(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130051
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】止め輪、及び、固定構造
(51)【国際特許分類】
F16B 21/18 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
F16B21/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039544
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122770
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】中岡 彦太郎
【テーマコード(参考)】
3J037
【Fターム(参考)】
3J037AA07
3J037JA13
3J037JA14
(57)【要約】
【課題】例えば、止め輪の周囲に部品や配管等が込み入っており、従来の止め輪では、取り付け、取り外しが困難な作業環境であっても、容易に取り付け、取り外しができ、作業性(作業効率)を向上することが可能な止め輪を提供する。
【解決手段】止め輪1は、被固定物30の軸方向への移動を規制する止め輪であって、軸方向から見て有端の略円環状に形成され、かつ、径方向から見て軸方向に離間する螺旋状に形成されている。また、止め輪1では、一方の端部が径方向外側にL字状に折り曲げられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被固定物の軸方向への移動を規制する止め輪であって、
軸方向から見て有端の略円環状に形成され、かつ、径方向から見て軸方向に離間する螺旋状に形成されていることを特徴とする止め輪。
【請求項2】
一方の端部が径方向に折り曲げられていることを特徴とする請求項1に記載の止め輪。
【請求項3】
請求項2に記載の止め輪と、
前記被固定物を収容する収容部を有し、該収容部の内周面に、前記止め輪が嵌まる螺旋状の止め輪溝が形成されたケースと、を備えることを特徴とする固定構造。
【請求項4】
前記ケースの収容部の開口側の端面に取り付けられ、該収容部を塞ぐカバーを備え、
前記ケースの前記端面の外縁部には、前記止め輪の径方向に折り曲げられた一方の端部が係止される凹部が形成されており、
前記カバーには、前記ケースに形成された凹部に嵌まる凸部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の固定構造。
【請求項5】
前記ケースの収容部に収容される前記被固定物は、前記止め輪と当接する端面の少なくとも外縁部が前記止め輪のリード角と等しい角度に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止め輪、及び、該止め輪を用いた固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被固定物(保持部品)の軸方向への移動を規制(禁止)するために、すなわち、軸方向への抜け落ちを防止するために、止め輪(サークリップ)が広く用いられている。止め輪は、例えば、有端のリング状(略C字状)に形成された本体部と、該本体部の両端に径方向に突設された耳部とを備えて構成されている。また、耳部には、貫通孔(治具用孔)が形成されている。
【0003】
止め輪は、例えば、軸の外周面又は穴の内周面に、軸方向と直交する方向(周方向)に形成された止め輪溝に嵌めて(嵌着されて)用いられる。止め輪は、サークリッププライヤ等の治具(工具)を用いて拡径又は縮径することにより、止め輪溝に取り付け、又は、止め輪溝から取り外される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、止め輪の周囲に部品や配管等が込み入っており、治具用孔にサークリッププライヤの先端(爪)を差し込んで、拡径又は縮径しずらい場合、すなわち、従来の止め輪では、取り付け、取り外しが困難な作業環境の場合、止め輪の取り付け又は取り外しの作業性(作業効率)が低下する。そのため、例えば、止め輪の周囲に部品や配管等が込み入っており、従来の止め輪では、取り付け、取り外しが困難な作業環境であっても、容易に取り付け、取り外しができ、作業性を向上することのできる止め輪が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、例えば、止め輪の周囲に部品や配管等が込み入っており、従来の止め輪では、取り付け、取り外しが困難な作業環境であっても、容易に取り付け、取り外しができ、作業性(作業効率)を向上することが可能な止め輪、及び、該止め輪を用いた固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る止め輪は、被固定物の軸方向への移動を規制する止め輪であって、軸方向から見て有端の略円環状に形成され、かつ、径方向から見て軸方向に離間する螺旋状に形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る止め輪によれば、軸方向から見て有端の略円環状に形成され、かつ、径方向から見て軸方向に離間する螺旋状に形成されている。そのため、止め輪を回転させることで、軸方向に動かすことができ、止め輪の取り付け、取り外しができる。すなわち、従来の止め輪のように、取り付け、取り外しの際に、例えば、治具用孔にサークリッププライヤの先端(爪)を差し込んで、径方向に拡径又は縮径する必要がなく、狭いスペースでも容易に取り付け、取り外しができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、止め輪の周囲に部品や配管等が込み入っており、従来の止め輪では、取り付け、取り外しが困難な作業環境であっても、容易に取り付け、取り外しができ、作業性(作業効率)を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る止め輪を示す正面図及び側面図である。
【
図2】実施形態に係る止め輪、及び、該止め輪を用いた固定構造を示す正面図、及び、側面図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、特に区別する必要がある場合を除いて、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0012】
まず、
図1~
図3を併せて用いて、実施形態に係る止め輪1、及び、該止め輪1を用いた固定構造の構成について説明する。
図1は、止め輪1を示す正面図(軸方向から見た図)及び側面図(径方向から見た図)である。
図2は、止め輪1、及び、該止め輪1を用いた固定構造を示す正面図、及び、側面図である。
図3は、
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【0013】
止め輪(サークリップ)1は、被固定物(保持部品)30の軸方向への移動を規制(禁止)する、すなわち、軸方向への抜け落ちを防止する部品である。
【0014】
特に、止め輪1は、例えば、止め輪1の周囲に部品や配管等が込み入っており、従来の止め輪では、取り付け、取り外しが困難な作業環境であっても(特に狭いスペースでも)、容易に取り付け、取り外しができ、作業性(作業効率)を向上する機能を有している。
【0015】
そのため、止め輪1は、軸方向から見て有端の略円環状(略リング状)に形成され、かつ、径方向から見て軸方向に離間する螺旋状に形成されている。また、止め輪1は、断面が、例えば円形に形成されている。なお、止め輪1は、断面が矩形等に形成されていてもよい。
【0016】
止め輪1は、例えば、ばね鋼やステンレスばね鋼等の線材が所定のピッチで螺旋状に巻回されることにより形成される。止め輪1は、例えば、一回転(360°)+α(後述する折り曲げ部1aとのオーバーラップ分)以上巻かれていることが好ましく、1.5回転~2回転巻かれていることがより好ましい。また、止め輪1のピッチ(上記所定のピッチ)は、例えば、組付け性や、スペース、強度、後述するケース10の素材等を考慮して設定される。
【0017】
止め輪1がケース10内(止め輪溝10b)に入り込んでしまうことを防止するため、また、止め輪1の抜けを防止するために、止め輪1では、一方の端部が径方向外側(外方)にL字状に折り曲げられている。すなわち、止め輪1の一方の端部には折り曲げ部1aが形成されている。
【0018】
次に、止め輪1を用いた固定構造について説明する。固定構造は、上述した止め輪1と、被固定物(保持部品)30を収容する収容部10aを有し、該収容部10aの内周面に止め輪1が嵌まる(嵌着される)螺旋状の止め輪溝(係止溝)10bが形成されたケース(外側部材)10とを備える。ケース10は、例えば、有底円筒状等に形成されている。また、止め輪溝10bは、止め輪1が嵌まるように、断面が半円状に形成されている。なお、止め輪1の断面が矩形に形成されている場合には、該止め輪1が嵌まるように、止め輪溝10bの断面も矩形に形成される。
【0019】
また、固定構造は、ケース10の収容部10aの開口側の端面に取り付けられ、該収容部10aを塞ぐ(蓋をする)カバー(蓋)20を備えている。ここで、ケース10の端面の外縁部には、止め輪1の折り曲げ部1aが係止される凹部(又は切り欠き)10cが形成されている。一方、カバー20の外縁部には、ケース10に形成された凹部10cに嵌まる(嵌合する)凸部20aが形成されている。そして、ケース10の凹部10cにカバー20の凸部20aが嵌められることにより、ケース10の凹部10cの側面とカバー20の凸部20aの側面とにより折り曲げ部1aが挟まれ、止め輪1の抜けが防止される。
【0020】
止め輪1を被固定物30の端面(外縁部)に沿って当接させて、より効果的に被固定物30の軸方向への移動を規制するため、ケース10の収容部10aに収容される被固定物30は、止め輪1と当接する端面(止め輪1により係止される端面)が軸方向から見て円形に、かつ、該端面の少なくとも外縁部が止め輪1のリード角と等しい角度に形成されている。ここで、リード角は、止め輪1の1回転分の長さ(有効径の円周)に対する止め輪1が1回転したときに軸方向に進む距離(リード)が作る角度である。
【0021】
次に、止め輪1の取り付け方法、及び、取り外し方法について説明する。まず、上述した止め輪1をケース10に取り付ける際には、止め輪1の他方の端部を、被固定物30が収容されたケース10の凹部10cの側面に露出している止め輪溝10bに合わせる(嵌める)。続いて、止め輪1を回転させて軸方向に動かし、折り曲げ部1aが凹部10cの側面と当接するまでケース10(止め輪溝10b)に進入させる。
【0022】
その後、カバー20の凸部20aがケース10の凹部10cに嵌まるように、ケース10にカバー20を被せ、止め輪1の抜け止めをする。このようにして、止め輪1がケース10に取り付けられる。
【0023】
一方、止め輪1をケース10から取り外す際には、まず、ケース10からカバー20を取り外す。次に、止め輪1の折り曲げ部1aを治具(工具)等でつまんで取り付け時と逆方向に回すことにより、止め輪1を軸方向に動かして(退行させて)ケース10から取り出す。その後、被固定物30をケース10から取り出し、分解が終了する。
【0024】
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る止め輪1によれば、軸方向から見て有端の略円環状に形成され、かつ、径方向から見て軸方向に離間する螺旋状に形成されているため、止め輪1を回転させることで、軸方向に動かすことができ、止め輪1の取り付け、取り外しができる。すなわち、従来の止め輪のように、取り付け、取り外しの際に、例えば、治具用孔にサークリッププライヤの先端(爪)を差し込んで、径方向に拡径又は縮径する必要がなく、狭いスペースでも容易に取り付け、取り外しができる。
【0025】
その結果、例えば、止め輪1の周囲に部品や配管等が込み入っており、従来の止め輪では、取り付け、取り外しが困難な作業環境であっても(特に狭いスペースでも)、容易に取り付け、取り外しができ、作業性(作業効率)を向上することが可能となる。
【0026】
また、本実施形態によれば、一方の端部が径方向外側にL字状に折り曲げられて折り曲げ部1aが形成されている。そのため、止め輪1がケース10内(止め輪溝10b)に入り込んでしまうことを防止できる。また、折り曲げ部1aをカバー20の凸部20aで係止することにより、止め輪1の抜けを防止することができる。さらに、止め輪1を取り外す際に、該折り曲げ部1aをつまむことにより容易に取り外すことができる。
【0027】
本実施形態に係る固定構造によれば、止め輪1と、被固定物30を収容する収容部10aを有し、該収容部10aの内周面に、止め輪1が嵌まる螺旋状の止め輪溝10bが形成されたケース10とを備えるため、螺旋状の止め輪溝10bに螺旋状の止め輪1を嵌めることで、被固定物30の軸方向の移動を規制(禁止)することができる。
【0028】
また、本実施形態によれば、ケース10の収容部10aの開口側の端面に取り付けられ、該収容部10aを塞ぐカバー20を備え、ケース10の端面の外縁部には、止め輪1の折り曲げ部1aが係止される凹部10cが形成されており、カバー20の外縁部には、ケース10に形成された凹部10cに嵌まる凸部20aが形成されている。そのため、折り曲げ部1aの動きをカバー20の凸部20aで止めることにより、止め輪1の抜けを確実に防止することができる。
【0029】
本実施形態によれば、ケース10の収容部10aに収容される被固定物30は、止め輪1と当接する端面の少なくとも外縁部が止め輪1のリード角と等しい角度に形成されている。そのため、被固定物30の端面(外縁部)に沿って止め輪1を当接させることができ、より効果的に被固定物30の軸方向への移動を規制(禁止)することができる。
【0030】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、本発明を穴用止め輪(ケースの内周面に形成された止め輪溝に係止されて使用される止め輪)に適用した場合を例にして説明したが、本発明は、軸用止め輪(軸用サークリップ)に適用することもできる。すなわち、止め輪が、軸等の外周面に形成された螺旋状の止め輪溝に嵌められる構成とすることもできる。
【0031】
また、例えば、止め輪1の断面形状や太さ(線材の径)、巻回数、有効径、リード角等は、要件等に応じて任意に設定することができ、上記実施形態には限られない。さらに、止め輪1の折り曲げ部1aは、線材を折り曲げて形成するのではなく、例えば、溶接等で突設するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 止め輪(サークリップ)
1a 折り曲げ部
10 ケース
10a 収容部
10b 止め輪溝
10c 凹部
20 カバー(蓋)
20a 凸部
30 被固定物(保持部品)