(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130054
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】剥落防止材
(51)【国際特許分類】
E04C 5/07 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
E04C5/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039547
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100096611
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 清
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】小宮 克仁
(72)【発明者】
【氏名】新上 浩
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 裕生
(72)【発明者】
【氏名】臺 哲義
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直樹
【テーマコード(参考)】
2E164
【Fターム(参考)】
2E164AA07
2E164CB11
(57)【要約】
【課題】再生が可能な資源を用いてコンクリート部材の表面付近からコンクリート片が剥落するのを有効に防止する。
【解決手段】コンクリート部材7の表面と表面付近に配置された鉄筋9との間に埋め込まれ、表面付近のコンクリート片が剥落するのを防止する剥落防止材1であって、主要部が竹材からなる細棒部材2を組み合わせた網状体3となっている。該網状体に、網状の面から突き出すように竹材で形成された凸状部4が、網状の面に分布して複数が設けられ、これらの凸状部は、コンクリート部材を形成するコンクリートの打設時に、先端部が型枠に当接され、網状の面と型枠との間に未硬化コンクリートのモルタル成分が充填される程度の間隔を保持するものとする。凸状部は竹材の小片を取り付けたもの、例えば竹を輪切りにして得られる弧状の部材5や竹材を曲げ加工したものとすることができる。網状体に替えて竹合板からなる多孔板とすることもできる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート部材の表面と表面付近に配置された鉄筋との間に埋め込まれ、表面付近のコンクリート片が剥落するのを防止する剥落防止材であって、
竹材からなる細棒部材を組み合わせて網状体が形成され、
該網状体に、網状の面から突き出すように竹材で形成された凸状部が、網状の面に分布して複数が設けられ、
前記凸状部は、前記コンクリート部材を形成するコンクリートの打設時に、先端部が型枠に当接され、網状体と型枠との間に未硬化コンクリートのモルタル成分が充填される程度の間隔を保持するものであることを特徴とする剥落防止材。
【請求項2】
前記凸状部は、竹材を輪切りにして形成された弧状の部材で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の剥落防止材。
【請求項3】
前記凸状部は、竹材の繊維方向の棒状部材を弧状に曲げ加工することによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の剥落防止材。
【請求項4】
前記凸状部は、前記網状体を形成する細棒部材の所定間隔の3点を折り曲げ、山形に突き出すように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の剥落防止材。
【請求項5】
前記凸状部は、前記網状体に網状の面に沿って接合された竹材からなる棒状の短部材の先端部を曲げ加工して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の剥落防止材。
【請求項6】
コンクリート部材の表面と表面付近に配置された鉄筋との間に埋め込まれ、表面付近のコンクリート片が剥落するのを防止する剥落防止材であって、
竹材からなる細棒部材を組み合わせて網状体が形成され、
該網状体に、網状の面から突き出すように複数の凸状部が、網状の面に分布して設けられ、
前記凸状部は、生分解プラスチックで形成された粒状の部材を前記網状体に接着して形成され、
該凸状部は、前記コンクリート部材を形成するコンクリートの打設時に、先端部が型枠に当接され、網状体と型枠との間に未硬化コンクリートのモルタル成分が充填される程度の間隔を保持するものであることを特徴とする剥落防止材。
【請求項7】
コンクリート部材の表面と表面付近に配置された鉄筋との間に埋め込まれ、表面付近のコンクリート片が剥落するのを防止する剥落防止材であって、
竹材からなる細棒部材を組み合わせて網状体が形成され、
該網状体に、網状の面から突き出すように複数の凸状部が、網状の面に分布して設けられ、
前記凸状部は、板状又は粒状の頭部を有する針状の部材で形成され、針状の部分が前記網状体を形成する細棒部材を貫通し、前記頭部が前記細棒部材に接着されたものであり、
該凸状部は、前記コンクリート部材を形成するコンクリートの打設時に、先端部が型枠に当接され、網状体と型枠との間に未硬化コンクリートのモルタル成分が充填される程度の間隔を保持するものであることを特徴とする剥落防止材。
【請求項8】
コンクリート部材の表面と表面付近に配置された鉄筋との間に埋め込まれ、表面付近のコンクリート片が剥落するのを防止する剥落防止材であって、
竹材からなる複数の薄板部材を、繊維の方向が異なるものを含むように貼り合わせた竹合板で形成され、該竹合板に多数の孔を設けた多孔板を有し、
該多孔板に、板面から突き出すように凸状部を形成する複数の付加部材が、該多孔板の面に分布して取り付けられ、
該凸状部は、前記コンクリート部材を形成するコンクリートの打設時に、先端部が型枠に当接され、前記多孔板と型枠との間に未硬化コンクリートのモルタル成分が充填される程度の間隔を保持するものであることを特徴とする剥落防止材。
【請求項9】
前記付加部材は、生分解プラスチックで形成された粒状の部材であり、前記多孔板に接着されていることを特徴とする請求項8に記載の剥落防止材。
【請求項10】
前記付加部材は、竹材又は木材で形成された粒状の部材であり、前記多孔板に接着されていることを特徴とする請求項8に記載の剥落防止材。
【請求項11】
前記付加部材は、板状又は粒状の頭部を有する針状の部材であり、針状の部分が前記多孔板を貫通し、前記頭部が前記多孔板に接着されたものであることを特徴とする請求項8に記載の剥落防止材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート部材中に埋め込まれ、表面近くのコンクリート片が剥落するのを防止する剥落防止材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート部材は、鉄筋が表面近くに埋め込まれ、引張力に対して強度が小さいコンクリートを補強するものとなっている。このようなコンクリート部材は、アルカリ骨材反応によって表面付近に微細はひび割れが生じることがある。また、老朽化によってコンクリートが中性化し、鉄筋に錆が生じることがある。鉄筋に錆が生じると膨張し、表面近くのコンクリートにひび割れが生じる。このようなひび割れ等によってコンクリート部材の表面付近からコンクリート片が剥落するのを防止する手段が、例えば特許文献1又は特許文献2に提案されている。これらはコンクリート部材の構築時に、コンクリート部材の表面と表面近くに配置された鉄筋との間に網状の部材を埋め込むものである。
【0003】
特許文献1に記載されているコンクリート補強材は、金属線又は非金属繊維の網状体に凸状部を設けたものであり、コンクリートを打設するときの型枠に凸状部が当接するように配置される。凸状部は、網状体と型枠との間に未硬化のコンクリート中のモルタル分又はセメントペーストが回り込む程度の間隙を設けるものである。網状体は、具体的にはアラミド繊維等の合成繊維からなるものが提案されており、凸状部は砂又は礫等の粒状体を接着するものとなっている。
また、特許文献2には、FRPからなる格子状の部材に合成樹脂等からなる突起を、格子の格点位置に設けたものが提案されており、コンクリート打設時に上記突起が型枠に当接するように配置されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-232624号公報
【特許文献2】特開2022-137228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンクリート部材、コンクリート構造物は、将来に老朽化して解体することになったときの処理についても考慮して構築することが望ましい。鉄筋の再利用の他に破砕したコンクリート片の再利用も提案されるようになっており、コンクリート部材の表面近くに配置された剥落防止のための部材にも、廃棄時の処理について考慮が望まれる。上記先行技術における剥落を防止するための部材には合成樹脂が用いられており、近年のプラスチックの使用を低減して環境への拡散を抑制しようとする要請から、再生可能な資源を用いたものに置き換えることが望まれる。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、再生が可能な資源を用いてコンクリート部材の表面付近からコンクリート片が剥落するのを有効に防止することができる剥落防止材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 コンクリート部材の表面と表面付近に配置された鉄筋との間に埋め込まれ、表面付近のコンクリート片が剥落するのを防止する剥落防止材であって、 竹材からなる細棒部材を組み合わせて網状体が形成され、 該網状体に、網状の面から突き出すように竹材で形成された凸状部が、網状の面に分布して複数が設けられ、 前記凸状部は、前記コンクリート部材を形成するコンクリートの打設時に、先端部が型枠に当接され、網状体と型枠との間に未硬化コンクリートのモルタル成分が充填される程度の間隔を保持するものである剥落防止材を提供する。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の剥落防止材において、 前記凸状部は、竹材を輪切りにして形成された弧状の部材で形成されているものとする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の剥落防止材において、 前記凸状部は、竹材の繊維方向の棒状部材を弧状に曲げ加工することによって形成されているものとする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の剥落防止材において、 前記凸状部は、前記網状体を形成する細棒部材の所定間隔の3点を折り曲げ、山形に突き出すように形成されているものとする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1に記載の剥落防止材において、 前記凸状部は、前記網状体に網状の面に沿って接合された竹材からなる棒状の短部材の先端部を曲げ加工して形成されているものとする。
【0012】
請求項6に係る発明は、 コンクリート部材の表面と表面付近に配置された鉄筋との間に埋め込まれ、表面付近のコンクリート片が剥落するのを防止する剥落防止材であって、 竹材からなる細棒部材を組み合わせて網状体が形成され、 該網状体に、網状の面から突き出すように複数の凸状部が、網状の面に分布して設けられ、 前記凸状部は、生分解プラスチックで形成された粒状の部材を前記網状体に接着して形成され、 該凸状部は、前記コンクリート部材を形成するコンクリートの打設時に、先端部が型枠に当接され、網状体と型枠との間に未硬化コンクリートのモルタル成分が充填される程度の間隔を保持するものである剥落防止材を提供するものである。
【0013】
請求項7に係る発明は、 コンクリート部材の表面と表面付近に配置された鉄筋との間に埋め込まれ、表面付近のコンクリート片が剥落するのを防止する剥落防止材であって、 竹材からなる細棒部材を組み合わせて網状体が形成され、 該網状体に、網状の面から突き出すように複数の凸状部が、網状の面に分布して設けられ、 前記凸状部は、板状又は粒状の頭部を有する針状の部材で形成され、針状の部分が前記網状体を形成する細棒部材を貫通し、前記頭部が前記細棒部材に接着されたものであり、 該凸状部は、前記コンクリート部材を形成するコンクリートの打設時に、先端部が型枠に当接され、網状体と型枠との間に未硬化コンクリートのモルタル成分が充填される程度の間隔を保持するものである剥落防止材を提供するものである。
【0014】
請求項8に係る発明は、 コンクリート部材の表面と表面付近に配置された鉄筋との間に埋め込まれ、表面付近のコンクリート片が剥落するのを防止する剥落防止材であって、 竹材からなる薄板部材を、繊維の方向が異なるものを含む複数を貼り合わせた竹合板で形成され、該竹合板に多数の孔を設けた多孔板を有し、 該多孔板に、板面から突き出すように凸状部を形成する複数の付加部材が、該多孔板の面に分布して取り付けられ、 該凸状部は、前記コンクリート部材を形成するコンクリートの打設時に、先端部が型枠に当接され、前記多孔板と型枠との間に未硬化コンクリートのモルタル成分が充填される程度の間隔を保持するものである剥落防止材を提供するものである。
【0015】
請求項9に係る発明は、請求項8に記載の剥落防止材において、 前記付加部材は、生分解プラスチックで形成された粒状の部材であり、前記多孔板に接着されているものとする。
【0016】
請求項10に係る発明は、請求項8に記載の剥落防止材において、 前記付加部材は、竹材又は木材で形成された粒状の部材であり、前記多孔板に接着されているものとする。
【0017】
請求項11に係る発明は、請求項8に記載の剥落防止材において、 前記付加部材は、板状又は粒状の頭部を有する針状の部材であり、針状の部分が前記多孔板を貫通し、前記頭部が前記多孔板に接着されたものとする。
【0018】
このような剥落防止材では、コンクリート部材の表面付近に埋め込まれることによって、コンクリート部材の表面にひび割れが生じても、コンクリート片が離脱するのをつなぎとめ、剥落するのが防止される。そして、将来において、コンクリート部材が解体されたときには、剥落防止部材の大部分が竹材で構成されているので、微生物の作用によって分解され、環境への負荷が低減される。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の剥落防止材では、再生が可能な資源を用いてコンクリート部材の表面付近からコンクリート片が剥落するのを有効に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態である剥落防止材の概略斜視図である。
【
図2】
図1に示す剥落防止材を型枠内に配置してコンクリートを打設する前の状態及びコンクリートを打設し、硬化した状態を示す概略断面図である。
【
図3】本発明の他の実施形態である剥落防止材の概略斜視図である。
【
図4】本発明の他の実施形態である剥落防止材の概略斜視図である。
【
図5】本発明の他の実施形態である剥落防止材の概略平面図及び凸状部が設けられた部分の概略断面図である。
【
図6】本発明の他の実施形態である剥落防止材の概略平面図及び凸状部が設けられた部分の概略断面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態である剥落防止材の概略平面図及び凸状部が設けられた部分の概略断面図である。
【
図8】本発明の他の実施形態である剥落防止材の概略平面図及び凸状部が設けられた部分の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態であるコンクリートの剥落防止材を示す概略斜視図である。
この剥落防止材1は、竹を繊維方向に割って細い棒状に加工した細棒部材2を用いて網状体3が形成され、該網状体3の網状となった面から突き出すように複数の凸状部4をほぼ一様に分布するように設けたものである。
上記網状体3は竹材からなる複数の上記細棒部材2をほぼ平行に並べ、さらにほぼ直角方向にも複数をほぼ平行に重ねて配列し、それぞれの交叉する位置で互いに接着剤で接着して網状したものである。そして、上記凸状部4は、竹を輪切りに切断したものの一部を取り出し、弧状の部材5として両端を竹の棒状取付け部材6に接着したものであり、弧状の部材5が網状体3の面から突き出すように棒状取付け部材6を上記網状体3に接着したものである。
【0022】
上記網状体3を形成する細棒部材2は、断面が扁平な形状となっており、幅が2mm~6mm程度、厚さが0.3mm~2mm程度とするのが望ましい。これらは、20mm~60mm程度の間隔を開けてほぼ平行に配列し、ほぼ直角となる2方向に配列して網状体3としている。
一方、凸状部4に用いる弧状の部材5は、外径が10mm~30mm程度の竹を、2mm~6mm程度の間隔で輪切りに切断し、全周の1/2~1/3程度の部分を取り出して用いることができる。また、棒状取付け部材6は、網状体3を形成する細棒部材2と同程度の断面寸法を有する竹材からなる棒状の部材を用いることできる。
また、上記凸状部4は、竹材の繊維の方向に長い棒状の部材を弧状に曲げ加工して用いることもできる。例えば網状体3を形成する細棒部材2と同じ断面寸法の竹材を用いることができ、加熱状態で曲げ加工を行うのが望ましい。
これらの網状体3及び凸状部4を形成する竹材は、コンクリートのアルカリ成分によって劣化するのを抑制するために、エポキシ樹脂等による塗装又は含浸を施しておくのが望ましい。
【0023】
上記剥落防止材は、次のように用いることができる。
図2(a)は、コンクリート部材7を形成するために型枠8内に鉄筋9を配置するとともに、上記剥落防止材1を型枠8の内面に沿って配置した状態を示す概略断面図である。
上記剥落防止材1は、凸状部4の先端が型枠8の内面に当接され、鉄筋9に取り付けられたモルタルスペーサー10が背面に当接されて、型枠8に沿った位置に保持される。そして、型枠8内にコンクリートが打設されると、
図2(b)に示すように、鉄筋9がコンクリート内に埋め込まれるとともに、剥落防止材1もコンクリート内に埋め込まれ、網状体3と型枠8の間、凸状部4の周辺の狭い隙間内にもコンクリートのモルタル成分又はセメントペーストが入り込む。したがって、型枠8を取り外した後には、凸状部4の先端のごく小さな範囲以外はコンクリート部材7の表面に現れずに、剥落防止材1がコンクリート部材7の表面近くに埋め込まれた状態となる。
【0024】
このようにコンクリート部材7の表面近くに剥落防止材1が埋め込まれていると、コンクリート部材7の鉄筋9より表面側の部分、つまり鉄筋9のかぶり部分のコンクリートにひび割れが生じ、一部がコンクリート部材7から離脱するような状態となっても、剥落防止材1が周辺部分と連続しており、一部のコンクリート片が剥落するのが防止される。
【0025】
図3は、本発明の他の実施形態である剥落防止材を示す概略斜視図である。
この剥落防止材11は、
図1に示す剥落防止材1と同様に、竹材からなる細い棒状となった細棒部材12を2方向に配列して貼り合わせ、網状体13としたものであるが、この剥落防止材11では、一方向に配列された細棒部材12aには、折り曲げ加工が施されて凸状部14が形成されている。凸状部14は、細棒部材12aの3か所を折り曲げてほぼ三角形の山形に突き出した部分を形成したものであり、細棒部材12の軸線方向に所定の間隔で上記山形の部分が形成されている。そして、一方向に配列される細棒部材12aの全部又は一本おき程度に上記加工を施し、凸状部14が網状となった面に、ほぼ一様に分布するものとしている。
【0026】
上記剥落防止材11を形成する細棒部材12は、
図1に示す剥落防止材1で用いられる細棒部材2と同じ断面寸法のものを用いることができる。折り曲げ加工は湿潤状態で行うことにより、折り曲げたときの竹繊維の切断を低減することができ、折り曲げた部分の切断に対する強度を向上させることができる。また、加熱状態で折り曲げ加工を行うことでより良い状態で加工が可能となる。
このような剥落防止材11も、
図1に示すものと同様にコンクリート部材に埋め込み、コンクリート片の剥落を防止することができる。
【0027】
図4は、本発明の他の実施形態である剥落防止材の概略斜視図である。
この剥落防止材21は、
図1に示す剥落防止材1と同様に、竹材からなる細い棒状の細棒部材22を2方向に配列して貼り合わせ、網状体23を形成したものであるが、この剥落防止材21では、両端部を曲げ加工した棒状の短部材25を、網状体23に取り付けて凸状部24が形成されている。
上記凸状部24を形成する棒状の短部材25は、所定の長さを有するものの両端部をほぼ直角に曲げ加工したものであり、中間部からほぼ直角に曲げ加工されて突き出した部分25aの長さは、網状体23を型枠に沿って配置したときの型枠との間隔に対応しており、2mm~10mm程度に調整することができる。また、上記凸状部24を形成する棒状の短部材25の長さは、網状体23を形成しているほぼ平行に配列された細棒部材22の2本以上にわたって接着することができる長さとするのが望ましい。
【0028】
上記凸状部24を形成する棒状の短部材25の曲げ加工は、加熱状態で行うことにより加工部分の強度低下を抑えてほぼ直角程度までの曲げ加工が可能となる。この棒状の短部材25は、網状体23を形成する細棒部材22と同じ断面形状のものを用いることもできるが、曲げ加工の容易性等を考慮して扁平となった断面の厚さを調整することができる。厚さを小さくすることによって容易に曲げ加工が可能となる。
【0029】
図5は、本発明の他の実施形態である剥落防止材の概略平面図及び凸状部の拡大断面図である。
この剥落防止材31は、
図1に示す剥落防止材1と同様に、竹材からなる細い棒状の細棒部材32を2方向に配列して貼り合わせることによって網状体33を形成しており、この剥落防止材31では、いずれの方向にも直線状となった細棒部材32が用いられている。そして、凸状部34は
図5(b)に示すように網状体33を形成する細棒部材32が交叉する格点部に粒状の部材35を接着することによって形成している。粒状の部材35は、ほぼ円錐形となっており、尖った先端が網状体33から突き出すように接着されている。
【0030】
上記粒状の部材35は、生分解性プラスチックで形成されたものである。生分解性プラスチックは、微生物の働きによって最終的に二酸化炭素と水とに分解するものであり、例えば生分解性ゴルフティー等に用いられる生分解性酢酸セルロースや、ポリ乳酸で形成することができる。また、木材や竹材を用いて形成するものであってもよい。
なお、原油が原材料となるポリエチレン等のプラスチックや金属等を凸状部に用いても、剥落防止材としての機能は有するものであるが、将来においてコンクリート部材が解体されたときの環境負荷を低減するために、上記のような再生可能な資源を用いるのが望ましい。
【0031】
図6は、本発明の他の実施形態である剥落防止材の概略平面図及び凸状部の拡大断面図である。
この剥落防止材41は、
図1に示す剥落防止材1と同様に、竹材からなる細棒部材42を2方向に配列し、これらを貼り合わせて網状体43を形成しており、細棒部材42はいずれの方向に配置されるものも直線状の部材となっている。そして、細棒部材42が交叉する格点部には、金属の針状の部材45によって凸状部44が形成されている。
【0032】
上記針状の部材45は、板状の頭部46を有するものであり、板面からほぼ垂直に針の部分が突き出しており、交叉する2つの細棒部材42を貫通している。そして板状の頭部46は細棒部材42に当接され、接着剤によって接着されている。
上記針状の部材45の長さは、網状体43を型枠内に設置したときに該網状体43と型枠との間に保持する間隔に対応して決定される。また、頭部46は板状の部材に限らず球体、ひょうたん型等、扱いやすく細棒部材42に強固に接着することができる形状を選択することができる。
【0033】
図7は、本発明の他の実施形態である剥落防止材の概略平面図及び凸状部の拡大断面図である。
この剥落防止材51は、主要部が竹製の合板で形成されたものであり、竹合板に多数の円孔53が設けられた多孔板52となっている。それぞれの円孔53は近接するように設けられ、円孔間の部分が連続して網状となっており、円孔間の部分に付加部材55を接着することによって凸状部54が設けられている。
【0034】
上記竹合板は、薄い竹製の板材を繊維の方向がほぼ直角となるように複数を貼り合わせたものであり、2枚又は3枚を貼り合わせたものを用いることができる。それぞれの板材は0.2mm~0.5mm程度のものを用いることができ、さらに不織布等のシートを貼り合わせて補強することができる。
竹製の板材は、竹材を成形して多数を貼り合わせた集成材とし、これを薄い板状に切断することによって形成することができる。
【0035】
凸状部54を形成する付加部材55は、
図5に示す剥落防止材31の凸状部で用いられている粒状の部材と同様のものを用いることができ、生分解性プラスチック、木材、竹材等からなる円錐状の部材とすることができる。
【0036】
図8は、本発明の他の実施形態である剥落防止材の概略平面図及び凸状部の拡大断面図である。
この剥落防止材61も、
図7に示す剥落防止材と同様に、主要部が竹製の合板で形成されたものであり、竹合板に多数の円孔63が設けられた多孔板62となっており、それぞれの円孔間に凸状部64が設けられている。
この剥落防止材61では、凸状部64を形成する付加部材が金属の針状の部材65によって形成されており、
図6に示される剥落防止材41の凸状部44で用いられているものと同じ部材を用いることができる。この凸状部64を形成する針状の部材65を多孔板62に貫通させ、板状の頭部66を多孔板62に当接して接着することができる。
【0037】
以上に説明した剥落防止材は、いずれもコンクリート部材の形成時に型枠に沿って配置し、コンクリート内に埋め込むことによってコンクリート部材の表面付近からコンクリート片が剥落するのを有効に防止することができるものであるが、これらは本発明の実施の形態であって、本発明はこれらの剥落防止材に限定されるものではなく、本発明の範囲内で適宜に形状、寸法等を変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0038】
1:剥落防止材, 2:細棒部材, 3:網状体, 4:凸状部, 5:弧状の部材, 6:棒状取付け部材, 7:コンクリート部材, 8:型枠, 9:鉄筋, 10:モルタルスペーサー,
11:剥落防止材, 12:細棒部材, 13:網状体, 14:凸状部,
21:剥落防止材, 22:細棒部材, 23:網状体, 24:凸状部, 25:棒状の短部材,
31:剥落防止材, 32:細棒部材, 33:網状体, 34:凸状部, 35:粒状の部材,
41:剥落防止材, 42:細棒部材, 43:網状体, 44:凸状部, 45:針状の部材, 46:板状の頭部,
51:剥落防止材, 52:多孔板, 53:円孔, 54:凸状部, 55:付加部材,
61:剥落防止材, 62:多孔板, 63:円孔, 64:凸状部, 65:針状の部材, 66:板状の頭部