(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130033
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】自己形成光導波路の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/138 20060101AFI20240920BHJP
G02B 6/30 20060101ALI20240920BHJP
G02B 6/34 20060101ALI20240920BHJP
G02B 6/124 20060101ALI20240920BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G02B6/138
G02B6/30
G02B6/34
G02B6/124
G02B6/02 461
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039514
(22)【出願日】2023-03-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「革新的情報通信技術研究開発委託研究/マルチチャネル自動接続を実現する赤外自己形成光接続の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
(71)【出願人】
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】Orbray株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】杉原 興浩
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 英孝
(72)【発明者】
【氏名】行川 毅
【テーマコード(参考)】
2H137
2H147
2H250
【Fターム(参考)】
2H137AB08
2H137BA01
2H137BA15
2H137BA18
2H137BA34
2H137BA53
2H137BA55
2H137BC74
2H147BC03
2H147BC05
2H147BG04
2H147CA01
2H147CA05
2H147CB01
2H147EA13A
2H147EA13C
2H147EA14B
2H147EA19A
2H147EA20B
2H147FD08
2H147FD10
2H147FE03
2H250AC64
2H250AC83
2H250AC94
2H250AC95
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シリコン導波路と光ファイバとの接続を可能にする自己形成光導波路の製造方法を提供すること。
【解決手段】シリコン導波路内に設けられた回折格子結合器と回折格子結合器から出射する光の回折方向に配置された光ファイバとの間に光硬化性樹脂が配置された構造体を作製することを含み、光硬化性樹脂は、コア部形成用樹脂と、クラッド部形成用樹脂とを含み、光ファイバ側及びシリコン導波路側のそれぞれからコア部形成用樹脂のみの重合が可能な強度の光を光硬化性樹脂に入射させる双方向光照射により、光硬化性樹脂内に光導波路のコア部を形成すること、及び光導波路のクラッド部を形成することにより、光硬化性樹脂内に光導波路を形成すること、を更に含み、双方向光照射は、光ファイバのコアから光硬化性樹脂に光を入射させ且つシリコン導波路内を伝搬した光を回折格子結合器を介して光硬化性樹脂に入射させることである、自己形成光導波路の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン導波路内に設けられた回折格子結合器と該回折格子結合器から出射する光の回折方向に配置された光ファイバとの間に光硬化性樹脂が配置された構造体を作製すること、
を含み、
前記光ファイバは、クラッドと1本以上のコアとを有し、
前記光硬化性樹脂は、所定の波長帯域の光が入射されて重合及び硬化して屈折率naを有するコア部形成用樹脂と、前記コア部形成用樹脂に入射する光の強度以上の光が入射されて重合及び硬化し、硬化後の屈折率nbが前記nb<前記naであるクラッド部形成用樹脂とを含み、
前記光ファイバ側及び前記シリコン導波路側のそれぞれから前記コア部形成用樹脂のみの前記重合が可能な強度の光を前記光硬化性樹脂に入射させる双方向光照射によって、前記コア部形成用樹脂の前記重合及び前記硬化を発生させて前記光硬化性樹脂内に光導波路のコア部を形成すること、及び
前記光導波路のクラッド部を形成することによって、前記光硬化性樹脂内に前記光導波路を形成すること、
を更に含み、
前記双方向光照射は、前記光ファイバの前記コアから前記光硬化性樹脂に光を入射させ且つ前記シリコン導波路内を伝搬した光を前記回折格子結合器を介して前記光硬化性樹脂に入射させることである、自己形成光導波路の製造方法。
【請求項2】
前記構造体の作製を、前記シリコン導波路上に前記光硬化性樹脂を配置し、該光硬化性樹脂上に前記光ファイバを配置することによって行う、請求項1に記載の自己形成光導波路の製造方法。
【請求項3】
前記シリコン導波路は、n本(nは2以上の整数)のシリコン導波路チャネルを有し、
前記構造体において、前記n本のシリコン導波路チャネルのそれぞれに設けられた回折格子結合器から出射する光の回折方向に、クラッドと1本のコアとを有する前記n本の光ファイバのそれぞれの前記コアが配置されている、請求項1又は2に記載の自己形成光導波路の製造方法。
【請求項4】
前記シリコン導波路は、n本(nは2以上の整数)のシリコン導波路チャネルを有し、
前記構造体において、前記n本のシリコン導波路チャネルのそれぞれに設けられた回折格子結合器から出射する光の回折方向に、クラッドと前記n本のコアとを有する光ファイバの前記n本のコアのそれぞれが配置されている、請求項1又は2に記載の自己形成光導波路の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己形成光導波路の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光硬化性樹脂を利用して自己形成光導波路を製造することが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
データセンタ内の情報処理量増大に対応するために、サーバには高速化及び省電力化が求められている。そのために、サーバ内に光回路を実装させる取り組みが進められている。
【0005】
サーバ内に光回路を実装させるための光配線の更なる小型化及び高密度化を実現するために、シリコン導波路等の高集積光導波路素子の導入が検討されている。
【0006】
通常、シリコン導波路は、光ファイバと光学的に接続される。光学的な接続方法としては、シリコン導波路内を伝搬した光を、シリコン導波路内に作製された回折格子結合器を経由してシリコン導波路の面外に配置された光ファイバのコアに入射させる方法が、現在主流である。この接続方法によってシリコン導波路と光ファイバを接続する場合、手作業又は高精度な調芯設備によって高精度に位置合わせしなければ、光の損失が大きくなってしまう。しかし、手作業又は高精度な調芯設備による接続には、多くの時間又は多大なコストを要する。
【0007】
これに対し、シリコン導波路と光ファイバとを自己形成光導波路によって接続できれば、シリコン導波路と光ファイバとを高精度に位置合わせすることを要さずに、シリコン導波路内を伝搬した光を、自己形成光導波路を介して光ファイバのコアに入射させることができ、これにより光の損失を低減できると考えられる。
【0008】
以上に鑑み、本発明の一態様は、シリコン導波路と光ファイバとの接続を可能にする自己形成光導波路の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、以下の通りである。
[1]シリコン導波路内に設けられた回折格子結合器とこの回折格子結合器から出射する光の回折方向に配置された光ファイバとの間に光硬化性樹脂が配置された構造体を作製すること、
を含み、
上記光ファイバは、クラッドと1本以上のコアとを有し、
上記光硬化性樹脂は、所定の波長帯域の光が入射されて重合及び硬化して屈折率naを有するコア部形成用樹脂と、上記コア部形成用樹脂に入射する光の強度以上の光が入射されて重合及び硬化し、硬化後の屈折率nbが上記nb<上記naであるクラッド部形成用樹脂とを含み、
上記光ファイバ側及び上記シリコン導波路側のそれぞれから上記コア部形成用樹脂のみの上記重合が可能な強度の光を上記光硬化性樹脂に入射させる双方向光照射によって、上記コア部形成用樹脂の上記重合及び上記硬化を発生させて上記光硬化性樹脂内に光導波路のコア部を形成すること、及び
上記光導波路のクラッド部を形成することによって、上記光硬化性樹脂内に上記光導波路を形成すること、
を更に含み、
上記双方向光照射は、上記光ファイバの上記コアから上記光硬化性樹脂に光を入射させ且つ上記シリコン導波路内を伝搬した光を上記回折格子結合器を介して上記光硬化性樹脂に入射させることである、自己形成光導波路の製造方法。
[2]上記構造体の作製を、上記シリコン導波路上に上記光硬化性樹脂を配置し、この光硬化性樹脂上に上記光ファイバを配置することによって行う、[1]に記載の自己形成光導波路の製造方法。
[3]上記シリコン導波路は、n本(nは2以上の整数)のシリコン導波路チャネルを有し、
上記構造体において、上記n本のシリコン導波路チャネルのそれぞれに設けられた回折格子結合器から出射する光の回折方向に、クラッドと1本のコアとを有する上記n本の光ファイバのそれぞれの上記コアが配置されている、[1]又は[2]に記載の自己形成光導波路の製造方法。
[4]上記シリコン導波路は、n本(nは2以上の整数)のシリコン導波路チャネルを有し、
上記構造体において、上記n本のシリコン導波路チャネルのそれぞれに設けられた回折格子結合器から出射する光の回折方向に、クラッドと上記n本のコアとを有する光ファイバの上記n本のコアのそれぞれが配置されている、[1]又は[2]に記載の自己形成光導波路の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
上記自己形成光導波路の製造方法によれば、シリコン導波路と光ファイバとを高精度に位置合わせすることを要さずにシリコン導波路と光ファイバとの自動光接続を実現可能とする自己形成光導波路を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第一の実施形態の製造方法における、光ファイバとシリコン導波路と光硬化性樹脂との配置例を示す概略断面図である。
【
図2】
図1に示す光硬化性樹脂30へ光ファイバとシリコン導波路双方向より光照射が行われ自己形成光導波路のコア部を形成した状態を示す説明図である。
【
図3】
図2の状態から、クラッド部が自己形成する工程に関する説明図である。
【
図4】
図3の状態から、クラッド部を形成した状態を示す説明図である。
【
図5】
図4の状態から、未硬化の光硬化性樹脂が除去された状態を示す説明図である。
【
図6】第二の実施形態の製造方法によって自己形成光導波路が光ファイバとシリコン導波路との間に形成された状態を示す説明図である。
【
図7】第三の実施形態の製造方法によって自己形成光導波路がマルチコアファイバの各コアとシリコン導波路との間に形成された状態を示す説明図である。
【
図8A】実施例において、光ファイバとシリコン導波路との間に自己形成光導波路のコア部が形成された状態を示す実体顕微鏡観察像である。
【
図8B】実施例において、クラッド部を形成する工程及びクラッド部が形成された状態を示す実体顕微鏡観察像である。
【
図8C】実施例において、クラッド部形成後に未硬化の光硬化性樹脂が洗浄により除去された状態を示す実体顕微鏡観察像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、上記製造方法について、図面を参照して説明する。ただし、図面に示す実施形態は例示であって、本発明は例示された実施形態に限定されるものではない。
【0013】
[第一の実施形態]
図1は、光ファイバとシリコン導波路と光硬化性樹脂との配置例を示す概略断面図である。
図1中、光ファイバ10は、クラッド12と1本のコア11とを有する。
シリコン導波路20は、シリコン基板21上にBOX(Buried Oxide)22(シリコン酸化物層)を有し、BOX上にシリコン導波路のコアであるシリコン層23を有する。シリコン層23には、回折格子結合器(GC:Grating Couplers)23aが作製されている。シリコン層23上には、シリコン酸化物層等のクラッドが設けられている。
シリコン導波路20の上面に、光硬化性樹脂(単に「樹脂」とも記載する。)30を滴下等の公知の方法によって配置する。シリコン導波路20の上面25の光硬化性樹脂を配置する部分は、下方に回折格子結合器23aが位置する部分を含む部分であることが好ましい。こうして光硬化性樹脂30を配置した後、光ファイバ10を、端面13がシリコン導波路20の上面25に対して回折格子結合器23aの回折角と同程度の角度で傾いて配置される状態で、シリコン導波路20の上面25上に配置された光硬化性樹脂30と接触させる。こうして、光ファイバ10と回折格子結合器23aとの間に光硬化性樹脂30が配置された構造体を作製することができる。
【0014】
光硬化性樹脂30は、光導波路のコア部形成用樹脂とクラッド部形成用樹脂とを含む。コア部形成用樹脂は、所定の波長帯の光が入射されて重合及び硬化することで、屈折率naを有する。またクラッド部形成用樹脂は、コア部形成用樹脂に入射される光の波長帯域と同一又は異なる波長帯域であり、且つコア部形成用樹脂に入射される光の強度以上の光が入射されて、重合及び硬化する。更に、硬化後のクラッド部形成用樹脂の屈折率nbは、nb<naである。
【0015】
コア部形成用樹脂及びクラッド部形成用樹脂としては、互いに異なる重合反応を経て光重合が起こる樹脂を選択する。後述する実施例では、コア部形成用樹脂はアクリル系樹脂であり、クラッド部形成用樹脂はエポキシ系樹脂である。アクリル系樹脂とエポキシ系樹脂との組み合わせでは、アクリル系樹脂の方が、エポキシ系樹脂よりも重合反応速度が速いため、弱い強度の光によってアクリル系樹脂だけが選択的に重合する。
【0016】
また、本発明及び本明細書において、「光硬化性樹脂」とは、光硬化処理によって重合体(単独重合体又は共重合体)を形成することができる組成物をいうものとする。かかる組成物は、例えば、1種以上又は2種以上の重合性化合物及び光重合開始剤を含む組成物であることができる。例えば、アクリル系樹脂とエポキシ系樹脂は、2種類以上の重合性化合物を含む混合液に光重合開始剤を添加した溶液であることができる。以下では、重合性化合物を「モノマー」とも記載する。重合性化合物とは、重合性基を有する化合物であって、単量体に限定されず、オリゴマー及びプレポリマーも重合性化合物に包含される。
【0017】
図2は、
図1に示す光硬化性樹脂30へ光ファイバ10とシリコン導波路20双方向より光照射が行われ自己形成光導波路のコア部を形成した状態の説明図である。図中の矢印は、光入射方向を示している。
シリコン導波路20の端面から入射した光は、シリコン層23内を伝搬した後に回折格子結合器23aによって進行方向が変化してシリコン導波路20の上面25から出射し、光硬化性樹脂30に入射する。
一方、光ファイバ10のコア11に入射した光は、コア11を通過した後に光硬化性樹脂30に入射する。
こうして、光硬化性樹脂30に、光ファイバ10側及びシリコン導波路20側から双方向光照射を行うことができ、これにより光硬化性樹脂30内に光導波路のコア部41を自己形成することができる。
【0018】
双方向光照射により光硬化性樹脂30に入射する光の波長λw1は、シリコン導波路20内を伝搬可能な光の波長である限り、光重合開始剤の種類に応じて任意に設定可能である。一例として、λw1は1100nm~1675nmの範囲であることができる。後述の実施例では、λw1=1550nmに設定した。光ファイバ側及びシリコン導波路側のそれぞれから光硬化性樹脂30に入射させる光は、コア部形成用樹脂のみの重合が可能な強度の光(例えばレーザー光)である。
【0019】
上記双方向光照射によって、コア部形成用樹脂の重合及び硬化を発生させることができる。これにより、コア部形成用樹脂のモノマーが重合して重合体となり、光硬化性樹脂30内にコア部41が自己形成する。
【0020】
次に、クラッド部の自己形成について説明する。コア部41の自己形成後、コア部41の周囲における、光硬化性樹脂30内のクラッド部形成用樹脂において、モノマーの相互拡散を発生させる。コア部41領域中ではモノマーが重合反応に消費されているのに対し、コア部41以外の光硬化性樹脂30ではモノマーは重合反応しておらず、未硬化且つ未消費であるため、コア部41の周囲でモノマーの濃度勾配が生じ、相互拡散が進行する。後述の実施例では、コア部41の形成後120秒間放置して、モノマーの相互拡散を促した。
【0021】
図2の状態から、クラッド部が自己形成する工程に関する説明図である。
図4は、
図3の状態から、クラッド部を形成した状態を示す説明図である。
図3中、コア11中及びコア部41中の矢印は光入射方向を示し、光硬化性樹脂30中の矢印は漏れ光方向を示す。
【0022】
詳しくは、
図3は、コア部41の自己形成後、光ファイバ10のコア11を介して波長λw2の光をコア部41に入射させた状態を示す。コア部形成用樹脂を重合させた光の強度以上の光を、好ましくはコア部形成用樹脂を重合させた光の強度を超える強度の光を、コア部41に入射させる。その強度は、クラッド部形成用樹脂を重合させることが可能な強度とする。コア部41に入射した光はコア部41内を伝搬し、コア部41の周囲の未硬化のクラッド部形成用樹脂へと漏れ光を発生させる。これによりコア部41の周囲のクラッド部形成用樹脂が漏れ光によって重合及び硬化して、
図4に示すように、コア部41表面を包囲する形態でクラッド部42が自己形成される。
【0023】
波長λw2は、光重合開始剤に応じて任意に設定可能である。一例として、λw2は365nm~1675nmの範囲であることができる。λw2は、λw1と同じ波長であっても異なる波長であってもよい。後述の実施例では、λw2=405nmに設定した。
【0024】
硬化後に自己形成されたクラッド部42の屈折率nbとコア部41の屈折率naとの大小関係は、「nb<na」である。したがって、コア部41とクラッド部42とによって光導波路(自己形成光導波路)が形成される。
【0025】
以上により自己形成光導波路が形成された後、クラッド部42の周囲の未硬化の光硬化性樹脂30を公知の洗浄方法によって除去する。
図5は、未硬化の光硬化性樹脂30が除去された状態を示す説明図である。
【0026】
こうして、シリコン導波路20と光ファイバ10との間を、自己形成光導波路40によって接続することができる。上記の自己形成光導波路の製造方法によれば、シリコン導波路と光ファイバとの位置合わせにおいて多少の位置ずれがあったとしても、シリコン導波路と光ファイバとの間に光導波路を自己形成できる。これにより、手作業又は高精度な調芯設備による高精度な位置合わせを不要とすることができる。
【0027】
以上説明した第一の実施形態の製造方法は、コアを1本有する光ファイバをシリコン導波路と接続するための自己形成光導波路の製造方法である。
【0028】
本発明の一態様にかかる自己形成光導波路の製造方法によれば、多数の伝送チャネルを一括接続することも可能になり、時間及びコストを大幅に低減できる。
【0029】
[第二の実施形態]
以下に、複数の光ファイバを複数のシリコン導波路と接続するための自己形成光導波路の製造方法(第二の実施形態)について説明する。
【0030】
第二の実施形態の製造方法では、シリコン導波路は、n本(nは2以上の整数)のシリコン導波路チャネルを有し、上記構造体において、上記n本のシリコン導波路チャネルのそれぞれに設けられた回折格子結合器から出射する光の回折方向に、クラッドと1本のコアとを有する上記n本の光ファイバのそれぞれの上記コアが配置されている。
【0031】
図6は、第二の実施形態の製造方法によって自己形成光導波路が光ファイバとシリコン導波路との間に形成された状態を示す説明図である。図中の矢印は、自己形成光導波路40のコア部を形成するために照射された光の入射方向を示す。
図6に示す例では、4本の光ファイバ100が一列に配列されたファイバアレイの各光ファイバ100が、自己形成光導波路40によって、複数のシリコン細線導波路(シリコン導波路チャネル)50のそれぞれと接続されている。詳しくは、各光ファイバ100のクラッド102に取り囲まれたコア101が、自己形成光導波路40によって、複数のシリコン細線導波路50のそれぞれと接続されている。
【0032】
自己形成光導波路40のコア部を形成するための光照射中、シリコン細線導波路50内を伝搬した光の進行方向が回折格子結合器50aによって変化し、自己形成光導波路40のコア部形成のための光が光硬化性樹脂に入射する。更に、光ファイバ100のコア101からも、光硬化性樹脂にコア部形成のための光が入射する。こうして双方向光照射によって、自己形成光導波路40のコア部が形成される。
【0033】
第二の実施形態において、nは2以上の整数であり、例えば2以上8以下であることができる。
図6に示す例では、n=4である。
【0034】
第二の実施形態の詳細については、第一の実施形態に関する先の記載を参照できる。
【0035】
[第三の実施形態]
以下に、複数のコアを有する光ファイバ(マルチコアファイバ)の各コアをそれぞれシリコン導波路と接続するための自己形成光導波路の製造方法(第三の実施形態)について説明する。
【0036】
第三の実施形態の製造方法では、シリコン導波路は、n本(nは2以上の整数)のシリコン導波路チャネルを有し、上記構造体において、上記n本のシリコン導波路チャネルのそれぞれに設けられた回折格子結合器から出射する光の回折方向に、クラッドと上記n本のコアとを有するマルチコアファイバの上記n本のコアのそれぞれが配置されている。
【0037】
図7は、第三の実施形態の製造方法によって自己形成光導波路がマルチコアファイバの各コアとシリコン導波路との間に形成された状態を示す説明図である。図中の矢印は、自己形成光導波路40のコア部を形成するために照射された光の入射方向を示す。
図7に示す例では、クラッド202に取り囲まれた4本のコア201のそれぞれが、複数のシリコン細線導波路(シリコン導波路チャネル)50のそれぞれと、自己形成光導波路40によって接続されている。
【0038】
自己形成光導波路40のコア部を形成するための光照射中、シリコン細線導波路50内を伝搬した光の進行方向が回折格子結合器50aによって変化し、自己形成光導波路40のコア部形成のための光が光硬化性樹脂に入射する。更に、光ファイバ200のコア201からも、光硬化性樹脂にコア部形成のための光が入射する。こうして双方向光照射によって、自己形成光導波路40のコア部が形成される。
【0039】
第三の実施形態において、nは2以上の整数であり、例えば2以上8以下であることができる。
図7に示す例では、n=4である。
【0040】
第三の実施形態の詳細については、第一の実施形態に関する先の記載を参照できる。
【実施例0041】
図8Aは、実施例(第一の実施形態の製造方法の一例)において、光ファイバとシリコン導波路との間に自己形成光導波路のコア部が形成された状態を示す実体顕微鏡観察像である。
図8Bは、実施例において、クラッド部を形成する工程及びクラッド部が形成された状態を示す実体顕微鏡観察像である。
図8Cは、クラッド部形成後に未硬化の光硬化性樹脂が洗浄により除去された状態を示す実体顕微鏡観察像である。
実施例では、回折格子結合器の回折角は8°であり、光ファイバを、その端面がシリコン導波路の上面に対して約8°傾いて配置される状態で、シリコン導波路の上面上に配置された光硬化性樹脂と接触させて、光ファイバと回折格子結合器との間に光硬化性樹脂が配置された構造体を作製した。
実施例における双方向光照射等の詳細は、先に記載した通りである。
図8Aに示す実体顕微鏡観察像及び
図8Bに示す実体顕微鏡観察像から、実施例において、光ファイバ側及びシリコン導波路側からの双方向光照射によって、光ファイバとシリコン導波路とを自己形成光導波路によって接続できたことが確認できる。