(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130061
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】電解コンデンサ及びその実装体
(51)【国際特許分類】
H01G 9/10 20060101AFI20240920BHJP
H01G 9/08 20060101ALI20240920BHJP
H01G 2/10 20060101ALI20240920BHJP
H01G 2/06 20060101ALI20240920BHJP
H05K 5/00 20060101ALI20240920BHJP
H05K 5/06 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01G9/10
H01G9/08 Z
H01G9/08 F
H01G2/10 K
H01G2/06 Z
H05K5/00 C
H05K5/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039554
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】595122132
【氏名又は名称】サン電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細木 雅和
(72)【発明者】
【氏名】來海 肇
(72)【発明者】
【氏名】錦織 大和
(72)【発明者】
【氏名】阿立 貴久
【テーマコード(参考)】
4E360
【Fターム(参考)】
4E360AA03
4E360AB33
4E360BD03
4E360BD05
4E360CA04
4E360EA11
4E360EA25
4E360EA29
4E360ED07
4E360ED08
4E360ED30
4E360EE03
4E360EE07
4E360GA08
4E360GA12
4E360GA22
4E360GA23
4E360GA29
4E360GA53
4E360GC04
4E360GC08
4E360GC14
(57)【要約】
【課題】周囲環境による密封性の低下を防止できる電解コンデンサ及びその実装体を提供する。
【解決手段】軸方向の一端を閉塞壁2aにより閉塞して他端に開口部2bを有する筒状の本体ケース2と、セパレータ13を介して対向する陽極箔11及び陰極箔12と陽極箔11及び陰極箔12にそれぞれ設けられるリード端子7、8とを有して本体ケース2に収納されるコンデンサ素子10と、開口部2bを封止するとともに軸方向の外面上に凹部5cを有する弾性体の封止材5と、リード端子7、8が貫通する一対の第1貫通孔5aを有して凹部5cに配されて封止材5よりも小径の板状の外圧変形抑制板6とを備え、封止材5が閉塞壁2aの反対側に突出する突起部5bを有するとともに、突起部5bが密入される第2貫通孔6bを外圧変形抑制板6に設けた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の一端を閉塞壁により閉塞して他端に開口部を有する筒状の本体ケースと、
セパレータを介して対向する陽極箔及び陰極箔と、前記陽極箔及び前記陰極箔にそれぞれ設けられるリード端子とを有し、前記本体ケースに収納されるコンデンサ素子と、
前記開口部を封止するとともに軸方向の外面上に凹部を有する弾性体の封止材と、
前記リード端子が貫通する一対の第1貫通孔を有して前記凹部に配され、前記封止材よりも小径の板状の外圧変形抑制板と、
を備え、前記封止材が前記閉塞壁の反対側に突出する突起部を有するとともに、前記突起部が密入される第2貫通孔を前記外圧変形抑制板に設けたことを特徴とする電解コンデンサ。
【請求項2】
前記本体ケースが径方向内側に向かって突出して前記封止材の外周面を押圧する絞り加工部を有し、前記絞り加工部の軸方向中央が前記凹部の底面よりも前記閉塞壁側に配されることを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項3】
前記本体ケースは開放端を湾曲して折り曲げた折曲部を有し、前記折曲部の先端が前記凹部の内周面よりも径方向内側に配されるとともに、前記外圧変形抑制板の外面に近接または当接することを特徴とする請求項2に記載の電解コンデンサ。
【請求項4】
前記封止材の外周面は、前記開口部に向かう程径方向内側に傾斜した傾斜面を前記閉塞壁と反対側の端部に有することを特徴とする請求項3に記載の電解コンデンサ。
【請求項5】
前記本体ケースの内面と前記傾斜面との径方向の隙間は、前記閉塞面側よりも前記閉塞面と反対側の方が大きいことを特徴とする請求項4に記載の電解コンデンサ。
【請求項6】
前記第2貫通孔が一対の前記第1貫通孔の間に配されることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の電解コンデンサ。
【請求項7】
前記外圧変形抑制板の外周部の少なくとも一部が前記凹部の周壁により覆われることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の電解コンデンサ。
【請求項8】
前記外圧変形抑制板が硬質樹脂により形成されることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の電解コンデンサ。
【請求項9】
前記外圧変形抑制板が強化材を混入した樹脂により形成されることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の電解コンデンサ。
【請求項10】
請求項1~請求項5のいずれかに記載の電解コンデンサを回路基板上に実装し、前記回路基板上に配したモールド樹脂により前記電解コンデンサが覆われることを特徴とする電解コンデンサ実装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止材により封止される電解コンデンサ及びそれを回路基板に実装した電解コンデンサ実装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電解コンデンサは特許文献1に開示されている。この電解コンデンサは、リード端子を有したコンデンサ素子を有底筒状の本体ケース内に収納し、本体ケースの開口部がゴム製の封止材により封止される。また、封止材の外面上には封止樹脂から成る樹脂層が設けられる。樹脂層は封止材の全面を覆って封止材の外面を封止し、電解コンデンサの密封性を高くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-158184号公報(第3頁~第10頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の電解コンデンサによると、周囲環境によって本体ケースの膨張または収縮が生じた際に封止材が樹脂層によって本体ケースに追従できない。このため、電解コンデンサの密封性が低下する問題があった。
【0005】
本発明は、周囲環境による密封性の低下を防止できる電解コンデンサ及びその実装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の電解コンデンサは、
軸方向の一端を閉塞壁により閉塞して他端に開口部を有する筒状の本体ケースと、
セパレータを介して対向する陽極箔及び陰極箔と、前記陽極箔及び前記陰極箔にそれぞれ設けられるリード端子とを有し、前記本体ケースに収納されるコンデンサ素子と、
前記開口部を封止するとともに軸方向の外面上に凹部を有する弾性体の封止材と、
前記リード端子が貫通する一対の第1貫通孔を有して前記凹部に配され、前記封止材よりも小径の板状の外圧変形抑制板と、
を備え、前記封止材が前記閉塞壁の反対側に突出する突起部を有するとともに、前記突起部が密入される第2貫通孔を前記外圧変形抑制板に設けたことを特徴としている。
【0007】
また本発明は上記構成の電解コンデンサにおいて、前記本体ケースが径方向内側に向かって突出して前記封止材の外周面を押圧する絞り加工部を有し、前記絞り加工部の軸方向中央が前記凹部の底面よりも前記閉塞壁側に配されることを特徴としている。
【0008】
また本発明は上記構成の電解コンデンサにおいて、前記本体ケースは開放端を湾曲して折り曲げた折曲部を有し、前記折曲部の先端が前記凹部の内周面よりも径方向内側に配されるとともに、前記外圧変形抑制板の軸方向の外面に近接または当接することを特徴としている。
【0009】
また本発明は上記構成の電解コンデンサにおいて、前記封止材の外周面は、前記開口部に向かう程径方向内側に傾斜した傾斜面を前記閉塞壁と反対側の端部に有することを特徴としている。
【0010】
また本発明は上記構成の電解コンデンサにおいて、前記本体ケースの内面と前記傾斜面との径方向の隙間は、前記閉塞面側よりも前記閉塞面と反対側の方が大きいことを特徴としている。
【0011】
また本発明は上記構成の電解コンデンサにおいて、前記第2貫通孔が一対の前記第1貫通孔の間に配されることを特徴としている。
【0012】
また本発明は上記構成の電解コンデンサにおいて、前記外圧変形抑制板の外周部の少なくとも一部が前記凹部の周壁により覆われることを特徴としている。
【0013】
また本発明は上記構成の電解コンデンサにおいて、前記外圧変形抑制板が硬質樹脂により形成されることを特徴としている。
【0014】
また本発明は上記構成の電解コンデンサにおいて、前記外圧変形抑制板が強化材を混入した樹脂により形成されることを特徴としている。
【0015】
また本発明の電解コンデンサ実装体は、上記各構成の電解コンデンサを回路基板上に実装し、前記回路基板上に配したモールド樹脂により前記電解コンデンサが覆われることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、電解コンデンサには封止材よりも小径の外圧変形抑制板が設けられる。外圧変形抑制板にはリード端子が貫通する第1貫通孔と、封止材に設けた突起部が密入される第2貫通孔とが設けられる。このため、周囲環境による本体ケースの膨張時または収縮時に封止材が本体ケースに容易に追従し、周囲環境による電解コンデンサの密封性の低下を防止することができる。
【0017】
また、電解コンデンサをモールド樹脂で覆った際に、封止材に加わる外圧を外圧変形抑制板が受け止める。このため、封止材が本体ケース内に大きく押圧変形することによるコンデンサ素子の損傷を防止することができる。
【0018】
加えて、半田付け等の昇温時に本体ケースの内圧上昇により封止材の中央部が外圧変形抑制板とともに外側に膨らみ、降温時に封止材の中央部が外圧変形抑制板とともに元に戻る。このため、封止材と外圧変形抑制板との間に隙間が形成されないため、両者間への水分の進入によるリード端子の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態の電解コンデンサを示す縦断面図
【
図2】本発明の実施形態の電解コンデンサのコンデンサ素子を示す斜視図
【
図3】本発明の実施形態の電解コンデンサの外圧変形抑制板を示す斜視図
【
図4】本発明の実施形態の電解コンデンサを示す部分拡大断面図
【
図5】本発明の実施形態の電解コンデンサを備えた電解コンデンサ実装体を示す縦断面図
【
図6】本発明の実施形態の電解コンデンサをモールドした電解コンデンサ実装体を示す縦断面図
【
図7】本発明の実施形態の電解コンデンサをモールドした電解コンデンサ実装体を示す部分拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は一実施形態の電解コンデンサ1を示す縦断面図である。電解コンデンサ1は、本体ケース2、コンデンサ素子10、封止材5及び外圧変形抑制板6を備えている。
【0021】
本体ケース2はアルミニウム等の金属により断面円形の有底筒状に形成され、軸方向の一端を閉塞壁2aにより塞がれて他端に開口部2bを開口する。本体ケース2内にコンデンサ素子10が収納され、開口部2bが封止材5により封止される。
【0022】
図2はコンデンサ素子10の斜視図を示している。コンデンサ素子10は長尺の帯状に形成された陽極箔11、陰極箔12及びセパレータ13を有している。セパレータ13を介して陽極箔11及び陰極箔12を円筒状に巻回してコンデンサ素子10が形成される。これにより、陽極箔11及び陰極箔12はセパレータ13を介して対向する一対の電極を形成する。陰極箔12またはセパレータ13の終端は粘着テープ14によって固定される。
【0023】
セパレータ13の短手方向(軸方向)の幅は陽極箔11及び陰極箔12の短手方向の幅よりも大きく形成される。これにより、セパレータ13は陽極箔11及び陰極箔12に対して閉塞壁2a側及び開口部2b側に突出し、陽極箔11と陰極箔12との短絡が防止される。
【0024】
陽極箔11及び陰極箔12はアルミニウム等により形成される。陽極箔11をタンタル、ニオブ、チタン等の弁作用金属により形成してもよい。セパレータ13はセルロース、ポリエチレンテレフタレート、アラミド等の繊維を抄いたものが使われる。また、コンデンサ素子10には電解液及び固体電解質の一方または両方が保持される。
【0025】
陽極箔11にはリード端子7が接続され、陰極箔12にはリード端子8が接続される。詳細を後述するように、リード端子7、8は封止材5の貫通孔5a、外圧変形抑制板6の貫通孔6a及び座板21の貫通孔21a(
図5参照)を貫通する。
【0026】
図1において、封止材5は絶縁体の弾性体の成形品により円板状に形成され、一対の貫通孔5aを有している。一対の貫通孔5aにはコンデンサ素子10のリード端子7、8が圧入により挿通される。封止材5として、ブチルゴム等を用いることができる。
【0027】
また、封止材5の軸方向の外面上には閉塞壁2a側に凹む凹部5cが設けられる。凹部5cは封止材5の外径よりも小径に形成される。凹部5c内には、貫通孔5aの間に配されて閉塞壁2aの反対側に突出する突起部5bが設けられる。
【0028】
図3は外圧変形抑制板6の斜視図を示している。外圧変形抑制板6は硬質樹脂により封止材5(
図1参照)よりも小径の円板状に形成される。より好ましくは、外圧変形抑制板6はガラス繊維、セルロース繊維、セラミック等の強化材を混入した合成樹脂により形成される。外圧変形抑制板6の一例としてベークライト(登録商標)等が用いられる。
【0029】
外圧変形抑制板6にはリード端子7、8がそれぞれ貫通する一対の貫通孔6a(第1貫通孔)が設けられる。また、貫通孔6aの間には突起部5b(
図1参照)が密入される貫通孔6b(第2貫通孔)が設けられる。
【0030】
ここで、一対の貫通孔6aの間に設けられる貫通孔6bは、一対の貫通孔6aの中心を結ぶ直線を直径とした円の内側に貫通孔6bの少なくとも一部が配置されていればよい。貫通孔6bが一対の貫通孔6aの中心を結ぶ直線上に配置されるとより好ましい。
【0031】
更に、貫通孔6bが外圧変形抑制板6の中心に配置されるとより好ましい。これにより、外圧変形抑制板6を封止材5の凹部5cに配置する際の外圧変形抑制板6の位置決めが容易となるため製造工程が簡便となる。また、後述する封止材5と外圧変形抑制板6と間の隙間の発生をより効率的に防止することができる。
【0032】
また、貫通孔6bを複数設けてもよい。このようにすることで、封止材5の突起部5bと外圧変形抑制板6とがより一体化され、後述する封止材5と外圧変形抑制板6と間の隙間の発生をより防止することができる。
【0033】
封止材5は外圧変形抑制板6と一体に成形される。まず、貫通孔6bを設けた外圧変形抑制板6が下金型内に平面的に設置され、下金型内にゴム材を配置して上金型を下方に押圧する。この時、上金型には突起状刃物が設けられ、封止材5及び外圧変形抑制板6にはリード端子7、8が貫通する貫通孔5a、6aがそれぞれ形成される。
【0034】
そして、上金型の押し下げにより、封止材5には外圧変形抑制板6の周囲を囲む凹部5cが形成され、封止材5の一部が貫通孔6b内に突入して突起部5bが形成される。これにより、外圧変形抑制板6は凹部5cに密入され、突起部5bは貫通孔6bに密入される。尚、予め凹部5c及び突起部5bを形成した封止材5を設け、外圧変形抑制板6を圧入により凹部5cに密入して、突起部5bを圧入により貫通孔6bに密入してもよい。
【0035】
図1において、封止材5の凹部5cに配された外圧変形抑制板6の外周面の少なくとも一部は凹部5cの周壁により覆われる。また、リード端子7、8が貫通孔6aを貫通し、貫通孔6bに封止材5の突起部5bが密入される。これにより、リード端子7、8は本体ケース2の開口部2b外に引き出された状態となっている。
【0036】
本体ケース2の開口部2bに封止材5を配した状態で、本体ケース2には外圧変形抑制板6よりも閉塞壁2a側の外周面を押圧する絞り加工が施される。これにより、本体ケース2には内面側に突出する絞り加工部2cが形成される。
【0037】
絞り加工部2cによって封止材5の外周面が内周方向に圧縮され、本体ケース2の内周面に密着する。また、封止材5の圧縮により貫通孔5aの内面がリード端子7、8に密着する。これにより、本体ケース2の開口部2bが封止材5により封止され、コンデンサ素子10に保持された電解液が本体ケース2外に漏れ出さないようになっている。
【0038】
本体ケース2の開口部2b側の端部は封止材5側に湾曲して折り曲げた折曲部2dが形成される。折曲部2d及び絞り加工部2cによって封止材5が本体ケース2外に抜け出ることを防止している。
【0039】
図4は電解コンデンサ1の開口部2b側の端部の部分拡大断面図を示している。本実施形態では、円板状の封止材5の板厚t5が3.3mm、円板状の外圧変形抑制板6の板厚t6(凹部5cの深さ)が0.8mmである。また、封止材5の閉塞壁2a側の面と凹部5cの底面との距離D(外圧変形抑制板6の板厚t6を除いた封止材5の板厚に相当)は2.5mmである。
【0040】
また一例として、本体ケース2の絞り加工部2cの頂点が距離Dの中央に配置され、絞り加工部2cの頂点と凹部5cの底面との距離はD/2になっている。即ち、外圧変形抑制板6の板厚t6を除いた封止材5の板厚の略中央部分に、絞り加工部2cが設けられる。これにより、絞り加工部2cの軸方向中央が凹部5cの底面よりも閉塞壁2a側に配される。このため、絞り加工部2cが凹部5cの周壁を避けて封止材5を押圧し、封止材5を確実に密封保持することができる。
【0041】
本体ケース2の折曲部2dの先端は、封止材5の凹部5cの周壁よりも内周側に配され、外圧変形抑制板6の外面に当接した状態または近接した状態にしている。即ち、本体ケース2の折曲部2dの先端を外圧変形抑制板6上に配置し、封止材5に食い込ませないようになっている。これにより、封止材5の外周部が容易に本体ケース2に追随して伸縮することができる。
【0042】
また、封止材5の開口部2b側の端部の外周面は開口部2bに向かう程径方向内側に傾斜した傾斜面5dを有している。本体ケース2の内面と傾斜面5dとの径方向の隙間Sは、閉塞面2a側よりも閉塞面2aと反対側の方が大きくなっている。傾斜面5dは縦断面において直線状に傾斜してもよく曲線状に傾斜してもよい。
【0043】
図5は電解コンデンサ1を回路基板22に実装した電解コンデンサ実装体20の縦断面図を示している。電解コンデンサ1は回路基板22への実装性を高めるため、樹脂製の座板21に取り付けられる。リード端子7、8は座板21に設けられる一対の貫通孔21aにそれぞれ挿通され、外側に折曲される。このリード端子7、8の折曲された部分が回路基板22に半田付けされ、電解コンデンサ1が回路基板22に実装される。
【0044】
上記構成の電解コンデンサ1は封止材5上に外圧が加わった際に、外圧変形抑制板6が受け止めるため封止材5が大きく変形することはない。このため、コンデンサ素子10に対する悪影響を防止することができる。
【0045】
また、外圧変形抑制板6が封止材5と同じ外径に形成されると、周囲環境によって本体ケース2が膨張または収縮した際に封止材5の伸縮が外圧変形抑制板6に規制される。これにより、封止材5による本体ケース2の封止効果が低下する。
【0046】
これに対して本実施形態は外圧変形抑制板6が封止材5の外径よりも小径の凹部5cに設けられる。このため、周囲環境によって本体ケース2が膨張または収縮した際に封止材5の外周部が外圧変形抑制板6よる規制を受けにくいため本体ケース2に追随して伸縮する。従って、周囲環境による電解コンデンサ1の密封性の低下を防止することができる。
【0047】
また、突起部5b及び貫通孔6bを設けることによりリード端子7、8の劣化を防止することができる。即ち、電解コンデンサ1の半田付け時には温度上昇により本体ケース2内の圧力が高まり、封止材5の中心部が開口部2bの外側に押されて外方に若干膨れた状態となる。半田付けが終了して温度降下により本体ケース2内の圧力が低下すると、封止材5の中心部はコンデンサ素子10側へと元に戻ろうとする。
【0048】
この時、突起部5b及び貫通孔6bが設けられないと、温度上昇時に封止材5により押し上げられた外圧変形抑制板6が温度降下時に元に戻らず、封止材5と外圧変形抑制板6間に隙間が生じる。この隙間に貫通孔6aから吸い込まれた空気が溜まり、空気に含まれる水分によってリード端子7、8が腐食等により劣化する。
【0049】
これに対して本実施形態は封止材5の突起部5bが外圧変形抑制板6の貫通孔6bに密入されて一体化された状態となる。このため、温度上昇時に封止材5により押し上げられた外圧変形抑制板6が温度降下時に突起部5bに引っ張られて元に戻る。これにより、封止材5と外圧変形抑制板6との間に隙間が形成されにくいため、リード端子7、8の腐食等の劣化を防止することができる。
【0050】
貫通孔6bの内壁面の表面の粗さは、外圧変形抑制板6の閉塞壁2a側の封止材5と接する面よりも粗い方が好ましい。このようにすることで、封止材5の突起部5bと外圧変形抑制板6とがより一体化され、封止材5と外圧変形抑制板6と間の隙間の発生をより防止することができる。表面の粗さについては、表面粗さ計等によって測定される算術平均粗さを用いることができる。
【0051】
更に、貫通孔6bは封止材5側の孔径よりも外面側の孔径を大きくするとより好ましい。このようにすることで、封止材5の突起部5bと外圧変形抑制板6とが更に一体化され、封止材5と外圧変形抑制板6と間の隙間の発生をより防止することができる。
【0052】
尚、封止材5と外圧変形抑制板6との隙間防止のために両者を接着剤により接着すると、接着剤の構成材料によって封止材5が化学的ダメージを受ける虞れがある。このため、本実施形態のように封止材5の突起部5bを貫通孔6bに密入して、突起部5bと外圧変形抑制板6とを一体化させるとよい。ただし、封止材5が化学的ダメージを受けない範囲において接着剤の使用を排除するものではない。
【0053】
また、電解コンデンサ1は例えば、防水、防湿、防塵、耐薬品性向上等のために、
図6、
図7に示すように回路基板22とともにモールド樹脂25でモールドすることができる。
図6はモールド樹脂によりモールドした電解コンデンサ実装体20の縦断面図であり、
図7はこの電解コンデンサ実装体20の部分拡大断面図である。電解コンデンサ1と回路基板22の電解コンデンサ1側(表面側)をモールド樹脂25でモールドしてもよく、回路基板22の裏面も一緒にモールドしてもよい。
【0054】
モールド成型は周知の様に、金型(図示せず)内に電解コンデンサ実装体20が収納され、金型の樹脂注入口(図示せず)からモールド樹脂25が加圧注入される。この時、外圧変形抑制板6が設けられていない場合に、例えば120Nの力でモールド樹脂25を金型内に注入されると封止材5が本体ケース2内に深く押し込まれる。その結果として、封止材5が大きく移動してコンデンサ素子10が損傷する場合がある。
【0055】
これに対して、本実施形態は外圧変形抑制板6が設けられるため、例えば180Nの力でモールド樹脂25が注入された場合でも、封止材5が大きく変形することはない。このため、コンデンサ素子10に対する悪影響を防止することができる。これは、電解コンデンサ1をモールド樹脂25でモールド成型する電解コンデンサ実装体20において画期的な効果であり、電解コンデンサ1の防水、防湿、防塵、耐薬品性向上のためにモールド樹脂25によるモールドを容易に行うことができる。
【0056】
即ち、電解コンデンサ1は外圧変形抑制板6及び絞り加工部2cを有する。このため、モールド時にモールド樹脂25によって封止材5を本体ケース2内に向けて変形させる押圧力を外圧変形抑制板6が受け止める。その結果として、封止材5の閉塞壁2a側の面が閉塞壁2a側に移動しにくくなると考えられる。
【0057】
また、モールド樹脂25は本体ケース2の開口部2bにおいて、外圧変形抑制板6の本体ケース2の開口部2b側の面に沿って流動する。次に、モールド樹脂25は外圧変形抑制板6に当接または近接する折曲部2d先端と外圧変形抑制板6との間に形成される隙間から折曲部2d内に流入する。その後、モールド樹脂25は傾斜面5d上に進入し、封止材5の凹部5cの周壁を径方向内方(外圧変形抑制板6側)へと押圧する。
【0058】
その結果、外圧変形抑制板6の外周部は凹部5cの周壁により強固に保持され、モールド樹脂25によって封止材5を本体ケース2内に向けて変形させる押圧力を外圧変形抑制板6が受け止める。これにより、封止材5の閉塞壁2a側の面が、より移動しにくくなると考えられる。
【0059】
また、傾斜面5dと対向する部分に形成される隙間Sが閉塞壁2a側よりも閉塞壁2aと反対側の方が大きく形成される。このため、モールド樹脂25による押圧力は、凹部5cの周壁を外圧変形抑制板6の方向に向かいやすくする。このため、外圧変形抑制板6の外周部は凹部5cの周壁により更に強固に保持され、これにより、封止材5の閉塞壁2a側の面が、より移動しにくくなると考えられる。
【0060】
また、外圧変形抑制板6は、ガラス繊維、セルロース繊維、セラミックなどの強化材を混入した合成樹脂板によって構成される。このため、モールド樹脂25による押圧力を外圧変形抑制板6が確実に受け止め、封止材5の閉塞壁2a側の面がより移動しにくくなると考えられる。
【0061】
本実施形態によると、電解コンデンサ1には封止材5よりも小径の外圧変形抑制板6が設けられる。外圧変形抑制板6にはリード端子7、8が貫通する貫通孔6a(第1貫通孔)と、封止材5に設けた突起部5bが密入される貫通孔6b(第2貫通孔)とが設けられる。このため、周囲環境による本体ケース2の膨張時または収縮時に封止材5が本体ケース2に容易に追従し、周囲環境による電解コンデンサ1の密封性の低下を防止することができる。
【0062】
また、電解コンデンサ1をモールド樹脂25で覆った場合等の外圧が加わった際に、封止材5に加わる外圧を外圧変形抑制板6が受け止める。このため、封止材5が本体ケース2内に大きく押圧変形することによるコンデンサ素子10の損傷を防止することができる。
【0063】
加えて、半田付け等の昇温時に本体ケース2の内圧上昇により封止材5の中央部が外圧変形抑制板6とともに外側に膨らみ、降温時に封止材5の中央部が外圧変形抑制板6とともに元に戻る。このため、封止材5と外圧変形抑制板6との間に隙間が形成されないため、両者間への水分の進入によるリード端子7、8の劣化を防止することができる。
【0064】
また、絞り加工部2cの軸方向中央が凹部5cの底面よりも閉塞壁2a側に配されるため、絞り加工部2cが凹部5cの周壁を避けて封止材5を押圧する。これにより封止材5を確実に密封保持することができる。
【0065】
また、折曲部2dの先端が凹部5cの内周面よりも径方向内側に配され、外圧変形抑制板6の外面に近接または当接する。これにより、折曲部2dが封止材5に食い込まないため、封止材5の外周部が容易に本体ケース2に追随して伸縮することができる。
【0066】
また、封止材5の外周面は、開口部2bに向かう程径方向内側に傾斜した傾斜面5dを閉塞壁2aと反対側の端部に有する。これにより、電解コンデンサ実装体20を樹脂モールドする際に、傾斜面5dと本体ケース2との間に進入したモールド樹脂25が凹部5cの周壁を内方に確実に押圧する。これにより、外圧により封止材5が本体ケース2内に大きく押圧変形することをより確実に防止することができる。
【0067】
また、本体ケース2の内面と傾斜面5dとの径方向の隙間Sは、閉塞壁2a側よりも閉塞壁2aと反対側の方が大きい。これにより、傾斜面5dと本体ケース2との間に進入したモールド樹脂25による押圧力は、凹部5cの周壁を外圧変形抑制板6方向に向かいやすくする。これにより、外圧により封止材5が本体ケース2内に大きく押圧変形することをより確実に防止することができる。
【0068】
また、貫通孔6bが一対の貫通孔6aの間に配されるので、昇温時に外側に膨らむ封止材5の中央部が降温により元に戻る際に、突起部5bとともに外圧変形抑制板6を確実に元に戻すことができる。
【0069】
また、外圧変形抑制板6の外周部の少なくとも一部が凹部5cの周壁により覆われるので、外圧変形抑制板6を確実に凹部5cに保持することができる。
【0070】
また、外圧変形抑制板6が硬質樹脂により形成されるので、外圧を確実に受け止めて封止材5の変形を抑制することができる。
【0071】
また、外圧変形抑制板6が強化材を混入した樹脂により形成されるので、外圧を確実に受け止めて封止材5の変形を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、電解コンデンサを回路に実装した自動車、電子機器等に利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 電解コンデンサ
2 本体ケース
2a 閉塞壁
2b 開口部
2c 絞り加工部
2d 折曲部
5 封止材
5a 貫通孔
5b 突起部
5c 凹部
5d 傾斜面
6 外圧変形抑制板
6a 貫通孔(第1貫通孔)
6b 貫通孔(第2貫通孔)
7、8 リード端子
10 コンデンサ素子
11 陽極箔
12 陰極箔
13 セパレータ
14 粘着テープ
20 電解コンデンサ実装体
21 座板
21a 貫通孔
22 回路基板
25 モールド樹脂
D 距離
S 隙間
t5、t6 板厚