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特開2024-130093射出シリンダとこれを備える射出成形機、及び分割式射出シリンダの構成部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130093
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】射出シリンダとこれを備える射出成形機、及び分割式射出シリンダの構成部品
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/62 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B29C45/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039607
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】山口 毅
(72)【発明者】
【氏名】部谷 道雄
(72)【発明者】
【氏名】川邊 主税
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206JA07
4F206JL02
4F206JQ26
4F206JQ41
4F206JQ42
4F206JQ45
(57)【要約】
【課題】射出シリンダの大型化を抑制しつつ射出量の増加を可能とする。
【解決手段】射出成形機の射出シリンダ31は、シリンダ本体32と、シリンダ本体32に収容され、先端にスクリュヘッド37を備えるスクリュ33と、シリンダ本体32に収容され、射出される溶融金属の逆流を防止する逆流防止部5と、を有している。スクリュ33と逆流防止部5は、シリンダ本体32に対し材料の射出方向Xに相対変位可能である。シリンダ本体32は、スクリュヘッド37及び逆流防止部5がシリンダ本体32に対し相対変位可能な可動区間K1を有し、シリンダ本体32の可動区間K1での内径D1が、シリンダ本体32の、材料の射出方向Xに関する後端部での内径D2より大きい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機の射出シリンダであって、
シリンダ本体と、
前記シリンダ本体に収容され、先端にスクリュヘッドを備えるスクリュと、
前記シリンダ本体に収容され、射出される材料の逆流を防止する逆流防止部と、を有し、
前記スクリュと前記逆流防止部は、前記シリンダ本体に対し前記材料の射出方向に相対変位可能であり、
前記シリンダ本体は、前記スクリュヘッド及び前記逆流防止部が前記シリンダ本体に対し相対変位可能な可動区間を有し、前記シリンダ本体の前記可動区間での内径が、前記シリンダ本体の前記射出方向に関する後端部での内径より大きい、射出シリンダ。
【請求項2】
前記逆流防止部は、前記射出方向に関し前記スクリュヘッドの後方に位置する逆流防止リングと、前記射出方向に関し前記逆流防止リングの後方に位置し、前記逆流防止リングの後方への移動を規制する押し金と、を有し、
前記逆流防止リングと前記押し金の外径は、前記シリンダ本体の前記後端部での内径より大きい、請求項1に記載の射出シリンダ。
【請求項3】
前記スクリュヘッドの外径は、前記シリンダ本体の前記後端部での内径より大きい、請求項1に記載の射出シリンダ。
【請求項4】
前記シリンダ本体の外径は、前記シリンダ本体の前端部から前記後端部までの区間で一定である、請求項1に記載の射出シリンダ。
【請求項5】
前記シリンダ本体の前記可動区間での外径は、前記シリンダ本体の前記後端部での外径より大きい、請求項1に記載の射出シリンダ。
【請求項6】
前記シリンダ本体は、前記射出方向に関し前方に位置し前記可動区間を含む前方部と、前記射出方向に関し後方に位置し前記前方部から独立した部材として構成された後方部と、を有する、請求項1に記載の射出シリンダ。
【請求項7】
前記スクリュは、
前記スクリュヘッドが取り付けられ前記逆流防止部と対向する先端部と、
前記射出方向に関し前記先端部の後方に位置し、前記先端部より外径の大きい拡径部と、
前記射出方向に関し前記拡径部の後方に位置し、前記拡径部より外径の小さい縮径部と、を有する、請求項1に記載の射出シリンダ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の射出シリンダを有する射出成形機。
【請求項9】
前記射出成形機は金属射出成形機である、請求項8に記載の射出成形機。
【請求項10】
前記スクリュを前記スクリュの軸方向に前後移動させる駆動機構と、
前記駆動機構の制御装置と、を有し、
前記制御装置は、各成形サイクルで、前記スクリュを後退させる工程を複数回に分けて行うように前記駆動機構を制御する、請求項8に記載の射出成形機。
【請求項11】
射出成形機の分割式射出シリンダの構成部品であって、
前記分割式射出シリンダは、シリンダ本体と、
前記シリンダ本体に収容され、先端にスクリュヘッドを備えるスクリュと、
前記シリンダ本体に収容され、射出される材料の逆流を防止する逆流防止部と、を有し、
前記スクリュと前記逆流防止部は、前記シリンダ本体に対し前記材料の射出方向に相対変位可能であり、
前記シリンダ本体は、前記スクリュヘッド及び前記逆流防止部が前記シリンダ本体に対し相対変位可能な可動区間を有し、前記シリンダ本体の前記可動区間での内径が、前記シリンダ本体の前記射出方向に関する後端部での内径より大きく、
前記シリンダ本体は、前記射出方向に関し前方に位置し前記可動区間を含む前方部と、前記射出方向に関し後方に位置し前記前方部から独立した部材として構成された後方部と、を有し、
前記構成部品は、前記シリンダ本体の前記前方部と、前記スクリュヘッドと、前記逆流防止部と、を含む、分割式射出シリンダの構成部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出シリンダとこれを備える射出成形機、及び分割式射出シリンダの構成部品に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は一般に、スクリュを内蔵した射出シリンダを備えている。特許文献1には射出シリンダの一例が開示されている。スクリュを内蔵するシリンダ本体の内径は軸方向に一定である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-063833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年成形品の大型化により、1回の成形サイクル当たりの射出量を増加することが求められている。射出シリンダの前部は一般に計量部を構成するため、射出量を増加するためには計量部の容積を増やすことが考えられる。そのための一つの方法は、シリンダ本体の内径をその全長に渡って増やすことである。しかし、この方法は射出シリンダ、ひいては射出成形機の大型化を招く可能性がある。
【0005】
本開示は、射出シリンダの大型化を抑制しつつ射出量の増加を可能とする、射出成形機の射出シリンダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、シリンダ本体は、スクリュヘッド及び逆流防止部がシリンダ本体に対し相対変位可能な可動区間を有し、シリンダ本体の可動区間での内径が、シリンダ本体の射出方向に関する後端部での内径より大きい。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、射出シリンダの大型化を抑制しつつ射出量の増加を可能とする、射出成形機の射出シリンダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る射出成形機の概略正面図である。
図2図1に示す射出シリンダの前方部分の拡大図である。
図3図1に示す射出シリンダのスクリュと逆流防止部の位置関係を示す図である。
図4】変形例の射出シリンダの前方部分の拡大図である。
図5】比較例の射出シリンダの前方部分の拡大図である。
図6】1回の成形サイクルを示す図である。
図7】第2の実施形態に係る射出シリンダの前方部分の拡大図である。
図8】第3の実施形態に係る射出成形機の概略正面図である。
図9】第4の実施形態に係る射出シリンダの前方部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図面を参照して、本発明の第1の実施形態に係る射出成形機1について説明する。以下の説明で、スクリュ33の軸方向ないし移動方向をX方向という。「前進」「前方」等の用語は、スクリュ33がX方向に関し型締装置2に近づく動き、方向、位置等を、「後進」「後方」等の用語は、スクリュ33がX方向に関し型締装置2から遠ざかる動き、方向、位置等を意味する。射出方向XはX方向前方を意味する。
【0010】
<全体構成>
図1は、第1の実施形態に係る射出成形機1の概略正面図を示している。射出成形機1はマグネシウム、アルミニウムなどの溶融金属を射出する、横型の金属射出成形機である。射出成形機1は、金型を型締めする型締装置2と、射出される金属材料を加熱溶融して射出する射出装置3と、から概略構成されている。加熱溶融されて射出される金属材料を溶融金属という場合がある。金属材料は半溶融状態で射出してもよいし、完全溶融状態で射出させてもよい。なお、本発明は金属射出成形機に限定されず、樹脂の射出成形機にも適用可能である。
【0011】
<型締装置2>
型締装置2は、ベッド(図示せず)上に固定され固定金型M1が取り付けられる固定盤21と、ベッド上をスライド可能で可動金型M2が取り付けられる可動盤22と、を備えている。可動盤22に関し固定盤21の反対側には、ベッド上をスライド可能な型締ハウジング(図示せず)が設けられ、固定盤21と型締ハウジングは複数本のタイバー23によって連結されている。可動盤22と型締ハウジングとの間には、金型を開閉するための油圧式の型締シリンダ(図示せず)が設けられている。油圧式の型締シリンダの代わりに、電動式のボールねじで駆動されるリンク機構(図示せず)を設けてもよい。固定金型M1と可動金型M2との間には、溶融金属が充填されるキャビティM3が形成される。
【0012】
<射出装置3>
射出装置3は基台(図示せず)上に設けられている。射出装置3は射出シリンダ31を有し、射出シリンダ31は、中空円筒のシリンダ本体32と、シリンダ本体32に収容されたスクリュ33と、を有している。シリンダ本体32の内部空間の、X方向と直交する断面は円形である。射出装置3は、スクリュ33を駆動する駆動機構34と、駆動機構34の制御装置35と、をさらに備えている。スクリュ33は駆動機構34によって回転駆動されるとともにX方向に駆動(前後移動)される。
【0013】
射出シリンダ31は、後方から前方に向けて供給部P1、圧縮部P2、計量部P3に概ね区分される。供給部P1にはホッパ36が設けられ、ペレット状の金属材料が供給される。金属材料はシリンダ本体32の外周に巻かれたヒータ39からの余熱を受けながら圧縮部P2に送られる。金属材料は圧縮部P2で圧縮・加熱・混錬されることで溶融状態となり、計量部P3に搬送される。計量部P3は1回の射出サイクル(ショット)で射出される溶融金属を計量する。
【0014】
スクリュ33はX方向の前端にスクリュヘッド37を備えている。射出シリンダ31の先端には、キャビティM3に溶融金属を供給する射出ノズル38が取り付けられている。シリンダ本体32の外周には金属材料を加熱溶融するヒータ39が設けられている。
【0015】
<逆流防止部5>
図2は、射出シリンダ31の前方部分の拡大図を示す。射出シリンダ31の計量部P3は、射出される金属材料の逆流を防止する逆流防止部5を有している。逆流防止部5は、逆流防止リング51と、押し金52と、ピストンリング53とを有している。逆流防止リング51は、射出方向Xに関しスクリュヘッド37の後方に位置する中空円筒部材である。ピストンリング53は逆流防止リング51の外周面に嵌められた円環状のシール部品で、逆流防止リング51の前方と後方とを仕切る。押し金52はスクリュ33に固定されている。押し金52は、射出方向Xに関し逆流防止リング51の後方に位置する穴あき円板である。押し金52は、逆流防止リング51の後方への移動を規制する。
【0016】
逆流防止リング51は、スクリュヘッド37と押し金52との間でスクリュ33に挿入されている。スクリュヘッド37と押し金52の外径は逆流防止リング51の内径より大きく、逆流防止リング51のX方向長さは、スクリュヘッド37と押し金52のX方向の離間距離より小さい。従って、逆流防止リング51は、スクリュヘッド37と押し金52とに規制されながらX方向に移動可能である。
【0017】
図3はスクリュ33と逆流防止部5(ピストンリング53は図示せず)のシリンダ本体32との位置関係を示している。図3の上図に示すように、溶融金属が射出される際はスクリュ33が前進し、逆流防止リング51は相対的にスクリュ33に対して後退する。逆流防止リング51は押し金52に突き当たり、スクリュ33前方の計量された溶融金属が射出時(スクリュ33前進時)に、後方に漏れることを防止する。図3の下図に示すように、溶融金属を計量する際はスクリュ33が後退し、逆流防止リング51は相対的にスクリュ33に対して前進する。逆流防止リング51はスクリュヘッド37に突き当たるが、押し金52の後方の溶融金属は図示しない流路を通って、スクリュヘッド37の前方空間40に供給される。このように、逆流防止リング51は機能的には弁の一種である。
【0018】
<シリンダ本体32の形状>
従って、スクリュヘッド37と逆流防止部5は、X方向の特定の区間をシリンダ本体32に対して相対移動する。シリンダ本体32のこの区間をスクリュヘッド37及び逆流防止部5の可動区間K1という。可動区間K1とシリンダ本体32の前端部32Aとの間には、スクリュヘッド37が到達しない前方区間K2が設けられている。可動区間K1と前方区間K2を合わせた区間を拡張可動区間K3という。シリンダ本体32の拡張可動区間K3での内径D1は一定である。
【0019】
可動区間K1の後端には、シリンダ本体32の内径が可動区間K1と同一の後方区間K4が接続している。後方区間K4の後端には、シリンダ本体32の内径がX方向後方に向けて徐々に減少する遷移区間K5が接続している。遷移区間K5の後端には、シリンダ本体32の内径D2が一定の一般区間K6が接続している。
【0020】
このように、本実施形態では、シリンダ本体32の内径が拡張可動区間K3で他の区間より大きくなっている。換言すれば、シリンダ本体32は可動区間K1、好ましくは拡張可動区間K3で、一般区間K6より内径が拡張されている。従って、シリンダ本体32の可動区間K1での内径D1は、少なくとも後端部32Bでのシリンダ本体32の内径D2より大きい。一方、シリンダ本体32の外径D3は、前端部32Aから後端部32Bまでの区間で一定である。つまり、シリンダ本体32は可動区間K1、好ましくは拡張可動区間K3で、一般区間K6より肉厚tが減少している。
【0021】
後方区間K4は省略してもよく、可動区間K1の後端に遷移区間K5が接続してもよい。同様に遷移区間K5は省略してもよく、後方区間K4と一般区間K6のシリンダ本体32の内径が不連続に変化していてもよい。あるいは、後方区間K4と遷移区間K5を省略してもよく、可動区間K1と一般区間K6のシリンダ本体32の内径が不連続に変化していてもよい。
【0022】
<逆流防止部5の寸法>
図2を参照すると、逆流防止リング51の外径d1と押し金52の外径d2とピストンリング53の外径d3は、一般区間K6ないし後端部32Bでのシリンダ本体32の内径D2より大きくされている。また、スクリュヘッド37の外径d4も、一般区間K6ないし後端部32Bでのシリンダ本体32の内径D2より大きくされている。スクリュヘッド37の外径d4は、シリンダ本体32の計量部P3の内径D1に合わせて大きくしなくてもよい。
【0023】
スクリュヘッド37の外径d4を一般区間K6ないし後端部32Bでのシリンダ本体32の内径D2より大きくすることで、以下の利点が得られる。図4は本実施形態の変形例の射出シリンダ31の前方部分の拡大図を示す。スクリュヘッド37の外径d4は、一般区間K6ないし後端部32Bでのシリンダ本体32の内径D2より小さく、後述する比較例(図5参照)のスクリュヘッド37の外径d4と同じである。
【0024】
図2図4を参照すると、変形例では逆流防止リング51がスクリュヘッド37と接触するように、逆流防止リング51の径方向の厚さを本実施形態より増やす必要がある。この結果、スクリュヘッド37と逆流防止リング51との間の環状の流路43の中心線の直径は本実施形態の方が変形例より大きくなる。スクリュヘッド37と逆流防止リング51との間のギャップGが同じとすると、流路43の断面積も本実施形態の方が変形例より大きくなる。このため、計量工程において溶融金属の供給効率(流量)が増加し、増大した前方空間40に十分な量の溶融金属を充填することができる。なお、このように、スクリュヘッド37の外径d4はシリンダ本体32の内径D2より大きくすることが好ましいものの、スクリュヘッド37のそれ以外の形状や寸法は特に限定されない。
【0025】
なお、逆流防止部5の構成は上記のものに限定されない。ボールチェックバルブを用いた構成、メカバルブを用いた構成も適用可能である。これらの逆流防止部を用いた場合も、シリンダ本体32の計量部P3の内径D1に合わせて外径を大きくすることが好ましい。
【0026】
<本実施形態の利点>
このようにシリンダ本体32の計量部P3の内径D1を拡張することで、計量される溶融金属の容積と、1回の射出サイクルで射出可能な溶融金属の容積を増やすことができる。従って、本実施形態の射出成形機1によれば、大型の成形品の製造が可能となる。この点を比較例と対比してより具体的に説明する。図5は比較例の射出シリンダ31(図1参照)の前方部分の拡大図を示している。シリンダ本体32の内径D2と外径D3は、第1の実施形態の射出シリンダ31の一般区間K6と同じである。すなわち、前方空間40の断面積A2は本実施形態の断面積A1(図2参照)より小さい。
【0027】
表1には、実施例と比較例の射出量及び射出率(単位時間当たりに射出ノズル38から射出される金属材料の容積)の比較を示す。射出率は、前方空間40の断面積Sと溶融金属の射出速度Vとの積S×Vで求められる。射出ストロークと射出速度は実施例と比較例で同じとした。従って、断面積Sが大きいほど射出率は増加する。実施例は第1の実施形態と同じ構成を有し、拡張可動区間K3と後方区間K4の内径を比較例の100mmから110mmに増やしている。実施例は比較例に対して射出量が約21%、射出率が約20%増加した。このように、本実施形態では断面積A1が比較例の断面積A2より大きいため、より多くの金属材料を射出することができる。
【0028】
【表1】
【0029】
図5に示す既存の射出成形機のシリンダ本体32の肉厚に余裕がある場合、シリンダ本体32の内面を切削し、本実施形態のような形状に加工することも可能である。この場合、交換対象となる射出シリンダ31の構成部品は、スクリュヘッド37と、逆流防止部5と、ピストンリング53と、押し金52を含む。
【0030】
1回の成形サイクルで射出される溶融金属の量を増やすためには、射出シリンダ31の全体の内径を一律に増加することも考えられる。しかし、この方法では射出シリンダ31、ひいては射出成形機1が大型化し、コストの増加につながる可能性がある。本実施形態では射出シリンダ31の外形を変えることなく射出される溶融金属の量を増やすことができる。
【0031】
また、型締め力は型締シリンダの能力で決まり、射出シリンダ31の大きさや形状とは無関係である。このため、金型のキャビティM3に掛かる内圧が同じで金型が大型化すると、可動金型M2と固定金型M1との間のパーティングラインに生じる型締圧力が低下し、成形品のバリが生じやすくなる。一方、本実施形態と比較例では射出シリンダ31の押し込み力は同じであるので、断面積A1が大きい本実施形態では前方空間40の圧力が低下し、射出圧力が低下する。このため金型のキャビティM3の内圧も低下しバリが発生しにくくなる。つまり、本実施形態ではバリの発生を抑制する観点からも、射出シリンダ31の全体の内径を一律に増加させる構成に対して、より成形品の大型化を実現しやすい。
【0032】
<成形サイクルの制御>
以下の成形サイクルの制御の説明では、図2、3についても適宜参照する。1回の成形サイクルで射出される溶融金属の量を増やす場合、圧縮部P2で作る溶融金属が、スクリュヘッド37の前方空間40に、必要な量だけ確実に供給されることが望ましい。このため、本実施形態の射出成形機1の制御装置35は、各成形サイクルで、計量工程においてスクリュ33を後退させる工程を2回に分けて行うように駆動機構34を制御することができる。
【0033】
図6は、1回の成形サイクルの主要工程を示している。前サイクルの成形品を取り出した後(ステップS7)、次サイクルの成形のために金型に離型剤を噴霧し(ステップS1)、金型を閉じる(ステップS2)。ここで一度スクリュ33を後退させて計量工程を行い(ステップS3)、その後スクリュ33を前進させて射出工程を行う(ステップS4)。射出工程が終了するとスクリュ33を再び後退させて計量工程を行う(ステップS5)。成形品の冷却が完了すると型を開き(ステップS6)、成形品を取り出す(ステップS7)。
【0034】
つまり、射出を基準にした場合、射出の直後に次サイクルの射出のための1回目の計量工程が行われ(ステップS5の第1回計量)、次サイクルの射出の直前に2回目の計量工程が行われる(ステップS3の第2回計量)。
【0035】
計量工程は射出後の保圧工程(図示せず)が終了した後に行うのが一般的である。通常は、必要な量の溶融金属を、1回の計量工程でスクリュヘッド37の前方空間40に供給することができる。しかし、本実施形態では溶融金属の射出量が増えるため、1回の計量工程だけでは必要な量の溶融金属を供給できない可能性がある。十分に溶融しない状態の金属は単位重量当たりの容積が大きい。そのため、このような金属が圧縮部P2に供給されると、スクリュ33の駆動トルクの増加、スクリュ33の停止などが生じ、計量が不安定になる可能性がある。
【0036】
そこで、1回目の計量工程ではスクリュ33を途中位置まで後退させて部分的な計量を行い、2回目の計量工程でスクリュ33を最終的な位置、すなわち射出量に応じた位置まで後退させる。こうすることによって、1回目の計量工程での溶融金属の供給量が少なくて済むため、十分に溶融した溶融金属が供給不足となる可能性が低下する。また、1回目の計量工程と2回目の計量工程との間にはある程度の時間があるため、この間に新たな溶融金属が供給可能となる。
【0037】
1回目の計量工程と2回目の計量工程での溶融金属供給量の比率、あるいはスクリュ33の後退距離の比率は、溶融金属の供給能力や、1回目の計量工程と2回目の計量工程の時間差などによって適宜設定可能である。なお、各成形サイクルで、スクリュ33を後退させる工程は2回に限定されず、3回以上でもよい。
【0038】
(第2の実施形態)
図7は第2の実施形態の射出シリンダ31の前方部分の拡大図を示している。説明を省略した構成及び効果は第1の実施形態と同様である。可動区間K1でのシリンダ本体32の外径D4は、一般区間K6ないし後端部32Bでのシリンダ本体32の外径D3より大きい。すなわち、本実施形態では、可動区間K1でシリンダ本体32の内径D1を増やしているのに伴い、外径D4を増やしている。シリンダ本体32の肉厚tはX方向に一定でもよいが、可動区間K1と一般区間K6で異なっていてもよい。一般に可動区間K1のシリンダ本体32の内圧は一般区間K6より高くなるため、可動区間K1のシリンダ本体32の肉厚を、一般区間K6のシリンダ本体32の肉厚より大きくしてもよい。
【0039】
(第3の実施形態)
図8は、第3の実施形態に係る射出成形機1の概略正面図を示している。説明を省略した構成及び効果は第1の実施形態と同様である。本実施形態の射出シリンダ31は分割式の射出シリンダである。シリンダ本体32は、射出方向Xに関し前方に位置する前方部41と、射出方向Xに関し後方に位置する後方部42と、を有している。前方部41と後方部42は互いに独立した部材である。シリンダ本体32は逆流防止リング51のピストンリング53の摺動によって内面が摩耗しやすいため、分割式とすることで前方部41だけを交換することができる。
【0040】
拡張可動区間K3と後方区間K4と遷移区間K5は前方部41に含まれ、一般区間K6の一部も前方部41に含まれる。後方部42は一般区間K6だけを含んでいる。前方部41の内径D1は後方部42の内径D2より大きい。このような構成によれば、第1の実施形態と同じ効果を奏する。本実施形態は特に既存の射出シリンダの改造に有利である。既存の射出シリンダが分割式である場合、前方部だけを本実施形態の前方部41に交換することができる。交換対象となる分割式射出シリンダ31の構成部品は、シリンダ本体32の前方部41のほか、スクリュヘッド37と、逆流防止部5と、ピストンリング53と、押し金52を含む。
【0041】
(第4の実施形態)
図9は、第4の実施形態の射出シリンダ31の前方部分の拡大図を示す、図3と同様の図である。スクリュ33は逆流防止部5の後方で拡径されている。すなわち、スクリュ33は、スクリュヘッド33Aと拡径部33Bと縮径部33Cとを有している。拡径部33Bは、射出方向Xに関しスクリュヘッド33Aの後方に位置し、スクリュヘッド33Aの逆流防止リング51と対向する部分の外径d11より大きな外径d12を有する部位である。縮径部33Cは、射出方向Xに関し拡径部33Bの後方に位置し、外径d11より大きく拡径部33Bの外径d12より小さな外径d13を有する部位である。
【0042】
第1の実施形態の場合、スクリュ33の径が一定であるため、逆流防止部5の後方でシリンダ本体32とスクリュ33の径方向のギャップが大きくなる傾向がある。本実施形態では逆流防止部5の後方を拡径することで、後方区間K4でのギャップG1と一般区間K6のギャップG2の差が小さくなり、溶融金属の流動がよりスムーズになる。
【0043】
(付記)本明細書は以下の開示を含む。
[構成1]
射出成形機の射出シリンダであって、
シリンダ本体と、
前記シリンダ本体に収容され、先端にスクリュヘッドを備えるスクリュと、
前記シリンダ本体に収容され、射出される材料の逆流を防止する逆流防止部と、を有し、
前記スクリュと前記逆流防止部は、前記シリンダ本体に対し前記材料の射出方向に相対変位可能であり、
前記シリンダ本体は、前記スクリュヘッド及び前記逆流防止部が前記シリンダ本体に対し相対変位可能な可動区間を有し、前記シリンダ本体の前記可動区間での内径が、前記シリンダ本体の前記射出方向に関する後端部での内径より大きい、射出シリンダ。
[構成2]
前記逆流防止部は、前記射出方向に関し前記スクリュヘッドの後方に位置する逆流防止リングと、前記射出方向に関し前記逆流防止リングの後方に位置し、前記逆流防止リングの後方への移動を規制する押し金と、を有し、
前記逆流防止リングと前記押し金の外径は、前記シリンダ本体の前記後端部での内径より大きい、構成1に記載の射出シリンダ。
[構成3]
前記スクリュヘッドの外径は、前記シリンダ本体の前記後端部での内径より大きい、構成1または2に記載の射出シリンダ。
[構成4]
前記シリンダ本体の外径は、前記シリンダ本体の前端部から前記後端部までの区間で一定である、構成1から3のいずれか1項に記載の射出シリンダ。
[構成5]
前記シリンダ本体の前記可動区間での外径は、前記シリンダ本体の前記後端部での外径より大きい、構成1から3のいずれか1項に記載の射出シリンダ。
[構成6]
前記シリンダ本体は、前記射出方向に関し前方に位置し前記可動区間を含む前方部と、前記射出方向に関し後方に位置し前記前方部から独立した部材として構成された後方部と、を有する、構成1から5のいずれか1項に記載の射出シリンダ。
[構成7]
前記スクリュは、
前記スクリュヘッドが取り付けられ前記逆流防止部と対向する先端部と、
前記射出方向に関し前記先端部の後方に位置し、前記先端部より外径の大きい拡径部と、
前記射出方向に関し前記拡径部の後方に位置し、前記拡径部より外径の小さい縮径部と、を有する、構成1から6のいずれか1項に記載の射出シリンダ。
[構成8]
構成1から7のいずれか1項に記載の射出シリンダを有する射出成形機。
[構成9]
前記射出成形機は金属射出成形機である、構成8に記載の射出成形機。
[構成10]
前記スクリュを前記スクリュの軸方向に前後移動させる駆動機構と、
前記駆動機構の制御装置と、を有し、
前記制御装置は、各成形サイクルで、前記スクリュを後退させる工程を複数回に分けて行うように前記駆動機構を制御する、構成8または9に記載の射出成形機。
[構成11]
射出成形機の分割式射出シリンダの構成部品であって、
前記分割式射出シリンダは、シリンダ本体と、
前記シリンダ本体に収容され、先端にスクリュヘッドを備えるスクリュと、
前記シリンダ本体に収容され、射出される材料の逆流を防止する逆流防止部と、を有し、
前記スクリュと前記逆流防止部は、前記シリンダ本体に対し前記材料の射出方向に相対変位可能であり、
前記シリンダ本体は、前記スクリュヘッド及び前記逆流防止部が前記シリンダ本体に対し相対変位可能な可動区間を有し、前記シリンダ本体の前記可動区間での内径が、前記シリンダ本体の前記射出方向に関する後端部での内径より大きく、
前記シリンダ本体は、前記射出方向に関し前方に位置し前記可動区間を含む前方部と、前記射出方向に関し後方に位置し前記前方部から独立した部材として構成された後方部と、を有し、
前記構成部品は、前記シリンダ本体の前記前方部と、前記スクリュヘッドと、前記逆流防止部と、を含む、分割式射出シリンダの構成部品。
【符号の説明】
【0044】
1 射出成形機
5 逆流防止部
31 射出シリンダ
32 シリンダ本体
33 スクリュ
33A 先端部
33B 拡径部
33C 縮径部
34 駆動機構
35 制御装置
37 スクリュヘッド
41 前方部
42 後方部
51 逆流防止リング
52 押し金
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9