(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130052
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】通信システム、通信方法および通信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 7/155 20060101AFI20240920BHJP
H04W 28/22 20090101ALI20240920BHJP
H04W 84/06 20090101ALI20240920BHJP
【FI】
H04B7/155
H04W28/22
H04W84/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039545
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前中 脩人
【テーマコード(参考)】
5K067
5K072
【Fターム(参考)】
5K067BB06
5K067DD45
5K067EE02
5K067EE10
5K072AA02
5K072AA12
5K072BB22
5K072DD01
5K072DD19
5K072GG25
5K072GG26
5K072GG27
5K072HH02
(57)【要約】
【課題】通信システムにおいて伝送レートの自動制御を可能にする。
【解決手段】通信装置300は、アップリンクデータ112を変調して生成されるアップリンク信号を送信する。アップリンクデータ112は、ダウンリンク信号が受信されたときの搬送波対雑音密度比を示す。通信装置200は、アップリンク信号を受信し、アップリンク信号をアップリンクデータ112に復調し、アップリンクデータ112に示される前記搬送波対雑音密度比に基づいて伝送レートを決定し、決定された伝送レートで伝送が行われるようにダウンリンクデータ122を生成し、ダウンリンクデータ122を変調してダウンリンク信号を送信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通信装置と第2通信装置を有し、
前記第1通信装置は、第1通信データを変調して生成される第1通信信号を前記第2通信装置へ送信し、
前記第1通信データは、前記第2通信装置から前記第1通信装置への通信信号が前記第1通信装置によって受信されたときの搬送波対雑音密度比を示し、
前記第2通信装置は、
前記第1通信信号を受信し、
前記第1通信信号を前記第1通信データに復調し、
前記第1通信データに示される前記搬送波対雑音密度比に基づいて前記第1通信装置に対する伝送レートを決定し、
前記第1通信装置に対する前記伝送レートで前記第1通信装置への伝送が行われるように第2通信データを生成し、
前記第2通信データを第2通信信号に変調し、
前記第2通信信号を前記第1通信装置へ送信する
通信システム。
【請求項2】
前記第2通信装置は、
前記第1通信信号が受信されたときの搬送波対雑音密度比を検知し、
検知された搬送波対雑音密度比を示す通信データを前記第2通信データとして生成する請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記第1通信装置と前記第2通信装置は、移動体に備えられる通信装置と固定局に備えられる通信装置の組である
請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記第1通信装置と前記第2通信装置は、人工衛星に備えられる通信装置と地上局に備えられる通信装置の組である
請求項1に記載の通信システム。
【請求項5】
第1通信装置は、第1通信データを変調して生成される第1通信信号を第2通信装置へ送信し、
前記第1通信データは、前記第2通信装置から前記第1通信装置への通信信号が前記第1通信装置によって受信されたときの搬送波対雑音密度比を示し、
第2通信装置は、
前記第1通信信号を受信し、
前記第1通信信号を前記第1通信データに復調し、
前記第1通信データに示される前記搬送波対雑音密度比に基づいて前記第1通信装置に対する伝送レートを決定し、
前記第1通信装置に対する前記伝送レートで前記第1通信装置への伝送が行われるように第2通信データを生成し、
前記第2通信データを第2通信信号に変調し、
前記第2通信信号を前記第1通信装置へ送信する
通信方法。
【請求項6】
通信相手と通信する通信装置であり、
前記通信相手は、通信データを変調して生成される通信信号を前記通信装置へ送信し、
前記通信データは、前記通信装置から前記通信相手への通信信号が前記通信相手によって受信されたときの搬送波対雑音密度比を示し、
前記通信装置は、
前記通信相手の前記通信信号を受信する受信部と、
前記通信相手の前記通信信号を前記通信データに復調する復調部と、
前記通信相手の前記通信データに示される前記搬送波対雑音密度比に基づいて前記通信相手に対する伝送レートを決定する伝送レート制御部と、
前記通信相手に対する前記伝送レートで前記通信相手への伝送が行われるように自己の伝送する通信データを生成するデータ処理部と、
自己の前記通信データを通信信号に変調する変調部と、
自己の前記通信信号を前記通信相手へ送信する送信部と、
を備える通信装置。
【請求項7】
前記通信装置は、検知部を備え、
前記検知部は、前記通信相手の前記通信信号が受信されたときの搬送波対雑音密度比を検知し、
前記データ処理部は、検知された搬送波対雑音密度比を示す通信データを自己の前記通信データとして生成する
請求項6に記載の通信装置。
【請求項8】
前記通信相手が移動体に備えられ、前記通信装置は固定局に備えられる
請求項6に記載の通信装置。
【請求項9】
前記通信相手が人工衛星に備えられ、前記通信装置は地上局に備えられる
請求項6に記載の通信装置。
【請求項10】
前記通信相手が固定局に備えられ、前記通信装置は移動体に備えられる
請求項6に記載の通信装置。
【請求項11】
前記通信相手が地上局に備えられ、前記通信装置は人工衛星に備えられる
請求項6に記載の通信装置。
【請求項12】
通信相手と通信する通信装置による通信方法であり、
前記通信相手は、通信データを変調して生成される通信信号を前記通信装置へ送信し、
前記通信データは、前記通信装置から前記通信相手への通信信号が前記通信相手によって受信されたときの搬送波対雑音密度比を示し、
前記通信装置は、
前記通信相手の前記通信信号を受信し、
前記通信相手の前記通信信号を前記通信データに復調し、
前記通信相手の前記通信データに示される前記搬送波対雑音密度比に基づいて前記通信相手に対する伝送レートを決定し、
前記通信相手に対する前記伝送レートで前記通信相手への伝送が行われるように自己の通信データを生成し、
自己の前記通信データを通信信号に変調し、
自己の前記通信信号を前記通信相手へ送信する
通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、伝送レートを自動制御する通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
衛星等の移動体と地上局の間を結ぶ通信回線の信号強度は、通信距離および天候の変化などに応じて大きく変動する。以下、通信回線の信号強度を回線強度と称する。
【0003】
回線設計は、いかなる条件でも所望の通信回線が使用できるように行われる。しかし、通信回線が良好な環境で使用される場合、余剰電力が発生し、通信回線が非効率に使用される。余剰電力は回線マージンともいう。
そこで、伝送レートおよび送信電力が回線強度に応じて変更される方法が一般的に用いられる。
【0004】
深宇宙探査機に搭載される通信システムにおいては、衛星対地球距離の広範囲に渡る変化が課題となる。
そこで、距離の変化に応じた自由空間損失の増減に合わせ、アップリンクおよびダウンリンクの伝送レートを多段階に変更することが可能な構成が用いられている。
【0005】
特許文献1は、伝送レートおよび送信電力が回線強度に応じて変更される方法を開示している。具体的には、特許文献1は次のような通信を提案している。
移動局と固定局が衛星局を介してCDMA方式を使用して通信を行う。CDMAはCode Division Multiple Accessの略称である。
移動局と固定局のそれぞれが、受信電力を検出し、搬送波対雑音比(C/N)を判定する。そして、余剰電力がある場合、送信される情報量が増大される。
【0006】
しかし、特許文献1の方法では、対象となる通信方式が限定的である。さらに、特許文献1は、余剰電力が小さくなっていく場合に通信回線を維持する方法を述べていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
衛星に搭載される通信システムにおいて、通信距離などの変化に伴って通信状況が大きく変動する。しかし、通信状況の変動をリアルタイムに考慮して伝送レートを制御することは実用化されていない。
通信状況に関わらず一定の伝送レートで通信を行うと、条件が良い場合には非効率な余剰電力が発生し、条件が悪い場合には通信回線が成立しないおそれがある。
【0009】
伝送レートを多段階に設定することが可能な従来の機器がある。しかし、伝送レートはコマンドによって手動で設定する必要がある。そのため、運用上の負荷が大きい。また、伝送レートの選択を誤った場合には通信が途絶える可能性がある。
【0010】
本開示は、通信システムにおいて伝送レートの自動制御を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の通信システムは、第1通信装置と第2通信装置を有する。
前記第1通信装置は、第1通信データを変調して生成される第1通信信号を前記第2通信装置へ送信する。
前記第1通信データは、前記第2通信装置から前記第1通信装置への通信信号が前記第1通信装置によって受信されたときの搬送波対雑音密度比を示す。
前記第2通信装置は、
前記第1通信信号を受信し、
前記第1通信信号を前記第1通信データに復調し、
前記第1通信データに示される前記搬送波対雑音密度比に基づいて前記第1通信装置に対する伝送レートを決定し、
前記第1通信装置に対する前記伝送レートで前記第1通信装置への伝送が行われるように第2通信データを生成し、
前記第2通信データを第2通信信号に変調し、
前記第2通信信号を前記第1通信装置へ送信する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、通信システムにおいて伝送レートの自動制御が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態1における通信システム100の構成図。
【
図2】実施の形態1における通信装置200の構成図。
【
図3】実施の形態1における通信装置200の機能構成図。
【
図4】実施の形態1における通信装置300の構成図。
【
図5】実施の形態1における通信装置300の機能構成図。
【
図6】実施の形態1における通信方法(衛星側)のフローチャート。
【
図7】実施の形態1における通信方法(地上側)のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態および図面において、同じ要素または対応する要素には同じ符号を付している。説明した要素と同じ符号が付された要素の説明は適宜に省略または簡略化する。図中の矢印はデータの流れ又は処理の流れを主に示している。
【0015】
実施の形態1.
通信システム100について、
図1から
図7に基づいて説明する。
【0016】
***構成の説明***
図1に基づいて、通信システム100の構成を説明する。通信システム100は、実施の形態1における通信システムの例である。
通信システム100は、互いに無線で通信する複数の通信装置(200、300)を備える。
一方の通信装置200は、衛星側の通信装置であり、人工衛星101に備わる。人工衛星101は移動体である。
他方の通信装置300は、地上側の通信装置であり、地上局102に備わる。地上局102は固定局である。
通信装置(200、300)の動作を後述する。
【0017】
図2に基づいて、通信装置200の構成を説明する。
通信装置200は、アンテナ210と変復調回路220と処理回路230といったハードウェアを備える。これらのハードウェアは、信号線を介して互いに接続されている。
【0018】
アンテナ210は、受信用のアンテナと送信用のアンテナで構成されてもよいし、送受信用のアンテナで構成されてもよい。
アンテナ210は、受信部211と送信部212として機能する。
【0019】
変復調回路220は、電子回路である。
変復調回路220は、復調部221と検知部222と変調部223として機能する。
【0020】
処理回路230は、専用のハードウェアであってもよいし、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサであってもよい。
処理回路230は、伝送レート制御部231とデータ処理部232として機能する。
【0021】
専用のハードウェアは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGAまたはこれらの組み合わせである。
ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略称である。
FPGAは、Field Programmable Gate Arrayの略称である。
【0022】
プログラムは、光ディスクまたはフラッシュメモリ等の不揮発性の記録媒体にコンピュータ読み取り可能に記録(格納)することができる。
【0023】
処理回路230において、一部の機能が専用のハードウェアで実現されて、残りの機能がソフトウェアで実現されてもよい。
【0024】
図3に、通信装置200の機能構成を示す。
通信装置200の動作を後述する。
【0025】
図4に基づいて、通信装置300の構成を説明する。
通信装置300は、アンテナ310と変復調回路320と処理回路330といったハードウェアを備える。これらのハードウェアは、信号線を介して互いに接続されている。
【0026】
アンテナ310は、受信用のアンテナと送信用のアンテナで構成されてもよいし、送受信用のアンテナで構成されてもよい。
アンテナ310は、受信部311と送信部312として機能する。
【0027】
変復調回路320は、電子回路である。
変復調回路320は、復調部321と検知部322と変調部323として機能する。
【0028】
処理回路330は、専用のハードウェアであってもよいし、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサであってもよい。
処理回路330は、伝送レート制御部331とデータ処理部332として機能する。
【0029】
処理回路330において、一部の機能が専用のハードウェアで実現されて、残りの機能がソフトウェアで実現されてもよい。
【0030】
図5に、通信装置300の機能構成を示す。
通信装置300の動作を後述する。
【0031】
***動作の説明***
通信システム100の動作の手順は通信方法に相当する。
【0032】
図6に基づいて、通信方法における通信装置200の動作を説明する。
通信装置200の通信相手は、通信装置300である。
通信装置200は、ダウンリンク信号121を通信装置300へ送信する。
通信装置300は、アップリンク信号111を通信装置200へ送信する。
【0033】
ステップS101において、受信部211はアップリンク信号111を受信する。
【0034】
アップリンク信号111は、アップリンクデータ112を変調して生成される通信信号である。アップリンクデータ112は、地上側から衛星側へ伝送される通信データである。
アップリンクデータ112は、ペイロードとC/N0情報113を含む。ペイロードは、データ処理の対象となるデータ(データ本体)である。
C/N0情報113は、通信装置300においてダウンリンク信号121が受信されたときに検出された搬送波対雑音密度比(C/N0)を示す。
「C/N0」は搬送波対雑音密度比を意味する。
【0035】
アップリンク信号111は、変復調回路220へ入力される。
ステップS101の後、処理はステップS102とステップS104に進む。
【0036】
ステップS102において、復調部221は、アップリンク信号111をアップリンクデータ112に復調する。
アップリンクデータ112は、処理回路230へ入力される。
【0037】
ステップS103において、伝送レート制御部231は、アップリンクデータ112の中のC/N0情報113に示されるC/N0(地上側C/N0)に基づいて、通信装置300に対する伝送レートを決定する。
決定される伝送レートは、地上側C/N0が大きいほど大きい。地上側C/N0が大きいと通信回線にマージンが生じるためである。
決定される伝送レートは、地上側C/N0が小さいほど小さい。地上側C/N0が小さいと通信回線が成立しなくなる恐れがあるためである。
【0038】
例えば、伝送レートは次のように決定される。
伝送レート制御部231は、変換テーブルを用いて地上側C/N0を伝送レートに変換する。変換テーブルは、C/N0と伝送レートが対応付けられたテーブルであり、処理回路230のメモリにあらかじめ記憶される。
【0039】
ステップS103の後、処理はステップS105に進む。
【0040】
ステップS104において、検知部222は、ステップS101でアップリンク信号111が受信されたときのC/N0(衛星側C/N0)を検知する。
衛星側C/N0を示す情報をC/N0情報123と称する。
C/N0情報123は、処理回路230へ入力される。
【0041】
ステップS105において、データ処理部232は、アップリンクデータ112からペイロードを抽出し、ペイロードに対するデータ処理を実行する。
【0042】
また、データ処理部232は、ステップS103で決定された伝送レートとステップS104で得られたC/N0情報123を反映させてダウンリンクデータ122を生成する。
つまり、データ処理部232は、ステップS103で決定された伝送レートで通信装置300への伝送が行われるように、ダウンリンクデータ122を生成する。ダウンリンクデータ122は、ペイロードとC/N0情報123を含む。
ダウンリンクデータ122は、衛星側から地上側へ伝送される通信データである。
【0043】
ステップS106において、変調部223は、ダウンリンクデータ122をダウンリンク信号121に変調する。
ダウンリンク信号121は、ダウンリンクデータ122を変調して生成される通信信号である。
ダウンリンク信号121は、アンテナ210へ入力される。
【0044】
ステップS107において、送信部212は、ダウンリンク信号121を送信する。
【0045】
図7に基づいて、通信方法における通信装置300の動作を説明する。
通信装置300の通信相手は、通信装置200である。
通信装置300は、アップリンク信号111を通信装置200へ送信する。
通信装置200は、ダウンリンク信号121を通信装置300へ送信する。
【0046】
ステップS111において、受信部311はダウンリンク信号121を受信する。
ダウンリンク信号121は、変復調回路320へ入力される。
ステップS111の後、処理はステップS112とステップS114に進む。
【0047】
ステップS112において、復調部321は、ダウンリンク信号121をダウンリンクデータ122に復調する。
ダウンリンクデータ122は、処理回路330へ入力される。
【0048】
ステップS113において、伝送レート制御部331は、ダウンリンクデータ122の中のC/N0情報123に示されるC/N0(衛星側C/N0)に基づいて、通信装置200に対する伝送レートを決定する。
決定される伝送レートは、衛星側C/N0が大きいほど大きい。衛星側C/N0が大きいと通信回線にマージンが生じるためである。
決定される伝送レートは、衛星側C/N0が小さいほど小さい。衛星側C/N0が小さいと通信回線が成立しなくなる恐れがあるためである。
【0049】
伝送レートは、ステップS103における方法と同様の方法で決定される。
【0050】
ステップS113の後、処理はステップS115に進む。
【0051】
ステップS114において、検知部322は、ステップS111でダウンリンク信号121が受信されたときのC/N0(地上側C/N0)を検知する。
地上側C/N0を示す情報をC/N0情報113と称する。
C/N0情報113は、処理回路330へ入力される。
【0052】
ステップS115において、データ処理部332は、ダウンリンクデータ122からペイロードを抽出し、ペイロードに対するデータ処理を実行する。
【0053】
また、データ処理部332は、ステップS113で決定された伝送レートとステップS114で得られたC/N0情報113を反映させてアップリンクデータ112を生成する。
つまり、データ処理部332は、ステップS113で決定された伝送レートで通信装置200への伝送が行われるように、アップリンクデータ112を生成する。アップリンクデータ112は、ペイロードとC/N0情報113を含む。
【0054】
ステップS116において、変調部323は、アップリンクデータ112をアップリンク信号111に変調する。
アップリンク信号111は、アンテナ310へ入力される。
【0055】
ステップS117において、送信部212は、アップリンク信号111を送信する。
【0056】
***実施の形態1の効果***
無線通信においては、伝送レート(通信速度)と受信電力にはトレードオフの関係がある。伝送レートを高くすると通信速度は上がるが受信電力は下がる。伝送レートを低くすると通信速度は下がるが受信電力は上がる。
実施の形態1では、衛星側と地上側の双方において、受信信号波の搬送波対雑音密度比(C/N0)が測定され、C/N0が相互にフィードバックされる。そして、伝送レートが自動で制御される。
これにより、通信回線を確保できる範囲内で伝送レートが最大化され、効率の良い通信が実現される。
さらに、伝送レートを地上からのコマンドによって手動で変更する場合と比べて、運用上のリスクおよび運用の負荷が低減される。
【0057】
***実施の形態1のまとめ***
実施の形態1は、衛星と地上局の間で相互にデータを送受信する通信システムを開示し、特に通信回線を確実かつ効率的に確立することを図った衛星通信システムを開示する。
実施の形態1は、回線成立性と通信高速性とシステム運用性の全てが成り立つ衛星通信システムを実現することを目的として、衛星側と地上側との通信システムにおいて伝送レートを自動で最適化する。
【0058】
実施の形態1において、衛星通信システムは以下のような特徴を有する。
衛星通信システムは、衛星側と地上側の両方に、受信信号の搬送波対雑音密度比(C/N0)を検知するC/N0検知部を持つ。
衛星通信システムでは、受信信号のC/N0情報を衛星側と地上側で相互に送受信する。
衛星通信システムでは、相手側のC/N0情報を用いて、回線成立可能な範囲で最大の伝送レートが算出される。そして、伝送レートが自動的に制御される。
【0059】
***実施の形態1の補足***
実施の形態1は、好ましい形態の例示であり、本開示の技術的範囲を制限することを意図するものではない。実施の形態1は、部分的に実施してもよいし、他の形態と組み合わせて実施してもよい。フローチャート等を用いて説明した手順は、適宜に変更してもよい。
【0060】
通信装置(200、300)の各要素の「部」は、「処理」、「工程」、「回路」または「サーキットリ」と読み替えてもよい。
【0061】
以下に、本開示の諸態様を付記として記載する。
(付記1)
第1通信装置と第2通信装置を有し、
前記第1通信装置は、第1通信データを変調して生成される第1通信信号を前記第2通信装置へ送信し、
前記第1通信データは、前記第2通信装置から前記第1通信装置への通信信号が前記第1通信装置によって受信されたときの搬送波対雑音密度比を示し、
前記第2通信装置は、
前記第1通信信号を受信し、
前記第1通信信号を前記第1通信データに復調し、
前記第1通信データに示される前記搬送波対雑音密度比に基づいて前記第1通信装置に対する伝送レートを決定し、
前記第1通信装置に対する前記伝送レートで前記第1通信装置への伝送が行われるように第2通信データを生成し、
前記第2通信データを第2通信信号に変調し、
前記第2通信信号を前記第1通信装置へ送信する
通信システム。
【0062】
(付記2)
前記第2通信装置は、
前記第1通信信号が受信されたときの搬送波対雑音密度比を検知し、
検知された搬送波対雑音密度比を示す通信データを前記第2通信データとして生成する付記1に記載の通信システム。
【0063】
(付記3)
前記第1通信装置と前記第2通信装置は、移動体に備えられる通信装置と固定局に備えられる通信装置の組である
付記1または付記2に記載の通信システム。
【0064】
(付記4)
前記第1通信装置と前記第2通信装置は、人工衛星に備えられる通信装置と地上局に備えられる通信装置の組である
付記1から付記3のいずれか1項に記載の通信システム。
【0065】
(付記5)
第1通信装置は、第1通信データを変調して生成される第1通信信号を第2通信装置へ送信し、
前記第1通信データは、前記第2通信装置から前記第1通信装置への通信信号が前記第1通信装置によって受信されたときの搬送波対雑音密度比を示し、
第2通信装置は、
前記第1通信信号を受信し、
前記第1通信信号を前記第1通信データに復調し、
前記第1通信データに示される前記搬送波対雑音密度比に基づいて前記第1通信装置に対する伝送レートを決定し、
前記第1通信装置に対する前記伝送レートで前記第1通信装置への伝送が行われるように第2通信データを生成し、
前記第2通信データを第2通信信号に変調し、
前記第2通信信号を前記第1通信装置へ送信する
通信方法。
【0066】
(付記6)
通信相手と通信する通信装置であり、
前記通信相手は、通信データを変調して生成される通信信号を前記通信装置へ送信し、
前記通信データは、前記通信装置から前記通信相手への通信信号が前記通信相手によって受信されたときの搬送波対雑音密度比を示し、
前記通信装置は、
前記通信相手の前記通信信号を受信する受信部と、
前記通信相手の前記通信信号を前記通信データに復調する復調部と、
前記通信相手の前記通信データに示される前記搬送波対雑音密度比に基づいて前記通信相手に対する伝送レートを決定する伝送レート制御部と、
前記通信相手に対する前記伝送レートで前記通信相手への伝送が行われるように自己の伝送する通信データを生成するデータ処理部と、
自己の前記通信データを通信信号に変調する変調部と、
自己の前記通信信号を前記通信相手へ送信する送信部と、
を備える通信装置。
【0067】
(付記7)
前記通信装置は、検知部を備え、
前記検知部は、前記通信相手の前記通信信号が受信されたときの搬送波対雑音密度比を検知し、
前記データ処理部は、検知された搬送波対雑音密度比を示す通信データを自己の前記通信データとして生成する
付記6に記載の通信装置。
【0068】
(付記8)
前記通信相手が移動体に備えられ、前記通信装置は固定局に備えられる
付記6または付記7に記載の通信装置。
【0069】
(付記9)
前記通信相手が人工衛星に備えられ、前記通信装置は地上局に備えられる
付記6から付記8のいずれか1項に記載の通信装置。
【0070】
(付記10)
前記通信相手が固定局に備えられ、前記通信装置は移動体に備えられる
付記6または付記7に記載の通信装置。
【0071】
(付記11)
前記通信相手が地上局に備えられ、前記通信装置は人工衛星に備えられる
付記6、付記7または付記10に記載の通信装置。
【0072】
(付記12)
通信相手と通信する通信装置による通信方法であり、
前記通信相手は、通信データを変調して生成される通信信号を前記通信装置へ送信し、
前記通信データは、前記通信装置から前記通信相手への通信信号が前記通信相手によって受信されたときの搬送波対雑音密度比を示し、
前記通信装置は、
前記通信相手の前記通信信号を受信し、
前記通信相手の前記通信信号を前記通信データに復調し、
前記通信相手の前記通信データに示される前記搬送波対雑音密度比に基づいて前記通信相手に対する伝送レートを決定し、
前記通信相手に対する前記伝送レートで前記通信相手への伝送が行われるように自己の通信データを生成し、
自己の前記通信データを通信信号に変調し、
自己の前記通信信号を前記通信相手へ送信する
通信方法。
【符号の説明】
【0073】
100 通信システム、101 人工衛星、102 地上局、111 アップリンク信号、112 アップリンクデータ、113 C/N0情報、119 伝送レート情報、121 ダウンリンク信号、122 ダウンリンクデータ、123 C/N0情報、129 伝送レート情報、200 通信装置、210 アンテナ、211 受信部、212 送信部、220 変復調回路、221 復調部、222 検知部、223 変調部、230 処理回路、231 伝送レート制御部、232 データ処理部、300 通信装置、310 アンテナ、311 受信部、312 送信部、320 変復調回路、321 復調部、322 検知部、323 変調部、330 処理回路、331 伝送レート制御部、332 データ処理部。