(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130101
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】クリップ取付装置
(51)【国際特許分類】
B23P 19/02 20060101AFI20240920BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B23P19/02 D
B60R13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039622
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柘植 剛
(72)【発明者】
【氏名】岡本 起幸
【テーマコード(参考)】
3C030
3D023
【Fターム(参考)】
3C030BB15
3C030BC01
3C030BC19
3C030CC06
3D023BA01
3D023BB01
3D023BE36
(57)【要約】
【課題】高価な設備を必要とせず、必要な個数のクリップを部品に対して誤りなく軽作業で取付けることができるクリップ取付装置を提供する。
【解決手段】クリップ取付装置1は、クリップ2を1つずつ必要数量分だけ供給可能なパーツフィーダ4及び供給レール部5と、内部にクリップ2を積み重ねた状態で保持し下側から圧縮エアを供給可能なセット筒部6と、セット筒部6の上端部側に一端部側が連結可能なホース部7と、ホース部7の他端部側に連結され圧縮エアの供給によりホース部7を通って送られたクリップ2を保持して上方から1つずつ内装内張材3に取付け可能なハンド操作部8と、を有している。ハンド操作部8は、内部にクリップ2を保持可能な把持部81と、先頭のクリップ2を係止させた状態で径方向に通すことが可能な切欠部83cを有する切欠円板部83と、切欠円板部83と把持部81を離隔状態で連結する連結部84と、を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材を第2部材に対して取付けるクリップを前記第1部材の所定位置に取付けるクリップ取付装置であって、
前記クリップは、前記第1部材に対して嵌合する第1嵌合部と、前記第2部材に対して嵌合する第2嵌合部と、前記第1嵌合部と前記第2嵌合部との間に配設されるフランジ部と、を有しており、
前記クリップを前記第2嵌合部を上にして横一列に並べて供給端部から列の先頭から1つずつ前記第1部材の必要数量分だけ供給可能なフィーダと、該フィーダの前記供給端部から供給された前記クリップを1つずつ順に落とし入れて積み重ねた状態で保持する上下方向に延び下端部側から圧縮エアを供給可能なセット筒部と、該セット筒部の上端部側に対して一端部側が連結可能で内径が前記フランジ部の外径よりわずかに大きい可撓性のあるホース部と、該ホース部の他端部側に連結された略筒状で前記ホース部の前記一端部側が前記セット筒部の前記上端部側に連結され前記下端部側から圧縮エアが供給されたとき前記ホース部を通って供給された前記クリップを保持して上方の前記クリップから1つずつ前記第1嵌合部を前記第1部材の被嵌合部に嵌合させて取付け可能なハンド操作部と、を有しており、
該ハンド操作部は、前記ホース部側の円筒状の把持部と、該把持部の前記ホース部と反対側の先端部の側に配置された保持部と、を有し、
前記把持部は、内側に前記クリップを前記先端部の方向に前記第2嵌合部を向けた状態で積み重ねて保持することができるものであり、
前記保持部は、前記把持部から圧縮エアにより送り出された前記クリップの前記フランジ部を係止させて移動を止めた状態で径方向外側に前記第2嵌合部を通すことが可能な切欠部を有する切欠円板部と、該切欠円板部と前記把持部の前記先端部とを連結し前記切欠部から前記クリップの前記第2嵌合部を径方向外側に通したとき前記フランジ部と前記第1嵌合部とを径方向外側に通すことが可能に前記切欠円板部と前記把持部とを連結する連結部と、を有しているクリップ取付装置。
【請求項2】
請求項1において、前記切欠円板部の内径部分には前記把持部の側から前記把持部と反対側に向かうにつれて縮径するテーパ部が形成されているクリップ取付装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、前記切欠円板部の前記把持部と反対側の面における前記切欠部の両側部分には、前記切欠部における径方向外側に向かうにつれて軸方向の厚みが薄くなる面取面部が形成されているクリップ取付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップ取付装置に関する。詳しくは、必要な個数のクリップを部品に対して誤りなく軽作業で取付けることができるクリップ取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドアトリム等の自動車内装内張材をボデーに取付けるにあたり樹脂製のクリップが用いられることがある。自動車内装内張材をボデーに取付けるには、予め自動車内装内張材の適所にクリップを取付けておき、このクリップをボデー側に係止することにより行われる。特許文献1に記載されたクリップ取付装置においては、予めドアトリムの適所にクリップを取付けておくのを次のように行う。まず、クリップ供給機上でロボットアームによって移動させるアタッチメントの保持筒にクリップを保持させる。次にこの状態のアタッチメントをロボットアームによってドアトリム上に移動させる。そして、ロボットアームによってクリップを水平移動させ、ドアトリムのクリップ座に対してクリップを取付けている。また、作業者が手でクリップを1つずつ自動車内装内張材の適所に取付けていく手作業による取付方法が採られることもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に記載されたクリップ取付装置においては、ロボット等の高価な設備が必要であるものであった。また、手作業による取付方法においては、作業者の手に負担がかかるとともに、取付漏れが生じる可能性があるという問題があった。
【0005】
このような問題に鑑み本発明の課題は、高価な設備を必要とせず、必要な個数のクリップを部品に対して誤りなく軽作業で取付けることができるクリップ取付装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、第1部材を第2部材に対して取付けるクリップを前記第1部材の所定位置に取付けるクリップ取付装置であって、前記クリップは、前記第1部材に対して嵌合する第1嵌合部と、前記第2部材に対して嵌合する第2嵌合部と、前記第1嵌合部と前記第2嵌合部との間に配設されるフランジ部と、を有しており、前記クリップを前記第2嵌合部を上にして横一列に並べて供給端部から列の先頭から1つずつ前記第1部材の必要数量分だけ供給可能なフィーダと、該フィーダの前記供給端部から供給された前記クリップを1つずつ順に落とし入れて積み重ねた状態で保持する上下方向に延び下端部側から圧縮エアを供給可能なセット筒部と、該セット筒部の上端部側に対して一端部側が連結可能で内径が前記フランジ部の外径よりわずかに大きい可撓性のあるホース部と、該ホース部の他端部側に連結された略筒状で前記ホース部の前記一端部側が前記セット筒部の前記上端部側に連結され前記下端部側から圧縮エアが供給されたとき前記ホース部を通って供給された前記クリップを保持して上方の前記クリップから1つずつ前記第1嵌合部を前記第1部材の被嵌合部に嵌合させて取付け可能なハンド操作部と、を有しており、該ハンド操作部は、前記ホース部側の円筒状の把持部と、該把持部の前記ホース部と反対側の先端部の側に配置された保持部と、を有し、前記把持部は、内側に前記クリップを前記先端部の方向に前記第2嵌合部を向けた状態で積み重ねて保持することができるものであり、前記保持部は、前記把持部から圧縮エアにより送り出された前記クリップの前記フランジ部を係止させて移動を止めた状態で径方向外側に前記第2嵌合部を通すことが可能な切欠部を有する切欠円板部と、該切欠円板部と前記把持部の前記先端部とを連結し前記切欠部から前記クリップの前記第2嵌合部を径方向外側に通したとき前記フランジ部と前記第1嵌合部とを径方向外側に通すことが可能に前記切欠円板部と前記把持部とを連結する連結部と、を有していることを特徴とする。
【0007】
第1発明によれば、ハンド操作部を把持し操作してクリップの第1嵌合部を第1部材の被嵌合部に取付けることができるので、ロボット等の高価な設備を必要としない。また、フィーダによって第1部材の必要数量分だけのクリップをセット筒部に供給し、ホース部を通じてハンド操作部に送ることができるので誤ってクリップの取付を忘れた被係合部の発生を抑制できる。さらに、クリップをハンド操作部を操作して第1部材に取付けることができるのでクリップを直接手で押圧して被嵌合部に第1嵌合部を嵌合させるのに比べて作業者の手にかかる負担を少なくすることができる。具体的には、圧縮エアが把持部に供給され把持部の内側に積み重ねて保持されたクリップの先頭の1つが、切欠円板部にフランジ部が係止して保持される。この状態で、保持されたクリップの第1嵌合部をハンド操作部を径方向外側に向けて第1部材の被嵌合部に押し付けることにより第1部材の被嵌合部に嵌合させ、その状態からハンド操作部を押し付け方向と反対の方向に移動させることによって、クリップを第1部材に取付けることができる。これを把持部の内側に保持されたクリップの1つずつについて行うことによって必要数量分のクリップを誤りなく第1部材に取付けることができる。
【0008】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記切欠円板部の内径部分には前記把持部の側から前記把持部と反対側に向かうにつれて縮径するテーパ部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
第2発明によれば、把持部の内側に積み重ねて保持されたクリップが圧縮エアの供給によって保持部の側に押圧されたとき一番先頭のクリップの中心軸の伸びる方向がハンド操作部の中心軸の伸びる方向からずれていてもテーパ部に第1嵌合部の先端部分が当接して両者の中心軸が一致するように移動するためクリップの傾きが修正される。これによって、ハンド操作部の操作によるクリップの第1部材への取付が容易となる。
【0010】
本発明の第3発明は、上記第1発明又は上記第2発明において、前記切欠円板部の前記把持部と反対側の面における前記切欠部の両側部分には、前記切欠部における径方向外側に向かうにつれて軸方向の厚みが薄くなる面取面部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
第3発明によれば、把持部の内側に積み重ねて保持されたクリップが圧縮エアの供給によって保持部の側に押圧されたとき一番先頭のクリップの中心軸の伸びる方向がハンド操作部の中心軸の伸びる方向から切欠部の径方向外側に傾いていたとき手で両者の中心軸の伸びる方向を合わせやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態のクリップ取付装置の斜視図である。
【
図3】第1部材に相当する内装内張材の斜視図である。
【
図4】クリップ取付装置のハンドル操作部の斜視図である。
【
図5】ハンドル操作部の内部にクリップが積み重ねて保持された状態を示す図である。
【
図6】ハンドル操作部における切欠円板部の斜視図である。
【
図7】ハンドル操作部における切欠円板部の平面図である。
【
図8】
図7におけるVIII-VIII矢視線断面図である。
【
図9】
図7におけるIX-IX矢視線断面図である。
【
図11】クリップを内装内張材に取付ける工程を説明する図である。
【
図12】クリップを内装内張材に取付ける工程を説明する図である。
【
図13】クリップを内装内張材に取付ける工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1~
図13に基づき、本発明の一実施形態のクリップ取付装置1について説明する。クリップ取付装置1は、
図2に示すクリップ2を
図3に示す内装内張材3の所定箇所に取付けるための装置である。各図において上下の方向を矢印によって示す。
【0014】
クリップ取付装置1の説明に先立って、クリップ2と、クリップ2を取付ける内装内張材3について説明する。
【0015】
図2に示すように、クリップ2は、樹脂製の部品で、内装内張材3に取付けられる第1嵌合部21と、自動車ボデー(図示せず)に取付けられる第2嵌合部22と、第1嵌合部21と第2嵌合部22との間に配設されるフランジ部23と、を有している。第1嵌合部21は、上側の円盤状の上鍔部21aと下側の円盤状の下鍔部21cが円柱状の軸部21bで中心軸2Aを一致させて連結されて形成されている。第2嵌合部22は、蕾状の形状をしており、フランジ部23を介して第1嵌合部21に連結されている。フランジ部23は、上方に向かって開く傘の開口側の形状をしておりその外径は、上鍔部21aの外径より大きいものとされている。第1嵌合部21、フランジ部23、第2嵌合部22は、中心軸2Aを一致させて連結されている。第2嵌合部22が、自動車ボデーに設けられた孔(図示せず)に挿入されたとき、フランジ部23は孔の外周縁部に当接する。ここで、内装内張材3と自動車ボデーが、それぞれ特許請求の範囲の「第1部材」と「第2部材」に相当する。
【0016】
図3に示すように、内装内張材3は、樹脂製の部材で自動車ボデーに対し9つのクリップ2で取付けられる。クリップ2は、内装内張材3の外周縁部から外側に向かって張り出して形成された各クリップ取付部31に取付けられる。具体的には、
図3における1つのクリップ取付部31において代表して示すように、クリップ取付部31には、クリップ2の軸部21bを嵌め込むための取付孔31aと、取付孔31aへ軸部21bを案内するためのガイド溝31bと、が形成されている。クリップ取付部31の厚みは、クリップ2の上鍔部21aと下鍔部21cの間の上下方向の寸法、すなわち軸部21bの上下方向寸法よりわずかに小さいものに設定されている。ガイド溝31bの幅寸法は、クリップ2の軸部21bの外径よりわずかに小さい寸法とされている。また、取付孔31aはクリップ2の軸部21bが遊嵌する大きさに設定されている。したがって、クリップ2が、クリップ取付部31に対して取付けられるとき、軸部21bはガイド溝31bを通るとき径方向に圧縮変形させられ取付孔31aに至って変形が解除される。これによって、クリップ2をクリップ取付部31に取付ける際、軸部21bを圧縮変形させるだけの押圧力が必要とされる。ここで、クリップ取付部31が、特許請求の範囲の「被嵌合部」に相当する。
【0017】
図1に示すように、クリップ取付装置1は、パーツフィーダ4と、供給レール部5と、セット筒部6と、ホース部7と、ハンド操作部8と、圧縮エア供給源9と、制御装置10と、を有する。
【0018】
パーツフィーダ4は、内部に収容した多数のクリップ2を1つずつ第2嵌合部22が上方に来るように向きをそろえて供給レール部5に供給する装置である。常時作動して供給レール部5にクリップ2を送り出し続けている。ここで、パーツフィーダ4と供給レール部5とが、特許請求の範囲の「フィーダ」に相当する。
【0019】
供給レール部5は、横断面が上方に開口を有する略C字状をしており、長手方向に延びる底面部51と、底面部51の両端部から上方に向かって延びる一対の側面部52と、側面部52の上端部から内側に向かって延びる一対の上面部53と、を有する。一対の上面部53の間には、底面部51と平行に長手方向に延びるスリット54が形成されている。一対の側面部52の間の寸法は、クリップ2の下鍔部21cの直径より若干大きく設定され、上面部53と底面部51の間の寸法は、クリップ2における上鍔部21aの下面から下鍔部21cの下面までの寸法より若干大きく設定され、スリット54の幅はクリップ2の軸部21bの直径より若干大きく設定されている。これによって、クリップ2は軸部21bをスリット54に通し、上鍔部21aの下面を一対の上面部53の上面に当接させた状態で、供給レール部5に対して長手方向に摺動可能に保持されるようになっている。供給レール部5の長手方向中央部には、一対の上面部53の上面に当接して長手方向に対して垂直な方向に移動可能なストッパ板55が配設されている。ストッパ板55は、上面部53に対して垂直に上方に向かって延びるように配置され、制御装置10によって制御されるエアシリンダ56によって上面部53の上面に当接した閉鎖状態と、上面部53の上面から退避した開放状態と、を採れるようになっている。ストッパ板55を閉鎖状態とすると、クリップ2の送り出しが止められる。そして、ストッパ板55を開放状態とすると、クリップ2の送り出しが許容される。供給レール部5は、パーツフィーダ4と連結されることによりパーツフィーダ4の振動が伝達されており、ストッパ板55よりセット筒部6側(パーツフィーダ4と反対側)の供給レール部5にあるクリップ2もセット筒部6側に送り出されるようになっている。ストッパ板55とエアシリンダ56との間には、赤外線センサ57が配設されている。ストッパ板55が開放状態とされたのち、赤外線センサ57は、供給レール部5をセット筒部6の方向に向かって流れるクリップ2の数量をカウントし制御装置10にその信号を送る。そして、所定の数量(今回は9つ)が流れたとき制御装置10はエアシリンダ56を作動させてストッパ板55を閉鎖状態とする。これによって、9つのクリップ2がセット筒部6に送られる。
【0020】
図1及び
図10に示すように、セット筒部6は、円筒状をしており、内径がクリップ2のフランジ部23の直径より若干大きく設定されている。上端部の供給レール部5の側に半円弧状に切り欠かれた切欠部61が設けられ、その上面部に供給レール部5の供給端部58が当接している。切欠部61の上下方向の寸法は、供給レール部5の側面部52の上下方向の寸法と略同一に設定されており、切欠部61の供給レール部5と反対側には、半円弧状の立壁部62が形成されている。供給レール部5の供給端部58から送り出されたクリップ2は1つずつ立壁部62に当接してセット筒部6の中に落とし込まれ重ね合わされていく。セット筒部6の上下方向の寸法は、9つのクリップ2を中心軸2A方向に重ね合わせた寸法より若干大きく設定されている。セット筒部6の下端部側には、圧縮エア供給源9からの配管91が開閉バルブ92を介して連結されている。
【0021】
図1及び
図10に示すように、ホース部7は、セット筒部6の上端部に対して係脱可能に上下動する連結管部71と、一端部が連結管部71の上端部に連結され他端部がハンド操作部8の下端部に連結された可撓性のあるホース72と、を有する。連結管部71は、セット筒部6と同一の外径面及び内径面を有する円筒状とされている。連結管部71の下端部は、セット筒部6の上端部に対応して半円弧状に切り欠かかれた形状とされ、セット筒部6の上端部に対して連結管部71の下端部を同軸で当接させたとき、連結管部71とセット筒部6は外径面、内径面とも連続するようになっている。連結管部71には、ブラケット73が取付けられており、制御装置10からの信号によってエアシリンダ74を作動させてブラケット73を介して連結管部71を上下に移動させることができるようになっている。連結管部71の上下動は、セット筒部6の上端部に対して連結管部71の下端部が同軸で当接した連結状態と、セット筒部6の上端部に対して連結管部71の下端部が上方に少なくともクリップ2の中心軸2Aが供給レール部5からセット筒部6の中心軸6Aに一致するまでクリップ2を中心軸6Aの方向に移動させることができるだけ離隔した離隔状態と、の間で行われる。ホース72は、内径がセット筒部6の内径と略同一で、連結管部71から送り出されたクリップ2を通してハンド操作部8に供給できるようになっている。
【0022】
図1、
図4及び
図5に示すように、ハンド操作部8は、円筒状の把持部81と、把持部81の上端部側に配設された1つのクリップ2を内装内張材3のクリップ取付部31に取り付け可能に保持する保持部82と、を有する。把持部81は、中心軸を中心軸81Aとする内径がセット筒部6の内径と略同一の円筒状をしており、
図5に示すように内部に複数のクリップ2を中心軸2Aと中心軸81Aを略一致させた状態で収容できるようになっている。把持部81の下端部側は、ホース72の上端部側と連結されている。把持部81には、フック部81aが配設されており、フック部81aをフロアに対し直接又は間接に固定されたフック掛部81bに掛けることによりハンド操作部8は、中心軸81Aが上下方向に向くように保持される。ハンド操作部8がフック掛部81bに保持された状態及びフック掛部81bから外された状態は電気信号により制御装置10において把握可能とされている。
【0023】
図1、
図4及び
図5に示すように、保持部82は、切欠円板部83と、切欠円板部83を把持部81の上端部から離隔させた状態で把持部81に対して連結する連結部84と、を有している。
【0024】
図4~
図9に示すように、切欠円板部83は、概略、外径面部83bの直径が把持部81の外径と略同一で、内径面部83aの直径がクリップ2における第2嵌合部22の最大外径より若干大きく、厚みが第2嵌合部22の中心軸2A方向寸法の1/2程度とされた孔明き円板の一部を径方向に切り欠いた形状をしている。
図7に示すように、切欠円板部83は、把持部81に対して中心軸を中心軸81Aに一致させた状態で配設される。この状態で、中心軸81Aの延びる方向から見たとき、内径面部83aの半円部と、該半円部の直径に対し両端部で垂直に引いた一対の直線部と、によって形成されるU字状に中心軸81Aの延びる方向に切り欠かれて切欠部83cが形成される。切欠円板部83の下面部83eは、上面部83dに向かうにつれて縮径するテーパ面部とされている。中心軸81Aの延びる方向から見たとき、上面部83dにおける切欠部83cのU字の中心軸が伸びる方向の両側部分には、U字の開口側方向に向かうにつれて下方に向かうように面取りされた上面取面部83fが形成されている。また、中心軸81Aの延びる方向から見たとき、下面部83eにおける切欠部83cのU字の中心軸が伸びる方向の両側部分には、U字の開口側方向に向かうにつれて上方に向かうように面取りされた下面取面部83gが形成されている。ここで、内径面部83aと下面部83eが、特許請求の範囲の「内径部分」に相当する。また、下面部83eと上面取面部83fが、それぞれ特許請求の範囲の「テーパ部」と「面取面部」に相当する。
【0025】
連結部84は、切欠円板部83を把持部81の上端部から離隔させた状態で把持部81に対して連結する部材である。下面部83eの外周部分を把持部81の上端部から離隔させる寸法は、クリップ2におけるフランジ部23の上端部から下鍔部21cの下端部までの中心軸2A方向の寸法より若干大きい寸法とする。これは、切欠円板部83の下面部83eにフランジ部23を当接させ、第2嵌合部22を上面部83dの上方に突出させた状態で保持されるクリップ2を切欠部83cの開口から中心軸81Aの径方向に離脱させることができるようにするためのものである。したがって、連結部84は、クリップ2のかかる動きを阻止しないものであればその形状は問わない。本実施形態のハンド操作部8においては、内径を切欠円板部83の外径面部83bの直径とする円筒の側壁部の一部をブロック状の柱状部材で補強した形態を採っている。
【0026】
クリップ取付装置1を使用して内装内張材3の各クリップ取付部31にクリップ2を取付ける手順について説明する。
図1に示す初期状態において、ストッパ板55は閉鎖状態にあり供給レール部5からセット筒部6に向けて送り出されるクリップ2の移動を止めている。セット筒部6の中には、9つのクリップ2がそれぞれ第2嵌合部22を上にした状態で積み重ねられて収容されている。圧縮エア供給源9からの圧縮エアは開閉バルブ92が閉じられることによってセット筒部6の中に供給されていない。ホース部7の連結管部71は上昇して離隔状態にある。ハンド操作部8の把持部81の中にはクリップ2が収容されておらずフック部81aがフック掛部81bに掛けられている。
【0027】
この状態からハンド操作部8の把持部81をつかんで持ち上げフック部81aをフック掛部81bから外すと、フック掛部81bから制御装置10にフック部81aがフック掛部81bから外された信号が送られる。すると、制御装置10は、エアシリンダ74に信号を送って作動させブラケット73を介して連結管部71を下降させて連結状態とする。そして、制御装置10は、開閉バルブ92に信号を送って開き圧縮エア供給源9から圧縮エアをセット筒部6に下から供給する。これによって、セット筒部6の中の9つのクリップ2はいずれも圧縮エアに押圧されてホース部7を通ってハンド操作部8の把持部81の中に送り込まれる。そのとき、先頭のクリップ2は、第2嵌合部22を切欠円板部83の内径面部83aの中に配置され先端部側を上面部83dから上方に突出させた状態で、フランジ部23の外周縁部が下面部83eに当接することによって上方への移動が止められる。その状態で、下方から圧縮エアが印加されているので9つのクリップ2は上方に向かって押圧されながら把持部81の中に収容され積み重ねられた状態で保持されている。このとき、切欠円板部83の下面部83eは上方に向かうにつれて縮径するテーパ面部とされているのでクリップ2の中心軸2Aが中心軸81Aに対して多少傾いた状態で上方に向かって移動したとしても第2嵌合部22の先端部側が下面部83eに当接しながら上昇していくので中心軸2Aが中心軸81Aに一致するように自動的に修正される。
【0028】
図11に示すのが、9つのクリップ2は上方に向かって押圧されながら把持部81の中に収容されている状態の一番先頭のクリップ2(実線で示す)である。このとき、切欠部83cにおける径方向外側に向けて中心軸2Aが倒れるようにクリップ2が傾くことがある。このようなときにクリップ2の傾きを中心軸2Aが中心軸81Aに一致するように手で修正するのに上面取面部83fがあることが便宜である。この状態でハンド操作部8を手で操作して
図12に示すように、一番先頭のクリップ2の軸部21bをクリップ取付部31のガイド溝31bに対して押し入れる。すると、軸部21bはわずかに圧縮変形してガイド溝31bを通り取付孔31aの中に配置される。このとき、クリップ取付部31は、上鍔部21aと下鍔部21cに挟まれた状態にある。次に
図13に示すように、ハンド操作部8をクリップ取付部31からガイド溝31bの延びる方向に移動させるとクリップ取付部31に一番先頭のクリップ2が取付けられた状態となる。このとき、一番先頭のクリップ2が保持されていた場所に2番目のクリップ2が圧縮エアによる押圧力によって押し上げられ
図11に示す状態となる。こうして次々に9つのクリップ2を1つずつクリップ取付部31に取付けていく。
【0029】
9つのクリップ2をすべて取付け終わり把持部81の中が空になったらハンド操作部8のフック部81aをフック掛部81bに掛ける。すると、フック掛部81bから制御装置10にフック部81aがフック掛部81bに掛けられた信号が送られる。すると、制御装置10は、エアシリンダ74に信号を送って作動させブラケット73を介して連結管部71を上昇させて離隔状態とする。そして、制御装置10は、開閉バルブ92に信号を送って閉じ状態とし圧縮エア供給源9からセット筒部6への圧縮エアの供給を止める。さらに、制御装置10は、エアシリンダ56に信号を送って作動させストッパ板55を開放状態とする。これによって、パーツフィーダ4と供給レール部5は、クリップ2をセット筒部6に向け赤外線センサ57で数量をカウントしながら送り出しセット筒部6の中に1つずつ落とし入れていく。赤外線センサ57からのカウント信号が9つとなったとき制御装置10は、エアシリンダ56に信号を送って作動させストッパ板55を閉鎖状態とする。これで、初期状態に戻りここまでの作動を繰り返すことにより各内装内張材3に9つずつのクリップ2を取付けていく。
【0030】
以上のように構成される本実施形態は、以下のような作用効果を奏する。クリップ取付装置1は、作業者がハンド操作部8を把持し操作してクリップ2の第1嵌合部21を内装内張材3のクリップ取付部31に取付けることができるので、ロボット等の高価な設備を必要としない。また、パーツフィーダ4と供給レール部5によって内装内張材3の必要数量分だけのクリップ2をセット筒部6に供給し、ホース部7を通じてハンド操作部8に送ることができるので誤ってクリップ2の取付を忘れたクリップ取付部31の発生を抑制できる。さらに、クリップ2をハンド操作部8を操作して内装内張材3に取付けることができるのでクリップ2を作業者が直接手で押圧してクリップ取付部31に第1嵌合部21を嵌合させるのに比べて作業者の手にかかる負担を少なくすることができる。
【0031】
また、圧縮エアが圧縮エア供給源9から把持部81に供給され把持部81の内側に積み重ねて保持されたクリップ2の先端部の側の1つを、切欠円板部83の下側(把持部81の側)にフランジ部23が係止して保持された状態で、第1嵌合部21をハンド操作部8を径方向外側に向けて内装内張材3のクリップ取付部31に押し付けることによりクリップ取付部31に嵌合させる。この状態からハンド操作部8をガイド溝31bの延びる方向に移動させることによって、クリップ2を内装内張材3に取付けることができる。これを把持部81の内側に保持されたクリップ2の1つずつについて行うことによって必要数量分のクリップ2を内装内張材3に取付けることができる。
【0032】
さらに、把持部81の内側に積み重ねて保持されたクリップ2が圧縮エアの供給によって保持部82の側に押圧されたとき一番先頭のクリップ2の中心軸2Aの伸びる方向がハンド操作部8の中心軸81Aの伸びる方向からずれていても下面部83eに第1嵌合部21の先端部分が当接して移動するため両者の中心軸が一致するようにクリップ2の傾きが修正される。これによって、ハンド操作部8の操作によるクリップ2の内装内張材3への取付が容易となる。
【0033】
加えて、切欠円板部83の上面取面部83fによって、把持部81の内側に積み重ねて保持されたクリップ2が圧縮エアの供給によって保持部82の側に押圧されたとき一番先頭のクリップ2の中心軸2Aの伸びる方向がハンド操作部8の中心軸81Aの伸びる方向から切欠部83cの側に傾いていたとき手で両者の中心軸の伸びる方向を合わせやすくなる。
【0034】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、上記実施形態においては、クリップ2は、内装内張材3を自動車ボデーに対して取付けるものとして構成したが、内装内張材3を他の内装内張材に対して取付けるものであってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 クリップ取付装置
2 クリップ
3 内装内張材(第1部材)
4 パーツフィーダ(フィーダ)
5 供給レール部(フィーダ)
6 セット筒部
7 ホース部
8 ハンド操作部
9 圧縮エア供給源
10 制御装置
21 第1嵌合部
22 第2嵌合部
23 フランジ部
31 クリップ取付部(被嵌合部)
58 供給端部
71 連結管部
72 ホース
81 把持部
82 保持部
83 切欠円板部
83a 内径面部(内径部分)
83c 切欠部
83e 下面部(内径部分、テーパ部)
83f 上面取面部(面取面部)
84 連結部