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特開2024-130038固体状ポリメチルアルミノキサン組成物、オレフィン類の重合触媒およびポリオレフィンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130038
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】固体状ポリメチルアルミノキサン組成物、オレフィン類の重合触媒およびポリオレフィンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/6192 20060101AFI20240920BHJP
   C08F 110/00 20060101ALI20240920BHJP
   C08F 4/02 20060101ALI20240920BHJP
   C08G 79/10 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C08F4/6192
C08F110/00 510
C08F4/02
C08G79/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039521
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】境 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】竹元 裕仁
(72)【発明者】
【氏名】山根 猛夫
(72)【発明者】
【氏名】北村 美智嘉
【テーマコード(参考)】
4J015
4J030
4J128
【Fターム(参考)】
4J015EA00
4J030CA01
4J030CB01
4J030CC10
4J030CD11
4J030CE02
4J030CG08
4J128AA01
4J128AB00
4J128AC28
4J128AD05
4J128AD13
4J128BA01A
4J128BA01B
4J128BB01A
4J128BB01B
4J128BC15B
4J128BC25A
4J128DB03B
4J128DB08B
4J128EA01
4J128EB02
4J128EC01
4J128FA02
4J128GA24
4J128GB01
(57)【要約】
【課題】ポリオレフィンのスパン(粒度分布スパン)を向上させることに寄与し得る固体状PMAO組成物を提供すること。
【解決手段】ポリメチルアルミノキサンを含有する固体状ポリメチルアルミノキサン組成物であって、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の平均粒子径と固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の1次粒子径との比(平均粒子径/1次粒子径)が3.5未満である、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリメチルアルミノキサンを含有する固体状ポリメチルアルミノキサン組成物であって、
固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の平均粒子径と固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の1次粒子径との比(平均粒子径/1次粒子径)が3.5未満である、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物。
【請求項2】
固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の円形度が0.50以上である、請求項1に記載の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物。
【請求項3】
固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の表面におけるアルミニウム原子と酸素原子との合計に対する酸素原子比率と、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の内部におけるアルミニウム原子と酸素原子との合計に対する酸素原子比率と、の差異が4.50以下である、請求項1に記載の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物。
【請求項4】
前記平均粒子径が7.0μm以下である、請求項1に記載の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物。
【請求項5】
固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の円形度が0.50以上であり、
固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の表面におけるアルミニウム原子と酸素原子との合計に対する酸素原子比率と、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の内部におけるアルミニウム原子と酸素原子との合計に対する酸素原子比率と、の差異が4.50以下であり、かつ
前記平均粒子径が7.0μm以下である、請求項1に記載の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物および下記式1:
MR
(式1中、Mは遷移金属原子を表し、R、R、RおよびRの中で、少なくとも1つはシクロアルカジエニル骨格を有する有機基であり、残りはそれぞれ独立にアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコシキ基、アリーロキシ基、アルキルシリル基、アルキルアミド基、アルキルイミド基、アルキルアミノ基、アルキルイミノ基またはハロゲン原子を表す。R、R、RおよびRの2つ以上がシクロアルカジエニル骨格を有する有機基である場合、シクロアルカジエニル骨格を有する有機基の少なくとも2つは炭素、ケイ素またはゲルマニウムにより架橋されていてもよい。)
で表される遷移金属化合物を含むオレフィン類の重合触媒。
【請求項7】
請求項6に記載の重合触媒の存在下でオレフィン類を重合することを含む、ポリオレフィンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物、オレフィン類の重合触媒およびポリオレフィンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリメチルアルミノキサン(PMAO:poly-methylaluminoxane)組成物は、オレフィン類の重合に優れた助触媒性能を示す。しかし、溶液状態で使用した場合、生成する重合体のモルフォロジーを制御することは困難である。このため、溶液状態のPMAO組成物を触媒として使用すると、重合体の取り扱いが困難となるだけでなく、重合反応器等への重合体付着によるファウリングが起こりやすい。そのために、PMAO組成物をシリカ、アルミナ、塩化マグネシウム等の固体状無機担体に担持した担持型固体状PMAOを調製し、懸濁重合または気相重合に適用する方法が提案されている。例えば、固体状無機担体の中でも、表面水酸基量を制御したシリカが担体として最も広く用いられており、工業レベルへの展開に至っている事例もある。
【0003】
しかし、シリカ担体は重合体中へ残留し易く、フィルム成形の際のフィッシュアイの原因の一つとなる等、重合体の性能悪化をもたらすことが知られている。これに対し、近年、シリカ等の担体を含まないPMAO組成物のみの固体状PMAO組成物が提案されている(特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5611833号明細書
【特許文献2】特許第6259549号明細書
【特許文献3】特許第6159049号明細書
【特許文献4】特許第6158994号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、反応器へのファウリングを極力少なくすることによりポリオレフィンの生産性を向上させるために、生成されるポリオレフィンのスパン(粒度分布スパン)を更に向上させることが望まれている。
【0006】
本発明の一態様は、ポリオレフィンのスパン(粒度分布スパン)を向上させることに寄与し得る固体状PMAO組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、以下の通りである。
[1]ポリメチルアルミノキサンを含有する固体状ポリメチルアルミノキサン組成物であって、
固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の平均粒子径と固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の1次粒子径との比(平均粒子径/1次粒子径)が3.5未満である、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物。
[2]固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の円形度が0.50以上である、[1]に記載の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物。
[3]固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の表面におけるアルミニウム原子と酸素原子との合計に対する酸素原子比率と、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の内部におけるアルミニウム原子と酸素原子との合計に対する酸素原子比率と、の差異(以下、「内外組成差」とも記載する。)が4.50以下である、[1]または[2]に記載の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物。
[4]上記平均粒子径が7.0μm以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物。
[5]固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の円形度が0.50以上であり、
固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の表面におけるアルミニウム原子と酸素原子との合計に対する酸素原子比率と、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の内部におけるアルミニウム原子と酸素原子との合計に対する酸素原子比率と、の差異が4.50以下であり、かつ
上記平均粒子径が7.0μm以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物。
[6][1]~[5]のいずれかに記載の固体状ポリメチルアルミノキサン組成物および下記式1:
MR
(式1中、Mは遷移金属原子を表し、R、R、RおよびRの中で、少なくとも1つはシクロアルカジエニル骨格を有する有機基であり、残りはそれぞれ独立にアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコシキ基、アリーロキシ基、アルキルシリル基、アルキルアミド基、アルキルイミド基、アルキルアミノ基、アルキルイミノ基またはハロゲン原子を表す。R、R、RおよびRの2つ以上がシクロアルカジエニル骨格を有する有機基である場合、シクロアルカジエニル骨格を有する有機基の少なくとも2つは炭素、ケイ素またはゲルマニウムにより架橋されていてもよい。)
で表される遷移金属化合物を含むオレフィン類の重合触媒。
[7][6]に記載の重合触媒の存在下でオレフィン類を重合することを含む、ポリオレフィンの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、ポリオレフィンのスパン(粒度分布スパン)を向上させることに寄与し得る固体状PMAO組成物を提供することができる。また、本発明の一態様によれば、上記固体状PMAO組成物を含む重合触媒の存在下でオレフィン類を重合することによって、スパン(粒度分布スパン)が向上したポリオレフィンを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[固体状ポリメチルアルミノキサン組成物]
本発明の一態様は、ポリメチルアルミノキサンを含有する固体状ポリメチルアルミノキサン組成物であって、固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の平均粒子径と固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の1次粒子径との比(平均粒子径/1次粒子径)が3.5未満である固体状ポリメチルアルミノキサン組成物に関する。
【0010】
本発明および本明細書において、「固体状ポリメチルアルミノキサン組成物」とは、少なくとも5℃以上40℃以下の温度において固体状であるポリメチルアルミノキサン組成物をいうものとする。固体状とは、実質的に流動性を有さない状態を意味する。「ポリメチルアルミノキサン」を「PMAO」とも記載する。固体状PMAO組成物は、少なくともポリメチルアルミノキサンを含み、トリメチルアルミニウムを含み得る。
【0011】
以下、上記固体状PMAO組成物について、更に詳細に説明する。
【0012】
<平均粒子径と1次粒子径との比(平均粒子径/1次粒子径)>
上記固体状PMAO組成物は粒子状であることができる。粒子の形状は特に限定されるものではなく、真球状、楕円状等の任意の形状であることができる。上記固体状PMAO組成物の平均粒子径と1次粒子径との比(平均粒子径/1次粒子径)は3.5未満である。上記の比が3.5未満であることが、上記固体状PMAO組成物を含む重合触媒の存在下でオレフィン類を重合することによって、スパン(粒度分布スパン)が向上したポリオレフィンを製造することができる理由であると本発明者は推察している。上記の比は、3.4以下であることが好ましく、3.2以下であることがより好ましく、3.0以下であることが更に好ましい。上記の比は、例えば、1.0以上、1.0超、1.5以上、2.0以上または2.5以上であることができる。上記の比については、比の値がより小さいほど、1次粒子が凝集した粒子凝集体中の1次粒子の個数が少ないということができる。1次粒子の個数がより少ないほど、粒子凝集体の内外組成はより均一になる傾向があると、本発明者は考えている。この点が、ポリオレフィンのスパン向上に寄与すると本発明者は推察している。ただし、本明細書に記載の推察に本発明は限定されない。
【0013】
本発明および本明細書において、「平均粒子径」とは、体積基準のメジアン径を意味する。体積基準のメジアン径は、乾燥窒素雰囲気下においてレーザー回折・散乱法により粒度分布を測定することによって求めることができる。測定方法の具体例としては、後述の実施例の欄に記載の方法を挙げることができる。
【0014】
上記固体状PMAO組成物の平均粒子径は、上記固体状PMAO組成物を含む重合触媒の存在下でオレフィン類を重合することによって得られるポリオレフィンのスパン(粒度分布スパン)の更なる向上の観点からは、7.0μm以下であることが好ましく、6.8μm以下であることがより好ましく、6.6μm以下、6.4μm以下、6.2μm以下、6.0μm以下の順に更に好ましい。
【0015】
上記平均粒子径は、1次粒子が凝集した粒子凝集体(例えば2次粒子等)の平均粒子径である。これに対し、「1次粒子径」は、1次粒子の粒子径の算術平均である。1次粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)画像(2次元情報)を解析することによって求める。測定対象の1次粒子は、無作為に選択した100個の1次粒子とし、100個の1次粒子の粒子径の算術平均を、1次粒子径とする。1次粒子の粒子径は円相当径とし、公知の画像解析ソフトを用いて求めることができる。画像解析ソフトの一例としては、マウンテック社製画像解析式粒度分布測定ソフトウェアMac-View(ver.4)を挙げることができる。
【0016】
上記固体状PMAO組成物の1次粒子径は、例えば1.5μm以上または1.7μm以上であることができる。また、上記固体状PMAO組成物の1次粒子径は、例えば4.0μm以下、3.5μm以下、3.0μm以下、2.5μm以下または2.0μm以下であることができる。固体状PMAO組成物を含む重合触媒の重合活性を高める観点からは、上記固体状PMAO組成物の1次粒子径が小さいことは好ましい。
【0017】
<円形度>
本発明および本明細書における「円形度」は、Wadellの円形度(sphericity、形状が円にどの程度近いか)である。Wadellの円形度は、粒子の投影像に関する形状指数の一つであって、以下の式により求められる。円形度を求める粒子は、1次粒子が凝集した粒子凝集体である。
【0018】
【数1】
【0019】
SEM画像(2次元情報)からの解析を行う場合には以下の式を使用する。
【0020】
【数2】
【0021】
SEM画像は2次元情報であるが、測定台座上の粒子の方向はランダムであるので、ある程度の数の粒子を測定する場合、立体の形状(ここでは、球形度)を表現するものと理解してよいと考えられる。解析に用いる粒子数(粒子凝集体の数)は、例えば100個~300個程度であることができる。円形度を求めるための解析には、公知の画像解析ソフトを用いることができる。画像解析ソフトの一例としては、マウンテック社製画像解析式粒度分布測定ソフトウェアMac-View(ver.4)を挙げることができる。
【0022】
円形度が0.50以上の固体状PMAO組成物は、球形に近い形状を有するため、ガス重合のために好適に使用され得る。上記固体状PMAO組成物の円形度は、0.50以上であることが好ましく、0.52以上であることがより好ましい。また、上記固体状PMAO組成物の円形度は、例えば0.90以下、0.80以下、0.70以下または0.60以下であることができる。
【0023】
<均一性>
固体状PMAO組成物の粒子(粒子凝集体)の粒度分布の指標としては、以下の式によって求められる均一性を挙げることができる。以下の式によって求められる均一性は、粒度分布の指標となり得るものであり、値が大きいほど粒度分布が広いことを示す。以下の式中、Xiは粒子iのヒストグラム値、d(0.5)は体積基準のメジアン径、Diは粒子iの体積基準径を示す。Xi、d(0.5)およびDiは、乾燥窒素雰囲気下においてレーザー回折・散乱法により粒度分布を測定することによって求めることができる。測定方法の具体例としては、後述の実施例の欄に記載の方法を挙げることができる。
【0024】
【数3】
【0025】
上記固体状PMAO組成物の均一性は、0.450以下であることが好ましく、0.400以下であることがより好ましく、0.350以下、0.300以下、0.250以下、0.200以下の順に更に好ましい。上記固体状PMAO組成物の均一性は、例えば0.150以上であることができる。均一性が0.450以下の固体状PMAO組成物と遷移金属化合物を用いることによって、粒子径の揃ったポリオレフィンを重合することができる。
【0026】
<内外組成差>
上記固体状PMAO組成物の表面におけるアルミニウム原子と酸素原子との合計に対する酸素原子比率と、上記固体状ポリメチルアルミノキサン組成物の内部におけるアルミニウム原子と酸素原子との合計に対する酸素原子比率と、の差異(内外組成差)は、4.50以下であることが好ましく、4.40以下であることがより好ましく、4.20以下、4.00以下、3.80以下、3.60以下、3.40以下の順に更に好ましい。上記固体状PMAO組成物の内外組成差は、例えば1.00以上、1.00超、1.50以上、2.00以上、2.50以上または3.00以上であることができる。固体状PMAO組成物の平均粒子径と1次粒子径との比(平均粒子径/1次粒子径)の値を小さくすることは、内外組成差の値を小さくすることに寄与し得ると本発明者は推察している。
【0027】
上記内外組成差は、X線光電子分光法(XPS)による測定によって求められる。X線光電子分光法(XPS)は、分光学的測定方法の一つである。XPSでは、超高真空下で試料表面にX線を照射すると、光電効果により表面から光電子が真空中に放出される。その光電子の運動エネルギーを観測することにより、その表面の化学状態に関する情報を得ることができる。更に、試料をエッチングし、露出した表面におけるXPS測定を行うことを繰り返せば、試料表面から内側に向かう深さ方向における化学状態の均一性に関する情報を得ることができる。固体状PMAO組成物については、XPSによれば、固体状PMAO組成物の表面から内側に向かう深さ方向における、アルミニウム原子と酸素原子の組成を確認できる。上記内外組成差は、固体状PMAO組成物の表面から内側に向かう深さ方向におけるアルミニウム原子と酸素原子の組成の均一性の指標となり得る。上記内外組成差の値がより小さいほど、固体状PMAO組成物の表面から内側に向かう深さ方向におけるアルミニウム原子と酸素原子の組成の均一性がより高いということができる。
本発明および本明細書において、上記内外組成差は、以下の方法によって求められる値である。
測定対象の固体状PMAO組成物を試料台に固定する。試料台への固定には、両面テープ等の公知の固定手段を用いることができる。下記測定条件でのXPS測定において光電子の検出範囲は0.7mm×0.8mmであるため、少なくとも固体状PMAO組成物の粒子300個以上の平均化された情報を得ることができる。
試料台に固定した固体状PMAO組成物の表面のXPS測定を、X線源として単色化AlKα線源を用い、15kV・10mAの強度で行う。
表面のXPS測定を行った後、アルゴンイオンエネルギーでのエッチング(以下、「アルゴンイオンエッチング」と記載する。)を400秒間行った後、X線源として単色化AlKα線源を用い、15kV・10mAの強度でXPS測定を行う。アルゴンイオンエッチングのアルゴンイオンビーム照射条件は、加速電圧4kV、ラスターサイズ2mmとする。上記アルゴンイオンビーム照射条件でのアルゴンイオンエッチングによれば、例えばSi基板上に形成されたSi酸化被膜であれば、約12nm/分のエッチングレートでエッチングされる。
表面のXPS測定およびアルゴンイオンエッチング400秒後のXPS測定のそれぞれによって、XPSスペクトルが取得される。XPSスペクトルによって、アルミニウムと酸素の結合エネルギーをピーク情報として取得することができる。XPSスペクトルのアルミニウム(Al)の2p軌道のピークと酸素(O)の1s軌道のピークの、それぞれのピークの面積の合計に対する酸素(O)の1s軌道のピーク面積の比率を、アルミニウム原子と酸素原子との合計に対する酸素原子比率とする。即ち、酸素原子比率は、以下の式によって算出される。
酸素原子比率=Oの1s軌道のピークの面積/(Alの2p軌道のピーク面積+Oの1s軌道のピークの面積)×100
表面のXPS測定によって取得されたXPSスペクトルから求めた酸素原子比率を「表面の酸素原子比率」、アルゴンイオンエッチング400秒後のXPS測定によって取得されたXPSスペクトルから求めた酸素原子比率を「アルゴンイオンエッチング400秒後の酸素原子比率」として、上記内外組成差は、以下の式によって算出される。
内外組成差=表面の酸素原子比率―アルゴンイオンエッチング400秒後の酸素原子比率
【0028】
固体状PMAO組成物の上記の各種物性値は、原料の組成、固体状PMAO組成物の製造条件等によって制御することができる。
【0029】
<固体状PMAO組成物の製造方法>
上記固体状PMAO組成物は、PMAOおよびトリメチルアルミニウムを芳香族系炭化水素溶媒中に含有する溶液(以下、「溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物」または「溶液状PMAO組成物」とも記載する。)を加熱し、固体状PMAO組成物を析出させる工程を経て製造することができる。上記加熱は、撹拌下で行うことができる。こうして析出する固体状PMAO組成物には、通常、PMAOに加えてトリメチルアルミニウムが含まれる。
【0030】
PMAOは、下記式2で表される単位を含むことができる。式2中、Meはメチル基を表し、nは10~50の範囲の整数を表す。
【化1】
【0031】
式2で示される単位を含むとは、nが上記範囲内の単数(nがある特定の整数)であるPMAO、またはnが上記範囲内の複数種類(nが異なる複数の整数)である複数のPMAOを含むことを意味する。nが10~50の範囲の整数である理由は、ベンゼン中の凝固点降下から求めた分子量を基準とするアルミノキサンの重合度が10~50の範囲に存在するからである
【0032】
溶液状PMAO組成物は、例えば、特表2000-505785号公報に記載の方法によって調製することができる。特表2000-505785号公報に記載の方法は、トリメチルアルミニウムを加水分解することなくPMAO組成物を調製する方法である。具体的には、アルミニウム-酸素-炭素結合を有するアルキルアルミニウム化合物を熱分解することにより溶液状PMAO組成物を得る方法である。
【0033】
溶液状PMAO組成物に溶媒として用いられる芳香族系炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、キシレン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン等を挙げることができる。ただし、これらに限定されず、芳香族系炭化水素であれば、溶液状PMAO組成物の溶媒として使用できる。
【0034】
上記アルミニウム-酸素-炭素結合を有するアルキルアルミニウム化合物は、トリメチルアルミニウムと含酸素有機化合物との反応により調製されるものであることが好ましい。上記含酸素有機化合物は、下記式3:
-(COOH)
(式中、Rは、炭素数1以上20以下の直鎖または分岐したアルキル基、アルケニル基、アリール基等の炭化水素基を表し、nは1~5の範囲の整数を表す。)
で表される脂肪族または芳香族カルボン酸であることが好ましい。
【0035】
熱分解反応により溶液状PMAO組成物を与えるアルミニウム-酸素-炭素結合を有するアルキルアルミニウム化合物のトリメチルアルミニウムと含酸素化合物との反応に用いられる含酸素化合物としては、例えば、COOH基を有するカルボン酸化合物、カルボン酸無水物等を挙げることができる。溶液状PMAO組成物の調製の際、これらの一種のみまたは任意の割合で二種以上を用いることができる。含酸素化合物の具体例としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、正酪酸、正吉草酸、正カプロン酸、正エナント酸、正カプリル酸、正ペラルゴン酸、正カプリン酸、正ラウリン酸、正ミリスチン酸、正ステアリン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、安息香酸、フタル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、トルイル酸、トルイル酸無水物、酢酸無水物、プロピオン酸無水物、正酪酸無水物、正吉草酸無水物、正カプロン酸無水物、蓚酸無水物、マロン酸無水物、コハク酸無水物、グルタル酸無水物、安息香酸無水物、フタル酸無水物、トルイル酸無水物等を挙げることができる。これらの中で好ましいものは、酢酸、酢酸無水物、プロピオン酸、プロピオン酸無水物、安息香酸、安息香酸無水物、フタル酸、フタル酸無水物、トルイル酸およびトルイル酸無水物である。
【0036】
溶液状PMAO組成物の調製に用いるトリメチルアルミニウムに含まれるアルミニウム原子と含酸素有機化合物の酸素原子のモル比は、任意に設定することができる。PMAOの分子量またはトリメチルアルミニウム残量の制御の観点からは、含酸素有機化合物の酸素原子に対するトリメチルアルミニウム含まれるアルミニウム原子のモル量の比は、例えば0.5~3.0:1の範囲で任意に設定することができる。
【0037】
溶液状PMAO組成物の調製のし易さ、その安定性および適切な残留トリメチルアルミニウム量の制御の観点から、上記モル量の比は、好ましくは1.0~1.7:1の範囲であり、より好ましくは1.15~1.4:1の範囲であり、更に好ましくは1.2~1.4:1の範囲である。
【0038】
溶液状PMAO組成物の前駆体であるアルミニウム-酸素-炭素結合を有するアルミニウム化合物の熱分解温度は、20℃~90℃の範囲の任意の温度であることができる。反応の易操作性と安全性および適切な反応時間という観点から、好ましくは30℃~80℃の範囲であり、より好ましくは60℃~80℃の範囲である。アルミニウム-酸素-炭素結合を有するアルミニウム化合物の熱分解の時間は、熱分解温度および原料の組成により変化するが、例えば、5~100時間の範囲である。温度が低ければ、長時間を要し、温度が高ければ、短時間で熱分解を終了することができる。
【0039】
上記熱分解温度が100℃以下であれば、ゲル状物の著しい生成を抑制することができ、PMAO均一溶液の回収収率を高めることができる。一方、熱分解温度を50℃以上とすることは、生産性向上の観点から好ましい
【0040】
固体状PMAO組成物の製造のために使用される溶液状PMAO組成物のアルミニウム濃度は、固体状PMAO組成物の平均粒子径と1次粒子径との比(平均粒子径/1次粒子径)を制御する観点からは、8.00質量%以下であることが好ましく、7.90質量%以下であることがより好ましく、7.80質量%以下であることが更に好ましい。上記アルミニウム濃度は、例えば5.00質量%以上または6.00質量%以上であることができる。固体状PMAO組成物の製造のためには、例えば、アルミニウム-酸素-炭素結合を有するアルキルアルミニウム化合物を熱分解することにより得られた溶液状PMAO組成物をそのまま使用してもよく、こうして得られた溶液状PMAO組成物にアルミニウム濃度を低下させるために適宜溶媒を追加添加したものを使用してもよい。追加添加される溶媒としては、芳香族系炭化水素が好ましい。芳香族系炭化水素については、先の記載を参照できる。
【0041】
溶液状PMAO組成物および固体状PMAO組成物のアルミニウム濃度は、例えば、0.5Nの硫酸水溶液で加水分解した溶液に過剰量のエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムを加えた後に、ジチゾンを指示薬とし硫酸亜鉛で逆滴定することにより求めることができる。測定濃度が希薄な場合は、原子吸光分析法を用いて測定を行うこともできる。
【0042】
PMAOおよびトリメチルアルミニウムを芳香族系炭化水素溶媒中に含有する溶液(溶液状PMAO組成物)を撹拌しながら所定の温度で加熱すると、PMAOおよびトリメチルアルミニウムを含有する固体状PMAO組成物が溶液中に析出してくる。所定の温度とは、好ましくは80℃~200℃の範囲であり、析出に必要な時間は、温度により異なるが、例えば、5分間以上24時間未満の範囲である。この範囲にあることで、所望の粒子径および粒子径の均一性を有する固体状PMAO組成物を高い収率で得ることができる。ただし、加熱温度によってはこの時間範囲を超えた時間の加熱が適切な場合もあり得る。固体状PMAO組成物の溶液中への析出量は、時間の経過とともに増大し、一定のレベルまで達すると、それ以上、析出物の量の増大はなくなる。溶液状PMAO組成物の組成および溶液中の溶質の濃度により、析出物の量(回収率)は変化する。
【0043】
固体状PMAO組成物の粒子径、粒子径の均一性、収率等を考慮すると、加熱温度は80℃~200℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは90℃~150℃の範囲であり、更に好ましくは100℃~130℃の範囲である。加熱時間は、上記温度範囲では、好ましくは1~20時間、より好ましくは5~12時間である。加熱温度が低くなると固体状PMAO組成物の析出に要する時間は長くなり、加熱温度が高くなると固体状PMAO組成物の析出に要する時間は短くなる傾向がある。
【0044】
溶液状PMAO組成物を撹拌しながら加熱することによって、PMAOおよびトリメチルアルミニウムを含有する固体状PMAO組成物を析出させることができる。析出した固体状PMAO組成物は、固体状PMAO組成物が溶媒中に分散した状態の分散液として使用してもよく、必要に応じて洗浄した後に乾燥させて粉体として使用してもよい。洗浄および乾燥は、公知の方法によって行うことができる。
【0045】
上記固体状PMAO組成物は、オレフィン重合用触媒として公知の触媒と組合わせて重合触媒として用いることができる。オレフィン重合用触媒としては、例えば、遷移金属化合物を挙げることができる。このような遷移金属化合物の具体例としては、下記式1で表される遷移金属化合物を挙げることができる。
【0046】
[オレフィン類の重合触媒]
本発明の一態様は、上記固体状ポリメチルアルミノキサン組成物および下記式1で表される遷移金属化合物を含むオレフィン類の重合触媒に関する。
【0047】
式1:MR
【0048】
式1中、Mは遷移金属原子を表し、R、R、RおよびRの中で、少なくとも1つはシクロアルカジエニル骨格を有する有機基であり、残りはそれぞれ独立にアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコシキ基、アリーロキシ基、アルキルシリル基、アルキルアミド基、アルキルイミド基、アルキルアミノ基、アルキルイミノ基またはハロゲン原子を表す。R、R、RおよびRの2つ以上がシクロアルカジエニル骨格を有する有機基である場合、シクロアルカジエニル骨格を有する有機基の少なくとも2つは炭素、ケイ素またはゲルマニウムにより架橋されていてもよい。
【0049】
上記重合触媒において、上記遷移金属化合物は主触媒として、上記固体状ポリメチルアルミノキサン組成物は主触媒の遷移金属化合物の活性化に寄与する助触媒として、機能し得る。
【0050】
式1中のMは、具体的には、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、クロム、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルまたはパラジウムであることができ、チタン、ジルコニウム、クロム、鉄またはニッケルであることが好ましい。
【0051】
式1で表される遷移金属化合物は、シクロアルカジエニル骨格を有する有機基(配位子)が1個または2個配位したメタロセン化合物であることが好ましい。シクロアルカジエニル骨格を有する配位子としては、例えば、シクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、ブチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基等のアルキル置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基等を例示することができ、シクロアルカジエニル基は2価の置換アルキレン基、置換シリレン基等で架橋されていてもよい。
【0052】
シクロアルカジエニル骨格を有する配位子以外の配位子は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコシキ基、アリーロキシ基、アルキルシリル基、アルキルアミド基、アルキルイミド基、アルキルアミノ基、アルキルイミノ基またはハロゲン原子を表す。アルキル基には、シクロアルキル基が包含される。アルキル基、シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基の炭素数は、例えば1~20の範囲であることができる。具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロビル基、ブチル基等が例示され、シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロへキシル基等が例示され、アリール基としては、フェニル基、トリル基等が例示され、アラルキル基としてはベンジル基等が例示される。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が例示され、アリーロキシ基としてはフェノキシ基等が例示される。これらの基にはハロゲン原子等が置換していてもよい。アルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等が例示される。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示される。
【0053】
式1中のMがジルコニウムである場合の、シクロアルカジエニル骨格を有する配位子を含む遷移金属化合物の具体例を以下に例示する。
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノクロライドモノハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノブロミドモノハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)メチルジルコニウムハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)エチルジルコニウムハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)フェニルジルコニウムハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)べンジルジルコニウムハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)ネオぺンチルジルコニウムハイドライド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムモノクロライドハイドライド、ビス(インデニル)ジルコニウムモノクロライドハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジブロミド、ビス(シクロペンタジエニル)メチルジルコニウムモノクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)エチルジルコニウムモノクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)シクロヘキシルジルコニウムモノクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)フェニルジルコニウムモノクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ベンジルジルコニウムモノクロライド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(インデニル)ジルコニウムジブロミド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジベンジル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノメトキシモノクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノエトキシモノクロライド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムモノエトキシモノクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノフエノキシモノクロライド、ビス(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド等。
【0054】
式1中のMがジルコニウムであり、シクロアルカジエニル骨格を有する配位子を2個以上含み、かつこの2個以上のシクロアルカジエニル骨格を有する配位子がエチレン基、プロピレン基等のアルキレン基、イソプロピリデン基、ジフェニルメチレン基等の置換アルキレン基、シリレン基、ジメチルシリレン等の置換シリレン基、ジメチルゲルマンジイル基、ジフェニルゲルマンジイル基等の置換ゲルマンジイル基を介して結合されている遷移金属化合物について、具体例を以下に例示する。
エチレンビス(インデニル)ジメチルジルコニウム、エチレンビス(インデニル)ジエチルジルコニウム、エチレンビス(インデニル)ジフェニルジルコニウム、エチレンビス(インデニル)メチルジルコニウムモノクロライド、エチレンビス(インデニル)エチルジルコニウムモノクロライド、エチレンビス(インデニル)メチルジルコニウムモノブロミド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムブロミド、エチレンビス(4,5,6-テトラヒドロ-1-インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-(1-ナフチル)インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルゲルマンジイルビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルゲルマンジイルビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルゲルマンジイルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルゲルマンジイルビス(2-メチル-4-(1-ナフチル)インデニル)ジルコニウムジクロライド等。これらは、ラセミ体、メソ体およびそれらの混合物であってよい。
【0055】
上記遷移金属化合物は、均一系重合に際して、1種類のみ使用してもよいし、分子量分布調整等を目的として2種類以上を使用してもよい。また、あらかじめ固体触媒調製を行う場合に際しては、上記遷移金属化合物を1種類のみ使用してもよいし、分子量分布調整等を目的として2種類以上を使用してもよい。
【0056】
上記重合触媒における上記固体状ポリメチルアルミノキサン組成物および上記遷移金属化合物の含有率は特に限定されるものではなく、オレフィン類の重合触媒に関する公知技術を適用できる。
【0057】
[ポリオレフィンの製造方法]
本発明の一態様は、上記重合触媒の存在下でオレフィン類を重合することを含むポリオレフィンの製造方法に関する。
【0058】
上記重合触媒を使用する重合の重合形式としては、溶媒を用いる溶液重合、溶媒を用いないバルク重合、気相重合等を挙げることができる。また、連続重合、回分式重合のいずれにおいても上記重合触媒を使用することができ、分子量調節剤としての水素等も必要に応じて用いることができる。
【0059】
重合に用いられるモノマーは、オレフィン系モノマーの単独またはそれらを組み合わされた共重合に用いることができるどのような化合物でもよい。具体例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-デセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等のα-オレフィン、ビスフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン等のハロゲン置換オレフィン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン等の環状オレフィンが挙げられる。
【0060】
上記製造方法について、重合条件等のオレフィン類の重合に関する詳細は特に限定されず、オレフィン類を重合に関する公知技術を適用できる。
【実施例0061】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。ただし、本発明は実施例に示す実施形態に限定されるものではない。
【0062】
[試験方法]
(1)アルミニウム濃度
溶液状PMAO組成物および固体状PMAO組成物のアルミニウム濃度は、以下のいずれかの方法によって求めた。
(i)0.5Nの硫酸水溶液で加水分解した溶液に過剰量のエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムを加えた後に、ジチゾンを指示薬とし硫酸亜鉛で逆滴定することにより求めた。
(ii)測定濃度が希薄な場合は、原子吸光分析法を用いて測定を行った。
【0063】
(2)固体状PMAO組成物の平均粒子径(体積基準のメジアン径)および均一性
固体状PMAO組成物の体積基準のメジアン径および均一性を、先に記載した方法によって求めた。具体的には、Malvern Instrument Ltd.のマスターサイザー2000Hydro Sを使用し、乾燥窒素雰囲気下においてレーザー回折・散乱法により粒度分布を測定することによって求めた。分散媒としては主に脱水および脱気したn-ヘキサンを、必要に応じて一部には脱水および脱気したトルエンを用いた。
【0064】
(3)円形度
円形度は、先に記載した式を使用して、SEM画像(2次元情報)からの解析を行って求めた。測定対象は100粒子とした。円形度を求める解析には、マウンテック社製画像解析式粒度分布測定ソフトウェアMac-View(ver.4)を用いた。
【0065】
(4)1次粒子径
固体状PMAO組成物の1次粒子径は、SEM画像(2次元情報)からの解析を行って求めた。測定対象は100粒子とした。1次粒子の解析には、マウンテック社製画像解析式粒度分布測定ソフトウェアMac-View(ver.4)を用いた。
【0066】
(5)内外組成差
固体状PMAO組成物の内外組成差の測定には、Kratos社製X線光電子分光(XPS)装置を使用した。固体状PMAO組成物は、窒素雰囲気のグローブボックス内で両面テープによって試料台に固定し、上記XPS装置専用のトランスポートセルを用いることにより、大気雰囲気に暴露することなく装置内へ搬送した。
装置内へ搬送した固体状PMAO組成物について、先に記載したように表面のXPS測定、400秒間のアルゴンイオンエッチングおよびその後のXPS測定を行った。表面のXPS測定およびアルゴンイオンエッチング400秒後のXPS測定の測定結果から、先に記載したように内外組成差を求めた。
【0067】
(6)ポリマーの平均粒子径(体積基準のメジアン径)、スパンおよび均一性
下記のエチレン重合評価において得られたポリマーの体積基準のメジアン径および均一性を、固体状PMAO組成物に関して先に記載した方法によって求めた。具体的には、Malvern Instrument Ltd.のマスターサイザー2000Hydro Sを使用し、乾燥窒素雰囲気下においてレーザー回折・散乱法により粒度分布を測定することによって求めた。分散媒としては主に脱水および脱気したケロシンを、必要に応じて一部には脱水および脱気したヘキサンを用いた。スパンは、スパン=[d(0.9)-d(0.1)]/d(0.5)、によって算出した。d(0.5)は、体積基準のメジアン径である。d(0.5)は、粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さい粒径である。d(0.1)は、体積基準でこれ以下の粒子の比率が10%である粒径である。d(0.9)は、体積基準でこれ以下の粒子の比率が90%である粒径である。
【0068】
[溶液状ポリメチルアルミノキサン組成物の合成例]
<合成例1>
撹拌装置を有する内容積9,000Lの反応容器に、トリメチルアルミニウム(TMAL)368kg(5.11kmol)、トルエン1,125Lを入れた。この溶液を15℃にまで冷却し、これに安息香酸260kg(2.13kmol)を溶液の温度が25℃以下になるような速度でゆっくりと添加した。その後50℃で加熱熟成を1時間行った。反応液を70℃で32時間加熱し、その後60℃6時間加熱することにより、溶液状PMAO組成物(ポリメチルアルミノキサン組成物のトルエン溶液)を得た。得られた溶液は、ゲル状物のない透明な液体であった。反応液回収後に行ったアルミニウム分析結果より、アルミニウム原子基準で示す反応収率は定量的なものであった。得られた反応液のアルミニウム濃度は、8.66質量%であった。
【0069】
<合成例2>
撹拌装置を有する内容積9,000Lの反応容器に、トリメチルアルミニウム(TMAL)366kg(5.08kmol)、トルエン1,125Lを入れた。この溶液を15℃にまで冷却し、これに安息香酸260kg(2.13kmol)を溶液の温度が25℃以下になるような速度でゆっくりと添加した。その後50℃で加熱熟成を1時間行った。反応液を70℃で32時間加熱し、その後60℃6時間加熱することにより、溶液状PMAO組成物(ポリメチルアルミノキサン組成物のトルエン溶液)を得た。得られた溶液は、ゲル状物のない透明な液体であった。反応液回収後に行ったアルミニウム分析結果より、アルミニウム原子基準で示す反応収率は定量的なものであった。得られた反応液のアルミニウム濃度は、8.76質量%であった。
【0070】
<合成例3>
撹拌装置を有する内容積9,000Lの反応容器に、トリメチルアルミニウム(TMAL)342kg(4.74kmol)、トルエン1,125Lを入れた。この溶液を15℃にまで冷却し、これに安息香酸260kg(2.13kmol)を溶液の温度が25℃以下になるような速度でゆっくりと添加した。その後50℃で加熱熟成を1時間行った。反応液を70℃で32時間加熱し、その後60℃6時間加熱することにより、溶液状PMAO組成物(ポリメチルアルミノキサン組成物のトルエン溶液)を得た。得られた溶液は、ゲル状物のない透明な液体であった。反応液回収後に行ったアルミニウム分析結果より、アルミニウム原子基準で示す反応収率は定量的なものであった。得られた反応液のアルミニウム濃度は、8.79質量%であった。
【0071】
<合成例4>
撹拌装置を有する内容積9,000Lの反応容器に、トリメチルアルミニウム(TMAL)366kg(5.08kmol)、トルエン1,125Lを入れた。この溶液を15℃にまで冷却し、これに安息香酸260kg(2.13kmol)を溶液の温度が25℃以下になるような速度でゆっくりと添加した。その後50℃で加熱熟成を1時間行った。反応液を70℃で32時間加熱し、その後60℃6時間加熱することにより、溶液状PMAO組成物(ポリメチルアルミノキサン組成物のトルエン溶液)を得た。得られた溶液は、ゲル状物のない透明な液体であった。反応液回収後に行ったアルミニウム分析結果より、アルミニウム原子基準で示す反応収率は定量的なものであった。得られた反応液のアルミニウム濃度は、8.64質量%であった。
【0072】
[実施例1]
(1)固体状PMAO組成物の合成
撹拌装置を有する内容積1Lのオートクレーブに合成例1で調製した溶液状PMAO組成物264gを導入し、脱水したトルエンを更に30g導入した。トルエン導入後の溶液状PMAO組成物のアルミニウム濃度は7.77質量%であった。その後、トルエン導入後の溶液状PMAO組成物(原料)を400rpm(revolutions per minute)で撹拌しながら120℃で5時間加熱した。加熱中に固体状PMAO組成物が析出した。
固体状PMAO組成物が析出した反応スラリーを回収し、デカンテーションにより上澄み液を除去した後に、トルエン200mLで4度のデカンテーションによる洗浄操作を行った。得られた固体状PMAO組成物含有スラリーを一部採取し、40℃で減圧乾燥することにより乾燥固体状PMAO組成物を得た。乾燥固体状PMAO組成物の析出率は、原料として使用した溶液状PMAO組成物のアルミニウム原子基準で100%であった。
【0073】
(2)固体状PMAO組成物の形状評価、内外組成差
先に記載した方法によって、固体状PMAO組成物の平均粒子径、円形度、均一性、1次粒子径および内外組成差を求めた。得られた結果を表1に示す。平均粒子径と1次粒子径との比(平均粒子径/1次粒子径)の算出値も表1に示す。
【0074】
(3)エチレン重合評価
(重合触媒の調製)
磁気撹拌装置を有する300mLの四つ口フラスコに固体状PMAO組成物のトルエンスラリー1.78gを加え、更にトルエン40mLを加えて撹拌した。これにAl/Zrのモル比が200となるようにビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド(BI)のトルエンスラリーを室温下に加え、その温度で遮光下に15時間反応させてBI担持固体PMAO触媒を得た。
【0075】
(エチレン重合評価)
触媒投入ポット、温度測定装置および磁気撹拌装置を有する1Lオートクレーブにヘキサン800mLと0.5mol/Lのトリエチルアルミニウムのヘキサン溶液を1mL(0.5mmol)加え、エチレン加圧(0.8MPa)―脱ガスを2回行い、オートクレーブ内の窒素をエチレンで置換した。その後、オートクレーブ内の溶液を75℃に加熱し、上記BI担持固体PMAO触媒9.68mg(スラリーとして0.2mL)を投入ポットより添加した。その後、直ぐにエチレンによりオートクレーブ系内を0.8MPaにまで加圧して、重合を開始した。重合は1時間行い、その間、オートクレーブ内の温度を熱媒および冷媒を使用して80±1℃に制御した。重合時間の経過後は、エチレンガスの供給を止め、オートクレーブを冷媒により30℃以下まで冷却してから系内のガスをベントラインへ放出した。0.5質量%-BHT(BHT:2,6-ジ-t-ブチルヒドロキシトルエン)のメタノール溶液を少量添加した後に、得られたポリマーを濾過取得した。濾取したポリマーを減圧乾燥機により50℃で乾燥した。得られたポリマーの質量(217.84g)より、この触媒の重合活性を求めた。上記の1時間の重合について、重合活性は、以下の式によって算出される。
得られたポリマーの質量[kg]/投入した主触媒(上記BI)量[g]=重合活性[kg-PE(ポリマー種)/g-cat(主触媒)・H(1時間当たり)]
また、得られたポリマーの平均粒子径、スパンおよび均一性を先に記載した方法によって求めた。以上の結果を表1に示す。
【0076】
[実施例2]
(1)固体状PMAO組成物の合成
撹拌装置を有する内容積1Lのオートクレーブに合成例2で調製した溶液状PMAO組成物252gを導入し、脱水したトルエンを更に60g導入した。トルエン導入後の溶液状PMAO組成物のアルミニウム濃度は7.00質量%であった。その後、トルエン導入後の溶液状PMAO組成物(原料)を600rpmで撹拌しながら120℃で5時間加熱した。加熱中に固体状PMAO組成物が析出した。
液体状PMAO組成物が析出した反応スラリーを回収し、デカンテーションにより上澄み液を除去した後に、トルエン200mLで4度のデカンテーションによる洗浄操作を行った。得られた固体状PMAO組成物含有スラリーを一部採取し、40℃で減圧乾燥することにより乾燥固体状PMAO組成物を得た。乾燥固体状PMAO組成物の析出率は、原料として使用した溶液状PMAO組成物のアルミニウム原子基準で100%であった。
【0077】
(2)固体状PMAO組成物の形状評価、内外組成差
先に記載した方法によって、固体状PMAO組成物の平均粒子径、円形度、均一性および1次粒子径を求めた。得られた結果を表1に示す。平均粒子径と1次粒子径との比(平均粒子径/1次粒子径)の算出値も表1に示す。
【0078】
(3)エチレン重合評価
(重合触媒の調製)
磁気撹拌装置を有する300mLの四つ口フラスコに固体状PMAO組成物のトルエンスラリー30.04gを加え、更にトルエン40mLを加えて撹拌した。これにAl/Zrのモル比が200となるようにBIのトルエンスラリーを室温下に加え、その温度で遮光下に15時間反応させてBI担持固体PMAO触媒を得た。
【0079】
(エチレン重合評価)
触媒投入ポット、温度測定装置および磁気撹拌装置を有する1Lオートクレーブにヘキサン800mLと0.5mol/Lのトリエチルアルミニウムのヘキサン溶液を1mL(0.5mmol)加え、エチレン加圧(0.8MPa)―脱ガスを2回行い、オートクレーブ内の窒素をエチレンで置換した。その後、オートクレーブ内の溶液を75℃に加熱し、上記BI担持固体PMAO触媒9.01mg(スラリーとして0.2mL)を投入ポットより添加した。その後、直ぐにエチレンによりオートクレーブ系内を0.8MPaにまで加圧して、重合を開始した。重合は1時間行い、その間、オートクレーブ内の温度を熱媒および冷媒を使用して80±1℃に制御した。重合時間の経過後は、エチレンガスの供給を止め、オートクレーブを冷媒により30℃以下まで冷却してから系内のガスをベントラインへ放出した。0.5質量%-BHT(BHT:2,6-ジ-t-ブチルヒドロキシトルエン)のメタノール溶液を少量添加した後に、得られたポリマーを濾過取得した。濾取したポリマーを減圧乾燥機により50℃で乾燥した。得られたポリマーの質量(164.26g)より、この触媒の重合活性を求めた。また、得られたポリマーの平均粒子径、スパンおよび均一性を先に記載した方法によって求めた。以上の結果を表1に示す。
【0080】
[比較例1]
(1)固体状PMAO組成物の合成
撹拌装置を有する内容積7,000Lの反応容器に合成例3で調製した溶液状PMAO組成物1442kgを導入した。導入した溶液状PMAO組成物のアルミニウム濃度は8.79質量%であった。その後、56rpmで撹拌しながら120℃で8時間加熱した。加熱中に固体状PMAO組成物が析出した。
固体状PMAO組成物が析出した反応スラリーを回収し、デカンテーションにより上澄み液を除去した後に、トルエン2,400Lで4度のデカンテーションによる洗浄操作を行った。得られた固体状PMAO組成物含有スラリーを一部採取し、40℃で減圧乾燥することにより乾燥固体状PMAO組成物を得た。乾燥固体状PMAO組成物の析出率は、原料として使用した溶液状PMAO組成物のアルミニウム原子基準で100%であった。
【0081】
(2)固体状PMAO組成物の形状評価、内外組成差
先に記載した方法によって、固体状PMAO組成物の平均粒子径、円形度、均一性および1次粒子径を求めた。得られた結果を表1に示す。平均粒子径と1次粒子径との比(平均粒子径/1次粒子径)の算出値も表1に示す。
【0082】
(3)エチレン重合評価
(重合触媒の調製)
磁気撹拌装置を有する300mLの四つ口フラスコに固体状PMAO組成物のトルエンスラリー35.1gを加え、更にトルエン40mLを加えて撹拌した。これにAl/Zrのモル比が200となるようにBIのトルエンスラリーを室温下に加え、その温度で遮光下に15時間反応させてBI担持固体PMAO触媒を得た。
【0083】
(エチレン重合評価)
触媒投入ポット、温度測定装置および磁気撹拌装置を有する1Lオートクレーブにヘキサン800mLと0.5mol/Lのトリエチルアルミニウムのヘキサン溶液を1mL(0.5mmol)加え、エチレン加圧(0.8MPa)―脱ガスを2回行い、オートクレーブ内の窒素をエチレンで置換した。その後、オートクレーブ内の溶液を75℃に加熱し、上記BI担持固体PMAO触媒17.6mg(スラリーとして1.0mL)を投入ポットより添加した。その後、直ぐにエチレンによりオートクレーブ系内を0.8MPaにまで加圧して、重合を開始した。重合は1時間行い、その間、オートクレーブ内の温度を熱媒および冷媒を使用して80±1℃に制御した。重合時間の経過後は、エチレンガスの供給を止め、オートクレーブを冷媒により30℃以下まで冷却してから系内のガスをベントラインへ放出した。0.5質量%-BHT(BHT:2,6-ジ-t-ブチルヒドロキシトルエン)のメタノール溶液を少量添加した後に、得られたポリマーを濾過取得した。濾取したポリマーを減圧乾燥機により50℃で乾燥した。得られたポリマーの質量(13.55g)より、この触媒の重合活性を求めた。また、得られたポリマーの平均粒子径、スパンおよび均一性を先に記載した方法によって求めた。以上の結果を表1に示す。
【0084】
[比較例2]
(1)固体状PMAO組成物の合成
撹拌装置を有する内容積7,000Lの反応容器に合成例4で調製した溶液状PMAO組成物1,516kg(4.85kmol-Al)を導入した。導入した溶液状PMAO組成物のアルミニウム濃度は8.64質量%であった。その後、70rpmで撹拌しながら120℃で8時間加熱した。加熱中に固体状PMAO組成物が析出した。
固体状PMAO組成物が析出した反応スラリーを回収し、デカンテーションにより上澄み液を除去した後に、トルエン2,400Lで4度のデカンテーションによる洗浄操作を行った。得られた固体状PMAO組成物含有スラリーを一部採取し、40℃で減圧乾燥することにより乾燥固体状PMAO組成物を得た。乾燥固体状PMAO組成物の析出率は、原料として使用した溶液状PMAO組成物のアルミニウム原子基準で100%であった。
【0085】
(2)固体状PMAO組成物の形状評価、内外組成差
先に記載した方法によって、固体状PMAO組成物の平均粒子径、円形度、均一性、1次粒子径および内外組成差を求めた。得られた結果を表1に示す。平均粒子径と1次粒子径との比(平均粒子径/1次粒子径)の算出値も表1に示す。
【0086】
(3)エチレン重合評価
(重合触媒の調製)
磁気撹拌装置を有する300mLの四つ口フラスコに固体状PMAO組成物のトルエンスラリー21.1gを加え、更にトルエン40mLを加えて撹拌した。これにAl/Zrのモル比が200となるようにBIのトルエンスラリーを室温下に加え、その温度で遮光下に15時間反応させてBI担持固体PMAO触媒を得た。
【0087】
(エチレン重合評価)
触媒投入ポット、温度測定装置および磁気撹拌装置を有する1Lオートクレーブにヘキサン800mLと0.5mol/Lのトリエチルアルミニウムのヘキサン溶液を1mL(0.5mmol)加え、エチレン加圧(0.8MPa)―脱ガスを2回行い、オートクレーブ内の窒素をエチレンで置換した。その後、オートクレーブ内の溶液を75℃に加熱し、上記BI担持固体PMAO触媒11.5mg(スラリーとして0.3mL)を投入ポットより添加した。その後、直ぐにエチレンによりオートクレーブ系内を0.8MPaにまで加圧して、重合を開始した。重合は1時間行い、その間、オートクレーブ内の温度を熱媒および冷媒を使用して80±1℃に制御した。重合時間の経過後は、エチレンガスの供給を止め、オートクレーブを冷媒により30℃以下まで冷却してから系内のガスをベントラインへ放出した。0.5質量%-BHT(BHT:2,6-ジ-t-ブチルヒドロキシトルエン)のメタノール溶液を少量添加した後に、得られたポリマーを濾過取得した。濾取したポリマーを減圧乾燥機により50℃で乾燥した。得られたポリマーの質量(271.4g)より、この触媒の重合活性を求めた。また、得られたポリマーの平均粒子径、スパンおよび均一性を先に記載した方法によって求めた。以上の結果を表1に示す。
【0088】
[比較例3]
(1)固体状PMAO組成物の合成
撹拌装置を有する内容積1Lの反応容器に合成例1で調製した溶液状PMAO組成物269g(0.86mol-Al)を導入した。導入した溶液状PMAO組成物のアルミニウム濃度は8.66質量%であった。その後、256rpmで撹拌しながら120℃で5時間加熱した。加熱中に固体状PMAO組成物が析出した。
固体状PMAO組成物が析出した反応スラリーを回収し、デカンテーションにより上澄み液を除去した後に、トルエン200mLで4度のデカンテーションによる洗浄操作を行った。得られた固体状PMAO組成物含有スラリーを一部採取し、40℃で減圧乾燥することにより乾燥固体状PMAO組成物を得た。乾燥固体状PMAO組成物の析出率は、原料として使用した溶液状PMAO組成物のアルミニウム原子基準で100%であった。
【0089】
(2)固体状PMAO組成物の形状評価、内外組成差
先に記載した方法によって、固体状PMAO組成物の平均粒子径、円形度、均一性、1次粒子径および内外組成差を求めた。得られた結果を表1に示す。平均粒子径と1次粒子径との比(平均粒子径/1次粒子径)の算出値も表1に示す。
【0090】
(3)エチレン重合評価
(重合触媒の調製)
磁気撹拌装置を有する300mLの四つ口フラスコに固体状PMAO組成物のトルエンスラリー30.0gを加え、更にトルエン40mLを加えて撹拌した。これにAl/Zrのモル比が200となるようにBIのトルエンスラリーを室温下に加え、その温度で遮光下に15時間反応させてBI担持固体PMAO触媒を得た。
【0091】
(エチレン重合評価)
触媒投入ポット、温度測定装置および磁気撹拌装置を有する1Lオートクレーブにヘキサン800mLと0.5mol/Lのトリエチルアルミニウムのヘキサン溶液を1mL(0.5mmol)加え、エチレン加圧(0.8MPa)―脱ガスを2回行い、オートクレーブ内の窒素をエチレンで置換した。その後、オートクレーブ内の溶液を75℃に加熱し、上記BI担持固体PMAO触媒8.89mg(スラリーとして0.2mL)を投入ポットより添加した。その後、直ぐにエチレンによりオートクレーブ系内を0.8MPaにまで加圧して、重合を開始した。重合は1時間行い、その間、オートクレーブ内の温度を熱媒および冷媒を使用して80±1℃に制御した。重合時間の経過後は、エチレンガスの供給を止め、オートクレーブを冷媒により30℃以下まで冷却してから系内のガスをベントラインへ放出した。0.5質量%-BHT(BHT:2,6-ジ-t-ブチルヒドロキシトルエン)のメタノール溶液を少量添加した後に、得られたポリマーを濾過取得した。濾取したポリマーを減圧乾燥機により50℃で乾燥した。得られたポリマーの質量(247.21g)より、この触媒の重合活性を求めた。また、得られたポリマーの平均粒子径、スパンおよび均一性を先に記載した方法によって求めた。以上の結果を表1に示す。
【0092】
[比較例4]
(1)固体状PMAO組成物の合成
(a)コアになる固体状PMAO組成物の合成
撹拌装置を有する内容積50Lの反応容器に合成例2で調製した溶液状PMAO組成物8.9g(0.029kmol-Al)を導入し、脱水したトルエンを更に1.1kg導入した。トルエン導入後の溶液状PMAO組成物のアルミニウム濃度は7.76質量%であった。その後、50rpmで撹拌しながら120℃で8時間加熱した。加熱中に固体状PMAO組成物が析出した。
固体状PMAO組成物が析出した反応スラリーを回収し、デカンテーションにより上澄み液を除去した後に、トルエン20Lで4度のデカンテーションによる洗浄操作を行った。得られた固体状PMAO組成物含有スラリーを一部採取し、40℃で減圧乾燥することにより乾燥固体状PMAO組成物を得た。乾燥固体状PMAO組成物の析出率は、原料として使用した溶液状PMAO組成物のアルミニウム原子基準で100%であった。
こうして得られた乾燥固体状MAO組成物について、先に記載したようにMalvern Instrument Ltd.のマスターサイザー2000HydroSによる粒度分布測定を行った。固体状PMAO組成物の体積基準のメジアン径d(0.5)は、4.3μmであった。
【0093】
(b)溶液状PMAO組成物を添加することによる、大粒径固体状PMAO組成物の合成
撹拌装置を有する内容積50Lの反応容器に、(a)で取得した固体状PMAO組成物含有スラリーを4.0kg導入した。更に、合成例2で調製した溶液状PMAO組成物7.98kgおよび脱水したトルエン0.45kgを導入した。その後、50rpmで撹拌しながら50℃で1時間、90℃で3時間、120℃で2時間と段階的に温度を上昇させて加熱した。加熱中にコアの固体状PMAO組成物が結合され、固体状PMAO組成物が析出した。
固体状PMAO組成物が析出した反応スラリーを回収し、デカンテーションにより上澄み液を除去した後に、トルエン200mLで4度のデカンテーションによる洗浄操作を行った。得られた固体状PMAO組成物含有スラリーを一部採取し、40℃で減圧乾燥することにより乾燥固体状PMAO組成物を得た。
【0094】
(2)固体状PMAO組成物の形状評価、内外組成差
先に記載した方法によって、固体状PMAO組成物の平均粒子径、円形度、均一性および1次粒子径を求めた。得られた結果を表1に示す。平均粒子径と1次粒子径との比(平均粒子径/1次粒子径)の算出値も表1に示す。
【0095】
(3)エチレン重合評価
(重合触媒の調製)
磁気撹拌装置を有する300mLの四つ口フラスコに固体状PMAO組成物のトルエンスラリー30.0gを加え、更にトルエン40mLを加えて撹拌した。これにAl/Zrのモル比が200となるようにBIのトルエンスラリーを室温下に加え、その温度で遮光下に15時間反応させてBI担持固体PMAO触媒を得た。
【0096】
(エチレン重合評価)
触媒投入ポット、温度測定装置および磁気撹拌装置を有する1Lオートクレーブにヘキサン800mLと0.5mol/Lのトリエチルアルミニウムのヘキサン溶液を1mL(0.5mmol)加え、エチレン加圧(0.8MPa)―脱ガスを2回行い、オートクレーブ内の窒素をエチレンで置換した。その後、オートクレーブ内の溶液を75℃に加熱し、上記BI担持固体PMAO触媒10.5mg(スラリーとして1.0mL)を投入ポットより添加した。その後、直ぐにエチレンによりオートクレーブ系内を0.8MPaにまで加圧して、重合を開始した。重合は1時間行い、その間、オートクレーブ内の温度を熱媒および冷媒を使用して80±1℃に制御した。重合時間の経過後は、エチレンガスの供給を止め、オートクレーブを冷媒により30℃以下まで冷却してから系内のガスをベントラインへ放出した。0.5質量%-BHT(BHT:2,6-ジ-t-ブチルヒドロキシトルエン)のメタノール溶液を少量添加した後に、得られたポリマーを濾過取得した。濾取したポリマーを減圧乾燥機により50℃で乾燥した。得られたポリマーの質量(110.3g)より、この触媒の重合活性を求めた。また、得られたポリマーの平均粒子径、スパンおよび均一性を先に記載の方法によって求めた。以上の結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
表1に示すように、実施例1、2の固体状PMAO組成物を含む重合触媒を使用して得られたポリマーのスパンの値は、比較例1~4の固体状PMAO組成物を含む重合触媒を使用して得られたポリマーのスパンの値より小さかった。スパンについては、値が小さいほど、スパン(粒度分布スパン)および均一性が向上しているということができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の一態様は、オレフィン重合の技術分野において有用である。