(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130106
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240920BHJP
C09J 7/21 20180101ALI20240920BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20240920BHJP
C09J 133/08 20060101ALI20240920BHJP
D21H 27/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/21
C09J7/29
C09J133/08
D21H27/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039628
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】朝稲 翔平
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
4L055
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004CB02
4J004CC02
4J004CD03
4J004CD05
4J004DB02
4J004FA01
4J040DF041
4J040DF051
4J040JA09
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4J040NA12
4L055AG47
4L055AG48
4L055AG64
4L055AH50
4L055AJ03
4L055BE08
4L055BE09
4L055BE11
4L055EA07
4L055EA08
4L055EA12
4L055EA14
4L055EA32
4L055FA11
4L055GA42
(57)【要約】
【課題】本発明は、粘着剤の使用量が少なくとも適切な粘着力が発揮され、さらには、曲面を有する被着体への粘着性も担保された粘着シートを提供する。
【解決手段】紙基材と粘着剤層とを有する粘着シートであって、粘着剤層側の前記紙基材上に澱粉類および/またはポリビニルアルコールを含むコート層を有する、粘着シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と粘着剤層とを有する粘着シートであって、
粘着剤層側の前記紙基材上に澱粉類および/またはポリビニルアルコールを含むコート層を有する、粘着シート。
【請求項2】
前記澱粉類および/またはポリビニルアルコールの塗布量が2.0g/m2を超える、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記コート層における前記澱粉類および/または前記ポリビニルアルコールの含有量が80質量%以上である、請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記粘着剤の塗布量が15g/m2以下である、請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項5】
紙基材上に澱粉類および/またはポリビニルアルコールを含むコート層を形成させてコート層形成基材を得ることと、
前記コート層形成基材のコート層上に粘着剤層を形成することと、を有する粘着シートの製造方法。
【請求項6】
前記コート層形成基材のJIS P 8119:1998に準拠して測定したコート層表面の平滑度が50秒以上である、請求項5に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項7】
コート層形成基材のJIS L 1096:2010 8.21.1 A法(45°カンチレバー法)に準拠して測定した剛軟度が150mm以下である、請求項5または6に記載の粘着シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは、通常、美観性・装飾性を発揮したり各種情報を提示したりするための基材と、基材を被着面と接着させるための粘着剤層とが積層されてなる構成を有する。基材としては、例えば紙基材や樹脂基材が用いられる。
【0003】
このうち、紙基材は比較的安価であるために、粘着シートの基材として汎用されている。紙基材は、樹脂基材と比較して構造として空隙が多いため、粘着剤が空隙に染み込む場合がある。このような紙基材への染み込みを抑制する手段として、特許文献1では、紙基材の両面に設けられた無機顔料とカチオン性高分子を含有する含浸層および一方の前記含浸層上に設けられたアクリル系樹脂を含有するバリア層を有するテープ基材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今の環境意識の高まりから、粘着剤層に用いられる粘着剤の使用量を低減させることが好ましいが、紙基材の場合、上述のように粘着剤が紙基材に染み込むため、必要な粘着性能を発揮させるためには粘着剤層を厚くする、すなわち粘着剤量を増大させる必要があり、環境対応の側面からは対応を要する。また、特許文献1のようにアクリル系樹脂バリア層を基材の粘着剤層側に設けた場合、紙基材全体のコシが強くなる。このため、曲面を有する被着体(例えば、ボトル容器など)に粘着シートを貼付する際に紙基材の反発力が強くなり、浮き剥がれが発生する場合がある。
【0006】
したがって、本発明は、粘着剤の使用量が少なくとも適切な粘着力が発揮され、さらには、曲面を有する被着体への粘着性も担保された粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る粘着ラベルは、以下の構成を有する。
【0008】
1.紙基材と粘着剤層とを有する粘着シートであって、
粘着剤層側の前記紙基材上に澱粉類および/またはポリビニルアルコールを含むコート層を有する、粘着シート。
【0009】
2.前記澱粉類および/またはポリビニルアルコールの塗布量が2.0g/m2を超える、1.に記載の粘着シート。
【0010】
3.前記コート層における前記澱粉類および/または前記ポリビニルアルコールの含有量が80質量%以上である、1.または2.に記載の粘着シート。
【0011】
4.前記粘着剤の塗布量が15g/m2以下である、1.~3.のいずれかに記載の粘着シート。
【0012】
5.紙基材上に澱粉類および/またはポリビニルアルコールを含むコート層を形成させてコート層形成基材を得ることと、
前記コート層形成基材のコート層上に粘着剤層を形成することと、を有する粘着シートの製造方法。
【0013】
6.前記コート層形成基材のJIS P 8119:1998に準拠して測定したコート層表面の平滑度が50秒以上である、5.に記載の粘着シートの製造方法。
【0014】
7.コート層形成基材のJIS L 1096:2010 8.21.1 A法(45°カンチレバー法)に準拠して測定した剛軟度が150mm以下である、5.または6.に記載の粘着シートの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の粘着シートによれば、粘着剤の使用量が少なくとも適切な粘着力が発揮され、さらには、曲面を有する被着体への粘着性も担保される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る粘着シート10の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1を参照して、粘着シートの構成について説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0018】
図1は、本実施形態に係る粘着シート10の断面概略図である。本発明の実施形態に係る粘着シート10は、
図1に示すように、上から順に、紙基材11と、粘着剤層13と、剥離ライナー14と、を有する。そして、紙基材11と、粘着剤層13との間には、コート層12が配置される。コート層12は、粘着剤の染み込みを抑制するため、粘着剤層13と隣接するように配置される。
【0019】
以下、粘着シートの各構成要素について説明する。本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等は、室温(20~25℃)/相対湿度45~55%RHの条件で測定する。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を指し、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸および/またはメタクリル酸」を指す。さらに、本明細書においては「シート」と称しているが、シートには、フィルム、ラベル、テープ等と称されるものも含まれる。
【0020】
<紙基材>
紙基材であれば特に限定されないが、クラフト紙、上質紙、グロス紙(例えば、上質紙に片面グロスコート処理されている)、グラシン紙、パーチメント紙等が挙げられる。中でも、本願の課題である粘着剤の染み込みが発生しやすく、本願発明の効果が一層発揮されやすいことから、紙基材は、クラフト紙、上質紙、グロス紙であることが好ましい。
【0021】
紙基材の厚さは、強度などを考慮して適宜設定すればよいが、通常30~250μmであり、好ましくは50~150μmである。また、紙基材の坪量は、通常25~150g/m2であり、好ましくは45~100g/m2である。また、紙基材の表面には、文字、図形などの各種印刷が施されていてもよい。さらに、紙基材は着色剤などを添加することにより着色していてもよい。
【0022】
紙基材のコート層形成面の算術平均高さ(Sa)は、0.5μm以上であってもよく、1.0μm以上であってもよい。紙基材のコート層形成前の表面が粗いほど(算術高さが大きいほど)、本発明の効果を顕著に得られやすい。紙基材のコート層形成面の算術平均高さ(Sa)は、通常5μm以下であり、4μm以下であってもよい。本明細書において、「算術平均高さ(Sa)」は、ISO25178-6:2010に基づき、サンプルの所定の面の300μm×300μmの範囲について、走査型白色干渉顕微鏡(日立ハイテクサイエンス社製VS1550)によって測定した値を採用する。
【0023】
また、紙基材は下記剥離ライナー(粘着剤層と剥離可能である)とは区別され、剥離ライナーは通常粘着剤層側に剥離剤を有するが、紙基材は、粘着剤層面にコート層を有し、剥離剤層を含まない。このため、紙基材および粘着剤層は、通常の使用では分離不可能である。
【0024】
紙基材と粘着剤層との間には下記に詳述するコート層が存在するが、当該コート層は、粘着剤層と紙基材との間にのみ存在してもよい。
【0025】
一方で、紙基材の粘着剤層と相対する側には、各種機能層(例えば、印刷層、印刷受理層、感熱記録層)が配置されていてもよい。
【0026】
<コート層>
コート層は澱粉類および/またはポリビニルアルコールを含む。本発明においては、単にコート層を設けるだけではなく、コート層を形成する樹脂として、澱粉類/ポリビニルアルコールを用いている点にも一特徴がある。本発明者は、粘着剤の染み込みという課題を解決する上で樹脂を含む層を粘着剤層側に設けると、樹脂の硬さに起因して粘着シートにコシが発現し、曲面貼付性が低下することを知見した(例えば、後述の比較例2)。しかしながら、澱粉類/ポリビニルアルコールを含むコート層であれば、粘着剤層の厚みが担保されるとともに、曲面貼付性も担保されることを見出し、本発明を完成させた。
【0027】
澱粉類としては、特に限定されないが、例えば、とうもろこし澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、サゴヤシ澱粉、ワキシーメイズ澱粉等の澱粉;酸化澱粉、カチオン化澱粉、リン酸変性澱粉、カルボキシメチル化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、カルバミルエチル化澱粉、酢酸変性澱粉等の変性澱粉が挙げられる。これらの澱粉類は1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。これらのうち、澱粉としては、本発明の効果が一層奏されることから、酸化澱粉であることが好ましい。
【0028】
ポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常の未変性ポリビニルアルコールの他に、変性ポリビニルアルコールも含まれる。変性ポリビニルアルコールとしては、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、ノニオン変性ポリビニルアルコールが挙げられる。これらのポリビニルアルコールは1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。中でもポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常の未変性ポリビニルアルコールであることが好ましい。
【0029】
ポリビニルアルコールの鹸化度は、80~100モル%であることが好ましく、85~100モル%であることがより好ましく、90~100モル%であってもよい。また、ポリビニルアルコールの分子量は、通常5,000~150,000であり、10,000~100,000であることが好ましい。また、鹸化度や分子量の異なるポリビニルアルコールを組み合わせて用いてもよい。
【0030】
コート層における澱粉類および/またはポリビニルアルコールの含有量は、合計で10質量%以上であることが好ましく(上限100質量%)、50質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらにより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0031】
澱粉類および/またはポリビニルアルコールの塗布量は、(合計で)2.0g/m2を超えることが好ましい。塗布量が2.0g/m2を超えることで、紙基材の表面がコート層で十分に覆われ、紙基材の凹部が少なくなり、粘着剤の染み込み防止効果が一層発揮されやすくなる。上記塗布量は、好ましい順に、2.5g/m2以上、3.0g/m2以上、3.5g/m2以上、4.0g/m2以上である。また、上記塗布量は、曲面貼付性を考慮すると、10g/m2以下であることが好ましい。上記塗布量は、2.0g/m2を超えて10g/m2以下であることが好ましく、好ましい順に2.5~10g/m2、3.0~10g/m2、3.5~10g/m2、4.0~10g/m2である。
【0032】
コート層は、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、クレイ、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛等のフィラー、(澱粉/ポリビニルアルコール以外の)バインダー樹脂、分散剤、増粘剤、消泡剤、発泡防止剤、粘度調整剤、潤滑剤、耐水化剤、保水剤、色材等が挙げられる。なお、コート層がフィラーを含有しない形態は好適な一実施形態である。
【0033】
クレイとしては、例えば、カオリン、タルク、ベントナイト、スメクタイト、バーミキュライト、雲母、緑泥石、木節粘土、ガイロメ粘土、ハロイサイト、マイカ等を用いることができる。中でも、クレイとしては、カオリンを含むことが好ましい。クレイの平均粒径は、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上10μm以下である。平均粒径は、体積基準であり、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定することができる。クレイの含有量は、コート層中、例えば、80質量%以下(下限0質量%)であり、50質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよい。クレイの含有量は、例えば、1質量%以上であってもよい。
【0034】
(澱粉類/ポリビニルアルコール以外の)バインダー樹脂としては、スチレン-ブタジエン共重合体などが挙げられる。(澱粉類/ポリビニルアルコール以外の)バインダー樹脂の含有量は、コート層中、例えば、50質量%以下(下限0質量%)であり、30質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよい。バインダー樹脂の含有量は、例えば、1質量%以上であってもよい。
【0035】
コート層が形成されたコート層形成基材のJIS P 8119:1998に準拠して測定したコート層表面の(ベック)平滑度は、50秒以上であることが好ましい。コート層表面の平滑度が50秒以上であることで、紙基材の表面が十分に覆われ(紙基材の凹部が少なくなり)、粘着剤の染み込み防止効果が一層発揮されやすくなる。コート層表面の平滑度は、50秒以上であることが好ましく、100秒以上であることがより好ましい。コート層表面の平滑度の上限は特に設けないが、通常300秒である。
【0036】
コート層が形成されたコート層形成基材のJIS L 1096:2010 8.21.1 A法(45°カンチレバー法)に準拠して測定した剛軟度は、150mm以下であることが好ましく、150mm未満であることがより好ましく、140mm以下であることがさらにより好ましい。コート層形成基材の剛軟度が150mm以下であることで、被着体が曲面形状であっても粘着性が担保されやすい。コート層形成基材の剛軟度は、60~150mmであることが好ましく、65mm以上150mm未満であることがより好ましく、70~140mmであることがさらにより好ましい。
【0037】
コート層が形成されたコート層形成基材は、コート層形成前の紙基材の厚さから0.5~10μm厚いことが好ましく、1~8μm厚くてもよく、2~5μm厚くてもよく、3~5μm厚くてもよい。
【0038】
<粘着剤層>
粘着剤層に用いられる粘着剤としては、特に限定されず、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、スチレン-ジエンブロック共重合体粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、フッ素系粘着剤などを用いることができる。上記粘着剤は1種単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0039】
粘着剤としては、接着の信頼性の観点から、特にアクリル系粘着剤を好適に用いることができる。
【0040】
アクリル系粘着剤を構成するアクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とし、必要に応じて(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な単量体(共重合性単量体)を用いることにより形成される。ここで、主成分とは、単量体中50質量%以上(上限100質量%)であることを指し、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単量体全体に対する含有割合は、好ましい順に、65質量%以上、85質量%以上、90質量%以上である。
【0041】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な共重合性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有単量体またはその無水物;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、グリセリンジメタクリレートなどの水酸基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N,N-ジメチルアクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリロイルモルホリンなどのアミノ基含有単量体;スチレン、置換スチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;酢酸ビニルなどのビニルエステル類;ジアセトンアクリルアミド、アクリル酸アセトアセトキシメチルなどのジケト基含有単量体などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な共重合性単量体としては、単量体全量に対して、10質量%以下であることが好ましい。
【0043】
アクリル系共重合体の製造方法は、特に制限されず、重合開始剤を使用する溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法、薄膜重合法、噴霧重合法など従来公知の方法を用いることができる。また、重合開始剤により重合を開始させる方法の他に、放射線、電子線、紫外線等を照射して重合を開始させる方法を採用することもできる。
【0044】
乳化重合法としては、例えば、上述の単量体を含む単量体混合物に、乳化剤および重合開始剤を添加し、乳化重合する方法が挙げられる。
【0045】
なお、乳化重合において、重合安定性の観点から、単量体混合物は、乳化剤(または乳化剤の一部)を、単量体混合物に溶解しておくか、または、予めO/W型の乳化液の状態としておくことが好ましい。
【0046】
乳化重合を行う際の手順としては、例えば、以下の(1)~(3)の方法が挙げられる。
(1)単量体混合物、乳化剤、水等の全量を仕込み、昇温し、水に溶かした重合開始剤を全量滴下または分割添加して、重合する。
(2)反応容器内に水、乳化剤、単量体混合物の一部を仕込み、昇温した後、水に溶かした重合開始剤を滴下または分割添加して重合反応を進行させた後、残りの単量体混合物を全量滴下または分割添加して重合を継続する。
(3)反応容器内に水に溶かした重合開始剤を仕込んでおき昇温した後、単量体混合物、乳化剤、および水からなる乳化液を全量滴下または分割添加して重合する。
【0047】
乳化剤としては、特に制限は無いが、エマルション系重合体の分散安定性を向上させる観点から、アニオン系乳化剤またはノニオン系乳化剤が好ましく、アニオン系乳化剤がより好ましい。
【0048】
アニオン系乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム塩、アリルアルキルスルホコハク酸エステル塩等が挙げられる。また、ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。これらの乳化剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
乳化剤の添加量としては、乳化重合反応の安定性の観点、および、未反応の乳化剤が残存することによる物性低下を防ぐ観点から、単量体混合物100質量部に対して、好ましくは0.5~12質量部、より好ましくは0.5~8質量部、更に好ましくは0.7~6質量部である。
【0050】
なお、乳化剤は、単量体混合物に水を加えた溶液に直接添加してもよく、予め重合容器に添加しておいてもよく、またはそれらを併用してもよい。
【0051】
重合開始剤としては、水溶性、油溶性のいずれであってもよく、例えば、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド等のアゾ系化合物、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物等が挙げられ、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせや、過酸物とアスコルビン酸ナトリウムとの組み合わせ等からなるレドックス開始剤を用いてもよい。重合開始剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、重合安定性に優れているという観点から、過硫酸塩またはレドックス開始剤が好ましい。
【0052】
重合開始剤の添加量としては、重合速度を速める観点から、単量体混合物100質量部に対して、好ましくは0.01~6質量部、より好ましくは0.03~4質量部、さらに好ましくは0.1~2質量部である。
【0053】
なお、重合開始剤は、予め反応容器内に加えておいてもよく、重合開始直前に加えてもよく、重合開始後に複数回に分けて加えてもよく、単量体混合物中に予め加えておいてもよく、該単量体混合物からなる乳化液を調製後、当該乳化液に加えてもよい。
【0054】
また、乳化重合時に、公知の連鎖移動剤やpH緩衝剤をさらに添加してもよい。
【0055】
乳化重合に際し、用いる水としては、イオン交換水が好ましい。水の使用量は、単量体混合物100質量部に対して、好ましくは30~400質量部、より好ましくは35~200質量部、更に好ましくは40~150質量部である。
【0056】
乳化重合により得られたエマルション系重合体分散液に対して、さらに、アンモニア水、各種水溶性アミン、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液を添加して、pH5~9(好ましくはpH6~8.5)に調整することが好ましい。
【0057】
エマルション系重合体分散液の固形分濃度は、好ましくは10~80質量%、より好ましくは25~70質量%、更に好ましくは45~65質量%である。
【0058】
粘着剤は、粘着剤組成物から形成されうる。当該粘着剤組成物は、アクリル系共重合体の他、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属キレート系架橋剤などが挙げられる。架橋剤の添加量は、アクリル系共重合体100質量部に対して、0.001~10質量部であることが好ましく、0.005~0.5質量部であることがより好ましい。
【0059】
また、粘着剤組成物は、粘着付与剤を含んでいてもよい。粘着付与剤としては、特に制限されず、脂環族系石油樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられる。粘着付与剤の添加量は、例えば、粘着剤組成物100質量部に対して、0.1~10質量部であり、0.5~5質量部であってもよい。例えば、アクリル系共重合体を乳化重合法によって得る形態においては、(1)重合開始前の単量体混合物、乳化剤、水等に粘着付与剤を添加した後、単量体を重合する方法;(2)粘着付与剤、乳化剤および水等を用いて、粘着付与剤の乳化液を作製し、当該乳化液を用いて粘着剤組成物に配合する方法;などによって粘着付与剤を添加して粘着剤組成物を形成してもよい。上記で用いられる乳化剤は、アクリル系重合体の乳化重合の欄に記載した乳化剤等を適宜用いることができる。
【0060】
粘着剤層の厚み(乾燥後膜厚)は、通常5~100μmであってもよく、5~50μmであってもよい。環境対応からは、粘着剤層が薄いほうが好ましいことから、粘着剤層の厚みは、例えば、20μm以下であり、15μm以下である。また、粘着性を担保する観点から、粘着剤層の厚みは5μm以上であることが好ましく、6μm以上であることがより好ましい。
【0061】
<剥離ライナー>
剥離ライナーは、粘着剤層を保護し、粘着性の低下を防止する機能を有する部材である。そして、剥離ライナーは、被着体に貼付する際に粘着シートから剥離される(剥離ライナーは粘着剤層から剥離可能である)。このため、本発明における粘着シートは、剥離ライナーを有していないものも包含される。
【0062】
剥離ライナーとしては、特に限定されるものではないが、上質紙、グラシン紙、クレーコート紙、ポリエチレンラミネート紙などの紙;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルム;などが挙げられる。
【0063】
剥離ライナーの厚みは、通常10~400μm程度である。また、剥離ライナーの表面には、粘着剤層の剥離性を向上させるためのシリコーンなどから構成される剥離剤からなる層が通常設けられる。かような層が設けられる場合の当該層の厚みは、通常0.01~5μm程度である。
【0064】
<製造方法>
本発明の他の一実施形態は、紙基材上に澱粉類および/またはポリビニルアルコールを含むコート層を形成させてコート層形成基材を得ることと、前記コート層形成基材のコート層上に粘着剤層を形成することと、を有する粘着シートの製造方法である。
【0065】
コート層の形成方法としては、例えば、澱粉類および/またはポリビニルアルコールを含むコート層形成用組成物を準備し、当該組成物を紙基材に塗布する方法が挙げられる。
【0066】
澱粉類および/またはポリビニルアルコール、必要に応じて添加剤、さらに溶媒を混合してコート層形成用組成物を準備する。溶媒は、適宜選択されるが、好ましくは、溶媒は水を含む水系溶媒である。水系溶媒とは水を50質量%以上(上限100質量%)含有されたものを指し、好ましくは70質量%以上、より好ましくは85質量%以上であり、最も好ましくは水系媒体が水である。
【0067】
水系媒体中に含まれる水以外の成分としては、水に溶解する有機溶剤が挙げられる。水に溶解する有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルセルソルブ、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0068】
コート層形成用組成物の固形分は、塗布のしやすさなどを考慮して適宜設定されるが、例えば、5~50質量%である。
【0069】
塗布の方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法、例えば、紙基材上に澱粉類/ポリビニルアルコールを含むコート層形成用組成物を塗布し、乾燥させて、コート層を形成する方法等を採用することができる。塗布方法としては特に限定されるものではないが、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロッドブレードコーター、バーブレードコーター、グラビアコーター、バーコーター、多段ロールコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ゲートロールコーター、サイズプレスコーター、シムサイザー等の各種塗工装置を適宜選択して塗布する方法を採用することができる。
【0070】
なお、コート層形成用組成物は紙基材の両面に塗布してもよいが、本発明の効果の観点および生産性の観点から、片面塗布であることが好ましい。
【0071】
コート層が形成されたコート層形成基材のJIS P 8119:1998に準拠して測定したコート層表面の(ベック)平滑度は、50秒以上であることが好ましい。コート層表面の平滑度が50秒以上であることで、紙基材の表面が十分に覆われ(紙基材の凹部が少なくなり)、粘着剤の染み込み防止効果が一層発揮されやすくなる。コート層表面の平滑度は、50秒以上であることが好ましく、100秒以上であることがより好ましい。コート層表面の平滑度の上限は特に設けないが、通常300秒である。
【0072】
コート層が形成されたコート層形成基材のJIS L 1096:2010 8.21.1 A法(45°カンチレバー法)に準拠して測定した剛軟度は、150mm以下であることが好ましく、150mm未満であることがより好ましく、140mm以下であることがさらにより好ましい。コート層形成基材の剛軟度が150mm以下であることで、被着体が曲面形状であっても粘着性が担保されやすい。コート層形成基材の剛軟度は、60~150mmであることが好ましく、65mm以上150mm未満であることがより好ましく、70~140mmであることがさらにより好ましい。
【0073】
粘着剤層の形成方法は、特に限定されるものではないが、コート層形成基材上のコート層形成面に粘着剤組成物を直接塗工して粘着剤層を形成してもよく、また、剥離ライナー上に粘着剤層を形成した後、これをコート層形成基材上のコート層形成面に貼合してもよい。具体的には、剥離ライナー上に粘着剤組成物を塗布・乾燥し、粘着剤組成物からなる粘着剤層を紙基材のコート層側に転写する方法が挙げられる。
【0074】
粘着剤組成物の基材または剥離ライナーへの塗布方法は特に限定されず、例えばロールコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スロットダイコーター、リップコーター、グラビアコーターなどの公知の塗布装置を用いて塗布することができる。乾燥条件としては特に限定されず、通常60~150℃にて10~90秒の条件で行われる。
【実施例0075】
次に実施例について説明する。実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「質量部」あるいは「質量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
【0076】
実施例1:
基材としてグロス紙(厚み:88μm、片面グロスコート、非コート面算術平均表面高さ(Sa):2.32μm)を準備した。基材の非コート面側に、酸化デンプン(王子コーンスターチ社製、王子エースA)水溶液(固形分10質量%)を、マイヤーバーを用いて乾燥後の重量が2.5g/m2となるよう塗布し、90℃で1分間乾燥させ、コート層を形成した。
【0077】
次に、剥離ライナーとしてのシリコーンを塗布したグラシン紙上に、エマルション型粘着剤(アクリル酸2-エチルヘキシル/アクリル酸n-ブチル/メタクリル酸メチル/アクリル酸=50/45/3/2(質量比)である単量体混合物から形成されてなるアクリル酸共重合体100質量部にロジン樹脂(軟化点100℃)1質量部を添加したもの、溶媒:水、固形分40質量%)を、ロールコーターを用いて乾燥後の重量が10g/m2になるよう塗布し、90℃で1分間乾燥させ、粘着剤層を形成した。
【0078】
得られた粘着剤層上に、樹脂層が形成された基材を貼合し、グロス紙/コート層/粘着剤層/剥離ライナーという構成の粘着シートを得た。
【0079】
実施例2:
樹脂層の乾燥後の重量が7.0g/m2になるように変更した以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0080】
実施例3:
酸化デンプン水溶液の代わりに未変性ポリビニルアルコール(PVA、鹸化度98モル%、分子量75,000)水溶液(固形分10質量%)を使用した以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0081】
実施例4:
酸化デンプン(王子コーンスターチ社製、王子エースA)30質量部、ポリビニルアルコール(鹸化度98モル%、分子量75,000)10質量部、スチレン-ブタジエン樹脂(SBR、日本エイアンドエル社製、スマーテックスSN-309R)60質量部、カオリン(イメリス社製、アストラコート、平均粒径3μm)295質量部を混合し、イオン交換水で希釈してクレーコート形成用塗布液(固形分50質量%)を調製した。
【0082】
酸化デンプン水溶液の代わりに上記で得られたクレーコート層形成用塗布液を使用した以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0083】
比較例1:
コート層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0084】
比較例2:
酸化デンプン水溶液の代わりにスチレン-アクリル共重合樹脂(ヘンケルジャパン社製、AQUENCE EPIX BC-900F)の水分散液(固形分10質量%)を使用した以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0085】
<測定方法>
・剛軟度
実施例および比較例で作製したコート層が形成された基材を用い、JIS L 1096:2010 8.21.1の45°カンチレバー法に基づいて剛軟度を測定した。
【0086】
・ベック平滑度
実施例および比較例で作製したコート層が形成された基材を用い、JIS P 8119:1998に基づいてコート層面の平滑度を測定した。なお、比較例1はグロス紙の非コート面を測定した。
【0087】
・コート層形成基材厚み
実施例および比較例で作成したコート層が形成された基材を用い、JIS P 8113:2014に基づいて定圧厚さ測定器(テクロック社製、PG-02J)を使用して測定した。
【0088】
・粘着剤層厚み
実施例および比較例で作製した粘着シートの断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所社製、S-4700)で観察し、コート層の粘着剤層側の界面から粘着剤層のコート層とは反対側の界面までの距離を3か所計測し、その平均値を粘着剤層厚みとした。比較例1の場合は、紙基材の粘着剤層側の界面から粘着剤層の紙基材とは反対側の界面までの距離を計測した。
【0089】
・粘着力
実施例および比較例で作製した粘着シートを、23℃、50%RH環境下で1日静置した後、剥離ライナーを剥がしステンレス板(SUS)およびポリエチレン板(PE)にそれぞれ貼付した。貼付して30秒以内に粘着シートを引き剥がし、粘着力を測定した。測定は、JIS Z 0237:2022の10.4.1に準じて行った。
【0090】
・曲面貼付率
各粘着シートの粘着剤層とは反対側にラミネートフィルム(ポリプロピレン(20μm)/粘着剤(15μm))を貼合後、22mm×25mmの大きさ(S1)にカットし、直径10mmのポリエチレン製丸棒に、円周方向がラベルの長手になるよう貼付した。23℃、50%RH環境下に3日静置した後、浮きが発生しなかった面積(S2)を測定し、以下の式から曲面貼付率を算出した。
曲面貼付率[%]=(S2/S1)×100
結果を下記表1に示す。
【0091】
【0092】
上記表1の結果より、実施例の粘着シートは、SUSまたはPEのいずれの被着体に対しても粘着性が担保されるものであった。一方、コート層を含まない比較例1は、粘着力および曲面貼付率のいずれも実施例よりも劣るものであった。これは、紙基材の凹部に粘着剤が染み込んだことで、粘着剤層の厚みが薄くなったことに起因すると考えられる。また、コート層が澱粉/PVAを含まず、代わりにスチレン樹脂を含む比較例2は、曲面貼付率が著しく低いものであった。