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  • 特開-ベルトの取り付け方法 図1
  • 特開-ベルトの取り付け方法 図2
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  • 特開-ベルトの取り付け方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130118
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ベルトの取り付け方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 7/24 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
F16H7/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039646
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】豊永 真菜
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕也
(72)【発明者】
【氏名】中村 洸大
(72)【発明者】
【氏名】西口 美幸
【テーマコード(参考)】
3J049
【Fターム(参考)】
3J049AA01
3J049CA03
(57)【要約】
【課題】ベルトを簡単に取り付けできる方法を開示する。
【解決手段】例えば、第1補機駆動ベルト17をクランクプーリ4とエアコンプーリ28とウオポンプーリ26とに取り付ける方法に適用できる。エアコンプーリ28の近くに第1治具31をボルト35で固定し、第1補機駆動ベルト17がエアコンプーリ28から外れることを防止する。第2治具32は、クランクプーリ4に抜け不能でかつ一緒に回転させ得るように装着されている。第1補機駆動ベルト17の非嵌合部17aは、第2治具32の係止部42を経由して第2治具32の前面に至っている。クランクプーリ4を第2治具32と一緒に回転させると、非嵌合部17aが順次クランクプーリ4のベルト溝7に嵌合していく。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合った一方のプーリと他方のプーリにベルトを取り付ける方法であって、
前記一方のプーリに前記ベルトを完全に嵌め込んでから、第1治具によって前記ベルトが前記一方のプーリから外れないように保持した状態で、
前記他方のプーリに前記ベルトを部分的に嵌め込み、前記他方のプーリに相対回転不能に装着した第2治具の係止部を前記ベルトのうち前記他方のプーリから外れた非嵌合部に係止して前記他方のプーリを回転させて、前記ベルトを弾性に抗して引き伸ばしながら前記ベルトの非嵌合部を前記他方のプーリの外周側に順次移動させていくことにより、前記ベルトを前記他方のプーリに完全に嵌め込む、
ベルトの取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ベルトを環状溝付きプーリに取り付ける(巻き掛ける)方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環状溝付きのプーリにベルト(ストレッチベルト)を取り付ける方法として、プーリを所定の位置に配置しておいて、隣り合った2つのプーリのうち一方のプーリにベルトを完全に嵌め込んでおいて、他方のプーリにベルトを部分的に嵌め込んで、ベルトを弾性に抗して強く引き伸ばしながら他方のプーリを回転させることにより、ベルトを他方のプーリに対して完全に嵌め込むことが行われているが、この作業は大きな力を要して厄介である。特に、プーリに複数の環状溝が形成されてベルトに複数のリブが形成されている場合、環状溝及びリブの数が多くなるほど(プーリ及びベルトの幅寸法が大きくなるほど)、ベルトの取り付け作業は厄介になる。
【0003】
また、プーリに複数本のベルトを軸方向に離して巻き掛けている場合、内側に位置したベルトは取り付けに際して軸方向に大きく変形させなければならないため、ベルトの取り付けは更に厄介になる。
【0004】
そこで、例えば特許文献1に見られるように、ベルトの巻き掛けを補助する治具が提案されている。この治具は、プーリに相対回転不能に取り付けられるもので、治具を装着したプーリを回転させると、ベルトのうちプーリから外れている非嵌合部が引き伸ばされながらプーリの外周側に移動していき、ベルトの非嵌合がプーリのベルト溝に順次嵌合していく。従って、人手のみで行われる方法に比べてベルトの取り付けを容易に行える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-70492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、ベルトの取り付け作業時には、ベルトは他方のプーリに対して部分的に嵌合しており、ベルトのうち他方のプーリから外れている非嵌合部は他方のプーリの外端面の外側に位置している。このため、ベルトには他方のプーリから外れるように外力が作用しており、この外力がベルトのうち一方のプーリの嵌合している部分にも作用して、ベルトが一方のプーリのから外れてしまうことがあった。
【0007】
そして、ベルトが一方のプーリから外れることを防止するためには、片手でベルトを一方のプーリに対して押さえ付けておかねばならないが、他方のベルトの回転に伴ってベルトは周回するため、ベルトを一方のプーリに対してしっかりと押さえ保持できない場合もあり、このため、特許文献1のような治具を使用してもベルトの取り付けは厄介であった。
【0008】
特に、ベルトの幅が広くなると、ベルトが他方のプーリの外側にはみ出る寸法も大きくなるため、厄介さが倍加していた。また、1つのプーリに複数本のベルトが巻き掛けされている場合において内側のベルトを取り付ける場合、内側のベルトは大きく変形させなければならないことから一方のプーリから外れようとする力も大きく、従って、この場合もベルトの取り付けは厄介であった。
【0009】
本願発明は、この現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、隣り合った一方のプーリと他方のプーリにベルトを取り付ける方法に関し、この方法は、
「前記一方のプーリに前記ベルトを完全に嵌め込んでから、第1治具によって前記ベルトが前記一方のプーリから外れないように保持した状態で、
前記他方のプーリに前記ベルトを部分的に嵌め込み、前記他方のプーリに相対回転不能に装着した第2治具の係止部を前記ベルトのうち前記他方のプーリから外れた非嵌合部に係止して前記他方のプーリを回転させて、前記ベルトを弾性に抗して引き伸ばしながら前記ベルトの非嵌合部を前記他方のプーリの外周側に順次移動させていくことにより、前記ベルトを前記他方のプーリに完全に嵌め込む」
という手順で行われる。本願発明において、プーリの数は3個以上あってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本願発明では、ベルトは第1治具によって一方のプーリに嵌合した状態に保持されるため、第2治具が装着された他方のプーリを回転させるだけで、ベルトを正規の状態に取り付けることができる。従って、ベルトの巻き掛け作業を迅速かつ正確に行える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態が適用されるエンジンの部分的な正面図である。
図2】(A)は図1のIIA-IIA 視断面図、(B)の図1のIIB-IIB 視断面図、(C)は第2治具の斜視図、(D)は第1治具の斜視図である。
図3】第2治具を示す図で、(A)は正面図、(B)は背面図、(C)は(B)のC-C視図、(D)は(A)のD-D視図である。
図4】ベルトの取り付け手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本願発明を自動車用エンジンのベルト取り付けに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。以下では、方向を特定するための前後・左右の文言を使用するが、前後方向はエンジンのクランク軸線方向、左右方向はクランク軸線及びシリンダボア軸線と直交した方向(エンジンの幅方向)としている。前と後ろは、タイミングチェーンが配置されている側を前、ミッションが配置されている側を後ろとしている。
【0014】
(1).エンジンの構造
図1はエンジンの部分的な正面図であり、エンジンは、シリンダブロック及びシリンダヘッド(いずれも図示せず)の前面に固定されたチェーンカバー(フロントカバー)1を有している。図1において、チェーンカバー1の下方にオイルパン2を表示している。オイルパン2とはシリンダブロックの下面に固定されている。
【0015】
図2(A)に示すように、チェーンカバー1からクランク軸3の前端部が突出しており、クランク軸3の前端にクランクプーリ4がボルト5によって固定されている。図2(A)のとおり、クランクプーリ4は、2本のリブ6を備えた第1ベルト溝7と、5本のリブ6を備えた第2ベルト溝8とを有している。両ベルト溝7,8は同径に設定されており、第1ベルト溝7が内側(チェーンカバー1に近い側)に位置している。
【0016】
エンジンは、クランク軸3を車幅方向に長い姿勢で自動車のエンジンルームに配置されている。また、排気側面を車体の前方に向けて、吸気側面を車体の後方に向けている。従って、横置き・前排気(或いは横置き・後ろ吸気)のタイプである。
【0017】
図2(A)に示すように、クランクプーリ4は、クランク軸3の小径部3aに嵌合する内向き小径ボス部9を有する円板部10と、円板部10の外周部に一体に設けた大径のリム部11とを有しており、円板部10に、周方向に等間隔を隔てた複数個(4個、偶数個)の円弧状逃がし穴12が形成されており、逃がし穴12の両端に位置した部位に、逃がし穴12の外側に入り込んだ段部13を形成している。
【0018】
図1に示すように、エンジンは、補機としてのエアコン用コンプレッサ14とウォータポンプ15とISG(インテグレーテット・スタータ・ジェネレータ)16とを備えており、エアコン用コンプレッサ14とウォータポンプ15とは第1補機駆動ベルト17で駆動されて、ISG16は第2補機駆動ベルト18で駆動される。第1補機駆動ベルト17はクランクプーリ4の第1ベルト溝7に巻き掛けられて、第2補機駆動ベルト18はクランクプーリ4の第2ベルト溝8に巻き掛けられている。
【0019】
ISG16は、シリンダブロック及びチェーンカバー1を挟んで排気側に配置されており、シリンダブロックとチェーンカバー1とにそれぞれブラケット19を介して固定されている(図では、チェーンカバー1に取り付くブラケット19のみを表示している。)。ISG16の回転軸心は、クランクプーリ4の回転軸心よりもやや高くなっている。
【0020】
ISG16は、第2補機駆動ベルト18が巻き掛けられたISGプーリ20を備えている。そして、ISG16は発電状態と駆動状態とで回転方向が変わるため、正逆いずれに周回しても第2補機駆動ベルト18に同一の張り状態が保持されるように、第2補機駆動ベルト18にはその上下から一対のオートテンショナ21が当接している。すなわち、オートテンショナ21は、ばね(図示せず)によって一定方向に回動するように回動するアーム22と、アーム22の先端(自由端)に設けたテンションローラ23とを有しており、テンションローラ23は第2補機駆動ベルト18に背面掛けされている。
【0021】
ウォータポンプ15は、クランクプーリ4の上方でかつクランクプーリ4よりも吸気側にずれた部位に配置されている。符号24で示す部材はウォータポンプ15を構成するポンプハウンジングであり、ポンプハウンジング24に、第1補機駆動ベルト17で駆動されるウオポンプーリ26が回転自在に保持されている。ポンプハウジング24で囲われて内部に羽根車を配置したポンプ室が形成されており、羽根車はウオポンプーリ26で駆動される。なお、図1において符号25で示すのはオイルフィルター取り付け座であり、チェーンカバー1に一体に形成されている。
【0022】
エアコン用コンプレッサ14は、クランクプーリ4とウォータポンプ15との間の高さ位置でかつ吸気側にずれた部位に配置されている。従って、エアコン用コンプレッサ14とISG16とは、クランクプーリ4を挟んで左右に振り分けて配置されている。エアコン用コンプレッサ14は、ブラケット27を介してチェーンカバー1又は(及び)シリンダブロックに固定されている。エアコン用コンプレッサ14はエアコンプーリ28を備えており、エアコンプーリ28に第1補機駆動ベルト17が巻き掛けられている。従って、第1補機駆動ベルト17は、クランクプーリ4とウオポンプーリ26とエアコンプーリ28とに略三角形の姿勢で巻き掛けられている。
【0023】
(2).治具
エンジンでは、第1補機駆動ベルト17と第2補機駆動ベルト18との2本のベルトが使用されているが、前側に位置した第2補機駆動ベルト18は、オートテンショナ21を緩めておくことによってクランクプーリ4とISGプーリ20とに巻き掛けられる。他方、第1補機駆動ベルト17は、図2(B)に示す第1治具31と、図2(D)及び図3に示す第2治具32とを使用してクランクプーリ4とエアコンプーリ28とウオポンプーリ26とに取り付けられる。
【0024】
第1治具31は、円筒体33の一端に押さえ板34を一体に設けた構成であり、円筒体33は、ボルト(図4参照)35によってエアコン用コンプレッサ14のブラケット27に固定される。エアコン用コンプレッサ14のブラケット27はボルト36でチェーンカバー1又はシリンダブロックに固定されているが、本例では、ブラケット用の1本のボルト36をいったん抜き取って、一時的に第1治具31を固定している。
【0025】
ブラケット27は複数本のボルト36でチェーンカバー1又はシリンダブロックに固定されており、かつ、図示しない位置決め手段でずれ不能に保持されているため、1本のボルト36をいったん抜き取ってもエアコン用コンプレッサ14はずれ不能に保持されている。エアコン用コンプレッサ14のブラケット27又はチェーンカバー1に、第1治具31を固定するためのタップ穴を別途設けることも可能である。
【0026】
押さえ板34は、円筒体33から一方の方向に偏心して延びるように配置されており、円筒体33から遠い側に起立片34aを折り曲げ形成している。このため、押さえ板34と起立片34aとが連接した曲がり部の外面37は丸みを帯びている。図4の状態から第1補機駆動ベルト17が押さえ板34から外れることがあるが、実施形態のように曲がり部の外面37に丸みを付けておくと、第1補機駆動ベルト17が押さえ板34から外れるに際して傷付くことを防止できる。
【0027】
第2治具32は、クランクプーリ4の外径よりもやや大径で円形に近い基板38と、基板38の前面(外面)突設されたランド部39と、基板38の後面(内面)に突設した円形ボス部40と、円形ボス部40から後ろ向きに(内向きに)突出した一対の足体41とを備えており、ランド部39から係止部42が放射方向に向けて突設されている。図2(C)や図3(D)に示すように、基板38のうち、前面(外面)と外周面とが連接する周縁部38aは丸みを帯びている。基板38には円形の中心穴43が空いている。
【0028】
図3(A)に明示するように、ランド部39は基板38の中心を通る線と平行な一側面39aを有している一方、基板38のうちランド部39の一側面39aの側に位置した部位は、2段階に切り欠かれている。すなわち、基板38は、ランド部39の一側面39aに沿って切り欠かれていると共に、円形ボス部40の接線に沿っても切り欠かれており、2つの切り欠きの側面44a,44bは平行になっている。
【0029】
係止部42は基板38の外周面の外側に突出している。また、図3(D)に明示するように、係止部42の先端面(外周面)42aは、内側に行くに従って軸心に近づくように傾斜した傾斜面になっている。また、係止部42の後端部42bは、足体41の後端と同じ高さに突出している。従って、図2(A)に一点鎖線で示すように、係止部42の先端部はクランクプーリ4における第2ベルト溝8の半分程度に重なるようになっている。
【0030】
図2(C)及び図3(C)に示すように、基板38のうち係止部42に寄った部位には、係止部42と連続した状態で周方向に延びる薄肉状の補助ガイド部38bを一体に設けている。
【0031】
一対の足体41は基板38の軸心を挟んだ反対側に位置しており、かつ、クランクプーリ4の逃がし穴12に入り込むように設定されている。そして、足体41の先端に、正面視で反時計回り方向に突出した係止爪45を突設して、係止爪45がクランクプーリ4の段部13に入り込むように設定している。従って、第2治具32をクランクプーリ4に重ねて正面視で時計回り方向に相対回転させると、一対の係止爪45がクランクプーリ4の段部13に係止することにより、第2治具32はクランクプーリ4から離反不能に保持されると共に、第2治具32とクランクプーリ4とを一緒に時計回り方向に回転させることができる。
【0032】
(3).ベルトの取り付け手順
図示のエンジンでは、まず第1補機駆動ベルト17をクランクプーリ4の第1ベルト溝7とエアコンプーリ28とウオポンプーリ26とに巻き掛けて、次いで、第2補機駆動ベルト18をクランクプーリ4の第2ベルト溝8とISGプーリ20とに巻き掛ける。既述のとおり、第2補機駆動ベルト18の巻き掛けはオートテンショナ21を緩めることによって行われて、第1補機駆動ベルト17の巻き掛けは、図4に示すように、治具31,32を使用して行われる。
【0033】
すなわち、第1補機駆動ベルト17を取り付けるに当たっては、まず、第1治具31をエアコン用コンプレッサ14のブラケット27にボルト35で固定して、エアコンプーリ28から第1補機駆動ベルト17が浮き上がらないように設定しておく一方、第2治具32はクランクプーリ4に抜け不能に装着しておく。次いで、第1補機駆動ベルト17を、エアコンプーリ28とウオポンプーリ26とに対して正規の状態に巻き掛けると共に、クランクプーリ4の第1ベルト溝7に対しては部分的に嵌め込んで、クランクプーリ4の第1ベルト溝7からあぶれた非嵌合部17aは、第2治具32の係止部42に引っ掛けた状態で、第2治具32の手前に重ねる。
【0034】
そして、クランクプーリ4と第2治具32とを一緒に時計回り方向に回転させると、第1補機駆動ベルト17は周回してエアコンプーリ28及びウオポンプーリ26も回転していき、第1補機駆動ベルト17が弾性に抗して伸び変形することにより、第1補機駆動ベルト17の非嵌合部17aはクランクプーリ4の第1ベルト溝7に嵌合していき、やがて、第1補機駆動ベルト17の所定の範囲がクランクプーリ4の第1ベルト溝7に嵌合して、非嵌合部17aはゼロになる。それから、第1治具31と第2治具32とを取り外す。
【0035】
さて、図2から容易に理解できるように、クランクプーリ4の第1ベルト溝7は第2ベルト溝8よりも後ろに位置しているため、第1補機駆動ベルト17の取り付け工程で、第1補機駆動ベルト17の非嵌合部17aは第1ベルト溝7及びエアコンプーリ28から手前側に大きく離れており、このため、第1補機駆動ベルト17のうちクランクプーリ4とエアコンプーリ28との間に位置した部位は、自身の弾性力によって手前側に強く押される傾向を呈する。
【0036】
このため、特段の手当てをしないと、第1補機駆動ベルト17がエアコンプーリ28から外れやすくなるが、本実施形態では、第1補機駆動ベルト17は第1治具31によってエアコンプーリ28から外れないように保持されているため、第1補機駆動ベルト17がエアコンプーリ28から外れることを防止して、第1補機駆動ベルト17の取り付けを確実に行える。また、作業者は第1補機駆動ベルト17をエアコンプーリ28に向けて手で押しつけておく必要はなく、クランクプーリ4の回転のみに注力したらよいため、作業者の負担も軽減できる。
【0037】
また、第2治具32については見ると、第1補機駆動ベルト17の非嵌合部17aは、図2(A)に二点鎖線で模式的に示すように、クランクプーリ4の第2ベルの溝8から外れて係止部42を経由して基板38の前面(外面)に至っており、捩じれた状態で第2治具32に重なっている。
【0038】
そして、本実施形態のように係止部42の先端面42aを傾斜面に形成すると、第1補機駆動ベルト17の非嵌合部17aは、急激に屈曲することなく緩く湾曲した状態で第2治具32に巻き付くため、第1補機駆動ベルト17の損傷を防止できる。また、係止部42の先端面42aが傾斜面であると、非嵌合部17aはクランクプーリ4の側に移動し勝手になるため、クランクプーリ4の第1ベルト溝7への嵌め込みもスムースに行われる。
【0039】
更に、本実施形態では、第1治具31及び第2治具32の両方について、第1治具31と接触する部位37,38aをエッジが出ないように丸みを持たせているため、第1補機駆動ベルト17の損傷を防止できる。このような配慮も本実施形態の特徴の一つである。
【0040】
なお、エンジンにおいて、第1補機駆動ベルト17と第2補機駆動ベルト18との前後位置(クランクプーリ4の第1ベルト溝7と第2ベルト溝8との前後位置)を逆にしてもよい。この場合は、第1補機駆動ベルト17の取り付けは更に容易になる。
【0041】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、第1治具はエアコンプーリのようなプーリの端面に固定することも可能である。また、本願発明は、補機駆動ベルトの取り付けのみでなく、ベルトで動力伝達が成される伝動部に広く適用できる。エンジンのベルトに適用する場合、補機としてのオルタネータを駆動するベルトの取り付けにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本願発明は、エンジン用補機駆動ベルト等のベルトの取り付けに具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0043】
1 チェーンカバー(フロントカバー)
3 クランク軸
4 クランクプーリ
6 ベルトのリブ
7 第1ベルト溝
8 第2ベルト溝
10 円板部
12 逃がし穴
13 段部
14 補機の一例としてのエアコン用コンプレッサ
15 補機の一例としてのエアコン用ウォータポンプ
16 補機の一例としてのISG(インテグレーテット・スタータ・ジェネレータ
17 第1補機駆動ベルト
17a 非嵌合部
18 第2補機駆動ベルト
20 ISGプーリ
26 ウオポンプーリ
28 エアコンプーリ
31 第1治具
32 第2治具
33 円筒体
34 押さえ板
35 ボルト
38 基板
39 ランド部
41 足体
42 係止部
45 係止爪
図1
図2
図3
図4