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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130050
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】基材搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/038 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B65H23/038 Z
B65H23/038
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039541
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 芳範
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一嘉
【テーマコード(参考)】
3F104
【Fターム(参考)】
3F104CA05
3F104CA17
3F104CA28
3F104JA08
(57)【要約】
【課題】基材搬送装置において、蛇行の修正のために、搬送ロールがストロークエンドまで変位し、変位不能となった場合であっても、搬送ロールを用いた基材の蛇行の修正を再び可能とする。
【解決手段】基材搬送装置10は、帯状の基材Wをロールツーロールで搬送する。基材搬送装置10は、基材Wを吸着可能である搬送ロール29と、搬送ロール29を、搬送ロール29の軸方向に又は傾ける方向に変位可能とするアクチュエータ41と、搬送ロール29と基材Wとの間にガスを噴出する噴出機構42とを有する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の基材をロールツーロールで搬送する基材搬送装置であって、
前記基材を吸着可能である搬送ロールと、
前記搬送ロールを、前記搬送ロールの軸方向に又は傾ける方向に変位可能とするアクチュエータと、
前記搬送ロールと前記基材との間にガスを噴出する噴出機構と、
を有する基材搬送装置。
【請求項2】
前記噴出機構は、前記基材の幅方向に沿って配置されている複数のノズルを有する、請求項1に記載の基材搬送装置。
【請求項3】
前記搬送ロールよりも前記基材の搬送方向の下流側に位置する下流側ロールと、
前記下流側ロールとの間で前記基材を挟む押さえ部材と、
を有する、請求項1又は請求項2に記載の基材搬送装置。
【請求項4】
一部を残して液が塗布された前記基材を搬送する基材搬送装置であって、
前記押さえ部材は、前記基材のうち、前記液が塗布されていない非塗布面に接触する、
請求項3に記載の基材搬送装置。
【請求項5】
前記搬送ロールよりも前記基材の搬送方向の上流側に位置する上流側ロールを有し、
前記上流側ロールと前記搬送ロールとの間に懸架される前記基材に、たるみを生じさせた状態で、前記基材を搬送する、請求項1又は請求項2に記載の基材搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の発明は、帯状の基材をロールツーロールで搬送する基材搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製フィルム等の基材に、回路パターンを形成するため、スパッタリング、CVD、フォトリソグラフィ等の技術が用いられる。近年、低コスト、省エネ、省資源に貢献するために、インクジェットノズルから金属インクを基材に滴下して回路パターンを形成する技術が開発されている。
【0003】
生産効率の観点から、帯状の基材(長尺フィルム)をロールツーロールで搬送し、その搬送の途中において、金属インク等の液を基材に塗布する技術が用いられる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-122789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロールツーロールで搬送される帯状の基材に液を塗布した後、その液を乾燥させる工程が存在する。乾燥工程中及び乾燥工程の直後、基材の搬送の際に、大きな張力が基材に作用すると、基材に変形(伸長)が生じる可能性がある。これを防ぐため、低張力の状態で基材を搬送することが好ましい。しかし、低張力の場合、搬送の途中で基材は蛇行しやすい。
【0006】
特許文献1に、基材の蛇行を検知すると、搬送ロールを変位させ、蛇行を解消する技術が開示されている。しかし、基材が大きく蛇行し、搬送ロールがストロークエンドまで変位していると、それ以上、蛇行を修正することが不可能となる。
【0007】
そこで、本発明は、蛇行の修正のために、搬送ロールがストロークエンドまで変位し、変位不能となった場合であっても、搬送ロールを用いた基材の蛇行の修正が再び可能となる基材搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、帯状の基材をロールツーロールで搬送する基材搬送装置であって、前記基材を吸着可能である搬送ロールと、前記搬送ロールを、前記搬送ロールの軸方向に又は傾ける方向に変位可能とするアクチュエータと、前記搬送ロールと前記基材との間にガスを噴出する噴出機構と、を有する。
【0009】
前記基材搬送装置によれば、搬送する基材が蛇行した場合、その基材を吸着する搬送ロールを、その軸方向に又は傾ける方向に変位させることで、基材の進行方向が矯正され、蛇行を修正することが可能となる。
蛇行の修正のために、搬送ロールがストロークエンドまで変位し、変位不能となった場合、搬送ロールによる基材の吸着を解除し、噴出機構は、搬送ロールと基材との間にガスを噴出する。基材は搬送ロールから離れ、その間に、搬送ロールを、例えば初期位置に戻す。これにより、搬送ロールは、再び変位可能となる。搬送ロールによる基材の吸着を伴う搬送が再開され、搬送ロールを用いた基材の蛇行の修正が再び可能となる。
【0010】
(2)好ましくは、前記噴出機構は、前記基材の幅方向に沿って配置されている複数のノズルを有する。
前記構成によれば、複数のノズルから、いくつかのノズルを選択してガスを噴出させる噴出機構を構成することが可能となる。基材に応じて、ガスを噴出させるノズルを選択することが可能となる。つまり、ガスを噴出させないノズルが存在するように噴出機構を構成することが可能となる。なお、基材の幅方向は、基材の搬送方向と直交する方向である。
【0011】
(3)好ましくは、前記(1)又は(2)の基材搬送装置は、更に、前記搬送ロールよりも前記基材の搬送方向の下流側に位置する下流側ロールと、前記下流側ロールとの間で前記基材を挟む押さえ部材と、を有する。
【0012】
前記構成によれば、搬送ロールを、例えば初期位置に戻す動作の後、その搬送ロールによる基材の吸着を伴う搬送の再開が、迅速に行われる。
つまり、搬送ロールがストロークエンドまで変位し、変位不能となった場合、搬送ロールによる基材の搬送を停止し、下流側ロールと押さえ部材とによって基材を挟む。搬送ロールによる基材の吸着を解除し、噴出機構はエアを噴出し、その間に、搬送ロールを、例えば初期位置に戻す。搬送ロールによる基材の吸着を再開し、押さえ部材による基材の押さえを解除すると、搬送ロールによる基材の吸着を伴う搬送が開始される。
【0013】
(4)好ましくは、一部を残して液が塗布された前記基材を搬送する基材搬送装置であって、前記押さえ部材は、前記基材のうち、前記液が塗布されていない非塗布面に接触する。
前記構成によれば、押さえ部材が、液の塗布された塗布面を傷付けない。
【0014】
(5)好ましくは、前記(1)から(4)の基材搬送装置は、前記搬送ロールよりも前記基材の搬送方向の上流側に位置する上流側ロールを有し、前記上流側ロールと前記搬送ロールとの間に懸架される前記基材に、たるみを生じさせた状態で、前記基材を搬送する。
前記構成によれば、搬送ロールの上流側に位置する基材に、その基材の自重によって張力が与えられる。噴出機構がガスを噴出する際に、前記張力により、基材は搬送ロールから安定して浮上することが可能となる。ガスの噴出後、基材は、搬送ロール上の所定位置に戻る。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基材の蛇行の修正のために、搬送ロールがストロークエンドまで変位し、変位不能となった場合であっても、搬送ロールを用いた基材の蛇行の修正が再び可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の基材搬送装置を有する塗布装置の概略構成を示す側面図である。
図2図2は、塗布部の下流側に位置するロールから更に下流側の各装置の説明図である。
図3図3は、蛇行修正装置の一例を示す平面図である。
図4図4は、蛇行修正装置の変形例を示す平面図である。
図5図5は、噴出機構のイメージ図である。
図6図6は、検知装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔基材搬送装置を有する塗布装置〕
図1は、本発明の基材搬送装置を有する塗布装置の概略構成を示す側面図である。図1に示す塗布装置10は、帯状である基材Wに回路パターン等の印刷を行う装置である。塗布装置10は、基材搬送装置11、塗布部12、乾燥部13、及び、制御装置20を有する。基材搬送装置11は、調整装置14、及び、蛇行修正装置15を有する。制御装置20は、コンピュータにより構成される。
【0018】
基材搬送装置11は、帯状である基材Wを搬送する。基材Wの長手方向が、搬送方向となる。基材搬送装置11は、ロールツーロール方式により基材Wを一方向に搬送する。そのために、基材搬送装置11は、送り出しロール16及び巻き取りロール17を有する。送り出しロール16から基材Wは送り出され、巻き取りロール17により基材Wは巻き取られる。送り出しロール16側が、基材Wの搬送方向の上流側となり、巻き取りロール17側が、基材Wの搬送方向の下流側となる。
【0019】
塗布部12、乾燥部13、調整装置14、及び、蛇行修正装置15は、基材搬送装置11による基材Wの搬送経路の途中に配置されている。塗布部12は、基材Wに対して塗液の塗布を行う装置である。乾燥部13は、基材Wに塗布した塗液の乾燥を行うための装置である。調整装置14は、基材Wのたるみ量を制御する装置である。蛇行修正装置15は、基材Wの蛇行を修正する装置である。蛇行修正装置15により蛇行が修正された基材Wが、巻き取りロール17に巻き取られる。
以下、各部の構成について説明する。
【0020】
〔塗布部12〕
本実施形態の塗布部12は、インクジェット方式による塗布装置である。塗布部12は、吸着ステージ21、塗布ヘッド22、及び、移動装置23を有する。
吸着ステージ21は基材Wを吸着する。吸着ステージ21は、吸引孔を有し、減圧ポンプにより前記吸引孔から気体が吸引される。この吸引により、基材Wが吸着ステージ21の表面に吸着固定される。吸引を解除することで、基材Wは搬送可能となる。
【0021】
塗布ヘッド22は、塗液を吐出するノズルと、ピエゾアクチュエータにより動作する駆動隔壁とを有する。ピエゾアクチュエータは制御装置20からの信号によって駆動し、駆動隔壁を動作させる。駆動隔壁の動作により、ノズルから塗液が押し出されて吐出される。
移動装置23は、塗布ヘッド22を水平面に沿ったX軸方向およびY軸方向に移動させる。塗布ヘッド22の移動は、制御装置20からの信号によって制御される。
吸着ステージ21が吸着する基材Wの上方を、塗布ヘッド22は、移動しながら塗液を吐出し、基材W上に塗布パターンを形成する。
【0022】
〔乾燥部13〕
乾燥部13は、塗布部12よりも下流側に位置する。乾燥部13は、例えば、熱風により基材W上の塗布パターンを乾燥させる装置である。乾燥部13は、乾燥炉26、及び、コンベア27を有する。
【0023】
乾燥炉26は、基材Wが通過する空間を内部に有する箱状の装置である。乾燥炉26は、熱風を吹き出す複数の吹き出し孔を有する。乾燥炉26は、塗布パターンが形成されている基材Wの塗布面に対して熱風を吹き付ける。塗布パターンを構成する塗液に含まれる溶剤の揮発が促進され、塗布パターンが乾燥し硬化する。
【0024】
コンベア27は、基材Wを一定速度で搬送する装置である。基材Wの長手方向の各部において、熱風が接する時間を均一とする。
乾燥部13は、熱風に代えて、赤外線照射により、塗液の乾燥を促進する装置であってもよい。熱風を吹き付ける場合、基材Wをコンベア27の搬送面に押し付けることができ、基材Wの滑りによる搬送ミスを抑えることが可能となる。
【0025】
乾燥部13において、基材Wに、その長手方向について過大な張力が作用すると、加熱による基材Wの軟化により、基材Wが伸びるように変形する可能性がある。そこで、乾燥炉26内では可能な限り低張力で基材Wを保持する必要がある。そのために、コンベア27は、乾燥炉26内において、基材Wを下から支持して水平方向に搬送する。
【0026】
塗布部12は、基材Wを吸着ステージ21に吸着固定して塗布を行い、塗布後、ロール24の回転駆動により、基材Wは下流側に搬送される。つまり、塗布部12では、基材Wは間欠的に搬送される。これに対し、乾燥部13では、基材Wは連続的に搬送される。
そこで、塗布部12の下流側に位置するロール24と、乾燥部13の上流側に位置するロール25との間に懸架される基材Wに、たるみ(バッファ)を生じさせる。このたるみを第一たるみ部18と称する。
【0027】
乾燥部13の下流側に位置するロール28と、蛇行修正装置15の上流側に位置するロール29との間に懸架される基材Wに、たるみ(バッファ)を生じさせる。このたるみを第二たるみ部19と称する。
図2は、ロール24から下流側の各装置の説明図である。
【0028】
〔調整装置14〕
調整装置14は、第二たるみ部19の底位置の高さ制御を行う。第二たるみ部19の底位置の高さが制御されることで、第二たるみ部19のたるみ量を調整する。第二たるみ部19の底位置が低くなることで、第二たるみ部19の範囲において、基材Wに生じる自重による張力が増す。その結果、基材Wの蛇行を抑えることが期待され、基材Wの搬送を安定させる。調整装置14によれば、基材Wの自重によって、その基材Wに低張力が付与される。乾燥部13の通過後においても、基材Wに過大な張力が付与されない。
【0029】
調整装置14は、基材Wが架けられる第一搬送ロール(28)、基材Wが架けられる第二搬送ロール(29)、蛇行検出手段31、底位置検出手段32、及び、第二たるみ部19のたるみ量の調整用の制御装置(20)を有する。
本実施形態の場合、調整装置14が有する前記制御装置は、塗布装置10が有する制御装置20の機能の一部により構成される。なお、調整装置14の制御装置は、塗布装置10の制御装置20とは別であるコンピュータにより構成されていてもよい。
【0030】
乾燥部13の下流側に位置するロール28が、調整装置14の前記第一搬送ロールである。以下、ロール28を第一搬送ロール28と呼ぶ。第一搬送ロール28は、乾燥部13に含まれず、調整装置14に含まれる。
【0031】
蛇行修正装置15の上流側に位置するロール29が、調整装置14の前記第二搬送ロールである。以下、ロール29を第二搬送ロール29と呼ぶ。本実施形態の場合、第二搬送ロール29は、調整装置14に含まれるロールであると共に、蛇行修正装置15に含まれるロールでもある。つまり、第二搬送ロール29は、調整装置14と蛇行修正装置15とに兼用されている。なお、兼用されていない構成であってもよい。
【0032】
第一搬送ロール28は、回転駆動するロールであってもよく、自由に回転自在である回転駆動しないロールであってもよい。
第二搬送ロール29は、第一搬送ロール28よりも基材Wの搬送方向の下流側に位置する。第二搬送ロール29は、第一搬送ロール28よりも高い位置にある。
【0033】
第二搬送ロール29は、回転駆動するとともに、基材Wを吸着する機能を有する吸着駆動ロールである。基材Wの吸着のために、第二搬送ロール29は、表面に吸引孔を有し、減圧ポンプ37により前記吸引孔から気体が吸引される。この吸引により、基材Wが第二搬送ロール29の外周面の一部に吸着される。第二搬送ロール29は、図外のモータ及び減速機により回転駆動する。第二搬送ロール29の回転駆動は、制御装置20により制御される。
【0034】
第二搬送ロール29の軸方向の長さは、基材Wの幅方向の寸法よりも十分に大きい。基材Wが蛇行しても、第二搬送ロール29はその基材Wを吸着した状態として下流側へ搬送することができる。なお、基材Wの幅方向は、基材Wの搬送方向(長手方向)と直交する方向である。
【0035】
蛇行検出手段31は、基材Wの蛇行に関するパラメータを取得する。図2に示す形態の場合、蛇行検出手段31は、基材Wの幅方向の端の位置を検出する非接触式のセンサ33を有する。センサ33は、超音波センサ又は光センサであってもよく、カメラであってもよい。センサ33は、第二搬送ロール29の下流側に設けられている。第二搬送ロール29の下流側の隣に、ロール(下流側ロール30)が位置する。
【0036】
第二搬送ロール29と下流側ロール30との間において、基材Wが蛇行して搬送されている場合、その基材Wの幅方向の端の位置が、直進している場合と比較して、幅方向のいずれか一方に変位する。センサ33は、その変位を検出する。センサ33は、刻々と基材Wの端の位置を検出し、センサ33の検出信号は、制御装置20に送信される。
【0037】
センサ33により、基材Wの幅方向の端の位置を示すデータが取得される。図2に示す形態の場合、基材Wの蛇行に関するパラメータは、基材Wの幅方向についての、基材Wの変位量である。その変位量は、直進からの蛇行量の累積であってもよい。基材Wの変位量は、蛇行の大きさを示し、その変位量が大きいことは、大きく蛇行していることを意味する。
なお、基材Wの蛇行に関するパラメータは、他の情報であってもよく、または、複数の情報の組み合わせであってもよい。
【0038】
後に具体的構成を説明するが、基材搬送装置11は、基材Wの蛇行の修正動作を行う蛇行修正装置15を有する。
そこで、前記他の情報として、基材Wの蛇行に関するパラメータは、蛇行修正装置15による修正動作の頻度であってもよい。この場合、修正動作の回数がカウントされればよく、センサ33は不要となる。修正動作の回数は、蛇行の頻度であり、その回数が多いことは、頻繁に蛇行が生じていることを意味する。
【0039】
前記のとおり、第一搬送ロール28と第二搬送ロール29との間に懸架される基材Wに、第二たるみ部19を生じさせる。底位置検出手段32は、その第二たるみ部19の底位置を検出する。本実施形態の場合、底位置検出手段32は、前記底位置として、第二たるみ部19の底19bの高さ方向の位置を検出する。
【0040】
底位置検出手段32は、例えば非接触式のセンサ34として、超音波センサ又は光センサを有する。センサ34の検出ヘッド35の位置は固定されている。図2に示す形態の場合、検出ヘッド35は、底19bよりも上に位置し、検出ヘッド35から超音波又は光を下となる底19bに向かって照射する。センサ34により、センサ基準位置から底19bまでの距離が、第二たるみ部19の底位置として検出される。
【0041】
図示しないが、検出ヘッド35は、底19bよりも下に位置していてもよい。この場合、検出ヘッド35から超音波又は光を上となる底19bに向かって照射する。そのセンサ34により、センサ基準位置から底19bまでの距離が、第二たるみ部19の底位置として検出される。
【0042】
制御装置20は、演算処理ユニット及び記憶装置等を有する。制御装置20は、予め記憶されているコンピュータプログラムにしたがって演算処理ユニットが各種処理を行う。その処理として、制御装置20は、定常処理及び変更処理を行う。
【0043】
〔定常処理〕
定常処理は、底位置検出手段32(センサ34)の検出結果に基づいて、第二たるみ部19の底位置を制御範囲に保つための処理である。制御装置20の記憶装置に、第二たるみ部19の底位置についての目標値(目標高さ)、及び、その目標値からの高さ方向の変動の許容値が記憶されている。この許容値が、前記制御範囲である。
【0044】
前記のとおり、底位置検出手段32により、第二たるみ部19の底位置が検出される。その底位置が、前記目標値に近づき、かつ、前記許容値の範囲に収まるように、第二たるみ部19のたるみ量を、制御装置20は制御する。その制御の具体的手段は、第二搬送ロール29の回転速度制御である。制御装置20は、定常処理のために、例えばPID制御を行う。
【0045】
ここで、第二たるみ部19の上流側に位置するコンベア27は、基材Wを一定速度で搬送する。このため、第二搬送ロール29の回転速度を高めると、吸着する基材Wの搬送速度は高くなる。この場合、第二たるみ部19のたるみ量が少なくなり、底位置を上げることが可能となる。第二搬送ロール29の回転速度を低くすると、吸着する基材Wの搬送速度は低くなる。この場合、第二たるみ部19のたるみ量が多くなり、底位置を下げることが可能となる。
【0046】
以上より、定常処理によれば、底位置検出手段32(センサ34)の検出結果に基づいて、第二たるみ部19の底位置を制御範囲に保つことが可能となる。
【0047】
〔変更処理〕
基材Wに蛇行が生じ、その蛇行に関するパラメータにより、蛇行を抑えるべき場合、制御装置20は、変更処理を行う。変更処理として、第二たるみ部19の底位置を下げるための制御を行う。第二たるみ部19の底位置が下に変更されると、基材Wに生じる自重による張力が増す。その結果、基材Wの蛇行を抑えることが期待され、基材Wの搬送を安定させることが可能となる。
【0048】
変更処理は、基材Wの蛇行に関する前記パラメータに基づいて、第二たるみ部19の底位置を変更する処理である。第二たるみ部19の底位置を変更するために、制御装置20は、前記定常処理の場合と同様、第二搬送ロール29の回転速度制御を行う。
つまり、制御装置20は、変更処理として、第二搬送ロール29の回転による基材Wの搬送速度を変更する。第二たるみ部19の上流側から連続的に基材Wを搬送するコンベア27の搬送速度よりも、第二搬送ロール29による基材Wの搬送速度を遅くすると、第二たるみ部19の底位置を下げることができる。反対に、コンベア27の搬送速度よりも、第二搬送ロール29の搬送速度を速くすると、第二たるみ部19の底位置を上げることができる。
なお、第二たるみ部19は大きければ大きいほど良いわけではない。これは、第二たるみ部19が大きすぎると自重で基材Wが伸びる可能性があるためである。
【0049】
変更処理は、基材Wの蛇行に関する前記パラメータに基づいて実行される。その具体例を説明する。
前記パラメータが、基材Wの幅方向についての、基材Wの変位量(蛇行量の累積)を含む場合を説明する。前記パラメータである基材Wの変位量が大きくなると、または、前記変位量の大きい状態が継続すると、制御装置20は、変更処理として、第二たるみ部19の底位置を下げる。
【0050】
つまり、基材Wが大きく蛇行したり、大きく蛇行した状態が継続したりすると、蛇行を抑えるために、変更処理が行われる。第二たるみ部19の底位置を下げることで、第二たるみ部19が長くなって、第二搬送ロール29側の基材Wに、基材Wの自重による張力が付与される。その結果、基材Wの搬送を安定させることが可能となる。
【0051】
前記パラメータが、蛇行修正装置15による蛇行の修正動作の頻度を含む場合を説明する。前記パラメータである前記修正動作の頻度が高くなると、制御装置20は、変更処理として、第二たるみ部19の底位置を下げる。
【0052】
つまり、蛇行修正装置15が頻繁に蛇行を修正する場合、蛇行修正装置15よりも上流側において蛇行を抑えるために、変更処理が実行される。第二たるみ部19の底位置を下げることで、第二たるみ部19が長くなって、第二搬送ロール29側の基材Wに、基材Wの自重による張力が付与される。その結果、基材Wの搬送を安定させることが可能となる。
【0053】
〔調整装置14の機能〕
以上のように、調整装置14は、基材Wが架けられる第一搬送ロール28及び第二搬送ロール29と、基材Wの蛇行に関するパラメータを取得する蛇行検出手段31と、基材Wの第二たるみ部19の底位置を検出する底位置検出手段32と、定常処理及び変更処理を行う制御装置20とを有する。定常処理は、底位置検出手段32の検出結果に基づいて前記底位置を制御範囲に保つ処理である。変更処理は、前記パラメータに基づいて前記底位置を変更する処理である。
【0054】
前記構成を有する調整装置14によれば、第一搬送ロール28と第二搬送ロール29との間において、基材Wにたるみ(第二たるみ部19)が生じる。底位置検出手段32は、第二たるみ部19の底位置を検出する。制御装置20は、定常処理として、その底位置を制御範囲に保つための制御を行う。
【0055】
基材Wに蛇行が生じ、その蛇行に関するパラメータにより、蛇行を抑えるべき場合、制御装置20は、変更処理として、第二たるみ部19の底位置を下げるための制御を行う。第二たるみ部19の底位置が下に変更されると、基材Wに生じる自重による張力が増す。その結果、基材Wの蛇行を抑えることが期待され、基材Wの搬送を安定させることが可能となる。
【0056】
変更した底位置で第二たるみ部19が安定するように、底位置検出手段32は、第二たるみ部19の底位置を検出する。制御装置20は、定常処理として、その底位置を新たな制御範囲に保つための制御を行う。なお、変更処理によって、底位置を下げると、定常処理での制御範囲も下がる。
【0057】
本実施形態の場合、第二搬送ロール29は、第一搬送ロール28よりも高い位置にある。このため、第二たるみ部19の底19bから第二搬送ロール29までの距離が、底19bから第一搬送ロール28までの距離よりも、長くなる。第二搬送ロール29側の基材Wに、基材Wの自重による張力が付与されやすい。
【0058】
〔蛇行修正装置15〕
前記調整装置14は、自重によって基材Wに低張力を付与して、基材Wの搬送を安定させようとする装置である。
これに対して、蛇行修正装置15は、基材Wの蛇行を強制的に修正するための装置である。蛇行修正装置15は、基材Wの位置ずれを検知して修正する。
【0059】
図3は、蛇行修正装置15の一例を示す平面図である。図2及び図3において、蛇行修正装置15は、第二搬送ロール(29)、アクチュエータ41、噴出機構42、下流側ロール(30)、押さえ部材43、及び、制御装置(20)を有する。
蛇行修正装置15の上流側に位置するロール29が、前記第二搬送ロールである。以下、ロール29を第二搬送ロール29と呼ぶ。本実施形態の場合、前記のとおり、第二搬送ロール29は、調整装置14と蛇行修正装置15とに兼用されている。第二搬送ロール29の下流側の隣に位置するロール30が、下流側ロールである。ロール30を下流側ロール30と呼ぶ。
【0060】
蛇行修正装置15が有する前記制御装置は、塗布装置10が有する制御装置20の機能の一部により構成される。なお、蛇行修正装置15の制御装置は、塗布装置10の制御装置20とは別であるコンピュータにより構成されていてもよい。
【0061】
第二搬送ロール29は、前記のとおり、回転駆動するとともに、基材Wを吸着可能である。第二搬送ロール29は、蛇行修正装置15のフレーム(図示せず)に変位可能となって支持されている。図3に示す形態の場合、第二搬送ロール29は、基材Wの搬送方向に直交する方向に変位可能となって支持されている。変位後の第二搬送ロール29を二点鎖線で示している。
【0062】
図4は、蛇行修正装置15の変形例を示す平面図である。第二搬送ロール29は、第二搬送ロール29の長手方向の中心を通過する鉛直線Lを基準として、揺動変位可能となって支持されている。つまり、第二搬送ロール29は、前記鉛直線Lを中心として搬送方向に対して傾くことができる。変位後の第二搬送ロール29を二点鎖線で示している。
【0063】
図3に示す蛇行修正装置15の場合、アクチュエータ41は、第二搬送ロール29を、第二搬送ロール29の軸方向に変位可能とする装置である。第二搬送ロール29の軸方向は、搬送方向に直交する方向である。
図4に示す蛇行修正装置15の場合、アクチュエータ41は、第二搬送ロール29を、傾ける方向に変位可能とする装置である。
図3の場合であっても、図4の場合であっても、アクチュエータ41は、例えば、伸縮する流体シリンダ等により構成される。アクチュエータ41の動作は、制御装置20によって制御される。なお、アクチュエータ41の構成は、他であってもよい。
【0064】
図5は、噴出機構42のイメージ図である。噴出機構42は、第二搬送ロール29と基材Wとの間にエア等のガスを噴出する。噴出機構42は、基材Wの幅方向に沿って配置されている複数のノズル46を有する。ノズル46は、コンプレッサ等の加圧ガス源47からガスの供給を受け、そのガスを噴出する。
【0065】
各ノズル46と加圧ガス源47とを繋ぐ配管の途中に、開閉バルブ48が設けられている。ノズル46の数と同数の開閉バルブ48が存在する。開閉バルブ48を閉じることで、その開閉バルブ48と繋がるノズル46から、ガスは噴出されない。開閉バルブ48の開閉動作は、制御装置20によって制御される。制御装置20は、開状態とする開閉バルブ48を選択する制御を行う。つまり、制御装置20は、ガスを噴出させるノズル46を選択する制御を行う。
【0066】
図3又は図4において、下流側ロール30は、第二搬送ロール29よりも基材Wの搬送方向の下流側に位置する。下流側ロール30は、回転駆動するロールであってもよいが、自由に回転自在である回転駆動しないロールである。下流側ロール30は、第二搬送ロール29と異なり、軸方向に又は傾く方向に変位不能である。
【0067】
押さえ部材43は、下流側ロール30との間で基材Wを挟むための部材である。基材Wを搬送している通常時、押さえ部材43は、下流側ロール30に沿って送られる基材Wから、離れていて、基材Wを挟んでいない。後に説明するが、第二搬送ロール29の復帰動作(初期化)を行う場合に、押さえ部材43は、下流側ロール30との間で基材Wを挟む。押さえ部材43は、アクチュエータ44によって移動する。アクチュエータ44は、例えば、伸縮する流体シリンダ等により構成される。アクチュエータ44の動作は、制御装置20によって制御される。
【0068】
押さえ部材43は、回転可能なローラにより構成されていてもよいが、回転しないブロックにより構成されているのが好ましい。押さえ部材43は、ゴム等の弾性変形可能な部材により構成されている。
ここで、塗布部12では(図1参照)、基材Wの一部を残して塗液が塗布される。本実施形態の場合(図3又は図4参照)、基材Wの幅方向の両縁部Weを残して、塗液が塗布される。両縁部Weが、非塗布面となる。そこで、押さえ部材43は、基材Wのうち、塗液が塗布されていない非塗布面(縁部We)に接触する。これにより、押さえ部材43が、塗液の塗布された塗布面を傷付けない。
【0069】
基材搬送装置11は、図2に示すように、第二搬送ロール29よりも基材Wの搬送方向の上流側に位置する上流側ロール(28)を有する。その上流側ロールは、前記第一搬送ロール28である。前記のとおり、基材搬送装置11は、第一搬送ロール(上流側ロール)28と第二搬送ロール29との間に懸架される基材Wに、第二たるみ19を生じさせた状態で、基材Wを搬送する。
【0070】
〔基材Wの蛇行の修正動作〕
蛇行修正装置15は、第二搬送ロール29と下流側ロール30との間における、基材Wの蛇行を検出する蛇行検出手段31を有する。本実施形態の場合、蛇行検出手段31は、調整装置14が有する蛇行検出手段31と兼用される。前記のとおり、蛇行検出手段31は、基材Wの幅方向の端(縁部We)の位置を検出する非接触のセンサ33を有する。センサ33は、その基材Wの端の位置が、直進している場合と比較して、搬送方向の直交方向のいずれか一方に変位していることを検出する。これにより、基材Wの蛇行が検出される。
【0071】
制御装置20に蛇行の許容値が設定されている。蛇行が許容値を超えると、つまり、センサ33が検出した基材Wの幅方向の端(縁部We)の位置が、許容値を超えると、制御装置20は、蛇行修正装置15に修正動作を行わせる司令信号を出力する。すると、蛇行修正装置15は、修正動作を開始する。
【0072】
図3に示す蛇行修正装置15の場合、蛇行する基材Wを吸着する第二搬送ロール29を、その軸方向に変位させる。これにより、基材Wの進行方向が矯正され、蛇行を修正することが可能となる。具体的に説明すると、基材Wが、蛇行して、幅方向の一方側(幅方向の第一側)に変位する場合、アクチュエータ41は、その基材Wを吸着した状態にある第二搬送ロール29を、蛇行方向と反対となる幅方向の他方側(幅方向の第二側)に変位させる。
【0073】
図4に示す蛇行修正装置15の場合、蛇行する基材Wを吸着する第二搬送ロール29を、傾ける方向に変位させる。これにより、基材Wの進行方向が矯正され、蛇行を修正することが可能となる。具体的に説明すると、基材Wが、蛇行して、幅方向の一方側(幅方向の第一側)に変位する場合、アクチュエータ41は、搬送方向が、蛇行方向と反対となる幅方向の他方側(幅方向の第二側)に向かうように、その基材Wを吸着した状態にある第二搬送ロール29を傾ける。
【0074】
以上のように、図3に示す蛇行修正装置15の場合であっても、図4に示す蛇行修正装置15の場合であっても、アクチュエータ41が第二搬送ロール29を変位させることで、基材Wの蛇行を修正することが可能となる。
【0075】
アクチュエータ41は、例えば伸縮動作するが、限界まで伸縮動作すると、第二搬送ロール29は、ストロークエンドに到達し、それ以上、変位不能となる。
蛇行の修正のために、第二搬送ロール29がストロークエンドまで変位し、変位不能となった場合の、復帰動作について、以下、説明する。
【0076】
〔第二搬送ロール29の復帰動作〕
第二搬送ロール29が、ストロークエンドに到達した、又は、ストロークエンドに到達する直前にある等の第二搬送ロール29の移動限界を検出するための検知装置50(図6参照)を、蛇行修正装置15は有する。
図6(A)は、図3に示す蛇行修正装置15が採用される場合の、検知装置50の説明図である。検知装置50は、検出部材(ドグ)52と、検出部材52を検出する2つのセンサ53とを有する。図6(A)は、検知装置50を搬送方向に沿って見た図である。図6(B)は、検知装置50を搬送方向の直交方向に沿って見た図である。
【0077】
第二搬送ロール29は、ロールフレーム51によって回転可能に支持されている。ロールフレーム51は、第二搬送ロール29と一体となって変位する。ロールフレーム51の一部に、検出部材(ドグ)52は取り付けられている。
ロールフレーム51の近傍にある固定フレーム54に、2つのセンサ53は、搬送方向に直交する方向に間隔をあけて取り付けられている。センサ53は、検出部材52の位置を検出する機構であり、接触式であってもよく、非接触式であってもよい。
【0078】
図6(A)に示すように、第二搬送ロール29が、一方の移動限界と他方の移動限界との間の範囲にあって、変位可能となる範囲では、2つのセンサ53は、検出部材52を検出しない。
図6(C)に示すように、第二搬送ロール29がロールフレーム51と共に、一方の移動限界に達すると、一方のセンサ53は、検出部材52を検出する。
図示しないが、図6(C)の場合と反対に、第二搬送ロール29が、他方の移動限界に達すると、他方のセンサ53は、検出部材52を検出する。
センサ53の検出信号は、制御装置20に送信される。
【0079】
検知装置50は、第二搬送ロール29がストロークエンドまで変位し、変位不能となったことを検出する。この検出により、第二搬送ロール29の復帰動作が開始される。
なお、図4に示す蛇行修正装置15が採用される場合の検知装置50についても、同様に、検出部材52は、第二搬送ロール29の変位に伴って位置変化し、センサ53により検出される。
【0080】
復帰動作の具体例について説明する。
図2において、蛇行修正装置15によって、基材Wの修正動作を行った結果、第二搬送ロール29がストロークエンドまで変位し、変位不能となった場合、検知装置50(図6参照)により、第二搬送ロール29の移動限界が検知される。
すると、制御装置20は、第二搬送ロール29による基材Wの搬送を停止し、下流側ロール30と押さえ部材43とによって基材Wを挟む。第二搬送ロール29による基材Wの吸着を解除し、噴出機構42は、第二搬送ロール29と基材Wとの間にガスを噴出する。
【0081】
ガスの噴出により、基材Wは第二搬送ロール29から離れ、その間に、第二搬送ロール29を、例えば初期位置に戻す。第二搬送ロール29が、初期位置に戻されることで、第二搬送ロール29は、再び変位可能となる。
初期位置に戻った第二搬送ロール29は、基材Wの吸着を再開する。押さえ部材43による基材Wの押さえが解除されると、第二搬送ロール29による基材Wの吸着を伴う搬送が再開される。
以上より、第二搬送ロール29を用いた基材Wの蛇行の修正が再び可能となる。
【0082】
前記のとおり、第二搬送ロール29を初期位置に戻すために、第二搬送ロール29による基材Wの搬送は一旦停止される。これに対して、乾燥部13(図2参照)のコンベア27による基材Wの搬送は継続される。すると、第二たるみ部19のたるみ量が大きくなる。
第二搬送ロール29が初期位置に戻され、基材Wの吸着を伴う搬送を再開すると、制御装置20は、前記定常処理を実行する。つまり、制御装置20は、底位置検出手段32(センサ34)の検出結果に基づいて、第二たるみ部19の底位置を制御範囲に保つ制御を実行する。
【0083】
第二たるみ部19のたるみ量が大きくなっていることから、第二たるみ部19の底位置を制御範囲に保つためには、定常処理によれば、通常搬送時よりも、第二搬送ロール29の回転速度が高まる。第二たるみ部19の底位置が制御範囲に保たれると、第二搬送ロール29は、通常搬送時の回転速度となる。このように定常処理が実行され、更に必要に応じて、前記変更処理が実行され、自重によって基材Wに低張力を付与する。
【0084】
本実施形態の場合(図5参照)、噴出機構42は、基材Wの幅方向に沿って配置されている複数のノズル46を有する。複数のノズル46から、いくつかのノズル46を選択してガスを噴出させることが可能となる。基材Wに応じて、ガスを噴出させるノズル46を選択することが可能となる。
【0085】
例えば、搬送する対象が、幅方向の寸法の小さい基材Wである場合、その寸法に応じて、ガスを噴出するノズル46を選択することで、無駄にガスを噴出しないで済む。
搬送する基材Wの幅方向の寸法に変更がなくても、ガスを噴出させるノズル46の数を少なくすれば、基材Wを浮かせる量を小さくすることが可能である。ガスを噴出させるノズル46の数を多くすれば、基材Wを浮かせる量を大きくすることが可能となる。本実施形態の噴出機構42によれば、基材Wの浮き上がり量の調整が容易となる。
【0086】
本実施形態の基材搬送装置11は、前記のとおり(図2参照)、第一搬送ロール(上流側ロール)28と第二搬送ロール29との間に懸架される基材Wに、第二たるみ19を生じさせた状態で、基材Wを搬送する。このため、第二搬送ロール29の上流側に位置する基材Wに、その基材Wの自重によって張力が与えられる。
噴出機構42がガスを噴出する際に、前記張力により、基材Wは第二搬送ロール29から安定して浮上することが可能となる。ガスの噴出後、基材Wは、第二搬送ロール29上の所定位置に戻る。
【0087】
〔その他〕
前記実施形態では、基材搬送装置11が塗布装置10に用いられる場合について説明した。基材搬送装置11は、他の用途に用いられてもよい。また、基材搬送装置11が塗布装置10に用いられる場合において、塗布部12は、インクジェット方式以外の塗布装置であってもよい。
【0088】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は前述の実施形態に限定されるものではなく、この技術的範囲には特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0089】
11 基材搬送装置
28 第一搬送ロール(上流側ロール)
29 第二搬送ロール(搬送ロール)
30 下流側ロール
41 アクチュエータ
42 噴出機構
43 押さえ部材
46 ノズル
W 基材
図1
図2
図3
図4
図5
図6