厚みに応じて連続的に変化するだけではなく、接合層13aの厚みが片持ち板部の段構造を超えるか否かによって異なる形状を示すため、目視による検査の場合だけでなく画像認識を用いる場合においても、検査精度の向上が見込める。
尚、ここで指す、本体板部に接続された一端から半導体素子の方向に向かう段構造とは、上述の通り、接合層13aの厚みに応じて、接合層13aから露出した片持ち板部の上から見た形状が異なるものであれば良いため、図8(a)、(b)及び(c)に限定するものではなく、その他の任意の形状を含むものである。
【0046】
以上のとおり、実施の形態3に係る半導体装置は、実施の形態1に記載の半導体装置の構成に加え、片持ち板部は、一端から他端にかけて段構造で形成されたという特徴を備える。
【0047】
このような構成によれば、接合層が片持ち板部を覆う範囲に応じて、接合層から露出した片持ち板部を上から見た形状が異なる。したがって、リード電極と半導体素子とを接合層を介して直接接合された構造において、実施の形態1と同様の効果に加え、接合層が所定の厚みを満足しているか否かについて、片持ち板部に目盛りを設けなくともより精度良く外観検査によって確認できる、半導体装置を得ることができる。
【0048】
実施の形態4.
実施の形態4は、実施の形態1から実施の形態3に示した半導体装置のいずれかを搭載した電力変換装置である。尚、搭載する半導体装置は、実施の形態1から実施の形態3に示した半導体装置のいずれか一つに限るものではなく、複数搭載した電力変換装置でもよい。
【0049】
以上の通り、実施の形態4に係る電力変換装置は、実施の形態1から3のうちいずれか1つに記載の半導体装置を搭載した電力変換装置である。
【0050】
このように構成された電力変換装置では、リード電極と半導体素子とを接合層を介して直接接合された構造において、接合層が所定の厚みを有しているか否かを外観検査によって確認できる半導体装置を適用できるため、非破壊検査を適用することによる製造コストの増大を抑制することができる。したがって、リード電極と半導体素子とを接合層を介して直接接合された構造の半導体装置を適用しつつ、製造コストの増大を抑制した電力変換装置を得ることができる。
【0051】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0052】
(付記1)
絶縁基板又はリードフレーム上に載置された半導体素子と、
前記半導体素子上に形成された接合層と、
外部電極に電気的に接続された本体板部、及び前記本体板部との接続部分として一端が繋がった状態で前記本体板部から切り出された片持ち板部を有するリード電極と、
を備え、
前記片持ち板部は、前記本体板部に対し前記半導体素子の方向に向かって屈曲し、他端が前記接合層の中に入り込んでおり、上面の少なくとも一部が前記接合層により覆われていること、
を特徴とする半導体装置。
を特徴とする付記1に記載の半導体装置。
(付記2)
前記片持ち板部は、前記上面に目盛りが設けられた付記1に記載の半導体装置。
(付記3)
前記片持ち板部は、前記一端から前記他端にかけて段構造で形成された付記1又は付記2に記載の半導体装置。
(付記4)
前記片持ち板部は、可撓性を有する付記1から付記3のいずれか1つに記載の半導体装置。
(付記5)
前記片持ち板部は、前記半導体素子と接触し変形している付記1から付記4のいずれか1つに記載の半導体装置。
(付記6)
前記半導体素子を収容するケースと、
前記ケースに一部が支持され、前記リード電極と電気的に接合された外部電極と、
を有する付記1から付記5のいずれか1つに記載の半導体装置。
(付記7)
半導体素子上に接合層を形成する、接合層形成工程と、
リード電極の本体板部との接続部分として一端が繋がった状態で前記本体板部から切り出された片持ち板部の他端を、前記接合層内に入り込ませ前記半導体素子上に接合する、直接接合工程と、
前記接合層から露出した前記片持ち板部の外観検査によって、前記接合層が所定の厚みを有しているか否かを判定する、判定工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
(付記8)
前記判定工程は、前記外観検査が画像認識を用いて行われる
付記7に記載の半導体装置の製造方法。
(付記9)
付記1から付記6のいずれか1つに記載の半導体装置を搭載した電力変換装置。
【符号の説明】
【0053】
10 半導体装置
11 ベース板
12 絶縁基板
12a 回路パターン
12b 絶縁層
12c 回路パターン
13a 接合層
13b 接合層
13c 接合層
14 バンプ
15 半導体素子
16 接着剤
17 封止材
18 ケース
19 リード電極
19a 本体板部
19b 片持ち板部
19c 外部電極
20 半導体装置
21 リードフレーム
22 リード電極
22a 片持ち板部
23 目盛り
30 半導体装置
31 リード電極
31a 片持ち板部
40 半導体装置
41 リード電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8