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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130127
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】信号伝達回路およびインバータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240920BHJP
【FI】
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039657
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】藤本 岳
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA01
5H770EA01
5H770JA08Z
5H770JA17W
(57)【要約】
【課題】電源電圧の低下時や遮断時に信号出力を防止する。
【解決手段】電源電圧が供給される電源ラインと、上記電源ラインにそれぞれが接続されるとともに相互に並列接続された複数のリレー回路と、上記複数のリレー回路それぞれに個別に接続されて個別の指示信号が入力される複数の入力ラインと、上記複数のリレー回路それぞれに対して個別に、上記電源ラインと上記入力ラインとの間で並列接続された複数の抵抗と、互いに並列接続された上記リレー回路および上記抵抗の各組に対して個別に、上記電源ラインと上記入力ラインとの間で直列接続された複数のダイオードと、を備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧が供給される電源ラインと、
前記電源ラインにそれぞれが接続されるとともに相互に並列接続された複数のリレー回路と、
前記複数のリレー回路それぞれに個別に接続されて個別の指示信号が入力される複数の入力ラインと、
前記複数のリレー回路それぞれに対して個別に、前記電源ラインと前記入力ラインとの間で並列接続された複数の抵抗と、
互いに並列接続された前記リレー回路および前記抵抗の各組に対して個別に、前記電源ラインと前記入力ラインとの間で直列接続された複数のダイオードと、
を備えた信号伝達回路。
【請求項2】
前記リレー回路がフォトカプラである請求項1記載の信号伝達回路。
【請求項3】
前記電源ラインに対する電源電圧の供給と遮断とを切り替え可能な遮断回路を更に備えた請求項1記載の信号伝達回路。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の信号伝達回路と、
前記複数のリレー回路からの出力信号に従ってスイッチ動作するインバータ回路と、
を備えたインバータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号伝達回路およびインバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ駆動用のインバータ装置などにおいて、インバータ回路などに対してPWM(Pulse Width Modulation)信号などを入力するための信号伝達回路を備えた装置が知られている。インバータ回路などのように高電圧で駆動される回路と、PWM信号の発生回路などのように低電圧で駆動される回路とは、電気的に分離されていることが望ましい。信号伝達回路は、回路同士の電気的な分離に用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、PWM信号の指示信号が入力され、指示信号をもとにPWM信号をインバータ回路に伝達するPWM信号伝達回路を備えたモータ制御装置が開示されている。特許文献1のモータ制御装置では、PWM信号伝達回路に対する駆動用電源電圧の供給と遮断とを電源遮断回路により切換可能となっている。そして、制御用電源電圧が低下している場合などに、PWM信号伝達回路に対する駆動用電源電圧が遮断され、インバータ回路へのPWM信号の出力が停止される。この結果、インバータ回路におけるインバータ素子短絡が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5880764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の信号伝達回路では、駆動用電源電圧が遮断された場合でも、PWM信号の指示信号の入力によってインバータ回路に信号が出力されてしまう虞がある。
そこで、本発明は、電源電圧の低下時や遮断時に信号を出力させないことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る信号伝達回路の一態様は、電源電圧が供給される電源ラインと、上記電源ラインにそれぞれが接続されるとともに相互に並列接続された複数のリレー回路と、上記複数のリレー回路それぞれに個別に接続されて個別の指示信号が入力される複数の入力ラインと、上記複数のリレー回路それぞれに対して個別に、上記電源ラインと上記入力ラインとの間で並列接続された複数の抵抗と、互いに並列接続された上記リレー回路および上記抵抗の各組に対して個別に、上記電源ラインと上記入力ラインとの間で直列接続された複数のダイオードと、を備える。
【0007】
このような信号伝達回路によれば、電源電圧の低下時や遮断時に入力ラインに指令信号が入力されても、意図しない電流がダイオードによって阻まれるのでリレー回路から信号が出力されない。
上記信号伝達回路において、上記リレー回路がフォトカプラであることが好ましい。フォトカプラは入力側と出力側との絶縁性に優れているので入力側に出力側の影響が及ばない。従って、出力側に大電回路などが接続されても入力側の安全性が確保される。また、リレー回路としてフォトカプラが用いられることで、信号の伝達速度が早く、チャタリングも防がれる。
【0008】
また、上記信号伝達回路において、上記電源ラインに対する電源電圧の供給と遮断とを切り替え可能な遮断回路を更に備えることが好ましい。例えば電源電圧の低下時などに、遮断回路によって電源電圧が遮断されることで入力信号の不正確な伝達が防がれる。
上記課題を解決するために、本発明に係るインバータ装置の一態様は、いずれかの上記信号伝達回路と、上記複数のリレー回路からの出力信号に従ってスイッチ動作するインバータ回路と、を備える。
【0009】
このようなインバータ装置によれば、電源電圧の低下時や遮断時にインバータ回路への信号入力が防がれるので、インバータ回路の意図しない駆動が生じない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電源電圧の低下時や遮断時に信号が出力されない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】モータ制御装置およびモータの全体構成を示すブロック図である。
図2】電源遮断回路とPWM信号伝達回路の具体的構成を示す回路図である。
図3】通常時に「Low側」の信号レベルがLレベルである場合におけるPWM信号伝達回路の動作を示す図である
図4】通常時に「High側」の信号レベルがLレベルである場合におけるPWM信号伝達回路の動作を示す図である。
図5】比較例のPWM信号伝達回路を示す回路図である。
図6】駆動用電源電圧VCCの遮断時における比較例のPWM信号の出力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。但し、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするため、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。また、先に説明した図に記載の要素については、後の図の説明において適宜に参照する場合がある。
【0013】
図1は、モータ1を制御するモータ制御装置2の構成を示すブロック図である。
モータ1は、例えば3相の交流モータであり、モータ1は、モータ制御装置2によって駆動制御される。
モータ制御装置2は、制御用電源11と、コントローラ12と、PWM信号伝達回路13と、インバータ回路14と、駆動用電源15と、リセットIC16と、電源遮断回路17とを備えている。
【0014】
コントローラ12は、制御用電源11の制御用電源電圧V1を受けて、パルス幅変調(PWM;Pulse Width Modulation)信号の指示信号を生成し出力する。コントローラ12が出力したPWMの指示信号(/PWM)はPWM信号伝達回路13に入力され、PWM信号伝達回路13は、これをもとにPWM信号(PWM)をインバータ回路14に伝達する。つまり、PWMの指示信号(/PWM)はPWM信号伝達回路13への入力信号であり、PWM信号(PWM)はPWM信号伝達回路13からの出力信号である。
【0015】
本実施形態においてPWM信号伝達回路13は、例えば、制御用電源11とは別系統の駆動用電源15の駆動用電源電圧VCCを受けて動作する。また、本実施形態で用いられるPWMの指示信号(/PWM)は、一例としてPWM信号(PWM)の反転信号である。
【0016】
PWM信号伝達回路13は、入出力間を絶縁する絶縁素子を含んで構成されている。すなわち、コントローラ12とインバータ回路14とは電気的に絶縁されており、コントローラ12からインバータ回路14への信号伝達は、上記絶縁素子を介して行われる。
インバータ回路14は、MOSFETやIGBT等のインバータスイッチング素子を複数備える。インバータスイッチング素子としては、例えば、モータ1の3相それぞれに対応した各相用の素子が備えられ、更に各相について、例えば電流の各向き用の素子が備えられる。モータ1へと向かう電流に対応したインバータスイッチング素子は「High側」と称され、モータ1から来る電流に対応したインバータスイッチング素子は「Low側」と称される。
【0017】
各インバータスイッチング素子は、PWM信号伝達回路13から出力される各インバータスイッチング素子用のPWM信号(PWM)によって個別にオンオフ駆動され、これによりモータ1が駆動制御される。
リセットIC16は、電源の監視を行うものとして市販されている一般的なICであり、制御用電源電圧V1を監視する。即ち、リセットIC16は、制御用電源電圧V1と所定の閾値電圧Vthとを比較する。そして、制御用電源電圧V1が閾値電圧Vthまで低下したことを検知したリセットIC16は電源遮断回路17に、電圧低下の検知を示す信号として、所定レベルのリセット信号(/RESET)を出力する。ここで、閾値電圧Vthは、一例として、コントローラ12が正常にPWM信号を出力できる下限電源電圧値に設定される。
【0018】
電源遮断回路17は、PWM信号伝達回路13への駆動用電源電圧VCCの供給と遮断とを切り替える回路である。電源遮断回路17には、リセットIC16からのリセット信号(/RESET)と、PWMイネーブル信号(/PWM_EN)とが入力される。PWMイネーブル信号(/PWM_EN)は、PWM信号伝達回路13に対してPWM信号の出力を許可する信号である。
【0019】
通常時は、リセット信号(/RESET)が、制御用電源電圧V1の未低下を示し、かつPWMイネーブル信号(/PWM_EN)がPWM信号の出力許可を示す。通常時に電源遮断回路17は、駆動用電源15の駆動用電源電圧VCCをPWM信号伝達回路13に供給する。
【0020】
一方、電源遮断回路17は、リセットIC16から制御用電源電圧V1の低下を示すリセット信号(/RESET)を受けると、PWM信号伝達回路13に供給される駆動用電源電圧VCCを遮断する。電源遮断回路17は、駆動用電源電圧VCCを遮断することで、PWM信号伝達回路13によるインバータ回路14へのPWM信号(PWM)の出力を停止する。また同様に、電源遮断回路17は、PWMイネーブル信号(/PWM_EN)がPWM出力の禁止を示している場合にも、PWM信号伝達回路13に供給する駆動用電源電圧VCCを遮断する。
【0021】
PWM信号伝達回路13は、本発明の信号伝達回路の一実施形態に相当し、PWM信号伝達回路13とインバータ回路14とを併せたものが本発明のインバータ装置の一実施形態に相当する。また、電源遮断回路17とPWM信号伝達回路13とを併せたものも、本発明の信号伝達回路の一実施形態に相当する。本発明の信号伝達回路において電源遮断回路17を備えることが好ましいが必須ではない。
【0022】
図2は、電源遮断回路17とPWM信号伝達回路13の具体的構成を示す回路図である。
電源遮断回路17は、FETで構成される第1のスイッチ21と、バイポーラトランジスタ又はFETで構成される第2のスイッチ22とを備える。
【0023】
なお、本実施形態では、第2のスイッチ22がバイポーラトランジスタで構成される場合について説明する。第2のスイッチ22がFETで構成された場合にも、バイポーラトランジスタで構成された場合と同様の動作となるため、ここでは説明を省略する。
PWM信号伝達回路13は、フォトカプラ31、32と、並列抵抗33、34と、制限抵抗35、36と、ダイオード37、38とを備えている。また、PWM信号伝達回路13は、電源ラインL11と、入力ラインL21、L22と、出力ラインL31、L32とを備えている。図2に示すPWM信号伝達回路13の構成例は、モータ1の3相のうちの1相分についてPWM信号を伝達する構成となっている。
【0024】
電源ラインL11には駆動用電源電圧VCCが供給される。電源ラインL11には電源遮断回路17が接続され、電源遮断回路17は、電源ラインL11に対する駆動用電源15からの駆動用電源電圧VCCの供給と遮断を切り替え可能である。
【0025】
PWM信号伝達回路13には、入力ラインL21、L22を介してコントローラ12からPWMの指令信号が入力される。図2では一例として、モータ1のいずれかの相における「High側」と「Low側」それぞれをオンオフ駆動するためのPWM信号を示した指令信号が入力される。つまり、入力ラインL21、L22は、フォトカプラ31、32のそれぞれに個別に接続されて個別の指示信号が入力される。
【0026】
フォトカプラ31、32はリレー回路の一例であり、電源ラインL11にそれぞれが接続されるとともに相互に並列接続されている。電源ラインL11は、2つのフォトカプラ31、32に共通したラインであり、フォトカプラ31、32は電源ラインL11に含まれない。
各フォトカプラ31、32は、発光ダイオード41と、受光素子42と、スイッチ43とを備えている。フォトカプラ31、32に電流が流れると、発光ダイオード41が発光して受光素子42が受光する。受光素子42には電圧V2が印加されていて、受光素子42が受光すると電圧V2がスイッチ43のゲートに印加される。この結果、スイッチ43がオンになって出力ラインL31、L32に電流が流れる。
【0027】
各フォトカプラ31、32では、信号伝達が光で行われるため、PWM信号伝達回路13は、入力側(コントローラ12側)と出力側(モータ1側)とを電気的に絶縁している。従って、PWM信号伝達回路13は、異なるGND間の信号を伝達しながら、伝導ノイズの影響を抑制すると共に、感電等を防止している。
また、リレー回路としてフォトカプラ31、32が用いられることで、信号の伝達速度が早い。また、通常のリレー等ではオンオフの際にチャタリングを生じる場合があるがフォトカプラ31、32は物理的なスイッチングではないのでチャタリングが防がれる。
【0028】
並列抵抗33、34は、フォトカプラ31、32のそれぞれに対して個別に、電源ラインL11と入力ラインL21、L22との間で並列接続されている。並列抵抗33、34は、フォトカプラ31、32に対してノイズなどによる微小電流が流れた場合に発光ダイオード41の両端の電圧を制限してフォトカプラ31、32の誤動作を防ぐ。
制限抵抗35、36は、フォトカプラ31、32と入力ラインL21、L22との間に接続され、フォトカプラ31、32に流れる電流を制限してフォトカプラ31、32を保護する。
ダイオード37、38は、制限抵抗35、36と入力ラインL21、L22との間に接続され、信号電流の向きを制限する。
【0029】
図3および図4は、通常時におけるPWM信号伝達回路13の動作を示す図である。図3には、「Low側」の信号レベルがLレベルである場合の動作が示されている。また、図4には、「High側」の信号レベルがLレベルである場合の動作が示されている。
通常時は、電源遮断回路17を介して電源ラインL11に駆動用電源15からの駆動用電源電圧VCCが供給(印加)される。
【0030】
「High側」の信号レベルと「Low側」の信号レベルは、同時にはLレベルにならないようにコントローラ12によって制御されている。また、「High側」の信号レベルと「Low側」の信号レベルの双方がHレベルである場合は、フォトカプラ31、32の発光ダイオード41およびダイオード37、38においてカソード側とアノード側が同電位であるかカソード側が高電位となる。このため、「High側」と「Low側」との双方ともフォトカプラ31、32には電流が流れない。
【0031】
図3に示すように「Low側」の信号レベルがLレベルであると、「Low側」の入力ラインL22の電圧が電源ラインL11の電圧よりも低電圧となる。この結果、「Low側」のフォトカプラ32では発光ダイオード41の電源ラインL11側が高電圧となって電流が流れる。電流は「Low側」の制限抵抗36によって制限されながらダイオード38を経て「Low側」の入力ラインL22へと流れる。
【0032】
従って、「Low側」の入力ラインL22に入力される指令信号のレベルがHレベルとLレベルとに変化することで「Low側」のフォトカプラ32では発光ダイオード41が点滅する。そして、「Low側」の受光素子42は光の点滅を受けてスイッチ43をオンオフし、「Low側」の出力ラインL32では電圧の上昇と低下が生じる。この結果、「Low側」の指令信号に対応したPWM信号が「Low側」の出力ラインL32に伝達されることになる。
【0033】
図4に示すように「High側」の信号レベルがLレベルであると、「High側」の入力ラインL21の電圧が電源ラインL11の電圧よりも低電圧となる。この結果、「High側」のフォトカプラ31では発光ダイオード41の電源ラインL11側が高電圧となって電流が流れる。電流は「High側」の制限抵抗35によって制限されながらダイオード37を経て「High側」の入力ラインL21へと流れる。
【0034】
従って、「High側」の入力ラインL21に入力される指令信号がHレベルとLレベルとに変化することで「High側」のフォトカプラ31では発光ダイオード41が点滅する。そして、「High側」の受光素子42は光の点滅を受けてスイッチ43をオンオフし、「High側」の出力ラインL31では電圧の上昇と低下が生じる。この結果、「High側」の指令信号に対応したPWM信号が「High側」の出力ラインL31に伝達されることになる。
インバータ回路14は、出力ラインL31、L32を介したフォトカプラ31、32からの出力信号に従ってスイッチ動作し、モータ1を駆動する。
【0035】
次に、電源遮断回路17の動作を説明する。
図2に示すように、第1のスイッチ21のゲートにはリセット信号(/RESET)が印加され、第1のスイッチ21のソースにはPWMイネーブル信号(/PWM_EN)が印加される。ここで、リセット信号(/RESET)は、正常時にHレベルとなり異常時にLレベルとなる信号である。また、PWMイネーブル信号(/PWM_EN)は、PWM信号出力の許可時にLレベルとなり、禁止時にHレベルとなる信号である。また、第1のスイッチ21のドレインは、第2のスイッチ22の制御電極であるベースに接続されている。
【0036】
電源遮断回路17における上記構成により、リセット信号(/RESET)がHレベルで、かつ、PWMイネーブル信号(/PWM_EN)がLレベルであるとき、第1のスイッチ21がオンとなる。この結果、第2のスイッチ22もオンとなるため、駆動用電源15の駆動用電源電圧VCCがPWM信号伝達回路13に供給される。
【0037】
一方、リセット信号(/RESET)がLレベルで、かつ、PWMイネーブル信号(/PWM_EN)がLレベルである場合には、第1のスイッチ21のゲート-ソース間の電位差がなくなるため、第1のスイッチ21がオフとなる。この結果、第2のスイッチ22もOFFとなるため駆動用電源電圧VCCが遮断される。
【0038】
同様に、リセット信号(/RESET)がHレベルで、かつ、PWMイネーブル信号(/PWM_EN)がHレベルである場合にも、第1のスイッチ21のゲート-ソース間の電位差がなくなるため、第1のスイッチ21がOFFとなる。この結果、第2のスイッチ22もOFFとなるため駆動用電源電圧VCCが遮断される。
【0039】
駆動用電源電圧VCCが遮断された状態では、フォトカプラ31、32の発光ダイオード41に電流が流れないため、PWM信号伝達回路13の入力ラインL21、L22にPWMの指令信号が入力されても、出力ラインL31、L32からはPWM信号は出力されない。
【0040】
ここで、比較例について説明する。
図5は、比較例のPWM信号伝達回路3を示す回路図である。
比較例のPWM信号伝達回路3は、ダイオード37、38を備えていない点を除いて、図2に示すPWM信号伝達回路13と同様の回路である。
【0041】
比較例のPWM信号伝達回路3でも、電源ラインL11に電源遮断回路17が接続されている。このため、リセット信号(/RESET)およびPWMイネーブル信号(/PWM_EN)の信号レベルが等しい場合、駆動用電源電圧VCCが遮断される。
駆動用電源電圧VCCが遮断された状態でも、入力ラインL21、L22にはPWMの指令信号が入力される場合がある。この場合、比較例のPWM信号伝達回路3では、出力ラインL31、L32からPWM信号が出力される虞がある。
【0042】
図6は、駆動用電源電圧VCCの遮断時におけるPWM信号の出力を示す図である。
比較例においては、「High側」の指令信号がHレベルで「Low側」の指令信号がLレベルである場合、図6(A)に示すように、「High側」の入力ライン21から「High側」の並列抵抗33を経て電源ラインL11にHレベルの電圧が印加されることになる。そして「Low側」のフォトカプラ32では、電源ラインL11側が入力ラインL22側よりも高電圧となるため「Low側」のフォトカプラ32に電流が流れる。
【0043】
つまり、比較例の場合、「Low側」の指令信号がHレベルとLレベルとに変化するのに伴って「Low側」のフォトカプラ32から出力ラインL32に信号が出力されることになる。
同様に、「High側」の指令信号がLレベルで「Low側」の指令信号がHレベルである場合、図6(B)に示すように、「Low側」の入力ライン22から「Low側」の並列抵抗34を経て電源ラインL11にHレベルの電圧が印加される。そして「High側」のフォトカプラ31では、電源ラインL11側が入力ラインL21側よりも高電圧となるため「High側」のフォトカプラ31に電流が流れる。
【0044】
つまり、比較例の場合、「High側」の指令信号がHレベルとLレベルとに変化するのに伴って「High側」のフォトカプラ31から出力ラインL31に信号が出力されることになる。
詳細は省略するが、3相モータに対するPWM信号におけるHレベルとLレベルとの組み合わせパターンに従って図6に示す動作が生じた場合の出力信号は、3相モータを回転駆動させるPWM信号と同等な信号パターンとなる。このため、比較例では、駆動用電源電圧VCCの遮断時に、意図しないモータ駆動が生じる虞がある。
【0045】
また、比較例における意図しない信号出力は、電源遮断回路17による駆動用電源電圧VCCの遮断時だけでなく、電源遮断回路17を備えずに駆動用電源電圧VCCが低下した場合にも同様に生じる虞がある。
【0046】
このような比較例に対し、図2に示すPWM信号伝達回路13では、ダイオード37、38が、フォトカプラ31、32と並列抵抗33、34との組に対して直列接続されている。ダイオード37、38は、フォトカプラ31、32および並列抵抗33、34の各組に対して個別に、電源ラインL11と入力ラインL21、L22との間で直列接続されればよい。つまり、図2では、フォトカプラ31、32に対して入力ラインL21、L22側にダイオード37、38が接続されているが、ダイオード37、38は電源ラインL11側に接続されてもよい。
【0047】
具体的には、フォトカプラ31、32に対して入力ラインL21、L22側にダイオード37、38が接続される場合、ダイオード37、38は、フォトカプラ31、32と並列抵抗33、34との接続点P3、P5よりも入力ラインL21、L22側に接続される。
【0048】
また、フォトカプラ31、32に対して電源ラインL11側にダイオード37、38が接続される場合、ダイオード37、38は、フォトカプラ31、32と並列抵抗33、34との接続点P2、P4と、フォトカプラ31、32同士の接続点P1との間に接続される。
【0049】
図2に示すPWM信号伝達回路13では、駆動用電源電圧VCCの遮断時にダイオード37、38が、入力ラインL21、L22に入力されるHレベル信号の電圧を遮断するので、PWM信号伝達回路13からの信号出力が確実に停止される。従って、駆動用電源電圧VCCの遮断時に、意図しないモータ駆動が生じない。
【0050】
なお、上記説明では、インバータ装置への応用例が示されているが、本発明の信号伝達回路は、インバータ回路以外の回路へPWM信号を伝達することや、PWM信号以外の信号を伝達することにも効果を発揮する。従って、本発明の実施形態や適用範囲は、インバータ装置のみに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0051】
1…モータ、2…モータ制御装置、11…制御用電源、12…コントローラ、
13…PWM信号伝達回路、14…インバータ回路、15…駆動用電源、
16…リセットIC、17…電源遮断回路、21、22…スイッチ、
31、32…フォトカプラ、33、34…並列抵抗、35、36…制限抵抗、
37、38…ダイオード、41…発光ダイオード、42…受光素子、43…スイッチ、
L11…電源ライン、L21、L22…入力ライン、L31、L32…出力ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6