(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130041
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】車両を用いた商品の無人販売支援システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/06 20230101AFI20240920BHJP
G08B 13/196 20060101ALI20240920BHJP
G06Q 50/40 20240101ALI20240920BHJP
【FI】
G06Q30/06
G08B13/196
G06Q50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039526
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 英明
【テーマコード(参考)】
5C084
5L030
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5C084AA03
5C084AA13
5C084BB31
5C084CC19
5C084CC33
5C084DD11
5C084EE06
5C084FF02
5C084GG03
5C084GG78
5C084HH01
5C084HH10
5L030BB46
5L049BB46
5L049CC42
5L050CC42
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車両のオーナーが過度の設備投資を強いらず、自身所有の車両にて、セキュリティを担保し、車内に載せた商品の無人販売を行う車両を用いた商品の無人販売支援システムを提供する。
【解決手段】車両を用いた商品の無人販売支援システムMであって、無人販売支援ECU10の画像情報取得部101は、車内1に載置された商品の周辺画像情報を取得する。識別部103は、購入者が商品を保持したと識別した際に、保持商品の識別を行う。報知部104は、周辺画像情報の不足により保持商品を識別部103で識別できない場合に、保持商品の情報を要求する報知を行い、報知後であっても、周辺画像情報の不足により保持商品を識別できない場合に、保持商品の推測を行う。算出部105は、識別部103で識別できた保持商品の購入金額の算出と、識別部103で推測された保持商品の購入金額の算出を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を用いた商品の無人販売支援システムであって、
前記車両は、
少なくとも車内に載置された商品の周辺画像情報を取得する画像情報取得部と、
前記画像情報取得部で取得した画像情報から前記商品を識別する識別部と、
購入者への報知を行う報知部と、
購入金額を算出する算出部と、を備え、
前記識別部が、前記購入者が前記商品を保持したと識別した際に、
前記識別部は、保持商品の識別を行い、
前記報知部は、前記周辺画像情報の不足により前記保持商品を前記識別部で識別できない場合に、前記保持商品の情報を要求する報知を行い、
前記識別部は、前記報知後であっても、前記周辺画像情報の不足により前記保持商品を識別できない場合に、前記保持商品の推測を行い、
前記算出部は、
前記識別部で識別できた前記保持商品の購入金額の算出と、
前記識別部で推測された前記保持商品の購入金額の算出とが可能であることを特徴とする無人販売支援システム。
【請求項2】
前記無人販売支援システムは、
商品購入の際に決済が実行可能であり、
前記車両には、
前記車両の解錠と施錠を行うロック装置が設けられ、
前記ロック装置により前記車両が施錠された時に、
前記購入金額の算出に基づいて決済を実行することを特徴とする請求項1に記載の無人販売支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を用いた商品の無人販売支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、小売業での人手不足を解消するために、店舗の無人化(無人販売)の試みが進められており、その試みの一つとして、従来、車両を用いた移動式の無人店舗が提案されている(下記特許文献1参照)。
【0003】
この従来技術では、車両に店舗本体を積載して自走式の店舗を形成し、店舗本体には、前壁と後壁に利用者が出入りするドアを設け、店舗本体内の商品陳列棚に沿うように、前後一方のドアから他方のドアに直線状に延びる店内通路を設け、更に、利用者の認証を行う認証装置と、認証装置の認証結果に基づいて利用者の入店を許可または禁止するゲート装置を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来技術によると、商品の陳列棚や店内通路等を有する店舗本体を車両に装備し、更にセキュリティ確保のために、認証装置とゲート装置を装備しているので、実施には多大な設備投資が必要になる。このような従来技術によると、車両のオーナーは、高価な専用車両を用意する必要があるので、これが、車両のオーナーが自身の所有車両を利用して商品の無人販売を行う際の高い障壁になっている。
【0006】
一方、従来技術のような店舗設備を持たない一般車両の荷台等に商品を並べて、無人販売を行うことができれば、車両に載せて商品を任意の場所に移動することができるので、所謂「フリーマーケット」(登録商標)のような、個人対個人の商品売買を行う際に有利である。しかしながら、車両に載せている商品を無人販売するためには、セキュリティを担保した上で、無人で車両のロック解除を行うことが必要となると共に、未決済商品の持ち出しなど、利用者の不適切な行為を抑止する手立てを講じることが必要になる。
【0007】
本発明は、このような事情に対処するために提案されたものである。すなわち、本発明の課題は、車両のオーナーが過度の設備投資を強いられることなく、自身所有の車両を用い、セキュリティを担保した上で、車内に載せた商品の無人販売を行うことができるシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明の一実施の形態は、以下の構成を具備するものである。
車両を用いた商品の無人販売支援システムであって、前記車両は、少なくとも車内に載置された商品の周辺画像情報を取得する画像情報取得部と、前記画像情報取得部で取得した画像情報から前記商品を識別する識別部と、購入者への報知を行う報知部と、購入金額を算出する算出部と、を備え、前記識別部が、前記購入者が前記商品を保持したと識別した際に、前記識別部は、保持商品の識別を行い、前記報知部は、前記周辺画像情報の不足により前記保持商品を前記識別部で識別できない場合に、前記保持商品の情報を要求する報知を行い、前記識別部は、前記報知後であっても、前記周辺画像情報の不足により前記保持商品を識別できない場合に、前記保持商品の推測を行い、前記算出部は、前記識別部で識別できた前記保持商品の購入金額の算出と、前記識別部で推測された前記保持商品の購入金額の算出とが可能であることを特徴とする無人販売支援システム。
【発明の効果】
【0009】
このような特徴によると、本発明は、車両のオーナーが過度の設備投資を強いられることなく、自身所有の車両を用い、セキュリティを担保した上で、車内に載せた商品の無人販売を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態における車両の各車載ECUのブロック図。
【
図2】本発明の実施形態における車両のカメラ位置と撮像範囲を示した右側面図。
【
図3】本発明の実施形態における車両のカメラ位置と撮像範囲を示した上面図。
【
図4】本発明の実施形態における車両と購入者の右側面図。
【
図5A】本発明の実施形態における車両と購入者の荷室カメラ画角図。
【
図5B】本発明の実施形態における車両と購入者の開口部カメラ画角図。
【
図6】本発明の実施形態における荷室ドア開扉時における防犯処理フロー。
【
図7】本発明の実施形態における無人販売支援システムの利用形態を示す説明図。
【
図8】本発明の実施形態における無人販売支援システムの処理フロー。
【
図9】本発明の実施形態における無人販売支援システムの購入者情報の認証の処理フロー。
【
図10】本発明の実施形態における無人販売支援システムの購入処理の処理フロー。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一の符号は同一の機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0012】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る無人販売システムMは、車両1に無人販売ECU10を搭載させることで構成される。
図1~
図4、
図5A、
図5Bに示すように、本発明における無人販売支援システムMでは、車両1の荷室7に商品5を載置して無人販売を行う。
【0013】
車両1には、複数の車載ECUが搭載されている。車載ECUは、複数のECU(Electronic Control Unit)と、これらECU間の通信や車両外部との通信を中継する中継装置であるセントラルゲートウェイ(CGW)60が車載ネットワークによって相互に通信可能に接続されて構成されている。各車載ECUは、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサや電気回路、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶素子を備えて構成することができる。また、車載ECUが実行する動作の一部又は全部を、ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(field-programmable gate array)やGPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェアにより実現することもできる。
【0014】
図1に示すように、車両1に搭載されている無人販売支援ECU10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM12、RAM13及び、記憶部14を備えており、CPU11は、ROM12に格納されたプログラムに基づいて種々の処理を実行する。本実施形態では、CPU11は、ROM12に格納されたプログラムを、例えばRAM13等のメモリに読み込んで処理を実行する。
【0015】
無人販売支援ECU10には、カメラECU20や、通信ECU30からの情報を取得するための、情報取得部100が備えられている。情報取得部100では、カメラECU20からの情報を画像情報取得部101で取得し、通信ECU30からの情報を端末情報取得部102で取得する。車両1には、荷室カメラ21、開口部カメラ22、周囲カメラ23が車載カメラとして備えられており、これらのカメラを制御するカメラECU20が備えられている。各車載カメラの詳細については、
図2、
図3を用いて後述する。
【0016】
また、車両1には、第1通信機31、第2通信機32が備えられており、これらを制御する通信ECU30が備えられている。第1通信機31は、無人販売支援システムサーバ4(
図7参照)との通信や、運転時のナビ情報の取得等に用いられる。第2通信機32は、車両1周辺の情報端末と無線通信(UWB、Bluetooth(登録商標)等)をするのに用いられる。ここでは、役割を分けて二種類の通信機を用いるように示しているが、一種類の通信機にこれらの役割を持たせてもよい。
【0017】
無人販売支援ECU10には、識別部103が備えられており、識別部103は、情報取得部100で取得した情報を識別する。具体的には、識別部103は、後述する販売商品登録の情報と、カメラECU20から取得した画像情報を用いて、購入者2が保持した物体が商品5であるか否かの識別や、物体が商品5であった場合は、購入者2によって保持された商品5Aの名称や価格等の商品情報の識別等を行う。また、識別部103は、通信ECU30から取得した端末情報を用いて、車両1周辺の情報端末が、無人販売支援システムサーバ4に登録されているかの識別を行い、その識別が、購入者情報の認証に用いられる。購入者情報の認証についての詳細は
図9を用いて後述する。また、車両1は、荷室ドア6の解錠と施錠を行うドアロック装置51と、ドアロック装置51を制御するロックECU50を備えており、ロックECU50の制御により、購入者情報の認証結果に基づいて車両1の荷室ドア6をアンロックすることが可能になる。
【0018】
無人販売支援ECU10には、報知部104が備えられている。報知部104は、識別部103の識別結果に基づいて、報知信号を報知ECU40に出力する。具体的には、識別部103が、購入者2が商品5を保持したと識別した時は、報知部104は、識別部103で識別された、購入者2によって保持された商品5Aの名称、価格等の情報の報知信号を報知ECU40に出力し、識別部103が、商品5Aを識別できなかった時は、報知部104は、商品5Aの撮像を促す旨の報知信号を報知ECU40に出力し、車両1のスピーカ41や表示装置42を用いて報知を行う。
【0019】
また、識別部103が、購入者2が保持した物体が商品5でないと識別した時は、報知部104は、保持品が非売品である旨の報知信号を報知ECU40に出力し、スピーカ41や表示装置42を用いて報知を行う。さらに、識別部103が、購入者2が所持品を保持したまま荷室7に手を入れたと識別した時は、識別部103の誤動作の防止や、悪質な購入者による商品5のすり替えを防止するために、報知部104は、購入者2の所持品を荷室7に入れることを禁止する旨の報知信号を報知ECU40に出力し、車両1のスピーカ41や表示装置42を用いて報知を行う。
【0020】
また、報知部104は、通信ECU30への、第1通信機31による、無人販売支援システムサーバ4や、販売者3の情報端末3Aへの通知や、第2通信機32による、車両1周辺の購入者2が所持する情報端末2Aへの通知に関する報知信号の出力を行う。その他にも、報知部104は、報知ECU40への、購入者2が商品5を購入するのにあたり、必要な案内音声等の報知信号の出力を行う。
【0021】
無人販売支援ECU10には、算出部105が備えられており、算出部105は、識別部103によって識別した、購入者2が購入した商品5の金額の算出を行うのに用いられる。また、算出部105は、その日の売り上げや一定期間ごとの売り上げを算出するのに用いることも可能である。
【0022】
図2、
図3に示すように、前述したように車両1には、カメラECU20によって制御される、荷室カメラ21、開口部カメラ22、周囲カメラ23が、車載カメラとして設けられている。この例では、荷室カメラ21、開口部カメラ22は、車両1の内側に設けられており、周囲カメラ23は車両1の外側に設けられている。
【0023】
図2、
図3の一点鎖線で示す範囲は各車載カメラの撮像範囲を示している。荷室カメラ21は、荷室7の商品5や、荷室7に入った購入者2の手の動きを撮像するのに用いられ、購入者2によって保持された商品5Aの特定、商品5の盗難、すり替えの防止等の商品5の在庫管理に活用される。開口部カメラ22は、購入者2や、購入者2の周辺を撮像するのに用いられ、購入者2が荷室7の商品5を物色する際に、購入者2の背後が無防備となることが懸念されるため、購入者2の周辺、特に購入者2の背後を撮像することで、防犯面に活用される。また、開口部カメラ22は、荷室カメラ21とは異なる角度から荷室7の一部の撮像を行っている。荷室カメラ21と異なる角度で荷室7を撮像することで、購入者2が保持した商品5Aの特定の精度向上や、悪質な購入者による商品5のすり替え行為などに、より一層備えることができる。周囲カメラ23は、車両1の周囲を撮像するのに用いられ、購入者以外の者よる商品5の盗難や、車両1周辺の防犯等に活用される。また、各車載カメラの取り付け位置は、車両毎の荷室ドア6等の形状によって適宜配置されるが、概ね前述した範囲を各車載カメラが撮像できるものであればよい。
【0024】
図4、
図5A、
図5Bに、無人販売支援システムMによる販売状況を示す。
図4では、車両1の荷室ドア6が開扉しており、購入者2が片手を荷室7に入れている状態である。
図5Aは、
図4の状態における荷室カメラ21の映像であり、
図5Bは、
図4の状態における開口部カメラ22の映像である。
図4に示すように、荷室カメラ21は購入者2の手元や商品5を撮像しており、開口部カメラ22は購入者2や購入者2の周囲を撮像している。撮像された画像情報は、情報取得部100の画像情報取得部101に送信される。
【0025】
各車載カメラで撮像し取得した画像情報は、識別部103でラベル処理と画像情報の統合がされて識別される。例えば、
図5Aに示す荷室カメラ21の画像情報と、
図5Bに示す開口部カメラ22の画像情報をラベル処理し、画像情報を統合することで、
図5Aにおいて、商品5Aを保持している手が、
図5Bにおける、どの購入者のものであるかを識別部103が識別することができる。
【0026】
また、前述したように、開口部カメラ22は、荷室カメラ21とは異なる角度で荷室7の一部を撮像している。例えば、保持された商品5Aの影に別の商品5を忍ばせていた場合や、購入者2の手の重なり等によって荷室カメラ21の画像情報だけでは保持された商品5Aの特定が困難である場合であっても、ラベル処理と画像情報の統合を行うことで、識別が可能となる。つまり、単独のカメラでは識別できない場合であっても、複数のカメラを用いて、ラベル処理をした画像情報を統合することで、購入者2や購入者2によって保持された商品5Aの識別が可能となる。図示では、購入者2は一人であるが、二人以上の複数人であってもラベル処理は可能である。
【0027】
購入者2が荷室ドア6を開扉させ商品5の購入を行っている最中に、購入者2とは異なる者による商品5の盗難等が想定される。
図6により、無人販売ECU10が行う荷室ドア6の開扉時における防犯フローの処理について説明する。
【0028】
荷室ドア6の開扉中は(ステップS101)、車両1は警戒状態オンとなる(ステップS102)。警戒状態オンでは、購入者情報の認証を成功した人物以外が荷室7に侵入しているか否かを荷室カメラ21と開口部カメラ22とを用いて撮像し、識別部103にて画像情報のラベル処理と統合処理を行い常時監視している(ステップS103)。荷室7に侵入していない場合であっても(ステップS103―NO)、開口部カメラ22と周囲カメラ23で購入者2や車両1の周辺、特に購入者2の背後を監視し(ステップS104)、購入者2に危険がある場合は(ステップS104―YES)、スピーカ41や表示装置42を用いて警戒報知を行う(ステップS105)。
【0029】
また、識別部103が、各車載カメラの画像情報のラベル処理と統合処理の結果、購入者情報の認証を成功した人物以外が荷室7に侵入したと識別した場合は(ステップS103―YES)、スピーカ41や表示装置42を用いて未認証者侵入警報を行う(ステップS106)。さらに、識別部103が、商品5を盗難されたと識別した場合は(ステップS107―YES)、スピーカ41や表示装置42を用いて盗難警報を行い(ステップS108)、第1通信機31を用いて無人販売支援システムMの運営元や公的機関への通知を行い、その時に撮像した各車載カメラの画像情報を送信する(ステップS109)。商品5が盗難されていない場合であっても(ステップS107―NO)、未認証者侵入警報は荷室7に未認証者を確認しなくなるまで行う(ステップS110―YES)。
【0030】
図7は、無人販売支援システムMの利用形態を示す。利用に際しては、無人販売支援ECU10を搭載した車両1と、販売者3が所持する情報端末3Aと、購入者が所持する情報端末2Aと、登録情報を管理する無人販売支援システムサーバ4が相互に通信を行う。
【0031】
無人販売を行う場合、販売者3は販売商品登録を行う。販売商品登録では、販売する商品5の名称や価格、外観等の商品情報の登録や、商品5を販売する車両1の位置情報を無人販売支援システムMに登録する。これらの登録情報はその都度更新が可能であり、販売する商品5や位置情報を販売の都度、更新する。自宅周辺への差し障りを考慮するのであれば、販売場所は自宅の駐車場ではなく、コインパーキング等の駐車場や駐車可能な路上などとすることが好ましい。販売商品登録で登録された情報は、無人販売支援ECU10の記憶部に記憶され、無人販売支援システムサーバ4でも管理される。また、販売商品登録で登録された情報は、無人販売支援システムサーバ4によって専用のアプリケーションやWebサイトに公開され、閲覧が可能である。また、販売者3はSNS等を用いて販売する商品5や位置情報を告知するとしてもよい。購入者2は、専用のアプリケーションやWebサイト、SNSを閲覧し商品5と販売場所の情報を取得する。
【0032】
商品5を購入する場合、購入者2は購入者情報登録を行う。購入者情報登録では、購入者2の氏名や年齢、顔写真や住所等の個人情報の登録や、商品5の購入に必要な決済方法の設定を行う。購入者情報の登録は専用のアプリケーションまたはWebサイトで行う。購入者情報登録で登録された情報は、無人販売支援システムサーバ4で管理される。
【0033】
購入者2は、アプリケーションやWebサイト、SNSで情報を得て車両1まで来る。車両1のドアロック装置51はロック状態であり、登録されている者以外によるアンロックは不可能となっている。本発明における無人販売支援システムMでは、購入者情報の認証を成功した購入者2に、一時的に車両1のアンロックを許可し、購入者2による荷室ドア6の開扉を可能とする。車両1は、第2通信機を用いて購入者2の所持する情報端末2Aと無線通信を行い、購入者情報の認証を行う。購入者情報の認証の詳細については
図9のフローを用いて後述する。購入者情報の認証が完了するとドアロック装置51はアンロック状態となり、購入者情報の認証を成功した購入者2は荷室ドア6を開扉させ荷室7に載置される商品5の購入が可能となる。
【0034】
次に
図8により、無人販売支援システムMの処理について説明する。まず、無人販売を行うにあたって、無人販売支援システムMは、車両1において、無人販売装置が有効であるかを確認する(ステップS1)。無人販売装置が無効である場合とは、各車載カメラとカメラECU20や、各車載通信機と通信ECU30や、スピーカ41や表示装置42と報知ECU40等の、無人販売を行うにあたって不可欠な車載機器と車載ECUにおいて不具合がある場合等が想定される(ステップS1―NO)。各車載機器と各車載ECUが正常に機能している場合、無人販売支援システムMは、無人販売装置が有効であると判断し、処理を移行する(ステップS1―YES)。
【0035】
無人販売装置が有効であると判断されると、無人販売支援システムMは、販売商品情報が登録されているか否かを確認する(ステップS2)。販売商品情報が未登録であった場合は(ステップS2―NO)、無人販売支援システムMは販売商品情報の登録を要求する(ステップS3)。販売商品情報が正常に登録されている場合(ステップS2―YES)は、無人販売支援システムMは、商品販売可能状態であると判断する(ステップS4)。
【0036】
商品販売可能状態であると判断されると、無人販売支援システムMは、購入者情報の認証を行う(ステップS5)。購入者情報の認証は、車両1の第2通信機32と購入者2が所有する情報端末2Aとの間で行われる無線通信によって取得する情報に基づいて行われる。購入者情報の認証についての詳細な処理については
図9のフローを用いて後述する。購入者情報の認証が成功すると、無人販売支援システムMは、ドアロック装置51により車両1の荷室ドア6をアンロックする(ステップS6―YES)。購入者情報の認証が失敗した場合、アンロックしない(ステップS6―NO)。
【0037】
荷室ドア6がアンロックされ、荷室ドア6が開扉されると(ステップS7―YES)、無人販売支援システムMは、車両1の所有者である販売者3の情報端末3Aにアンロック通知を送信する(ステップS10)。この通知により、販売者3は、購入者2によって車両1の荷室ドア6がアンロックされ、荷室ドア6が開扉されたことを認知する。また、アンロックしたにも拘わらず、購入者2によって荷室ドア6が開扉されない場合(ステップS7―NO)、第2通信機を用いて車両1周辺に購入者情報の認証を成功した当該購入者2がいるか確認し(ステップS8)、周辺に認証成功購入者が確認できない場合(ステップS8―NO)、ドアロック装置51により荷室ドア6を再びロックする(ステップS9)。
【0038】
荷室ドア6がアンロックされ、荷室ドア6が開扉状態となると、車両1の荷室カメラ21、開口部カメラ22、周囲カメラ23は、それぞれ撮像を開始する(ステップS11)。撮像が可能である場合(ステップS12―YES)、識別部103は、各車載カメラで撮像した画像情報を用いたラベル処理を実行する(ステップS14)。対して、例えば、購入者2の顔が帽子やマスク等により正確に判別できない場合は(ステップS12―NO)、スピーカ41や表示装置42を用いて帽子やマスク等を外す旨を報知する(ステップS13)。
【0039】
ラベル処理が実行されると、識別部103は、購入者2の手が荷室7に入っているか否かを識別する(ステップS15)。荷室7に手が入っていると識別した場合(ステップS15―YES)、手が物体を保持しているかの識別を行う(ステップS16)。購入者2が手提げ鞄や、情報端末2A等を保持した状態で荷室7に手を入れた場合、識別部103の誤動作の要因となりうる。よって、購入者2が荷室7に手を入れた際は(ステップS16―YES)、物体を保持していた場合は不保持要求報知を行う(ステップS17)。不保持要求通報知は、スピーカ41や表示装置42による報知や、購入者2の情報端末2Aへ通知するなどして行われる。不保持要求報知は、購入者2による物体の保持が解除されるまで実行する(ステップS18―NO)。
【0040】
手に物体を保持していない場合(ステップS16―NO)、または物体の保持が解除された場合(ステップS18―YES)、商品5の購入が可能な状態となる(ステップS19)。そして、無人販売支援システムMは、購入処理を実行する(ステップS20)。購入処理についての詳細な内容については
図10の購入処理フローを用いて後述する。購入処理が終了すると、購入判定通知を車両1の所有者である販売者3の情報端末3Aや購入者2の情報端末2Aに送信する(ステップS21)。購入判定通知とは、商品の購入が確定した旨を通知するものであり、商品が購入された時間や商品の情報等の内容が含まれる。
【0041】
購入判定通知送信後、無人販売支援システムMは決済処理を実行する(ステップS22)。決済処理とは、商品5の購入金額の算出や、算出された金額に基づいて決済処理を実行し、販売者3の情報端末3Aや購入者2の情報端末2Aに決済通知の送信を行う処理である。決算処理が終了すると、無人販売支援システムMの処理は終了する。
【0042】
次に
図9により、
図8のステップS5における購入者情報の認証について説明する。前述したように、購入者情報の認証は、車両1の第2通信機32と購入者2の所持する情報端末2Aとで無線通信によって行われる。
【0043】
まず、車両1は周辺の情報端末を探索する(ステップS51)。車両1周辺に購入者2の情報端末2Aを検知すると(ステップS51―YES)、第2通信機32の無線通信を用いて情報端末2Aと通信し、購入者情報の登録を確認する(ステップS52)。購入者情報の登録の確認は、情報端末2Aから取得した情報を第1通信機31によって無人販売支援システムサーバ4に送信し、無人販売支援システムサーバ4で管理される登録者情報に照会することで行われる。
【0044】
購入者情報の登録が確認できた場合(ステップS52―YES)、決済情報の取得(ステップS56)に処理を移行する。決済情報の取得とは、購入者2が専用のアプリケーション等に登録している、無人販売支援システムMにおける商品5の購入に用いる決済情報の取得であり、登録されている決済方法が決済可能な状態であるかを確認し、取得する。決済情報に不備がある場合(ステップS56―NO)、決済情報登録要求通知を購入者2の情報端末2Aに送信する(ステップS57)。その後、決済可能な決済情報の登録がされなかった場合は(ステップS58―NO)、購入者情報の認証は失敗となる(ステップS55)。決済情報の取得が完了すると(ステップS56―YES)、購入者情報の認証は成功となる(ステップS59)。
【0045】
また、購入者情報の登録が確認できなかった場合は(ステップS52―NO)、購入者情報の登録要求通知を購入者2の情報端末2Aに送信する(ステップS53)。登録要求通知は情報端末2Aにインストールされる専用のアプリケーションやWebサイトの会員ページ等に通知される。これにより、車両1周辺の購入意思のない情報端末所持者が通知を受け取ることはない。購入者登録が確認できると(ステップS54―YES)、決済情報の取得(ステップS56)に処理を移行する。購入者登録が確認できない場合は(ステップS54―NO)、購入者情報の認証は失敗し(ステップS55)、購入者情報の認証処理を終了する。
【0046】
次に
図10により、
図8のステップS20における購入処理について説明する。前述したように購入処理は、購入者2が手に物体を保持していない場合(ステップS16―NO)、または物体の保持が解除された状態(ステップS18―YES)で行われる。
【0047】
まず識別部103は、画像情報を用いて購入者2が物体を保持しているかを識別し(ステップS201)、購入者2が物体を保持していると識別した場合は(ステップS201―YES)、保持品が非売品であるかの識別を行う(ステップS202)。非売品であるかの識別は、無人販売支援ECU10の記憶部14に記憶される販売商品登録の情報と、情報取得部100で取得された画像情報に基づいて行われる。また、荷室カメラ21は購入者2の手の動きの撮像も行っているため、購入者2の手の動きの軌跡から保持品を推測することも可能である。識別部103が、保持品が非売品であると識別した場合は(ステップS202―YES)、非売品報知がされる(ステップS203)。非売品報知は、車両1のスピーカ41や表示装置42を用いた報知や、購入者2の情報端末2Aに通知して行われる。非売品報知は、購入者2が非売品を荷室7に戻すまで行われる(ステップS204―NO)。
【0048】
保持品が非売品ではなかった場合、つまりは識別部103が、保持品が商品5であると識別した場合は(ステップ202―NO)、保持品が車載カメラの死角であるか、つまりは購入者2によって保持された商品5Aを正確に特定できるかを識別する(ステップS205)。画像情報取得部101で取得した画像情報では正確に保持された商品5Aの識別ができなかった場合は(ステップS205―YES)、商品撮像要求報知を行う(ステップS206)。商品撮像要求報知は、スピーカ41や表示装置42による報知や、購入者2の情報端末2Aへ通知するなどして行われる。商品撮像要求報知後、購入者が報知に従わない等の理由から保持された商品5Aの特定が困難である場合は(ステップS207―NO)、識別部103は、保持された商品5Aの推測を行う(ステップS208)。商品5Aの推測は、完全に商品5Aの特定はできずとも、各車載カメラで撮像した画像情報を販売商品登録で登録された商品情報に照会し、特徴が一致するものを商品5Aと推測する。また、前述したように、荷室カメラ21は購入者2の手の動きの撮像も行っているため、購入者2の手の動きの軌跡から保持された商品5Aを推測することが可能である。保持された商品5Aの推測が完了すると、商品5Aの購入意思があるとみなし、仮購入判定に移行する(ステップS209)。また、保持された商品5Aが車載カメラの死角でなかった場合や(ステップS205―NO)、商品撮像要求報知に従い保持された商品5Aの撮像ができた場合も(ステップS207―YES)、仮購入判定に移行する。仮購入判定の際は、商品5Aの名称、価格等の報知をスピーカ41や表示装置42を用いて行う。
【0049】
仮購入判定後、商品5Aが荷室7に戻された場合は(ステップS210―YES)、仮購入判定を取り消す(ステップS211)。商品5Aが荷室7に戻されなかった場合は(ステップS210―NO)、仮購入判定した商品5Aの決済が可能かを判別する(ステップS212)。決済が可能であるかの判別は、購入者情報の認証時に取得した決済情報を参照して行う。残高不足により決済が不可であった場合は(ステップS212―NO)、残高不足報知を行う(ステップS213)。残高不足報知は、スピーカ41や表示装置42を用いて行われる。残高不足報知後、商品5Aが戻されなかった場合は(ステップS214―NO)、商品5Aが盗まれたとして盗難判定をし(ステップS215)、第1通信機31を用いて車両1の所有者である販売者3の情報端末3Aや無人販売支援システムMの運営元、及び、公的機関への通知を行い、その時に撮像した各車載カメラの画像情報を送信する(ステップS216)。
【0050】
決済情報を参照して、決済が可能であると判別した場合は(ステップS212―YES)、他の商品5の購入意思を確認する旨の報知を行い(ステップS217―)、他の商品5の購入意思が確認されない場合は(ステップS217―NO)、荷室ドア閉報知を行う(ステップS218)。荷室ドア6が閉扉された場合は(ステップS219―YES)、車両1の荷室ドア6を施錠して(ステップS223)購入処理を終了する。荷室ドア閉報知後、荷室ドア6の閉扉がされなかった場合は(ステップS219―NO)、再度、荷室ドア閉報知を行う(ステップS220)。その後、荷室ドア6の閉扉がされなかった場合は(ステップS221―NO)、警告通知を通知し(ステップS222)、購入処理を終了する。警告通知は、車両1の所有者である販売者3の情報端末3Aに荷室ドア6が閉扉されていないことを通知するものや、無人販売支援システムMの運営元に荷室ドア6の閉扉をしなかった購入者2の情報を通知するものが考えられる。また、荷室ドア6の自動閉扉が可能な車両であれば、警告通知後に自動施錠して購入処理を終了する。
【0051】
図8のステップS21の購入判定通知は、基本的には荷室ドア6の施錠に起因して行う。つまり、荷室ドア6のロックによって商品の購入が確定する。また、荷室ドア6の自動閉扉が不可能な車両であって、警告通知後一定時間の間、荷室ドア6の施錠が行われなかった場合にも購入判定通知を行う。
【0052】
ここまでの説明では、商品5Aの特定を車載カメラによって撮像した画像情報を識別部103で識別することで行っているが、例えば、車載カメラにRFIDタグや、二次元コード等を読み込むリーダー機能を備えて読み込ませることで特定するとしてもよい。また、商品の識別は、購入者2が商品を保持した際に行うため、商品が整頓されて陳列されている必要はない。その他、具体的な構成は実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1:車両、2:購入者、3:販売者、2A,3A:情報端末、
4:無人販売支援システムサーバ、5,5A:商品、6:荷室ドア、7:荷室、
10:無人販売支援ECU、11:CPU、12:ROM、13:RAM、14:記憶部、
20:カメラECU、21:荷室カメラ、22:開口部カメラ、23:周囲カメラ、
30:通信ECU、31:第1通信機、32:第2通信機、
40:報知ECU、41:スピーカ、42:表示装置、
50:ロックECU、51:ドアロック装置、
60:CGW、
100:情報取得部、101:画像情報取得部、102:端末情報取得部、
103:識別部、104:報知部、105:算出部、
M:無人販売支援システム