IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

特開2024-130045揚重補助装置、揚重システム、解体方法及び設置方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130045
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】揚重補助装置、揚重システム、解体方法及び設置方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 35/00 20200101AFI20240920BHJP
   B66C 23/52 20060101ALI20240920BHJP
   E02B 17/00 20060101ALI20240920BHJP
   B63B 27/10 20060101ALI20240920BHJP
   E02D 9/04 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B63B35/00 C
B66C23/52
E02B17/00
B63B27/10 A
E02D9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039535
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 智晃
(72)【発明者】
【氏名】金升 将征
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章仁
(72)【発明者】
【氏名】新藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】西垣 亮
【テーマコード(参考)】
2D050
3F205
【Fターム(参考)】
2D050AA01
2D050AA06
2D050AA11
2D050EE15
2D050EE28
3F205AA10
3F205AC01
3F205CA01
(57)【要約】
【課題】安定性を向上させることができる揚重補助装置、揚重システム、解体方法及び設置方法を提供する。
【解決手段】揚重補助装置は、上下方向に延びる長尺状をなす構造物に固定される固定部と、固定部に接続されて、揚重装置によって吊架可能な吊り架け部と、固定部に接続されて、固定部に対して上下方向に相対移動可能とされたウェイトと、を備える。吊り架け部は、固定部に対して上下方向に相対移動可能とされている。揚重補助装置は、固定部に接続されて、固定部に対して上下方向に相対移動可能とされ、構造物に対して浮力を発生させる浮力装置をさらに備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる長尺状をなす構造物に固定される固定部と、
前記固定部に接続されて、揚重装置によって吊架可能な吊り架け部と、
前記固定部に接続されて、前記固定部に対して上下方向に相対移動可能とされたウェイトと、
を備える揚重補助装置。
【請求項2】
前記吊り架け部は、前記固定部に対して上下方向に相対移動可能とされている、請求項1に記載の揚重補助装置。
【請求項3】
前記固定部に接続されて、前記固定部に対して上下方向に相対移動可能とされ、前記構造物に対して浮力を発生させる浮力装置をさらに備える請求項1又は2に記載の揚重補助装置。
【請求項4】
前記固定部は、
上下方向に延びて前記吊り架け部及び前記ウェイトを上下方向に案内するガイド部と、
前記ガイド部を支持するとともに、前記構造物に取り付けられる取付部と、
を有する請求項1又は2に記載の揚重補助装置。
【請求項5】
請求項1に記載の揚重補助装置と、
前記揚重装置と、
を備える揚重システム。
【請求項6】
前記構造物は、上部に重量物を有し、
前記固定部に対して上下方向に相対移動可能とされる昇降台と、前記昇降台に取り付けられて前記昇降台に対する姿勢を変更可能であるとともに、前記重量物を把持可能な把持部とを有する昇降装置をさらに備える請求項5に記載の揚重システム。
【請求項7】
水面上を移動し、前記揚重装置を下方から支持するとともに、前記構造物を積載可能な浮体を備える請求項5又は6に記載の揚重システム。
【請求項8】
請求項1に記載の揚重補助装置を用いた、前記構造物の解体方法であって、
前記ウェイトを下方に移動させるウェイト移動ステップと、
前記ウェイト移動ステップの後に、前記揚重装置によって前記吊り架け部を吊り架ける吊り架けステップと、
前記吊り架けステップの後に、前記揚重装置によって前記構造物を傾斜させて前記構造物の姿勢を変更する姿勢変更ステップと、
前記姿勢変更ステップの後に、前記構造物を解体する解体ステップと、
を含む解体方法。
【請求項9】
前記吊り架け部は、前記固定部に対して上下方向に相対移動可能とされ、
前記吊り架けステップの前に、前記吊り架け部を前記構造物の重心よりも高く移動させる吊り架け部移動ステップをさらに含む請求項8に記載の解体方法。
【請求項10】
前記揚重補助装置は、前記固定部に接続されて、前記固定部に対して上下方向に相対移動可能とされ、前記構造物に対して浮力を発生させる浮力装置をさらに備え、
前記吊り架けステップの前に、前記浮力装置による浮力を調整する浮力調整ステップをさらに含む請求項8又は9に記載の解体方法。
【請求項11】
前記固定部は、
上下方向に延びて前記吊り架け部及び前記ウェイトを上下方向に案内するガイド部と、
前記ガイド部を支持するとともに、前記構造物に取り付けられる取付部と、
を有し、
前記ウェイト移動ステップの前に、前記取付部によって前記固定部を前記構造物に固定する固定ステップをさらに含む請求項8又は9に記載の解体方法。
【請求項12】
前記構造物は、上部に重量物を有し、
前記固定部に対して上下方向に相対移動可能とされる昇降台と、前記昇降台に取り付けられて前記昇降台に対する姿勢を変更可能であるとともに、前記重量物を把持可能な把持部とを有する昇降装置をさらに用いた解体方法であって、
前記吊り架けステップの前に、前記重量物を下方に移動させる重量物移動ステップを更に含み、
重量物移動ステップは、
前記昇降装置が前記把持部によって前記重量物を把持する把持ステップと、
前記把持ステップの後に、前記昇降装置が前記把持部によって前記重量物の姿勢を変更する重量物姿勢変更ステップと、
前記重量物姿勢変更ステップの後に、前記昇降装置が前記重量物を下降させる下降ステップと、を含む請求項8又は9に記載の解体方法。
【請求項13】
請求項1に記載の揚重補助装置を用いた、前記構造物の設置方法であって、
前記ウェイトを前記構造物の延在方向で前記構造物の脚部側に移動させるウェイト移動ステップと、
前記ウェイト移動ステップの後に、前記揚重装置によって前記吊り架け部を吊り架ける吊り架けステップと、
前記吊り架けステップの後に、前記揚重装置によって前記構造物の姿勢を上下方向に延びるように変更する姿勢変更ステップと、
前記姿勢変更ステップの後に、上下方向に延びた姿勢を維持して前記構造物を設置する設置ステップと、
を含む設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、揚重補助装置、揚重システム、解体方法及び設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物を設置、解体する際、クレーン等の装置によって構造物の全体又は一部を揚重して構造物を支持しながら作業を行う。
例えば、下記特許文献1に記載されるように、洋上の構造物を整備する場合、SEP船(Self-Elevating Platform:自己昇降式作業船)や大型起重機船が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2146006号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、SEP船や大型起重機は建造コストや運用コストが大きい。このため、コストの小さいクレーン等の装置を用いることが求められるが、クレーン等の低コストの揚重装置は揚重能力が低く、構造物によっては作業時の安定性が低下する。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、安定性を向上させることができる揚重補助装置、揚重システム、解体方法及び設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る揚重補助装置は、上下方向に延びる長尺状をなす構造物に固定される固定部と、前記固定部に接続されて、揚重装置によって吊架可能な吊り架け部と、前記固定部に接続されて、前記固定部に対して上下方向に相対移動可能とされたウェイトと、を備える。
【0007】
本開示に係る揚重システムは、上記の揚重補助装置と、前記揚重装置と、を備える。
【0008】
本開示に係る解体方法は、上記の揚重補助装置を用いた、前記構造物の解体方法であって、前記ウェイトを下方に移動させるウェイト移動ステップと、前記ウェイト移動ステップの後に、前記揚重装置によって前記吊り架け部を吊り架ける吊り架けステップと、前記吊り架けステップの後に、前記揚重装置によって前記構造物を傾斜させて前記構造物の姿勢を変更する姿勢変更ステップと、前記姿勢変更ステップの後に、前記構造物を解体する解体ステップと、を含む。
【0009】
本開示に係る設置方法は、上記の揚重補助装置を用いた、前記構造物の設置方法であって、前記ウェイトを前記構造物の延在方向で前記構造物の脚部側に移動させるウェイト移動ステップと、前記ウェイト移動ステップの後に、前記揚重装置によって前記吊り架け部を吊り架ける吊り架けステップと、前記吊り架けステップの後に、前記揚重装置によって前記構造物の姿勢を上下方向に延びるように変更する姿勢変更ステップと、前記姿勢変更ステップの後に、上下方向に延びた姿勢を維持して前記構造物を設置する設置ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示の揚重補助装置、揚重システム、解体方法及び設置方法によれば、安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の第1実施形態に係る揚重システムの全体構成図である。
図2】本開示の第1実施形態に係る取付部を上方から見た図である。
図3図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4】本開示の第1実施形態に係る解体方法の手順を示すフローチャートである。
図5】本開示の第1実施形態に係る解体方法を説明する図である。
図6】本開示の第1実施形態に係る解体方法を説明する図である。
図7】本開示の第1実施形態に係る設置方法の手順を示すフローチャートである。
図8】本開示の第1実施形態の第1変形例に係る取付部を上方から見た図である。
図9図8のIX-IX線に沿う断面図である。
図10】本開示の第1実施形態の第2変形例に係る取付部を上方から見た図である。
図11図10のXI-XI線に沿う断面図である。
図12】本開示の第2実施形態に係る揚重システムの全体構成図である。
図13】本開示の第2実施形態に係る解体方法の手順を示すフローチャートである。
図14】本開示の第2実施形態に係る設置方法の手順を示すフローチャートである。
図15】本開示の第3実施形態に係る揚重システムの全体構成図である。
図16】本開示の第3実施形態に係る昇降台を上方から見た図である。
図17】本開示の第3実施形態に係る解体方法の手順を示すフローチャートである。
図18】本開示の第3実施形態に係る解体方法における重量物移動ステップの手順を示すフローチャートである。
図19】本開示の第3実施形態に係る設置方法の手順を示すフローチャートである。
図20】本開示の第3実施形態に係る設置方法における重量物移動ステップの手順を示すフローチャートである。
図21】本開示の第4実施形態に係る揚重システムを示す図である。
図22】本開示の第4実施形態に係る揚重システム示す図である。
図23】本開示の第4実施形態に係る昇降台を上方から見た図である。
図24】本開示の第4実施形態に係る重量物移動ステップの手順を示すフローチャートである。
図25】本開示の第4実施形態に係る解体方法を説明する図である。
図26】本開示の第4実施形態に係る設置方法の手順を示すフローチャートである。
図27】本開示の第4実施形態の変形例に係る揚重システムを示す図である。
図28】本開示の第4実施形態の変形例に係る揚重装置及び揚重補助装置を上方から見た図である。
図29】本開示の第4実施形態の変形例に係る揚重装置及び揚重補助装置を側方から見た図である。
図30】本開示の第4実施形態の変形例に係る解体方法を説明する図である。
図31】本開示の第4実施形態の変形例に係る解体方法を説明する図である。
図32】本開示の第4実施形態の変形例に係る解体方法を説明する図である。
図33】本開示のその他の変形例に係る揚重システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第一実施形態>
(揚重システムの構成)
以下、本開示の第一実施形態に係る揚重補助装置3、揚重システム100、解体方法及び設置方法について、図1から図7を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように、揚重システム100は、上下方向D1に延びる長尺状をなす大型の構造物10を揚重する。揚重システム100は、構造物10を解体、設置する際に用いられる。構造物10は、例えば水上構造物10aである。本実施形態では、この構造物10が例えば海底に立設した洋上構造物10bである場合を例に説明する。この洋上構造物10bの例として、例えば風車等が挙げられる。なお、構造物10は、本実施形態の例に限られない。
【0014】
(構造物)
図示の例では、構造物10は、タワー11と、重量物12とを有する。タワー11は、タワー本体13と、脚部14とを有する。脚部14は、海底から上方に延びる円筒状の部材である。脚部14の下側部分は、海底に埋め込まれている。タワー本体13は、脚部14の上端部に取り付けられ、脚部14から上方に向かって延びる円筒状に形成されている。なお、図1では、タワー本体13のうち脚部14との連結箇所の内部が図示されている。タワー本体13の下端部は、脚部14の上端部が挿入された状態で脚部14に固定されている。タワー本体13は、上方に向かうにしたがい先細るテーパ状に形成されている。なお、タワー本体13の形状は、このようなテーパ形状に限定されない。例えば、タワー本体13の太さは、上下方向D1位置によらず一様であってもよい。また、タワー本体13は、例えば上下方向D1に並ぶ複数のタワー要素(不図示)が連結されることにより構成されている。重量物12は、タワー本体13の上端に取り付けられている。構造物10が例えば風車である場合、重量物12として例えば風車のシャフトが内蔵されたナセル等が挙げられる。
なお、揚重補助装置3が適用される構造物10は、風車以外の構造物であってもよい。そのため、重量物12は風車のナセルに限定されない。例えば、構造物10が上端に展望台が設けられた塔である場合、この展望台が重量物12に該当する。
【0015】
なお、以下では、タワー11の軸線Oを単に「軸線O」と称して説明する。タワー11が設置された状態において、この軸線Oは、上下方向D1に沿って延びている。以下では、この軸線Oに対する径方向を単に「径方向」と称し、この軸線Oに対する周方向を単に「周方向」と称する場合がある。
【0016】
(揚重システム)
本実施形態の揚重システム100は、浮体1と、揚重装置2と、揚重補助装置3と、を備える。
【0017】
(浮体)
本実施形態の浮体1は、水面上を移動する台船1aである。浮体1は、構造物10を積載可能とされている。浮体1には、揚重装置2が載置されている。浮体1は、揚重装置2を下方から支持する。
本実施形態の台船1aは、例えば、海洋船舶から燃料油や有害物質の抜き取り、船舶の撤去等の幅広い作業を行うことができる、多目的台船である。
なお、浮体1は、台船1aに限られない。浮体1は、小型の作業船や、スパッド杭や自動船位保持システムを有する作業船であってもよい。また、浮体1は、SEP船、起重機船などを利用してもよい。
【0018】
(揚重装置)
揚重装置2は、後述する揚重補助装置3を介して構造物10を揚重する。以下では、揚重装置2がクレーン20である場合を例に説明する。
【0019】
本実施形態のクレーン20は、クローラクレーンである。
クレーン20は、車両部21と、ムーブ22と、ワイヤロープ23と、吊り具24とを有する。車両部21は、浮体1上を走行する。ムーブ22は、車両部21から上方に向けて延びている。ワイヤロープ23は、ムーブ22に取り付けられ、ムーブ22の先端から下方に延びている。吊り具24は、ワイヤロープ23の先端に取り付けられている。吊り具24は、揚重補助装置3を吊り架ける。吊り具24は、例えばフックである。なお、吊り具24は、揚重補助装置3及び構造物10を支持可能であればよく、フックに限られない。吊り具24は、例えばシャックルやリング、アイボルト等であってよい。
なお、クレーン20は、ホイールクレーンであってもよく、車両部21を有さないクレーンであってもよい。
【0020】
(揚重補助装置)
揚重補助装置3は、固定部4と、台座5と、吊り架け部6と、ウェイト7とを備える。揚重補助装置3の大きさは、可変となっている。本実施形態では、揚重補助装置3を構成する装置、及び部品を交換することにより、構造物10の大きさに応じて揚重補助装置3の大きさを変更することができる。
【0021】
(固定部)
固定部4は、構造物10に固定される。本実施形態の固定部4は、ガイド部4aと、取付部30とを有する。
ガイド部4aは、上下方向D1に延びるレールである。ガイド部4aは、吊り架け部6及びウェイト7を上下方向D1に案内する。本実施形態では、構造物10の大きさに応じてガイド部4aは交換可能とされている。
なお、ガイド部4aは図示のようなレールに限られない。固定部4とウェイト7は、このようなレールを介さず独立して存在してもよい。
【0022】
(取付部)
取付部30は、ガイド部4aの上下方向D1両端部に設けられている。取付部30は、ガイド部4aを支持するとともに、構造物10に取り付けられている。取付部30は、例えば油圧等を用いたクランプ機構によって構造物10を把持することにより、構造物10に取り付けられている。具体的に、取付部30は、以下の構成を有する。
【0023】
図2図3に示すように、取付部30は、外殻フレーム31と、補強アーム32と、固定機構40とを備える。
外殻フレーム31は、上下方向D1に延びてタワー11を外周側から覆う筒状をなしている。外殻フレーム31は、上下方向D1視で矩形枠状に形成されている。
【0024】
補強アーム32は、上下方向D1視で、外殻フレーム31の内側且つ外殻フレーム31の4隅に1つずつ設けられている。各補強アーム32は、外殻フレーム31の隣り合う一対の隔壁33を接続するように直線状に延びている。補強アーム32は、内側から支持している。
【0025】
固定機構40は、外殻フレーム31の内側に設けられている。固定機構40は、内側プレート41と、回動機構50と、爪42と、押圧機構43とを有する。
【0026】
内側プレート41は、タワー11を径方向外側から囲うように複数設けられている。本変形例では、内側プレート41は、周方向に等間隔で並んで4つ設けられている。各内側プレート41は、上下方向D1視で、タワー11の外周面に沿うように湾曲した形状に形成されている。内側プレート41の外周側には、回動機構50が設けられている。
【0027】
回動機構50は、外殻フレーム31の内周面に設けられている。回動機構50は、内側プレート41毎に、周方向に離間して2つずつ設けられている。回動機構50は、第1支持部材51と、支持軸52と、第2支持部材53とを有する。
【0028】
第1支持部材51は、外殻フレーム31の内周面から内側プレート41に向けて延びている。第1支持部材51は、周方向に一対対向するように設けられている。対向する一対の第1支持部材51の間には、支持軸52が設けられている。この支持軸52は、一対の第1支持部材51の対向方向に延びる円柱状に形成されている。支持軸52は、これら一対の第1支持部材51を接続している。また、一対の第1支持部材51の間には、支持軸52に加えて、第2支持部材53が配置されている。この第2支持部材53は、内側プレート41の外周面に取り付けられている。第2支持部材53は、周方向側面視で、内側プレート41から外殻フレーム31に向けて凸のV字状に形成されている。第2支持部材53の屈曲部53aには、挿通孔54が形成されている。この挿通孔54には支持軸52が挿通されている。第2支持部材53は、支持軸52を中心として回動可能となっている。
【0029】
第2支持部材53は、内側プレート41に固定されている。このため、内側プレート41は、第2支持部材53と一体に支持軸52を中心として回動することができる。ここで、周方向側面視で、支持軸52の中心軸線上の点を「支点52a」とし、内側プレート41のタワー11側の向く内周面を「取付面44」とする。この取付面44は、周方向側面視で、この支点52aを基礎円の中心とするインボリュート曲線をなしている。
【0030】
この取付面44には、タワー11側に突出する複数の爪42が設けられている。複数の爪42は、タワー11の周方向及び軸線O方向に並んで複数設けられている。また、これら複数の爪42は、上下方向D1視で、タワー11の外周面に沿うように設けられている。各爪42は、側面視で取付面44からタワー11側に向かうにしたがい先細る三角形状に形成されている。また、各爪42は、取付面44から上方に向けて傾斜するように延びている。これら複数の爪42がタワー11の外周面にくい込むことにより、揚重補助装置3がタワー11に固定される。
【0031】
また、外殻フレーム31と内側プレート41との間には、押圧機構43が設けられている。押圧機構43は、内側プレート41毎に2つずつ、互いに周方向で対向するように設けられている。押圧機構43は、外殻フレーム31から内側プレート41に向けて延び、内側に向かうにしたがい漸次上方に位置するように傾斜して配置されている。押圧機構43は、外殻フレーム31と内側プレート41とを径方向に接続している。押圧機構43は、内側プレート41をタワー11に向けて押し付ける。これにより、爪42部がタワー11に強くくい込むため、揚重補助装置3がタワー11に強く固定される。押圧機構43として、例えば油圧機構45が挙げられる。
【0032】
なお、取付部30は、上記の形態に限られない。例えば、取付部30が構造物10を把持するための機構は、クランプ機構に限られない。
また、例えば外殻フレーム31は、上下方向D1視で、円形枠状や三角枠状に形成されていてもよい。外殻フレーム31を補強する補強アーム32についても、個数及び配置は適宜変更可能である。補強アーム32は、設けられていなくてもよい。
また、回動機構50の数は、適宜変更可能である。
また、固定機構40は、爪42をタワー11の外周面にくい込ませることにより、揚重補助装置3をタワー11に固定させる場合について説明したが、これに限られない。固定機構40は、爪42以外に、クランプ圧やタワー11のテーパ形状を利用した圧によって揚重補助装置3を固定するものであってもよい。
また、押圧機構43は、油圧機構45に限られない。押圧機構43は、電動式であってもよく、空圧や水圧によって駆動するものであってもよい。
【0033】
固定部4を構成するガイド部4aには、台座5が取り付けられている。台座5は、上下に並んで2つ設けられている。台座5は、ガイド部4aに沿って上下方向D1に移動可能とされている。台座5は任意の高さでガイド部4aに固定することができる。各台座5は、タワー11を径方向外側から囲う枠状に形成されている。2つの台座5のうち、上側の台座5には吊り架け部6が設けられ、下側の台座5にはウェイト7が設けられている。
【0034】
(吊り架け部)
吊り架け部6は、固定部4に接続されている。吊り架け部6は、揚重装置2によって吊架可能である。吊り架け部6は、固定部4に対して上下方向D1に移動可能とされている。本実施形態では、吊り架け部6は、上側の台座5を介して固定部4に接続されている。吊り架け部6は、台座5の上面に取り付けられている。吊り架け部6は、クレーン20の吊り具24と係合する。台座5がガイド部4aに沿って上下方向D1に移動することにより、吊り架け部6が上下方向D1に移動する。
【0035】
(ウェイト)
ウェイト7は、固定部4に対して上下方向D1に移動可能とされている。本実施形態では、ウェイト7は、下側の台座5を介して固定部4に接続されている。ウェイト7は、台座5の下面に取り付けられている。台座5がガイド部4aに沿って上下方向D1に移動することにより、ウェイト7が上下方向D1に移動する。図示の例では、ウェイト7はタワー11を径方向両側から挟み込むように一対設けられている。本実施形態では、ウェイト7は全て内部が中実のカウンターウェイト7aである。なお、ウェイト7は、内部が中実でなくてもよい。ウェイト7を中空に形成し、ウェイト7の内部に海水を入れるようにしてもよい。
【0036】
(解体方法の手順)
続いて、上述した揚重補助装置3を用いた構造物10の解体方法について説明する。
図4に示すように、本開示の実施形態に係る解体方法は、固定ステップS1と、ウェイト移動ステップS2と、吊り架け部移動ステップS3と、吊り架けステップS4と、切断ステップS5と、姿勢変更ステップS6と、解体ステップS7と、を含む。
【0037】
(固定ステップ)
まず、固定ステップS1が行われる。固定ステップS1では、取付部30によって固定部4を構造物10に固定する。本実施形態では、取付部30に設けられた複数の爪42がタワー11の外周面にくい込む。さらに、押圧機構43によって、爪42がタワー11に対して押圧される。このようにして、固定部4がタワー11に強固に固定される。これにより、揚重補助装置3の設置が完了する。
【0038】
このステップで、揚重補助装置3が構造物10に取り付けられる。これにより、図1に示すように、構造物10の重心Mが、例えば初期位置P11から、下方の第2位置P12に移動する。なお、ここでいう構造物10の重心Mとは、構造物10に加えて構造物10とともに揚重される他の装置(本実施形態の場合は、揚重補助装置3)を含めた全体の重心Mを意味する。
固定ステップS1の後には、ウェイト移動ステップS2が行われる。
【0039】
(ウェイト移動ステップ)
ウェイト移動ステップS2では、ウェイト7を下方に移動させる。例えば、下側の台座5をガイド部4aに沿って移動させることにより、ウェイト7が初期位置P21から下方の第2位置P22に移動する。これにより、構造物10の重心Mが、例えば第2位置P12から第3位置P13に移動する。図示の例では、第2位置P22において、ウェイト7が海水面上に位置しているが、ウェイト7は海水中に沈められていてもよい。ただし、ウェイト7は海水面よりも下方にあるほうが効率がよい。また、ウェイト7は、分割されていてもよい。
ウェイト移動ステップS2の後には、吊り架け部移動ステップS3が行われる。
【0040】
(吊り架け部移動ステップ)
吊り架け部移動ステップS3では、吊り架け部6を構造物10の重心Mよりも高く移動させる。例えば上側の台座5をガイド部4aに沿って移動させることにより、吊り架け部6が初期位置P31から第2位置P32に移動する。これにより、吊り架け部6が構造物10の重心Mよりも上方に位置する。
吊り架け部移動ステップS3の後には、吊り架けステップS4が行われる。
【0041】
(吊り架けステップ)
吊り架けステップS4では、揚重装置2が吊り架け部6を吊り架ける。例えば図1に示すように、クレーン20が吊り具24によって吊り架け部6を吊り架ける。
吊り架けステップS4の後には、切断ステップS5が行われる。
【0042】
(切断ステップ)
図5に示すように、切断ステップS5では、構造物10を切断する。切断方法の例として、ワイヤーソー、ディスクカッター、レーザーやバーナー等の熱的溶断がある。構造物10の切断には、熱的溶断以外に、例えば機械的溶断、爆破等を用いてもよい。
本実施形態では、先に海底を掘って、海底面より下方の切断位置15で構造物10の脚部14を切断する。
切断ステップS5の後には、姿勢変更ステップS6が行われる。
【0043】
(姿勢変更ステップ)
姿勢変更ステップS6では、揚重装置2によって構造物10を傾斜させて構造物10の姿勢を変更する。具体的には、まず、クレーン20が吊り架け部6を吊り上げることにより構造物10を揚重する。クレーン20は、構造物10を揚重しながら構造物10を水平方向に徐々に傾ける。最終的には、図6に示すように、構造物10は、水平面に沿った姿勢に変更される。その後、クレーン20が台船1a上に構造物10を積載する。
なお、図示の例では、構造物10の上段を引くことにより、構造物10の姿勢を変更しているが、これに限られない。例えば、構造物10を傾斜させやすいように、構造物10の下段を押すか、引くかすることにより、構造物10の姿勢を変更してもよい。
姿勢変更ステップS6の後には、解体ステップS7が行われる。
【0044】
(解体ステップ)
解体ステップS7では、構造物10を解体する。このステップでは、例えばまず構造物10を重量物12とタワー11とに分解する。その後、重量物12とタワー11をそれぞれ解体していく。本実施形態のように複数のタワー要素が連結してタワー本体13が形成されている場合、複数のタワー要素同士の連結を解除することにより、タワー11を解体することができる。
以上の手順を経て、構造物10の解体が完了する。
なお、揚重補助装置3は、構造物10の設置にも用いることができる。
【0045】
図7に示すように、構造物10の設置方法は、固定ステップS1と、ウェイト移動ステップS2と、吊り架け部移動ステップS3と、吊り架けステップS4と、姿勢変更ステップS6と、設置ステップS11とを含む。構造物10の設置方法では、まず、固定ステップS1で例えば水平方向に延びるように寝かされている構造物10に対して、揚重補助装置3を固定する。その後のウェイト移動ステップS2では、ウェイト7を構造物10の脚部14側に移動させる。その後の吊り架け部移動ステップS3では、吊り架け部6を構造物10の重心よりも脚部14とは反対側に移動させる。その後の吊り架けステップS4では、揚重補助装置3によって、吊り架け部6を吊り架ける。その後の姿勢変更ステップS6では、揚重装置によって構造物の姿勢を上下方向D1に延びるように変更する。その後の設置ステップS11では、上下方向D1に延びた姿勢を維持して構造物10を設置する。本実施形態の例では、設置ステップS11で、構造物10の脚部14を海底等の地盤に固定する。以上の手順を経て、構造物10の設置が完了する。
【0046】
(作用効果)
本実施形態によれば以下の作用効果を奏することができる。
【0047】
本実施形態では、揚重補助装置3は、上下方向D1に延びる長尺状をなす構造物10に固定される固定部4と、固定部4に接続されて、揚重装置2によって吊架可能な吊り架け部6と、固定部4に接続されて、固定部4に対して上下方向D1に相対移動可能とされたウェイト7とを備える。
【0048】
本実施形態によれば、ウェイト7を下方に移動させることで、重心Mが高い構造物10の重心Mを下方に移動させることができる。その後、揚重装置2によって、吊り架け部6を吊り架けて構造物10を揚重することができる。よって、構造物10の揚重や姿勢変更を安定的に行うことができる。
【0049】
よって、構造物10の解体時には、大きく重心Mが高い構造物10を上下方向D1に直立した状態から姿勢を傾斜させて水平方向に寝かせる作業を安定的に行うことができる。反対に、構造物10の設置時には、大きく重心Mが高い構造物10を水平方向に寝かせた状態から、上下方向D1に直立した状態に起こす作業を安定的に行うことができる。よって、本実施形態よれば、安定性を向上させることできる。
【0050】
このように、本実施形態によれば、構造物10を安定的に揚重することができるので、比較的小型の揚重装置2(本実施形態のクレーン20等)、重心Mが高い大型の構造物10の揚重を行うことができる。これにより、大型の構造物10の解体・設置の作業において、例えば揚重対象の構造物10を分割する工程を削減することが可能となり、工期を短縮し、コストを削減することができる。
【0051】
また、本実施形態のように、揚重対象の構造物10が洋上構造物10bである場合、海水面上の構造物10と海水中の構造物10とを一体化させて揚重することで、海水面上の台船から見た洋上構造物10bの全体の重心Mを下げることができる。これにより、大型のSEP船や起重機船の代わりに、比較的小型の台船1aを用いて、洋上構造物10bの解体・設置を行うことが可能となる。このため、船舶のチャーター費を抑えることができ、低コストで洋上構造物10bの解体を行うことができる。
【0052】
本実施形態では、吊り架け部6は、固定部4に対して上下方向D1に相対移動可能とされている。
【0053】
これにより、吊り架け部6の位置を構造物10の重心Mよりも高くすることができる。このようにして、構造物10の重心M位置と吊り点位置との相対位置を任意に設定することができる。よって、揚重時における構造物10の安定性がさらに向上する。よって、構造物10の解体、設置に係る作業をより一層安定的に行うことができる。
【0054】
本実施形態では、固定部4は、上下方向D1に延びて吊り架け部6及びウェイト7を上下方向D1に案内するガイド部4aと、ガイド部4aを支持するとともに、構造物10に取り付けられる取付部30とを有する。
【0055】
本実施形態によれば、固定部4を構造物10に対して任意の高さに配置した後、取付部30が構造物10に取り付けられる。このようにして、構造物10に対して固定部4を固定することができる。これにより、固定部4を任意の高さに設置することができるので、便宜性を向上させることができるとともに、固定部4を適切な位置に固定して安定性をより一層向上させることができる。
【0056】
本実施形態では、取付面44は、周方向側面視で、支点52aを基礎円の中心とするインボリュート曲線をなしている。
【0057】
これにより、取付部30が構造物10の水平方向に移動したとしても、取付面44と構造物10との接触位置は、支点52aから一定の距離で維持される。よって、取付部30の取付精度を向上させることができる。すなわち、揚重補助装置3の設置精度を向上させることができる。
【0058】
本実施形態では、揚重補助装置3を構成する装置、及び部品を交換することにより、構造物10の大きさに応じて揚重補助装置3の大きさを変更することができる。例えば、構造物10の大きさに応じてガイド部4aは交換可能とされている。これにより、構造物10の長さに対して適切な長さのガイド部4aを選択することができる。
【0059】
本実施形態では、水面上を移動し、揚重装置2を下方から支持するとともに、構造物10を積載可能な浮体1を備える。
【0060】
本実施形態によれば、浮体1を移動させることにより構造物10に対して適切な位置に揚重装置2を配置することができる。
【0061】
本実施形態の解体方法は、揚重補助装置3を用いた、構造物10の解体方法であって、ウェイト7を下方に移動させるウェイト移動ステップS2と、ウェイト移動ステップS2の後に、揚重装置2によって吊り架け部6を吊り架ける吊り架けステップS4と、吊り架けステップS4の後に、揚重装置2によって構造物10を傾斜させて構造物10の姿勢を変更する姿勢変更ステップS6と、姿勢変更ステップS6の後に、構造物10を解体する解体ステップS7と、を含む。
【0062】
本実施形態によれば、ウェイト7を下方に移動させることで構造物10の重心Mを下方に移動させることができる。これにより、構造物10の重心Mを吊り架け部6よりも下方に移動させてから構造物10を揚重装置2によって吊り架け部6を吊り架け、構造物10を揚重することができる。よって、構造物10の解体時に、構造物10の揚重や姿勢変更を安定的に行うことができる。このように、本実施形態によれば、構造物10の解体時における安定性を向上させることができる。
【0063】
本実施形態の解体方法は、吊り架けステップS4の前に、吊り架け部6を構造物10の重心Mよりも高く移動させる吊り架け部移動ステップS3をさらに含む。
【0064】
本実施形態によれば、吊り架け部6を構造物10の重心Mよりも高く移動させた後に、揚重装置2によって吊り架け部6を吊り架け、構造物10を揚重することができる。よって、構造物10の揚重を安定的に行うことができる。このように、本実施形態によれば、構造物10の解体時における安定性をより一層向上させることができる。
【0065】
本実施形態の解体方法は、ウェイト移動ステップS2の前に、取付部30によって固定部4を構造物10に固定する固定ステップS1をさらに含む。
【0066】
本実施形態によれば、固定部4を構造物10に対して任意の高さに配置した後、取付部30が構造物10に取り付けられる。このようにして、構造物10に対して固定部4を固定することができる。これにより、固定部4を任意の高さに設置することができるので、便宜性を向上させることができるとともに、固定部4を適切な位置に固定して安定性をより一層向上させることができる。
【0067】
本実施形態の設置方法は、ウェイト7を構造物10の延在方向で構造物10の脚部14側に移動させるウェイト移動ステップS2と、ウェイト移動ステップS2の後に、揚重装置2によって吊り架け部6を吊り架ける吊り架けステップS4と、吊り架けステップS4の後に、揚重装置によって構造物10の姿勢を上下方向D1に延びるように変更する姿勢変更ステップS6と、姿勢変更ステップS6の後に、上下方向D1に延びた姿勢を維持して構造物10を設置する設置ステップS11と、を含む。
【0068】
本実施形態によれば、ウェイト7を脚部14側に移動させることで構造物10の重心Mを脚部14側に移動させることができる。これにより、構造物10の重心Mを吊り架け部6よりも脚部14側に移動させてから構造物10を揚重装置2によって吊り架け部6を吊り架け、構造物10を揚重することができる。よって、構造物10の設置時に、構造物10の揚重や姿勢変更を安定的に行うことができる。
【0069】
なお、本実施形態では、浮体1が多目的台船であり、甲板上にクレーン20が走行可能に積載される場合を例に説明したが、これに限られない。浮体1は、比較的小型なクレーン船であってもよく、小型の作業船であってもよい。また、浮体1は、SEP船や起重機船であってもよい。また、浮体1は、構造物10が波の影響で流されないように、スパッド杭や自動船位保持システムを有する作業船であることが好ましい。
【0070】
また、本実施形態では、1台のクレーン20で構造物10を揚重する場合について説明したが、これに限られない。例えば、浮体1上にクレーン20を複数台積載し、複数台のクレーン20で構造物10を揚重してもよい。この場合、比較的揚重能力が低いクレーン20の適用が可能となり、施工手段の選択肢を増やすことができる。また、1台のクレーン20で揚重を行う場合に比べ、姿勢制御等が容易となることから、構造物10の解体・設置に係る作業効率を向上させることができる。
また、クレーン20が載置される浮体1を複数台用いてもよい。
【0071】
また、本実施形態では、ガイド部4aが交換可能とされる場合について説明したがこれに限られない。ガイド部4aは、リニアガイド等により伸縮可能な構造を有してもよい。この場合、ガイド部4aを交換することなく、構造物10の大きさに応じてガイド部4aの長さを変更することができる。
【0072】
また、本実施形態の解体方法では、ウェイト移動ステップS2の後に吊り架け部移動ステップS3が行われる場合について説明したが、これに限るものではない。
ウェイト移動ステップS2と吊り架け部移動ステップS3との順序は、適宜変更可能である。例えば、ウェイト移動ステップS2の前に吊り架け部移動ステップS3が行われてもよいし、ウェイト移動ステップS2と吊り架け部移動ステップS3とは、同時に行われてもよいし、吊り架け部移動ステップS3の後に再度、ウェイト移動ステップS2を行ってもよい。
【0073】
また、本実施形態の切断ステップS5では、先に海底を掘って、海底面より下方の切断位置で構造物10の脚部14を切断するとしたが、これに限られない。切断ステップS5では、海底面よりも上で構造物10を切断し、その後に、海中の残りを切断、または海底から抜いて除去してもよい。
【0074】
また、本実施形態では、ウェイト7が揚重補助装置3に予め備え付けられている場合を例に説明したが、これに限られない。例えば、ウェイト移動ステップS2時に、ウェイト7を揚重補助装置3に後付けで設置するようにしてもよい。
【0075】
<第1実施形態の第1変形例>
続いて第1実施形態の第1変形例について、図8図9を参照して説明する。
図8図9に示すように、本変形例の固定機構40aは、内側プレート41と、回動機構50と、固定ピース46と、押圧機構43とを有する。
本変形例では、内側プレート41は、上方から見て、直線状に形成されている。また、内側プレート41は、周方向側面視で、タワー11の外周面に沿って軸線O方向に延びている。
【0076】
回動機構50は、内側プレート41毎に1つずつ設けられている。回動機構50は、第1支持部材51と、支持軸52と、第2支持部材53と、を有する。第2支持部材53は、内側プレート41の下端から外周側に向けて延びている。第2支持部材53は、周方向側面視で、外周側に向かう従い漸次下方に位置するように傾斜した直線状に形成されている。第2支持部材53は、支持軸52を中心として回動可能とされている。
【0077】
固定ピース46は、各内側プレート41の取付面44に設けられている。固定ピース46は、内側プレート41からタワー11に向けて径方向内側に延びる柱状に形成されている。固定ピース46は、タワー11を貫通している。固定ピース46は、例えば金属材料により形成されている。
【0078】
本変形例では、固定ステップS1において、まず、揚重対象である構造物10に、構造物10を径方向に貫通する孔46aを形成する。この孔46aは、固定ピース46ごとに形成される。これらの孔46aに、固定ピース46が挿通される。この状態で、各固定ピース46が例えば溶接により、構造物10に接合される。これにより、固定部4が構造物10に対して強固に固定される。
【0079】
<第1実施形態の第2変形例>
続いて第1実施形態の第2変形例について、図10図11を参照して説明する。
本変形例の固定機構40bは、送り出し装置47と、固定シャフト48とを有する。
送り出し装置47は、タワー11を外周側から囲うように周方向に等間隔で4つ設けられている。送り出し装置47は、外殻フレーム31の上面に載置されている。
【0080】
固定シャフト48は、径方向に対向する一対の送り出し装置47を接続するように設けられている。固定シャフト48は、これら一対の送り出し装置47の組毎に設けられている。すなわち、固定シャフト48は、計2本設けられている。固定シャフト48は、送り出し装置47によって送り出され、タワー11を径方向(図示の例では水平方向)に貫通している。これにより、揚重補助装置203がタワー11に固定される。図示の例では、2本の固定シャフト48は、上下方向D1視で直交するように配置されている。また、2本の固定シャフト48は、上下方向D1に互い違いとなるように配置されている。
【0081】
本変形例では、固定ステップS1において、揚重対象である構造物10に、構造物10を径方向に貫通する孔48aを形成した後、送り出し装置47によって固定シャフト48をこの孔48aに通している。この孔48aは、構造物10に計4つ形成されている。4つの孔48aのうち2つの孔48aは、径方向に対向するように形成されている。残り2つの孔48aについても、径方向かつ、他方の2つの孔48aの対向方向に直交する方向に対向するように形成されている。各固定シャフト48は、対向する2つの孔48aの各組に挿通されている。これにより、固定部4が構造物10に対して強固に固定される。
【0082】
<第2実施形態>
以下、本開示の第2実施形態に係る揚重補助装置203、揚重システム200、解体方法及び設置方法について、図12から図14を参照して説明する。第2実施形態の構成のうち、上述した実施形態と共通する構成については、同一の名称、符号等を付す等して、説明を適宜省略する。
【0083】
図12に示すように、本実施形態では、揚重補助装置203は、上記実施形態のカウンターウェイト7aに加えて、浮力装置16をさらに備える。浮力装置16は、固定部4に接続され、固定部4に対して上下方向D1に移動可能とされている。本実施形態の浮力装置16は、内部に水(バラスト水)を供給、排出可能なバラストタンク16aである。
【0084】
(バラストタンク)
バラストタンク16aは、下側の台座5の下面に設けられている。バラストタンク16aは、タワー11を挟んでカウンターウェイト7aと水平方向に対向している。台座5がガイド部4aに沿って上下方向D1に移動することにより、バラストタンク16aがカウンターウェイト7aとともに上下方向D1に移動する。
【0085】
バラストタンク16aは、内部の水量を調整可能な筐体である。バラストタンク16a内の水量調整時には、バラストタンク16aは、海水中に沈められている。バラストタンク16a内の水量を調整する際、例えばバラストタンク16aに設置されたポンプ(不図示)によって水を排出する場合と、海水面上の装置から圧縮空気を送って水を排出する場合とが考えられる。バラストタンク16aは、変動する水圧によって変形しない程度に十分な強度を有している。
【0086】
(解体方法の手順)
続いて、上述した揚重補助装置203を用いた構造物10の解体方法について説明する。
本実施形態では、構造物10の解体は、第1実施形態と同様の手順で行われる。ただし、図13に示すように、本開示の実施形態に係る解体方法は、浮力調整ステップS8をさらに含む。
【0087】
(浮力調整ステップ)
浮力調整ステップS8は、吊り架けステップS4の前に行われる。本実施形態では、固定ステップS1の後であって、ウェイト移動ステップS2の前に行われる。浮力調整ステップS8では、浮力装置16による浮力を調整する。本実施形態では、浮力調整ステップS8の時点で、海水中にバラストタンク16aが沈められている。このバラストタンク16a内の水量を調整することにより、浮力装置16による浮力が調整される。
【0088】
浮力調整ステップS8の後には、第1実施形態と同様にして、ウェイト移動ステップS2、吊り架け部移動ステップS3、吊り架けステップS4、切断ステップS5、姿勢変更ステップS6、解体ステップS7がこの順序で行われる。
以上の手順を経て、構造物10の解体が完了する。
なお、揚重補助装置203は、第一実施形態の場合と同様に、構造物10の設置にも用いることができる。
【0089】
図14に示すように、本実施形態の構造物10の設置方法は、固定ステップS1と、ウェイト移動ステップS2と、吊り架け部移動ステップS3と、吊り架けステップS4と、姿勢変更ステップS6と、浮力調整ステップS8と、設置ステップS11とを含む。例えば、構造物10の設置方法は、固定ステップS1、ウェイト移動ステップS2、吊り架け部移動ステップS3、吊り架けステップS4、姿勢変更ステップS6、浮力調整ステップS8、設置ステップS11の順に進行する。なお、浮力調整ステップS8は、姿勢変更ステップS6の際中におこなわれてもよい。すなわち、姿勢変更ステップS6で、構造物10の姿勢を変更し、バラストタンク16aが水中に沈んだときに、浮力調整ステップS8を行い、バラストタンク16a内の水量を調節してもよい。
以上の手順を経て、構造物10の設置が完了する。
【0090】
(作用効果)
本実施形態によれば以下の作用効果を奏することができる。
【0091】
本実施形態では、揚重補助装置は、固定部4に接続されて固定部4に対して上下方向D1に移動可能とされ、構造物10に対して浮力を発生させる浮力装置16をさらに備える。
【0092】
これにより、浮力装置16の上下方向D1位置を調整して、浮力装置16を水中に配置し、浮力装置16によって浮力を発生させることができる。これにより、揚重装置2が構造物10を揚重する際に、揚重装置2にかかる荷重を軽減することができる。このため、揚重装置2、として比較的揚重能力が低い機器や、浮体1として比較的小型の船舶を使用することができる。これにより、これらのチャーター費を抑え、構造物10の解体・設置に係るコストを削減することができる。
【0093】
また、浮力装置16によって生じる浮力が、構造物10と揚重補助装置203を合わせた全体にかかる重力よりも十分に大きい場合、揚重補助装置203単体で、構造物10を浮かべ、姿勢変更することが可能となる。この場合、比較的小型の船舶を用いて、構造物10を曳航して移動させることも可能となる。
【0094】
本実施形態の解体方法は、吊り架けステップS4の前に、浮力装置による浮力を調整する浮力調整ステップS8をさらに含む。
【0095】
これにより、浮力装置による浮力を調整することで、構造物10の姿勢を調整することができる。よって、構造物10の揚重をより一層安定的に行うことができる。
【0096】
なお、本実施形態では、揚重補助装置203がカウンターウェイト7aに加えてバラストタンク16aを備える場合について説明したが、これに限られない。全てのカウンターウェイト7aに代えて、バラストタンク16aを設けてもよい。この場合、バラストタンク16aが、構造物10の重心M位置を変更するウェイト7として機能する。
【0097】
また、本実施形態の浮力装置は、十分な強度を有した筐体のバラストタンク16aであるとしたが、これに限られない。浮力装置は、気密性を有する浮袋であってもよい。この場合、この浮袋の内部に、圧縮空気を送り込んで浮力を得ることができる。
【0098】
また、本実施形態では、解体方法において、ウェイト移動ステップS2の前に浮力調整ステップS8が行われる場合について説明したがこれに限られない。浮力調整ステップS8のタイミングは適宜変更可能である。例えば、ウェイト移動ステップS2の後に、浮力調整ステップS8が行われてもよい。
【0099】
<第3実施形態>
以下、本開示の第3実施形態に係る揚重システム300、解体方法及び設置方法について、図15から図20を参照して説明する。第3実施形態の構成のうち、上述した実施形態と共通する構成については、同一の名称、符号等を付す等して、説明を適宜省略する。
図15に示すように、本実施形態では、揚重システム300は、揚重装置2及び揚重補助装置203に加えて、昇降装置8をさらに備える。
【0100】
(昇降装置)
本実施形態では、昇降装置8は、揚重補助装置203と一体に設けられている。昇降装置8は、ジャッキシステム60と、昇降装置本体61と、を有する。
ジャッキシステム60は、固定部4に設けられた部材である。ジャッキシステム60は、上側の台座5に設けられ、この台座5に対して上下に伸縮可能となっている。ジャッキシステム60は、台座5に対して上下に伸縮することにより、昇降装置本体61を上下方向D1に昇降させることができる。
【0101】
昇降装置本体61は、昇降台62と、回動部63と、把持部64とを有する。
【0102】
昇降台62は、固定部4に対して上下方向D1に相対移動可能とされている。本実施形態では、昇降台62は、ジャッキシステム60の伸縮によって上下方向D1に移動することができる。昇降台62は、ジャッキシステム60による移動の後、その高さで固定される。なお、昇降台62を上下方向D1に昇降させる機構は、ジャッキシステム60に限られない。このような機構として、例えば上下方向に延びるレールを用いてもよい。
【0103】
また、図16に示すように、昇降台62は、タワー11を外周側から囲う枠状の部材である。なお、図16では、昇降装置本体61、取付部30及び台座5の概形が簡略化して模式的に図示されており、固定機構40やガイド部4a等は省略されている。昇降台62は、上方から見て矩形枠状に形成されている。昇降台62には、回動部63を介して把持部64が接続されている。
【0104】
回動部63は、昇降台62の4つの外縁の1つに設けられている。図示の例では、回動部63は昇降台62の外縁に沿って延びたヒンジのような部位である。回動部63は、後述する把持部64を昇降台62に対して、自身を中心として回動させる。
【0105】
把持部64は、昇降台62に取り付けられて昇降台62に対する姿勢を変更可能であるとともに、重量物12を把持可能とされている。本実施形態では、回動部63を中心とした昇降台62に対する回動によって、把持部64の姿勢が変化する。把持部64は、例えば水平方向に対向する2本のアームである。これら2本の把持部64が回動部63によって、回動部63を中心として回転移動する。2本の把持部64は、重量物12を把持することができる。
【0106】
本実施形態では、上述した昇降台62が上下方向D1に移動する。このため、昇降台62の上下方向D1の移動を妨げないようにするべく、取付部30及び台座5は、上下方向D1から見て回動部63側に向けて開口したU字状に形成されている。
【0107】
(解体方法の手順)
続いて、上述した揚重システム300を用いた構造物10の解体方法について説明する。
本実施形態では、構造物10の解体は、第2実施形態と同様の手順で行われる。ただし、図17に示すように、本開示の実施形態に係る解体方法は、重量物移動ステップS9をさらに含む。
【0108】
本実施形態でも、これまでの実施形態と同様に、最初に固定ステップS1が行われる。固定ステップS1によって揚重補助装置203が構造物10に取り付けられることにより、揚重補助装置203と一体の昇降装置8も構造物10に取り付けられる。
本実施形態では、固定ステップS1の後に重量物移動ステップS9が行われる。
【0109】
重量物移動ステップS9は、重量物12を下方に移動させるステップである。図18に示すように、重量物移動ステップS9は、把持ステップS91と、重量物姿勢変更ステップS92と、下降ステップS93と、重量物解体ステップS94とを有する。
【0110】
重量物移動ステップS9では、ます把持ステップS91が行われる。把持ステップS91では、図15に示すように、昇降装置8が把持部64によって、タワー11上の初期位置P41にある重量物12を把持する。
把持ステップS91の後には、重量物姿勢変更ステップS92が行われる。
【0111】
重量物姿勢変更ステップS92では、昇降装置8が把持部64によって重量物12の姿勢を変更する。例えば図15に示すように、把持部64が重量物12を把持した状態で、回動部63回りに約90度回転することにより、重量物12が初期位置P41から、タワー11上から水平方向にずれた第2位置P42に移動する。
重量物姿勢変更ステップS92の後には、下降ステップS93が行われる。
【0112】
下降ステップS93では、昇降装置8が重量物12を下降させる。例えば図15に示すように、昇降装置本体61がジャッキシステム60の伸縮によって下降することにより、重量物12が、第2位置P42から下方の台船1aに近い第3位置P43に移動する。
下降ステップS93の後には、重量物解体ステップS94が行われる。
【0113】
重量物解体ステップS94では、例えば台船1a上で重量物12を解体する。
以上の手順で重量物移動ステップS9が完了する。重量物移動ステップS9の後には、第2実施形態と同様にして、浮力調整ステップS8、ウェイト移動ステップS2、吊り架け部移動ステップS3、吊り架けステップS4、切断ステップS5、姿勢変更ステップS6、解体ステップS7がこの順序で行われる。
以上の手順を経て、構造物10の解体が完了する。
なお、揚重システム300は、第一実施形態の場合と同様に、構造物10の設置にも用いることができる。
【0114】
図19に示すように、本実施形態の構造物10の設置方法は、固定ステップS1と、ウェイト移動ステップS2と、吊り架け部移動ステップS3と、吊り架けステップS4と、姿勢変更ステップS6と、浮力調整ステップS8と、設置ステップS11と、重量物移動ステップS9と、を含む。例えば、構造物10の設置方法は、固定ステップS1、ウェイト移動ステップS2、吊り架け部移動ステップS3、吊り架けステップS4、姿勢変更ステップS6、浮力調整ステップS8、設置ステップS11、重量物移動ステップS9の順に進行する。
【0115】
重量物移動ステップS9では、重量物12を上昇させる。図20に示すように、重量物移動ステップS9は、把持ステップS91と、上昇ステップS95と、重量物姿勢変更ステップS92と、重量物設置ステップS96と、を含む。まず、把持ステップS91が行われる。その後の上昇ステップS95では、重量物12を上昇させる。その後、重量物姿勢変更ステップS92が行われる。その後の重量物設置ステップS96では、重量物12を構造物10の上端部に組付ける。
以上の手順を経て、構造物10の設置が完了する。
【0116】
(作用効果)
本実施形態によれば以下の作用効果を奏することができる。
【0117】
本実施形態では、揚重システム300は、固定部4に対して上下方向D1に相対移動可能とされる昇降台62と、昇降台62に取り付けられて昇降台62に対する姿勢を変更可能であるとともに、構造物10を把持可能な把持部64とを有する昇降装置8をさらに備える。
【0118】
本実施形態によれば、昇降装置8によって重量物12を予め下方に移動させ、構造物10の重心Mを下げておくことができる。これにより、構造物10をより安定した状態で揚重することができる。
【0119】
本実施形態の解体方法は、吊り架けステップS4の前に、重量物12を下方に移動させる重量物移動ステップS9を更に含み、重量物移動ステップS9は、昇降装置8が把持部64によって重量物12を把持する把持ステップS91と、把持ステップS91の後に、昇降装置8が把持部64によって重量物12の姿勢を変更する重量物姿勢変更ステップS92と、重量物姿勢変更ステップS92の後に、昇降装置8が重量物12を下降させる下降ステップS93と、を含む。
【0120】
本実施形態によれば、構造物10を解体する際、構造物10の姿勢変更を行う前に、昇降装置8によって重量物12を予め下方に移動させ、構造物10の重心Mを下げておくことができる。よって、構造物10の解体を安定した状態で行うことができる。
【0121】
なお、本実施形態の解体方法では、重量物移動ステップS9の最後に、重量物12を台船1a上に積載して重量物12を解体する場合について説明したがこれに限られない。例えば、重量物移動ステップS9の下降ステップS93で下方に移動させた重量物12を構造物10に対して固定し、ウェイト7として用いてもよい。この場合、吊り架け部6よりも下方で、構造物10とタワー11とを一体化させて重心Mを下げることができる。
【0122】
<第4実施形態>
以下、本開示の第4実施形態に係る揚重システム400、解体方法及び設置方法について、図21から図26を参照して説明する。第4実施形態の構成のうち、上述した実施形態と共通する構成については、同一の名称、符号等を付す等して、説明を適宜省略する。
図21図22に示すように、本実施形態では、揚重システム400は、揚重装置2及び揚重補助装置203に加えて、昇降装置408を有する。なお、本実施形態では、後に詳細に説明するが、昇降装置408による重量物12の移動後に、揚重補助装置203が構造物10に設置される。
【0123】
(昇降装置)
図21から図23に示すように、昇降装置408は、昇降装置本体61に加えて、滑車65と、昇降ワイヤ66と、ウィンチ70とを有する。
【0124】
滑車65は、構造物10の上部、より具体的にはタワー11の上端に取り付けられている。昇降ワイヤ66は、滑車65から下方に延びて、昇降装置本体61の昇降台62に取り付けられている。また、ワイヤのうち、昇降台62とは反対側の部分は、ウィンチ70に巻き付けられている。
【0125】
本実施形態では、ウィンチ70は構造物10の上部、例えば重量物12が配置されるタワー11の上端に設けられている。ウィンチ70は、昇降ワイヤ66を巻き上げ、又は送り出すことができる。ウィンチ70が昇降ワイヤ66を巻き上げ、送り出すことにより、滑車65からの昇降ワイヤ66の引き出し長さが変化する。これにより、昇降ワイヤ66によって吊り下げされた昇降台62が昇降可能となっている。
【0126】
また、昇降装置本体61は、支持機構17をさらに有する。支持機構17は、タワー11の外周側に周方向に等間隔に並んで複数設けられている。支持機構17は、ジャッキ67と、保持機構68と、支持輪69とを有する。
【0127】
ジャッキ67は、昇降台62の内周側に設けられている。ジャッキ67は、周方向に対向して2つ設けられている。各ジャッキ67は、昇降台62の内周面から、タワー11に向けて延びている。ジャッキ67は、タワー11の径方向に伸縮可能となっている。ジャッキ67の径方向内側の端部には、保持機構68が設けられている。
【0128】
保持機構68は、ジャッキ67よりも内周側に設けられている。保持機構68は、第1保持部材68aと、第2保持部材68bと、回転軸68cとを有する。第1保持部材68aは、対応する一対のジャッキ67の径方向内側端同士を接続している。第2保持部材68bは、第1保持部材68aの内周面に周方向に並んで4つ設けられている。周方向両端の第2保持部材68bの各組には、回転軸68cが設けられている。回転軸68cは、2つの第2保持部材68bを接続している。回転軸68cは、支持輪69に挿通されている。
【0129】
支持輪69は、回転軸68c回りに回転することができる。この支持輪69の外周面は、外周側のジャッキ67によって、タワー11の外周面に押し付けられている。支持輪69が回転軸68c回りに回転することにより、支持輪69はタワー11の外周面に沿って、上下方向D1に移動することができる。
【0130】
(解体方法の手順)
続いて、上述した揚重システム400を用いた構造物10の解体方法について説明する。
本実施形態では、構造物10の解体は、第3実施形態と同様の手順で行われる。ただし、図24に示すように、本実施形態の解体方法は、昇降装置設置ステップS10をさらに含む。
【0131】
昇降装置設置ステップS10は、解体手順の最初に行われる。昇降装置設置ステップS10では、昇降装置408を構造物10に取り付ける。具体的には、図21に示すように、タワー11の上端に、滑車65とウィンチ70とを取り付け、昇降装置本体61を昇降ワイヤ66で吊り下げる。
昇降装置設置ステップS10の後には、重量移動ステップが行われる。
【0132】
本実施形態の重量物移動ステップS9は、第3実施形態と同様の手順で進行する。
本実施形態では、重量物移動ステップS9の下降ステップS93において、図21に示すように、ウィンチ70が昇降ワイヤ66を送り出すことにより、昇降台62が下降する。これにより、把持部64によって把持された重量物12が下降する。
【0133】
その後、固定ステップS1が行われて、揚重補助装置203が構造物10に取り付けられる。固定ステップS1の後には、第3実施形態と同様にして、浮力調整ステップS8、ウェイト移動ステップS2、吊り架け部移動ステップS3、吊り架けステップS4、切断ステップS5、姿勢変更ステップS6、解体ステップS7がこの順序で行われる。
【0134】
なお、本実施形態では、姿勢変更ステップS6において、図25に示すように、構造物10がクレーン20によって水平方向に延びるように吊り下げられ、台船1a上に載置される。
姿勢変更ステップS6の後には、解体ステップS7が行われる。
解体ステップS7では、上述した実施形態と同様に、台船1a上で解体される。
以上の手順で本実施形態の解体方法が完了する。
なお、揚重システム400は、第一実施形態の場合と同様に、構造物10の設置にも用いることができる。
【0135】
図26に示すように、本実施形態の構造物10の設置方法は、固定ステップS1と、ウェイト移動ステップS2と、吊り架け部移動ステップS3と、吊り架けステップS4と、姿勢変更ステップS6と、浮力調整ステップS8と、設置ステップS11と、昇降装置設置ステップS10と、重量物移動ステップS9と、を含む。例えば、構造物10の設置方法は、固定ステップS1、ウェイト移動ステップS2、吊り架け部移動ステップS3、吊り架けステップS4、姿勢変更ステップS6、浮力調整ステップS8、設置ステップS11、昇降装置設置ステップS10、重量物移動ステップS9の順に進行する。以上の手順を経て、構造物10の設置が完了する。
【0136】
(作用効果)
本実施形態によれば以下の作用効果を奏することができる。
【0137】
本実施形態では、昇降装置408が揚重補助装置203とは別体に設けられている。
【0138】
これにより、昇降装置408と揚重補助装置203とを別々に構造物10に取り付けることができるので、昇降装置408と揚重補助装置203の設置が容易となる。
【0139】
本実施形態では、昇降装置408は、滑車65と、滑車65から下方に延びて昇降台62を吊り下げる昇降ワイヤ66と、昇降ワイヤ66を巻き上げ、又は送り出すウィンチ70とをさらに有する。
【0140】
これにより、昇降装置408を簡易な構成とすることができるので、昇降台62を昇降するために大掛かりな装置が不要となる。
【0141】
本実施形態では、ウィンチ70の他、滑車65が設けられている場合について説明したが、これに限られない。本実施形態のように、ウィンチ70が構造物10の上部、例えば重量物12が配置されるタワー11の上端に設けられている場合、滑車65は設けられていなくてもよい。
【0142】
本実施形態では、ウィンチ70が構造物10の上部、例えば重量物12が配置されるタワー11の上端に設けられているとしたがこれに限られない。ウィンチ70は、構造物10上の水面高さの位置、又は台船1a上に設置されていてもよい。ウィンチ70が水面付近の低い位置に設置される場合は、構造物10の上部に滑車65が必須となる。
【0143】
また、図示の例では、昇降ワイヤ66の経路は、構造物10の外部に存在するが、昇降ワイヤ66の経路は、構造物10の内部に存在してもよい。
【0144】
<第4実施形態の変形例>
続いて、第4実施形態の変形例について、図27から図32を参照して説明する。
図27から図29に示すように、本変形例の揚重システム400aは、揚重装置402と、揚重補助装置403と、昇降装置408とを備える。
【0145】
揚重装置402は、クレーン20よりも小型のやぐら420である。本変形例では、やぐら420を用いることにより、クレーン20を用いることなく構造物10の解体と設置を行うことが出来る。本実施形態の浮体1は、このやぐら420を使用可能な専用の台船1bである。この台船1bは、長手方向の一端(例えば船尾側の端部)に、構造物10が進入可能に長手方向一方側に開口した凹部1cが設けられている。この凹部1cは、台船1bを上下方向D1に貫通している。凹部1c内には、構造物10と台船1bとの接触時の衝撃を低減するため、凹部1c内に進入した構造物10を水平方向両側(径方向両側)から挟み込むように緩衝材1dが設けられている。
【0146】
(やぐら)
やぐら420は、やぐら本体421と、支持バー422と、接続部423と、ワイヤロープ424とを有する。
やぐら本体421は、台船1bの甲板上に、水平方向に対向して一対配置されている。やぐら420の使用時には、一対のやぐら本体421は、凹部1c内に配置されタワー11を挟み込むように配置される。やぐら本体421は、例えば複数の鉄骨が組み合わせて形成されている。やぐら本体421の上端には、支持バー422が設けられている。支持バー422には、接続部423を介して2本のワイヤロープ424が設けられている。各ワイヤロープ424の先端は、揚重補助装置403の吊り架け部6に接続されている。
【0147】
本変形例では、揚重補助装置403は、タワー11の下部に配置されている。揚重補助装置403は、やぐら本体421によって挟み込まれている。図示の例では、揚重補助装置403の吊り架け部6は、上下方向D1視で仮想の長方形の各頂点に1つずつ、計4つ設けられている。各吊り架け部6は、ワイヤロープ424によって吊り下げられる。
【0148】
また、揚重補助装置403の凹部1cの開放方向と同じ側には、開閉可能な扉構造となっている。具体的には、台座5の凹部1cの開放方向側の一部が、凹部1cの開放方向と同じ側に開閉可能な扉部5aとなり、外殻フレーム31の一部が扉部31aとなっている。なお、図28では、取付部30及び台座5の概形が簡略化して模式的に図示されており、ガイド部4a等は省略されている。
【0149】
各扉部5a、31aを図28の実線で示すような開状態にすることにより、揚重補助装置403は、水平方向に容易に移動可能となる。なお、揚重補助装置403を構造物10に取り付ける際には、各扉部5a、31aを図28の仮想線で示すような閉状態にする。
【0150】
(解体方法の手順)
続いて、上述した揚重システム400aを用いた構造物10の解体方法について説明する。
本変形例では、構造物10の解体は、図24に示すように第4実施形態と同様の手順で行われる。ただし、クレーン20の代わりにやぐら420を用いて構造物10の姿勢を変更する点で上述した第4実施形態と相異する。
【0151】
本変形例でも、まずは昇降装置設置ステップS10が行われ、その後、重量物移動ステップS9が行われる。
重量物移動ステップS9では、図30に示すように、やぐら420をタワー11から離間させる。
【0152】
重量物移動ステップS9の後、やぐら420に揚重補助装置403を取り付け、一対のやぐら本体421でタワー11を挟み込むようにやぐら420と揚重補助装置403を移動する。
その後、第4実施形態と同様の手順で、固定ステップS1、浮力調整ステップS8、ウェイト移動ステップS2、吊り架け部移動ステップS3、吊り架けステップS4、切断ステップS5がこの順で行われる。
【0153】
切断ステップS5の後には、姿勢変更ステップS6が行われる。姿勢変更ステップS6では、図31に示すように、やぐら420によって吊り下げられた構造物10の上端に例えば、姿勢変更ワイヤ425等を取り付ける。この姿勢変更ワイヤ425を台船1b上に設置された姿勢変更ウィンチ426によって巻き上げることにより、構造物10の上端を水平方向に引く。これにより、構造物10は、やぐら420付近を中心として回転するように徐々に傾く。最終的は、図32に示すように、構造物10が水平方向に延びる姿勢に変更され、台船1b上に積載される。その後の解体ステップS7で、構造物10は、台船1b上で解体される。
以上の手順で本変形例の解体方法が完了する。
なお、揚重システム400aは、構造物10の設置にも用いることができる。本変形例の構造物10の設置方法は、上述した第4実施形態と同様の手順(図26参照)で進行する。ただし、解体方法と同様に、本変形例の設置方法は、クレーン20の代わりにやぐら420を用いて構造物10の姿勢を変更する点で上述した第4実施形態と相異する。
【0154】
(作用効果)
本変形例によれば以下の作用効果を奏することができる。
【0155】
本変形例では、クレーン20を用いることなく、やぐら420、姿勢変更ウィンチ426、姿勢変更ワイヤ425を用いて構造物10を揚重することができる。よって、より簡易な揚重装置402で構造物10を解体することができるので、作業効率を向上しつつ、解体に係るコストを削減することができる。
【0156】
また、本変形例では、やぐら420によって洋上構造物10bの下方の海水面に近い位置を吊り下げている。
これにより、波の揺れによる、台船1bと構造物10との相対変位を吸収することができる。
【0157】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記実施形態では、構造物10が例えば洋上構造物10bであり、より具体的には洋上に設けられた風車である場合について説明したが、これに限るものではない。構造物10は、海洋ではなく、湖や池に建設された構造物であってもよい。構造物10は、陸上構造物であってもよく、必ずしも風車に限られない。構造物10は、例えば洋上の鉄塔(例えば、図33に図示される橋脚として機能する鉄塔)や煙突、洋上環境観測タワー、海洋資源調査基地、灯台、アンテナ基地局、橋脚であってもよい。なお、図33の例では、第1実施形態の場合で図示されてはいるが、他の実施形態についても洋上の風車以外の構造物10に適用可能である。
【0158】
上記実施形態では、タワー本体13は、例えば上下方向D1に並ぶ複数のタワー要素が連結されることにより構成されているとしたが、これに限られない。タワー本体13は、例えばコンクリート製の1本の筒状のものであってもよい。この場合、解体ステップS7では、タワー本体13を粉砕することにより、タワー本体13を解体する。
【0159】
<付記>
各実施形態に記載の揚重補助装置3、203、403、及び揚重システム100、200、300、400、及び解体方法は、例えば以下のように把握される。
【0160】
(1)第1の態様に係る揚重補助装置3、203、403は、上下方向D1に延びる長尺状をなす構造物10に固定される固定部4と、前記固定部4に接続されて、揚重装置2、402によって吊架可能な吊り架け部6と、前記固定部4に接続されて、前記固定部4に対して上下方向D1に相対移動可能とされたウェイト7と、を備える。
【0161】
本態様によれば、ウェイト7を下方に移動させることで、重心Mが高い構造物10の重心Mを下方に移動させることができる。その後、揚重装置2、402によって、吊り架け部6を吊り架けて構造物10を揚重することができる。よって、構造物10の揚重や姿勢変更を安定的に行うことができる。
構造物10の例として、例えば風車や煙突等が挙げられる。
揚重装置2、402の例として、例えばクレーン20や、やぐら420等が挙げられる。
【0162】
(2)第2の態様の揚重補助装置3、203、403は、(1)の揚重補助装置3、203、403であって、前記吊り架け部6は、前記固定部4に対して上下方向D1に相対移動可能とされていてもよい。
【0163】
これにより、吊り架け部6の位置を構造物10の重心Mよりも高くすることができる。このようにして、構造物10の重心M位置と吊り点位置との相対位置を任意に設定することができる。よって、揚重時における構造物10の安定性がさらに向上する。
【0164】
(3)第3の態様の揚重補助装置203、403は、(1)又は(2)の揚重補助装置203、403であって、前記固定部4に接続されて、前記固定部4に対して上下方向D1に相対移動可能とされ、前記構造物10に対して浮力を発生させる浮力装置16をさらに備えてもよい。
浮力装置16として、例えばバラストタンク16aや浮袋等が挙げられる。
【0165】
例えば構造物10が水上構造物10aである場合、浮力装置の上下方向D1位置を調整して、浮力装置16を水中に配置し、浮力装置16によって浮力を発生させることができる。これにより、揚重装置2、402が構造物10を揚重する際に、揚重装置2、402にかかる荷重を軽減することができる。
【0166】
(4)第4の態様の揚重補助装置3、203、403は、(1)から(3)のいずれか1つの揚重補助装置3、203、403であって、前記固定部4は、上下方向D1に延びて前記吊り架け部6及び前記ウェイト7を上下方向D1に案内するガイド部4aと、前記ガイド部4aを支持するとともに、前記構造物10に取り付けられる取付部30と、を有してもよい。
【0167】
本態様によれば、固定部4を構造物10に対して任意の高さに配置した後、取付部30が構造物10に取り付けられる。これにより、固定部4を任意の高さに設置することができる。
【0168】
(5)第5の態様の揚重システム100、200、300、400、400aは、(1)から(4)のいずれか1つの揚重補助装置3、203、403と、前記揚重装置2、402と、を備える。
【0169】
(6)第6の態様の揚重システム300、400、400aは、(5)の揚重システム300、400、400aであって、前記構造物10は、上部に重量物12を有し、前記固定部4に対して上下方向D1に相対移動可能とされる昇降台62と、前記昇降台62に取り付けられて前記昇降台62に対する姿勢を変更可能であるとともに、前記重量物12を把持可能な把持部64とを有する昇降装置8、408をさらに備えてもよい。
【0170】
本態様によれば、昇降装置8、408によって重量物12を予め下方に移動させ、構造物10の重心Mを下げておくことができる。
構造物10が例えば風車である場合、重量物12として例えば風車のシャフトが内蔵されたナセル等が挙げられる。
【0171】
(7)第7の態様の揚重システム100、200、300、400、400aは、(5)又は(6)の揚重システム100、200、300、400、400aであって、前記構造物10は、水上構造物10aであり、水面上を移動し、前記揚重装置2、402を下方から支持するとともに、前記構造物10を積載可能な浮体1を備えてもよい。
【0172】
本態様によれば、構造物10が水上構造物10aである場合、浮体1を移動させることにより構造物10に対して適切な位置に揚重装置2、402を配置することができる。
浮体1の例として、例えば台船1a、1b等が挙げられる。
【0173】
(8)第8の態様の解体方法は、(1)の揚重補助装置3、203、403を用いた、前記構造物10の解体方法であって、前記ウェイト7を下方に移動させるウェイト移動ステップS2と、前記ウェイト移動ステップS2の後に、前記揚重装置2、402によって前記吊り架け部6を吊り架ける吊り架けステップS4と、前記吊り架けステップS4の後に、前記揚重装置2、402によって前記構造物10を傾斜させて前記構造物10の姿勢を変更する姿勢変更ステップS6と、前記姿勢変更ステップS6の後に、前記構造物10を解体する解体ステップS7と、を含む。
【0174】
本態様によれば、ウェイト7を下方に移動させることで構造物10の重心Mを下方に移動させることができる。これにより、構造物10の重心Mを吊り架け部6よりも下方に移動させてから構造物10を揚重装置2、402によって吊り架け部6を吊り架け、構造物10を揚重することができる。よって、構造物10の解体時に、構造物10の揚重や姿勢変更を安定的に行うことができる。
【0175】
(9)第9の態様の解体方法は、(8)の解体方法であって、前記吊り架け部6は、前記固定部4に対して上下方向D1に相対移動可能とされ、前記吊り架けステップS4の前に、前記吊り架け部6を前記構造物10の重心Mよりも高く移動させる吊り架け部移動ステップS3をさらに含んでもよい。
【0176】
本態様によれば、吊り架け部6を構造物10の重心Mよりも高く移動させた後に、揚重装置2、402によって吊り架け部6を吊り架け、構造物10を揚重することができる。よって、構造物10の揚重をより一層安定的に行うことができる。
【0177】
(10)第10の態様の解体方法は、(8)又は(9)の解体方法であって、前記揚重補助装置203、403は、前記固定部4に接続されて、前記固定部4に対して上下方向D1に相対移動可能とされ、前記構造物10に対して浮力を発生させる浮力装置16をさらに備え、前記吊り架けステップS4の前に、前記浮力装置による浮力を調整する浮力調整ステップS8をさらに含んでもよい。
【0178】
例えば構造物10が水上構造物10aである場合、浮力装置16による浮力を調整することで、構造物10の姿勢を調整することができる。
【0179】
(11)第11の態様の解体方法は、(8)から(10)のいずれか1つの解体方法であって、前記固定部4は、上下方向D1に延びて前記吊り架け部6及び前記ウェイト7を上下方向D1に案内するガイド部4aと、前記ガイド部4aを支持するとともに、前記構造物10に取り付けられる取付部30と、を有し、前記ウェイト移動ステップS2の前に、前記取付部30によって前記固定部4を前記構造物10に固定する固定ステップS1をさらに含んでもよい。
【0180】
本態様によれば、固定部4を構造物10に対して任意の高さに配置した後、取付部30が構造物10に取り付けられる。これにより、固定部4を任意の高さに設置することができる。
【0181】
(12)第12の態様の解体方法は、(8)から(11)のいずれか1つの解体方法であって、前記構造物10は、上部に重量物12を有し、前記固定部4に対して上下方向D1に相対移動可能とされる昇降台62と、前記昇降台62に取り付けられて前記昇降台62に対する姿勢を変更可能であるとともに、前記重量物12を把持可能な把持部64とを有する昇降装置8、408をさらに用いた解体方法であって、前記吊り架けステップS4の前に、前記重量物12を下方に移動させる重量物移動ステップS9を更に含み、重量物移動ステップS9は、前記昇降装置8、408が前記把持部64によって前記重量物12を把持する把持ステップS91と、前記把持ステップS91の後に、前記昇降装置8、408が前記把持部64によって前記重量物12の姿勢を変更する重量物姿勢変更ステップS92と、前記重量物姿勢変更ステップS92の後に、前記昇降装置8、408が前記重量物12を下降させる下降ステップS93と、を含んでもよい。
【0182】
本態様によれば、構造物10を解体する際、構造物10の姿勢変更を行う前に、昇降装置8、408によって重量物12を予め下方に移動させ、構造物10の重心Mを下げておくことができる。
【0183】
(13)第13の態様の設置方法は、(1)の揚重補助装置3、203、403を用いた、前記構造物10の設置方法であって、前記ウェイト7を前記構造物10の延在方向で前記構造物10の脚部14側に移動させるウェイト移動ステップS2と、前記ウェイト移動ステップS2の後に、前記揚重装置2、402によって前記吊り架け部6を吊り架ける吊り架けステップS4と、前記吊り架けステップS4の後に、前記揚重装置によって前記構造物10の姿勢を上下方向D1に延びるように変更する姿勢変更ステップS6と、前記姿勢変更ステップS6の後に、上下方向D1に延びた姿勢を維持して前記構造物10を設置する設置ステップS11と、を含む。
【0184】
本態様によれば、ウェイト7を脚部14側に移動させることで構造物10の重心Mを脚部14側に移動させることができる。これにより、構造物10の重心Mを吊り架け部6よりも脚部14側に移動させてから構造物10を揚重装置2、402によって吊り架け部6を吊り架け、構造物10を揚重することができる。よって、構造物10の設置時に、構造物10の揚重や姿勢変更を安定的に行うことができる。
【符号の説明】
【0185】
1…浮体、1a…台船、1b…台船、1c…凹部、1d…緩衝材、2…揚重装置、3…揚重補助装置、4…固定部、4a…ガイド部、5…台座、5a…扉部、6…吊り架け部、7…ウェイト、7a…カウンターウェイト、8…昇降装置、10…構造物、10a…水上構造物、10b…洋上構造物、11…タワー、12…重量物、13…タワー本体、14…脚部、15…切断位置、16…浮力装置、16a…バラストタンク、17…支持機構、20…クレーン、21…車両部、22…ムーブ、23…ワイヤロープ、24…吊り具、30…取付部、31…外殻フレーム、31a…扉部、32…補強アーム、33…隔壁、40…固定機構、40a…固定機構、40b…固定機構、41…内側プレート、42…爪、43…押圧機構、44…取付面、45…油圧機構、46…固定ピース、46a…孔、47…送り出し装置、48…固定シャフト、48a…孔、50…回動機構、51…第1支持部材、52…支持軸、52a…支点、53…第2支持部材、53a…屈曲部、54…挿通孔、60…ジャッキシステム、61…昇降装置本体、62…昇降台、63…回動部、64…把持部、65…滑車、66…昇降ワイヤ、67…ジャッキ、68…保持機構、68a…第1保持部材、68b…第2保持部材、68c…回転軸、69…支持輪、70…ウィンチ、100…揚重システム、200…揚重システム、203…揚重補助装置、300…揚重システム、400…揚重システム、400a…揚重システム、402…揚重装置、403…揚重補助装置、408…昇降装置、420…やぐら、421…やぐら本体、422…支持バー、423…接続部、424…ワイヤロープ、425…姿勢変更ワイヤ、426…姿勢変更ウィンチ、D1…上下方向、M…重心、O…軸線、P11…初期位置、P12…第2位置、P13…第3位置、P21…初期位置、P22…第2位置、P31…初期位置、P32…第2位置、P41…初期位置、P42…第2位置、P3…第3位置、S1…固定ステップ、S2…ウェイト移動ステップ、S3…吊り架け部移動ステップ、S4…吊り架けステップ、S5…切断ステップ、S6…姿勢変更ステップ、S7…解体ステップ、S8…浮力調整ステップ、S9…重量物移動ステップ、S10…昇降装置設置ステップ、S11…設置ステップ、S91…把持ステップ、S92…重量物姿勢変更ステップ、S93…下降ステップ、S94…重量物解体ステップ、S95…上昇ステップ、S96…重量物設置ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33