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  • 特開-水質測定装置および水質測定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130035
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】水質測定装置および水質測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20240920BHJP
   G01N 27/26 20060101ALI20240920BHJP
   G01N 27/27 20060101ALI20240920BHJP
   G01N 27/404 20060101ALI20240920BHJP
   G01N 21/61 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01N27/416 376
G01N27/26 371A
G01N27/27 C
G01N27/26 361G
G01N27/404 341K
G01N21/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039516
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米本 和弘
(72)【発明者】
【氏名】三原 俊哉
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059CC20
2G059DD12
2G059EE01
2G059HH01
2G059MM01
2G059NN01
(57)【要約】
【課題】測定対象液に含まれる対象ガスの濃度の測定精度を向上できる技術を提供する。
【解決手段】水質測定装置10は、pH電極34Aを有し、測定対象液L中の対象ガスを含むガスを隔膜34Dを通過させて電解液34Eに溶け込ませ、ガスのイオン化に応じて変化する電解液34EのpHに基づく第1検出値を出力する隔膜式センサ34と、測定対象液Lに含まれる対象ガスとは異なる妨害ガスの濃度に応じた第2検出値を出力するガスセンサ36と、隔膜式センサ34によって出力される第1検出値を、ガスセンサ36によって出力される第2検出値を用いて補正する制御部12と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象液に含まれる対象ガスの濃度を測定する水質測定装置であって、
pH電極を有し、前記測定対象液中の前記対象ガスを含むガスを隔膜を通過させて電解液に溶け込ませ、ガスのイオン化に応じて変化する前記電解液のpHに基づく第1検出値を出力する隔膜式センサと、
前記測定対象液に含まれる前記対象ガスとは異なる妨害ガスの濃度に応じた第2検出値を出力するガスセンサと、
前記隔膜式センサによって出力される前記第1検出値を、前記ガスセンサによって出力される前記第2検出値を用いて補正する補正部と、
を備える水質測定装置。
【請求項2】
前記ガスセンサは、前記測定対象液から空間内に放出される前記妨害ガスの濃度に応じた前記第2検出値を出力する請求項1に記載の水質測定装置。
【請求項3】
前記補正部は、
前記隔膜式センサによって出力される前記第1検出値に対して、前記ガスセンサによって出力される前記第2検出値に応じた補正値を加算または減算し、
前記補正値の絶対値を、前記第2検出値の絶対値が大きくなるほど大きくする請求項1又は請求項2に記載の水質測定装置。
【請求項4】
前記対象ガスは、アンモニアガスである請求項1又は請求項2に記載の水質測定装置。
【請求項5】
前記妨害ガスは、二酸化炭素である請求項1又は請求項2に記載の水質測定装置。
【請求項6】
測定対象液に含まれる対象ガスの濃度を測定する水質測定方法であって、
pH電極を有する隔膜式センサによって、前記測定対象液中の前記対象ガスを含むガスを隔膜を通過させて電解液に溶け込ませ、ガスのイオン化に応じて変化する前記電解液のpHに基づく第1検出値を出力させ、
ガスセンサによって、前記測定対象液に含まれる前記対象ガスとは異なる妨害ガスの濃度に応じた第2検出値を出力させ、
前記隔膜式センサによって出力される前記第1検出値を、前記ガスセンサによって出力される前記第2検出値を用いて補正する水質測定方法。
【請求項7】
前記隔膜式センサによって出力される前記第1検出値に対して、前記ガスセンサによって出力される前記第2検出値に応じた補正値を加算または減算し、
前記補正値の絶対値を、前記第2検出値の絶対値が大きくなるほど大きくする請求項6に記載の水質測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質測定装置および水質測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象液中の特定の対象ガスの濃度を測定する方法として、例えば、液体クロマトグラフィー、電気伝導率計を用いる方法、隔膜式センサを用いる方法などがある。例えば、特許文献1には、隔膜式センサを用いて試料溶液に含まれる特定物質を検知する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-107335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
隔膜式センサを用いる方法では、隔膜を通過させた対象ガスを電解液でイオン化させ、その際に変化するpHを検知して対象ガスの濃度を測定する。しかし、測定対象液に含まれる妨害ガスが、対象ガスとともに隔膜を通過して電解液に入り、pHを変化させてしまう。そのため、妨害ガスは、対象ガスが変化させた電解液のpHを相殺あるいは過剰変化させるため、対象ガスを正確に測定することが難しかった。そこで、測定対象液に含まれる妨害ガスの影響を抑制した状態で対象ガスの濃度を測定する技術が求められている。
【0005】
本開示は、測定対象液に含まれる対象ガスの濃度の測定精度を向上できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕測定対象液に含まれる対象ガスの濃度を測定する水質測定装置であって、
pH電極を有し、前記測定対象液中の前記対象ガスを含むガスを隔膜を通過させて電解液に溶け込ませ、ガスのイオン化に応じて変化する前記電解液のpHに基づく第1検出値を出力する隔膜式センサと、
前記測定対象液に含まれる前記対象ガスとは異なる妨害ガスの濃度に応じた第2検出値を出力するガスセンサと、
前記隔膜式センサによって出力される前記第1検出値を、前記ガスセンサによって出力される前記第2検出値を用いて補正する補正部と、
を備える水質測定装置。
【0007】
〔1〕の水質測定装置では、測定対象液中の妨害ガスの濃度が反映された第1検出値に対して、妨害ガスの濃度に応じた第2検出値を用いて補正することができる。そのため、妨害ガスの濃度の影響を抑制した状態で対象ガスの濃度を測定できる。
【0008】
〔2〕前記ガスセンサは、前記測定対象液から空間内に放出される前記妨害ガスの濃度に応じた前記第2検出値を出力する〔1〕に記載の水質測定装置。
【0009】
〔2〕の水質測定装置では、測定時に測定対象液の影響を受けることなく、妨害ガスの濃度に応じた第2検出値を出力できる。
【0010】
〔3〕前記補正部は、前記隔膜式センサによって出力される前記第1検出値に対して、前記ガスセンサによって出力される前記第2検出値に応じた補正値を加算または減算し、前記補正値の絶対値を、前記第2検出値の絶対値が大きくなるほど大きくする〔1〕又は〔2〕に記載の水質測定装置。
【0011】
〔3〕の水質測定装置では、補正値の絶対値が第2検出値の絶対値が大きくなるほど大きくなるため、補正値は測定対象液中の妨害ガスの濃度に依存した程度となる。そのため、このような補正値を第1検出値に対して加算または減算することで、測定対象液中の妨害ガスの濃度の影響をより好適に抑制した状態で対象ガスの濃度を測定できる。
【0012】
〔4〕前記対象ガスは、アンモニアガスである〔1〕から〔3〕のいずれか一つに記載の水質測定装置。
【0013】
〔4〕の水質測定装置では、アンモニアガスが電解液に溶けることで水酸化物イオンが生じ、電解液のpHが変化し、第1検出値に反映される。そのため、アンモニアガスの濃度を好適に測定できる。
【0014】
〔5〕前記妨害ガスは、二酸化炭素である〔1〕から〔4〕のいずれか一つに記載の水質測定装置。
【0015】
〔5〕の水質測定装置では、測定対象液中の二酸化炭素によって電解液のpHが変化する。そのため、測定対象液中の二酸化炭素の濃度が反映された第1検出部に対して、二酸化炭素の濃度に応じた第2検出値を用いて補正することができる。そのため、二酸化炭素の濃度の影響を抑制した状態で対象ガスの濃度を測定できる。
【0016】
〔6〕測定対象液に含まれる対象ガスの濃度を測定する水質測定方法であって、
pH電極を有する隔膜式センサによって、前記測定対象液中の前記対象ガスを含むガスを隔膜を通過させて電解液に溶け込ませ、ガスのイオン化に応じて変化する前記電解液のpHに基づく第1検出値を出力させ、
ガスセンサによって、前記測定対象液に含まれる前記対象ガスとは異なる妨害ガスの濃度に応じた第2検出値を出力させ、
前記隔膜式センサによって出力される前記第1検出値を、前記ガスセンサによって出力される前記第2検出値を用いて補正する水質測定方法。
【0017】
〔6〕の水質測定方法では、測定対象液中の妨害ガスの濃度が反映された第1検出値に対して、妨害ガスの濃度に応じた第2検出値を用いて補正することができる。そのため、妨害ガスの濃度の影響を抑制した状態で対象ガスの濃度を測定できる。
【0018】
〔7〕前記隔膜式センサによって出力される前記第1検出値に対して、前記ガスセンサによって出力される前記第2検出値に応じた補正値を加算または減算し、前記補正値の絶対値を、前記第2検出値の絶対値が大きくなるほど大きくする〔6〕に記載の水質測定方法。
【0019】
〔7〕の水質測定方法では、補正値の絶対値が第2検出値の絶対値が大きくなるほど大きくなるため、補正値は測定対象液中の妨害ガスの濃度に依存した程度となる。そのため、このような補正値を第1検出値に対して加算または減算することで、測定対象液中の妨害ガスの濃度の影響をより好適に抑制した状態で対象ガスの濃度を測定できる。
【発明の効果】
【0020】
本開示に係る技術は、測定対象液に含まれる対象ガスの濃度の測定精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、第1実施形態の水質測定システムを概略的に示す説明図である。
図2図2は、図1のガス測定部を概略的に示す説明図である。
図3図3は、水質測定装置の電気的構成を例示するブロック図である。
図4図4は、妨害ガス濃度に応じた各センサの出力値の変化、および補正式を概略的に示す説明図である。
図5図5は、測定対象液における、基準値測定装置による検出値に対する第1検出値の割合及び補正後センサ出力の割合の経過時間に対する変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
1-1.水質測定システムの構成
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1図5を参照して説明する。図1は、第1実施形態の水質測定システム100を説明する説明図である。図1に示す水質測定システム100は、測定対象液Lの水質を測定するシステムである。具体的には、水質測定システム100は、測定対象液Lに含まれる対象ガス(例えばアンモニアガス)の濃度を測定する。水質測定システム100は、例えばバイオガスプラントに用いられる。水質測定システム100は、一時保管タンク102と、第1配管ライン104と、第2配管ライン105と、廃液タンク106と、ガスホルダー108と、第1ガス測定部110と、第2ガス測定部120と、を備えている。更に、水質測定システム100は、後述する水質測定装置10を備えている。
【0023】
一時保管タンク102は、供給ライン101を介して供給元から供給される測定対象液Lが溜められた水槽である。測定対象液Lは、例えば、家畜糞尿や食品残渣などの有機性廃棄物をメタン発酵することで生じる消化液である。第1配管ライン104は、一時保管タンク102から廃液タンク106へと測定対象液Lが搬送される経路である。第1ガス測定部110は、第1配管ライン104に設けられている。
【0024】
図2に示す第1ガス測定部110は、貯留槽112と、pH測定部32と、隔膜式センサ34と、を有している。
【0025】
貯留槽112は、第1配管ライン104に設けられ、一時保管タンク102から供給される測定対象液Lを貯留する。
【0026】
pH測定部32は、貯留槽112内の測定対象液LのpHを検出する公知のpHセンサである。pH測定部32は、検出したpHの値を示す検出値を出力する。pH測定部32の検出値は、後述する制御部12に出力される。
【0027】
隔膜式センサ34は、公知の隔膜式イオンセンサとして構成されている。隔膜式センサ34は、貯留槽112内の測定対象液Lに浸されている。隔膜式センサ34は、pH電極34Aと、参照電極34Bと、収容部34Cと、隔膜34Dと、電解液34Eと、電位差計34Fと、を有している。隔膜式センサ34は、測定対象液L中の対象ガスを含むガス(後述する妨害ガスも含み得るガス)を隔膜34Dを通過させて電解液34Eに溶け込ませ、ガスのイオン化に応じて変化する電解液34EのpHに基づく検出値(第1検出値)を出力する。アンモニア(NH)ガスは、本開示の「対象ガス」の一例に相当する。
【0028】
pH電極34Aおよび参照電極34Bは、電解液34Eに浸されている。収容部34Cには、電解液34Eが収容されている。収容部34Cの下端には、隔膜34Dが設けられている。電位差計34Fは、pH電極34Aおよび参照電極34Bに電気的に接続されている。pH電極34Aは、電解液34EのpHに応じた電極電位(起電力)を発生させる。電位差計34Fは、pH電極34Aの電極電位と参照電極34Bの電極電位との差を測定し、測定結果(電解液34EのpHに基づく検出値)として後述する制御部12に出力する。このように、隔膜式センサ34は、測定対象液L中の対象ガスを含むガスを隔膜34Dを通過させて電解液34Eに溶け込ませ、ガスのイオン化に応じて変化する電解液34EのpHに基づく検出値を出力する。
【0029】
測定対象液Lに含まれるアンモニアガスは、隔膜34Dを通過して電解液34Eに溶け込み、イオン化する際に水酸化物イオンを生じさせる。この水酸化物イオンが電解液34EのpHを変化させる。測定対象液Lに二酸化炭素が含まれる場合には、隔膜34Dを通過して電解液34Eに溶け込み、イオン化する際に水素イオンを生じさせる。この水素イオンが電解液34EのpHを変化させる。
【0030】
第2ガス測定部120は、ガスセンサ36を有している。ガスセンサ36は、例えば、NDIR検知方式のガスセンサを具備している。第2ガス測定部120は、第2配管ライン105で搬送されるガス中の妨害ガス(例えば二酸化炭素)の濃度を、NDIR検知方式のガスセンサを用いて求める。ここで、第2配管ライン105で搬送されるガスの成分割合は、測定対象液L中のガスの成分割合と同じであることが好ましい。
【0031】
NDIR検知方式のガスセンサを用いた測定法では、例えば、新コスモス電機株式会社のKD-12Rを用いる。測定装置の使用条件は、温度-40℃~+60℃(ただし、急激な変化のない状態)、0%~90%RH(結露がない状態)である。ガスセンサ36は、例えば測定した妨害ガスの濃度に応じた検出値(第2検出値)を出力する。ガスセンサ36は、測定対象液Lから空間内(一時保管タンク102内の測定対象液Lに接する空間、および第1配管ライン104の内部空間)に放出される妨害ガスの濃度に応じた第2検出値を出力する。第2検出値は、例えば電圧値である。第2ガス測定部120は、ガスセンサ36によって出力される第2検出値を、後述する制御部12に出力する。
【0032】
水質測定システム100は、図3に示す水質測定装置10と、基準値測定装置38と、を備えている。水質測定装置10は、測定対象液Lに含まれる対象ガスの濃度を測定する。水質測定装置10は、制御部12と、通信部14と、操作部16と、記憶部18と、表示部22と、pH測定部32と、隔膜式センサ34と、ガスセンサ36と、を有している。
【0033】
基準値測定装置38は、液体クロマトグラフィーを有している。基準値測定装置38は、測定対象液L中のアンモニウムイオンの濃度を、液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS)によって求める。液体クロマトグラフ質量分析法では、例えば、カラム:島津製作所製Shim-pack IC-C1(ポスチレン-ジビニルベンゼン共重合体を担体として、官能基としてスルホン酸基を導入したもの)、オーブン温度:40℃、流速:0.8ml/min、サンプル注入量:10μL、移動相:5mMの硝酸、測定装置:島津製作所製イオンクロマトグラフHIC-6Aの条件で測定を行う。基準値測定装置38は、貯留槽112、一時保管タンク102等いずれの箇所にある測定対象液Lを測定してもよく、貯留槽112に貯留される測定対象液Lを測定するのが好ましい。基準値測定装置38は、例えば測定したアンモニウムイオンの濃度に応じた検出値(後述する基準値に相当)を、後述する制御部12に出力する。検出値は、例えば電圧値である。
【0034】
なお、基準値測定装置38は、制御部12と有線通信で検出値等の情報の送受信を行う構成が例示されるが、その他にも、制御部12が設けられる場所とは別の場所に設けられ、無線通信によって制御部12と情報の送受信を行う構成や、通信インタフェースを介さず制御部12に対して直接検出値(基準値)を手入力する構成であってもよい。
【0035】
制御部12は、PLC(シーケンサ)およびSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)を主体として構成され、CPU等を有する。制御部12は、各種制御を行う機能を有し、各種信号を取得する機能や各種情報処理を行う機能を有する。制御部12は、pH測定部32による検出値、隔膜式センサ34による検出値、ガスセンサ36による検出値、基準値測定装置38から出力される基準値などが入力される。制御部12は、通信部14と、操作部16と、記憶部18と、表示部22と、通信可能である。制御部12は、操作部16からの信号が入力される。制御部12は、表示部22に表示動作を行わせる。通信部14は、無線通信などのインタフェースとして構成されている。操作部16は、ユーザの操作によって情報を入力し得る構成である。操作部16は、キーボード、タッチパネル等の入力インタフェースである。記憶部18には、制御部12を制御させるためのプログラムが記憶されている。表示部22は、液晶ディスプレイ等の画像表示装置として構成されている。
【0036】
制御部12は、本開示の「補正部」の一例に相当する。制御部12は、隔膜式センサ34によって出力される第1検出値を、ガスセンサ36によって出力される第2検出値を用いて補正する。具体的には、制御部12は、隔膜式センサ34によって出力される第1検出値に対して、ガスセンサ36によって出力される第2検出値に応じた補正値を加算または減算する。制御部12は、補正値の絶対値を、第2検出値の絶対値が大きくなるほど大きくする。
【0037】
1-2.対象ガスの濃度の測定方法
次に、上記補正値の決定方法について説明する。
補正値は、予め定められた補正式に基づいて決定される。補正式は、以下のようにして導出される。まず、異なる妨害ガス(例えば二酸化炭素)濃度の測定対象液Lに対して、隔膜式センサ34および基準値測定装置38による測定を行うと同時に、ガスセンサ36による測定を行う。ここで、隔膜式センサ34および基準値測定装置38による測定を同時に行うとは、完全に同時以外にも、ある程度の時間差がある場合も含まれる。図4に示す概略図では、妨害ガス濃度に応じた各センサの出力値の集合を近似した近似直線(一次近似直線)を示している。
【0038】
図4に示す概略図のような結果において、基準値測定装置38による出力値と隔膜式センサ34による出力値(第1検出値)との差の絶対値が、妨害ガスの濃度を変数(Xとする)とする関数(Y(X)とする)となる補正式を導出する。すなわち、基準値測定装置38による出力値(基準値)と隔膜式センサ34による出力値(第1検出値)との差の絶対値が補正値となるように、妨害ガスの濃度に依存する補正式を導出する。これにより、ガスセンサ36によって検出される第2検出値(妨害ガスの濃度に応じた出力値、変数Xに相当)に基づいて、補正値(Y)を決定することができる。例えば、図4に示すように、ガスセンサ36によって検出される妨害ガスの濃度(第2検出値に対応する値)がX1である場合、補正値は、Y1として決定される。
【0039】
補正式(関数Y(X))を用いて決定される補正値の絶対値は、ガスセンサ36によって検出される第2検出値に応じた妨害ガス濃度(変数X)の絶対値が大きくなるほど大きくなる。補正値の絶対値が、第2検出値の絶対値が大きくなるほど大きくなるため、補正値は、測定対象液L中の妨害ガスの濃度に依存した程度となる。
【0040】
隔膜式センサ34によって出力される第1検出値に対して補正値を加算または減算することで、測定対象液L中の妨害ガスの濃度が反映された第1検出値に対して、妨害ガスの濃度に応じた第2検出値を用いて補正することができる。そのため、妨害ガスの濃度の影響を抑制した状態で対象ガスの濃度を測定できる。
【0041】
1-3.実験結果
次に、上記補正値の決定方法に関する実験結果について、図5を用いて説明する。なお、対象ガスをアンモニアガスとし、妨害ガスを二酸化炭素としている。図5において、二酸化炭素の含有率として、第2ガス測定部120による検出値(第2検出値)に対応する値として換算した値を用いている。また、アンモニウムイオン濃度として、隔膜式センサ34や基準値測定装置38による検出値に対応する値として換算した値を用いている。
【0042】
図5は、測定対象液Lにおける、基準値測定装置38による検出値に対する隔膜式センサ34による第1検出値の割合、及び基準値測定装置38による検出値に対する補正後センサ出力の割合の経過時間に対する変化を示す図である。基準値測定装置38による検出値に対する隔膜式センサ34による第1検出値の割合は、0秒-1000秒の経過時間において、1よりもはるかに小さい値となっている。すなわち、隔膜式センサ34による第1検出値に対応するアンモニウムイオン濃度は、基準値測定装置38による検出値に対応するアンモニウムイオン濃度から大きく乖離している。一方で、基準値測定装置38による検出値に対する補正後センサ出力の割合は、0秒-1000秒の経過時間において、1に近い値となっている。すなわち、基準値測定装置38による検出値に対応するアンモニウムイオン濃度は、基準値測定装置38による検出値に対応するアンモニウムイオン濃度に近い値になっている。
【0043】
図5から、第2ガス測定部120による検出値(第2検出値)を用いて、隔膜式センサ34による第1検出値を補正し、妨害ガス(二酸化炭素)の濃度の影響を抑制した状態で対象ガスの濃度を測定できることが分かる。
【0044】
1-4.第1実施形態の効果
第1実施形態の水質測定装置10では、隔膜式センサ34によって出力される第1検出値を、ガスセンサ36によって出力される第2検出値を用いて補正する制御部12(補正部)を備える。この構成によれば、測定対象液L中の妨害ガスの濃度が反映された第1検出値に対して、妨害ガスの濃度に応じた第2検出値を用いて補正することができる。そのため、妨害ガスの濃度の影響を抑制した状態で対象ガスの濃度を測定できる。
【0045】
第1実施形態の水質測定装置10では、ガスセンサ36は、測定対象液Lから空間内に放出される妨害ガスの濃度に応じた第2検出値を出力する。これにより、測定時に測定対象液Lの影響を受けることなく、妨害ガスの濃度に応じた第2検出値を出力できる。
【0046】
第1実施形態の水質測定装置10では、制御部12(補正部)は、隔膜式センサ34によって出力される第1検出値に対して、ガスセンサ36によって出力される第2検出値に応じた補正値を加算または減算し、補正値の絶対値を、第2検出値の絶対値が大きくなるほど大きくする。これにより、補正値の絶対値が第2検出値の絶対値が大きくなるほど大きくなるため、補正値は測定対象液L中の妨害ガスの濃度に依存した程度となる。そのため、このような補正値を第1検出値に対して加算または減算することで、測定対象液L中の妨害ガスの濃度の影響をより好適に抑制した状態で対象ガスの濃度を測定できる。
【0047】
第1実施形態の水質測定装置10では、対象ガスがアンモニアガスである。これにより、アンモニアガスが電解液34Eに溶けることで水酸化物イオンが生じ、電解液34EのpHが変化し、第1検出値に反映される。そのため、アンモニアガスの濃度を好適に測定できる。
【0048】
第1実施形態の水質測定装置10では、妨害ガスが二酸化炭素である。これにより、測定対象液L中の二酸化炭素によって電解液34EのpHが変化する。そのため、測定対象液L中の二酸化炭素の濃度が反映された第1検出部に対して、二酸化炭素の濃度に応じた第2検出値を用いて補正することができる。そのため、二酸化炭素の濃度の影響を抑制した状態で対象ガスの濃度を測定できる。
【0049】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。また、上述した実施形態や後述する実施形態の様々な特徴は、矛盾しない組み合わせであればどのように組み合わされてもよい。
【0050】
上記第1実施形態では、第1ガス測定部110は、貯留槽112を備え、貯留槽112に貯留した測定対象液Lを隔膜式センサ34で測定したが、貯留槽112を備えず、第1配管ライン104を流れる測定対象液Lを隔膜式センサ34で直接測定する構成であってもよい。
【0051】
上記第1実施形態において、補正式の導出の際に用いる各センサの出力値の集合を近似した近似直線(図4参照)として、一次近似した直線を用いたが、二次近似等のその他の近似方法を用いてもよい。
【0052】
上記第1実施形態では、隔膜式センサ34を用いたアンモニアガスの測定において、二酸化炭素によってアンモニアガスがイオン化する際に変化させた測定対象液LのpHを相殺する構成を例示したが、妨害ガスによって測定対象液LのpHが過剰変化させる構成であってもよい。この場合、図4のような概略図において、妨害ガス濃度に対する第1検出値の変化が正の傾きとなり、補正式が負の傾きとなるような変化となる。
【0053】
上記第1実施形態において、測定対象液Lに複数種類の妨害ガスが含まれる場合、各妨害ガスの濃度をそれぞれ測定するセンサを設け、各妨害ガスについて上記第1実施形態と同様の方法で補正値を求め、第1検出値に対して各補正値で補正する方法を用いることができる。
【0054】
上記第1実施形態では、妨害ガスとして二酸化炭素を例示したが、揮発性脂肪酸であってもよい。揮発性脂肪酸として、酢酸や酪酸等が挙げられる。
【0055】
上記第1実施形態では、水質測定システム100がバイオガスプラントに適用される構成であったが、別の構成であってもよい。水質測定システム100は、海上養殖、陸上養殖、水処理、排水処理、アクアリウム、農業(水耕栽培)など廃液管理が必要な施設に適用される構成であってもよい。
【0056】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0057】
10: 水質測定装置
12: 制御部(補正部)
14: 通信部
16: 操作部
18: 記憶部
22: 表示部
32: pH測定部
34: 隔膜式センサ
34A: pH電極
34B: 参照電極
34C: 収容部
34D: 隔膜
34E: 電解液
34F: 電位差計
36: ガスセンサ
38: 基準値測定装置
100: 水質測定システム
101: 供給ライン
102: 一時保管タンク
104: 第1配管ライン
105: 第2配管ライン
106: 廃液タンク
108: ガスホルダー
110: 第1ガス測定部
112: 貯留槽
120: 第2ガス測定部
L: 測定対象液
図1
図2
図3
図4
図5