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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130064
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ペット用吸収性シーツ
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/015 20060101AFI20240920BHJP
   A01K 1/01 20060101ALI20240920BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20240920BHJP
   B32B 27/06 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A01K1/015 B
A01K1/01 801J
B32B3/30
B32B27/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039559
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】597098257
【氏名又は名称】株式会社コ-チョ-
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 邦彦
【テーマコード(参考)】
2B101
4F100
【Fターム(参考)】
2B101AA13
2B101GB01
2B101GB06
2B101GB08
4F100AK01C
4F100AR00B
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100DD04A
4F100DD04D
4F100DD05A
4F100DD05D
4F100DG02C
4F100GB71
4F100JD05A
4F100JD05B
4F100JD15C
(57)【要約】
【課題】ペットの足濡れを抑制できるとともに複数回使用することができるペット用吸収性シーツを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るペット用吸収性シーツ1は、液透過性である表面層2と、液不透過性である裏面層6と、表面層2と裏面層6との間に配置され、表面層を透過した液体を吸収する吸収部材4と、表面層2と吸収部材4との間に配置されたティッシュ層3と、を備え、ティッシュ層3が吸収部材4を覆っている部分に対して凹凸部10が形成され、吸収部材4が、パルプ材7と吸水性ポリマー8とを含有し、吸収部材4中のパルプ材7の重量に対する吸水性ポリマー8の重量の比率が1未満である。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性である表面層と、
液不透過性である裏面層と、
前記表面層と前記裏面層との間に配置され、前記表面層を透過した液体を吸収する吸収部材と、
前記表面層と前記吸収部材との間に配置されたティッシュ層と、
を備え、
前記表面層と前記ティッシュ層とが前記吸収部材を覆っている部分が凹凸部を有し、
前記吸収部材が、パルプ材と吸水性ポリマーとを含有し、
前記吸収部材中の前記パルプ材の重量に対する前記吸水性ポリマーの重量の比率が1未満である、ペット用吸収性シーツ。
【請求項2】
前記凹凸部が凹部と凸部とから形成され、前記凹部は液体が流通可能とされている、請求項1に記載のペット用吸収性シーツ。
【請求項3】
前記吸収部材と前記裏面層との間にさらにティッシュ層が配置されている、請求項1に記載のペット用吸収性シーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペット用吸収性シーツに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、イヌやネコ、ウサギなどの多くのペットが室内で飼育されており、ペットの尿等を吸収するペット用吸収性シーツが広く用いられている。ペットの室内飼育にあたっては、尿の吸収力に優れ、尿から発生する臭いを抑えることができるペット用品が望まれている。
【0003】
特許文献1には、尿を吸収する吸収体部分を、互いに性質が異なる上層と下層からなる二層構造として尿の保持力や吸収速度を速めたペット用吸収性シーツが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-232684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ペットがペット用吸収性シーツの上で排尿した後、シーツの上部に尿が残っていたり、ペットに直接的に接触する表面層に湿り気が残っていたりすると、そのような箇所を歩いたペットの足裏に水分や汚れが付着する。足裏が濡れたペットがシーツの外に移動して室内を歩き回ると、室内に汚れが広がってしまう。このため、尿や水分をより素早く吸収および拡散させることができ、ペットの足濡れを抑えることができるペット用吸収性シーツが望まれている。また廃棄物の量の削減や資源節約の観点から、ペット用吸収性シーツは排尿1回分での使い捨てではなく、繰り返し使用できることが望ましい。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ペットの足濡れを抑制できるとともに複数回使用することができるペット用吸収性シーツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のペット用吸収性シーツは以下の手段を採用する。
【0008】
本発明の一態様に係るペット用吸収性シーツは、液透過性である表面層と、液不透過性である裏面層と、前記表面層と前記裏面層との間に配置され、前記表面層を透過した液体を吸収する吸収部材と、前記表面層と前記吸収部材との間に配置されたティッシュ層と、を備え、前記ティッシュ層が前記吸収部材を覆っている部分が凹凸部を有し、前記吸収部材が、パルプ材と吸水性ポリマーとを含有し、前記吸収部材中の前記パルプ材の重量に対する前記吸水性ポリマーの重量の比率が1未満である。
【0009】
表面層とティッシュ層とが吸収部材を覆っている部分に対して凹凸部を形成することとした。これにより、複数回液体を吸収した場合にも液体が吸収部材に広く拡散し、表面層のサラサラ感を持続させることができる。また、ペット用吸収性シーツが1回のみでなく、2回目、3回目と繰り返して液体を吸収した後でも、1回目の吸収速度と変わらない吸収速度を維持することができる。
吸収部材中のパルプ材の重量に対する吸水性ポリマーの重量の比率を1未満とした。吸収部材中のパルプ材の重量に対する吸水性ポリマーの重量の比率は1以上である場合に比べて、本願発明のペット用吸収性シーツは、製品当たりの吸水性ポリマーの量が少なくても、広い範囲への拡散を可能とし、複数回用いてもウェットバックを抑えることができる。また、液体が表面層上に残りにくくなり、液体が吸収された跡が目立ちにくくなる。
【0010】
前記一態様に係るペット用吸収性シーツは、前記凹凸部が凹部と凸部とから形成され、前記凹部は液体が流通可能とされている。
【0011】
表面層を透過してシーツ内部に吸収された液体は、吸収部材に形成された凹凸部のうち凹部に導かれて吸収部材内に拡散する。これにより、シーツが複数回液体を吸収した場合にも、1回目に拡散した範囲と同程度の範囲にわたって液体を拡散させることができる。
【0012】
前記一態様に係るペット用吸収性シーツは、前記吸収部材と前記裏面層との間にさらにティッシュ層が配置されていてもよい。
【0013】
ペット用吸収性シーツ内で吸収部材と裏面層との間にさらにティッシュ層が配置されていることで、シーツ内部での液体の吸収量を増やすことが可能となる。これにより、早くシーツの表面の湿り気を減らし、表面層のサラサラ感を持続させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るペット用吸収性シーツは上記のような構成とすることで、ペットの足濡れを抑制できるとともに、複数回使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るペット用吸収性シーツの平面図である。
図2A】本発明の一実施形態に係るペット用吸収性シーツの部分拡大断面図である。
図2B図2A中のX部分の拡大図である。
図3】本発明の一実施形態に係るペット用吸収性シーツと、対照品の吸収性シーツとを用い、シーツに投入した水分の拡散速度を比較したグラフである。
図4】本発明の一実施形態に係るペット用吸収性シーツと、対照品の吸収性シーツとを用い、シーツに投入した水分のウェットバック量を比較したグラフである。
図5】本発明の一実施形態に係るペット用吸収性シーツと、対照品の吸収性シーツとを用い、シーツに投入した水分のウェットバック量を比較したグラフである。
図6】本発明の一実施形態に係るペット用吸収性シーツと、対照品の吸収性シーツとを用い、シーツに投入した水分の拡散速度を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るペット用吸収性シーツの一実施形態について、図面を参照して説明する。ペット用吸収性シーツは、イヌやネコ、ウサギ、ハムスターなど、室内で飼育されるペットが使用するものである。
以下、本発明の第1実施形態について、図1図2Aおよび図2Bを用いて説明する。図1には、ペット用吸収性シーツ1が示されている。ペット用吸収性シーツ1は、ペットの飼育エリアの床面、ペット用トイレ(図示なし)のトレー部分、ビニールシートの上などに広げた状態で載置される。
【0017】
図1には、平面状に広げたペット用吸収性シーツ1が長方形状である例が示されている。ペット用吸収性シーツは長方形状に限らず、正方形状であってもよい。ペット用吸収性シーツの大きさは、シーツを使用するペットの体の大きさに基づいて適宜選択することができる。
【0018】
図2Aにペット用吸収性シーツ1の部分拡大断面図を示す。ペット用吸収性シーツ1は、図2Aにおける上から順に、表面シート(表面層)2、ティッシュ(ティッシュ層)3、吸収部材4、ティッシュ(ティッシュ層)5、裏面シート(裏面層)6が積層された構成を有する。
【0019】
表面シート2は、ペット用吸収性シーツの最表面に配置される液透過性のシート状部材であり、有孔または無孔の不織布、もしくは多孔性プラスチックフィルムなどが用いられる。本実施形態では、表面シート2として不織布を用いる。表面シート2に用いる不織布としては、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド不織布などを単体でまたは組み合わせて用いることができる。不織布の材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラートを単体で、または組み合わせて用いることができる。
【0020】
ティッシュ3は親水性の吸収紙であり、平面視で吸収部材4とほぼ同じ大きさを有し、吸収部材4を覆うようにして配置される。ティッシュ3は、表面シート2を透過した液体を吸収部材4へと速やかに移行し拡散させる機能を有する。この機能により、吸収部材4への液体の吸収速度が高められ、排尿範囲の上を歩いたペットの足裏が濡れることを防ぐことができる。ティッシュ3としては白色のものだけでなく、例えば水色や緑色、黒色に着色したものを用いることもできる。着色したティッシュを用いることで、吸収部材4に吸収された液体の跡を表面シートの上から見えにくくし、見た目を向上させることができる。
【0021】
吸収部材4は、パルプ材7と吸水性ポリマー8とを含有し、ペットの糞尿などに含まれる液体を吸収して保持する機能を有している。図2Bには、一例として、綿状のパルプ材7と粒状の吸水性ポリマー8とによって構成された吸収部材4の部分拡大断面図を示す。本例では、吸収部材4はパルプ材からなるシートが2層配置され、下側のパルプ材シートと上側のパルプ材シートとの間と、ティッシュ3と上側のパルプ材シートとの間とに、吸水性ポリマー8が散布された構成となっている。吸収部材の別の例では、パルプ材からなるシートを1層のみとし、吸水性ポリマー8の粒体を綿状のパルプ材の内部に分散して配置するように構成してもよい。
【0022】
吸収部材4を構成する材料は上述のものに限定されず、例えばパルプ材として破砕パルプを用いることもできる。吸水性ポリマー8は、カルボキシメチルセルロース架橋物、ポリアクリル酸およびその塩、アクリル酸塩重合体の架橋物、ポリオキシエチレン架橋物、デンプン系などの吸水性樹脂から選択することができる。本実施形態では、アクリル酸塩重合体の架橋物を用いることとする。
【0023】
図1および図2Aに示した例では、吸収部材4と裏面シート6との間にもティッシュ5が配置されている。ティッシュ5の材料は、先述したティッシュ3と同じものを用いてもよく、または別のものを用いることもできる。例えばティッシュ3として着色したティッシュを用い、ティッシュ5として白色のティッシュを用いてもよい。吸収部材4と裏面シート6との間にティッシュ5を配置すると、吸収部材4に吸収された後に透過した一部の液体をさらにティッシュ5でも保持することができる。
【0024】
ペット用吸収性シーツの変形例として、ティッシュ5の配置を省略した構成も可能である。
【0025】
裏面シート6は、吸収部材4が吸収して保持している液体がシーツ外に漏れることを防ぐ、合成樹脂からなる液不透過性のフィルムまたはシート状部材である。裏面シート6が床面やトレーに対向して載置される。裏面シート6の材料としては、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレン、不飽和ポリエステル等を用いることができる。本実施形態では、裏面シート6としてポリエチレンシートを用いる。
【0026】
本実施形態のペット用吸収性シーツ1のティッシュ3、吸収部材4、およびティッシュ5に対しては、図2Aに示されたような凹凸部10が設けられている。この凹凸部10は、凹部11と凸部12とから形成されている。
【0027】
図1および図2Aに示した例では、凹凸部10は、エンボス加工で形成されたエンボス部であり、吸収部材4を覆っている面の全面にわたって格子状に設けられている。図2Aに示すように、本実施形態での凸部12は断面視で略角柱状に突出した形状、凹部11は溝状とされている。凸部12の形状はこれに限られず、畝状や凸条、他にも角錐状、円柱状、円錐状などの突起形状として形成することができる。凹部11は、隣接する凸部12の間に連続して延びる溝状に形成される。図1で格子を形成している線状の部分が凹部11、その凹部11に囲まれた部分が凸部12に対応している。
【0028】
本実施形態のペット用吸収性シーツ1では、図2Aに部分断面図で示すように、凹凸部10がエンボス加工で形成された場合、ティッシュ3および吸収部材4がティッシュ5に圧着され、ティッシュ3、吸収部材4、ティッシュ5が一体化される。圧着により形成された連続して延在する線状の溝部が凹部11となる。ティッシュ3、吸収部材4およびティッシュ5の圧着は、所定の形状に加工されたエンボス型が装着されたロールを押圧することで行うことができる。エンボス加工は格子状に限定されず、液体の吸収拡散に必要な量の凹凸部を確保できる限りで所定の模様を表すように設けられてもよい。
【0029】
圧着によりティッシュ3、吸収部材4およびティッシュ5が一体化されると、吸収部材4に含有されているパルプ材7と吸水性ポリマー8とが凹部11に沿って固定される。これにより、ペットがシーツの上を歩き回っても、パルプ材7や吸水性ポリマー8が偏在して吸収しにくくなる部分が生じるのを防ぐことができる。
【0030】
ティッシュ3、吸収部材4、ティッシュ5が一体化されて凹凸部10が形成されている積層体のティッシュ5が吸収部材4と対向していない方の面と裏面シート6との間に接着剤または糊を塗布して所定の圧力を付すことにより、積層体と裏面シート6とが接着される。表面シート2と、ティッシュ3、吸収部材4、ティッシュ5の積層体との間にも接着剤を噴霧または塗布し、表面シート2、積層体、裏面シート6を接合し、ティッシュ3、吸収部材4、ティッシュ5を内包したペット用吸収性シーツ1が製造される。接着剤としてはホットメルト型の接着剤が好適である。接合する際に、表面シート2を凹凸部10の凹部11、凸部12の形状に沿うように表面に貼り付けることで、図2Aに示すように、表面シート2にも凹凸部10の形状に沿った凹凸が形成されてもよい。
【0031】
表面シート2と裏面シート6は、その周縁を、ティッシュ3、吸収部材4およびティッシュ5よりも大きくし、周縁部15を設けてもよい。図1では、周縁部15が長方形状の四辺に設けられた例を示している。表面シートの周縁部と裏面シートの周縁部とが重なった部分には吸収部材やティッシュが含有されないこととなるため、使用済みのペット用吸収性シーツを廃棄するときにその周縁部15を持つことで、排泄があった箇所に触れてしまうことを回避することができる。また周縁部15にスリットや開口を設けると、シーツをホルダーやトレーに設けられた突起部に装着して固定させることができる。
【0032】
凹凸部10の変形例として、吸収部材4の全面に対して凹凸部10を設けるのではなく、一部に設けられていない部分があってもよい。この場合には、吸収部材4の全面に対して80%から90%程度の面積範囲で設けられていれば液体を有効に拡散させることができる。
【0033】
形成された線状に延びる凹部11は、凹部11が延在する方向に、凹部11に沿って液体を誘導し拡散させる。凹部11が連続的に配置されていることで導管のように機能し、吸収部材4の広い範囲にわたって液体が流通する。これにより、複数回の排尿が同じ場所や重複する場所で行われた場合にも液体が速やかに拡散され、漏れ戻り(ウェットバック)の発生を抑制することができる。これに対し、凹凸部を設けないペット用吸収性シーツでは、液体の速やかな拡散が生じず、排尿した箇所に液体が溜まるスポット吸収が生じてしまう。スポット吸収が生じて液体が狭い範囲に溜まると、ペットの足濡れの原因となり、部屋を汚してしまうことにつながる。
【0034】
凹部11の深さ(図2Aの符号「C」)および幅(図2Aの符号「A」、符号「B」)は、液体が流通することができる程度とされる。凹凸部10のピッチ(図1における格子1つ分の縦横方向の大きさ)は、ペット用吸収性シーツ1の大きさや材料によって取り得る大きさが決まってくる。例えば吸収部材4が設けられている部分の大きさが縦300mm×横400mm程度の長方形であるシーツの場合、図1の紙面における上下方向(縦方向)のピッチおよび左右方向(横方向)のピッチは、ともに5mmから10mm程度であってよい。縦方向、横軸方向のピッチをともに7mmとすると好適である。
【0035】
凹凸部10は、少なくともティッシュ3と吸収部材4とに設けられ、最も裏面側に配置されるシート材に対して圧着されるように形成される。上述した例では、ティッシュ3および吸収部材4がティッシュ5に圧着される。ティッシュ5の配置を省略した構成の変形例では、ティッシュ3と吸収部材4は裏面シート6に対して圧着される。
【0036】
本実施形態の変形例として、表面シート2、ティッシュ3および吸収部材4がティッシュ5に対してエンボス加工で圧着されて凹凸部10を形成する構成としてもよい。このような構成とすることで、液体が表面シート2上にもエンボス加工で形成された凹部11に流通し、内包されているティッシュ3および吸収部材4に液体が到達する前に最表面上でより早く液体を広範囲に拡散させることができる。
【0037】
さらに変形例として、凹凸部10を表面シート2には設けない構成、すなわち、ティッシュ3、吸収部材4、ティッシュ5が圧着により一体化されて凹凸部10が形成された積層体の上から表面シート2で覆い、表面シート2と積層体とが接着剤で部分的に接着された構成としてもよい。
【0038】
本実施形態のペット用吸収性シーツ1は、吸収部材4が含有するパルプ材の重量に対する吸水性ポリマーの重量の比率が1未満である。本実施形態のペット用吸収性シーツにおいては、パルプ材の重量に対する吸水性ポリマーの重量の比率が0.5未満であってもよい。これに対し、同様にパルプ材と吸水性ポリマーを含有する吸収部材に相当する部材を有する参考例においては、パルプ材の重量に対する吸水性ポリマーの重量の比率が1以上となっている。詳細は後述するが、本願発明のペット用吸収性シーツは、参考例と比べて製品当たりの吸水性ポリマーの含有量が30~40%程度少ない一方で、シーツ内に取り込まれた液体の拡散範囲の広さは参考例よりも広く、ウェットバックの量も参考例よりも少ない。
【0039】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
ペット用吸収性シーツ1は、ティッシュ3が吸収部材4を覆っている部分が凹凸部10を有し、吸収部材4中のパルプ材7の重量に対する吸水性ポリマー8の重量の比率が1未満であることで、ペット用吸収性シーツ1の表面を透過した液体が参考例よりも早くシーツ内部に拡散することで、表面シート2や吸収部材4の表面に近い側に液体が残りにくくなる。これにより、参考例よりも優れた拡散範囲およびウェットバック量の少なさを確保できるとともに、製品当たりの吸水性ポリマーの量を減らすことができ、コスト面でも有利とすることができる。参考例と比べて拡散範囲を広く、ウェットバック量を少なくできたことで、ペットがペット用吸収性シーツ1上の排尿した箇所の上を歩いた場合に足裏が濡れるのが抑えられ、湿り気が他の領域に大きく広がることを防ぐことができる、ペットがペット用吸収性シーツ1の外側に出て室内を歩き回ったとしても、部屋を濡らしたり汚したりすることを防ぐことができる。尿などから発生する臭いがペット用吸収性シーツ1から漏れ出てくる量も少なくすることができる。
【0040】
凹凸部10が凹部11と凸部12とから形成され、凹部11は液体が流通可能とされていることで、表面シート2を透過してペット用吸収性シーツ1の内部に侵入した液体は、凹凸部10のうち凹部11に導かれて、吸収部材4内に素早く拡散する。これにより、ペット用吸収性シーツ1の上でペットが複数回排尿した場合にも、1回目に拡散した範囲と同程度の範囲にわたって液体を拡散させることができる。これにより、表面シート2が1回目の排尿後と同程度のサラサラ感を維持することができる。よって、ペット用吸収性シーツ1を排尿1回のみでの使い捨てではなく、繰り返し使用することができ、廃棄物を削減することができる。
【0041】
ペット用吸収性シーツ1の中で吸収部材4と裏面シート6との間にさらにティッシュ5が配置されていることで、ペット用吸収性シーツ1の内部での液体の吸収量を増やすことが可能となる。これにより、参考例よりも早くシーツの表面の湿り気を減らし、表面層シート2のサラサラ感を持続させることができる。
【実施例0042】
ペット用吸収性シーツ(以下、「吸収性シーツ」ともいう)に液体が投入された際における、液体の拡散範囲とウェットバック量とについて、上記実施形態のペット用吸収性シーツと市販されている従来型のペット用吸収性シーツとを比較する実験を行った。液体の拡散範囲の比較からは、尿等を吸い込んだ吸収性シーツの中で液体が一定時間内でどの程度の範囲で拡散したか、すなわち拡散速度の比較を行うことができる。ウェットバック量の比較からは、尿が吸収性シーツ内に透過した後に吸収性シーツの表面に残っている水分量、すなわち使用後のサラサラ感の違いの比較を行うことができる。
【0043】
試験体1および試験体2は本実施形態に係るペット用吸収性シーツを、試験体3は対照品として市販品のペット用吸収性シーツを、それぞれ用いた。試験体1および試験体2の吸収性シーツには、ティッシュと吸収部材に対してエンボス加工を行って凹凸部が形成され、その上から表面シートが貼り付けられている。表1に示したように、試験体1、試験体2、試験体3は、ほぼ同じ大きさの吸収性シーツを用いており、製品の重量としては22~28gの範囲内にある。その一方で、吸水性ポリマーの量は、本実施形態に係る試験体1では4.3g、試験体2では4.5gそれぞれ含有しているところ、試験体3では7.5g含有している。パルプ材の量については、試験体1では11.0g、試験体2では14.8g含有しているところ、試験体3では5.1g含有している。換言すると、本実施形態に係る試験体1および試験体2は、パルプ材重量に対する吸水性ポリマーの重量比が、0.39,0.30となっているのに対し、試験体3は1.47となっており、パルプ材に対する吸水性ポリマーの重量比は試験体3では試験体1,2の約3.0~4.8倍となっている。凹凸部のピッチは、図1の紙面での縦方向、横方向ともに7mmとした。
【0044】
試験1-1 拡散範囲の比較
試験体1から3のシーツに対し、各吸収性シーツの中央部に円筒を用いて着色した生理食塩水を50mL投入し、投入から所定の時間経過後に、それぞれの吸収性シーツの表面シート上で液が拡散した距離を測定した。液が拡散した距離を「拡散範囲」として評価する。表1の「拡散範囲1」から「拡散範囲3」は、吸収性シーツの中央部に生理食塩水を50mL投入して3分経過後に拡散した距離を測定する試験を3回行った結果である。それぞれの試験体についての結果を表1および図3に示した。
【0045】
試験1-2 ウェットバック量の比較
試験体1から3の吸収性シーツを用い、各吸収性シーツの中央部に着色した生理食塩水を50mL投入し、投入から所定の時間経過後にそれぞれの吸収性シーツの表面シートにろ紙を一定の圧で押し当てて、ろ紙に移った水分量を測定した。ろ紙に移った水分量を「ウェットバック量」として評価する。表1の「ウェットバック1」は生理食塩水投入から3分後に測定した重量(g)、「ウェットバック2」は生理食塩水投入から10分後にさらに生理食塩水を50mL投入して3分経過した後にろ紙に移して測定した重量(g)、「ウェットバック3」は生理食塩水投入から10分後にさらに生理食塩水を50mL投入して10分経過した後にろ紙に移して測定した重量(g)を、それぞれ示している。それぞれの試験体についての結果を表1、図3および図4に示した。
【0046】
【表1】
【0047】
拡散範囲1から3の値を、本実施形態に係る試験体1、試験体2と、市販品の試験体3とで比較した。結果を図3に示す。試験体1では234mm~275mm、試験体2では215mm~265mmであるところ、対照品である試験体3の148mm~193mmに対して約1.5倍大きく広がっていた。
【0048】
ウェットバック1の値について比較した結果を図4に示す。1回吸収させた後の濡れ戻り量が、試験体1では1.2g、試験体2では0.7gだったところ、対照品である試験体3では8.3gであった。この結果から、1回吸収させた後では、試験体1、試験体2と比較して約7~10倍の量の水分がシーツ表面に残っていたことが分かった。ウェットバック2(2回目の投入後3分後に測定)では試験体1と試験体3とであまり差が見られなかったものの、ウェットバック3(2回目の投入後10分後に測定)では試験体1では4.8g、試験体2では1.3gだったところ、試験体3では16.7gであった。この結果から、試験体1、試験体2と比較して、3.5倍から10倍以上の水分が試験体3のシーツ表面に残っていたことが示唆された。
【0049】
試験2
ペット用吸収性シーツに液体が3回にわたって投入された際における、液体の拡散範囲とウェットバック量とについて、本実施形態の吸収性シーツと市販の吸収性シーツとを比較する実験を行った。
試験体4は本実施形態に係るペット用吸収性シーツであり、試験体5は試験1-1および1-2で用いた試験体3と同じである。試験体4と試験体5は、大きさおよび製品の重量はほぼ同じであり、パルプと吸水性ポリマーの重量比のみ異なっている。
【0050】
試験1-1および1-2と同様の手法を用い、各吸収性シーツの中央部に着色した生理食塩水を50mL投入し、投入から所定の時間経過後にそれぞれの吸収性シーツの表面シートにろ紙を一定の圧で押し当てて、ろ紙に移った水分量を測定するステップを2回繰り返し、通算3回食塩水を投入した。
【0051】
ウェットバック量の比較結果を図5に、拡散範囲の比較結果を図6に、それぞれ示した。図5の縦軸の単位はグラム(g)であり、図6の縦軸の単位はセンチメートル(cm)である。試験体4を用いると、投入1回目から3回目まで全ての回において、市販の対照品(試験体5)と比べてウェットバック量が少なかったことが分かった。対照品(試験体5)の2回目のウェットバック量と試験体4の3回目のウェットバック量とが同程度であったことから、本実施形態に係る試験体のウェットバック量の少なさが際立っていることを確認できた。拡散範囲についても、投入1回目から3回目まで全ての回において、試験体4は試験体5の拡散範囲の約1.5倍の距離まで拡散していることが分かった。本実施例の試験体4は、市販品である試験体5と比較して、吸収性シーツ内に吸い込んだ液体がより早く拡散できることを確認できた。
【0052】
以上から、本実施形態に係るペット用吸収性シーツは、吸収性シーツに設けた凹凸部と、吸収性ポリマーの量とパルプの量とを適切に組み合わせたことで、対照品と比較して液体吸収後の拡散速度が速く、またウェットバック量が少なくできることを確認できた。
【0053】
なお、図面に表された各層の厚みは、本実施形態に係るペット用吸収性シーツを説明するための一例であり、実際の製品における厚みを規定するものではない。例えば、図2Aではティッシュ3とティッシュ5の厚みが異なっているが、同じ厚みのものを用いてもよいし、ティッシュ3の方がティッシュ5よりも厚いものを用いてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 ペット用吸収性シーツ
2 表面シート(表面層)
3 ティッシュ(ティッシュ層)
4 吸収部材
5 ティッシュ(ティッシュ層)
6 裏面シート(裏面層)
7 パルプ材
8 吸水性ポリマー
10 エンボス部(凹凸部)
11 凹部
12 凸部
15 周縁部
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6