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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130123
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】制御バルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/076 20060101AFI20240920BHJP
   F01P 7/16 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F16K11/076 Z
F01P7/16 503
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039652
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000144810
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】大関 哲史
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA12
3H067CC32
3H067CC33
3H067DD03
3H067DD12
3H067DD32
3H067EA02
3H067FF11
3H067GG13
(57)【要約】
【課題】部品点数の削減や低コスト化を図った上で、回路の切り替えを行うことができることができる制御バルブを提供する。
【解決手段】本発明の態様に係る制御バルブは、ケーシングと、弁体を有するロータと、を備えている。弁体のうち、ロータの中心軸線回りで異なる位置には、内部空間の内外を連通させる第1連通口及び第2連通口が形成されている。弁体は、第1連通口に連通するとともに軸方向の第1側に開口する第1空間、及び第2連通口に連通するとともに軸方向の第2側に開口する第2空間に、内部空間を仕切る仕切部を備えている。ロータは、第1空間を通じて第1流入口及び第1流出口が連通し、かつ第2空間を通じて第2流入口及び第2流出口が連通する第1状態、並びに第1空間を通じて第1流入口及び第2流出口が連通し、かつ第2空間を通じて第2流入口及び第1流出口が連通する第2状態間を回転する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から流体が流入する第1流入口及び第2流入口、並びに流体が外部に流出する第1流出口及び第2流出口が形成されたケーシングと、
軸方向の第1側に位置して前記ケーシングに回転可能に支持された軸部、及び前記軸部から軸方向の第2側に向かうに従い外径が漸次拡大する内部空間を形成する弁体を有し、前記弁体の外周面が前記ケーシングに形成された支持面上を摺動可能に支持されたるロータと、を備え、
前記弁体のうち、前記ロータの中心軸線回りで異なる位置には、前記内部空間の内外を連通させる第1連通口及び第2連通口が形成され、
前記弁体は、前記第1連通口に連通するとともに前記軸方向の第1側に開口する第1空間、及び前記第2連通口に連通するとともに前記軸方向の第2側に開口する第2空間に、前記内部空間を仕切る仕切部を備え、
前記ロータは、前記第1空間を通じて前記第1流入口及び前記第1流出口が連通し、かつ前記第2空間を通じて前記第2流入口及び前記第2流出口が連通する第1状態、並びに前記第1空間を通じて前記第1流入口及び前記第2流出口が連通し、かつ前記第2空間を通じて前記第2流入口及び前記第1流出口が連通する第2状態間を回転する制御バルブ。
【請求項2】
前記第1流出口及び前記第2流出口は、前記軸方向に交差する径方向のうち第1方向で向かい合う位置に配置され、
前記第1流入口及び前記第2流入口は、前記軸方向から見て前記第1方向に交差する第2方向で向かい合う位置に配置されている請求項1に記載の制御バルブ。
【請求項3】
前記第2空間の容積は、前記第1空間の容積よりも大きい請求項1又は請求項2に記載の制御バルブ。
【請求項4】
前記弁体は、前記軸方向に沿う断面視において、前記軸方向の第1側から第2側に向かうに従い前記軸方向に交差する径方向の外側に向けて直線状に延びている請求項1又は請求項2に記載の制御バルブ。
【請求項5】
前記弁体は、前記軸方向に沿う断面視において、前記軸方向に交差する径方向で向かい合う部分同士のなす角度は、90°よりも大きく、180°よりも小さい請求項1又は請求項2に記載の制御バルブ。
【請求項6】
前記第2流入口及び前記第2流出口は、車両の非駆動デバイスに流体を供給する非駆動用回路に接続される請求項1又は請求項2に記載の制御バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御バルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両には、発熱部(例えば、エンジンやモータ等)と、放熱部(例えば、ラジエータやヒータ等)と、の間で循環する冷却液によって発熱部を冷却する冷却システムが搭載されている。この種の冷却システムでは、発熱部と放熱部とを接続する流路上に制御バルブが設けられることで、冷却液の流通が制御されている。
【0003】
近時では、制御バルブとして、更なる小型化を図ることが検討されている。例えば下記特許文献1には、第1開口部及び第2開口部を弁体の軸方向に並列で配置した上で、弁体のうち第1開口部及び第2開口部に対して周方向で異なる位置に、第1開口部及び第2開口部の少なくとも一部が重なり合うように第3開口部を配置する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-59615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術にあっては、例えばポートと開口部との間にシール機構を各開口部毎に設ける必要がある。そのため、従来技術では、部品点数の削減や低コスト化を図る点で未だ改善の余地があった。
また、従来技術にあっては、流入口が一つのみしか設けられていないため、回路の切り替えを行うには、回路上に複数の制御バルブを配置する必要があった。
【0006】
本発明は、部品点数の削減や低コスト化を図った上で、回路の切り替えを行うことができることができる制御バルブを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示は以下の態様を採用した。
(1)本開示の一態様に係る制御バルブは、外部から流体が流入する第1流入口及び第2流入口、並びに流体が外部に流出する第1流出口及び第2流出口が形成されたケーシングと、軸方向の第1側に位置して前記ケーシングに回転可能に支持された軸部、及び前記軸部から軸方向の第2側に向かうに従い外径が漸次拡大する内部空間を形成する弁体を有し、前記弁体の外周面が前記ケーシングに形成された支持面上を摺動可能に支持されたるロータと、を備え、前記弁体のうち、前記ロータの中心軸線回りで異なる位置には、前記内部空間の内外を連通させる第1連通口及び第2連通口が形成され、前記弁体は、前記第1連通口に連通するとともに前記軸方向の第1側に開口する第1空間、及び前記第2連通口に連通するとともに前記軸方向の第2側に開口する第2空間に、前記内部空間を仕切る仕切部を備え、前記ロータは、前記第1空間を通じて前記第1流入口及び前記第1流出口が連通し、かつ前記第2空間を通じて前記第2流入口及び前記第2流出口が連通する第1状態、並びに前記第1空間を通じて前記第1流入口及び前記第2流出口が連通し、かつ前記第2空間を通じて前記第2流入口及び前記第1流出口が連通する第2状態間を回転する。
【0008】
本態様によれば、弁体の外周面がケーシングの支持面に直接支持されるため、シール部材や軸受を別途設ける必要がない。そのため、部品点数や組立工数の削減、制御バルブの小型化、低コスト化を図ることができる。
また、弁体がテーパ状に形成されていることで、ロータの外径が熱によって膨張収縮した場合に、外径の増減変化に応じてロータがケーシングに対して軸方向に変位する。そのため、ロータの膨張収縮変化に関わらず、弁体が安定してケーシングに支持される。よって、制御バルブの動作安定性を確保できる。
【0009】
特に、本態様において、ロータは、第1空間を通じて第1流入口及び第1流出口が連通し、かつ第2空間を通じて第2流入口及び第2流出口が連通する第1状態、並びに第1空間を通じて第1流入口及び第2流出口が連通し、かつ第2空間を通じて第2流入口及び第1流出口が連通する第2状態間を回転する構成とした。この構成によれば、2つの回路間に制御バルブを設置することで、2つの回路それぞれに独立して流体が流通するモードと、2つの回路間に一括して流体が流通するモードと、で回路の切り替えを行うことができる。しかも、本態様では、第1空間が軸方向の第1側に開口する一方、第2空間が軸方向の第2側に開口することで、各空間内での液圧を均一に保ち易い。そのため、弁体及び支持面間でのシール性を確保した上で、摺動抵抗が過大になることを抑制して、ロータのスムーズな回転を実現できる。
【0010】
(2)上記(1)の態様に係る制御バルブにおいて、前記第1流出口及び前記第2流入口は、前記軸方向に交差する径方向のうち第1方向で向かい合う位置に配置され、前記第1流出口及び前記第2流入口は、前記軸方向から見て前記第1方向に交差する第2方向で向かい合う位置に配置されていることが好ましい。
本態様によれば、各流出口及び各流入口が径方向で異なる向きに配置されるので、配管の取り回しが容易になる。
【0011】
(3)上記(1)又は(2)の何れかの態様に係る制御バルブにおいて、前記第2空間の容積は、前記第1空間の容積よりも大きいことが好ましい。
本態様によれば、第2空間に作用する液圧を確保し易い。そのため、弁体を支持面に向けて押し付けやすくなるので、弁体及び支持面間のシール性を向上させることができる。
【0012】
(4)上記(1)から(3)の何れかの態様に係る制御バルブにおいて、前記弁体は、前記軸方向に沿う断面視において、前記軸方向の第1側から第2側に向かうに従い前記軸方向に交差する径方向の外側に向けて直線状に延びていることが好ましい。
ところで、例えば弁体の断面視形状が円弧状に形成されている場合には、弁体の外周面の接線方向の向きが軸方向の位置で異なる。この場合、弁体が熱によって収縮する際、弁体の軸方向の位置によって変形の挙動が異なる。具体的に、弁体のうち軸方向の第2側に向かうに従い(接線の傾きが大きくなるに従い)、径方向の内側への変形量が大きくなる結果、支持面と弁体との間のシール性を確保し難くなる。
これに対し、本態様によれば、弁体の断面視形状を直線状に形成することで、熱収縮による弁体の変形挙動を軸方向の全体に亘って均一に保ち易い。その結果、ロータの膨張収縮変化に関わらず、弁体が安定して支持面上で支持される。よって、制御バルブの動作安定性を確保できる。
【0013】
(5)上記(1)から(4)の何れかの態様に係る制御バルブにおいて、前記弁体は、前記軸方向に沿う断面視において、前記軸方向に交差する径方向で向かい合う部分同士のなす角度は、90°よりも大きく、180°よりも小さいことが好ましい。
本態様によれば、角度を90°よりも大きくすることで、ロータの外径が熱によって膨張収縮した場合において、外径の増減変化に応じてロータが支持面上をよりスムーズに変位し易くなる。そのため、ロータの膨張収縮変化に関わらず、弁体が安定して支持面上で支持される。よって、制御バルブの動作安定性を確保できる。
【0014】
(6)上記(1)から(5)の何れかの態様に係る制御バルブにおいて、前記第2流入口及び前記第2流出口は、車両の非駆動デバイスに流体を供給する非駆動用回路に接続されることが好ましい。
本態様によれば、車両の電源オフ時に非駆動用回路のみに冷却液を循環させた場合、第2空間の液圧を確保し易くなる。そのため、弁体を支持面に向けて押し付けやすくなるので、弁体を支持面間のシール性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、部品点数の削減や低コスト化を図った上で、回路の切り替えを行うことができることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る冷却システム(個別温調モード)のブロック図である。
図2】実施形態に係る冷却システム(統合モード)のブロック図である。
図3】実施形態に係る制御バルブの斜視図である。
図4】実施形態に係る制御バルブの分解斜視図である。
図5図3のV-V線に対応する断面図である。
図6図3のVI-VI線に対応する断面図である。
図7図5のVII部拡大図である。
図8】実施形態に係るカバーの底面図である。
図9】実施形態に係るカバーを透過して示す制御バルブ(個別温調モード)の平面図である。
図10】実施形態に係るカバーを透過して示す制御バルブ(統合モード)の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下で説明する実施形態や変形例において、対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。本実施形態において、「向かい合う」とは、2つの面それぞれの直交方向(法線方向)が互いに一致している場合に限らず、直交方向同士が交差している場合も含んでいる。
【0018】
[冷却システム1]
図1図2は、冷却システム1のブロック図であって、図1は個別調温モード、図2は統合モードをそれぞれ示している。
図1図2に示すように、冷却システム1は、例えば電動車両に搭載されている。電動車両には、電気自動車やハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、燃料電池自動車等、駆動源としてモータを備えるものが含まれる。また、本実施形態の冷却システムは、車両駆動源としてエンジン(内燃機関)のみを有しているものであってもよい。
【0019】
冷却システム1は、駆動用回路2と、非駆動用回路3と、制御バルブ5と、を備えている。
【0020】
駆動用回路2は、少なくとも車両の電源オン時(READY ON時)において、車両の駆動に供されるデバイス(駆動用デバイス)が接続された回路である。すなわち、駆動用回路2には、動作温度域が比較的高温となり易いデバイスが接続されている。図示の例において、駆動用回路2上には、例えば駆動用モータ(駆動源)7や第1ウォータポンプ8が設けられている。第1ウォータポンプ8及び駆動用モータ7は、駆動用回路2上に上流側から下流側にかけて順に接続されている。なお、駆動用回路2には、駆動用デバイスとしてインバータやラジエータ等が接続されていてもよい。
【0021】
非駆動用回路3は、車両の電源オン時に加え、車両の電源オフ時(READY OFF時)にも供されるデバイス(非駆動用デバイス)が接続された回路である。すなわち、非駆動用回路3には、駆動用デバイスに比べて動作温度域が低いデバイスが接続されている。非駆動用回路3上には、例えばバッテリ10や第2ウォータポンプ11が設けられている。第2ウォータポンプ11及びバッテリ10は、非駆動用回路3上に上流側から下流側にかけて順に接続されている。なお、非駆動用回路3には、非駆動用デバイスとして空調デバイス(例えば、チラーやヒータコア、コンプレッサ等)が接続されていてもよい。
【0022】
制御バルブ5は、いわゆる四方弁として機能する。制御バルブ5は、駆動用回路2の上流端部及び下流端部、並びに非駆動用回路3の上流端部及び下流端部にそれぞれ接続され、冷却システム1中での冷却液の流れを切り替える。
【0023】
制御バルブ5は、例えば車両の通常動作時や車両の電源オフ時等において、図1に示すように、駆動用回路2及び非駆動用回路3を別々の閉回路とする(個別温調モード)。すなわち、個別温調モードでは、各回路2,3に設けられたウォータポンプ8,11を動作させることで、制御バルブ5を介して駆動用回路2及び非駆動用回路3それぞれで冷却液が循環可能である。なお、車両の通常動作時とは、車両の電源オン時において、駆動用デバイス及び非駆動用デバイスがそれぞれ最適な温度域で動作している状態である。
【0024】
制御バルブ5は、例えば車両の始動時や急冷時等、駆動用デバイス及び非駆動用デバイスが最適な温度域外で動作している場合に、図2に示すように、駆動用回路2及び非駆動用回路3を一括の閉回路とする(統合モード)。すなわち、統合モードでは、各回路2,3に設けられたウォータポンプ8,11を動作させることで、制御バルブ5を介して駆動用回路2及び非駆動用回路3間で冷却液が循環可能である。
【0025】
<制御バルブ5>
図3は、制御バルブ5の斜視図である。図4は、制御バルブ5の分解斜視図である。
図3図4に示すように、制御バルブ5は、ケーシング21と、駆動ユニット22と、ロータ23と、付勢部材24と、を備えている。
【0026】
<ケーシング21>
ケーシング21は、ケーシング本体31と、カバー32と、を備えている。以下の説明において、ロータ23の中心軸線O1に沿う方向を単に軸方向という。軸方向において、駆動ユニット22側を下方(第1側)とし、カバー32側を上方(第2側)とする。また、軸方向から見て中心軸線O1に交差する方向を径方向といい、中心軸線O1回りの方向を周方向という。
【0027】
<ケーシング本体31>
ケーシング本体31は、ベース部33と、第1流出ポート34と、第2流出ポート35と、第1流入ポート36と、を備えている。ベース部33、第1流出ポート34、第2流出ポート35及び第1流入ポート36は、例えば樹脂材料を射出成形することよって一体に形成されている。
ベース部33は、上方に向けて開口する有底筒状に形成されている。具体的に、ベース部33は、取付台座41と、ロータ収容部42と、を備えている。
【0028】
図5は、図3のV-V線に対応する断面図である。図6は、図3のVI-VI線に対応する断面図である。
図5図6に示すように、取付台座41は、駆動ユニット22が取り付けられる部分である。取付台座41は、区画壁41aと、起立壁41bと、を備えている。区画壁41aは、軸方向から見た平面視において、ロータ収容部42に対して径方向の外側に張り出す大きさに形成されている。起立壁41bは、区画壁41aの外周縁から下方に向けて延びている。
【0029】
図7は、図5のVII部拡大図である。
図7に示すように、区画壁41aのうち、中心軸線O1上に位置する部分には、区画壁41aを軸方向に貫通する貫通孔45が形成されている。貫通孔45は、軸方向の中央部分に位置する内径が、上端部及び下端部の内径に比べて小さい段付き形状に形成されている。具体的に、貫通孔45は、下方に位置する第1大径部45aと、第1大径部45aに対して上方に連なる小径部45bと、小径部45bに対して上方に連なる第2大径部45cと、を備えている。図示の例において、第1大径部45aと第2大径部45cとの内径は、同等になっている。第2大径部45c内には、Xリング等のシールリング46が収容されている。シールリング46は、第2大径部45cの内周面に嵌め込まれた状態で、第2大径部45cの底面に近接又は当接している。なお、シールリング46の内径は、小径部45bの内径と同等になっている。
【0030】
図5図6に示すように、ロータ収容部42は、ロータ23を収容する部分である。ロータ収容部42は、区画壁41aから上方に延びる筒状に形成されている。すなわち、ロータ収容部42における下端開口部は、区画壁41aによって閉塞されている。ロータ収容部42は、下方から上方にかけて漸次内径が拡大している。具体的に、ロータ収容部42の内周面は、逃げ面51と、移行面52と、支持面53と、位置決め面54と、を備えている。
【0031】
逃げ面51は、貫通孔45(第2大径部45c)における上端開口縁に対して下方に窪んだ位置から径方向の外側に延びている。逃げ面51は、軸方向に直交する平坦面に形成されている。
移行面52は、逃げ面51の外周縁から上方に向けて延びている。移行面52は、中心軸線O1と同軸の円筒面である。すなわち、移行面52は、逃げ面51の周囲を全周に亘って取り囲んでいる。
【0032】
支持面53は、移行面52の上端縁の全周に亘って連なっている。支持面53は、下方から上方に向かうに従い径方向の外側に向けて延びるテーパ面である。軸方向に沿う断面視において、支持面53は、直線状に延びている。軸方向に沿う断面視において、支持面53のうち径方向で向かい合う部分同士がなす角度θ1(図6に示すテーパ角)は、90°<θ1<180°であることが好ましく、110°<θ1<160°であることがより好ましい。軸方向に沿う断面視において、支持面53は、中心軸線O1を基準として対称に形成されている。
【0033】
位置決め面54は、支持面53の上端縁から上方に向けて延びている。位置決め面54は、中心軸線O1と同軸の円筒面である。すなわち、位置決め面54は、支持面53の周囲を全周に亘って取り囲んでいる。
【0034】
図5図6に示すように、ロータ収容部42のうち、支持面53上には、第1流出口53a、第2流出口53b及び第1流入口53cが開口している。各流出口53a,53b及び第1流入口53cは、支持面53上において、上方(軸方向の第2側)に向けて開口している。各流出口53a,53b及び第1流入口53cの開口縁(支持面53との境界部分)は、曲面形状に形成されていることが好ましい。
【0035】
各流出口53a,53bは、同一円周上(軸方向の同じ高さ)で、周方向で180°異なる位置に形成されている。すなわち、各流出口53a,53bは、径方向のうち第1方向(対向方向)で向かい合っている。一方、第1流入口53cは、各流出口53a,53bに対して周方向でずれた位置に配置されている。図示の例において、第1流入口53cは、各流出口53a,53bに対して周方向で90°ずれた位置に配置されている。但し、各流出口53a,53bや第1流入口53cの位置や大きさ等は、適宜変更が可能である。なお、各流出口53a,53bの内径は、同等になっている。
【0036】
図5に示すように、第1流出ポート34は、例えば駆動用回路2の上流端部と制御バルブ5(第1流出口53a)とを接続するものである。第1流出ポート34は、ベース部33に一体形成されている。第1流出ポート34は、軸方向に沿う断面視において、L字の管状に形成されている。具体的に、第1流出ポート34は、上流側に位置する引出部34aと、引出部34aの下流側に連なるジョイント部34bと、を備えている。
【0037】
引出部34aは、第1流出口53aの開口縁から下方に延びている。すなわち、第1流出ポート34は、引出部34aを通じて第1流出口53aに連通している。引出部34aの下端は、区画壁41aの下面と起立壁41bの下端縁との間に位置している。
ジョイント部34bは、引出部34aの下端から第1方向の外側に向けて延びている。ジョイント部34bにおける第1方向の外側端部は、ベース部33よりも外側に突出している。ジョイント部34bの外側端部には、例えば駆動用回路2が接続される。
【0038】
第2流出ポート35は、例えば非駆動用回路3の上流端部と制御バルブ5(第2流出口53b)とを接続するものである。第2流出ポート35は、ベース部33に一体形成されている。第2流出ポート35は、中心軸線O1を対称軸として第1流出ポート34と第1方向で対称に形成されている。具体的に、第2流出ポート35は、上流側に位置する引出部35aと、引出部35aの下流側に連なるジョイント部35bと、を備えている。
【0039】
引出部35aは、第2流出口53bの開口縁から下方に延びている。すなわち、第2流出ポート35は、引出部35aを通じて第2流出口53bに連通している。引出部35aの下端は、区画壁41aの下面と起立壁41bの下端縁との間に位置している。
ジョイント部35bは、引出部35aの下端から第1方向の外側に向けて延びている。すなわち、各流出ポート34,35は、第1方向に直線状に並んでいる。ジョイント部35bにおける第1方向の外側端部は、ベース部33よりも外側に突出している。ジョイント部35bの外側端部には、例えば非駆動用回路3が接続される。
【0040】
図6に示すように、第1流入ポート36は、例えば駆動用回路2の下流端部と制御バルブ5(第1流入口53c)とを接続するものである。第1流入ポート36は、ベース部33に一体形成されている。第1流入ポート36は、軸方向に沿う断面視において、L字の管状に形成されている。具体的に、第1流入ポート36は、下流側に位置する引出部36aと、引出部36aの上流側に連なるジョイント部36bと、を備えている。
【0041】
引出部36aは、第1流入口53cの開口縁から下方に延びている。すなわち、第1流入ポート36は、引出部36aを通じて第1流入口53cに連通している。引出部36aの下端は、区画壁41aの下面と起立壁41bの下端縁との間に位置している。
ジョイント部36bは、引出部36aの下端から径方向のうち第1方向に交差(直交)する第2方向の一方側に向けて延びている。ジョイント部36bにおける第2方向の外側端部は、ベース部33よりも外側に突出している。ジョイント部36bの外側端部には、例えば駆動用回路2が接続される。
【0042】
<カバー32>
図4図6に示すように、カバー32は、ベース部33(ロータ収容部42)の上端開口部を閉塞する。具体的に、カバー32は、対向壁61と、位置決め部62と、ばね支持部63と、第2流入ポート64と、を備えている。対向壁61、位置決め部62、ばね支持部63及び第2流入ポート64は、例えば樹脂材料を射出成形することよって一体に形成されている。
対向壁61は、軸方向を厚さ方向とする板状に形成されている。対向壁61の平面視外形は、ロータ収容部42の平面視外形と同等に形成されている。対向壁61は、ロータ収容部42の上面に重ね合わされた状態で、ロータ収容部42に組み付けられている。これにより、ベース部33の上端開口部がカバー32によって閉塞されている。なお、対向壁61とベース部33(ロータ収容部42)との間には、Oリング等のパッキンが介在している。
【0043】
図8は、カバー32の底面図である。図9は、カバー32を透過して示す制御バルブ5(個別温調モード)の平面図である。
図8図9に示すように、対向壁61には、第2流入口65が形成されている。第2流入口65は、対向壁61を軸方向に貫通するとともに、周方向に延びている。図示の例において、流入口65は、平面視でC字状に形成されている。具体的に、第2流入口65は、第2方向において中心軸線O1に対して他方側(第1流入ポート36とは反対側)を回り込んでいる。流入口65のうち、周方向の一方側端部が第1流出口53aと平面視で重なり合い、周方向の他方側端部が第2流出口53bと平面視で重なり合っている。
【0044】
図5図6に示すように、位置決め部62は、対向壁61の外周部分から下方に向けて突出している。位置決め部62は、中心軸線O1と同軸に配置された筒状に形成されている。位置決め部62は、カバー32がベース部33に組み付けられた状態において、ロータ収容部42の内側に挿入されている。位置決め部62は、位置決め面54に径方向の内側から当接することで、ベース部33に対するカバー32の径方向の位置決めを行う。
【0045】
ばね支持部63は、対向壁61のうち位置決め部62に対して径方向の内側に位置する部分から下方に突出している。ばね支持部63は、中心軸線O1と同軸に配置された筒状に形成されている。本実施形態のばね支持部63は、下方に位置するものほど外径が小さい段付き形状に形成されている。具体的に、ばね支持部63は、軸方向支持部63aと、径方向支持部63bと、を備えている。
【0046】
軸方向支持部63aは、ばね支持部63の上端部を構成している。軸方向支持部63aの外径は、大径部45a,45cの内径よりも大きい。軸方向支持部63aの下端面は、軸方向に直交する平坦面に形成されている。
径方向支持部63bは、ばね支持部63から下方に突出している。径方向支持部63bの外径は、大径部45a,45cよりも小さく、小径部45bの内径よりも大きい。したがって、径方向支持部63bは、シールリング46と軸方向で向かい合っている。なお、ばね支持部63の内径は、軸方向支持部63a及び径方向支持部63bの全体に亘って一様に形成されている、図示の例において、ばね支持部63の内径は、小径部45bの内径と同等になっている。
【0047】
図5図6図8に示すように、第2流入ポート64は、非駆動用回路3の下流端部と制御バルブ5(第2流入口65)とを接続するものである。第2流入ポート64は、分岐流路71と、共通流路72と、を備えている。
分岐流路71は、流入口65を上方から覆うとともに、対向壁61に対して上方に膨出するドーム状に形成されている。分岐流路71(各分岐部71a,71b)は、分岐流路71の延在方向に直交する断面視で半円形状に形成されている。
【0048】
図示の例において、分岐流路71は、平面視において、流入口65と同等の外形を呈し、周方向に延びるC字状に形成されている。具体的に、分岐流路71は、分岐流路71における周方向の中央部から一方側に延びる第1分岐部71aと、分岐流路71における周方向の中央部から他方側に延びる第2分岐部71bと、を備えている。分岐流路71は、分岐流路71の延在方向(周方向)全長に亘って流入口65に連通している。すなわち、分岐流路71の下端開口部の開口面積は、流入口65の開口面積と同等になっている。
【0049】
共通流路72及び分岐流路71は、中心軸線O1に直交する同一平面上に位置している。具体的に、共通流路72は、分岐流路71における延在方向(周方向)の中央部から第2方向の他方側に向けて突出している。すなわち、平面視において、第2流入ポート64(共通流路72)は、第1流入ポート36(ジョイント部36b)に対して第2方向で向かい合う位置で、直線状に並んでいる。この場合、流入ポート36,64及び流出ポート34,35同士は、互いに直交する方向に延びている。共通流路72は、基端部において分岐流路71に連通する一方、先端部において非駆動用回路3に接続される。共通流路72の先端部は、対向壁61に対して第2方向の外側に突出している。非駆動用回路3の下流端部から共通流路72に流入した冷却液は、共通流路72の先端部において第1分岐部71a及び第2分岐部71bに振り分けられる。
【0050】
共通流路72の延在方向は、流出ポート34,35(ジョイント部34b,35b)の延在方向に対して直交している。共通流路72は、第2方向に直交する断面視で円形状に形成されている。対向壁61に対する共通流路72の上方への膨出量は、対向壁61に対する分岐流路71の上方への膨出量に比べて大きくなっている。したがって、共通流路72の上端縁が、制御バルブ5の最上端縁を構成する。
【0051】
ここで、第1分岐部71a及び第2分岐部71bの流路断面積(それぞれの延在方向に直交する面積)は、周方向の全長に亘って一様に形成されている。この場合、第1分岐部71a及び第2分岐部71bの流路断面積の和は、共通流路72の流路断面積(延在方向に直交する面積)以上であることが好ましい。但し、第1分岐部71a及び第2分岐部71bの流路断面積の和が、共通流路72の流路断面積より小さくてもよい。
【0052】
<駆動ユニット22>
図4に示すように、駆動ユニット22は、図示しないモータや減速機構、制御基板等が収納されて構成されている。駆動ユニット22は、取付台座41に対して下方に配置されている。駆動ユニット22は、取付台座41に軸方向で重ね合わされた状態で、起立壁41bに組み付けられている。図7に示すように、駆動ユニット22は、上方に向けて突出する出力軸22aを備えている。出力軸22aは、中心軸線O1と同軸に配置された筒状に形成されている。
【0053】
<ロータ23>
図4図5に示すように、ロータ23は、ケーシング21の内側で回転することで、流入口53c,65と流出口53a,53bとの連通及び遮断を切り替える。具体的に、ロータ23は、軸部80と、弁体81と、を備えている。ロータ23は、例えば樹脂材料を射出成形することによって一体に形成されている。
【0054】
図7に示すように、軸部80は、中心軸線O1と同軸上に配置されている。軸部80は、貫通孔45を軸方向に貫通している。具体的に、軸部80は、軸部80の下端部を構成する連結部80aと、連結部80aの上方に連なる伝達部80bと、を備えている。
【0055】
連結部80aは、中実状に形成されている。連結部80aの下部は、出力軸22aの内側に嵌め込まれている。本実施形態では、連結部80aの外周面に形成された雄スプラインと、出力軸22aの内周面に形成された雌スプラインと、が周方向に噛み合った状態で、連結部80aが出力軸22aに連結されている。これにより、連結部80aは、出力軸22aの回転に伴い中心軸線O1回りに回転可能に構成されている。連結部80aの上部は、第1大径部45aの内側に配置されている。連結部80aの下端面には、上方に窪む肉抜き部80a1が形成されている。なお、連結部80aは、中空状に形成されていてもよい。
【0056】
伝達部80bは、中心軸線O1と同軸の有底筒状(中空状)に形成されている。すなわち、伝達部80bの内側は、上方に開口する凹部84を構成している。伝達部80bは、接続部85と、周壁部86と、を備えている。
接続部85は、連結部80aの平面視外形よりも大きい円板状に形成されている。接続部85は、連結部80aの外周面に対して径方向の外側に張り出した状態で、連結部80aの上端面に連なっている。接続部85は、小径部45bの内側に配置されている。接続部85の上端面には、下方に窪む肉抜き部85aが形成されている。肉抜き部85aは、接続部85の上端面上で凹部84に連通している。なお、肉抜き部85aは、連結部80aに達している。
【0057】
周壁部86は、接続部85の外周縁から上方に延びている。周壁部86は、上方に向かうに従い外径が段々と拡大する多段筒状に形成されている。具体的に、周壁部86は、小筒部86aと、張出部86bと、大筒部86cと、を備えている。
小筒部86aは、接続部85の外径と同等の外径の円筒状に形成されている。小筒部86aは、第2大径部45cの内側に配置されている。小筒部86aの外周面には、シールリング46の内周面が密接している。これにより、貫通孔45を通じたケーシング21の内外の連通を遮断している。
【0058】
張出部86bは、小筒部86aの上端開口縁から径方向の外側に張り出している。張出部86bは、少なくとも一部がロータ収容部42内に突出した状態で、第2大径部45cに対して軸方向で向かい合っている。これにより、第2大径部45cの上端開口部を通じたシールリング46の抜けが規制されている。張出部86bの外径は、第2大径部45cの内径以下に形成されている。
大筒部86cは、張出部86bの外周縁から上方に向けて延びる円筒状に形成されている。大筒部86cは、径方向支持部63bと軸方向で向かい合っている。
【0059】
図5図6に示すように、弁体81は、上方に開口する円錐台形状に形成されている。弁体81は、軸部80の回転に伴い、中心軸線O1回りを回転可能にロータ収容部42内に設けられている。具体的に、弁体81は、弁底壁91と、摺動壁92と、仕切部93と、を備えている。弁体81のうち、弁底壁91及び摺動壁92で囲まれた空間は、弁体81の内部空間Kを構成している。内部空間Kは、上方に向けて開放されている。したがって、上述した流入口65は、内部空間Kに常時連通している。一方、内部空間Kは、下端部において、凹部84に連通している。
【0060】
弁底壁91は、大筒部86cの下端部から径方向の外側に張り出している。したがって、大筒部86cは、弁体81の内部空間K内に向けて弁底壁91から上方に突出している。弁底壁91は、逃げ面51に対して軸方向に間隔を空けた状態で向かい合っている。図示の例において、弁底壁91の下面は、移行面52の上端よりも下方に位置し、弁底壁91の上面は、移行面52の上端よりも上方に位置している。
【0061】
摺動壁92は、弁底壁91の外周縁に連なっている。摺動壁92は、上方に向かうに従い漸次拡径されたテーパ筒状に形成されている。摺動壁92の上端開口部は、対向壁61に向かい合っている。上述したばね支持部63は、摺動壁92の上端開口部を通じて内部空間Kに進入している。図示の例において、ばね支持部63は、径方向支持部63bの全体、及び軸方向支持部63aの下端部が内部空間Kに進入している。なお、ばね支持部63は、少なくとも一部が内部空間Kに進入していてもよく、内部空間Kよりも上方に位置していてもよい。
【0062】
軸方向に沿う断面視において、摺動壁92は、上下方向の全域に亘って一様な厚さで、上方に向かうに従い径方向の外側に向けて直線状に延びている。この場合、摺動壁92の外周面は、支持面53に倣って延びている。したがって、軸方向に沿う断面視において、摺動壁92の外周面のうち径方向で向かい合う部分同士がなす角度θ2(図6に示すテーパ角)は、支持面53のテーパ角θ1と同等である。すなわち、角度θ2は、90°<θ2<180°であることが好ましく、110°<θ2<160°であることがより好ましい。摺動壁92の外周面は、弁体81の回転に伴い、支持面53上を摺動する。すなわち、支持面53は、摺動壁92を介して弁体81を回転可能に支持している。なお、摺動壁92の上端縁は、位置決め面54に対して径方向の内側から近接している。
【0063】
摺動壁92には、摺動壁92を軸方向に貫通する第1連通口92a及び第2連通口92bが形成されている。第1連通口92a及び第2連通口92bは、周方向に間隔をあけて配置されている。各連通口92a,92bは、弁底壁91の周囲を周方向に延びる円弧状に形成されている。
【0064】
仕切部93は、内部空間Kにおいて、第1連通口92a及び第2連通口92b間の連通を遮断している。仕切部93は、摺動壁92のうち、軸部80に対して径方向の一方側において、第1連通口92aを側方及び上方から取り囲んでいる。仕切部93は、断面視でL字状に形成されている。具体的に、仕切部93は、側壁部93aと、頂壁部93bと、を備えている。
【0065】
側壁部93aは、第1連通口92aの開口縁から上方に延びている。側壁部93aは、第1連通口92aを全周に亘って取り囲んでいる。側壁部93aの下端縁は、摺動壁92の内面に倣って径方向の外側に向かうに従い上方に延びている。
頂壁部93bは、側壁部93aの上端開口縁を閉塞している。頂壁部93bと対向壁61とは、軸方向に間隔をあけて向かい合っている。なお、側壁部93aは、第1連通口92aの開口縁のうち、径方向の内側に位置する部分、及び周方向の両側に位置する部分のみに形成されていてもよい。
【0066】
内部空間Kのうち仕切部93で囲まれた空間(仕切部93に対して径方向の外側に位置する空間)は、第1空間K1を構成する。第1空間K1は、第1連通口92aを通じて下方に開放されている。
内部空間Kのうち仕切部93と摺動壁92とで囲まれた空間(仕切部93に対して径方向の内側に位置する空間)は、第2空間K2を構成する。第2空間K2は、第2連通口92bを通じて下方に開放される一方、弁体81の上端開口部を通じて上方に開放されている。本実施形態において、第2空間K2の容積は、第1空間K1の容積よりも大きい。
【0067】
図9は、カバー32を透過して示す第1状態における制御バルブ5の平面図である。
ここで、図9に示すように、ロータ23は、駆動ユニット22の駆動力に応じて第1状態及び第2状態間を回転する。第1状態とは、第1空間K1を通じて第1流入口53c及び第1流出口53aの少なくとも一部同士が連通し、かつ第2空間K2を通じて第2流入口65及び第2流出口53bの少なくとも一部同士が連通する状態である。
【0068】
第1状態では、第1連通口92aが、第1流入口53c及び第1流出口53aを周方向に跨って配置される。これにより、第1流入口53c及び第1流出口53aが第1連通口92aを通じて第1空間K1に連通している。
第1状態では、第2連通口92bが、第2流出口53bに平面視で重なり合うことで、第2流出口53bと第2空間K2とが連通している。また、第2流入口65は、弁体81の上端開口部を通じて第2空間K2に常時連通している。なお、連通口92a,92bが、何れの流出口53a,53bとも重なり合わない場合は、弁体81(摺動壁92)によって内部空間Kと流出口53a,53bとの連通が遮断されている。
【0069】
図10は、カバー32を透過して示す第2状態における制御バルブ5の平面図である。
図10に示すように、第2状態とは、第1空間K1を通じて第1流入口53c及び第2流出口53bが連通し、かつ第2空間K2を通じて第2流入口65及び第1流出口53aが連通する状態である。
【0070】
第2状態では、第1連通口92aが、第1流入口53c及び第2流出口53bを周方向に跨って配置される。これにより、第1流入口53c及び第2流出口53bが第1連通口92aを通じて第1空間K1に連通している。なお、第1連通口92aは、第1状態において第1流入口53c及び第1流出口53aを第1空間K1に連通させ、第2状態において第1流入口53c及び第2流出口53bを第1空間K1に連通させる構成であれば、複数設けられていてもよい。すなわち、複数の第1連通口92aが、第1状態において第1流入口53c及び第1流出口53aに個別に連通し、第2状態において第1流入口53c及び第2流出口53bに個別に連通する構成であってもよい。
【0071】
第2状態では、第2連通口92bが、第1流出口53aに平面視で重なり合うことで、第1流出口53aと第2空間K2とが連通している。また、第2流入口65は、弁体81の上端開口部を通じて第2空間K2に常時連通している。なお、第2連通口92bの位置や形状は、第1状態において第2流出口53bに連通し、第2状態において第1流出口53aに連通する構成であれば、適宜変更が可能である。
【0072】
<付勢部材24>
付勢部材24は、例えば平板状のコイルスプリングである。付勢部材24は、中心軸線O1と同軸に配置された状態で、弁底壁91と軸方向支持部63aとの間に挟まれている。付勢部材24は、全体が内部空間K(第2空間K2)に位置している。すなわち、付勢部材24は、ロータ23の内部に設けられている。なお、付勢部材24は、少なくともロータ23の内部に設けられていればよい。
【0073】
付勢部材24は、弁体81を下方に向けて付勢している。すなわち、摺動壁92は、付勢部材24の付勢力によって支持面53に押し付けられている。付勢部材24のうち、上端部の内側には径方向支持部63bが挿入されている。付勢部材24は、径方向支持部63bに径方向から当接することで、ケーシング21に対する径方向の移動が規制されている。付勢部材24のうち、下端部の内側には大筒部86cが挿入されている。付勢部材24は、大筒部86cに径方向から当接することで、ケーシング21に対する径方向の移動が規制されている。なお、本実施形態では、付勢部材24が、ばね支持部63を介して対向壁61に間接的に支持されている構成について説明するが、この構成に限られない。付勢部材24は、対向壁61に直接支持されていてもよい。
【0074】
[制御バルブ5の動作方法]
次に、上述した制御バルブ5の動作方法を説明する。以下の説明では、個別温調モード及び統合モードについて説明する。
図1に示す個別温調モードのように、駆動用回路2及び非駆動用回路3それぞれで冷却液を循環させるには、ロータ23を図9に示す第1状態とする。すなわち、駆動用回路2上において、第1ウォータポンプ8によって送り出される冷却液は、駆動用モータ7で熱交換された後、第1流入口53c及び第1連通口92aを通じて第1空間K1に流入する。第1空間K1に流入した冷却液は、第1連通口92a及び第1流出口53aを通じて駆動用回路2に戻された後、再び第1ウォータポンプ8によって駆動用回路2上を下流側に向けて送り出される。
【0075】
一方、非駆動用回路3上において、第2ウォータポンプ10によって送り出される冷却液は、バッテリ11で熱交換された後、第2流入口65及び弁体81の上端開口部を通じて第2空間K2に流入する。第2空間K2に流入した冷却液は、第2連通口92b及び第2流出口53bを通じて非駆動用回路3に戻された後、再び第2ウォータポンプ10によって非駆動用回路3上を下流側に向けて送り出される。すなわち、個別温調モードでは、第1流入口53c及び第2流入口65を通じて内部空間K内に流入する冷却液が、仕切り部93によっていなされることで、互いに合流せずに対応する流出口53a,53bから流出するようになっている。なお、個別温調モードは、駆動用回路2及び非駆動用回路3(第1ウォータポンプ8及び第2ウォータポンプ10)の何れかのみを動作させてもよい。
【0076】
個別温調モードから統合モードに切り替えるには、ロータ23を第1状態から図10に示す第2状態に切り替える。具体的には、駆動ユニット22を駆動させ、ロータ23を中心軸線O1回りに回転させる。この際、ロータ23は、支持面53上を摺動壁92の外周面が摺動しながら、中心軸線O1回りに回転する。そして、第1空間K1を通じて第1流入口53c及び第2流出口53bが連通し、かつ第2空間K2を通じて第2流入口65及び第1流出口53aが連通した時点でロータ23の回転が停止する。
【0077】
統合モードでは、制御バルブ5を介して駆動用回路2及び非駆動用回路3間に一括して冷却液が流通する。具体的に、駆動用回路2上において、第1ウォータポンプ8によって送り出される冷却液は、駆動用モータ7で熱交換された後、第1流入口53c及び第1連通口92aを通じて第1空間K1に流入する。第1空間K1に流入した冷却液は、第1連通口92a及び第2流出口53bを通じて非駆動用回路3に流出する。非駆動用回路3に流出した冷却液は、第2ウォータポンプ10によって下流側に送り出されることで、バッテリ11との間で熱交換される。その後、冷却液は、第2流入口65及び弁体81の上端開口部を通じて第2空間K2に流入する。第2空間K2に流入した冷却液は、第2連通口92b及び第1流出口53aを通じて駆動用回路2に流出する。その後、冷却液は、第1ウォータポンプ8によって下流側に送り出されることで、駆動用モータ7との間で熱交換される。そして、冷却液は、再び第1空間K1に流入する。
【0078】
このように、本実施形態の制御バルブ5において、ロータ23は、軸部80から上方に向かうに従い外径が漸次拡大する弁体81を有し、弁体81の外周面がケーシング21に摺動可能に支持される構成とした。
この構成によれば、弁体81がケーシング21に直接支持されるため、シール部材や軸受を別途設ける必要がない。そのため、部品点数や組立工数の削減、制御バルブ5の小型化、低コスト化を図ることができる。
また、弁体81がテーパ状に形成されていることで、ロータ23の外径が熱によって膨張収縮した場合に、外径の増減変化に応じてロータ23が支持面53上を軸方向に変位する。そのため、ロータ23の膨張収縮変化に関わらず、弁体81が安定して支持面53上で支持される。よって、制御バルブ5の動作安定性を確保できる。
【0079】
特に、本実施形態の制御バルブ5において、ロータ23は、第1空間K1を通じて第1流入口53c及び第1流出口53aが連通し、かつ第2空間K2を通じて第2流入口65及び第2流出口53bが連通する第1状態、並びに第1空間K1を通じて第1流入口53c及び第2流出口53bが連通し、かつ第2空間K2を通じて第2流入口65及び第1流出口53aが連通する第2状態間を回転する構成とした。
この構成によれば、2つの回路間に制御バルブ5を設置することで、2つの回路それぞれに独立して冷却液が流通する個別温調モードと、2つの回路間に一括して冷却液が流通する統合モードと、で回路の切り替えを行うことができる。しかも、本実施形態では、第1空間K1が下方に開口する一方、第2空間K2が上方に開口することで、各空間K1,K2内での液圧を均一に保ち易い。そのため、弁体81及び支持面53間でのシール性を確保した上で、摺動抵抗が過大になることを抑制して、ロータ23のスムーズな回転を実現できる。
【0080】
本実施形態の制御バルブ5において、第1流出口53a及び第2流出口53bは、第1方向で向かい合う位置に配置され、第1流入口53c及び第2流入口65は、第2方向で向かい合う位置に配置されている構成とした。
この構成によれば、各流出口53a,53b及び各流入口53c,65が径方向で異なる向きに配置されるので、配管の取り回しが容易になる。
【0081】
本実施形態の制御バルブ5において、第2空間K2の容積は、第1空間K1の容積よりも大きい構成とした。
この構成によれば、第2空間K2に作用する液圧を確保し易い。そのため、弁体81を支持面53に向けて押し付けやすくなるので、弁体81及び支持面53間のシール性を向上させることができる。
【0082】
本実施形態の制御バルブ5において、弁体81は、軸方向に沿う断面視において、下方から上方に向かうに従い径方向の外側に向けて直線状に延びている構成とした。
例えば弁体81の断面視形状が円弧状に形成されている場合には、弁体81の外周面の接線方向の向きが軸方向の位置で異なる。この場合、弁体81が熱によって収縮する際、弁体81の軸方向の位置によって変形の挙動が異なる。具体的に、弁体81のうち上方に向かうに従い(接線の傾きが大きくなるに従い)、径方向の内側への変形量が大きくなる結果、支持面53と弁体81との間のシール性を確保し難くなる。
これに対して、本実施形態のように、弁体81の断面視形状を直線状に形成することで、熱収縮による弁体81の変形挙動を軸方向の全体に亘って均一に保ち易い。その結果、ロータ23の膨張収縮変化に関わらず、弁体81が安定して支持面53上で支持される。よって、制御バルブ5の動作安定性を確保できる。
【0083】
本実施形態の制御バルブ5において、弁体81は、径方向で向かい合う部分同士のなす角度θ2を、90°<θ2<180°に設定する構成とした。
この構成によれば、角度θ2を90°よりも大きくすることで、ロータ23の外径が熱によって膨張収縮した場合において、外径の増減変化に応じてロータ23が支持面53上をよりスムーズに変位し易くなる。そのため、ロータ23の膨張収縮変化に関わらず、弁体81が安定して支持面53上で支持される。よって、制御バルブ5の動作安定性を確保できる。
しかも、角度θ2を110°<θ2<160°の範囲に設定することで、成形時の駄肉を抑制でき、軸方向でのさらなる小型化を図ることができる。
【0084】
本実施形態の制御バルブ5において、第2流入口65及び第2流出口53bは、車両の非駆動源に流体を供給する非駆動用回路3に接続される構成とした。
この構成によれば、車両の電源オフ時に非駆動用回路3のみに冷却液を循環させた場合、第2空間K2の液圧を確保し易くなる。そのため、弁体81を支持面53に向けて押し付けやすくなるので、弁体81を支持面53間のシール性を向上させることができる。
【0085】
(その他の変形例)
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
例えば、上述した実施形態では、制御バルブ5が車両の冷却システム1に搭載された構成について説明したが、この構成のみに限らず、その他のシステムに搭載しても構わない。
上述した実施形態では、2つの流出口53a,53bを備える構成について説明したが、この構成に限られない。流出口は、3つ以上設けられていてもよい。
上述した実施形態では、ベース部33に対して流出ポート34,35が一体に形成された構成について説明したが、この構成に限られない。流出ポート34,35は、ベース部33と別体で形成されていてもよい。
【0086】
上述した実施形態では、第2流入口65が内部空間Kに常時連通する構成について説明したが、この構成に限られない。第2流入口65についても、ロータ23の回転に応じて内部空間Kとの連通及び遮断が切り替えられる構成であってもよい。
上述した実施形態では、弁体81が断面視で直線状に延びる構成について説明したが、この構成に限られない。弁体81は、断面視で円弧状に延びる構成等であってもよい。
【0087】
上述した実施形態では、付勢部材24が内部空間Kに設けられた構成について説明したが、この構成に限られない。付勢部材の位置は、弁体81を支持面53に向けて押さえ付ける構成であれば、適宜変更が可能である。また、付勢部材は、必須の構成ではない。
上述した実施形態では、第2流入口65がカバー32に形成された構成について説明したが、この構成に限られない。第2流入口は、ケーシング本体31に形成されていてもよい。
【0088】
上述した実施形態では、第2空間K2の容積が第1空間K1の容積よりも大きい構成について説明したが、この構成に限られない。第2空間K2の容積は、第1空間K1の容積以下であってもよい。
【0089】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0090】
3:非駆動用回路
5:制御バルブ
21:ケーシング
23:ロータ
53:支持面
53a:第1流出口
53b:第2流出口
53c:第1流入口
65:第2流入口
80:軸部
81:弁体
92a:第1連通口
92b:第2連通口
93:仕切部
K1:第1空間
K2:第2空間
O1:中心軸線
θ2:角度
図1
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図3
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図10