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特開2024-130059もみ殻灰含有塩化ビニル系樹脂組成物
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  • 特開-もみ殻灰含有塩化ビニル系樹脂組成物 図1
  • 特開-もみ殻灰含有塩化ビニル系樹脂組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130059
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】もみ殻灰含有塩化ビニル系樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/06 20060101AFI20240920BHJP
   C08L 97/02 20060101ALI20240920BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C08L27/06
C08L97/02
C08K3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039552
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤井 嘉明
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 陸生
(72)【発明者】
【氏名】釜田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】倉田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】森田 崇聖
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AH002
4J002BD031
4J002DC006
4J002FD012
4J002FD036
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】本発明は、もみ殻灰を加えても成形品の機械的性質の低下を抑制できるもみ殻灰含有塩化ビニル系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明のもみ殻灰含有塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂、フィラー、安定剤を配合してなり、前記フィラーは、もみ殻灰を含む。前記もみ殻灰は、平均粒径が15.0μm以下であることが望ましい。前記もみ殻灰は、アルカリ洗浄処理されたものとすることができる。前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、前記フィラー1.0質量部~15.0質量部、安定剤1.0質量部~5.0質量部とすることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂、フィラー、安定剤を配合してなり、
前記フィラーは、もみ殻灰を含む、
もみ殻灰含有塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項2】
前記もみ殻灰は、平均粒径が15.0μm以下である、
請求項1に記載のもみ殻灰含有塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項3】
前記もみ殻灰は、アルカリ洗浄処理されたものである、請求項2に記載のもみ殻灰含有塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項4】
前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、前記フィラー1.0質量部~15.0質量部、安定剤1.0質量部~5.0質量部である、
請求項3に記載のもみ殻灰含有塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項5】
前記安定剤は、CaZn系安定剤である、
請求項4に記載のもみ殻灰含有塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れかに記載のもみ殻灰含有塩化ビニル系樹脂組成物を成形してなる、
もみ殻灰含有塩化ビニル系樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、もみ殻灰を含有する塩化ビニル系樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
米は、脱穀の後、もみ摺りを得て、もみ殻を取り除いて玄米を得、必要に応じて精米することで食用に供される。もみ摺りの際に産出されるもみ殻のうち、約20~25%は、田畑での焼却やくん炭の作製に一部が用いられる。しかしながら、多くは、農産業廃棄物として廃棄されており、環境負荷が懸念される。
【0003】
特許文献1では、熱可塑性樹脂に、もみ殻灰(フィラー)と熱可塑性エラストマーを配合した成形用樹脂組成物を提案している。熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂である。
【0004】
もみ殻灰は、90質量%以上がシリカからなるため、もみ殻灰を熱可塑性樹脂に添加することで、樹脂組成物からなる成形品には、機械的性質の低下が抑制され、耐熱性が付与される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-47690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上農水道埋設用途、建築給水用途、埋設用の自然流下用途(下水用、土木用、排水用)、水道用途(水道用、建築給水用)の配管として、塩化ビニル系樹脂を含有する塩化ビニル系樹脂組成物が採用されている。
【0007】
この塩化ビニル系樹脂組成物に、フィラーとしてもみ殻灰を加えると、成形品の機械的性質が低下することがわかった。
【0008】
本発明は、もみ殻灰を加えても成形品の機械的性質の低下を抑制できるもみ殻灰含有塩化ビニル系樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のもみ殻灰含有塩化ビニル系樹脂組成物は、
塩化ビニル系樹脂、フィラー、安定剤を配合してなり、
前記フィラーは、もみ殻灰を含む。
【0010】
前記もみ殻灰は、平均粒径が15.0μm以下であることが望ましい。
【0011】
前記もみ殻灰は、アルカリ洗浄処理されたものとすることができる。
【0012】
前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、前記フィラー1.0質量部~15.0質量部、安定剤1.0質量部~5.0質量部であることが望ましい。
【0013】
前記安定剤は、CaZn系安定剤であることが望ましい。
【0014】
本発明のもみ殻灰含有塩化ビニル系樹脂成形品は、
上記記載のもみ殻灰含有塩化ビニル系樹脂組成物を成形してなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のもみ殻灰含有塩化ビニル系樹脂組成物によれば、フィラーであるもみ殻灰の粒径を小さくすることで、塩化ビニル系樹脂と界面強度が上がるから、成形品の機械的性質を向上させることができる。
【0016】
とくに、もみ殻灰にアルカリ洗浄処理を施すことで、もみ殻灰の表面に極性を付与することができ、耐衝撃性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、もみ殻灰の添加部数を変えて作製した塩化ビニル系樹脂管の写真である。
図2図2は、もみ殻灰の添加部数と、引張降伏応力の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のもみ殻灰含有塩化ビニル系樹脂組成物の一実施形態について説明する。
【0019】
本発明のもみ殻灰含有塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂、もみ殻灰を含むフィラーと、安定剤とを配合してなる。
【0020】
<塩化ビニル系樹脂>
本発明で用いられる塩化ビニル系樹脂(PVC)は、塩化ビニルを重合した硬質の合成樹脂である。硬質塩化ビニル系樹脂は、PVC粉末の形態で得ることができる。塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、400以上が好適であり、3000以下が望ましい。塩化ビニル系樹脂の平均重合度が400未満になると、熱安定性や疲労特性などが低下し易く、また、平均重合度が3000を超えると、一般的な成形温度での成形が困難になり、塩化ビニル系樹脂が分解してしまう。
【0021】
<フィラー>
本発明では、フィラー(充填材)に、もみ殻灰を含む。もみ殻灰は、もみ摺り時に発生するもみ殻を燃焼した燃焼灰である。もみ殻の燃焼には、たとえばバイオマス火力発電所のガス化炉を使用できるが、これに限定されるものではない。もみ殻を燃焼させることで、シリカを90質量%以上含有するもみ殻灰を得ることができる。得られるもみ殻灰は、黒色となる。
【0022】
もみ殻灰の燃焼温度を500℃~1000℃、望ましくは700℃~900℃にすることで、もみ殻灰は、非晶質シリカとすることができる。これより高い温度でもみ殻灰を燃焼させることで、もみ殻灰は結晶質シリカとすることができる。
【0023】
もみ殻灰は、平均粒径が15.0μm以下となるように調製することが好適である。もみ殻灰の粒径調製は、摩砕等による。なお、もみ殻灰の平均粒径は、粒子径区分:50%粒子径(Median径)を使用し、測定方法は、湿式(水)、レーザー回折によって測定した。
【0024】
もみ殻灰の粒径が大きいと、比表面積が小さくなる結果、成形時に塩化ビニル系樹脂と接する面積が小さくなる。これにより、得られた成形体の引張伸び、シャルピー衝撃値などの機械的特性が低下する。このため、もみ殻灰の平均粒径は、10.0μm以下が好適であり、7.0μm以下が望ましく、6.5μm以下がより望ましく、5.0μm以下がさらにより望ましい。
【0025】
ただし、もみ殻灰の粒径が小さくなりすぎると、粉体としての取扱いが難しく、また、凝集し易くなるため、塩化ビニル系樹脂粉末や安定剤との混合が難しくなる。従って、もみ殻灰の平均粒径の下限は、0.5μm以上が好適であり、望ましくは1.0μm以上、より望ましくは2.5μm以上である。
【0026】
もみ殻灰にアルカリ洗浄処理を施すことで、もみ殻灰の縮合の切れ目に官能基(OH基)をもつシリカゲルと同様の構造をもつケイ酸ゲルが生成され、もみ殻灰に極性を付与することができる。これにより、塩化ビニル系樹脂との接合性を高めることができ、シャルピー衝撃値などの機械的特性を向上させることができる。
【0027】
アルカリ洗浄処理は、粒径調製されたもみ殻灰に、たとえば1.0NのNaOH水溶液下で1時間撹拌し、濾過、乾燥させて、解砕することで実施できる。もちろん、アルカリ洗浄処理の条件は、これに限るものではない。
【0028】
<安定剤>
塩化ビニル系樹脂組成物には、成形性や製品特性を改善するために安定剤を含有する。安定剤として、Ca-Zn系、Ba-Zn系、Sn系、Pb系のものを例示できる。これら安定剤の中で、Pb系安定剤は、環境や人体に負荷が大きいため、その他の安定剤を使用することが望ましい。この中で、Ca-Zn系安定剤は、Pb系安定剤と比較して、もみ殻灰を添加しても引張強度性能の低下が少なく、引張伸びを向上できるため、安定剤として好適である。
【0029】
<配合比>
上記塩化ビニル系樹脂、もみ殻灰を含むフィラーの配合比は、塩化ビニル系樹脂を100質量部としたときに、フィラーの下限が好適には1.0質量部、望ましくは2.0質量部である。また、フィラーの上限は好適には15.0質量部、望ましくは10.0質量部、より望ましくは8.0質量部である。
【0030】
同様に、上記塩化ビニル系樹脂と安定剤の配合比は、塩化ビニル系樹脂を100質量部としたときに、安定剤の下限が好適には1.0質量部、望ましくは1.5質量部である。また、安定剤の上限は好適には5.0質量部、望ましくは4.0質量部である。
【0031】
もみ殻灰を含むフィラーの配合比が上記よりも小さいと、成形して得られる塩化ビニル系樹脂成形品の引っ張り伸びやシャルピー衝撃値などの機械的特性を十分に発揮できない。逆に、もみ殻を含むフィラーの配合比が上記よりも大きくなると、成形性が低下し、また、機械的特性も低下する。
【0032】
安定剤については、配合比が上記よりも小さいと、熱安定性や耐候性が低下してしまう。逆に、安定剤の配合比が上記よりも大きくなると、成形時の金型汚染や、材料強度の低下による物性不良となる。
【0033】
<その他添加剤>
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、上記成分以外に、滑剤、可塑剤、着色剤、改質剤、紫外線防止剤、難燃剤、防菌・防かび剤、消臭剤、着色剤、塩化ビニル系樹脂の成形に用いられる各種添加剤を添加することができる。これら添加剤は、塩化ビニル系樹脂組成物の特性を損なわない範囲で添加することができ、好ましくは塩化ビニル系樹脂組成物全量の1.5質量%以下、望ましくは1.0質量%以下、より望ましくは0.5質量%以下である。
【0034】
<塩化ビニル系樹脂組成物>
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、上記した塩化ビニル系樹脂、フィラー、安定剤、その他添加剤を配合して混練した粉末の形態とすることができる。また、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、これら粉末を押出成形機により加熱、成形してペレット状の形態としてもよい。
【0035】
<塩化ビニル系樹脂成形品>
上記塩化ビニル系樹脂組成物に圧延成形、押出成形、射出成形などを施すことで、各種塩化ビニル系樹脂成形品が製造される。塩化ビニル系樹脂成形品として、上記した配管だけでなく、配管どうしを連結する継手、その他各種建築資材、農業用資材などにも適用できる。
【0036】
本発明の塩化ビニル樹脂成形品は、フィラーとしてもみ殻灰を含有するから、着色剤を添加しない場合には、灰色から黒色の明度となる。
【0037】
本発明の塩化ビニル系樹脂成形品は、フィラーとして炭酸カルシウムを用いた塩化ビニル系樹脂成形品と同等、或いは、それ以上のすぐれた引張降伏応力、引張伸び、シャルピー衝撃値などの機械的特性を具備する。また、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、もみ殻をフィラーとして採用したことで、紫外線に強く、耐光性、耐候性にすぐれる。
【実施例0038】
<実施例1>
表1に示すフィラーを配合した発明例と比較例の塩化ビニル系樹脂組成物から、夫々塩化ビニル系樹脂成形品を作製し、機械特性を比較した。
【0039】
【表1】
【0040】
塩化ビニル系樹脂は、平均重合度1050、粒径350μm以下の塩化ビニル系樹脂粉末(大洋塩ビ株式会社製塩ビホモポリマーTH-1000)を採用した。
【0041】
もみ殻灰の平均粒径は、粒子径区分:50%粒子径(Median径)を使用し、測定方法は、湿式(水)、レーザー回折によって測定した。本発明では、平均粒子径の測定は、Microtrac社製の粒子解析装置SYNCを用いて行なっている。
【0042】
発明例1~発明例4、発明例6~発明例8のもみ殻灰は、表面処理を実施せず、発明例5のもみ殻灰には、アルカリ洗浄処理を実施した(表1中「処理」の欄参照)。アルカリ洗浄処理は、1.0NのNaOH水溶液下でもみ殻灰を1時間撹拌し、濾過、乾燥させて、解砕する処理である。
【0043】
比較例1、比較例2のフィラーは、鉱物由来の炭酸カルシウムであり、平均粒径6.5μmの粉末状の形態である。比較例3のフィラーはケイ酸ナトリウムから合成した平均粒径10.0μmの球状シリカである。球状シリカは、沈降法により作製した。
【0044】
安定剤は、発明例のすべてと、比較例2~比較例4が、Ca-Zn系安定剤であり、比較例1のみPb系安定剤とした。
【0045】
上記の塩化ビニル系樹脂粉末、フィラー、安定剤について、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、表1に示す添加部数のフィラーと安定剤を配合し、混練機(月島機械株式会社製:TSK-M20)に入れて混練し、発明例、比較例の粉末状の塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
【0046】
得られた塩化ビニル系樹脂組成物から、ロールプレスによりロールシート(発明例1~発明例6、比較例1~比較例3)を作製し、また、パイプ押出しによりパイプ(発明例7、発明例8、比較例4)を作製した。作製方法の詳細は下記のとおりである。
【0047】
<ロールプレス>
得られた粉末状の塩化ビニル系樹脂組成物は、株式会社安田精機製作所製のミキシングロール機(No.191-TM)を用いて180℃に加熱したロール間で7分間練りながら溶融させ、最終厚さ約1.0mmのロールシートを作製した。得られたロールシートは、数枚重ね合わせて、関西ロール株式会社製のプレス機(PEW-3030)により190℃、6分間(予熱4分、加圧2.0MPa2分)、プレスを行ない、最終厚さ4.0mmのテストプレートを作製した。
【0048】
<パイプ押出し>
得られた粉末状の塩化ビニル系樹脂組成物をパイプ押出機(株式会社東洋精機製作所製:二軸押出機2D20C)に投入し、樹脂温度:190℃、樹脂圧力:8MPa、スクリュー回転速度:40rpm、処理量:6kg/hの条件で、外径22.0mm、肉厚3.0mmのテストパイプを作製した。
【0049】
そして、得られたテストプレート及びテストパイプから切削加工によって機械特性評価用のテストサンプルを複数切り出した。テストサンプルの形状は、表2のとおりである。
【0050】
発明例1~発明例8、比較例1~比較例4のテストサンプルに対し、表2に示す試験方法により、引張降伏点応力(MPa)、引張伸び(%)、シャルピー衝撃値(kJ/m)、比重を測定した。結果を表1に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
<引張降伏点応力>
塩化ビニル系樹脂成形品は、引張降伏点応力45.0MPa以上となることが望ましい。表1を参照すると、発明例は何れも引張降伏点応力が50.0MPa以上であった。これは、鉱物由来のフィラーである炭酸カルシウムを使用した比較例1や比較例2とほぼ同等又はそれ以上であり、発明例は何れも十分な引張降伏点応力を有することがわかる。また、発明例どうしを比較すると、引張降伏点応力は、平均粒径による有意な差は見られなかった。同様に、アルカリ洗浄処理していない発明例4とアルカリ洗浄処理した発明例5を比較しても優位な差は見られなかった。
【0053】
<引張伸び>
引張伸びは、100%以上であることが望まれる。発明例は、発明例6を除いて何れも100%以上となっており、十分な特性を具備することがわかる。一方、発明例6は、引張伸びが51%と低い値であった。これは、もみ殻灰の平均粒径が25.0μmと大きくため、比表面積が小さくなり、成形時に塩化ビニル系樹脂と接する面積が小さくなったことが原因と考えられる。すなわち、もみ殻灰の平均粒径は25.0μm未満であることが望ましい。
【0054】
なお、比較例1、比較例3も引張伸びは100%未満であった。安定剤以外の条件が同じ比較例1と比較例2を比べると、比較例1の安定剤がPb系であり、この安定剤により引張伸びが低下したものと考えられる。比較例3は、フィラーとして球状シリカを用いた結果、球体形状の外面と塩化ビニル系樹脂との間に滑りが生じ、引張伸びが低下したと考えられる。
【0055】
<シャルピー衝撃値>
シャルピー衝撃値は、実用上7.0KJ/m以上であることが望まれる。発明例は、発明例6を除いて何れも7.0KJ/m以上であり、十分な特性を具備することがわかる。一方、発明例6は、シャルピー衝撃値が6.01KJ/mと低い値であった。これは、もみ殻灰の平均粒径が25.0μmと大きくため、比表面積が小さくなり、成形時に塩化ビニル系樹脂と接する面積が小さくなったことが原因と考えられる。すなわち、もみ殻灰の平均粒径は25.0μm未満であることが望ましい。シャルピー衝撃値は9.0KJ/m以上、12.0KJ/m以上がより望ましい。
【0056】
一方で、アルカリ洗浄処理した発明例5を同じ平均粒径でアルカリ洗浄処理なしの発明例4と比較するとアルカリ洗浄処理した発明例5のシャルピー衝撃値が、アルカリ洗浄処理なしの発明例4に比べて向上している。これは、アルカリ洗浄処理によりもみ殻灰に極性が付与され、塩化ビニル系樹脂との接合性を高められたためと考えられる。
【0057】
<実施例2>
塩化ビニル系樹脂組成物について、フィラーとして、アルカリ洗浄処理を施していない平均粒径3.0μmのもみ殻灰の添加部数をそれぞれ2.0質量部、6.0質量部とした発明例6、発明例7の塩化ビニル系樹脂管を成形した。また、もみ殻灰を含有しない炭酸カルシウム6.0質量部の塩化ビニル系樹脂組成物から同様に比較例5の塩化ビニル系樹脂管を成形した。その他の条件は、実施例1と同様である。
【0058】
実施例1で作製された発明例7、発明例8、比較例4の塩化ビニル系樹脂管の外観写真を撮影した。結果を図1に示す。比較例4は、一般的な塩化ビニル系樹脂配管であり灰色であるのに対し、発明例7(もみ殻灰2.0質量部)はもみ殻灰の添加によってやや黒みがかった色、さらにもみ殻灰の添加部数の多い発明例8(もみ殻灰6.0質量部)は、ほぼ黒色を呈していた。
【0059】
<実施例3>
発明例7と発明例8のテストサンプルの引張降伏応力は、表1に示すとおり、発明例7が49.7MPa、発明例8は48.3MPaであった。もみ殻灰の添加部数を横軸、引張降伏応力を縦軸とし、発明例7と発明例8をプロットして直線で結んだ結果、図2に示す結果となり、式:y=-0.3375x+50.335(ただし、y=引張降伏応力、x=もみ殻灰添加部数)であった。すなわち、もみ殻灰の添加部数が増えると、引張降伏応力は低下する。
【0060】
塩化ビニル系樹脂成形品は、引張降伏点応力約45.0MPa以上となることが望ましいから、図2より、塩化ビニル系樹脂組成物100質量部に対して、もみ殻灰の添加部数の上限は15.0質量部とすることが望ましいことがわかる。なお、塩化ビニル系樹脂成形品の引張降伏点応力は、樹脂の成形方法、試験片の作成条件等で、性能が多少変動することがあるため、もみ殻灰の添加部数の設定は、性能変動を考慮して設定することが望ましい。
【0061】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
図1
図2