(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130086
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】三次元造形方法、及び三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20240920BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240920BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240920BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240920BHJP
B33Y 40/20 20200101ALI20240920BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240920BHJP
B29C 64/379 20170101ALI20240920BHJP
B29C 64/214 20170101ALI20240920BHJP
B29C 64/218 20170101ALI20240920BHJP
B29C 64/165 20170101ALI20240920BHJP
B29C 64/295 20170101ALI20240920BHJP
【FI】
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
B33Y40/20
B33Y70/00
B29C64/379
B29C64/214
B29C64/218
B29C64/165
B29C64/295
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039598
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】渡部 学
(72)【発明者】
【氏名】▲角▼谷 彰彦
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA36
4F213AA49
4F213AB18
4F213AB25
4F213AC04
4F213AR06
4F213AR08
4F213AR15
4F213WA25
4F213WA54
4F213WA57
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL15
4F213WL67
4F213WL85
4F213WW32
(57)【要約】
【課題】植物由来の繊維材料を用いた三次元造形物を造形する三次元造形装置において、液体を吐出する部材の数を増大させることなく、所望のテクスチャーを三次元造形物の表面に形成することができる三次元造形方法を提供すること。
【解決手段】植物由来の繊維材料を含む粉末を供給し、粉末層を形成する第1工程と、粉末層の少なくとも一部に、バインダーと赤外線吸収体との両方を含む第1液体と、バインダーと赤外線吸収体とのうち少なくともバインダーを含む第2液体との少なくとも一方を吐出する第2工程と、第2工程により液体が吐出された後の粉末層を、予め決められた加熱温度で加熱する第3工程とを有する造形工程を有し、加熱温度は、バインダーの沸点よりも低い温度であり、且つ、バインダーの融点よりも高い温度であり、第2液体における前記赤外線吸収体の含有率は、第1液体における赤外線吸収体の含有率よりも低い、三次元造形方法。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元造形物を造形する三次元造形方法であって、
植物由来の繊維材料を含む粉末を供給し、前記三次元造形物が造形される造形面の上方に粉末層を形成する第1工程と、前記第1工程により形成された前記粉末層の少なくとも一部に、バインダーと赤外線吸収体との両方を含む第1液体と、前記バインダーと前記赤外線吸収体とのうち少なくとも前記バインダーを含む第2液体との少なくとも一方を吐出する第2工程と、前記第2工程により前記第1液体と前記第2液体との少なくとも一方が吐出された後の前記粉末層を、予め決められた加熱温度で加熱する第3工程とを有し、前記第1工程、前記第2工程、前記第3工程の3つの工程のうち、少なくとも前記第1工程、前記第2工程を繰り返し行い、前記三次元造形物の造形を行う造形工程を有し、
前記加熱温度は、前記バインダーの沸点よりも低い温度であり、且つ、前記バインダーの融点よりも高い温度であり、
前記第2液体における前記赤外線吸収体の含有率は、前記第1液体における前記赤外線吸収体の含有率よりも低い、
三次元造形方法。
【請求項2】
前記造形工程は、前記第1工程、前記第2工程、前記第3工程の順に前記第1工程、前記第2工程、前記第3工程を繰り返し行い、前記三次元造形物の造形を行う工程である、
請求項1に記載の三次元造形方法。
【請求項3】
前記造形工程は、前記第1工程、前記第2工程の順に前記第1工程、前記第2工程を繰り返し行った後、前記第3工程を行うことによって前記三次元造形物の造形を行う工程である、
請求項1に記載の三次元造形方法。
【請求項4】
造形された後の前記三次元造形物を樹脂に含浸させる含浸工程を有する、
請求項1に記載の三次元造形方法。
【請求項5】
前記赤外線吸収体は、炭素を含む、
請求項1に記載の三次元造形方法。
【請求項6】
前記加熱温度は、前記繊維材料の熱分解が起こる温度よりも低い温度である、
請求項5に記載の三次元造形方法。
【請求項7】
前記粉末層は、前記三次元造形物の少なくとも一部となる造形領域と、前記三次元造形物の一部とならない非造形領域とを含み、
前記造形領域は、前記第1液体が吐出される第1領域と、前記第2液体が吐出される第2領域とを含む、
請求項1に記載の三次元造形方法。
【請求項8】
前記造形領域は、アウトラインを構成するアウトライン領域と、インフィルを構成するインフィル領域とを含み、
前記アウトライン領域は、前記第1領域及び前記第2領域を含み、
前記インフィル領域は、前記第1領域及び前記第2領域を含まない、
請求項7に記載の三次元造形方法。
【請求項9】
前記第1工程は、前記造形面に対して平行に層形成部を移動させることによって前記造形面の上方に前記粉末層を形成する工程であり、
前記第2工程は、前記第1液体と前記第2液体とのそれぞれを吐出可能であり、且つ、前記粉末層の上方を前記造形面に対して平行に移動する液体吐出部によって前記粉末層に前記第1液体と前記第2液体との少なくとも一方を吐出する工程であり、
前記第1工程における前記層形成部の移動速度は、前記第2工程における前記液体吐出部の移動速度よりも遅い、
請求項1に記載の三次元造形方法。
【請求項10】
前記層形成部は、ローラー又はスキージである、
請求項9に記載の三次元造形方法。
【請求項11】
前記液体吐出部は、プリンターヘッドである、
請求項9に記載の三次元造形方法。
【請求項12】
三次元造形物を造形する三次元造形装置であって、
前記三次元造形物を造形する造形面を有する造形テーブルと、
前記造形面の上方において、植物由来の繊維材料を含む粉末の粉末層を形成する層形成部と、
前記層形成部により形成された前記粉末層の少なくとも一部に、バインダーと赤外線吸収体との両方を含む第1液体と、前記バインダーと前記赤外線吸収体とのうち少なくとも前記バインダーを含む第2液体との少なくとも一方を吐出する吐出部と、
前記吐出部により前記第1液体と前記第2液体との少なくとも一方が吐出された後の前記粉末層を加熱する加熱部と、
前記吐出部と、前記層形成部と、前記加熱部とを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記加熱部により前記粉末層を加熱する場合、予め決められた加熱温度で前記粉末層を加熱し、
前記加熱温度は、前記バインダーの沸点よりも低い温度であり、且つ、前記バインダーの融点よりも高い温度であり、
前記第2液体における前記赤外線吸収体の含有率は、前記第1液体における前記赤外線吸収体の含有率よりも低い、
三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、三次元造形方法、及び三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属粉等を含む粉末の粉末層を積層することにより、三次元造形物の造形を行う三次元造形装置についての研究、開発が行われている。
【0003】
ここで、このような三次元造形装置は、粉末層を形成し、粉末層を形成する毎に、バインダーを含む液体を粉末層の少なくとも一部へ吐出し、当該液体が吐出された後の粉末層を加熱する。これにより、三次元造形装置は、粉末層が有する領域のうち液体が吐出された領域内の粉末を溶融させ、三次元造形物を造形する。
【0004】
これに関し、粉末層を積層することにより、三次元造形物を造形する三次元造形方法であって、基部と熱可塑性樹脂で構成された表面層とを有する粒子を複数個含む粉末を用いて粉末層を形成する粉末層形成工程と、粉末層に加熱処理を施し、粉末に含まれる粒子を仮結合させる仮結合工程と、加熱処理が施された粉末層に、結合部を形成するための結合剤を含む結着液を付与する結着液付与工程とを有する三次元造形方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、造形した三次元造形物の表面に、予め決められたテクスチャーを形成したいという需要が存在する。しかしながら、特許文献1に記載されたような三次元造形方法を用いて三次元造形物の表面にテクスチャーを形成しようとすると、互いに色が異なる複数の結着液を用意し、結着液を付与する部分毎に、これら複数の結着液を使い分ける必要がある。また、用意する複数の結着液の数は、三次元造形物の表面に形成したいテクスチャーに含まれる色の数が多いほど、増大する。これは、三次元造形物の造形を行う三次元造形装置において結着剤を吐出するプリンターヘッドの数の増大に繋がり、望ましいことではない。なお、三次元造形物の表面にテクスチャーを形成する他の方法として、三次元造形物の表面に色を塗布する方法も知られている。しかしながら、この方法は、三次元造形物の形状が複雑な形状であるほど、三次元造形物の表面に精度よくテクスチャーを形成することが困難になり、望ましい方法ではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本開示の一態様は、三次元造形物を造形する三次元造形方法であって、植物由来の繊維材料を含む粉末を供給し、前記三次元造形物が造形される造形面の上方に粉末層を形成する第1工程と、前記第1工程により形成された前記粉末層の少なくとも一部に、バインダーと赤外線吸収体との両方を含む第1液体と、前記バインダーと前記赤外線吸収体とのうち少なくとも前記バインダーを含む第2液体との少なくとも一方を吐出する第2工程と、前記第2工程により前記第1液体と前記第2液体との少なくとも一方が吐出された後の前記粉末層を、予め決められた加熱温度で加熱する第3工程とを有し、前記第1工程、前記第2工程、前記第3工程の3つの工程のうち、少なくとも前記第1工程、前記第2工程を繰り返し行い、前記三次元造形物の造形を行う造形工程を有し、前記加熱温度は、前記バインダーの沸点よりも低い温度であり、且つ、前記バインダーの融点よりも高い温度であり、前記第2液体における前記赤外線吸収体の含有率は、前記第1液体における前記赤外線吸収体の含有率よりも低い、三次元造形方法である。
【0008】
また、上記課題を解決するために本開示の一態様は、三次元造形物を造形する三次元造形装置であって、前記三次元造形物を造形する造形面を有する造形テーブルと、前記造形面の上方において、植物由来の繊維材料を含む粉末の粉末層を形成する層形成部と、前記層形成部により形成された前記粉末層の少なくとも一部に、バインダーと赤外線吸収体との両方を含む第1液体と、前記バインダーと前記赤外線吸収体とのうち少なくとも前記バインダーを含む第2液体との少なくとも一方を吐出する吐出部と、前記吐出部により前記第1液体と前記第2液体との少なくとも一方が吐出された後の前記粉末層を加熱する加熱部と、前記吐出部と、前記層形成部と、前記加熱部とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記加熱部により前記粉末層を加熱する場合、予め決められた加熱温度で前記粉末層を加熱し、前記加熱温度は、前記バインダーの沸点よりも低い温度であり、且つ、前記バインダーの融点よりも高い温度であり、前記第2液体における前記赤外線吸収体の含有率は、前記第1液体における前記赤外線吸収体の含有率よりも低い、三次元造形装置である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】三次元造形装置1の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図1に示した4個の粉末層のうちの粉末層L2を造形部20が形成する様子の一例を示す図である。
【
図3】ユーザーが三次元造形装置1を用いて三次元造形物を造形する三次元造形方法の流れの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
<三次元造形方法の概要>
まず、実施形態に係る三次元造形方法の概要について説明する。
【0012】
実施形態に係る三次元造形方法は、三次元造形物を造形する方法である。より具体的には、当該三次元造形方法は、造形工程を有する。造形工程は、第1工程と、第2工程と、第3工程を有し、第1工程、第2工程、第3工程の3つの工程のうち、少なくとも第1工程、第2工程を繰り返し行い、三次元造形物の造形を行う工程である。ここで、第1工程は、植物由来の繊維材料を含む粉末を供給し、三次元造形物が造形される造形面の上方に粉末層を形成する。第2工程は、第1工程により形成された粉末層の少なくとも一部に、第1液体と、第2液体との少なくとも一方を吐出する。第1液体は、バインダーと赤外線吸収体との両方を含む。第2液体は、バインダーと赤外線吸収体とのうち少なくともバインダーを含む。第3工程は、第2工程により第1液体と第2液体との少なくとも一方が吐出された後の粉末層を、予め決められた加熱温度で加熱する。加熱温度は、バインダーの沸点よりも低い温度であり、且つ、バインダーの融点よりも高い温度である。そして、第2液体における赤外線吸収体の含有率は、第1液体における赤外線吸収体の含有率よりも低い。これにより、当該三次元造形方法は、例えば、粉末層において液体が吐出される領域毎に、第1液体を吐出する量と第2液体を吐出する量との比率を変えることにより、三次元造形物の表面に複数色によって構成されるテクスチャーを形成することができる。その結果、当該三次元造形方法は、植物由来の繊維材料を用いた三次元造形物を造形する三次元造形装置において、液体を吐出する部材の数を増大させることなく、所望のテクスチャーを三次元造形物の表面に形成することができる。
【0013】
以下では、実施形態に係る三次元造形方法を実行可能な三次元造形装置の構成と、当該三次元造形装置が行う処理とについて説明することにより、当該三次元造形方法について詳しく説明する。
【0014】
<三次元造形装置の構成>
以下、実施形態に係る三次元造形方法を実行可能な三次元造形装置の構成について、三次元造形装置1を例に挙げて説明する。
【0015】
図1は、三次元造形装置1の構成の一例を示す図である。
【0016】
ここで、三次元座標系TCは、三次元座標系TCが描かれた図における方向を示す三次元直交座標系である。以下では、説明の便宜上、三次元座標系TCにおけるX軸を、単にX軸と称して説明する。また、以下では、説明の便宜上、三次元座標系TCにおけるY軸を、単にY軸と称して説明する。また、以下では、説明の便宜上、三次元座標系TCにおけるZ軸を、単にZ軸と称して説明する。また、以下では、一例として、Z軸の負方向が重力方向と一致している場合について説明する。このため、以下では、説明の便宜上、Z軸の正方向を上方又は単に上と称し、Z軸の負方向を下方又は単に下と称して説明する。
【0017】
三次元造形装置1は、植物由来の繊維材料を含む粉末の粉末層をN個積層することにより、三次元造形物の造形を行う装置である。Nは、1以上の整数であれば、如何なる整数であってもよい。以下では、説明の便宜上、三次元造形装置1により積層されるN個の粉末層のうち下からn番目の粉末層のことを、第n粉末層と称して説明する。なお、nは、1以上N以下の範囲内に含まれるいずれかの整数である。すなわち、造形部20は、第n-1粉末層の上に、第n粉末層を形成する。ただし、この場合、第0粉末層は、三次元造形装置1により三次元造形物が造形される造形面を示す。また、植物由来の繊維材料は、例えば、木質繊維素材(Lignocellulosic material)である。木質繊維素材は、例えば、ケナフ、亜麻、ラミー、大麻、ジュート等の麻類植物の靭皮から採取される繊維の素材である。また、木質繊維素材は、例えば、マニラ麻、サイザル麻等の麻類植物の茎又は葉の筋から採取される繊維の素材である。また、木質繊維素材は、例えば、針葉樹、広葉樹等を原料とする木材繊維の素材である。なお、木質繊維素材は、これらに限られるわけではない。また、植物由来の繊維材料は、木質繊維素材に代えて、他の植物由来の繊維材料であってもよい。以下では、一例として、植物由来の繊維材料が木質繊維素材である場合について説明する。そして、以下では、説明の便宜上、木質繊維素材を含む粉末を、粉末Pと称して説明する。粉末Pは、木質繊維素材に加えて、他の素材を含む構成であってもよい。以下では、一例として、粉末Pが、木質繊維素材を含み、他の素材を含まない場合について説明する。
【0018】
三次元造形装置1は、例えば、テーブルユニット10と、造形部20と、制御部30を備える。また、三次元造形装置1は、外部装置40と通信可能に接続される。なお、三次元造形装置1は、外部装置40を備える構成であってもよく、外部装置40と一体に構成されてもよい。また、三次元造形装置1は、テーブルユニット10と、造形部20と、制御部30とに加えて、他の部材、他の装置等を備える構成であってもよい。また、三次元造形装置1は、制御部30を備えない構成であってもよい。この場合、三次元造形装置1は、制御部30に相当する装置と通信可能に接続される。
【0019】
テーブルユニット10は、造形テーブル11を含んで構成される。テーブルユニット10は、例えば、制御部30により制御される。なお、テーブルユニット10は、制御部30により制御される構成に代えて、外部装置40等の他の情報処理装置により制御される構成であってもよい。
【0020】
造形テーブル11は、造形面11Aを有する部材である。造形面11Aは、三次元造形装置1により三次元造形物が造形される造形面の一例である。すなわち、造形面11Aは、造形テーブル11が有する面のうち、前述のN個の粉末層が積層される面である。
【0021】
テーブルユニット10は、制御部30からの制御に応じて、テーブルユニット10の上面10Aに対して相対的に、造形テーブル11を上下に移動させる。このため、造形面11Aは、造形テーブル11の上下動に応じて、上面10Aに対して、相対的に上下に移動する。すなわち、造形面11Aは、造形テーブル11の上方への移動に応じて、上面10Aに対して相対的に上方に移動する。また、造形面11Aは、造形テーブル11の下方への移動に応じて、上面10Aに対して相対的に下方に移動する。なお、テーブルユニット10は、造形テーブル11を上下に移動させる各種の部材として、アクチュエーター等を備えている。しかしながら、
図1では、図が煩雑になるのを防ぐため、当該各種の部材について省略している。
【0022】
より具体的には、テーブルユニット10は、三次元造形装置1が第1粉末層を造形面11Aの上に形成する場合、制御部30からの要求に応じて、テーブルユニット10の上面10Aよりも第1粉末層の厚さぶん下方に造形面11Aが位置するように、造形テーブル11を移動させる。これにより、三次元造形装置1は、後述する造形部20によって造形面11Aの上に第1粉末層を形成する。また、テーブルユニット10は、三次元造形装置1が第n-1粉末層の上に第n粉末層を形成する場合、制御部30からの要求に応じて、上面10Aよりも第n粉末層の厚さぶん下方に第n-1粉末層の上面が位置するように、造形テーブル11を移動させる。なお、第n粉末層の厚さは、第n粉末層の重力方向における厚さのことである。
【0023】
図1に示した造形面11Aの上方には、粉末層L1~粉末層L4の4個の粉末層が積層されている。粉末層L1は、第1粉末層の一例である。粉末層L2は、第2粉末層の一例である。粉末層L3は、第3粉末層の一例である。粉末層L4は、第4粉末層の一例である。
【0024】
造形部20は、造形テーブル11の造形面11Aの上にN個の粉末層を積層し、三次元造形物を造形する装置である。なお、
図1に示した三次元造形物Oは、前述の粉末層L1~粉末層L4が造形部20により造形面11Aの上に積層されたことによって造形された三次元造形物の一例である。
【0025】
造形部20は、例えば、ガイドバーAXと、本体部BXと、第1供給部21Aと、第1層形成部22Aと、第1揺動部23Aと、第1吐出部24Aと、第2供給部21Bと、第2層形成部22Bと、第2揺動部23Bと、第2吐出部24Bと、加熱部25を備える。なお、造形部20は、ガイドバーAXと、本体部BXと、第1供給部21Aと、第1層形成部22Aと、第1揺動部23Aと、第1吐出部24Aと、第2供給部21Bと、第2層形成部22Bと、第2揺動部23Bと、第2吐出部24Bと、加熱部25とに加えて、他の部材、他の装置等を備える構成であってもよい。また、造形部20は、第1供給部21Aと、第2供給部21Bとのいずれか一方を備えない構成であってもよい。また、造形部20は、第1層形成部22Aと、第2層形成部22Bとのいずれか一方を備えない構成であってもよい。ここで、造形部20は、第1層形成部22Aを備えない場合、第1揺動部23Aも備えない。また、造形部20は、第2層形成部22Bを備えない場合、第2揺動部23Bも備えない。また、造形部20は、第1吐出部24Aと、第2吐出部24Bとのいずれか一方を備えない構成であってもよい。
【0026】
ガイドバーAXは、予め決められた第1方向と平行になるように三次元造形装置1に設けられた軸体である。以下では、一例として、
図1に示したように、第1方向がX軸の正方向と一致している場合について説明する。
【0027】
本体部BXは、第1供給部21Aと、第1層形成部22Aと、第1揺動部23Aと、第1吐出部24Aと、第2供給部21Bと、第2層形成部22Bと、第2揺動部23Bと、第2吐出部24Bと、加熱部25とを収容する筐体を含んで構成される。この筐体は、下方に開口している。本体部BXは、制御部30からの要求に応じて、ガイドバーAXに沿って第1方向に向かって前後に往復移動する。本体部BXは、本体部BXをガイドバーAXに沿って移動させる各種の部材として、アクチュエーター等を備えている。しかしながら、
図1では、図が煩雑になるのを防ぐため、当該各種の部材について省略している。
【0028】
第1供給部21Aは、下方に向かって粉末Pを供給する装置である。第1供給部21Aは、本体部BXの第1方向の先頭側端部に設けられている。第1供給部21Aは、図示しないノズルを有し、粉末Pを貯蔵する図示しない貯蔵部から供給される粉末Pをノズルの先端から下方に向かって排出する。これにより、第1供給部21Aは、造形テーブル11の造形面11Aの上方に粉末Pを供給することができる。第1供給部21Aは、例えば、ガイドバーAXに沿って本体部BXが第1方向に向かって移動する場合において、粉末Pを下方に向かって排出する。
【0029】
第1層形成部22Aは、第1供給部21Aによって供給された粉末Pを均して粉末層を形成する部材である。第1層形成部22Aは、本体部BXにおいて、第1供給部21Aの第2方向の隣に設けられている。
図1に示した例では、第1層形成部22Aは、回転軸AX11周りに回転するローラーであり、造形テーブル11の造形面11Aの上方に供給された粉末Pを上方から押し均すことにより、造形面11Aの上方において粉末層を形成する。なお、第1層形成部22Aは、これに代えて、スキージ等のように、造形テーブル11の造形面11Aの上方に供給された粉末Pを上方から押し均すことが可能な他の部材であってもよい。第1層形成部22Aは、予め決められた揺動軸AX12周りに揺動可能に第1揺動部23Aによって支持される。より具体的には、第1層形成部22Aの回転軸AX11は、揺動軸AX12周りに揺動可能に第1揺動部23Aによって支持される。第1層形成部22Aは、ガイドバーAXに沿って本体部BXが第1方向に向かって移動する場合、第1層形成部22Aの下端22ATが、テーブルユニット10の上面10Aを含む仮想的な面と接触する位置に位置する。一方、第1層形成部22Aは、ガイドバーAXに沿って本体部BXが第1方向と反対の第2方向に向かって移動する場合、第1層形成部22Aの下端22ATが当該面から上方に離間する位置に位置する。第1層形成部22Aのこのような動きは、第1揺動部23Aによって実現される。
【0030】
第1揺動部23Aは、第1層形成部22Aの回転軸AX11を支持する棒状の部材である。第1揺動部23Aは、図示しないアクチュエーター等によって、揺動軸AX12周りに揺動することができる。これにより、第1揺動部23Aは、第1層形成部22Aを、テーブルユニット10の上面10Aを含む仮想的な面から離間させることができる。
【0031】
第1吐出部24Aは、バインダーと赤外線吸収体との両方を含む第1液体X1を下方に向かって吐出する液体吐出装置であり、例えば、単位時間あたりの第1液体X1の吐出量を調整可能なプリンターヘッドである。赤外線吸収体は、赤外線を吸収することによって発熱する物体であれば、如何なる物体であってもよく、例えば、炭素である。なお、赤外線吸収体は、炭素に加えて、他の物質を含む構成であってもよい。赤外線吸収体が炭素の場合、赤外線吸収体の色は、黒である。赤外線吸収体が炭素以外の物体である場合、赤外線吸収体の色は、黒以外の色であってもよい。第1吐出部24Aは、本体部BXにおいて、第1層形成部22Aの第2方向の隣に設けられている。なお、第1吐出部24Aは、単位時間あたりの第1液体X1の吐出量を調整不可能なプリンターヘッドであってもよい。第1吐出部24Aは、第1方向及び重力方向と直交する方向に向かって並ぶ図示しない複数のノズルを有する。そして、第1吐出部24Aは、制御部30からの要求に応じて、第1液体X1を貯蔵する図示しない貯蔵部から供給される第1液体X1を、当該複数のノズルのうちの少なくとも一部から下方に向かって吐出する。これにより、第1吐出部24Aは、個々の粉末層毎に予め決められた造形領域の少なくとも一部に第1液体X1を吐出することができる。
【0032】
ここで、粉末層は、三次元造形物の少なくとも一部となる造形領域と、三次元造形物の一部とならない非造形領域とを含んでいる。そして、ある粉末層に予め決められた造形領域は、アウトラインを構成するアウトライン領域と、インフィルを構成するインフィル領域とを含んでいる。アウトラインは、粉末層に含まれる粉末のうち、三次元造形物の輪郭を構成する粉末のことである。すなわち、アウトライン領域は、粉末層に含まれる粉末のうち、三次元造形物の輪郭を構成する粉末が含まれる領域のことである。インフィルは、粉末層に含まれる粉末のうち、三次元造形物の内部を構成する粉末のことである。すなわち、インフィル領域は、粉末層に含まれる粉末のうち、三次元造形物の内部を構成する粉末が含まれる領域のことである。
【0033】
また、第1液体X1に含まれるバインダーは、溶融することによって粉末Pに含まれる個々の粒子同士を結着することが可能なバインダーであれば、如何なるバインダーであってもよい。第1液体X1に含まれるバインダーは、例えば、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-アクリル酸エステル)、ASA(アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル)、PE(ポリエチレン)、パラフィンワックス等であるが、これらに限られるわけではない。以下では、一例として、バインダーが、パラフィンワックスである場合について説明する。なお、第1液体X1に含まれるバインダーは、透明であることが望ましいが、半透明であってもよく、不透明であってもよい。
【0034】
また、上記のような第1液体X1においてバインダーの溶媒又は分散媒となる液体は、バインダーが溶ける又は分散することが可能な液体であり、且つ、バインダーの融点よりも低い温度で気化する液体であれば、如何なる液体であってもよい。より望ましくは、第1液体X1においてバインダーの溶媒又は分散媒となる液体は、三次元造形装置1が設置される部屋の室温程度で気化する液体である。なお、当該室温は、例えば、20℃~30℃程度の温度であるが、これに限られるわけではない。
【0035】
第1吐出部24Aは、例えば、制御部30からの要求に応じて、ガイドバーAXに沿って本体部BXが第1方向、第2方向のそれぞれに向かって移動する場合において、粉末層の造形領域のうちの少なくともアウトライン領域に液体Xを吐出する。
【0036】
第2供給部21Bは、下方に向かって粉末Pを供給する装置である。第2供給部21Bは、本体部BXの第1方向の後尾側端部に設けられている。第2供給部21Bは、図示しないノズルを有し、粉末Pを貯蔵する図示しない貯蔵部から供給される粉末Pをノズルの先端から下方に向かって排出する。これにより、第2供給部21Bは、造形テーブル11の造形面11Aの上方に粉末Pを供給することができる。第2供給部21Bは、例えば、ガイドバーAXに沿って本体部BXが第2方向に向かって移動する場合において、粉末Pを下方に向かって排出する。
【0037】
第2層形成部22Bは、第2供給部21Bによって供給された粉末Pを均して粉末層を形成する部材である。第2層形成部22Bは、本体部BXにおいて、第2供給部21Bの第1方向の隣に設けられている。
図1に示した例では、第2層形成部22Bは、回転軸AX21周りに回転するローラーであり、造形テーブル11の造形面11Aの上方に供給された粉末Pを上方から押し均すことにより、造形面11Aの上方において粉末層を形成する。なお、第2層形成部22Bは、これに代えて、スキージ等のように、造形テーブル11の造形面11Aの上方に供給された粉末Pを上方から押し均すことが可能な他の部材であってもよい。第2層形成部22Bは、予め決められた揺動軸AX22周りに揺動可能に第2揺動部23Bによって支持される。より具体的には、第2層形成部22Bの回転軸AX21は、揺動軸AX22周りに揺動可能に第2揺動部23Bによって支持される。第2層形成部22Bは、ガイドバーAXに沿って本体部BXが第2方向に向かって移動する場合、第2層形成部22Bの下端22BTが、テーブルユニット10の上面10Aを含む仮想的な面と接触する位置に位置する。一方、第2層形成部22Bは、ガイドバーAXに沿って本体部BXが第1方向に向かって移動する場合、第2層形成部22Bの下端22BTが当該面から上方に離間する位置に位置する。第2層形成部22Bのこのような動きは、第2揺動部23Bによって実現される。
【0038】
第2揺動部23Bは、第2層形成部22Bの回転軸AX21を支持する棒状の部材である。第2揺動部23Bは、図示しないアクチュエーター等によって、揺動軸AX22周りに揺動することができる。これにより、第2揺動部23Bは、第2層形成部22Bを、テーブルユニット10の上面10Aを含む仮想的な面から離間させることができる。
【0039】
第2吐出部24Bは、バインダーと赤外線吸収体とのうち少なくともバインダーを含む第2液体X2を下方に向かって吐出する液体吐出装置であり、例えば、単位時間あたりの第2液体X2の吐出量を調整可能なプリンターヘッドである。以下では、一例として、第2液体X2に含まれるバインダーが、第1液体X1に含まれるバインダーと同じバインダーである場合について説明する。なお、第2液体X2に含まれるバインダーは、第1液体X1に含まれるバインダーと異なるバインダーであってもよい。また、以下では、一例として、第2液体X2に赤外線吸収体が含まれていない場合について説明する。なお、第2液体X2に赤外線吸収体が含まれている場合であっても、第2液体X2における赤外線吸収体の含有率は、第1液体X1における赤外線吸収体の含有率よりも低い。すなわち、本開示において、第2液体X2における赤外線吸収体の含有率が、第1液体X1における赤外線吸収体の含有率よりも低いことには、第2液体X2に赤外線吸収体が含まれていないことも含まれている。なお、第2液体X2に赤外線吸収体が含まれている場合、第2液体X2に含まれる赤外線吸収体は、第1液体X1に含まれる赤外線吸収体と同じ赤外線吸収体であってもよく、第1液体X1に含まれる赤外線吸収体と異なる赤外線吸収体であってもよい。
【0040】
第2吐出部24Bは、本体部BXにおいて、第2層形成部22Bの第1方向の隣に設けられている。なお、第2吐出部24Bは、単位時間あたりの第2液体X2の吐出量を調整不可能なプリンターヘッドであってもよい。第2吐出部24Bは、第1方向及び重力方向と直交する方向に向かって並ぶ図示しない複数のノズルを有する。そして、第2吐出部24Bは、制御部30からの要求に応じて、第2液体X2を貯蔵する図示しない貯蔵部から供給される第2液体X2を、当該複数のノズルのうちの少なくとも一部から下方に向かって吐出する。これにより、第2吐出部24Bは、個々の粉末層毎に予め決められた造形領域の少なくとも一部に第2液体X2を吐出することができる。なお、第2吐出部24Bは、第1吐出部24Aと一体に構成されてもよい。
【0041】
第2吐出部24Bは、例えば、制御部30からの要求に応じて、ガイドバーAXに沿って本体部BXが第1方向、第2方向のそれぞれに向かって移動する場合において、粉末層の造形領域のうちの少なくともアウトライン領域に第2液体X2を吐出する。なお、以下では、説明の便宜上、第1液体X1と第2液体X2とを区別する必要がない場合、まとめて液体Xと称して説明する。
【0042】
加熱部25は、第1液体X1と第2液体X2との少なくとも一方が吐出された後の粉末層を加熱するヒーターである。加熱部25は、例えば、本体部BXにおいて、第1吐出部24Aと第2吐出部24Bとの間に設けられている。加熱部25は、予め決められた加熱温度Tで当該粉末層を加熱する。加熱部25による加熱温度Tでの加熱は、粉末層において液体Xが吐出された領域内に含まれるバインダーの少なくとも一部を溶融し、当該領域内の粉末Pに含まれる個々の粒子をバインダーによって結着させることと、液体Xにバインダーの溶媒又は分散媒として含まれる液体の蒸発を促進させることとを実現させるために行われる。このため、加熱温度Tは、バインダーの沸点よりも低い温度であり、且つ、バインダーの融点よりも高い温度である。これは、バインダーを蒸発させずに、バインダーを溶かしたいからである。何故なら、植物由来の繊維材料の粉末を粉末Pとして使用する場合の三次元造形物の造形において、バインダーは、前述した通り、粉末Pに含まれる個々の粒子を結着する結着剤として機能するからである。以下では、一例として、加熱温度Tが、バインダーの沸点よりも低い温度のうち、バインダーの融点よりも高い温度であり、且つ、粉末Pに含まれる繊維材料の熱分解が起こる温度よりも低い温度である場合について説明する。すなわち、この一例において、加熱温度Tは、バインダーの沸点よりも低い温度のうち、バインダーの融点よりも高い温度であり、且つ、粉末Pに含まれる木質繊維素材の熱分解が起こる温度よりも低い温度である。この場合、三次元造形装置1は、加熱部25による加熱によって、三次元造形物に意図しない変色が現れること、三次元造形物の強度が低下してしまうこと等を抑制することができる。植物由来の繊維材料の熱分解が起こる温度は、粉末Pとして使用する繊維材料毎に、事前の実験等によって予め特定することができる。すなわち、木質繊維素材の熱分解が起こる温度も、事前の実験等によって予め決められた特定することができる。この一例におけるバインダーであるパラフィンワックスの融点は、70℃程度である。また、この一例における植物由来の繊維材料である木質繊維素材の熱分解が起こる温度は、150℃程度である。そこで、以下では、一例として、加熱温度Tが80℃である場合について説明する。なお、加熱部25は、第1液体X1と第2液体X2との少なくとも一方が吐出された後の粉末層を加熱するヒーターであれば、如何なるヒーターであってもよい。例えば、加熱部25は、チャンバー調温方式により、粉末層が有する領域のうち、第1液体X1と第2液体X2との少なくとも一方が吐出された領域とともに、粉末層が有する領域のうち、第1液体X1と第2液体X2との両方が吐出されていない領域を加熱するヒーターであってもよく、他の方式のヒーターであってもよい。
【0043】
制御部30は、テーブルユニット10と、造形部20とを制御する。なお、制御部30は、前述した通り、テーブルユニット10を制御しない構成であってもよい。
【0044】
制御部30は、例えば、三次元造形装置1に内蔵されるコンピューターであり、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプロセッサーを含んで構成される。制御部30は、ユーザーからの操作を受け付ける入力装置、画像を表示する表示装置、各種の情報を記憶する記憶装置等を備えていてもよく、当該入力装置、当該表示装置を備えず、制御部30と通信可能に接続された他の情報処理装置からの要求に応じて動作する構成であってもよい。また、制御部30は、他の情報処理装置と通信可能に接続される。
図1に示した例では、制御部30は、他の情報処理装置の一例である外部装置40と通信可能に接続されている。なお、制御部30は、外部装置40と一体に構成されてもよい。
【0045】
外部装置40は、例えば、ワークステーション、デスクトップPC(Personal Computer)、ノートPC、タブレットPC、多機能携帯電話端末(スマートフォン)、携帯電話端末、PDA(Personal)等の情報処理装置であるが、これらに限られるわけではない。外部装置40は、例えば、受け付けた操作に応じて、三次元造形装置1に造形させる三次元造形物の造形データを生成する。また、外部装置40は、受け付けた操作に応じて、生成した造形データを制御部30に出力する。また、外部装置40は、三次元造形装置1に三次元造形物の造形を開始させる要求等の各種の要求を制御部30に出力する。
【0046】
以上のような構成の三次元造形装置1は、造形部20の本体部BXをガイドバーAXに沿って往復移動させながら、造形テーブル11の造形面11Aの上にN個の粉末層を積層させる。例えば、三次元造形装置1は、本体部BXをガイドバーAXに沿って第2方向に移動させながら、第2供給部21Bによる粉末Pの供給、第2層形成部22Bによる粉末層の形成、第2吐出部24Bによる第2液体X2の吐出、第1吐出部24Aによる第1液体X1の吐出を順に行う。その後、三次元造形装置1は、加熱部25による粉末層の加熱を行う。また、例えば、三次元造形装置1は、本体部BXをガイドバーAXに沿って第1方向に移動させながら、第1供給部21Aによる粉末Pの供給、第1層形成部22Aによる粉末層の形成、第1吐出部24Aによる第1液体X1の吐出、第2吐出部24Bによる第2液体X2の吐出を順に行う。その後、三次元造形装置1は、加熱部25による粉末層の加熱を行う。これにより、三次元造形装置1は、本体部BXをガイドバーAXに沿って第1方向に向かって前後に往復移動させながら、造形テーブル11の造形面11Aの上にN個の粉末層を積層させることができる。なお、三次元造形装置1は、本体部BXを移動させながら加熱部25による粉末層の加熱を行ってもよく、本体部BXを移動させずに加熱部25による粉末層の加熱を行ってもよい。以下では、一例として、三次元造形装置1が、本体部BXを移動させずに加熱部25による粉末層の加熱を行う場合について説明する。この場合、加熱部25は、例えば、三次元造形装置1が有する空間のうち、粉末層が形成される空間内の温度を加熱温度Tにすることにより、粉末層を加熱温度Tで加熱する。換言すると、この場合、加熱部25は、前述のチャンバー調温方式のヒーターである。
【0047】
このように、三次元造形装置1は、粉末Pを供給し、三次元造形物が造形される造形面11Aの上方に粉末層を形成する第1工程と、第1工程により形成された粉末層の少なくとも一部に、第1液体X1と第2液体X2との少なくとも一方を吐出する第2工程と、第2工程により第1液体X1と第2液体X2との少なくとも一方が吐出された後の粉末層を、加熱温度Tで加熱する第3工程とを有し、第1工程、第2工程、第3工程の3つの工程のうち、少なくとも第1工程、第2工程を繰り返し行い、三次元造形物の造形を行う。具体的には、三次元造形装置1は、第1工程、第2工程、第3工程の順に第1工程、第2工程、第3工程を繰り返し行い、三次元造形物の造形を行う。これにより、三次元造形装置1は、例えば、粉末層において液体Xが吐出される領域毎に、第1液体X1の吐出量と第2液体X2の吐出量との比率を変えることにより、三次元造形物の表面に複数色によって構成されるテクスチャーを形成することができる。その結果、三次元造形装置1は、液体Xを吐出する部材の数を増大させることなく、所望のテクスチャーを三次元造形物の表面に形成することができる。以下では、説明の便宜上、第1工程と、第2工程と、第3工程とを有し、第1工程、第2工程、第3工程の順に第1工程、第2工程、第3工程を繰り返し行う工程を、造形工程と称して説明する。
【0048】
なお、三次元造形装置1は、加熱部25による粉末層の加熱を、造形面11Aの上へのN個の粉末層の積層が終わった後に、N個の粉末層に対して行う構成であってもよい。この場合、三次元造形装置1は、第1工程、第2工程の順に第1工程、第2工程を繰り返し行った後、第3工程を行うことによって三次元造形物の造形を行う。すなわち、造形工程は、第1工程、第2工程の順に第1工程、第2工程を繰り返し行った後、第3工程を行うことによって三次元造形物の造形を行う工程であってもよい。これによっても、三次元造形装置1は、例えば、粉末層において液体Xが吐出される領域毎に、第1液体X1の吐出量と第2液体X2の吐出量との比率を変えることにより、三次元造形物の表面に複数色によって構成されるテクスチャーを形成することができる。その結果、三次元造形装置1は、液体Xを吐出する部材の数を増大させることなく、所望のテクスチャーを三次元造形物の表面に形成することができる。
【0049】
ここで、三次元造形装置1のユーザーは、三次元造形装置1による三次元造形物の造形が行われた後、三次元造形装置1により造形された三次元造形物を、予め決められた第2加熱温度で加熱する加熱工程を行ってもよい。第2加熱温度は、バインダーの沸点よりも低い温度のうち、加熱温度Tよりも高い温度であり、且つ、木質繊維素材の熱分解が起こる温度よりも低い温度であれば、如何なる温度であってもよい。何故なら、加熱工程は、当該三次元造形物に含まれるバインダーのうち、加熱温度Tでの加熱によって溶けなかったバインダーを溶かすことにより、加熱工程によって加熱された後の三次元造形物の強度を向上させるために行われる工程であるからである。ユーザーにより行われる三次元造形方法は、造形工程に加えて、このような加熱工程を有する場合、三次元造形物の強度を向上させることができる。
【0050】
また、三次元造形装置1のユーザーは、造形工程が行われた後、又は、造形工程、加熱工程の順に造形工程、加熱工程が行われた後、三次元造形物を樹脂に含浸させる含浸工程を行ってもよい。含浸工程は、三次元造形物の強度を向上させるための工程である。ユーザーにより行われる三次元造形方法は、造形工程に加えて、又は、造形工程と加熱工程とに加えて、このような含浸工程を有する場合、三次元造形物の強度を、より確実に向上させることができる。
【0051】
含浸工程において三次元造形物に含浸させる樹脂は、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキル化メチロールメラミン、グリコウリル、メチルウレア樹脂、眼血ロール樹脂、グリコールウリル等であるが、これらに限られるわけではない。
【0052】
<第1液体X1及び第2液体X2それぞれを吐出する方法>
ここで、第1液体X1及び第2液体X2のそれぞれを三次元造形装置1が吐出する方法について説明する。
【0053】
前述の造形データには、粉末層毎に、粉末層に含まれる造形領域を示すデータが含まれている。そして、このデータには、更に、当該造形領域のアウトライン領域に含まれるM種類の領域のそれぞれを示すデータが含まれている。ここで、Mは、2以上の整数であれば、如何なる整数であってもよい。M種類の領域は、互いに色が異なる領域であり、1種類目の領域からM種類目の領域に向かって、明度の低い順に並べることが可能な領域である。すなわち、M種類の領域のうちのm-1種類目の領域の明度は、M種類の領域のうちのm番目の領域の明度よりも低い明度である。mは、2以上M以下の範囲内に含まれるいずれかの整数である。また、ある粉末層に含まれるM種類の領域のうちのm種類目の領域の明度は、当該粉末層が加熱部25により加熱温度Tで加熱された後の当該m種類目の領域が有する明度のことである。
【0054】
三次元造形装置1は、例えば、ある粉末層に含まれるM種類の領域のそれぞれへ液体Xを吐出する場合、当該M種類の領域のそれぞれへ、予め決められた吐出量の液体Xを吐出する。ただし、三次元造形装置1は、当該M種類の領域毎に、第1液体X1の吐出量と、第2液体X2の吐出量との比率を変化させる。第1液体X1の吐出量と、第2液体X2の吐出量との比率は、具体的には、第1液体X1の吐出量によって第2液体X2の吐出量を除した値のことである。三次元造形装置1は、当該M種類の領域のうちのm種類目の領域へ液体Xを吐出する場合、第1液体X1の吐出量と第2液体X2の吐出量との比率が、当該m種類目の領域に対応付けられた比率となるように、当該m種類目の領域へ第1液体X1及び第2液体X2のそれぞれを吐出する。ここで、当該M種類の領域のうちのm-1種類目の領域に対応付けられた比率は、当該M種類の領域のうちのm種類目の領域に対応付けられた比率よりも小さい。何故なら、ある領域へ液体Xが吐出された場合において、当該領域への第1液体X1の吐出量に対して、当該領域への第2液体X2の吐出量が増大するほど、当該領域の明度が高くなるからである。これは、この一例における赤外線吸収体の一例である炭素が、当該領域の明度を低くする方向に寄与するからである。なお、当該M種類の領域のうちのm種類目の領域には、無限大を示す比率が対応付けられていてもよい。この場合、当該M種類目の領域には、第1液体X1が吐出されない。また、当該M種類の領域のうちの1種類目の領域には、0を示す比率が対応付けられていてもよい。この場合、当該1種類目の領域には、第2液体X2が吐出されない。また、この一例のように、炭素が赤外線吸収体である場合、三次元造形装置1は、炭素が粉末Pの変質を誘起しづらいため、三次元造形物の強度が低下してしまうことを抑制することができる。なお、赤外線吸収体は、炭素に代えて、アルミニウム、鉄、芳香族多環炭化水素等を主成分とする粉末であってもよい。
【0055】
このようにして、三次元造形装置1は、N個の粉末層のそれぞれに含まれるM種類の領域それぞれの明度を、異なる明度にすることができる。そして、明度の違いは、色の違いとして人間に認識される。すなわち、三次元造形装置1は、三次元造形物の表面に複数色によって構成されるテクスチャーを形成することができる。その結果、三次元造形装置1は、液体Xを吐出する部材の数を増大させることなく、所望のテクスチャーを三次元造形物の表面に形成することができる。例えば、三次元造形装置1は、三次元造形物の表面に、所望のテクスチャーとして木目等のグラデーションを有するテクスチャーを形成することができる。
【0056】
なお、N個の粉末層のうちの一部又は全部に含まれるM個の領域の数は、互いに異なっていてもよく、互いに同じであってもよい。
また、三次元造形装置1は、インフィル領域に液体Xを吐出する構成であってもよく、インフィル領域に液体Xを吐出しない構成であってもよい。インフィル領域に液体Xを吐出しない場合、すなわち、インフィル領域が前述のM種類の領域を含まない場合、三次元造形装置1は、三次元造形物の内部において粉末Pが変質してしまうことを抑制することができ、その結果、三次元造形物の強度が低下してしまうことを抑制することができる。
【0057】
<三次元造形方法の流れ>
以下、
図2及び
図3を参照し、実施形態に係る三次元造形方法の流れの一例について説明する。
図2は、
図1に示した4個の粉末層のうちの粉末層L2を造形部20が形成する様子の一例を示す図である。
図3は、ユーザーが三次元造形装置1を用いて三次元造形物を造形する三次元造形方法の流れの一例を示す図である。
【0058】
ユーザーは、外部装置40を操作し、三次元造形装置1に造形させる三次元造形物の造形データを、三次元造形装置1の制御部30へ入力する(ステップS110)。なお、ユーザーは、外部装置40以外の装置を用いて、当該造形データを制御部30に入力する構成であってもよい。
【0059】
次に、ユーザーは、外部装置40を操作し、ステップS110において制御部30に入力した造形データに基づく三次元造形物の造形を三次元造形装置1に開始させる(ステップS120)。これにより、三次元造形装置1は、ステップS130~ステップS190において、テーブルユニット10と造形部20とのそれぞれを制御し、前述の造形工程を実行する。すなわち、ユーザーは、当該造形データに基づく三次元造形物の造形を三次元造形装置1に開始させることにより、造形工程を実行する。
【0060】
まず、三次元造形装置1の制御部30は、造形部20の本体部BXを、ガイドバーAXに沿って予め決められた第1位置に移動させる(ステップS130)。第1位置は、本体部BXが位置することが可能な位置のうち、造形工程を開始する直前に本体部BXを待機させる位置として予め決められた位置であり、例えば、ガイドバーAXに沿って本体部BXが移動可能な位置のうちの最も第1方向側の位置のことである。なお、第1位置は、ガイドバーAXに沿って本体部BXが移動可能な位置のうち最も第1方向側の位置よりも手前の位置のことであってもよい。ただし、三次元造形装置1を重力方向に向かって見た場合、第1位置に位置する本体部BXの第2供給部21Bは、造形テーブル11の造形面11Aと重なっておらず、造形面11Aよりも第1方向側に位置する。また、制御部30は、ステップS130において、本体部BXを、ガイドバーAXに沿って予め決められた第2位置に移動させる構成であってもよい。第2位置は、例えば、ガイドバーAXに沿って本体部BXが移動可能な位置のうちの最も第2方向側の位置のことである。なお、第2位置は、ガイドバーAXに沿って本体部BXが移動可能な位置のうち最も第2方向側の位置よりも手前の位置のことであってもよい。ただし、三次元造形装置1を重力方向に向かって見た場合、第2位置に位置する本体部BXの第1供給部21Aは、造形テーブル11の造形面11Aと重なっておらず、造形面11Aよりも第2方向側に位置する。
【0061】
次に、制御部30は、ステップS110において入力された造形データに基づいて、造形テーブル11の造形面11Aの上方に積層させるN個の粉末層を下から順に1個ずつ、これから形成する対象粉末層として選択し、選択した対象粉末層毎に、ステップS150~ステップS190の処理を繰り返し行う(ステップS140)。
【0062】
制御部30は、ステップS110において入力された造形データに含まれるデータの中から、ステップS140において選択された対象粉末層のデータを特定する。そして、制御部30は、特定したデータに基づいてテーブルユニット10を制御し、テーブルユニット10の上面10Aよりも対象粉末層の厚さぶん下方に造形面11Aが位置するように、造形テーブル11を移動させる(ステップS150)。
【0063】
次に、制御部30は、第1層形成部22A及び第2層形成部22Bのいずれか一方に上昇させる(ステップS160)。具体的には、制御部30は、本体部BXの位置が第1位置である場合、ステップS160において、第1揺動部23Aを制御し、第1層形成部22Aを上昇させる。この際、制御部30は、第2層形成部22Bが上昇していた場合、第2揺動部23Bを制御し、第2層形成部22Bを下降させる。なお、制御部30は、ステップS160において、本体部BXの位置が第1位置である場合、且つ、第1層形成部22Aが下降していた場合、第1揺動部23Aの制御を行わない。一方、制御部30は、本体部BXの位置が第2位置である場合、ステップS160において、第2揺動部23Bを制御し、第2層形成部22Bを上昇させる。この際、制御部30は、第1層形成部22Aが上昇していた場合、第1揺動部23Aを制御し、第1層形成部22Aを下降させる。なお、制御部30は、ステップS160において、本体部BXの位置が第2位置である場合、且つ、第2層形成部22Bが下降していた場合、第2揺動部23Bの制御を行わない。
【0064】
次に、制御部30は、ガイドバーAXに沿った本体部BXの移動を本体部BXに開始させる(ステップS170)。ここで、制御部30は、ステップS170において、本体部BXの位置が第1位置である場合、本体部BXをガイドバーAXに沿って第2位置に向かって第2方向へ移動させ始める。一方、制御部30は、ステップS170において、本体部BXの位置が第2位置である場合、本体部BXをガイドバーAXに沿って第1位置に向かって第1方向へ移動させ始める。
【0065】
次に、制御部30は、粉末Pを造形面11Aの上方への供給を第1供給部21A及び第2供給部21Bのいずれか一方に開始させ、第1層形成部22A及び第2層形成部22Bのいずれか一方に対象粉末層の形成を開始させ、第1吐出部24Aに第1液体X1の吐出を開始させ、第2吐出部24Bに第2液体X2の吐出を開始させる(ステップS180)。具体的には、制御部30は、ステップS170において本体部BXが第2位置へ向かって移動を開始した場合、ステップS180において、粉末Pの排出を第2供給部21Bに開始させ、且つ、第1供給部21Aによる粉末Pの排出を禁止する。また、制御部30は、当該場合、ステップS180において、第2供給部21Bによって排出された粉末Pを均すことによる対象粉末層の形成を、第2層形成部22Bに開始させる。また、制御部30は、当該場合、ステップS180において、第2層形成部22Bによって形成された対象粉末層のアウトライン領域への第2液体X2の吐出を、第2吐出部24Bに開始させるとともに、当該アウトライン領域への第1液体X1の吐出を、第1吐出部24Aに開始させる。一方、制御部30は、ステップS170において本体部BXが第1位置へ向かって移動を開始した場合、ステップS180において、粉末Pの排出を第1供給部21Aに開始させ、且つ、第2供給部21Bによる粉末Pの排出を禁止する。また、制御部30は、当該場合、ステップS180において、第1供給部21Aによって排出された粉末Pを均すことによる対象粉末層の形成を、第1層形成部22Aに開始させる。また、制御部30は、当該場合、ステップS180において、第1層形成部22Aによって形成された対象粉末層のアウトライン領域への第1液体X1の吐出を、第1吐出部24Aに開始させるとともに、当該アウトライン領域への第2液体X2の吐出を、第2吐出部24Bに開始させる。そして、制御部30は、対象粉末層への液体Xの吐出が終了した後、第1位置と第2位置とのうち、本体部BXが近い方の位置へ本体部BXを移動させて停止させる。
【0066】
次に、制御部30は、加熱部25を制御し、加熱温度Tで対象粉末層を加熱する(ステップS190)。ここで、制御部30は、例えば、ステップS190において、加熱部25による加熱を開始したタイミングから、予め決められた加熱時間が経過するまでの間、加熱温度Tでの対象粉末層の加熱を続ける。そして、制御部30は、当該タイミングから加熱時間が経過した後、ステップS140に遷移し、次の対象粉末層を選択する。なお、制御部30は、ステップS140において、対象粉末層として未選択の粉末層が存在しない場合、ステップS140~ステップS190の繰り返し処理を終了し、ステップS200に遷移する。
【0067】
ここで、
図2の上段の状態図は、ステップS180において、本体部BXが第1方向に向かって移動している場合に、第1供給部21Aによって供給された粉末Pを均して、粉末層L2を対象粉末層として第1層形成部22Aが形成している様子の一例を示している。この場合、第2層形成部22Bは、当該状態図に示したように、ステップS160において第2揺動部23Bによって上昇させられており、当該粉末Pに接触しない。
【0068】
このようにして第1層形成部22Aにより粉末層L2が形成される。本体部BXの移動に応じて第1層形成部22Aを追うように第1方向に移動する第1吐出部24Aは、このようにして第1層形成部22Aにより形成された粉末層L2の造形領域の少なくとも一部に、
図2の中段の状態図に示したように第1液体X1を吐出する。
図2の中段の状態図は、第2層形成部22Bにより形成された粉末層L2のアウトライン領域に第1吐出部24Aが第1液体X1を吐出している様子の一例を示す図である。
図2の中段の状態図に示した領域PPは、粉末層L2に含まれるアウトライン領域の一例を示す。なお、領域PPへ第1吐出部24Aが吐出する第1液体X1の吐出量は、粉末層L2が有するアウトライン領域に含まれるM種類の領域のうち領域PPが含まれる領域に対応付けられた比率に基づいて制御部30により算出される。
【0069】
そして、本体部BXの移動に応じて第1層形成部22Aを追うように第1方向に移動する第2吐出部24Bは、第1層形成部22Aにより形成された粉末層L2の造形領域の少なくとも一部に、
図2の下段の状態図に示したように第2液体X2を吐出する。
図2の下段の状態図は、第2層形成部22Bにより形成された粉末層L2のアウトライン領域に第2吐出部24Bが第2液体X2を吐出している様子の一例を示す図である。当該状態図では、第2吐出部24Bは、前述の領域PPに第2液体X2を吐出している。なお、領域PPへ第2吐出部24Bが吐出する第2液体X2の吐出量は、粉末層L2が有するアウトライン領域に含まれるM種類の領域のうち領域PPが含まれる領域に対応付けられた比率に基づいて制御部30により算出される。
【0070】
以上のように、ユーザーは、ステップS130~ステップS190の処理を三次元造形装置1に行わせることにより、造形工程を行うことができる。すなわち、ユーザーは、三次元造形装置1にステップS130~ステップS190の処理を行わせることにより、三次元造形装置1に三次元造形物の造形を行わせることができる。なお、ユーザーは、三次元造形装置1を用いて造形工程を行う代わりに、他の装置を用いて造形工程を行ってもよい。
【0071】
ステップS140~ステップS190の繰り返し処理を終了した後、ユーザーは、ステップS130~ステップS190の処理によって三次元造形装置1が造形した三次元造形物を三次元造形装置1から取り出す(ステップS200)。この際、ユーザーは、三次元造形物としてバインダーにより結着された粉末P以外の粉末を、例えば、回収ボックス等に廃棄して除去する。
【0072】
ステップS200において三次元造形物を造形した後、ユーザーは、造形した三次元造形物を冷却する。そして、ユーザーは、冷却された後の三次元造形物を樹脂に含浸させる含浸工程を行う(ステップS210)。例えば、ユーザーは、ステップS210において、予め決められた種類の樹脂で満たされた樹脂槽に当該三次元造形物を入れて、当該樹脂を当該三次元造形物に含浸させる。なお、ユーザーは、他の方法により当該樹脂を当該三次元造形物に含浸させてもよい。また、
図3に示したフローチャートにおいて、ステップS210の工程は、省略されてもよい。
【0073】
ユーザーは、ステップS210において三次元造形物に樹脂を含浸させた後、
図3に示したフローチャートの工程を終了し、実施形態に係る三次元造形方法による三次元造形物の造形を終了する。
【0074】
なお、ステップS180において、三次元造形装置1は、本体部BXの位置が第2位置であった場合、本体部BXを第1方向に向かって移動させながら、第1供給部21A及び第1層形成部22Aによって対象粉末層を形成した後、本体部BXを第2方向に向かって移動させながら、第1吐出部24A及び第2吐出部24Bによって対象粉末層の造形領域の少なくとも一部に液体Xを吐出する構成であってもよい。この場合、三次元造形装置1は、第1方向に向かって本体部BXを移動させる速度、すなわち、第1層形成部22Aの移動速度を、第2方向に向かって本体部BXを移動させる速度、すなわち、第1吐出部24A及び第2吐出部24Bの移動速度よりも遅くする構成であってもよい。また、ステップS180において、三次元造形装置1は、本体部BXの位置が第1位置であった場合、本体部BXを第2方向に向かって移動させながら、第2供給部21B及び第2層形成部22Bによって対象粉末層を形成した後、本体部BXを第1方向に向かって移動させながら、第1吐出部24A及び第2吐出部24Bによって対象粉末層の造形領域の少なくとも一部に液体Xを吐出する構成であってもよい。この場合、三次元造形装置1は、第2方向に向かって本体部BXを移動させる速度、すなわち、第1層形成部22Aの移動速度を、第1方向に向かって本体部BXを移動させる速度、すなわち、第1吐出部24A及び第2吐出部24Bの移動速度よりも遅くする構成であってもよい。これらにより、三次元造形装置1は、本体部BXの移動によって生じる風等により、液体Xが吐出される前に粉末Pが舞い上がってしまうことを抑制することができる。なお、第2層形成部22Bの移動速度は、第1吐出部24A及び第2吐出部24Bの移動速度と同じ速度であってもよく、第1吐出部24A及び第2吐出部24Bの移動速度より速い速度であってもよい。また、第1層形成部22Aの移動速度は、第1吐出部24A及び第2吐出部24Bの移動速度と同じ速度であってもよく、第1吐出部24A及び第2吐出部24Bの移動速度より速い速度であってもよい。
【0075】
以上のように、三次元造形装置1によって実行される三次元造形方法は、三次元造形物を造形する三次元造形方法であって、粉末Pを供給し、三次元造形物が造形される造形面11Aの上方に粉末層を形成する第1工程と、第1工程により形成された粉末層の少なくとも一部に、バインダーと赤外線吸収体との両方を含む第1液体X1と、バインダーと赤外線吸収体とのうち少なくともバインダーを含む第2液体X2との少なくとも一方を吐出する第2工程と、第2工程により第1液体X1と第2液体X2との少なくとも一方が吐出された後の粉末層を、予め決められた加熱温度Tで加熱する第3工程とを有し、第1工程、第2工程、第3工程の3つの工程のうち、少なくとも第1工程、第2工程を繰り返し行い、三次元造形物の造形を行う造形工程を有し、加熱温度Tは、バインダーの沸点よりも低い温度であり、且つ、バインダーの融点よりも高い温度であり、第2液体X2における赤外線吸収体の含有率は、第1液体X1における赤外線吸収体の含有率よりも低い。これにより、当該三次元造形方法は、例えば、粉末層において液体Xが吐出される領域毎に、第1液体X1を吐出する量と第2液体X2を吐出する量との比率を変えることにより、三次元造形物の表面に複数色によって構成されるテクスチャーを形成することができる。その結果、三次元造形装置1は、液体Xを吐出する部材の数を増大させることなく、所望のテクスチャーを三次元造形物の表面に形成することができる。
【0076】
なお、上記において説明した三次元造形方法では、加熱温度Tは、植物由来の繊維材料の熱分解が起こる温度以上の温度であってもよい。この場合、三次元造形方法では、繊維材料の熱分解によって生じる粉末層の変色も利用して、三次元造形物の表面に複数色によって構成されるテクスチャーを形成することができる。ただし、この場合、ユーザーは、粉末層を加熱温度Tで加熱する時間と、加熱後の粉末層の色との関係を示す情報を事前に実験等によって特定しておく必要がある。当該情報を特定した場合、ユーザーは、加熱温度Tでの粉末層の加熱時間を三次元造形装置1に造形データによって指定し、三次元造形装置1を用いて、三次元造形物の表面に、より多彩な色を有するテクスチャーを形成することができる。
また、上記において説明した内容は、如何様に組み合わされてもよい。
【0077】
<付記>
[1]
三次元造形物を造形する三次元造形方法であって、植物由来の繊維材料を含む粉末を供給し、前記三次元造形物が造形される造形面の上方に粉末層を形成する第1工程と、前記第1工程により形成された前記粉末層の少なくとも一部に、バインダーと赤外線吸収体との両方を含む第1液体と、前記バインダーと前記赤外線吸収体とのうち少なくとも前記バインダーを含む第2液体との少なくとも一方を吐出する第2工程と、前記第2工程により前記第1液体と前記第2液体との少なくとも一方が吐出された後の前記粉末層を、予め決められた加熱温度で加熱する第3工程とを有し、前記第1工程、前記第2工程、前記第3工程の3つの工程のうち、少なくとも前記第1工程、前記第2工程を繰り返し行い、前記三次元造形物の造形を行う造形工程を有し、前記加熱温度は、前記バインダーの沸点よりも低い温度であり、且つ、前記バインダーの融点よりも高い温度であり、前記第2液体における前記赤外線吸収体の含有率は、前記第1液体における前記赤外線吸収体の含有率よりも低い、三次元造形方法。
[2]
前記造形工程は、前記第1工程、前記第2工程、前記第3工程の順に前記第1工程、前記第2工程、前記第3工程を繰り返し行い、前記三次元造形物の造形を行う工程である、[1]に記載の三次元造形方法。
[3]
前記造形工程は、前記第1工程、前記第2工程の順に前記第1工程、前記第2工程を繰り返し行った後、前記第3工程を行うことによって前記三次元造形物の造形を行う工程である、[1]に記載の三次元造形方法。
[4]
造形された後の前記三次元造形物を樹脂に含浸させる含浸工程を有する、[1]から[3]のうちいずれか一項に記載の三次元造形方法。
[5]
前記赤外線吸収体は、炭素を含む、[1]から[4]のうちいずれか一項に記載の三次元造形方法。
[6]
前記加熱温度は、前記繊維材料の熱分解が起こる温度よりも低い温度である、[1]から[5]のうちいずれか一項に記載の三次元造形方法。
[7]
前記粉末層は、前記三次元造形物の少なくとも一部となる造形領域と、前記三次元造形物の一部とならない非造形領域とを含み、前記造形領域は、前記第1液体が吐出される第1領域と、前記第2液体が吐出される第2領域とを含む、[6]に記載の三次元造形方法。
[8]
前記造形領域は、アウトラインを構成するアウトライン領域と、インフィルを構成するインフィル領域とを含み、前記アウトライン領域は、前記第1領域及び前記第2領域を含み、前記インフィル領域は、前記第1領域及び前記第2領域を含まない、[7]に記載の三次元造形方法。
[9]
前記第1工程は、前記造形面に対して平行に層形成部を移動させることによって前記造形面の上方に前記粉末層を形成する工程であり、前記第2工程は、前記第1液体と前記第2液体とのそれぞれを吐出可能であり、且つ、前記粉末層の上方を前記造形面に対して平行に移動する液体吐出部によって前記粉末層に前記第1液体と前記第2液体との少なくとも一方を吐出する工程であり、前記第1工程における前記層形成部の移動速度は、前記第2工程における前記液体吐出部の移動速度よりも遅い、[1]から[8]のうちいずれか一項に記載の三次元造形方法。
[10]
前記層形成部は、ローラー又はスキージである、[9]に記載の三次元造形方法。
[11]
前記液体吐出部は、プリンターヘッドである、[9]又は[10]に記載の三次元造形方法。
[12]
三次元造形物を造形する三次元造形装置であって、前記三次元造形物を造形する造形面を有する造形テーブルと、前記造形面の上方において、植物由来の繊維材料を含む粉末の粉末層を形成する層形成部と、前記層形成部により形成された前記粉末層の少なくとも一部に、バインダーと赤外線吸収体との両方を含む第1液体と、前記バインダーと前記赤外線吸収体とのうち少なくとも前記バインダーを含む第2液体との少なくとも一方を吐出する吐出部と、前記吐出部により前記第1液体と前記第2液体との少なくとも一方が吐出された後の前記粉末層を加熱する加熱部と、前記吐出部と、前記層形成部と、前記加熱部とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記加熱部により前記粉末層を加熱する場合、予め決められた加熱温度で前記粉末層を加熱し、前記加熱温度は、前記バインダーの沸点よりも低い温度であり、且つ、前記バインダーの融点よりも高い温度であり、前記第2液体における前記赤外線吸収体の含有率は、前記第1液体における前記赤外線吸収体の含有率よりも低い、三次元造形装置。
【0078】
以上、この開示の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この開示の要旨を逸脱しない限り、変更、置換、削除等されてもよい。
【0079】
また、以上に説明した装置における任意の構成部の機能を実現するためのプログラムを、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピューターシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。ここで、当該装置は、例えば、三次元造形装置1、外部装置40等である。なお、ここでいう「コンピューターシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD(Compact Disk)-ROM等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバーやクライアントとなるコンピューターシステム内部の揮発性メモリーのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0080】
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピューターシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピューターシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル又は差分プログラムであってもよい。
【符号の説明】
【0081】
1…三次元造形装置、10…テーブルユニット、10A…上面、11…造形テーブル、11A…造形面、20…造形部、21A…第1供給部、21B…第2供給部、22A…第1層形成部、22AT、22BT…下端、22B…第2層形成部、23A…第1揺動部、23B…第2揺動部、24A…第1吐出部、24B…第2吐出部、25…加熱部、30…制御部、40…外部装置、AX…ガイドバー、AX11、AX21…回転軸、AX12、AX22…揺動軸、BX…本体部、L1~L4…粉末層、O…三次元造形物、P…粉末、PP…領域、T…加熱温度、TC…三次元座標系、X…液体、X1…第1液体、X2…第2液体