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特開2024-13008イオンビーム照射装置及びガス排気方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013008
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】イオンビーム照射装置及びガス排気方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/08 20060101AFI20240124BHJP
   H01J 27/08 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
H01J37/08
H01J27/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114899
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】302054866
【氏名又は名称】日新イオン機器株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩波 悠太
(72)【発明者】
【氏名】平井 裕也
(72)【発明者】
【氏名】糸井 駿
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA25
5C101AA31
5C101BB03
5C101BB05
5C101DD03
5C101DD17
5C101DD20
5C101GG22
(57)【要約】
【課題】イオン源の運転停止後、イオン源のメンテナンスを早期に開始する。
【解決手段】イオンビーム照射装置IMは、内部でプラズマが生成されるプラズマ生成容器2と、プラズマ生成容器2に接続される気化器Sと、気化器Sにハロゲンガスを供給するハロゲンガス供給路13と、気化器Sに空気を供給する空気供給路16と、ハロゲンガスと空気との反応により生成された反応生成物を装置外部に排出する排気路11とを備える。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部でプラズマが生成されるプラズマ生成容器と、
前記プラズマ生成容器に接続される気化器と、
前記気化器にハロゲンガスを供給するハロゲンガス供給路と、
前記気化器に空気を供給する空気供給路と、
前記ハロゲンガスと前記空気との反応により生成された反応生成物を装置外部に排出する排気路とを備えたイオンビーム照射装置。
【請求項2】
前記プラズマ生成容器の温度を測定する測定器を備えた請求項1記載のイオンビーム照射装置。
【請求項3】
前記プラズマ生成容器に窒素を供給する窒素供給路を備えた請求項1記載のイオンビーム照射装置。
【請求項4】
前記プラズマ生成容器を冷却する冷却路を備えた請求項1記載のイオンビーム照射装置。
【請求項5】
内部でプラズマが生成されるプラズマ生成容器と、
前記プラズマ生成容器に接続される気化器と、
前記気化器内にハロゲンガスを供給するハロゲンガス供給路と、
前記気化器の内部に空気を供給する空気供給路と、
前記ハロゲンガスと前記空気との反応により生成された反応生成物を装置外部に排出する排気路とを備えたイオンビーム照射装置で、
前記イオンビーム照射装置のメンテナンス前に、前記空気供給路から前記空気を供給する空気供給工程と、前記排気路から前記反応生成物を排出する排気工程とを1回以上実施した後、最後に前記空気供給工程を実施して、装置内部を大気圧にするガス排気方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被照射物にイオンビームを照射するイオンビーム照射装置と当該装置で使用されるガス排気方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオンビーム照射装置で使用されるイオン源のメンテナンスでは、真空雰囲気にある装置内部を大気雰囲気に変えた後、イオン源をイオンビーム照射装置より取り外し、イオン源を構成する消耗品の交換が行われている。
【0003】
イオンビーム照射装置内部を真空雰囲気から大気雰囲気に変える際には、特許文献1に述べられているように、窒素に代表される希ガスで装置内部を満たし、装置内部の圧力を大気圧にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-326320
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
イオンビームの種類は様々で、イオンビームが金属イオンを含有する場合には、気化器を用いて金属材料を蒸気化し、金属材料の蒸気からプラズマを生成して、当該プラズマから金属イオンを含有するイオンビームの引き出しが行われている。
【0006】
昨今、気化器の研究が進む中で、本願の出願人から新たな気化器が提案されている。この気化器は、気化器の坩堝内にアルミニウムやタングステン等の金属材料を配置し、坩堝内に塩素やフッ素等のハロゲンガスを導入することで、金属材料とハロゲンガスとの化学反応により反応生成物を生成し、この反応生成物を加熱することで反応生成物の蒸気をプラズマ生成容器に供給するものである。
【0007】
上記気化器を具備するイオン源では、メンテナンス前に、イオン源内に残留する有毒なハロゲンガスの濃度を十分に低濃度化することが必要となる。従来技術と同じく、窒素ガスの供給によりイオン源の圧力を大気圧にする場合には、イオン源内部を窒素ガスで充満させることと、イオン源内部を排気することを交互に繰り返し、残留しているハロゲンガスの濃度が十分に低濃度となった後に、窒素ガスを改めて供給することでイオン源内部を大気圧にしている。この手法では、ハロゲンガスの濃度が低濃度になるまでに要する時間が長いことが要因となり、イオン源内部を大気圧にし、メンテナンスを開始するまでに長時間を要することが問題視されている。
【0008】
そこで、イオン源のメンテナンスを早期に開始することのできる、新たなイオンビーム照射装置とガス排気方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
イオンビーム照射装置は、
内部でプラズマが生成されるプラズマ生成容器と、
前記プラズマ生成容器に接続される気化器と、
前記気化器にハロゲンガスを供給するハロゲンガス供給路と、
前記気化器に空気を供給する空気供給路と、
前記ハロゲンガスと前記空気との反応により生成された反応生成物を装置外部に排出する排気路とを備えている。
【0010】
従来の窒素ガスの供給に代えて空気を供給しているため、供給された空気中の水成分と気化器内に残留するハロゲンガスとが反応し、ハロゲンガスの濃度を早期に低濃度にすることが可能となり、ひいては、イオン源のメンテナンスを早期に開始することが可能となる。
【0011】
部材の酸化を確実に防ぐためには、前記プラズマ生成容器の温度を測定する測定器を備えることが望ましい。
【0012】
より早くイオン源のメンテナンスを開始するには、前記プラズマ生成容器に窒素を供給する窒素供給路を備えることが望ましい。
【0013】
同様に、イオン源のメンテナンスを早く開始するには、前記プラズマ生成容器を冷却する冷却路を備えることが望ましい。
【0014】
具体的なガス排気方法としては、
内部でプラズマが生成されるプラズマ生成容器と、
前記プラズマ生成容器に接続される気化器と、
前記気化器内にハロゲンガスを供給するハロゲンガス供給路と、
前記気化器の内部に空気を供給する空気供給路と、
前記ハロゲンガスと前記空気との反応により生成された反応生成物を装置外部に排出する排気路とを備えたイオンビーム照射装置で、
前記イオンビーム照射装置のメンテナンス前に、前記空気供給路から前記空気を供給する空気供給工程と、前記排気路から前記反応生成物を排出する排気工程とを1回以上実施した後、最後に前記空気供給工程を実施して、装置内部を大気圧にする。
【発明の効果】
【0015】
従来の窒素ガスの供給に代えて空気を供給しているため、供給された空気中の水成分と気化器内に残留するハロゲンガスとが反応し、ハロゲンガスの濃度を早期に低濃度にすることが可能となり、ひいては、イオン源のメンテナンスを早期に開始することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】イオン源運転中の状態を示す模式的断面図
図2図1のイオンビーム照射装置のXY平面における模式的平面図
図3】空気供給についての説明図
図4】排気についての説明図
図5】窒素供給についての説明図
図6】ガス排気方法の一例を示すフローチャート
図7】ガス排気方法の別の例を示すフローチャート
図8】ガス排気方法の他の例を示すフローチャート
図9】ガス排気方法の他の例を示すフローチャート
図10】ガス排気方法の他の例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、イオンビーム照射装置IMで、イオン源ISの運転中の状態を示す模式的断面図である。イオンビーム照射装置IMは、例えば、イオンビームを被照射物に照射して、被照射物内に不純物を導入する装置やイオンビーム中に含まれるイオンにより被照射物の表面を改質もしくは切削する装置である。より具体的には、イオン注入装置やイオンビームエッチング装置等が該当する。
【0018】
イオン源ISは、主には、内部でプラズマPが生成されるプラズマ生成容器2と、一端がプラズマ生成容器2に接続される気化器Sと、気化器Sの他端側から気化器Sにハロゲンガスを供給するハロゲンガス供給路13と、プラズマ生成容器2のプラズマPからイオンビームIBを引き出すための引出電極Eを有している。
【0019】
プラズマ生成容器2の周囲には、内部でプラズマPを生成するためのカソードやカソードを加熱するためのフィラメント、プラズマ生成容器2の内部でカソードと対向配置されて、カソードから放出された電子をカソード方向へ反射する反射電極、プラズマ生成容器2の内部でカソードと反射電極との対向方向に沿った磁場を生成する電磁石等が配置されているが、これらの部材の図示は省略している。
【0020】
イオン源ISのプラズマ生成容器2と気化器Sを含むブロックは、イオン源ヘッド部として、イオン源フランジ1に図示されない構造物を介して、支持されている。また、イオン源フランジ1は、真空容器Cに対して、不図示のボルト等の締結具によって固定されている。イオン源フランジ1にはイオン源ヘッド部を冷却するための冷却路Rが設けられている。この冷却路Rは、冷媒や空気の循環路である。
【0021】
引出電極Eは、プラズマ生成容器2への電子の流入を防止するための抑制電極7と、接地電位を固定するための接地電極8からなる。プラズマ生成容器2と抑制電極7との間には、プラズマ生成容器2側を正とした図示されない直流電源が接続されており、部材間の電位差により、プラズマ生成容器2のイオン引出し口6を通じて、プラズマPから正の電荷を有するイオンビームIBの引出しが行われる。
【0022】
引出電極Eのイオンビーム引出し方向であるZ方向には、第1開閉弁21が設けられている。第1開閉弁21は、Z方向で第1開閉弁21の前後にある真空容器Cの空間を分離する開閉自在な弁体であり、イオン源ISの運転中は開いている(開状態にある)。
【0023】
プラズマ生成容器2には、気化器Sが接続されている。気化器Sは、ペレット、粉末、あるいは一塊の金属材料4が配置される坩堝3と、坩堝3の温度を昇温する加熱器5と、加熱器5からの熱の放出を遮蔽するシールド9と、坩堝3の温度を測定する熱電対TC(温度測定器)とを備えている。また、気化器Sは、坩堝3に塩素やフッ素等のハロゲンガスを供給するためのハロゲンガス供給路13を備えている。
【0024】
ハロゲンガス供給路13には、第2開閉弁14を介して、ハロゲンガスボトル15が取り付けられている。イオン源ISの運転にあたり、第2開閉弁14は開状態にあり、ハロゲンガスボトル15から坩堝3にハロゲンガスが供給されると、ハロゲンガスと金属材料4とが化学的に反応する。加熱器5で坩堝3が加熱され、坩堝3の温度が高温になると、ハロゲンガスと金属材料4との反応生成物が気化し、蒸気Vとして坩堝3からプラズマ生成容器2へ供給される。その後、蒸気Vは、プラズマ生成容器2内でプラズマPとなり、イオンビームIBとして引き出される。
【0025】
イオン源フランジ1には、空気供給路16が接続されている。空気供給路16には、第3開閉弁17を介して、空気供給源18から空気の供給が行われる。空気供給源18は、空気が封入されたボトルでもいいが、イオンビーム照射装置IMが配置される工場に備え付けられている空気供給ラインであってもよい。なお、第3開閉弁17は、イオン源ISの運転中、閉じられている(閉状態にある)。
【0026】
図2は、図1のイオンビーム照射装置IMのXY平面における模式的平面図である。真空容器Cに対して、イオン源フランジ1の端部が取り付けられている。イオン源フランジ1には空気供給路16が接続されていて、イオン源フランジ1を介してハロゲンガス供給路13が図1の坩堝3に取り付けられている。真空容器Cの内部が密閉状態になるように、部材間にはОリング等の不図示の真空シールが設けられている。
なお、気化器Sをイオン源フランジ1に取り付けるためのフランジを用意しておき、このフランジに坩堝3を支持させておくとともに、ハロゲンガス供給路13を接続するようにしてもよい。
【0027】
イオン源ISの運転中、真空容器C内は一定の真空度を保つために排気されている。この排気は、真空容器Cに接続された排気路11を介して行われる。排気路11には、第4開閉弁12が取り付けられており、イオン源ISの運転中は開状態にある。また、排気路11には、ハロゲンガス濃度を測定するための濃度測定器Dが設けられている。
なお、排気路11は、不図示の真空ポンプか、イオンビーム照射装置IMが配置される工場に備え付けられている排気ラインに接続されている。
【0028】
イオン源ISのメンテナンスを行う前、イオン源ISの運転は停止され、装置内に空気が供給される。図3は、空気供給についての説明図である。
真空容器Cへの空気供給にあたり、第1開閉弁21、第2開閉弁14及び第4開閉弁12はいずれも閉状態となり、第3開閉弁17のみ開状態となる。
供給された空気は、図中の矢印で示される流れで各部に供給され、最終的には気化器Sの内部(坩堝3)に供給される。
【0029】
イオン源ISの運転を停止した時、気化器Sやプラズマ生成容器2等に供給されているハロゲンガスが、装置内部に残留する。各部に空気を供給すると、残留ガスと空気中の水成分が反応し、反応生成物(気体)が生成される。
【0030】
空気供給から所定時間経過後、もしくは真空容器Cの圧力が所定圧力になった後、真空容器C内の気体が装置外部に排気される。この時の様子が、図4に描かれている。なお、装置外部とは、イオンビーム照射装置IMの外部であり、より具体的には、真空容器Cの外部を指す。
【0031】
図4での各開閉弁の状態は、第1開閉弁21、第2開閉弁14及び第3開閉弁17が閉状態であり、第4開閉弁12が開状態である。この状態で、排気路11を通じて真空容器C内の気体が排気される。真空容器C内に描かれる矢印は、排気される気体の流れである。この際、排気路11を通して排気される気体中のハロゲンガス濃度が、濃度測定器Dで測定される。
【0032】
従来技術のように、窒素ガスの供給によりイオン源ISの圧力を大気圧にする場合には、ハロゲンガス濃度を低濃度にするまでに長時間要していたが、窒素の代わりに空気を供給することで、供給された空気中の水成分とハロゲンガスの残留ガスとが反応し、早期に装置内のハロゲンガス濃度を低濃度にすることができる。
【0033】
最終的には、ハロゲンガス濃度が所定濃度以下となった段階で、真空容器Cの内部を大気圧とするべく、再び図3で説明した空気の供給を行う。これより、従来技術の構成に比べて、ハロゲンガスの濃度を早期に低濃度にすることが可能となり、ひいては、イオン源ISのメンテナンスを早期に開始することが可能となる。
【0034】
ハロゲンガスの残留ガス量が多く、1回の空気供給ではハロゲンガス濃度を十分に低減できない場合には、イオン源ISを取り外すために真空容器C内を大気圧にする工程の前に、図3で説明した空気供給を実施する工程(空気供給工程)と図4で説明した反応生成物を排気する工程(排気工程)とを、複数回繰り返してもよい。
【0035】
空気供給にあたっては、空気に含まれる酸素がイオン源ISを構成する部材を酸化することが懸念される。イオン源ISの運転中、プラズマ生成容器2は、イオン源ISを構成する他の部材に比べて比較的高温になる。プラズマ生成容器2の周囲に取り付けられているカソードや反射電極等の金属部材(タングステンやモリブデン等の高融点金属)は、高温下では酸素との反応が促進される。これらの部材が酸化されると、イオン源ISの運転に支障を来すことから、イオン源ISの運転停止後、所定時間経過した後に空気の供給を開始することが望ましい。ここで言う所定時間は、これまでの経験則で導き出した時間であり、プラズマ生成容器2の温度が所定温度以下になるまでに要する時間である。
【0036】
所定時間の経過を待つことに代えて、プラズマ生成容器2の温度を実測し、実測値に応じて、空気供給を開始してもよい。
プラズマ生成容器2の温度測定については、プラズマ生成容器2に熱電対を取り付けて直接的にプラズマ生成容器2の温度測定を行うようにしてもよい。また、温度測定は、熱電対に代えて、放射温度計やサーモグラフィーを用いてもよい。
さらには、プラズマ生成容器2に接続されている気化器Sの温度を熱電対TCで測定し、気化器Sとプラズマ生成容器2との温度の相関性を考慮して、間接的にプラズマ生成容器2の温度を導き出してもよい。
【0037】
プラズマ生成容器2の温度は、自然冷却により低下させる構成でも構わないが、時間短縮の点では、冷媒を用いて冷却することが望ましい。例えば、図1乃至図4に描かれる実施形態のごとく、イオン源フランジ1に冷却路Rを形成しておき、ここに冷媒や空気を循環されておけば、イオン源フランジ1に支持されているプラズマ生成容器2を冷却することが可能となる。
【0038】
また、プラズマ生成容器2の冷却については、図5に示す構成を採用してもよい。図5の実施形態では、真空容器Cの内部に窒素ガスが供給される点が他の実施形態と相違している。
窒素供給路23の一端は、イオン源フランジ1に接続されていて、窒素供給路23の他端は、第5開閉弁22を介して窒素供給ボトル24に接続されている。この実施形態では、真空容器C内への空気供給に先だって、窒素供給路23から窒素を導入することで、プラズマ生成容器2の冷却を実施している。
窒素の供給によりプラズマ生成容器2を冷却する工程(窒素供給工程)を空気供給工程の開始前に実施することで、空気供給までの待機時間をさらに短縮することが可能となる。
【0039】
窒素供給後、空気供給が開始される前には、排気路11を通じて、装置内部の窒素を装置外部に排気しておく。この窒素の供給と排気は、プラズマ生成容器2の温度を下げるうえで、複数回実施されてもよい。
【0040】
図5の実施形態では、窒素供給路23と空気供給路16とが個別にイオン源フランジ1に接続されていたが、イオン源フランジ1に接続される各供給路を部分的に共通化してもよい。その場合、各供給路は、共通の供給路から途中で分岐する。
【0041】
イオン源ISのメンテナンス作業にあたり、気化器Sの温度が高く、気化器Sを取り外すまでに時間を要する場合には、空気供給路16からの空気や窒素供給路23からの窒素を気化器Sに、吹き付けるようにしてもよい。
また、図示される空気供給路16や窒素供給路23とは別に、気化器Sを冷却するための気体供給路を設けてもよい。
【0042】
図6乃至図10を用いて、上述したハロゲンガスの残留ガスを排気する方法について詳述する。
【0043】
図6は、ガス排気方法の一実施形態についてのフローチャートである。処理S1で、イオン源ISの運転を停止する。この時、引出電極Eへの電圧印加、プラズマ生成容器2への電圧印加、気化器Sの加熱器5への通電、気化器Sへのハロゲンガス供給が、停止される。一方、イオン源フランジ1の冷却路Rでの冷媒や空気の循環は継続して行われている。
また、イオン源ISの運転停止に伴い、第1開閉弁21、第2開閉弁14及び第4開閉弁12は、閉状態となる。
【0044】
その後、処理S2で、イオン源ISの運転停止からの経過時間をカウントし、所定時間(例えば、数十分)が経過するまで次の処理を待機する。時間の経過により、プラズマ生成容器2の温度が所定温度以下に低下すると、処理S3で、第3開閉弁17を開状態にし、空気の供給を実施する。
【0045】
処理S3で空気の供給が行われ、所定時間が経過した後、もしくは装置内部が所定圧力となった後、処理S4で装置内部の排気が行われる。
この排気により、空気中の水分と装置内に残留しているハロゲンガスとの反応生成物である気体が装置外部に排出される。
【0046】
装置の容積によっては、1回の排気で装置内に残留するハロゲンガスの濃度を所定濃度以下にすることが難しい場合には、処理S3での空気供給と処理S4での排気とが繰り返し実施されてもよい。
処理S5では、予め繰り返しの回数を設定しておき、処理S3での空気供給と処理S4での排気が所定回数行われたかどうかが判断される。
【0047】
処理S5で、処理S3での空気供給と処理S4での排気が所定回数行われたと判断された後、最後に、処理S6で装置内部を大気圧にするための空気供給が実施される。
このようなガス排気方法を用いることで、残留するハロゲンガス濃度を早期に下げることができ、ひいてはイオン源ISのメンテナンス作業を早期に開始することが可能となる。
【0048】
図6の実施形態では、処理S5で処理S3での空気供給と処理S4での排気の実施回数を判断していたが、排気路11を通じて排気されるハロゲンガス濃度を実測し、これが基準濃度であるかどうかを判別して、処理S3での空気供給と処理S4での排気の実施回数を決定してもよい。図7の実施形態では、図6の処理S5に代えて、ハロゲンガス濃度と基準濃度との比較処理である処理S7を追加している。
【0049】
図6の実施形態は、イオン源停止後、処理S2でプラズマ生成容器2の温度が低下するまで所定時間待機する構成であったが、図8の実施形態のように、プラズマ生成容器2の温度を実測し、これを基準値と比較する処理S8に置き換えてもよい。
【0050】
また、プラズマ生成容器2の温度を効果的に低下させるために、処理S1でのイオン源ISの運転停止後、希ガスを供給する構成を採用してもよい。具体的には、図9のように、処理S1でイオン源ISの運転停止後、空気供給が行われる処理S3の前に、窒素ガスやアルゴンガス等の希ガスを供給する処理S9、希ガス供給後に装置内部の希ガスを排気する処理S10、およびこれらを予め設定された所定回数実施したかを判断する処理S11をそれぞれ実施する。
【0051】
さらに、図10の実施形態のように、希ガスの供給と排気を所定回数実施する処理S11に代えて、処理S9での希ガスの供給と処理S10での装置内部の排気の後、プラズマ生成容器2の温度を直接あるいは間接的に測定し、測定温度と基準温度とを比較する処理S12を実施してもよい。
【0052】
また、図8乃至図10の実施形態での空気供給以降の処理は、図6の実施形態と同じ処理が実施されているが、この部分の処理を図7の実施形態と同じ処理を実施するようにしてもよい。
【0053】
図1乃至5の実施形態では、排気路11として、イオン源ISの運転中に装置内部を排気するものとして説明したが、空気とハロゲンガスとの反応生成物を排気するための排気路11は必ずしもそうした機能を有するものである必要はなく、別の排気路を設けておき、この排気路を用いて、イオン源ISの運転中に装置内部を排気するようにしてもよい。
【0054】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
2 プラズマ生成容器
3 坩堝
11 排気路
13 ハロゲンガス供給路
16 空気供給路
R 冷却路
S 気化器
C 真空容器
TC 測定器
IB イオンビーム
IS イオン源
IM イオンビーム照射装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10