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特開2024-130075マンホールの斜壁管の更生方法及び該方法に用いられるライニング組立体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130075
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】マンホールの斜壁管の更生方法及び該方法に用いられるライニング組立体
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/30 20060101AFI20240920BHJP
   E03F 5/02 20060101ALI20240920BHJP
   E03F 7/00 20060101ALI20240920BHJP
   E02D 29/12 20060101ALI20240920BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20240920BHJP
   F16L 55/163 20060101ALI20240920BHJP
   F16L 55/18 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B29C63/30
E03F5/02
E03F7/00
E02D29/12 Z
F16L1/00 J
F16L55/163
F16L55/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039582
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 善央
(72)【発明者】
【氏名】菊池 隆太
【テーマコード(参考)】
2D063
2D147
3H025
4F211
【Fターム(参考)】
2D063DA00
2D063EA06
2D147BA00
3H025EA01
3H025EB01
3H025EC01
3H025ED02
4F211AG08
4F211AH43
4F211SA13
4F211SC03
4F211SD01
4F211SD10
4F211SJ01
4F211SJ21
4F211SN03
4F211SP12
4F211SP25
(57)【要約】
【課題】既設のマンホールの円錐台形状の斜壁管を、比較的簡単にライニングする更生方法を提供する。
【解決手段】 既設のマンホール1の斜壁管4の内周に、周方向に分割され水平断面が湾曲形状をなす6つピース21~26を備えた円錐台形状の斜壁ライニング管20を設置する。予め、周方向に隣り合う予定の特定の2つのピース21,26どうしを連結せずに、周方向に隣り合う6つのピース21~26の側縁部どうしを蝶番28により回動可能に連結することにより、一連のライニング組立体20Aを用意する。このライニング組立体20Aを連結部で折り畳み、マンホール1の上端開口7から斜壁管4の内部に挿入する。挿入された折り畳み状態のライニング組立体20Aを広げて、斜壁ライニング管20を構築する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円錐台形状をなすマンホールの斜壁管の内周に、周方向に分割され水平断面が湾曲形状をなす6つ以上のピースを備えた円錐台形状の斜壁ライニング管を設置することにより、前記斜壁管を更生する方法であって、
周方向に隣り合う予定の特定の2つのピースどうしを連結せずに、周方向に隣り合う前記6つ以上のピースの側縁部どうしを連結手段により回動可能に連結することにより、前記6つ以上のピースが連なる一連のライニング組立体を用意し、
前記ライニング組立体を前記ピースの連結部で折り畳み、
折り畳まれた前記ライニング組立体を、前記マンホールの上端開口から前記斜壁管の内部に挿入し、
前記ライニング組立体を広げて、前記斜壁ライニング管を構築することを特徴とするマンホールの斜壁管の更生方法。
【請求項2】
前記連結手段が蝶番からなり、前記蝶番が設置状態で外側を向く前記ピースの凸曲面に設けられることを特徴とする請求項1に記載のマンホールの斜壁管の更生方法。
【請求項3】
前記6つ以上のピースが6つのピースからなることを特徴とする請求項1に記載のマンホールの斜壁管の更生方法。
【請求項4】
前記ライニング組立体は一端側から他端側に向かって順に第1~第6ピースを有し、前記第1、第6ピースが前記特定のピースとして提供され、
前記ライニング組立体の折り畳み状態において、
第1ピースと第2ピースが、当該ピースの凸曲面が外側になるような第1折り畳み態様で折り畳まれ、第2ピースと第3ピースが前記第1折り畳み態様で折り畳まれるとともに第3ピースが第1ピースの外側に配置され、
第6ピースと第5ピースが前記第1折り畳み態様で折り畳まれ、第5ピースと第4ピースが前記第1折り畳み態様で折り畳まれるとともに第4ピースが第6ピースの外側に配置され、
第3ピースと第4ピースが、凸曲面が内側になるような第2折り畳み態様で折り畳まれることを特徴とする請求項3に記載のマンホールの斜壁管の更生方法。
【請求項5】
円錐台形状をなすマンホールの斜壁管の内周に設置され周方向に分割された円錐台形状の斜壁ライニング管を構築するためのライニング組立体であって、
一端から他端に向かって順に第1~第6ピースを備え、前記第1、第6ピースが連結されず、隣り合う前記第1~第6ピースの側縁部どうしが連結手段により回動可能に連結されていることを特徴とするライニング組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホールの斜壁管をライニングすることにより更生する方法、およびこの更生方法に用いられるライニング組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
マンホールが老朽化した場合、その内壁をライニングすることにより更生することは公知である。特許文献1には、合成樹脂製の帯状部材をマンホールの直壁管の内壁に沿って螺旋状に巻回することによって、ライニング管を製管することが開示されている。さらに特許文献1の段落0027には、マンホールの斜壁管の内壁に沿って帯状部材を螺旋状に巻回することによりライニング管を製管することも開示されている。ライニング管の設置が完了した後、マンホールの内壁とライニング管との間に裏込め材が充填される。
【0003】
特許文献2に開示されたマンホールの斜壁管の更生方法では、工場において周方向に分割された8つのピースをジョイントおよび溶接により連結してライニング管を製造し、このライニング管を施工現場においてU字形に折り畳んでマンホールの上端開口から挿入した後、ライニング管を広げて斜壁管に設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-142195号公報(段落0027)
【特許文献2】特開2009-97189号公報(図1図10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたマンホールの斜壁管の更生方法では、円錐台形状の斜壁管の内壁に沿って帯状部材を螺旋状に巻いてライニング管を製管するため、特殊な形状の帯状部材を用いて専用の製管機で製管する必要があり、施工に時間がかかるとともに、製造コストが嵩む。
特許文献2に開示されたマンホールの斜壁管の更生方法では、ライニング管をU字形に折り畳んでマンホールの上端開口から挿入するために、ピースを大きく撓ませる必要がある。そのため、ピースを容易に弾性変形可能な材質及び板厚で形成しなければならず、ライニング管の強度を維持することができない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、円錐台形状をなすマンホールの斜壁管の内周に、周方向に分割され水平断面が湾曲形状をなす6つ以上のピースを備えた円錐台形状の斜壁ライニング管を設置することにより、前記斜壁管を更生する方法であって、
周方向に隣り合う予定の特定の2つのピースどうしを連結せずに、周方向に隣り合う前記6つ以上のピースの側縁部どうしを連結手段により回動可能に連結することにより、前記6つ以上のピースが連なる一連のライニング組立体を用意し、前記ライニング組立体を前記ピースの連結部で折り畳み、折り畳まれた前記ライニング組立体を、前記マンホールの上端開口から前記斜壁管の内部に挿入し、前記ライニング組立体を広げて、前記斜壁ライニング管を構築することを特徴とする。
【0007】
上述の方法によれば、6つ以上のピースを回動可能に連結し両端が自由な一連のライニング組立体を、連結部で折り畳んでマンホールの上端開口から斜壁管の内部に挿入し、ここで広げることにより、簡単な作業で斜壁ライニング管を構築することができる。また、ピースを連結部で折り畳むため、ピースの大きな弾性変形を伴わずに、ライニング組立体をマンホールの上端開口を通過可能なサイズにすることができ、ピースの強度、ひいては斜壁ライニング管の強度を確保することができる。
【0008】
好ましくは、前記連結手段が蝶番からなり、前記蝶番が設置状態で外側を向く前記ピースの凸曲面に設けられる。これによれば、斜壁ライニング管により蝶番を隠すことができる。
【0009】
好ましくは、前記6つ以上のピースが6つのピースからなる。これによれば、ライニング組立体のピースの数を、通常のサイズのマンホールの上端開口を通過可能な最小数とするため、製造コストを低減できるとともに、斜壁ライニング管の作業性をより一層向上させることができる。
【0010】
さらに好ましくは、前記ライニング組立体は一端側から他端側に向かって順に第1~第6ピースを有し、前記第1、第6ピースが前記特定のピースとして提供され、前記ライニング組立体の折り畳み状態において、第1ピースと第2ピースが、当該ピースの凸曲面が外側になるような第1折り畳み態様で折り畳まれ、第2ピースと第3ピースが前記第1折り畳み態様で折り畳まれるとともに第3ピースが第1ピースの外側に配置され、第6ピースと第5ピースが前記第1折り畳み態様で折り畳まれ、第5ピースと第4ピースが前記第1折り畳み態様で折り畳まれるとともに第4ピースが第6ピースの外側に配置され、第3ピースと第4ピースが、凸曲面が内側になるような第2折り畳み態様で折り畳まれる。これによれば、ライニング組立体をコンパクトに折り畳むことができる。
【0011】
本発明の他の態様は、円錐台形状をなすマンホールの斜壁管の内周に設置され周方向に分割された円錐台形状の斜壁ライニング管を構築するためのライニング組立体であって、一端から他端に向かって順に第1~第6ピースを備え、前記第1、第6ピースが連結されず、隣り合う前記第1~第6ピースの側縁部どうしが連結手段により回動可能に連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、マンホールの斜壁管の更生方法において、強度の高い斜壁ライニング管を簡単な作業で構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る更生方法により更生されたマンホールの縦断面図である。
図2】上記更生済マンホールの斜壁管近傍部の拡大断面図である。
図3】マンホールの斜壁管をライニングする斜壁ライニング管を示す平面図である。
図4】ライニング組立体を折り畳んでマンホールの上端開口に挿入する工程を概略的に示す図である。
図5図4のV部の拡大断面図である。
図6図4のVI部の拡大断面図である。
図7図3のVII部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。最初に本発明の一実施形態に係る更生方法により更生されたマンホールについて、図1を参照しながら説明する。
【0015】
<既設マンホール1の構成>
更生対象となる既設のマンホール1は、下水道の老朽化したマンホールである。このマンホール1は、直壁管2と、直壁管2の底部を塞ぐ底板3(インバート)と、直壁管2の上端に設置された斜壁管4とを備えている。直壁管2は、一定の径を有する垂直に起立した直管からなる。直壁管2の下端部において周方向に離れた箇所には、上流側の下水管と下流側の下水管が挿入接続され、その管口5、6が直壁管2内に臨んでいる。本実施形態では、下流側の管口6は上流側の管口5より低い位置にある。インバート3には、上記管口6の下半分と連なる溝3aが形成されている。
【0016】
斜壁管4は円錐台形状を有しており、下端の内径が直壁管2の内径と等しく、上端開口7の内径が下端内径より小さい。一般的なマンホール1では、直壁管2の内径が900mmであり、上端開口7の径が600mmである。本実施形態では、上端開口7の中心が直壁管2の中心から図中左側に偏心しており、図1の左側の壁が最も小さく傾斜するかほぼ垂直に延び、右側の壁が最も大きく傾斜している。なお、上端開口7の中心は直壁管2の中心と一致してもよい。斜壁管4の上端開口7は、調整リング、受枠等を介して蓋(いずれも図示しない)により開閉可能に塞がれている。
【0017】
<ライニング構造>
老朽化した既設のマンホール1は、ライニング構造により更生される。すなわち、直壁管2の内周には、直管形状の直壁ライニング管10が設置されており、斜壁管4の内周には、この斜壁管4にほぼ対応した円錐台形状の斜壁ライニング管20が設置される。直壁管2と直壁ライニング管10との間には間隙が形成され、斜壁管4と斜壁ライニング管20との間にも間隙が形成されており、これら間隙にはモルタル等からなる裏込め材30が充填される。必要に応じて、これら間隙には上下に延びる補強鉄筋(図示しない)が配筋される。
【0018】
<直壁ライニング管>
直壁ライニング管10は、帯状部材11を螺旋巻きすることによって構成された管である。帯状部材11は、ポリ塩化ビニル(PVC)等の合成樹脂からなる帯本体と、この帯本体の外周側に装着されたスチール等の金属からなる補強帯材を有し、長手方向に沿って一定の断面形状を有している。帯本体の幅方向の両端には雌雄の嵌合部が設けられている。雌雄の嵌合部どうしを嵌合させることで、螺旋管状の直壁ライニング管10が形成される。
【0019】
既設マンホール1の底板2には、半割された底部リング12が固定されている。直壁ライニング管10の下端部がこの底部リング12の外周に嵌められた状態で底板2の上面に載っている。
【0020】
上流側の管口5に対応して、直壁ライニング管10の下端部には円形の連通口15が形成されている。さらに直壁ライニング管10の下端部には、下流側の管口6の上半分に対応して、半円形状の連通口16が形成されている。底部リング12はこの連通口16に対応した切欠を有している。
【0021】
<斜壁ライニング管>
図2図3に示すように、斜壁ライニング管20は、周方向に分割された6つのピース21~26を有している。ピース21~26の材料としてはポリ塩化ビニルが好ましいが、他の硬質樹脂(ポリエチレン,ABS樹脂等)や金属であってもよい。ピース21~26の板厚は、3~10mm、好ましくは約5mmであり、所定の強度、剛性を有している。ピース21~26は、ポリ塩化ビニル等の板を加熱しプレス成形するのが好ましいが、射出成形やブロー成形してもよい。
【0022】
本実施形態では、既設マンホール1の斜壁管4の円錐台形状に対応して、斜壁ライニング管20の下端の円に対して上端の円が偏心している。ここで、斜壁ライニング管20において反時計回りに順に配列されるピース21~26を、それぞれ第1~第6ピースと言うことにする。斜壁ライニング管20は、上端の円の中心と下端の円の中心を含む垂直平面により第1ピース21と第6ピース26を分割するとともに、第3ピース23と第4ピース24を分割する。第1ピース21と第6ピース26が後述する重ね代部を除いて対称形をなし、第2ピース22と第5ピース25が対称形をなし、第3ピース23と第4ピース24が対称形をなしている。本実施形態では、ピース21~26の上端周長がほぼ等しく、下端周長も略等しくなるように分割されている。全てのピース21~26の水平横断面形状は湾曲しており、下端の周長は上端の周長より長い。
【0023】
本実施形態では、マンホール1の斜壁管4と斜壁ライニング管20との間隙は下端が最も広く上端に向かって徐々に狭くなっている。第1ピース21と第6ピース26の境は垂直に延びており、第3ピース23と第4ピースの24の境は最も大きく傾斜している。
【0024】
周方向に隣り合うピース21~26の側縁部どうしが、その外面(斜壁ライニング管20の設置状態で外側を向く凸曲面)に取り付けられた蝶番28(連結手段)により連結されている。第1ピース21と第6ピース26(特定のピース)は後述するように別の手段で連結されている。蝶番28は斜壁ライニング管20に隠されていて更生済のマンホールの内側からは見えない。
【0025】
<マンホール更生方法>
マンホール1の更生は、次のようにして行われる。まず、マンホール1の内壁の昇降用ステップ(図示しない)を撤去し、内壁を高圧水等で洗浄する。次に、マンホール1の内周に、上下に延びる補強鉄筋(図示しない)を周方向に間隔をおいて設置する。
【0026】
<直壁ライニング管の設置工程>
続いて、半割の底部リング12を上端開口7から既設マンホール1内に搬入して底板3に設置する。
次に、帯状部材11を地上から既設マンホール1内に差し入れ、自走式の製管機(図示しない)により、帯状部材11を螺旋状に巻くことにより、直壁ライニング管10の下端部を構成する長さ50cm程度の巻き出しリングを形成する。この巻き出しリングの下端部を底部リング12の外周に嵌める。
さらに製管機により帯状部材11を螺旋状に巻いて、巻き出しリングに続く直壁ライニング管10を製管する。直壁ライニング管10が既設マンホール1の直壁管2の上端に達したら、製管機を撤去する。
【0027】
<斜壁ライニング管の設置工程>
次に、斜壁ライニング管20の設置工程について説明する。前述したように、隣り合う6つのピース21~26の側縁部同士を蝶番28により連結することにより、一連のライニング組立体20Aを用意する。第1、第6ピース21,26は蝶番28により連結されていない。すなわち、第1、第6ピース21,26は、一連のライニング組立体20Aの両端に位置する。
【0028】
蝶番28で連結された一連のライニング組立体20Aは、図4に示すように折り畳まれる。折り畳み状態の説明を簡略化するため、以下の説明では、隣り合うピース同士がその凸曲面を外側にして折り畳まれる態様を、山折り(第1の折り畳み態様)と言い、隣り合うピース同士がその凸曲面を内側にして折り畳まれる態様を、谷折り(第2の折り畳み態様)と言うことにする。
【0029】
ライニング組立体20Aの一端側の第1ピース21と第2ピース22とが山折りに折り畳まれ、第2ピース22と第3ピース23が山折りに折り畳まれる。第3ピース23は第1ピース21の外側に近接して配置される。他端側の第6ピース26と第5ピース25が山折りに折り畳まれ、第5ピース25と第4ピース24が山折りに折り畳まれる。第4ピース24は第6ピース26の外側に近接して配置される。第3ピース23と第4ピース24は谷折りに折り畳まれる。
【0030】
上述したようにピース21~26は、上端および下端の周長がほぼ等しく分割されているが、上記の折り畳みを可能にするため、第1ピース21の周長は第2ピース22より若干短く、第6ピース26の周長は第5ピース25より若干短くなっている。また、折り畳み状態において、第1ピース21と第2ピース22の折り曲げ角度は、第2ピース22と第3ピース23の折り曲げ角度より小さい。同様に、第6ピース26と第5ピース25の折り曲げ角度は、第5ピース25と第4ピース24の折り曲げ角度より小さい。
【0031】
蝶番28はピース21~26の凸曲面に設けられるので、山折れの連結部例えばピース21,22の連結部では蝶番28はピース21,22の外側に配置される(図5参照)。谷折れの連結部すなわちピース23,24の連結部では、蝶番28はピース23,24間に挟まれる(図6参照)。
【0032】
上記のようにして折り畳まれた一連のライニング組立体20Aを、既設マンホール1の上端開口7に挿入する(図4参照)。図4では、各ピース21~26を周長が長い下端部近傍の断面で示している。折り畳まれたライニング組立体20Aは、既設マンホール1の上端開口7から斜壁管4の内部へと挿入される。既設マンホール1の斜壁管4内で待機していた作業者は、このライニング組立体20Aを受け取ってこれを広げ、各ピース21~26を斜壁管4の内周面に沿って配置するとともに、その下端を直壁ライニング管10の上端に載せることにより、斜壁ライニング管20が構築される。
【0033】
図7に示すように、ライニング組立体20Aの両端に位置する第1ピース21と第6ピース26は、上記ピース21~26の設置状態で側縁部同士が重なる。例えば、第6ピース26の側縁部には径方向外側に板厚分だけオフセットされた重ね代26aが形成されており、この重ね代26aが第1ピース21の側縁部に接着剤を介して重ねられるとともに、ビス40で連結されている。なお、このビス40は後述する裏込め材30の硬化後に抜き取り、エポキシ樹脂で目地埋めされる。この重ね代26aと第1ピース21の側縁部に磁石を設けて容易に重なり状態を得られるようにしてもよい。
【0034】
第1ピース21と第6ピースの側縁部同士は重ならなくてもよい。この場合には、ハンドレイアップ工法(樹脂を含侵させたガラス繊維を人手により積層する工法)により両者を内面側から接続する。
【0035】
斜壁ライニング管20は、スペーサを介して既設マンホール1の斜壁管4内面にビス止めするのが好ましい。このビスは後述する裏込め材30の硬化後に抜き取り、エポキシ樹脂で目地埋めする。
【0036】
直壁ライニング管10の上端と斜壁ライニング管20の下端は、上記ハンドレイアップ工法により内面側から接続する。
斜壁ライニング管20において、ピース21~26の連結部に隙間が形成される場合には、テープを貼り付けて塞ぐか、またはハンドレイアップ工法で塞ぐ。
【0037】
上述したように、ライニング組立体10をピース21~26の連結部で折り畳むことにより、ピース21~26が殆ど弾性変形することなく既設マンホール1の上端開口7を通すことができる。そのため、ピース21~26の強度、剛性を確保でき、ひいては斜壁ライニング管20の強度、剛性を確保することができる。また、全てのピース21~26が連なったライニング組立体20Aを既設マンホール1の斜壁管4の内部で広げることにより、1人の作業者により簡単な作業で斜壁ライニング管20を構築することができる。
【0038】
本実施形態では、既設マンホール1が一般的なマンホールの寸法形状を有していること、すなわち上端開口7の径600mmで直壁管2の内径が900mmであり、1:1.5の比であることを前提としている。5つに分割したピースを用いる場合、1つずつ上端開口7を通過することは可能であるが、隣り合うピースを蝶番等で回動可能に連結してライニング組立体にすると、折り畳んだ状態で上端開口7を通過できない。上端開口7を通過できるようにするためには、ライニング組立体は、6つ以上のピースで構成する必要がある。特に本実施形態のように、6つのピースを有するライニング組立体を選択した場合、部品点数が最も少なく製造コストが低く、設置作業も最も簡単に行える。
【0039】
<裏込め材の充填工程>
上記のように直壁ライニング管10と斜壁ライニング管20の設置が完了した後、裏込め材30を充填する。この裏込め材30の充填に先立ち、直壁ライニング管10及び底部リング20における管口5,6に被さる部分を切除することで、管口5,6と連なる連通口15,16(図1参照)を形成する。次いで、環状の閉塞バンド(図示しない)を、上流側の管口5の内周面から連通口15の内周面に跨るように設置する。これによって、既設マンホール1の直壁管2と直壁ライニング管10との間の隙間における管口5及び連通口15の周りの部分が閉塞される。同様に、他の閉塞バンドを、下流側の管口6の内周面から連通口16の内周面に跨るように設置する。
さらに、直壁ライニング管10の上端部に注入口を形成し、既設マンホールの斜壁管4の上端と斜壁ライニング管20の上端間をシールするとともに、溢流パイプを取り付ける。
【0040】
上記注入口から裏込め材30を注入し、既設マンホール1の内周と直壁ライニング管10および斜壁ライニング管20の間隙に裏込め材30を充填する。裏込め材30が溢流パイプから溢流した時に裏込め材30の充填作業を終了する。
裏込め材30の硬化後に、閉塞バンドと、溢流パイプを撤去し、ステップ50を取り付けることにより、既設マンホール1の更生作業が完了する。
【0041】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。例えば、連結手段としてバネ付きの蝶番を用いることにより、折り畳み状態のライニング組立体を容易に広げられるようにしてもよい。蝶番にストッパを設けてピースの広がりを規制し、斜壁ライニング管の形状を容易に得られるようにしていてもよい。
ピースの連結手段として、蝶番の代わりに樹脂テープを、隣り合うピースの側縁部に接着または溶着してもよい。
斜壁ライニング管の各ピースの下端部を径方向内側にずらしてインロー部を形成し、このインロー部を直壁ライニング管の上端の内側に挿入してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、例えば下水道の老朽化したマンホールの更生技術に適用できる。
【符号の説明】
【0043】
1 既設マンホール
2 直壁管
4 斜壁管
10 直壁ライニング管
20 斜壁ライニング管
20A ライニング組立体
21~26 ピース
28 蝶番(連結手段)
30 裏込め材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7