(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130049
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】情報処理装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 13/04 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G05B13/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039540
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大串 孝宏
【テーマコード(参考)】
5H004
【Fターム(参考)】
5H004GA30
5H004GB01
5H004HA01
5H004HB01
5H004KB01
5H004KB02
5H004KB04
5H004KB06
(57)【要約】
【課題】制御対象の制御モデルの容易な作成を可能にする。
【解決手段】情報処理装置10は、第2生産ライン55Bの対象を制御するための制御モデルf2(x)を、他の生産ライン55Aの制御対象を制御するための制御モデルf1(x)と、両方の生産ラインの各制御対象のCADデータから生成されたCADモデルg1(x)およびCADモデルg2(x)とに基づき生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産ラインに備えられる対象の制御アルゴリズムを生成する情報処理装置であって、
前記対象は、前記制御アルゴリズムによって算出される操作量に従って要素の挙動を変化させる物理量を出力し、
前記生産ラインは、第1の要素を生産する第1生産ラインと第2の要素を生産する第2生産ラインとを含み、
前記第1生産ラインは、前記第1の要素の挙動を変化させる物理量を出力する第1の対象を備え、
前記第2生産ラインは、前記第2の要素の挙動を変化させる物理量を出力する第2の対象を備え、
前記情報処理装置は、
前記第1の対象が出力する物理量を観測した観測量を入力として、前記第1の要素の挙動を表す制御量を算出する第1制御モデルと、前記第1の対象の属性を示すCADデータに基づくモデルであって、前記観測量を入力として、前記第1の要素の前記制御量を算出する第1CADモデルとの間の、制御量の相対的関係を表すモデルを生成する第1生成部と、
前記第2の対象の属性を示すCADデータに基づくCADモデルであって、前記観測量を入力として、前記第2の要素の前記制御量を算出する第2CADモデルを生成する第2生成部と、
前記第2CADモデルと前記相対的関係を表すモデルとに基づき、前記第2の対象が出力する物理量を観測した観測量を入力として、前記第2の要素の前記制御量を算出する第2制御モデルを生成する第3生成部と、
前記第2制御モデルを含む制御アルゴリズムであって、当該第2制御モデルにより算出された制御量を入力として、前記第2の対象の操作量を算出する制御アルゴリズムを生成する第4生成部と、を備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記物理量は熱を含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第1の対象および第2の対象は、それぞれ、前記第1の要素を加熱する加熱炉および前記第2の要素を加熱する加熱炉を含む、請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記相対的関係は、前記第1制御モデルが算出する制御量と、前記第1CADモデルが算出する制御量との間の相対的な差を含む、請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記相対的関係は、前記第1制御モデルが算出する制御量と、前記第1CADモデルが算出する制御量との間の相対的な比を含む、請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記第1の対象および前記第2の対象のCADデータが示す前記属性は、それぞれ、前記第1の対象および前記第2の対象の形状を含む、請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記第2制御モデルを含む制御アルゴリズムは、前記第2制御モデルが算出する制御量と基準の間の偏差に基づき前記操作量を生成するアルゴリズムを含む、請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記第2CADモデルを、前記第1の対象のCADデータと前記第2の対象のCADデーとの間の、前記属性の差に基づき正規化する正規化部をさらに備える、請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記第3生成部は、
前記第2CADモデルと前記相対的関係を表すモデルとに基づき、前記第2の対象が出力する前記物理量を観測した観測量を入力として、前記第2の要素の前記制御量を算出する第2制御モデルを解析的に生成する、請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記情報処理装置は、
前記第1制御モデルを生成する第5生成部と、
前記第1CADモデルを生成する第6生成部と、をさらに備え、
前記第5生成部は、
前記物理量に応じた前記第1の要素の挙動を実測した実測量を入力として、前記第1の要素の制御量を算出する第1制御モデルを生成し、
前記第6生成部は、
前記物理量に応じた前記第1の要素の挙動を実測した実測量を入力として、前記第1の要素の制御量を算出する第1CADモデルを生成する、請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項11】
プロセッサが実施する方法であって、
前記方法は、生産ラインに備えられる対象の制御アルゴリズムを生成する方法あり、
前記対象は、前記制御アルゴリズムによって算出される操作量に従って要素の挙動を変化させる物理量を出力し、
前記生産ラインは、第1の要素を生産する第1生産ラインと第2の要素を生産する第2生産ラインとを含み、
前記第1生産ラインは、前記第1の要素の挙動を変化させる物理量を出力する第1の対象を備え、
前記第2生産ラインは、前記第2の要素の挙動を変化させる物理量を出力する第2の対象を備え、
前記方法は、
前記第1の対象が出力する物理量を観測した観測量を入力として、前記第1の要素の挙動を表す制御量を算出する第1制御モデルと、前記第1の対象の属性を示すCADデータに基づくモデルであって、前記観測量を入力として、前記第1の要素の前記制御量を算出する第1CADモデルとの間の、制御量の相対的関係を表すモデルを生成すること、
前記第2の対象の属性を示すCADデータに基づくCADモデルであって、前記観測量を入力として、前記第2の要素の前記制御量を算出する第2CADモデルを生成すること、
前記第2CADモデルと前記相対的関係を表すモデルとに基づき、前記第2の対象が出力する物理量を観測した観測量を入力として、前記第2の要素の前記制御量を算出する第2制御モデルを生成すること、および、
前記第2制御モデルを含む制御アルゴリズムであって、当該第2制御モデルにより算出された制御量を入力として、前記第2の対象の操作量を算出する制御アルゴリズムを生成すること、を備える、方法。
【請求項12】
プロセッサによって実行されると、当該プロセッサに方法を実行させる命令を有したプログラムであって、
前記方法は、生産ラインに備えられる対象の制御アルゴリズムを生成する方法あり、
前記対象は、前記制御アルゴリズムによって算出される操作量に従って要素の挙動を変化させる物理量を出力し、
前記生産ラインは、第1の要素を生産する第1生産ラインと第2の要素を生産する第2生産ラインとを含み、
前記第1生産ラインは、前記第1の要素の挙動を変化させる物理量を出力する第1の対象を備え、
前記第2生産ラインは、前記第2の要素の挙動を変化させる物理量を出力する第2の対象を備え、
前記方法は、
前記第1の対象が出力する物理量を観測した観測量を入力として、前記第1の要素の挙動を表す制御量を算出する第1制御モデルと、前記第1の対象の属性を示すCADデータに基づくモデルであって、前記観測量を入力として、前記第1の要素の前記制御量を算出する第1CADモデルとの間の、制御量の相対的関係を表すモデルを生成すること、
前記第2の対象の属性を示すCADデータに基づくCADモデルであって、前記観測量を入力として、前記第2の要素の前記制御量を算出する第2CADモデルを生成すること、
前記第2CADモデルと前記相対的関係を表すモデルとに基づき、前記第2の対象が出力する物理量を観測した観測量を入力として、前記第2の要素の前記制御量を算出する第2制御モデルを生成すること、および、
前記第2制御モデルを含む制御アルゴリズムであって、当該第2制御モデルにより算出された制御量を入力として、前記第2の対象の操作量を算出する制御アルゴリズムを生成すること、を備える、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生産ラインのFA(Factory Automation)の制御モデルの設計技術に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な生産ラインにおいて、生産工程を自動化するためのFAシステムが普及している。FAシステムは生産ラインに備えられる制御対象の機器と、制御プログラムを実行するPLC(Programmable Logic Controller)等の制御装置を備える。
【0003】
制御プログラムの開発を支援するため、設計者にシミュレータが提供される。シミュレータは、制御対象の制御プログラムを実行し、その実行結果を用いて当該制御対象の挙動を算出するためのモデルを実行する。シミュレーションを支援するための技術に関し、例えば特開2016-42378号公報(特許文献1)は、視覚センサを含めた統合的なシミュレーションを実現することが可能なシミュレーション装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生産ラインの制御システムの設計を効率化することが望まれる。例えば、1の生産ラインにおける制御対象の制御モデルを、他の生産ラインの同種の制御対象の制御モデルにも利用する、いわゆる制御モデルの横展開を実施したいとの要望がある。特許文献1は、このような制御モデルの横展開に関する技術は開示しない。
【0006】
本開示の目的の1つは、制御対象の制御モデルの容易な作成を可能にする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る情報処理装置は、生産ラインに備えられる対象の制御アルゴリズムを生成する情報処理装置であって、対象は、制御アルゴリズムによって算出される操作量に従って要素の挙動を変化させる物理量を出力する。生産ラインは、第1の要素を生産する第1生産ラインと第2の要素を生産する第2生産ラインとを含む。第1生産ラインは、第1の要素の挙動を変化させる物理量を出力する第1の対象を備え、第2生産ラインは、第2の要素の挙動を変化させる物理量を出力する第2の対象を備える。
【0008】
情報処理装置は、第1の対象が出力する物理量を観測した観測量を入力として、第1の要素の挙動を表す制御量を算出する第1制御モデルと、第1の対象の属性を示すCADデータに基づくモデルであって、観測量を入力として、第1の要素の制御量を算出する第1CADモデルとの間の、制御量の相対的関係を表すモデルを生成する第1生成部と、第2の対象の属性を示すCADデータに基づくCADモデルであって、観測量を入力として、第2の要素の制御量を算出する第2CADモデルを生成する第2生成部と、第2CADモデルと相対的関係を表すモデルとに基づき、第2の対象が出力する物理量を観測した観測量を入力として、第2の要素の制御量を算出する第2制御モデルを生成する第3生成部と、第2制御モデルを含む制御アルゴリズムであって、当該第2制御モデルにより算出された制御量を入力として、第2の対象の操作量を算出する制御アルゴリズムを生成する第4生成部と、を備える。
【0009】
上述の開示によれば、第2の生産ラインの第2の対象の制御モデルを、第1の生産ラインの第1の対象の制御モデルと両方の生産ラインのCADモデルを基に生成することができるので、制御モデルを容易に生成することが可能になる。
【0010】
上述の開示において、物理量は熱を含む。この開示によれば、制御の対象に、操作量に応じて発熱する対象を含めることができる。
【0011】
上述の開示において、第1の対象および第2の対象は、それぞれ、第1の要素を加熱する加熱炉および第2の要素を加熱する加熱炉を含む。この開示によれば、制御の対象に加熱炉を含めることができる。
【0012】
上述の開示において、相対的関係は、第1制御モデルが算出する制御量と、第1CADモデルが算出する制御量との間の相対的な差を含む。
【0013】
この開示によれば、第2制御モデルを生成するために用いる相対的関係モデルに、第1制御モデルが算出する制御量と、第1CADモデルが算出する制御量との間の相対的な差を表すモデルを含めることができる。
【0014】
上述の開示において、相対的関係は、第1制御モデルが算出する制御量と、第1CADモデルが算出する制御量との間の相対的な比を含む。
【0015】
この開示によれば、第2制御モデルを生成するために用いる相対的関係モデルに、第1制御モデルが算出する制御量と、第1CADモデルが算出する制御量との間の相対的な比を表すモデルを含めることができる。
【0016】
上述の開示において、第1の対象および第2の対象のCADデータが示す属性は、それぞれ、第1の対象および第2の対象の形状を含む。この開示によれば、CADモデルに、CADデータが示す制御対象の形状に基づくモデルを含めることができる。
【0017】
上述の開示において、第2制御モデルを含む制御アルゴリズムは、第2制御モデルが算出する制御量と基準の間の偏差に基づき操作量を生成するアルゴリズムを含む。
【0018】
上述の開示によれば、制御アルゴリズムに、制御モデルが算出する制御量と基準の間の偏差に基づく操作量、例えば偏差を小さくするような操作量を生成するアルゴリズムを含めることができる。
【0019】
上述の開示において、情報処理装置は、第2CADモデルを、第1の対象のCADデータと第2の対象のCADデータとの間の、属性の差に基づき正規化する正規化部をさらに備える。
【0020】
上述の開示によれば、第2CADモデルを、第1CADデータと第2CADデータとの間における属性の差に基づき正規化できる。
【0021】
上述の開示において、第3生成部は、第2CADモデルと相対的関係を表すモデルとに基づき、第2の対象が出力する物理量のを観測した観測量を入力として、第2の要素の制御量を算出する第2制御モデルを解析的に生成する。
【0022】
上述の開示によれば、第2制御モデルを解析的に生成することができる。
上述の開示において、情報処理装置は、第1制御モデルを生成する第5生成部と、第1CADモデルを生成する第6生成部と、をさらに備える。第5生成部は、上記の物理量に応じた第1の要素の挙動を実測した実測量を入力として、第1の要素の制御量を算出する第1制御モデルを生成する。第6生成部は、上記の物理量に応じた第1の要素の挙動を実測した実測量を入力として、第1の要素の制御量を算出する第1CADモデルを生成する。
【0023】
上述の開示によれば、第1の対象が出力する物理量に応じた第1の要素の挙動が実測されて、この実測で得られた実測量を入力として、第1の要素の制御量を算出する制御モデルを、すなわち第1制御モデルを生成することができる。また、第1の対象の属性を示すCADデータに基づく第CADモデルであって、当該実測量を入力として、第1の要素の制御量を算出するCADモデルを、すなわち第1CADモデルを生成することができる。
【0024】
この開示に係る方法は、プロセッサが実施する方法である。方法は、生産ラインに備えられる対象の制御アルゴリズムを生成する方法あり、対象は、制御アルゴリズムによって算出される操作量に従って要素の挙動を変化させる物理量を出力する。この生産ラインは、第1の要素を生産する第1生産ラインと第2の要素を生産する第2生産ラインとを含み、第1生産ラインは、第1の要素の挙動を変化させる物理量を出力する第1の対象を備え、第2生産ラインは、第2の要素の挙動を変化させる物理量を出力する第2の対象を備える。
【0025】
上記の方法は、第1の対象が出力する物理量を観測した観測量を入力として、第1の要素の挙動を表す制御量を算出する第1制御モデルと、第1の対象の属性を示すCADデータに基づくモデルであって、観測量を入力として、第1の要素の制御量を算出する第1CADモデルとの間の、制御量の相対的関係を表すモデルを生成すること、第2の対象の属性を示すCADデータに基づくCADモデルであって、観測量を入力として、第2の要素の制御量を算出する第2CADモデルを生成すること、第2CADモデルと相対的関係を表すモデルとに基づき、第2の対象が出力する物理量を観測した観測量を入力として、第2の要素の制御量を算出する第2制御モデルを生成すること、および、第2制御モデルを含む制御アルゴリズムであって、当該第2制御モデルにより算出された制御量を入力として、第2の対象の操作量を算出する制御アルゴリズムを生成すること、を備える。
【0026】
この開示に係るプログラムは、プロセッサによって実行されると、当該プロセッサに方法を実行させる命令を有したプログラムである。方法は、生産ラインに備えられる対象の制御アルゴリズムを生成する方法である。対象は、制御アルゴリズムによって算出される操作量に従って要素の挙動を変化させる物理量を出力する。この生産ラインは、第1の要素を生産する第1生産ラインと第2の要素を生産する第2生産ラインとを含み、第1生産ラインは、第1の要素の挙動を変化させる物理量を出力する第1の対象を備え、第2生産ラインは、第2の要素の挙動を変化させる物理量を出力する第2の対象を備える。
【0027】
上記の方法は、第1の対象が出力する物理量を観測した観測量を入力として、第1の要素の挙動を表す制御量を算出する第1制御モデルと、第1の対象の属性を示すCADデータに基づくモデルであって、観測量を入力として、第1の要素の制御量を算出する第1CADモデルとの間の、制御量の相対的関係を表すモデルを生成すること、第2の対象の属性を示すCADデータに基づくCADモデルであって、観測量を入力として、第2の要素の制御量を算出する第2CADモデルを生成すること、第2CADモデルと相対的関係を表すモデルとに基づき、第2の対象が出力する物理量を観測した観測量を入力として、第2の要素の制御量を算出する第2制御モデルを生成すること、および、第2制御モデルを含む制御アルゴリズムであって、当該第2制御モデルにより算出された制御量を入力として、第2の対象の操作量を算出する制御アルゴリズムを生成すること、を備える。
【発明の効果】
【0028】
本開示によれば、制御対象の制御モデルを容易に作成できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本実施の形態に係る情報処理装置10の適用例を模式的に示す図である。
【
図2】本実施の形態に係る加熱システムの構成の一例を模式的に示す図である。
【
図3】
図2の構成をデータの流れと関連付けながら簡略化して示すブロック図である。
【
図4】本実施の形態に係る制御モデルf(x)とCADモデルg(x)との対比を模式的に示す図である。
【
図5】本実施の形態に係る情報処理装置10の構成の一例を示す模式図である。
【
図6】本実施の形態に係る処理のフローチャートである。
【
図7】本実施の形態に係るリファインメント処理を説明する図である。
【
図8】本実施の形態に係るリファインメント処理を説明する図である。
【
図9】本実施の形態に係る正規化を説明する図である。
【
図10】本実施の形態に係る正規化を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しつつ、本発明に従う実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0031】
<A.適用例>
本発明が適用される場面について説明する。本実施の形態に従う情報処理装置10は、ユーザに、生産ラインの対象を制御する制御アルゴリズムの設計を支援する環境を提供する。生産ラインの「対象」は、生産ラインに設けられる機器または設備であって、典型的には、アクチュエータ等の駆動機器を含む。「制御アルゴリズム」は、制御の対象に出力する操作量を生成する制御装置が、操作量を生成するための手順(プロセス)を示す。「制御アルゴリズム」は、コンピュータにより実行されると当該プロセスをコンピュータに実施させる命令を有した制御プログラム、または、FPGA(Field Programmable Gate Array)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)を含むハードウェア回路によって実現され得る。
【0032】
図1は、本実施の形態に係る情報処理装置10の適用例を模式的に示す図である。情報処理装置10は、生産ラインに備えられる対象を制御する制御アルゴリズムを生成し、制御アルゴリズムの設計について設計者を支援する。
【0033】
本実施の形態では「対象」の種類としてヒータを例示する。ヒータは、制御アルゴリズムによって算出される操作量に従って要素の挙動(制御量)を変化させる物理量である熱を出力する。ヒータは「操作量」である当該ヒータに供給される電力量に応じて熱を出力する。このような熱の出力は、熱の放射または輻射の概念を含む。「要素」は、操作量に応じたヒータからの発熱によって加熱されて、当該操作量に応じた制御量である挙動を示す。「要素」は、典型的にはワークを示し、ワークは生産ラインにおいて生産される完成品、完成品を構成する部品、完成品または部品を構成する材料を含む。
【0034】
本実施の形態では、制御モデルは、ヒータが出力する熱量の観測可能な量を示す観測量を入力として、要素の挙動を表す制御量を算出(推定)する。また、本実施の形態では、対象のCAD(Computer Aided Design)データに基づくCADモデルは、上記の観測量を入力として、要素の挙動を示す制御量を算出(推定)する。CADデータは、対象の属性を表す属性データを含む。このような属性データは、要素の熱応答の挙動または熱拡散を算出するための属性を含む。このような属性データは、例えば対象の長さ、厚みおよび角度を含むサイズで定義される幾何学的な形を表す形状データと、要素(ワーク)の対象(ヒータ)内の位置またはヒータが有する加熱炉と要素の相対位置等を示す位置データを含む。
【0035】
「制御量」である要素の挙動は、時間経過に依存した挙動であって、ヒータからの発熱量に応じた熱応答の挙動を示す。熱応答の挙動は、要素の温度変化、要素の熱膨張または熱応力の変化等を含む。本実施の形態では、要素の熱応答の挙動を、例えば要素の中心部の温度変化として扱う。すなわち、本実施の形態では、操作量(ヒータに供給される電力量)に応じた熱応答の挙動を示す制御量(観測量)は、ワークの中心部の温度変化を示すが、他の熱応答の挙動についても、本実施の形態のモデル生成の処理を同様に適用することができる。
【0036】
制御モデルおよびCADモデルは、要素の熱応答の挙動を算出するための関数であって、例えば熱伝達特性を表す関数(以下、熱伝達関数と称する)を用いて表される。制御モデルを生成するとは、制御モデルの熱伝達関数を構成するパラメータの値を決定することを示す。
【0037】
このように、本実施の形態では、生産ラインの対象についての観測量を入力として、要素の挙動(制御量)を算出するモデルであって、異なるモデルある制御モデルおよびCADモデルが提供される。
【0038】
図1は、生産ライン間で制御モデルの横展開を実施するシーンを模式的に示す。横展開では、情報処理装置10は、管理部28として、既に設計された第1生産ライン55Aのヒータ2AのCADモデルg1(x)、第1生産ライン55Aの制御アルゴリズム40Aを構成する制御モデルf1(x)および他の第2生産ライン55Bのヒータ2AのCADモデルg2(x)を利用して、他の第2生産ライン55Bのヒータ2Aの制御アルゴリズム40Bを構成する制御モデルf2(x)を生成する。管理部28は、このような制御モデルの横展開をサポートするツールとして設計者に提供される。
【0039】
制御モデルf1(x)、制御モデルf2(x)、CADモデルg1(x)およびCADモデルg2(x)は、それぞれ、時刻ti(ただし、i=1,2,3,・・・、n)毎に検出される時系列のデータである温度xi(ただし、i=1,2,3,・・・、n)を入力として、要素の挙動である制御量を算出する。本実施の形態では、時系列データである温度xiを簡単化のために温度xと示す。以下、制御モデルf1(x)および制御モデルf2(x)に共通した説明では制御モデルf(x)と総称し、CADモデルg1(x)およびCADモデルg2(x)に共通した説明ではCADモデルg(x)と総称する。
【0040】
第1生産ライン55Aは、PLC51Aと、温度調節器7Aと、斜線の加熱炉内の加熱素子3A上のワーク60Aを加熱するヒータ2Aとを有する。第2生産ライン55Bは、PLC51Bと、温度調節器7Bと、斜線の加熱炉内の加熱素子3B上のワーク60Bを加熱するヒータ2Bとを有する。以下、第1生産ライン55Aと第2生産ライン55Bに共通する説明では生産ライン55と総称し、PLC51Aと51Bに共通する説明ではPLC51と総称し、温度調節器7Aと7Bに共通する説明では温度調節器7と総称する。ヒータ2Aと2Bに共通する説明ではヒータ2と総称し、加熱素子3Aと3Bに共通する説明では加熱素子3と総称し、ワーク60Aと60Bに共通する説明ではワーク60と総称する。制御アルゴリズム40Aと40Bに共通する説明では制御アルゴリズム40と総称する。
【0041】
本実施の形態では、ヒータ2の制御アルゴリズム40は、FB(フィードバック)制御系が採用される。このようなFB制御系の制御アルゴリズムは、PLC51に実装される制御モデルf(x)と温度調節器7において実装されるPID制御系を含む。
【0042】
FB制御系では、加熱素子3が通電されたことによる出力される物理量である発熱の温度が、
図2に示す温度センサ62によって測定され、測定された温度x(観測量:Process Value;以下「PV2」とも記す。)が出力される。温度調節器7は、温度センサ62が測定した温度xを表す観測量が、基準となる設定値(設定値:Setting Value;以下「SV」とも記す。)と一致するように、操作量(Manipulated Value;以下「MV」とも記す。)を出力する。操作量MVに従って発熱する加熱素子3によって加熱されるワーク60の中心温度が制御される。この中心温度は、制御したい制御量(制御量:Controlled Value;以下「CV」とも記す)を示す。なお、温度センサは、加熱炉について複数箇所に取付けられてもよい。
【0043】
情報処理装置10は、設計者から情報処理装置10に対する操作を受付けると、操作が示す指示に基づき、管理部28として、上記に述べた横展開を実施する。ここでは、情報処理装置10は、稼働中の生産ライン55Aのヒータ2Aの制御モデルf1(x)を同種のヒータ2Bの制御モデルに適用する横展開を実施する。横展開によって、設計段階にある生産ライン55Bのヒータ2Bの制御モデルf2(x)が生成される。
【0044】
より具体的には、情報処理装置10の管理部28は、モデル生成部281と、第1生成部282と、第2生成部283と、第3生成部284と、第4生成部285とを有する。さらに、管理部28は、リファインメント部288および正規化部289を有する。管理部28のこれら各部は、ストレージ111の管理用データ135をアクセス(読み書き)して処理を実施する。
【0045】
ストレージ111には、管理用データ135を含む情報が格納される。管理用データ135は、第1制御モデルf1(x)、第2制御モデルf2(x)、第1CADモデルg1(x)、第2CADモデルg2(x)、後述する相対的関係モデルh1(x)、第1制御アルゴリズム40A、第2制御アルゴリズム40B、第1生産ライン55Aから収集した温度xを表す観測量PV、ヒータ2Aの第1CADデータ17A、およびヒータ2Bの第2CADデータ17Bを含む情報が格納される。第1CADデータ17Aは、ヒータ2Aの形状データを有する属性18Aを含み、第2CADデータ17Bはヒータ2Bの形状データを有する属性18Bを含む。属性18Aおよび属性18Bが示す形状データは、それぞれ、ヒータ2Aおよびヒータ2Bの加熱炉の形状を表す。管理用データ135の観測量PVは、後述する実測量に対応した観測量PVを含む。
【0046】
モデル生成部281は、第1制御モデルf1(x)を生成する第1モデル生成部286と、第1CADモデルg1(x)を生成する第1CADモデル生成部287を含む。
図1では、第1制御モデルf1(x)と第1CADモデルg1(x)は、それぞれ、生産ライン55Aが設計されたときに第1モデル生成部286と第1CADモデル生成部287によって生成されてストレージ111に格納される。
【0047】
情報処理装置10は、第1生成部282として、相対的関係モデルh1(x)を算出し、ストレージ111に格納する。より具体的には、情報処理装置10は、生産ライン55Aにおける観測量PVを入力としてストレージ111の第1制御モデルf1(x)によって算出されたワーク60Aの制御量CVと、当該観測量PVを入力としてストレージ111の第1CADモデルg1(x)によって算出されたワーク60Aの制御量CVとの間の相対的関係を表す相対的関係モデルh1(x)を算出する。
【0048】
例えば、相対的関係モデルh1(x)は実機にインストルールされた第1制御モデルf1(x)によって導出される制御量CVと、ヒータ2Aの第1CADモデルg1(x)を用いて算出された制御量CVとの両者の間の相対的な関係を示す。
【0049】
本実施の形態では、相対的関係モデルh1(x)は両者の差を用いて、h1(x)=f1(x)-g1(x)として示される。この相対的関係モデルh1(x)が示す相対的関係は当該両者の差に限定されない。例えば、相対的関係は、h1(x)=f1(x)/g1(x)で示されるような、当該両者の比であってもよい。
【0050】
情報処理装置10は、第2生成部283として、第2制御モデルf2(x)を生成する。より具体的には、情報処理装置10は、第2CADデータ17Bに基づくCADモデルであって、観測量PVを入力として、ワーク60Bの制御量CVを算出する第2CADモデルg2(x)を生成する。
【0051】
情報処理装置10は、第3生成部284として、第2CADモデルg2(x)と相対的関係モデルh1(x)とに基づき、ヒータ2Bが出力する熱量に応じた観測量(ヒータ2Bの温度)を入力として、ワーク60Bの制御量を算出する第2制御モデルf2(x)を生成する。
【0052】
情報処理装置10は、例えば制御モデルf2(x)を、f2(x)=g2(x)+h1(x)の式に従い生成する。より具体的には、ヒータ2Bの第2CADデータ17Bの属性18B(形状データ)はヒータ2AのCADデータ17Aの属性18A(形状データ)と共通する場合、ヒータ2Bの実機の制御モデルf2(x)とヒータ2Bの第2CADモデルg2(x)との間における制御量CVの相対的関係モデルh2(x)(h2(x)=f2(x)-g2(x))は、相対的関係モデルh1(x)に近似する。このような近似関係に基づき、横展開では、制御モデルf2(x)を、第2CADモデルg2(x)と相対的関係モデルh1(x)とに基づき、f2(x)=g2(x)+h1(x)の式に従い生成される。このような制御モデルf2(x)を生成することは、制御モデルf2(x)が示す熱の伝達関数を構成するパラメータの値を決定することを示す。限定されないが当該伝達関数はラプラス変換の演算式を含むとともに、パラメータの種類として時定数と利得を含む。
【0053】
情報処理装置10は、第4生成部285として、第2制御モデルf2(x)を含む制御アルゴリズム40Bを生成する。この制御アルゴリズム40は、第2制御モデルf2(x)により算出された制御量CVを入力として、ヒータ2Bの操作量MVを算出するアルゴリズムに相当する。
【0054】
これにより、情報処理装置10は、横展開において、第1生産ライン55Aのヒータ2Aのモデル(第1制御モデルf1(x)および第1CADモデルg1(x))と第2生産ライン55Bのヒータ2Bの第2CADモデルg2(x)を用いて、解析的にヒータ2Bの制御モデルf2(x)を生成する。なお、図面では、第1制御モデルf1(x)、第2制御モデルf2(x)および制御モデルf(x)を、それぞれ、符号f1、f2およびfで示す。また、第1CADモデルg1(x)、第2CADモデルg2(x)およびCADモデルg(x)を、それぞれ、符号g1、g2およびgで示す。また、図面では相対的関係モデルh1(x)を符号h1で示す。以下、この実施の形態のより具体的な応用例について説明する。
【0055】
<B.制御システムの構成>
図2は、本実施の形態に係る加熱システムの構成の一例を模式的に示す図である。
図3は、
図2の構成を、データの流れと関連付けながら簡略化して示すブロック図である。生産ライン55のFAによって実現される制御システムの一例として、ワーク60を加熱する加熱システムを示す。
図2の加熱システムは、PID制御系を含むFB制御系を採用する。本明細書において、「PID制御系」は、比例動作(Proportional Operation:P動作)を行なう比例要素、積分動作(Integral Operation:I動作)を行なう積分要素、および微分動作(Derivative Operation:D動作)を行なう微分要素のうち、少なくとも一つの要素を含む制御系を総称する用語である。すなわち、本明細書において、PID制御系は、比例要素、積分要素および微分要素のいずれをも含む制御系に加えて、一部の制御要素、例えば比例要素および積分要素のみを含む制御系(PI制御系)なども包含する概念である。
【0056】
一例として、
図2は、温度調節器7としては、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、半導体ウエハに相当するワーク60に各種の機能膜を作成するCVD装置において、CVD処理中の半導体ウエハの温度を目標温度に加熱する加熱素子3の温度制御に用いられる温度調節器を、例として挙げることができる。
【0057】
図2を参照して、加熱システムは、加熱炉内でワーク60を加熱するために、温度調節器7と、PLC51と、ヒータ2と、温度センサ62とを備える。制御の対象であるヒータは、SSR(Solid State Relay、ソリッドステートリレー)4と、SSR4を介して電源5から電力を供給される加熱素子3とを含む。温度センサ62は、例えば加熱炉の壁面に取付けられて加熱炉内の温度を測定する。加熱素子3は、典型的には抵抗体であり、供給される電力を熱エネルギーに変換する。温度センサ62は、熱電対または抵抗測温体(白金抵抗温度計)を含む。ここでは,PLC51と温度調節器7を別体としたが、両者は一体的に構成されてもよい。
【0058】
図2では、加熱素子3が通電されたことによる発熱に伴う加熱炉内の温度が温度センサ62によって測定されて、PLC51はその測定温度である観測量PVに基づき制御モデルfxを実行して制御量CVを算出(推定)する。温度調節器7は、PID制御系に係る演算を実施し、PLC51からの制御量CVを基準値SVに一致させるような操作量MVを生成し、SSR4に出力する。すなわち、実機においては、PLC51および温度調節器7は、観測量PVが目標値と一致するように操作量MVを決定する。
【0059】
制御工学の分野において、「観測量」は「制御量」に何らかの誤差を含む値として定義されるが、この誤差を無視すれば、「観測量」は制御対象の「制御量」とみなすことができる。そのため、以下の説明において、「制御量」は「観測量」と読み替えてもよい。
【0060】
上記に述べたフィードバック制御系において、操作量MVは0~100[%]の範囲の値をとり、SSR4は、電源5から加熱素子3までの回路を操作量MVに応じたデューティー比(duty ratio)でオン/オフ制御する。例えば、操作量が50[%]であれば、予め定められた制御周期の50[%]の期間がオン(通電状態)にされ、残りの50[%]の期間がオフ(非通電状態)にされる。
【0061】
生産ライン55の稼働時は、制御アルゴリズム40が実行される。より具体的には、PLC50は制御モデルfxを実行し制御量CVを算出(推定)し、温度調節器7は制御モデルfxからの制御量CVを基準値SVに一致させるようにPID制御系の演算を実行し、操作量MVを生成する。生成された操作量MVは、ヒータ2の駆動機器(アクチュエータ)に相当するSSR4に出力される。これにより、加熱素子3は操作量MVに応じて発熱し、ワーク60は加熱素子3からの伝熱によって加熱処理される。このような稼働時において、PLC50は、観測量PV、算出(推定)された制御量CVおよび操作量MVを収集する。
【0062】
図3を参照して、稼働時は、制御周期に同期して、PLC51は目標値列である基準値SVに従う指令を温度調節器7に出力する。温度調節器7は、基準値SVの指令とPLC51からの制御量CVとを用いて、PID制御の演算を実施することにより、操作量MVを算出する。SSR4は、操作量MVのDuty比(デューティー比)に応じた電力を加熱素子3に出力し、加熱素子3は通電されて発熱する。加熱素子3の発熱によって、加熱素子3の上に載置されたワーク60は加熱される。温度センサ62は加熱炉内の温度を測定し、測定温度を示す観測量PVを出力する。
【0063】
PLC51は、温度調節器7から、制御周期に同期した時系列データの操作量MV、制御量CVおよび観測量PVを収集し、収集された時系列データを情報処理装置10に転送する。情報処理装置10は、管理部28として、PLC50から転送された取得された時系列データをストレージ111に格納する。本実施の形態では、時系列データである操作量MV、制御量CVおよび観測量PVのうち、上記に述べた横展開のために、少なくとも観測量PVが収集されて格納される。
【0064】
<C.制御モデルとCADモデルとの対比>
図4は、本実施の形態に係る制御モデルf(x)とCADモデルg(x)との対比を模式的に示す図である。実機の対象(ヒータ2)の制御アルゴリズム40は、モデルパラメータ16を有した制御モデルf(x)と制御パラメータ20Bを有したPID部20Dとを含む。制御モデルf(x)は、実機のヒータ2の観測量PV(時系列の温度xi)を入力として、要素(ワーク60)の挙動を表す制御量CV1を算出(推定)する。制御量CV1と基準値SVの偏差eが算出されて、PID部20Dは偏差eが零となるような操作量MVを生成する。ヒータ2のCADデータに基づき生成されたCADモデルg(x)は、実機のヒータ2の観測量PVを入力として、要素(ワーク60)の挙動を表す制御量CV2を算出(推定)する。PID部20は、制御モデルf(x)が算出する制御量と基準値SVの間の偏差eに基づき操作量MVを生成するアルゴリズムに相当する。
【0065】
制御モデルf(x)は、実機で計測された観測量PVと伝達関数パラメータを含むモデルパラメータ16とを用いたラプラス演算子を有した熱の伝達関数を含む。モデルパラメータ16は、時定数および利得(ゲイン)を含む。このような伝達関数は、観測量PVに応じて算出される制御量CVを変化させるように作用する関数であればよい。PID制御の演算式に適用される制御パラメータ20Bは、例えば、偏差eに比例する比例動作のための比例ゲイン、偏差eの積分に比例する積分動作の積分時間、偏差eの微分に比例する微分動作の微分時間等を含む。
【0066】
CADモデルg(x)は、制御モデルf(x)と同様な熱の伝達関数として示されるCADモデルg(x)の伝達関数のパラメータは、モデルパラメータ16と同様の種類のパラメータであって、CADデータの属性が示す形状データに基づいて決定される。
【0067】
このように実機の制御モデルf(x)とCADモデルg(x)は、それぞれ、同じ観測量PVを用いて制御量CV1とCV2を算出(推定)するので、算出された制御量CV1とCV2の間の差は、例えば実機の形状とCADデータが示す形状との差に基づいた制御量の差を表す相対的関係モデルh1(x)で示される。したがって、ヒータ2Aと同じ種類のヒータ2Bの制御モデルf2(x)にヒータ2Aの制御モデルf1(x)を適用する横展開を実施する場合は、ヒータ2Bの制御モデルf2(x)とCADモデルg2(x)の相対的関係モデルh2(x)は、相対的関係モデルh1(x)とおおよそ同じであると期待できる。その結果、横展開では、ヒータ2Bの制御モデルf2(x)を(f2(x)=g2(x)+h1(x))に従って生成することができる。
【0068】
<D.情報処理装置の構成>
図5は、本実施の形態に係る情報処理装置10の構成の一例を示す模式図である。
図4の情報処理装置10は、主たるコンポーネントとして、オペレーティングシステム(OS:Operating System)および後述するような各種プログラムを実行するプロセッサ102と、プロセッサ102でのプログラム実行に必要なデータを格納するための作業領域を提供する主メモリ104と、キーボードまたはマウスなどの情報処理装置10に対するユーザ(設計者)の操作を受付ける操作ユニット106と、ディスプレイ109、各種インジケータ、プリンタなどの処理結果を出力する出力ユニット108と、ネットワーク80に接続されるネットワークインターフェイス110と、光学ドライブ112と、PLC51を含む外部装置と通信するローカル通信インターフェイス116と、ストレージ111とを含む。これらのコンポーネントは、内部バス118を介してデータ通信可能に接続される。
【0069】
光学ドライブ112は、コンピュータ読取可能なプログラムを非一時的に格納する光学記録媒体(例えば、DVD(Digital Versatile Disc)等)を含むコンピュータ読取可能な記録媒体114から、各種プログラムを読取ってストレージ111などにインストールする。
【0070】
情報処理装置10で実行される各種プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体114を介してインストールされてもよいが、ネットワーク80上の図示しないサーバ装置などからネットワークインターフェイス110を介してダウンロードする形でインストールされてもよい。これらプログラムは、プロセッサ102によって実行されると、当該プロセッサ102に本実施の形態に係るモデルを生成する方法を実行させる命令を有したプログラムを含む。
【0071】
ストレージ111は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Flash Solid State Drive)などで構成され、プロセッサ102で実行されるプログラムを格納する。具体的には、ストレージ111は、各種プログラムの開発を支援する開発支援プログラム121と、後述するシミュレータを実現するシミュレーションプログラム126と、実行されると管理部28を実現する管理プログラム134と、
図1に示された管理用データ135と格納する。
【0072】
図5では、単一の情報処理装置10で管理部28を含む開発環境を実現する例が示されたが、複数の情報処理装置を連係させて開発環境を実現されるようにしてもよい。この場合、開発環境を実現するために必要な処理の一部は情報処理装置10によって実行されて、残りの処理はクラウドベースのサーバまたはオンプレミスサーバで実行されるようにしてもよい。
【0073】
図5では、プロセッサ102によって1または複数のプログラムが実行されることで、開発環境が実現される例が示されたが、情報処理装置10は、開発環境を実現するために必要な処理および機能の一部が、ASICまたはFPGAを含む回路として実装されてもよい。
【0074】
<E.フローチャート>
図6は、本実施の形態に係る処理のフローチャートである。情報処理装置10は、管理部28として、
図6の処理を実施する。情報処理装置10は、上記に述べた横展開において、観測量PVを収集する(ステップS10)。ステップS10において収集される観測量PVは、第1生産ライン55Aの立上げまたは処方条件を検出する際に、装置に設置されている温度計(温度センサ62)、流量計などの計測機器より収集される観測量に加え、一時的にワーク60Aの内部に取り付けられた図示しないサーミスタによって実際に測定されたワーク60Aの内部温度である。情報処理装置10は、このような実測に基づく観測量PVをストレージ111に格納する。
図6の処理の開始前に観測量PVが収集されてストレージ111に格納される場合は、情報処理装置10はPLC51Aとの通信を切断したオフライン状態で処理を実施できる。
【0075】
情報処理装置10は、ステップS10において収集された観測量PVから第1制御モデルf1(x)と第1CADモデルg1(x)とを生成する(ステップS20とステップS30)。ステップS10において観測量PVを収集するには、装置に設置されている温度計(温度センサ62)、流量計などの計測機器より収集される観測量PVに加え、ワーク60の中心に温度センサを挿入して、ワークの中心温度を測定する。この温度センサは一時的に設置しデータを取得するためのものであり、この温度センサは観測量PVを収集後に撤去または計測した結果破壊されてしまっても良い。ステップS20では、情報処理装置10は、ステップS10において実測された実測量である観測量PVを用いて、統計的処理または機械学習等によって、第1制御モデル生成部286として、第1制御モデルf1(x)を生成し、また、第1CADモデル生成部287として、第1CADモデルg1(x)とを生成する。第1制御モデルf1(x)と第1CADモデルg1(x)の生成に替えて、情報処理装置10は、ストレージ111に予め格納された第1制御モデルf1(x)と第1CADモデルg1(x)をストレージ111から読出してもよい。
【0076】
情報処理装置10は、相対的関係モデルh1(x)を生成する(ステップS40)。具体的には、観測量PVを入力として第1制御モデルf1(x)によって算出されたワーク60Aの制御量CVと、当該観測量PVを入力として第1CADモデルg1(x)によって算出されたワーク60Aの制御量CVとの間の相対的関係を表すモデルを算出する。
【0077】
情報処理装置10は、第2CADモデルg2(x)を生成し(ステップS50)、第2CADモデルg2(x)と相対的関係モデルh1(x)とに基づき、ヒータ2Bの第2制御モデルf2(x)を生成する(ステップS60)。このような第2制御モデルf2(x)の生成において、情報処理装置10は、より高い精度を有した第2制御モデルf2(x)を生成するために、後述するリファインメントと規格化の少なくとも1つを実施してもよい(ステップS65)。
【0078】
情報処理装置10は、第2制御モデルf2(x)とPID演算の演算式に対応の関数を含むPID部20Dとを含む制御アルゴリズム40Bを生成する(ステップS70)。情報処理装置10は、シミュレータによって生成された制御アルゴリズム40Bを実行し、実行結果に基づき制御アルゴリズを評価する(ステップS80)。プロセッサ102は、評価の情報を、ディスプレイ109に表示させる。情報処理装置10は、PLC51Bと通信し制御アルゴリズム40BのプログラムをPLC51Bにインストールする。なお、ステップS80のシミュレータによる評価はオプショナルに実施されるとしてもよい。
【0079】
<F.リファインメント>
図7と
図8は、本実施の形態に係るリファインメント処理を説明する図である。情報処理装置10は、リファインメント部288として、生成される第2制御モデルf2(x)の誤差e3を低減するリファインメント処理を実施する。より具体的には、例えば収集された観測量PVが十分な量でない場合、第2制御モデルf2(x)は、不十分な観測量PVに起因した誤差e3を含む。ステップS65のリファインメントでは、このような誤差e3を低減する処理が実施される。
【0080】
例えば、
図7には、第2制御モデルf2(x)によって算出される制御量CVのグラフ81が示される。グラフ81は、上記に述べた誤差e3を含む制御量CVの時系列の変化を表す。リファインメント処理では、情報処理装置10は、
図7示すグラフ81に含まれる誤差e3を
図8の矢印方向に低減することにより、
図8のグラフ82によって表現される第2制御モデルf2(x)を生成する。
【0081】
このようなリファインメント後の
図8の第2制御モデルf2(x)処理としては、例えば十分な観測量PVとなるように観測量PVを追加できる場合は、情報処理装置10は、追加後の観測量PVを基準に、上述のステップS20~ステップS60に処理を実施して、第2制御モデルf2(x)を生成する。例えば十分な観測量PVとなるような観測量PVを追加できない場合は、情報処理装置10は、第1制御モデルf1(x)が算出する制御量CVと、例えばメンテナンス時に実機から収集した制御量CVとの加重平均から、第2制御モデルf2(x)を生成する。
【0082】
<G.規格化>
情報処理装置10は、正規化部289として、CADモデルg(x)を機差に基づき正規化する。
図9と
図10は、本実施の形態に係る正規化を説明する図である。本実施の形態では、同じ種類のヒータ2Aと2Bであっても、両者の間には設計上の差が存在する。本実施の形態では、このような設計上の差を「機差」と称する。機差は、ヒータ2Aの第1CADデータ17Aの属性18Aが示す形状と、ヒータ2Bの第1CADデータ17Bの属性18Bが示す形状との間の差に相当する。例えば、ヒータ2Bの加熱炉のサイズがヒータ2Aの加熱炉のサイズのα倍である場合、機差もα倍となるから、第1CADモデルg1(x)と第2CADモデルg2(x)との関係は、g2(x)=g1(x)×αで定義することができる。加熱炉のサイズは、熱容量または表面積に起因する伝熱量の違いをもたらす。また、機差は、加熱炉における温度センサ62の取付け位置の違いも含む。
【0083】
図9は、例えば、機差が温度センサ62の取り付け位置に基づくケースである場合に、第1CADモデルg1(x)と当該機差に基づく正規化後の第2CADモデルg2(x)のグラフを示す。
図10は、例えば、機差が伝熱量の差をもたらす機差であるケースにおいて、第1CADモデルg1(x)と当該機差に基づく正規化後の第2CADモデルg2(x)(ただし、g2(x)=g1(x)×α)のグラフを示す。
【0084】
情報処理装置10は、正規化後の第2CADモデルg2(x)を用いて第2制御モデルf2(x)を生成する。このことは、第2制御モデルf2(x)に含まれる誤差であって、当該機差に起因した誤差を低減するように作用する。仮に当該誤差を含んだ制御モデルf(x)が適用された場合、ワーク60内に誤差に起因した応力が発生し、ワーク60の歩留まりまたは品質の低下に繋がり、生産性が低下する。本実施の形態によれば、当該誤差は低減されるので、ワーク60内の応力の発生および生産性低下を防止できる。
【0085】
<H.利点>
情報処理装置10は、上記に述べた制御モデルf(x)を、PLC50が実行可能なファンクションブロックとして提供する。例えば、ファンクションブロックを顧客の工場の1の生産ライン55Aの制御モデルf1(x)に提供した場合、顧客は工場内の他の生産ライン55Bに制御モデルf1(x)を横展開することを所望する。この場合、情報処理装置10は、CADモデルg(x)とヒータ2Aと制御モデルf1(x)を利用して、他の生産ライン55Bのヒータ2Bの制御モデルf2(x)を生成できる。
【0086】
また、ヒータ2Aとヒータ2Bとの間に機差があるとしても、情報処理装置10は、リファインメントまたは正規化によって、当該機差に起因した誤差e3が低減された第2制御モデルf2(x)を生成できる。
【0087】
上記のCADモデルg(x)は、CADデータ17が示す加熱炉の形状データから生成されたが、CADモデルg(x)の生成は形状データに基づく生成に限定されない。例えば、CADモデルg(x)は、形状データとCADデータの属性18が示す加熱炉を構成する材料が有する物性値(密度、比熱および熱伝導率等)に基づき生成されてもよい。
【0088】
<I.他のモデル>
上記の実施の形態は、ワーク60を加熱するヒータ2の制御モデルf(x)を説明したが、加熱の制御系の制御モデルへの適用に限定されない。例えば、ワーク60を冷却するペルチェ素子を含む冷却の制御系の制御モデルへ適用してもよい。
【0089】
また、本実施の形態は、タンク内の液相反応の濃度の制御モデルf(x)に適用することもできる。液相反応においては、化学反応の進み具合を検出し、操作量MVとしてヒータの発熱量を制御する。ヒータの温度は観測量PVとして計測される。化学反応の進み具合の指標となる液相の濃度変化を制御量CVとする。タンクを含む反応系のCADデータからCADモデルg(x)を生成する。これらにより、本実施の形態を適用して、タンク内の液相反応の制御系に適用される制御モデルf(x)を生成できる。
【0090】
また、本実施の形態は、搬送制御系の制御モデルに適用することもできる。
図11と
図12は、搬送系を模式的に示す図である。
図11のワーク120を搬送する搬送機構123と、
図12のワーク130を搬送する搬送機構133との間には機差が存在する。このような搬送機構は、例えば、ベルト上に載置されたワークを搬送するベルトコンベアを含む。ベルトコンベアは、アクチュエータ(駆動機器)であるサーボモータによってベルトが駆動される。例えば、ベルトの機差に起因してワーク120とワーク130との間において、ワークの振動量の変化である制御量CVは異なる。このような搬送系の制振制御に本実施の形態を適用することができる。より具体的には、図示しない計測器が計測する振動量の観測量PVを入力として、制御量CVを算出(推定)する制御モデルf(x)が生成される。横展開では、例えば
図11の搬送系の制御モデルf(x)を適用して、
図12の搬送系の制御モデルf(x)が生成される。このような制振制御は、搬送系ヘの適用に限定されず、回転機の振動の制御についても同様に適用することができる。
【0091】
<J.付記>
上述したような本実施の形態は、以下のような技術思想を含む。
[構成1]
生産ライン(55、55A、55B)に備えられる対象(2、2A、2B、4)の制御アルゴリズム(40、40A、40B)を生成する情報処理装置(10)であって、
前記対象は、前記制御アルゴリズムによって算出される操作量(MV)に従って要素(60、60A、60B)の挙動を変化させる物理量を出力し、
前記生産ラインは、第1の要素(60A)を生産する第1生産ライン(55A)と第2の要素(60B)を生産する第2生産ライン(55B)とを含み、
前記第1生産ラインは、前記第1の要素の挙動を変化させる物理量を出力する第1の対象(2A、4)を備え、
前記第2生産ラインは、前記第2の要素の挙動を変化させる物理量を出力する第2の対象(2B、4)を備え、
前記情報処理装置は、
前記第1の対象が出力する前記物理量を観測した観測量(PV)を入力として、前記第1の要素の挙動を表す制御量(CV)を算出する第1制御モデル(f1(x))と、前記第1の対象の属性を示すCADデータ(17A)基づくモデルであって、前記観測量を入力として、前記第1の要素の前記制御量を算出する第1CADモデル(g1(x))との間の、制御量の相対的関係を表すモデル(h1(x))を生成する第1生成部(282)と、
前記第2生産ラインの第2の前記対象の属性を示すCADデータ(17B)に基づくCADモデルであって、前記観測量を入力として、前記第2の要素の前記制御量を算出する第2CADモデル(g2(x))を生成する第2生成部(283)と、
前記第2CADモデル(g2(x))と前記相対的関係を表すモデル(h1(x))とに基づき、前記第2の対象が出力する前記物理量を観測した観測量を入力として、前記第2の要素の前記制御量を算出する第2制御モデル(f2(x))を生成する第3生成部(284)と、
前記第2制御モデルを含む制御アルゴリズムであって、当該第2制御モデルにより算出された制御量を入力として、前記第2の対象の操作量(MV)を算出する制御アルゴリズム(40B)を生成する第4生成部(285)と、を備える、情報処理装置(10)。
[構成2]
前記物理量は熱を含む、構成1に記載の情報処理装置。
[構成3]
前記第1の対象および第2の対象は、それぞれ、前記第1の要素を加熱する加熱炉および前記第2の要素を加熱する加熱炉を含む、構成1または2に記載の情報処理装置。
[構成4]
前記相対的関係は、前記第1制御モデルが算出する制御量と、前記第1CADモデルが算出する制御量との間の相対的な差を含む、構成1~3のいずれか1に記載の情報処理装置。
[構成5]
前記相対的関係は、前記第1制御モデルが算出する制御量と、前記第1CADモデルが算出する制御量との間の相対的な比を含む、構成1~3のいずれか1に記載の情報処理装置。
[構成6]
前記第1の対象および前記第2の対象のCADデータが示す属性(18A、18B)は、それぞれ、前記第1の対象および前記第2の対象の形状を含む、構成1~5のいずれか1に記載の情報処理装置。
[構成7]
前記第2制御モデル(f2(x))を含む制御アルゴリズム(40B)は、前記第2制御モデルが算出する制御量(CV)と基準(SV)の間の偏差(e)に基づき前記操作量を生成するアルゴリズム(20)を含む、構成1~6のいずれか1に記載の情報処理装置。
[構成8]
前記第2CADモデルを、前記第1の対象のCADデータと前記第2の対象のCADデータの間の、前記属性の差に基づき正規化する正規化部(289)をさらに備える、構成1~7のいずれか1に記載の情報処理装置。
[構成9]
前記第3生成部は、
前記第2CADモデルと前記相対的関係を表すモデルとに基づき、前記第2の対象が出力する前記物理量を観測した観測量を入力として、前記第2の要素の前記制御量を算出する第2制御モデルを解析的に生成する、構成1~8のいずれか1に記載の情報処理装置。
[構成10]
前記情報処理装置は、
前記第1制御モデルを生成する第5生成部(286)と、
前記第1CADモデルを生成する第6生成部(287)と、をさらに備え、
前記第5生成部は、
前記物理量に応じた前記第1の要素の挙動を実測した実測量を入力として、前記第1の要素の制御量を算出する第1制御モデルを生成し、
前記第6生成部は、
前記物理量に応じた前記第1の要素の挙動を実測した実測量を入力として、前記第1の要素の制御量を算出する第1CADモデルを生成する、構成1~9のいずれか1に記載の情報処理装置。
[構成11]
プロセッサ(102)が実施する方法であって、
前記方法は、生産ライン(55、55A、55B)に備えられる対象(2、2A、2B、4)の制御アルゴリズム(40、40A、40B)を生成する方法あり、
前記対象は、前記制御アルゴリズムによって算出される操作量(MV)に従って要素(60、60A、60B)の挙動を変化させる物理量を出力し、
前記生産ラインは、第1の要素(60A)を生産する第1生産ライン(55A)と第2の要素(60B)を生産する第2生産ライン(55B)とを含み、
前記第1生産ラインは、前記第1の要素の挙動を変化させる物理量を出力する第1の対象(2A、4)を備え、
前記第2生産ラインは、前記第2の要素の挙動を変化させる物理量を出力する第2の対象(2B、4)を備え、
前記方法は、
前記第1の対象が出力する前記物理量を観測した観測量(PV)を入力として、前記第1の要素の挙動を表す制御量(CV)を算出する第1制御モデル(f1(x))と、前記第1の対象の属性を示すCADデータ(17A)に基づくモデルであって、前記観測量を入力として、前記第1の要素の前記制御量を算出する第1CADモデル(g1(x))との間の、制御量の相対的関係を表すモデル(h1(x))を生成すること(S40)、
前記第2生産ラインの第2の前記対象の属性を示すCADデータ(17B)に基づくCADモデルであって、前記観測量を入力として、前記第2の要素の前記制御量を算出する第2CADモデル(g2(x))を生成すること(S50)、
前記第2CADモデル(g2(x))と前記相対的関係を表すモデル(h1(x))とに基づき、前記第2の対象が出力する前記物理量を観測した観測量を入力として、前記第2の要素の前記制御量を算出する第2制御モデル(f2(x))を生成すること(S60)、および、
前記第2制御モデルを含む制御アルゴリズムであって、当該第2制御モデルにより算出された制御量を入力として、前記第2の対象の操作量(MV)を算出する制御アルゴリズム(40B)を生成すること(S70)、を備える、方法。
[構成12]
プロセッサ(102)によって実行されると、当該プロセッサに方法を実行させる命令を有したプログラム(134)であって、
前記方法は、生産ライン(55、55A、55B)に備えられる対象(2、2A、2B、4)の制御アルゴリズム(40、40A、40B)を生成する方法あり、
前記対象は、前記制御アルゴリズムによって算出される操作量(MV)に従って要素(60、60A、60B)の挙動を変化させる物理量を出力し、
前記生産ラインは、第1の要素(60A)を生産する第1生産ライン(55A)と第2の要素(60B)を生産する第2生産ライン(55B)とを含み、
前記第1生産ラインは、前記第1の要素の挙動を変化させる物理量を出力する第1の対象(2A、4)を備え、
前記第2生産ラインは、前記第2の要素の挙動を変化させる物理量を出力する第2の対象(2B、4)を備え、
前記方法は、
前記第1の対象が出力する前記物理量を観測した観測量(PV)を入力として、前記第1の要素の挙動を表す制御量(CV)を算出する第1制御モデル(f1(x))と、前記第1の対象の属性を示すCADデータ(17A)に基づくモデルであって、前記観測量を入力として、前記第1の要素の前記制御量を算出する第1CADモデル(g1(x))との間の、制御量の相対的関係を表すモデル(h1(x))を生成すること(S40)、
前記第2生産ラインの第2の前記対象の属性を示すCADデータ(17B)に基づくCADモデルであって、前記観測量を入力として、前記第2の要素の前記制御量を算出する第2CADモデル(g2(x))を生成すること(S50)、
前記第2CADモデル(g2(x))と前記相対的関係を表すモデル(h1(x))とに基づき、前記第2の対象が出力する前記物理量を観測した観測量を入力として、前記要素の前記制御量を算出する第2制御モデル(f2(x))を生成すること(S60)、および、
前記第2制御モデルを含む制御アルゴリズムであって、当該第2制御モデルにより算出された制御量を入力として、前記第2の対象の操作量(MV)を算出する制御アルゴリズム(40B)を生成すること(S70)、を備える、プログラム。
【0092】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0093】
2,2A,2B ヒータ、3,3A,3B 加熱素子、5 電源、7,7A,7B 温度調節器、10 情報処理装置、16 モデルパラメータ、17 CADデータ、17A 第1CADデータ、17B 第2CADデータ、18,18A,18B 属性、20B 制御パラメータ、20D PID部、28 管理部、40 制御アルゴリズム、40A 第1制御アルゴリズム、40B 第2制御アルゴリズム、55 生産ライン、55A 第1生産ライン、55B 第2生産ライン、60,60A,60B,120,130 ワーク、62 温度センサ、80 ネットワーク、81,82 グラフ、102 プロセッサ、104 主メモリ、106 操作ユニット、108 出力ユニット、109 ディスプレイ、110 ネットワークインターフェイス、111 ストレージ、112 光学ドライブ、114 記録媒体、116 ローカル通信インターフェイス、118 内部バス、121 開発支援プログラム、123,133 搬送機構、126 シミュレーションプログラム、134 管理プログラム、135 管理用データ、281 モデル生成部、282 第1生成部、283 第2生成部、284 第3生成部、285 第4生成部、286 第1制御モデル生成部、287 第1CADモデル生成部、288 リファインメント部、289 正規化部、CV,CV1,CV2 制御量、MV 操作量、PV 観測量、SV 基準値、e 偏差、e3 誤差、f(x) 制御モデル、f1(x) 第1制御モデル、f2(x) 第2制御モデル、g(x) CADモデル、g1(x) 第1CADモデル、g2(x) 第2CADモデル、h1(x),h2(x) 相対的関係モデル、ti 時刻、x,xi 温度。