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特開2024-130104合成樹脂製容器蓋及びこれと容器との組み合わせ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130104
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】合成樹脂製容器蓋及びこれと容器との組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/34 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B65D41/34 116
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039625
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】丸山 有友
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA12
3E084AA22
3E084AA25
3E084AA32
3E084BA01
3E084CA01
3E084CC04
3E084CC05
3E084DA01
3E084DB03
3E084DB05
3E084DB12
3E084DC04
3E084DC05
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084GB08
3E084HB02
3E084HD03
3E084HD04
3E084KA13
(57)【要約】
【課題】成形型からの離脱の際及び口頸部への装着の際に周方向破断ラインが破断せしめられることなく、また口頸部を開封する際に所謂すっぽ抜けが防止されるにも拘らず、口頸部の外周面に作用せしめられた洗浄液の流下は許容され、それ故にタンパーエビデント裾部の外周面に洗浄液が付着し残留することが充分確実に回避される、新規の合成樹脂製容器蓋、またかかる合成樹脂製容器蓋と容器の組み合わせを提供すること。
【解決手段】タンパーエビデント裾部20の内周面の上端部において周方向に連続して延在する環状面34に上下方向に延びる溝36を設け、容器の口頸部に容器蓋を装着した状態において、溝36の上端を係止あご部46の最大外径の上下方向位置よりも上方に下端を係止あご部46の最大外径の上下方向位置よりも下方に夫々位置させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形天面壁と該天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁とを具備し、該スカート壁には周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個のスリットと該スリット間に存在する複数個の橋絡部とから構成された周方向に延びる破断ラインが形成されており、該スカート壁は該破断ラインより上方の主部と該破断ラインよりも下方のタンパーエビデント裾部とに区画されており、該主部の内周面には雌螺条が形成され、該タンパーエビデント裾部の内周面には周方向に間隔をおいて複数個の係止突起が配設されている合成樹脂製容器蓋において、
該タンパーエビデント裾部の内周面には更に、下方に向かって内径が漸次低減して該係止突起の上面に接続するステップ部と、該ステップ部の上端から該タンパーエビデント裾部の上端まで周方向に連続して延在する環状面と、該環状面の下端を超えて下方に延びる溝とが存在する、ことを特徴とする合成樹脂製容器蓋。
【請求項2】
該溝は該環状面の上端部から下方に延びている、請求項1に記載の容器蓋。
【請求項3】
該溝は該係止突起の上面高さ位置まで延びている、請求項1に記載の容器蓋。
【請求項4】
該溝は周方向に隣接する2つの該係止突起の間に形成されている、請求項1に記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項5】
該溝の周方向両端部は周方向に隣接する2つの該係止突起の各々の隣接する周方向端部と周方向において整合する、請求項4に記載の容器蓋。
【請求項6】
該環状面は中心軸線と平行に延びる円筒形状である、請求項1に記載の容器蓋。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の容器蓋と該容器蓋が装着される容器との組み合わせであって、
該容器は円筒形状の口頸部を有し、該口頸部の外周面には雄螺条及び該雄螺条の下方に位置する係止あご部が形成されており、
該容器の該口頸部に該容器蓋を被嵌して閉方向に回転せしめ、該雄螺条に該雌螺条を螺合せしめて該容器の該口頸部に該容器蓋を所要とおりに装着すると、該容器蓋の該係止突起が該口頸部の該係止あご部を弾性的に乗り越えてその下方に位置すると共に、該容器蓋の該環状面が該口頸部の該係止あご部と当接乃至近接し、該溝の上端は該係止あご部の最大外径の上下方向位置よりも上方に下端は該係止あご部の最大外径の上下方向位置よりも下方に夫々位置する、組み合わせ。
【請求項8】
円形天面壁と該天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁とを具備し、該スカート壁には周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個のスリットと該スリット間に存在する複数個の橋絡部とから構成された周方向に延びる破断ラインが形成されており、該スカート壁は該破断ラインより上方の主部と該破断ラインよりも下方のタンパーエビデント裾部とに区画されており、該主部の内周面には雌螺条が形成され、該タンパーエビデント裾部の内周面には周方向に間隔をおいて複数個の係止突起が配設されている合成樹脂製容器蓋と、円筒形状の口頸部を有し、該口頸部の外周面には雄螺条及び該雄螺条の下方に位置する係止あご部が形成されている容器との組み合わせにおいて、
該タンパーエビデント裾部の内周面には更に、下方に向かって内径が漸次低減して該係止突起の上面に接続するステップ部と、該ステップ部の上端から該タンパーエビデント裾部の上端まで周方向に連続して延在する環状面と、少なくとも該環状面において上下方向に延びる溝とが存在し、
該容器の該口頸部に該容器蓋を被嵌して閉方向に回転せしめ、該雄螺条に該雌螺条を螺合せしめて該容器の該口頸部に該容器蓋を所要とおりに装着すると、該容器蓋の該係止突起が該口頸部の該係止あご部を弾性的に乗り越えてその下方に位置すると共に、該容器蓋の該環状面が該口頸部の該係止あご部と当接乃至近接し、該溝の上端は該係止あご部の最大外径の上下方向位置よりも上方に下端は該係止あご部の最大外径の上下方向位置よりも下方に夫々位置する、ことを特徴とする組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スカート壁には周方向に間隔おいて周方向に延びるスリットとかかるスリット間に存在する橋絡部とから構成された周方向破断ラインが形成されており、スカート壁における周方向破断ラインよりも下方のタンパーエビデント裾部の内周面には係止突起が配設されている形態の合成樹脂製容器蓋、及びかような合成樹脂製容器蓋と口頸部の外周面には係止あご部が形成されている容器との組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、飲料包装用として、ガラス、合成樹脂或いは金属薄板から形成された容器と合成樹脂製容器蓋との組み合わせが広く実用に供されている。容器は円筒形状の口頸部を有し、この口頸部の外周面には雄螺条とこの雄螺条の下方に位置する係止あご部とが形成されている。合成樹脂製容器蓋の典型例としては、下記特許文献1に開示されている形態の容器蓋を挙げることができる。かような容器蓋は円形天面壁とこの天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁とを有する。スカート壁には、周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個のスリットとこれらのスリット間に存在する複数個の橋絡部とから構成されている周方向破断ラインが形成されており、スカート壁は周方向破断ラインよりも上方の主部と周方向破断ラインよりも下方のタンパーエビデント裾部とに区画されている。主部の内周面には雌螺条が形成され、タンパーエビデント裾部の内周面には周方向に間隔をおいて複数個の係止突起が配設されている。タンパーエビデント裾部の内周面には更に、係止突起の上面から上方に向かって内径が漸次増大する環状のステップ部が形成されている。そして、環状のステップ部の上端部において、周方向に隣接する2つの係止突起の間の角度領域には、溝が形成されている。
【0003】
容器の口頸部を密封する際には、口頸部に容器蓋を被嵌せしめて閉回転方向に回転せしめ、口頸部の雄螺条に容器蓋の雌螺条を螺合せしめる。かくして口頸部に容器蓋を所要とおりに装着すると、容器蓋の係止突起は口頸部の係止あご部を弾性的に乗り越えてその下方に位置すると共に、容器蓋のタンパーエビデント裾部のステップ部は口頸部の係止あご部と当接し、上記溝には流体の流動を許容する排液路が規定される。
【0004】
ここで、容器内に内容物を充填する際には、幾分かの内容物が口頸部の外周面に付着してしまうことが少なくない。それ故に、容器の口頸部に容器蓋を装着するのに先立って、口頸部の外周面に上水でよい洗浄液を噴射して口頸部の外周面に付着した内容物を洗浄している。加えて、口頸部に容器蓋を所要とおりに装着した後には、容器蓋の外周面に上水でよい洗浄液を噴射し、そしてまた洗浄液の噴射に続いて空気でよい乾燥気体を容器蓋に噴射して洗浄液を除去する。下記特許文献1に開示された容器蓋にあっては、タンパーエビデント裾部の内周面に形成された溝によって容器の口頸部との間に排液路が規定されることから、容器蓋の内側に進入した洗浄液は排液路から適切に除去される。
【0005】
そして、口頸部を開封して容器の内容物を消費する際には、容器蓋を開方向に回転せしめる。かくすると、雄螺条と雌螺条との螺合解除に応じて口頸部に対して容器蓋が上昇せしめられる。容器蓋が幾分上昇せしめられると、容器蓋の係止突起が口頸部の係止あご部に係止せしめられ、これによってタンパーエビデント裾部の上昇が阻止される。容器蓋の開方向への回転を続けると、スカート壁に形成されている周方向破断ラインが破断され、スカート壁のタンパーエビデント裾部が主部から分離される(或いは、タンパーエビデント裾部に軸線方向破断ラインが形成されている場合には、軸線方向破断ラインが破断されてタンパーエビデント裾部が無端環状から有端帯状に展開され、タンパーエビデント裾部は主部から完全に分離されることなく周方向の一部において主部に接続され続ける)。容器蓋の開方向への回転を続けると、タンパーエビデント裾部を残留せしめて容器蓋が(或いはタンパーエビデント裾部を含む容器蓋の全体が)口頸部から離脱され、口頸部が開封される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6373099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、本発明者等の経験によれば、上記特許文献1に開示された容器蓋のような、円形天面壁と該天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁とを具備し、該スカート壁には周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個のスリットと該スリット間に存在する複数個の橋絡部とから構成された周方向に延びる破断ラインが形成されており、該スカート壁は該破断ラインより上方の主部と該破断ラインよりも下方のタンパーエビデント裾部とに区画されており、該主部の内周面には雌螺条が形成され、該タンパーエビデント裾部の内周面には周方向に間隔をおいて複数個の係止突起が配設されている合成樹脂製容器蓋には本来的に以下のとおりの要求が存在する。即ち、(1)成形型からの離脱のために係止突起が所謂無理抜きされる際及び口頸部への装着のために係止突起が係止あご部を弾性的に乗り越える際に破断可能ラインが破断することを回避するためには、係止突起の径方向内方への突出量は比較的小さい値に設定されるのが好ましい。上記いずれの際も、タンパーエビデント裾部はその上端つまり橋絡部を基端として径方向外方に強制的に変位せしめられるため、係止突起の径方向内方への突出量が大きいとタンパーエビデント裾部の変位量も増大し、橋絡部にかかる負荷が増大するためである。一方で、(2)口頸部を開封する際に破断ラインの破断を伴うことなく係止突起が係止あご部を弾性的に乗り越えて上昇する所謂すっぽ抜けを防止するためには、係止突起は係止あご部によって充分に係止せしめられる必要がある。つまり、係止突起の径方向内方への突出量は比較的大きい値に設定されるのが好ましい。
【0008】
本発明者等は、鋭意検討の結果、タンパーエビデント裾部における係止突起の内径は係止あご部と係止するのに充分な大きさを維持したままで、ステップ部よりも上方の部分の内径を低減せしめて装着される容器の口頸部に形成された係止あご部の外径に対応させると共に、口頸部に装着された状態においてステップ部を係止あご部の下方に配置させる工夫をすることで、上記要求(1)及び(2)に同時に応えることができることを見出した。而して、上記特許文献1に開示された容器蓋に上記工夫を適用すると、以下のとおりの問題が生じることが判明した。即ち、容器蓋が口頸部に装着された状態にあっては、口頸部の係止あご部はステップ部よりも上方にてタンパーエビデント裾部の内周面に当接するため、ステップ部の上端部に形成された溝は必然的に係止あご部よりも下方に位置することとなり上記排液路が規定されない。なお、口頸部の係止あご部がタンパーエビデント裾部の内周面に近接する場合、つまり係止あご部とタンパーエビデント裾部の内周面との間に僅かな隙間が存在する場合も、洗浄水は自身の表面張力によって係止あご部とタンパーエビデント裾部との間を通過することができないため、上記排液路が規定されない。これにより、容器蓋の内側に進入した洗浄液は、流下することなく係止あご部の上面に留まった後にスリットからタンパーエビデント裾部の外周面に流出する。タンパーエビデント裾部の外周面には、一般に、インクジェットプリンターによって賞味期限等の印刷が施されるが、かかる部位に洗浄液が付着し残留せしめられていると、賞味期限等の印刷が阻害されてしまう。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、成形型からの離脱の際及び口頸部への装着の際に周方向破断ラインが破断せしめられることなく、また口頸部を開封する際に上述したすっぽ抜けが防止されるにも拘らず、口頸部の外周面に作用せしめられた洗浄液の流下は許容され、それ故にタンパーエビデント裾部の外周面に洗浄液が付着し残留することが充分確実に回避される、新規且つ改良された合成樹脂製容器蓋を提供し、そしてまたかかる合成樹脂製容器蓋と容器の組み合わせを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、鋭意検討の結果、タンパーエビデント裾部の内周面に、下方に向かって内径が漸次低減して係止突起の上面に接続するステップ部と、このステップ部の上端からタンパーエビデント裾部の上端まで周方向に連続して延在する環状面と、この環状面の下端を超えて下方に延びる又は少なくとも環状面において上下方向に延びる溝とを設け、容器の口頸部に容器蓋を装着した状態において、溝の上端を係止あご部の最大外径の上下方向位置よりも上方に下端を係止あご部の最大外径の上下方向位置よりも下方に夫々位置させることで、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0011】
即ち、本発明の一局面によれば、上記主たる技術的課題を解決する合成樹脂製容器蓋として、円形天面壁と該天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁とを具備し、該スカート壁には周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個のスリットと該スリット間に存在する複数個の橋絡部とから構成された周方向に延びる破断ラインが形成されており、該スカート壁は該破断ラインより上方の主部と該破断ラインよりも下方のタンパーエビデント裾部とに区画されており、該主部の内周面には雌螺条が形成され、該タンパーエビデント裾部の内周面には周方向に間隔をおいて複数個の係止突起が配設されている合成樹脂製容器蓋において、
該タンパーエビデント裾部の内周面には更に、下方に向かって内径が漸次低減して該係止突起の上面に接続するステップ部と、該ステップ部の上端から該タンパーエビデント裾部の上端まで周方向に連続して延在する環状面と、該環状面の下端を超えて下方に延びる溝とが存在する、ことを特徴とする合成樹脂製容器蓋が提供される。
【0012】
本発明の他の局面によれば、上記主たる技術的課題を解決する合成樹脂製容器蓋と容器との組み合わせとして、上記容器蓋と該容器蓋が装着される容器との組み合わせであって、
該容器は円筒形状の口頸部を有し、該口頸部の外周面には雄螺条及び該雄螺条の下方に位置する係止あご部が形成されており、
該容器の該口頸部に該容器蓋を被嵌して閉方向に回転せしめ、該雄螺条に該雌螺条を螺合せしめて該容器の該口頸部に該容器蓋を所要とおりに装着すると、該容器蓋の該係止突起が該口頸部の該係止あご部を弾性的に乗り越えてその下方に位置すると共に、該容器蓋の該環状面が該口頸部の該係止あご部と当接乃至近接し、該溝の上端は該係止あご部の最大外径の上下方向位置よりも上方に下端は該係止あご部の最大外径の上下方向位置よりも下方に夫々位置する、組み合わせが提供される。
【0013】
本発明の更に他の局面によれば、円形天面壁と該天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁とを具備し、該スカート壁には周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個のスリットと該スリット間に存在する複数個の橋絡部とから構成された周方向に延びる破断ラインが形成されており、該スカート壁は該破断ラインより上方の主部と該破断ラインよりも下方のタンパーエビデント裾部とに区画されており、該主部の内周面には雌螺条が形成され、該タンパーエビデント裾部の内周面には周方向に間隔をおいて複数個の係止突起が配設されている合成樹脂製容器蓋と、円筒形状の口頸部を有し、該口頸部の外周面には雄螺条及び該雄螺条の下方に位置する係止あご部が形成されている容器との組み合わせにおいて、
該タンパーエビデント裾部の内周面には更に、下方に向かって内径が漸次低減して該係止突起の上面に接続するステップ部と、該ステップ部の上端から該タンパーエビデント裾部の上端まで周方向に連続して延在する環状面と、少なくとも該環状面において上下方向に延びる溝とが存在し、
該容器の該口頸部に該容器蓋を被嵌して閉方向に回転せしめ、該雄螺条に該雌螺条を螺合せしめて該容器の該口頸部に該容器蓋を所要とおりに装着すると、該容器蓋の該係止突起が該口頸部の該係止あご部を弾性的に乗り越えてその下方に位置すると共に、該容器蓋の該環状面が該口頸部の該係止あご部と当接乃至近接し、該溝の上端は該係止あご部の最大外径の上下方向位置よりも上方に下端は該係止あご部の最大外径の上下方向位置よりも下方に夫々位置する、ことを特徴とする組み合わせが提供される。
【0014】
好ましくは、該溝は該環状面の上端部から下方に延びている。該溝は該係止突起の上面高さ位置まで延びているのがよい。該溝は周方向に隣接する2つの該係止突起の間に形成されているのが好適である。この場合には、該溝の周方向両端部は周方向に隣接する2つの該係止突起の各々の隣接する周方向端部と周方向において整合するのが好ましい。該環状面は中心軸線と平行に延びる円筒形状であるのがよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第一の局面及び第二の局面にあっては、タンパーエビデント裾部の内周面には、ステップ部の上方に位置する環状面の下端を超えて下方に延びる溝が形成されている。それ故に、成形型からの離脱の際及び口頸部への装着の際に周方向破断ラインが破断せしめられることが回避されると共に口頸部を開封する際に上述したすっぽ抜けが防止されるべく、タンパーエビデント裾部における係止突起の内径は係止あご部と係止するのに充分な大きさを維持したままで、ステップ部よりも上方の部分つまり環状面の内径を低減せしめて装着される容器の口頸部に形成された係止あご部の外径に対応させると共に、口頸部に装着された状態においてステップ部を係止あご部の下方に配置させたとしても、上記状態において溝の上端は係止あご部の最大外径の上下方向位置よりも上方に位置し得ると共に、溝の下端は係止あご部の最大外径の上下方向位置よりも下方に位置し得る。これにより、本発明の第一の局面及び第二の局面によれば、上記溝によってタンパーエビデント裾部と口頸部の係止あご部との間に液体の流動を許容する排液路が充分確実に規定されるため、この排液路によって口頸部の外周面に作用せしめられた洗浄液の流下は許容され、タンパーエビデント裾部の外周面に洗浄液が付着し残留することは回避される。また、本発明の第三の局面によれば、必ずしも溝は、タンパーエビデント裾部の内周面において環状面の下端を超えて下方に延出する必要はなく、少なくとも環状面に形成されていればよく、この場合であっても、上述した本発明の第一の局面及び第二の局面と同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に従って構成された合成樹脂製容器蓋の好適実施形態を、一部を断面で示す正面図。
図2図1に示す容器蓋のタンパーエビデント裾部において係止突起が形成された部分の拡大部分断面図。
図3図1に示す容器蓋のタンパーエビデント裾部において溝が形成された部分の拡大部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明に従って構成された合成樹脂製容器蓋の好適実施形態について、更に詳述する。
【0018】
図1を参照して説明すると、ポリエチレン又はポリプロピレンの如き適宜の合成樹脂から射出成形又は圧縮成形することができる容器蓋2は、円形天面壁4とこの天面壁4の周縁から垂下する円筒形スカート壁6とを具備する。天面壁4の内面外周縁部には、下方に垂下する比較的長い円筒形状の内側シール片8及び下方に垂下する比較的短い円筒形状の外側シール片10が形成されている。更に、内側シール片8と外側シール片10との間には比較的小さい環状突条12が形成されている。天面壁4の外面外周縁部にも環状突条14が形成されている。
【0019】
スカート壁6には周方向に延びる破断ライン16が形成されており、スカート壁6は破断ライン16より上方の主部18と破断ライン16より下方のタンパーエビデント裾部20とに区画されている。図示の実施形態においては、破断ライン16は周方向に延びる複数個のスリット(切り溝)22とスリット22間に残留せしめられている複数個の橋絡部24とから構成されており、タンパーエビデント裾部20は複数個の橋絡部24を介して主部18に接続されている。
【0020】
スカート壁6の主部18の外周面には、周方向に見て交互に存在する凹凸形状から構成された滑り止めローレット26が形成されている。スカート壁6の主部18の内周面には、雌螺条28が形成されている。
【0021】
図1と共に図2を参照して説明すると、タンパーエビデント裾部20の内周面には周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個の円弧状係止突起30が配設されている。係止突起30の各々の主部(両端部を除く部分)の縦断面形状は略直角三角形状であり、半径方向内方に向かって若干下方に傾斜して延びる上面と半径方向外方に向かって下方に傾斜して延びる下面とを有する。係止突起30の周方向両端部においては、半径方向内方への突出量が周方向両端に向かって漸次低減せしめられており、下面の両端縁は下方に向かって周方向中央に傾斜せしめられている。
【0022】
ここで、本発明の容器蓋にあっては、タンパーエビデント裾部20の内周面には更に、下方に向かって内径が漸次低減して係止突起30の上面に接続する複数個の円弧状ステップ部32と、このステップ部32の上端からタンパーエビデント裾部20の上端まで周方向に連続して延在する環状面34と、この環状面34の下端を超えて下方に延びる溝36とが存在することが重要である。図示の実施形態においては、環状面34は中心軸線と平行に延びる円筒形状である。そして、溝36は周方向に隣接する2つの係止突起30の間に形成されていて、溝36の周方向両端部は周方向に隣接する2つの係止突起30の各々の隣接する周方向端部と周方向において整合する。所望ならば、溝36は係止突起30の上面に接続されていてもよい。溝36の上端は環状面34の上端部に位置し、下端は係止突起30の上面高さ位置と等しく、溝36は環状面34の上端部から係止突起30の上面高さ位置まで上下方向に連続して直線状に延びている。なお、タンパーエビデント裾部20の周方向の強度維持や、破断ライン16の橋絡部24の強度度維持の観点から、溝36の上端は環状面34の上端に達しないことが望ましい。かような溝36は環状面34におけるタンパーエビデント裾部20の内径を局所的に増大せしめることによって形成される。溝36の深さつまり溝36におけるタンパーエビデント裾部20の内径は下方に向かって漸次増大せしめられ、溝36の底面は下端にて係止突起30の存在しない部分のタンパーエビデント裾部20の内周面に円滑に連続せしめられる。また、図示の実施形態においては、溝36は周方向に隣接する2つの係止突起30の間に形成されていることから、ステップ部32は複数個の係止突起30の各々に対応して存在する。そして、ステップ部32の内面は係止突起30の上面から上方に向かって径方向外方に僅かに傾いた下部38とこの下部38の上端から上方に向かって径方向外方に大きく傾いた上部40とに区画され、環状面34の下端は上部40の上端に接続されている。所望ならば、ステップ部32の内面は係止突起30の上面から径方向外方に傾斜して延びる逆円錐台形状であってもよく、また、上方に中心軸線と平行に延びた後に径方向外方に傾斜する形状であってもよい。
【0023】
ここで、上述した要求(1)及び(2)に同時に応えるため、タンパーエビデント裾部20における係止突起30の内径は後述する容器の口頸部に設けられた係止あご部と係止するのに充分な大きさを維持しつつ、ステップ部32よりも上方の部分つまり環状面34の内径は低減せしめられ容器の口頸部に形成された係止あご部の外径(つまり外周面の径)に対応する大きさに設定される。このことから、ステップ部32の内径は係止あご部の外周面の径よりも小さく設定される。また、係止突起30の内径が上記大きさを維持したまま環状面34の内径が低減されたことで、係止突起30の径方向内方への突出量は低減せしめられる。
【0024】
図1には容器蓋2と共に容器の口頸部42が二点鎖線で示されている。ポリエチレンテレフタレートの如き適宜の合成樹脂、ガラス或いは金属薄板から形成することができる容器の口頸部42は全体として円筒形状であり、口頸部42の外周面には雄螺条44と雄螺条44の下方に位置する係止あご部46が形成されている。係止あご部46は下方に向かって外径が漸次増大する弧状の上面、円筒形状の外周面及び実質上水平に延在する下面を有する。口頸部42の外周面には、更に、係止あご部46の下方に位置するサポートリング48(かかるサポートリング48は当業者には周知の如く容器の搬送に利用される)も配設されている。
【0025】
容器内に内容物を充填した後においては、通常、容器の口頸部42に容器蓋2を装着するのに先立って、口頸部42の外周面に上水でよい洗浄液を噴射して口頸部42の外周面に付着した内容物を洗浄する。しかる後に、口頸部42に容器蓋2を被嵌して容器蓋2を閉回転方向、図1において上方から見て時計方向、に回転せしめ、容器蓋2の雌螺条28を口頸部42の雄螺条44に螺合せしめる。図1に示す状態まで雌螺条28を雄螺条44に螺合せしめると、容器蓋2の内側シール片8が口頸部42内に進入して口頸部42の内周面に密接され、環状突条12が口頸部42の頂面に密接せしめられ、外側シール片10が口頸部42の外周面に密接乃至近接せしめられ、かくして口頸部42が密封される。タンパーエビデント裾部20の内周面に配設されている係止突起30は口頸部42の係止あご部46を弾性的に(即ちタンパーエビデント裾部20の弾性変形乃至変位によって)乗り越えて係止あご部46の下方に位置する。このとき、係止突起30の径方向内方への突出量が低減されたことでタンパーエビデント裾部20の変位量は小さく、従って橋絡部24にかかる負荷が低減されるため、破断ライン16の破断を伴うことなく係止突起30は係止あご部46を乗り越えることができる。口頸部42が密封された状態にあっては、図1と共に図2を参照することによって理解されるとおり、タンパーエビデント裾部20の内周面においてステップ部32よりも上方に位置する環状面34が口頸部42の係止あご部46と当接する。換言すれば、ステップ部32は口頸部42の係止あご部46の下方に配置される。一方で、図3を参照することによって理解されるとおり、係止突起30の存在しない部位、つまり周方向に隣接する2つの係止突起30の間の部位にあっては、タンパーエビデント裾部20の内周面に形成された溝36が係止あご部46の外周面と対向し、溝36の上端は最大外径となる係止あご部46の外周面よりも上方に下端は最大外径となる係止あご部46の外周面よりも下方に夫々位置する。これにより、溝36には流体の流動を許容する排液路50が規定される。所望ならば、係止あご部46の外周面に上下方向に延びる切欠き又は突出部を設け、これにより補助廃液路を規定してもよい。
【0026】
口頸部42に容器蓋2を所要とおりに装着した後には、容器蓋2に上水でよい洗浄液を噴射し、次いで洗浄液の噴射に続いて空気でよい乾燥気体を容器蓋に噴射して洗浄液を除去する。本発明者等の経験によれば、容器蓋2に上記溝36が形成されていない場合、又は形成されていてもタンパーエビデント裾部20の環状面34ではなくステップ部32に形成されていた場合には、口頸部42の係止あご部46とタンパーエビデント裾部20の内周面との間に液体の流動を許容する複数個の排液路50が規定されず、乾燥気体を容器蓋2に噴射した後に、容器の口頸部42に噴射されそこに残留していた洗浄液が周方向破断ライン16におけるスリット22を通って流出し、タンパーエビデント裾部20の外周面に付着し残留してしまう傾向がある。然るに、本発明に従って構成された容器蓋2の場合には、上記溝36の存在に起因して排液路50が規定される故に、容器の口頸部42に噴射されそこに残留していた洗浄液は排液路50を通って流下する。従って、容器の口頸部42に噴射されそこに残留していた洗浄液がスリット22を通って流出することは可及的に回避される。図示の実施形態においては、溝36の底面が下端にて係止突起30の存在しない部分のタンパーエビデント裾部20の内周面に円滑に連続しているため、洗浄液は段差や傾斜がある場合と比し円滑に流下する。容器蓋2に乾燥気体を噴射して洗浄液を除去した後には、通常、タンパーエビデント裾部20の外周面に、例えばインクジェットプリンターによって賞味期限等の印刷が施されるが、容器の口頸部42に噴射されそこに残留していた洗浄液がスリット22を通って流出することは可及的に回避される故に、賞味期限等の印刷が阻害されることはない。
【0027】
内容物を消費するために口頸部42を開封する際には、容器蓋2を開方向、即ち図1において上方から見て反時計方向、に回転せしめる。かくすると、雄螺条44と雌螺条28の螺合が漸次解除され、スカート壁6の主部18は回転と共に軸線方向上方に移動せしめられる。一方、タンパーエビデント裾部20は係止突起30が係止あご部46に係止せしめられる故に軸線方向上方への移動が阻止され、かくして破断ライン16の橋絡部24に応力が生成されて橋絡部24が破断され、タンパーエビデント裾部20がスカート壁6の主部18から切り離される。このとき、係止突起30の径方向内方への突出量は低減されているものの、ステップ部32よりも上方の環状面34の内径が低減されて、係止突起30の最小内径は係止あご部46と係止するのに充分な大きさを維持しているため、破断ライン16の破断を伴うことなく係止突起30が係止あご部46を弾性的に乗り越えて上昇する所謂すっぽ抜けが防止される。また更に、係止突起30の上面から上方に向かって径方向外方に傾斜して延びるステップ部32が口頸部42の係止あご部46の外周面下端部に密接せしめられる故に、タンパーエビデント裾部20の弾性的な変形乃至変位が抑制され、これによっても、すっぽ抜けが防止される。破断ライン16が破断された後においては、タンパーエビデント裾部20を口頸部42に残留せしめて、容器蓋2の天面壁4及びスカート壁6の主部18は回転と共に軸線方向上方に自由に移動せしめられて口頸部42から離脱され、かくして口頸部42が開封される。所望ならば、タンパーエビデント裾部20に軸線方向破断ラインを形成し、容器の口頸部42を開封する際には上記軸線方向破断ラインが破断され、一方周方向に延在する破断ライン16はその一部が破断されることなく維持され、タンパーエビデント裾部20が無端環状から有端環状に展開され、タンパーエビデント裾部20と共に容器蓋2の全体が口頸部42から離脱されるようになすこともできる。
【0028】
上述した本発明の実施形態にあっては、タンパーエビデント裾部20の内周面には、ステップ部32の上方に位置する環状面34の下端を超えて下方に延びる溝36が形成されている。それ故に、成形型からの離脱の際及び口頸部への装着の際に周方向破断ライン16が破断せしめられることが回避されると共に口頸部を開封する際に上述したすっぽ抜けが防止されるべく、タンパーエビデント裾部20における係止突起30の内径は係止あご部46と係止するのに充分な大きさを維持したままで、ステップ部32よりも上方の部分つまり環状面34の内径を低減せしめて装着される容器の口頸部に形成された係止あご部46の外径に対応させると共に、口頸部に装着された状態においてステップ部32を係止あご部46の下方に配置させたとしても、上記状態において溝36の上端は係止あご部46の最大外径の上下方向位置よりも上方に位置すると共に、溝36の下端は係止あご部46の最大外径の上下方向位置よりも下方に位置する。これにより、溝36によってタンパーエビデント裾部20と口頸部の係止あご部46との間に液体の流動を許容する排液路50が充分確実に規定されるため、この排液路50によって口頸部の外周面に作用せしめられた洗浄液の流下は許容され、タンパーエビデント裾部20の外周面に洗浄液が付着し残留することは回避される。
【0029】
上述した実施形態においては、タンパーエビデント裾部20の内周面に存在する溝36は環状面34の下端を超えて下方に延出していた。然しながら、容器の口頸部42に容器蓋2が装着された状態において、溝36の上端が係止あご部46の最大外径の上下方向位置よりも上方に下端が係止あご部46の最大外径の上下方向位置よりも下方に夫々位置さえすれば、溝36はタンパーエビデント裾部20の内周面において環状面34の下端を超えて下方に延出しない、つまり環状面34にのみ形成されていてもよい。この場合であっても、上述した実施形態と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0030】
2:容器蓋
4:天面壁
6:スカート壁
16:周方向破断ライン
18:主部
20:タンパーエビデント裾部
22:スリット
24:橋絡部
28:雌螺条
30:係止突起
32:ステップ部
34:環状面
36:溝
42:口頸部
44:雄螺条
46:係止あご部
50:排液路
図1
図2
図3