IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電力変換装置 図1
  • 特開-電力変換装置 図2
  • 特開-電力変換装置 図3
  • 特開-電力変換装置 図4
  • 特開-電力変換装置 図5
  • 特開-電力変換装置 図6
  • 特開-電力変換装置 図7
  • 特開-電力変換装置 図8
  • 特開-電力変換装置 図9
  • 特開-電力変換装置 図10
  • 特開-電力変換装置 図11
  • 特開-電力変換装置 図12
  • 特開-電力変換装置 図13
  • 特開-電力変換装置 図14
  • 特開-電力変換装置 図15
  • 特開-電力変換装置 図16
  • 特開-電力変換装置 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130133
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240920BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039670
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】新谷 貴範
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA21
5H770AA24
5H770BA01
5H770CA01
5H770DA22
5H770HA02Y
5H770JA10X
5H770PA16
5H770PA42
5H770PA44
5H770QA01
5H770QA06
5H770QA25
5H770QA28
5H770QA33
(57)【要約】
【課題】半導体モジュールと制御基板との間に配置される固定板を構成する部品の部品点数の増加、および、固定板の構造の複雑化を抑制可能な電力変換装置を提供する。
【解決手段】この電力変換装置100は、基台部40と、基台部40に固定される半導体モジュール11と、電力変換の制御を行う制御基板50と、制御基板50が固定される固定板60とを備える。制御基板50は、半導体モジュール11に対して基台部40が配置される側とは反対側に配置される。固定板60は、半導体モジュール11と制御基板50との間に配置される。そして、固定板60は、平板状の導電板61と、導電板61を覆う絶縁性樹脂62とを含む。平板状の導電板61には、制御基板50を固定するための基板固定部61c、および、固定板60を基台部40に固定するための基台固定用孔61aが設けられる。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台部と、
電力変換用スイッチング素子を含み、前記基台部に固定される半導体モジュールと、
前記半導体モジュールに対して前記基台部が配置される側とは反対側に配置され、前記電力変換用スイッチング素子による電力変換の制御を行う制御基板と、
前記半導体モジュールと前記制御基板との間に配置され、前記制御基板が固定される固定板と、を備え、
前記固定板は、前記制御基板を固定するための基板固定部、および、前記固定板を前記基台部に固定するための基台固定部が設けられる平板状の導電板と、前記導電板を覆う絶縁性樹脂とを含む、電力変換装置。
【請求項2】
前記固定板は、前記絶縁性樹脂に前記導電板がインサート成形されている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記固定板の前記導電板には、前記基板固定部において、前記制御基板が基板締結部材によって締結固定されており、
前記基台部には、前記基台固定部としての基台固定用孔を介して、前記導電板が基台締結部材によって締結固定されており、
前記制御基板は、前記導電板を介して前記基台部に電気的に接続されている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記絶縁性樹脂は、前記導電板の前記基台固定用孔および前記基台固定用孔の周縁部を露出させる第1露出部を有する、請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記絶縁性樹脂には、前記導電板の前記基板固定部を露出させる第2露出部が設けられている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記絶縁性樹脂は、前記第2露出部の周縁部が前記制御基板側に向かって筒状に突出して延びるボス部を含む、請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記基台部は、前記導電板との位置決めを行うために、前記導電板に係合する第1位置決め部を含み、
前記導電板は、前記基台部の前記第1位置決め部と互いに係合する第2位置決め部を含む、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記半導体モジュールは、前記電力変換用スイッチング素子のスイッチングの制御を行うための制御端子を有し、
前記固定板の前記導電板および前記絶縁性樹脂の各々には、前記制御端子に対応して端子用開口部が設けられており、
前記制御端子は、前記端子用開口部を介して、前記制御基板に接続されている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記絶縁性樹脂は、前記導電板の前記端子用開口部の内周面を覆うように形成されている、請求項8に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記固定板の前記導電板および前記絶縁性樹脂の各々には、装置外部の負荷と電気的に接続される複数の導体配線、または、平滑コンデンサを含むコンデンサモジュールの接続端子を、前記半導体モジュールの端子に固定するための固定部を露出させる固定部用開口部が設けられている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記絶縁性樹脂は、前記導電板の前記固定部用開口部の内周面を覆うように形成されている、請求項10に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記半導体モジュールから装置外部の負荷に供給される電流値を検出する電流センサをさらに備え、
前記固定板の前記導電板および前記絶縁性樹脂の各々には、前記電流センサを前記制御基板に接続するためのセンサ用開口部が設けられている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項13】
前記基板固定部は、前記制御基板と前記固定板とが対向する方向に突出するように、一体的に形成される筒状部を含み、
前記筒状部の内周面には、めねじが形成されている、請求項1~12のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力変換装置に関し、特に、半導体モジュールと制御基板との間に配置され、制御基板が固定される固定板を備える電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体モジュールと、制御基板とを備える電力変換装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、スイッチング素子を含む半導体モジュールと、電力変換に関する制御を行う制御基板と、金属製の収納ケースとを備える電力変換装置が開示されている。この電力変換装置は、半導体モジュールおよび制御基板を収納ケースの内部に収納する。また、収納ケース内において、半導体モジュールと制御基板との間には、金属製の基板プレートが設けられている。そして、基板プレートには、制御基板を固定するためのボスと、収納ケースに基板プレートを固定するためのボスとが設けられている。
【0004】
ここで、上記特許文献1には記載されていないが、従来の電力変換装置では、半導体モジュールと制御基板との間に、絶縁性樹脂からなる板状の固定板を配置することによって、半導体モジュールと制御基板との間を気中絶縁する(空気で絶縁を行う)場合よりも、半導体モジュールと制御基板との間の距離を小さくすることが可能になる。このような場合、固定板への制御基板の固定、および、収納ケースなどの部材への固定板の固定を、ねじによって行う際に、ねじよりも機械的強度の低い絶縁性樹脂からなる固定板の固定箇所が、変形および破損してしまうことを防止するために、金属製の円筒状の部材(カラー)を、絶縁性樹脂からなる固定板の各固定箇所に埋め込むようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-014730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、金属製の円筒状の部材(カラー)を、絶縁性樹脂からなる固定板の各固定箇所に埋め込む場合には、金属製の円筒状の部材(カラー)が固定箇所の数だけ必要になる。そのため、半導体モジュールと制御基板との間に配置される固定板を構成する部品の部品点数が増加するとともに、固定板の構造が複雑化するという問題がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、半導体モジュールと制御基板との間に配置される固定板を構成する部品の部品点数の増加、および、固定板の構造の複雑化を抑制可能な電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による電力変換装置は、基台部と、電力変換用スイッチング素子を含み、基台部に固定される半導体モジュールと、半導体モジュールに対して基台部が配置される側とは反対側に配置され、電力変換用スイッチング素子による電力変換の制御を行う制御基板と、半導体モジュールと制御基板との間に配置され、制御基板が固定される固定板と、を備え、固定板は、制御基板を固定するための基板固定部、および、固定板を基台部に固定するための基台固定部が設けられる平板状の導電板と、導電板を覆う絶縁性樹脂とを含む。
【0009】
上記一の局面による電力変換装置は、上記のように、半導体モジュールと制御基板との間に配置され、制御基板が固定される固定板を備える。そして、固定板は、制御基板を固定するための基板固定部、および、固定板を基台部に固定するための基台固定部が設けられる平板状の導電板と、導電板を覆う絶縁性樹脂とを含む。これにより、基板固定部および基台固定部が設けられる平板状の導電板によって、固定板への制御基板の固定と、基台部への固定板の固定とを行うことができる。その結果、制御基板を固定板に固定するための部材、および、固定板を基台部に固定するための部材として、金属製の円筒状の部材(カラー)を、固定箇所の数だけ絶縁性樹脂に埋め込まなくても、導電板の基板固定部および基台固定部を利用して、固定板への制御基板の固定および基台部への固定板の固定のそれぞれを行うことができる。これにより、導電板と絶縁性樹脂とによって、固定板を形成することができるので、金属製の円筒状の部材(カラー)を、固定箇所の数だけ絶縁性樹脂に埋め込む場合に比べて、半導体モジュールと制御基板との間に配置される固定板を構成する部品の部品点数の増加、および、固定板の構造の複雑化を抑制することができる。また、導電板と、導電板を覆う絶縁性樹脂とを含む固定板が、半導体モジュールと制御基板との間に配置されるので、半導体モジュールと制御基板との間を気中絶縁する(空気によって絶縁を行う)場合よりも、半導体モジュールと制御基板との間の距離を小さくすることができる。その結果、半導体モジュールと制御基板とが隣り合う方向における装置サイズの増大を抑制することができる。
【0010】
上記一の局面による電力変換装置において、好ましくは、固定板は、絶縁性樹脂に導電板がインサート成形されている。このように構成すれば、導電板と絶縁性樹脂とを組み合わせる工程を別途行うことなく、固定板の絶縁性樹脂成型時に同時に導電板を組み込むことができるので、固定板の製造工程を簡略化することができる。
【0011】
上記一の局面による電力変換装置において、好ましくは、固定板の導電板には、基板固定部において、制御基板が基板締結部材によって締結固定されており、基台部には、基台固定部としての基台固定用孔を介して、導電板が基台締結部材によって締結固定されており、制御基板は、導電板を介して基台部に電気的に接続されている。このように構成すれば、確実に基台部に制御基板を電気的に接続することができるので、制御基板を基準電位(フレームグランド)に確実に接続することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、絶縁性樹脂は、導電板の基台固定用孔および基台固定用孔の周縁部を露出させる第1露出部を有する。このように構成すれば、導電板を、基台締結部材によって基台部に締結固定する際に、第1露出部において絶縁性樹脂から露出した導電板に、基台締結部材および基台部を接触させることができる。その結果、より確実に基台部に導電板を電気的に接続することができる。
【0013】
上記一の局面による電力変換装置において、好ましくは、絶縁性樹脂には、導電板の基板固定部を露出させる第2露出部が設けられている。このように構成すれば、制御基板を、固定板の導電板に基板締結部材によって締結固定する際に、第2露出部において絶縁性樹脂から露出した導電板に、基板締結部材を接触させることができる。その結果、より確実に導電板に制御基板を電気的に接続することができる。
【0014】
この場合、好ましくは、絶縁性樹脂は、第2露出部の周縁部が制御基板側に向かって筒状に突出して延びるボス部を含む。このように構成すれば、ボス部によって、導電板と制御基板とを離間させることができるので、第2露出部によって露出される基板固定部以外の部分において、導電板と制御基板とが電気的に接続してしまうことを防止することができる。その結果、導電板と制御基板との間において、電気的な短絡が発生することを防止することができる。
【0015】
上記一の局面による電力変換装置において、好ましくは、基台部は、導電板との位置決めを行うために、導電板に係合する第1位置決め部を含み、導電板は、基台部の第1位置決め部と互いに係合する第2位置決め部を含む。このように構成すれば、第1位置決め部と第2位置決め部とを互いに係合させることによって、基台部に対する導電板の位置決めを容易に行うことができるので、基台部に対する導電板(固定板)の取り付け作業を容易に行うことができる。
【0016】
上記一の局面による電力変換装置において、好ましくは、半導体モジュールは、電力変換用スイッチング素子のスイッチングの制御を行うための制御端子を有し、固定板の導電板および絶縁性樹脂の各々には、制御端子に対応して端子用開口部が設けられており、制御端子は、端子用開口部を介して、制御基板に接続されている。このように構成すれば、半導体モジュールと制御基板との間に配置される固定板を迂回するように、半導体モジュールの制御端子と制御基板とを互いに接続するための配線を設ける場合に比べて、配線をより短くすることができる。
【0017】
この場合、好ましくは、絶縁性樹脂は、導電板の端子用開口部の内周面を覆うように形成されている。このように構成すれば、導電板の端子用開口部において、半導体モジュールの制御端子と導電板との間を確実に絶縁することができる。
【0018】
上記一の局面による電力変換装置において、好ましくは、固定板の導電板および絶縁性樹脂の各々には、装置外部の負荷と電気的に接続される複数の導体配線、または、平滑コンデンサを含むコンデンサモジュールの接続端子を、半導体モジュールの端子に固定するための固定部を露出させる固定部用開口部が設けられている。このように構成すれば、固定部用開口部が、複数の導体配線を半導体モジュールの端子に固定するための固定部を露出させる場合には、固定板を基台部に取り付けた後であっても、固定部用開口部によって、複数の導体配線を半導体モジュールの端子に固定するための作業を容易に行うことができる。また、固定部用開口部が、コンデンサモジュールの接続端子を半導体モジュールの端子に固定するための固定部を露出させる場合には、固定板を基台部に取り付けた後であっても、固定部用開口部によって、コンデンサモジュールの接続端子を半導体モジュールの端子に固定するための作業を容易に行うことができる。
【0019】
この場合、好ましくは、絶縁性樹脂は、導電板の固定部用開口部の内周面を覆うように形成されている。このように構成すれば、導電板の固定部用開口部において、固定部と導電板との間を確実に絶縁することができる。
【0020】
上記一の局面による電力変換装置において、好ましくは、半導体モジュールから装置外部の負荷に供給される電流値を検出する電流センサをさらに備え、固定板の導電板および絶縁性樹脂の各々には、電流センサを制御基板に接続するためのセンサ用開口部が設けられている。このように構成すれば、半導体モジュールと制御基板との間に配置される固定板を迂回するように、電流センサと制御基板とを互いに接続するための配線を設ける場合に比べて、配線をより短くすることができる。
【0021】
上記一の局面による電力変換装置において、好ましくは、基板固定部は、制御基板と固定板とが対向する方向に突出するように、一体的に形成される筒状部を含み、筒状部の内周面には、めねじが形成されている。このように構成すれば、基板固定部の筒状部に直接ねじを締結固定することができる。その結果、ねじと、めねじが形成されたナットなどの部材とを用いて、固定板へ制御基板を取り付ける場合と異なり、ねじの締結の際にナットなどの部材を、作業者が保持する必要がないので、固定板への制御基板の取り付けを容易に行うことができる。また、筒状部が、基板固定部に一体的に形成されることによって、めねじが形成されたナットなどの部材を、導電板とは別個に設ける必要がないので、固定板に制御基板を取り付けるための部材の点数が増加することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、上記のように、半導体モジュールと制御基板との間に配置される固定板を構成する部品の部品点数の増加、および、固定板の構造の複雑化を抑制可能な電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態による電力変換装置の回路構成を示した図である。
図2】一実施形態による電力変換装置全体を示した模式図である。
図3】一実施形態の電力変換装置外部における冷却用液体の流れを示した図である。
図4】一実施形態による電力変換装置の斜視図である。
図5】制御基板を取り外した状態の電力変換装置を示した分解斜視図である。
図6図5の状態から固定板を取り外した状態の電力変換装置を示した分解斜視図である。
図7】基台部の突出部および導電板の位置決め孔を示した斜視図である。
図8】Z1方向側から見た固定板の斜視図である。
図9】Z2方向側から見た固定板の斜視図である。
図10図8の固定板の絶縁性樹脂を透過させて示した斜視図である。
図11】Z1方向側から見た導電板の斜視図である。
図12】Z2方向側から見た導電板の斜視図である。
図13図4の700―700線に沿った基台部の突出部周辺の部分拡大図である。
図14図4の800―800線に沿った半導体モジュール周辺の部分拡大図である。
図15図14の半導体モジュールの制御端子周辺を拡大した部分拡大図である。
図16図14のコンデンサモジュールの接続端子周辺を拡大した部分拡大図である。
図17図4の900―900線に沿った電流センサの端子周辺の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1図17を参照して、本発明の一実施形態による電力変換装置100の構成について説明する。電力変換装置100は、たとえば、車両に搭載される。
【0026】
(電力変換装置の全体構成)
図1および図2を参照して、本発明の一実施形態による電力変換装置100の全体構成について説明する。
【0027】
まず、図1を参照して、電力変換装置100の回路構成を説明する。電力変換装置100は、インバータ部10と、コンバータ部20とを備えている。
【0028】
インバータ部10は、コンバータ部20によって変圧された直流電力を交流電力に変換して負荷210に供給する。負荷210は、たとえば、モータである。電力変換装置100と直流電源200との間には、スイッチ201が設けられている。
【0029】
電力変換装置100は、インバータ部10は、半導体モジュール11を含む。半導体モジュール11は、半導体スイッチング素子Q1~Q6を含む。なお、半導体スイッチング素子Q1~Q6は、特許請求の範囲の「電力変換用スイッチング素子」の一例である。半導体モジュール11は、直流電力を交流電力に変換するスイッチング素子モジュール111およびスイッチング素子モジュール112を含む。スイッチング素子モジュール111および112の各々は、上アームを構成する半導体スイッチング素子Q1、Q2およびQ3と、下アームを構成する半導体スイッチング素子Q4、Q5およびQ6とを含む。
【0030】
また、負荷210は、負荷210aと負荷210bとを含む。スイッチング素子モジュール111は、直流電源200から入力される直流電力を交流電力に変換して負荷210aに供給する。スイッチング素子モジュール112は、直流電源200から入力される直流電力を交流電力に変換して負荷210bに供給する。
【0031】
また、電力変換装置100は、半導体モジュール11から装置外部の負荷210に供給される電流値を検出する電流センサ30を備える。電流センサ30は、電流センサ31と、電流センサ32とを含む。電流センサ31および32は、それぞれスイッチング素子モジュール111および112に対応して設けられる。電流センサ31は、スイッチング素子モジュール111と負荷210aとの間に設けられる。また、電流センサ32は、スイッチング素子モジュール112と負荷210bとの間に設けられる。
【0032】
コンバータ部20は、直流電源200から入力される直流電力を変圧する。コンバータ部20は、昇圧コンバータ部21と、DCDCコンバータ部22とを含む。
【0033】
昇圧コンバータ部21は、インバータ部10の入力側に配置されている。昇圧コンバータ部21は、直流電源200から入力される直流電力を昇圧してインバータ部10に供給する。昇圧コンバータ部21は、昇圧用スイッチング素子モジュール21aと、リアクトル21bと含む。昇圧用スイッチング素子モジュール21aは、昇圧用スイッチング素子Q11およびQ12を含む。昇圧用スイッチング素子Q11およびQ12は、それぞれ上アームおよび下アームを構成する。また、昇圧コンバータ部21は、コンデンサC1を含む。リアクトル21bは、直流電源200の正側と、昇圧用スイッチング素子Q11および昇圧用スイッチング素子Q12の接続点との間に設けられている。コンデンサC1は、昇圧用スイッチング素子Q12に対して並列に設けられている。
【0034】
なお、半導体スイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4、Q5およびQ6と、昇圧用スイッチング素子Q11およびQ12とのうち、少なくとも1つはワイドバンドギャップ半導体素子であってもよい。
【0035】
また、電力変換装置100は、平滑コンデンサC2と抵抗Rとを備える。平滑コンデンサC2および抵抗Rは、昇圧コンバータ部21とインバータ部10との間に設けられている。平滑コンデンサC2と抵抗Rとは、互いに並列に設けられている。
【0036】
DCDCコンバータ部22は、直流電力の電圧を異なる電圧に変換する。具体的には、DCDCコンバータ部22は、直流電源200からコネクタ1を介して入力される直流電力の電圧を降圧する。また、DCDCコンバータ部22は、降圧した電圧を出力端子2に供給する。
【0037】
次に、電力変換装置100の構造について説明する。
【0038】
図2に示すように、電力変換装置100は、基台部40と、制御基板50と、固定板60とを備える。
【0039】
なお、本明細書中において、制御基板50と固定板60とが対向する方向をZ方向とする。そして、Z方向における一方側および他方側を、それぞれZ1方向およびZ2方向とする。基台部40、制御基板50および固定板60は、Z1方向側またはZ2方向側から見て、長方形状を有する。また、Z1方向側またはZ2方向側から見た基台部40、制御基板50および固定板60の長手方向をX方向とする。そして、X方向における一方側および他方側を、それぞれX1方向およびX2方向とする。また、X方向およびZ方向の両方に直交する方向(基台部40、制御基板50および固定板60の短手方向)をY方向とする。そして、Y方向における一方側および他方側を、それぞれY1方向およびY2方向とする。
【0040】
基台部40は、Z方向において、インバータ部10とコンバータ部20との間に配置される。すなわち、インバータ部10を構成するスイッチング素子モジュール111およびスイッチング素子モジュール112と、昇圧コンバータ部21およびDCDCコンバータ部22とが、Z方向において、基台部40を挟むように配置される。
【0041】
スイッチング素子モジュール111およびスイッチング素子モジュール112は、基台部40のZ1方向側に配置されている。また、スイッチング素子モジュール111およびスイッチング素子モジュール112は、基台部40の長手方向(X方向)に沿って、互いに隣り合うように配置されている。
【0042】
また、昇圧コンバータ部21およびDCDCコンバータ部22は、平板状の基台部40のZ2方向側に配置されている。また、昇圧コンバータ部21は、X方向において、DCDCコンバータ部22に隣り合うように配置されている。昇圧コンバータ部21は、DCDCコンバータ部22のX2方向側に配置されている。
【0043】
DCDCコンバータ部22は、直流直流コンバータ素子221およびコンバータ基板222を備えている。直流直流コンバータ素子221は、コンバータ用スイッチング素子22a、トランス22b、共振リアクトル22c、平滑リアクトル22d、および、ダイオード素子22eを含む。電力変換装置100は、DCDCコンバータ部22が備える直流直流コンバータ素子221により、直流電源200から入力される直流電力の電圧を異なる電圧に変換するように構成されている。そして、直流直流コンバータ素子221は、コンバータ基板222に実装されている。コンバータ基板222は、平板状に形成されている。コンバータ基板222は、直流直流コンバータ素子221が実装されたプリント回路基板(PCB:Printed Circuit Board)である。コンバータ基板222は、基台部40に対向するように配置される。
【0044】
制御基板50は、半導体モジュール11に対して基台部40が配置される側とは反対側(半導体モジュール11のZ1方向側)に配置される。制御基板50は、半導体スイッチング素子Q1~Q6による電力変換の制御を行う。制御基板50は、平板状に形成されている。制御基板50は、後述する半導体モジュール11の制御端子11a(図5参照)が接続されるプリント回路基板である。
【0045】
図2に示すように、固定板60は、Z方向において、半導体モジュール11と制御基板50との間に配置される。固定板60には、制御基板50が固定される。固定板60の詳細については、後述する。
【0046】
(冷却流路に関する構成)
基台部40は、冷却流路410を内部に有する。本実施形態では、冷却流路410は、インバータ側流路411、接続流路412およびコンバータ側流路413を含む。
【0047】
インバータ側流路411は、基台部40のインバータ部10側(Z1方向側)に設けられている。基台部40のZ1方向側に配置されるインバータ部10は、インバータ側流路411を流れる冷却用液体により冷却される。具体的には、スイッチング素子モジュール111および112は、インバータ側流路411を流れる冷却用液体により冷却される。インバータ側流路411は、接続流路412を介して、コンバータ側流路413に接続されている。
【0048】
コンバータ側流路413は、基台部40のコンバータ部20側(Z2方向側)に設けられている。基台部40のZ2方向側に配置されるコンバータ部20(昇圧コンバータ部21およびDCDCコンバータ部22)は、コンバータ側流路413を流れる冷却用液体により冷却される。具体的には、昇圧用スイッチング素子モジュール21a、リアクトル21b、直流直流コンバータ素子221は、コンバータ側流路413を流れる冷却用液体により冷却される。
【0049】
冷却流路410は、冷却用液体がインバータ側流路411を通過した後に、コンバータ側流路413を通過するように、インバータ側流路411とコンバータ側流路413とが接続流路412によって接続されている。これにより、インバータ側流路411を流れる冷却用液体によって、インバータ部10が冷却された後、コンバータ側流路413を流れる冷却用液体によって、コンバータ部20が冷却される。
【0050】
接続流路412は、基台部40が延びるX方向における一方端側(X1方向側)に配置される。また、基台部40は、冷却用液体が流入する流入口I、および、冷却用液体が流出する流出口Oを有している。流入口Iおよび流出口Oは、共に、基台部40のX方向における他方端側(X2方向側)に設けられている。冷却流路410は、流入口I、インバータ側流路411、接続流路412、コンバータ側流路413、流出口Oが、この順で接続される。冷却用液体は、基台部40のX2方向側に設けられる流入口Iからインバータ側流路411に流入し、接続流路412、コンバータ側流路413の順に流れた後、基台部40のX2方向側に設けられる流出口Oから流出する。
【0051】
そして、冷却流路410は、X方向における一方端側(X1方向側)に配置される接続流路412において折り返すように形成されている。電力変換装置100は、単一の基台部40にインバータ側流路411とコンバータ側流路413とが設けられているので、インバータ部10およびコンバータ部20を別個の冷却部に配置して、各々の冷却部に設けられた冷却流路により冷却するように構成する場合と比べて、装置構成をコンパクト化することができる。
【0052】
また、図3に示すように、基台部40の冷却流路410から流出した冷却用液体は、電力変換装置100外部の放熱部101により放熱されて冷却される。また、放熱部101により冷却された冷却用液体は、電力変換装置100外部のポンプ102により送液されて再び基台部40の冷却流路410に流入する。放熱部101は、熱交換器を含み、外部の空気により冷却される。放熱部101は、たとえば、ラジエータである。なお、ポンプ102を流出口Oと放熱部101の間に配置して、放熱部101により放熱される前の冷却用液体がポンプ102によって送液されてもよい。また、冷却用液体は、たとえば、水、不凍液などの液体である。
【0053】
図4に示すように、制御基板50は、複数(14本)のねじN1によって固定板60に締結固定されている。なお、ねじN1は、特許請求の範囲の「基板締結部材」の一例である。また、電力変換装置100は、平滑コンデンサC2(図1参照)を含むコンデンサモジュール70を備える。図4に示すように、コンデンサモジュール70は、制御基板50および固定板60のY1方向側に配置される。
【0054】
図5に示すように、固定板60は、複数(10本)のねじN2によって、基台部40に締結固定されている。なお、ねじN2は、特許請求の範囲の「基台締結部材」の一例である。
【0055】
また、半導体モジュール11(図6参照)は、電力変換用スイッチング素子のスイッチングの制御を行うための制御端子11aを有している。
【0056】
図5に示すように、固定板60には、開口部E、F、GおよびHが設けられている。開口部Eは、半導体モジュール11の制御端子11a、および、固定部V1に対応して設けられている。開口部Fは、固定部V2に対応して設けられている。開口部Gは、電流センサ30の端子30aに対応して設けられている。開口部Hは、後述する導電板61を露出させるように形成されている。なお、固定部V1およびV2の詳細については、後述する。
【0057】
図6に示すように、半導体モジュール11(スイッチング素子モジュール111および112)は、ねじN5によって、基台部40に固定される。また、電力変換装置100は、半導体モジュール11に接続される複数(6つ)の導体配線90を備える。そして、スイッチング素子モジュール111のY2方向側には、電流センサ31が配置される。電流センサ31は、スイッチング素子モジュール111に接続する複数(3つ)の導体配線90に流れる電流値を検出する。また、スイッチング素子モジュール112のY2方向側には、電流センサ32が配置される。電流センサ32は、スイッチング素子モジュール112に接続する複数(3つ)の導体配線90に流れる電流値を検出する。
【0058】
図7に示すように、固定板60は、導電板61と、導電板61を覆う絶縁性樹脂62とを含む。導電板61は、たとえば、鋼板である。絶縁性樹脂62は、たとえば、PPS(Poly Phenylene Sulfide:ポリフェニレンサルファイド)を含む。また、絶縁性樹脂62は、PBT(Poly Butylene Terephthalate:ポリブチレンテレフタレート)を含んでもよい。
【0059】
また、導電板61には、固定板60を基台部40に固定するための基台固定用孔61aが設けられる。なお、基台固定用孔61aは、特許請求の範囲の「基台固定部」の一例である。
【0060】
絶縁性樹脂62は、導電板61の基台固定用孔61aおよび基台固定用孔61aの周縁部を露出させる第1露出部62aを有する。
【0061】
基台部40は、導電板61との位置決めを行うために、導電板61に係合する突出部40aを含む。突出部40aは、基台部40に複数(2つ)設けられている。突出部40aは、固定板60側(Z1方向側)に向かってに突出するように、円錐台状に形成されている。なお、突出部40aは、特許請求の範囲の「第1位置決め部」の一例である。
【0062】
導電板61は、基台部40の突出部40aと互いに係合する位置決め孔61bを含む。位置決め孔61bは、突出部40aに対応して、導電板61に複数(2つ)設けられている。なお、位置決め孔61bは、特許請求の範囲の「第2位置決め部」の一例である。
【0063】
図8に示すように、絶縁性樹脂62は、Z1方向側(制御基板50側)に向かって筒状に突出して延びるボス部Bを含む。なお、ボス部Bは、後述する基板固定部61c(図12参照)に対応して複数(14個)設けられている。
【0064】
また、固定板60のZ2方向側(半導体モジュール11側)には、Z2方向側に延びるリブ62c(図9参照)が設けられている。リブ62cは、開口部E、F、GおよびHに対応して設けられている。
【0065】
図10に示すように、固定板60の導電板61は、平板状に形成されている。固定板60は、絶縁性樹脂62に導電板61がインサート成形されている。固定板60の開口部Eは、導電板61に設けられる開口部E1と、絶縁性樹脂62に設けられる開口部E2とを含む。開口部E1およびE2の各々は、複数(6つ)設けられている。開口部E1およびE2の各々は、Z1方向側から見て、T字形状を有している。
【0066】
また、固定板60の開口部Fは、導電板61に設けられる開口部F1と、絶縁性樹脂62に設けられる開口部F2とを含む。開口部F1およびF2の各々は、複数(6つ)設けられている。開口部F1およびF2の各々は、Z1方向側から見て、トラック形状(角丸長方形状)を有している。
【0067】
また、固定板60の開口部Gは、導電板61に設けられる開口部G1と、絶縁性樹脂62に設けられる開口部G2とを含む。開口部G1およびG2の各々は、複数(2つ)設けられている。開口部G1およびG2の各々は、Z1方向側から見て、長方形状を有している。
【0068】
図11に示すように、導電板61には、基台固定用孔61aと、位置決め孔61bと、開口部E1、F1およびG1とが設けられている。また、導電板61には、制御基板50を固定するための基板固定部61cが設けられる。そして、導電板61の基板固定部61cは、図12に示すように、制御基板50と固定板60とが対向するZ方向におけるZ2方向側に突出する筒状部Pを有している。筒状部Pは、導電板61にバーリング加工を施すことによって、形成されている。
【0069】
図13に示すように、絶縁性樹脂62には、導電板61の基板固定部61cを露出させる第2露出部62bが設けられている。導電板61の基板固定部61cは、Z1方向側およびZ2方向側から見て、絶縁性樹脂62から露出している。また、ボス部Bは、第2露出部62bの周縁部が制御基板50側(Z1方向側)に向かって筒状に突出して延びるように形成されている。
【0070】
固定板60の導電板61には、基板固定部61cにおいて、制御基板50がねじN1によって締結固定されている。本実施形態では、基板固定部61cは、制御基板50と固定板60とが対向するZ方向におけるZ2方向側に突出するように、一体的に形成される筒状部Pを含む。筒状部Pの内周面には、めねじが形成されている。具体的には、バーリング加工によって形成された筒状部Pの内周面に、タップ加工が施されることによって、めねじが形成されている。そして、筒状部Pの内周面のめねじに、ねじN1のおねじが締結される。
【0071】
また、基台部40には、基台固定用孔61aを介して、導電板61がねじN2によって締結固定されている。制御基板50は、導電板61を介して基台部40に電気的に接続されている。具体的には、制御基板50は、ねじN1、導電板61およびねじN2を介して、基台部40に電気的に接続されている。
【0072】
図14に示すように、固定部V1では、ねじN3によって、導体配線90が、半導体モジュール11の端子11bに締結固定されている。端子11bは、出力側の端子である。固定部V2では、ねじN4によって、コンデンサモジュール70の接続端子70aが、半導体モジュール11の端子11bに締結固定されている。端子11cは、入力側の端子である。また、Y方向において、開口部Eと開口部Fとの間には、開口部Hが設けられている。
【0073】
図15に示すように、固定板60の導電板61には、制御端子11aに対応して開口部E1が設けられている。また、本実施形態では、開口部E1は、装置外部の負荷210と電気的に接続される複数の導体配線90を、半導体モジュール11の端子11bに固定するための固定部V1を露出させる。すなわち、導電板61には、制御端子11aに対応して設けられる開口部と、固定部V1を露出させるための開口部とが一体的に設けられている。なお、開口部E1は、特許請求の範囲に記載の「端子用開口部」および「固定部用開口部」の一例である。
【0074】
また、固定板60の絶縁性樹脂62には、制御端子11aに対応して開口部E2が設けられている。また、本実施形態では、開口部E2は、装置外部の負荷210と電気的に接続される複数の導体配線90を、半導体モジュール11の端子11bに固定するための固定部V1を露出させる。すなわち、絶縁性樹脂62には、制御端子11aに対応して設けられる開口部と、固定部V1を露出させるための開口部とが一体的に設けられている。なお、開口部E2は、特許請求の範囲に記載の「端子用開口部」および「固定部用開口部」の一例である。
【0075】
制御端子11aは、開口部E(開口部E1およびE2)を介して、制御基板50に接続されている。制御端子11aは、固定部V1(ねじN2)のY1方向側に配置されている。制御端子11aは、Z1方向側に延び、制御基板50に接続されている。また、固定部V2において、端子11bに導体配線90を締結固定するねじN3は、開口部E内に配置される。
【0076】
絶縁性樹脂62は、導電板61の開口部E1の内周面を覆うように形成されている。これにより、導電板61とねじN3との間に、絶縁性樹脂62が配置されるとともに、導電板61と制御端子11aとの間に、絶縁性樹脂62が配置される。
【0077】
図16に示すように、固定板60の導電板61には、コンデンサモジュール70の接続端子70aを半導体モジュール11の端子11cに固定するための固定部V2を露出させる開口部F1が設けられている。また、固定板60の絶縁性樹脂62には、コンデンサモジュール70の接続端子70aを、半導体モジュール11の端子11cに固定するための固定部V2を露出させる開口部F2が設けられている。なお、開口部F1および開口部F2は、特許請求の範囲に記載の「固定部用開口部」の一例である。また、固定部V2において、端子11cに接続端子70aを締結固定するねじN4は、開口部F内に配置される。
【0078】
絶縁性樹脂62は、導電板61の開口部F1の内周面を覆うように形成されている。これにより、導電板61とねじN2との間に、絶縁性樹脂62が配置される。
【0079】
また、開口部Hは、絶縁性樹脂62から導電板61を露出させるように形成されている。開口部Hは、Z1方向側から見て、固定部V2とオーバーラップしない位置において、導電板61を露出させている。これにより、固定板60における絶縁性樹脂62の量を減らすことができるので、固定板60の軽量化を図ることができる。
【0080】
図17に示すように、固定板60の導電板61には、電流センサ30を制御基板50に接続するための開口部G1が設けられている。また、固定板60の絶縁性樹脂62には、電流センサ30を制御基板50に接続するための開口部G2が設けられている。なお、開口部G1および開口部G2は、特許請求の範囲に記載の「センサ用開口部」の一例である。
【0081】
電流センサ30の端子30aは、開口部G(開口部G1およびG2)を介して、制御基板50に接続されている。端子30aは、固定部V1(ねじN2)のY2方向側に配置されている。端子30aは、Z1方向側に延び、制御基板50に接続されている。端子30aは、開口部G内に配置されている。
【0082】
絶縁性樹脂62は、導電板61の開口部G1の内周面を覆うように形成されている。これにより、導電板61と端子30aとの間に、絶縁性樹脂62が配置される。
【0083】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0084】
本実施形態では、半導体モジュール11と制御基板50との間に配置され、制御基板50が固定される固定板60を備える。そして、固定板60は、制御基板50を固定するための基板固定部61c、および、固定板60を基台部40に固定するための基台固定用孔61aが設けられる平板状の導電板61と、導電板61を覆う絶縁性樹脂62とを含む。これにより、基板固定部61cおよび基台固定用孔61aが設けられる平板状の導電板61によって、固定板60への制御基板50の固定と、基台部40への固定板60の固定とを行うことができる。その結果、制御基板50を固定板60に固定するための部材、および、固定板60を基台部40に固定するための部材として、金属製の円筒状の部材(カラー)を、固定箇所の数だけ絶縁性樹脂62に埋め込まなくても、導電板61の基板固定部61cおよび基台固定用孔61aを利用して、固定板60への制御基板50の固定および基台部40への固定板60の固定のそれぞれを行うことができる。これにより、導電板61と絶縁性樹脂62とによって、固定板60を形成することができるので、金属製の円筒状の部材(カラー)を、固定箇所の数だけ絶縁性樹脂62に埋め込む場合に比べて、半導体モジュール11と制御基板50との間に配置される固定板60を構成する部品の部品点数の増加、および、固定板60の構造の複雑化を抑制することができる。また、導電板61と、導電板61を覆う絶縁性樹脂62とを含む固定板60が、半導体モジュール11と制御基板50との間に配置されるので、半導体モジュール11と制御基板50との間を気中絶縁する(空気によって絶縁を行う)場合よりも、半導体モジュール11と制御基板50との間の距離を小さくすることができる。その結果、半導体モジュール11と制御基板50とが隣り合うZ方向における装置サイズの増大を抑制することができる。
【0085】
また、本実施形態では、上記のように、固定板60は、絶縁性樹脂62に導電板61がインサート成形されている。これにより、導電板61と絶縁性樹脂62とを組み付合わせる工程を別途行うことなく、固定板60の絶縁性樹脂62成型時に同時に導電板61を組み込むことができるので、固定板60の製造工程を簡略化することができる。
【0086】
また、本実施形態では、上記のように、固定板60の導電板61には、基板固定部61cにおいて、制御基板50がねじN1によって締結固定されている。そして、基台部40には、基台固定用孔61aを介して、導電板61がねじN2によって締結固定されている。制御基板50は、導電板61を介して基台部40に電気的に接続されている。これにより、確実に基台部40に制御基板50を電気的に接続することができるので、制御基板50を基準電位(フレームグランド)に確実に接続することができる。
【0087】
また、本実施形態では、上記のように、絶縁性樹脂62は、導電板61の基台固定用孔61aおよび基台固定用孔61aの周縁部を露出させる第1露出部62aを有する。これにより、導電板61を、ねじN2によって基台部40に締結固定する際に、第1露出部62aにおいて絶縁性樹脂62から露出した導電板61に、ねじN2および基台部40を接触させることができる。その結果、より確実に基台部40に導電板61を電気的に接続することができる。
【0088】
また、本実施形態では、上記のように、絶縁性樹脂62には、導電板61の基板固定部61cを露出させる第2露出部62bが設けられている。これにより、制御基板50を、固定板60の導電板61にねじN1によって締結固定する際に、第2露出部62bにおいて絶縁性樹脂62から露出した導電板61に、ねじN1を接触させることができる。その結果、より確実に導電板61に制御基板50を電気的に接続することができる。
【0089】
また、本実施形態では、上記のように、絶縁性樹脂62は、第2露出部62bの周縁部が制御基板50側(Z1方向側)に向かって筒状に突出して延びるボス部Bを含む。これにより、ボス部Bによって、導電板61と制御基板50とを離間させることができるので、第2露出部62bによって露出される基板固定部61c以外の部分において、導電板61と制御基板50とが電気的に接続してしまうことを防止することができる。その結果、導電板61と制御基板50との間において、電気的な短絡が発生することを防止することができる。
【0090】
また、本実施形態では、上記のように、基台部40は、導電板61との位置決めを行うために、導電板61に係合する突出部40aを含み、導電板61は、基台部40の突出部40aと互いに係合する位置決め孔61bを含む。これにより、突出部40aと位置決め孔61bとを互いに係合させることによって、基台部40に対する導電板61の位置決めを容易に行うことができるので、基台部40に対する導電板61(固定板60)の取り付け作業を容易に行うことができる。
【0091】
また、本実施形態では、上記のように、半導体モジュール11は、半導体スイッチング素子Q1~Q6のスイッチングの制御を行うための制御端子11aを有する。そして、固定板60の導電板61および絶縁性樹脂62には、制御端子11aに対応して開口部E1およびE2がそれぞれ設けられている。制御端子11aは、開口部E1およびE2を介して、制御基板50に接続されている。これにより、半導体モジュール11と制御基板50との間に配置される固定板60を迂回するように、半導体モジュール11の制御端子11aと制御基板50とを互いに接続するための配線を設ける場合に比べて、配線をより短くすることができる。
【0092】
また、本実施形態では、上記のように、固定板60の導電板61および絶縁性樹脂62には、複数の導体配線90を半導体モジュール11の端子11bに固定するための固定部V1を露出させる開口部E1およびE2がそれぞれ設けられている。これにより、固定板60を基台部40に取り付けた後であっても、開口部E1およびE2によって、複数の導体配線90を、半導体モジュール11の端子11bに固定するための作業を容易に行うことができる。また、固定板60の導電板61および絶縁性樹脂62には、平滑コンデンサC2を含むコンデンサモジュール70の接続端子70aを、半導体モジュール11の端子11cに固定するための固定部V2を露出させる開口部F1およびF2がそれぞれ設けられている。これにより、固定板60を基台部40に取り付けた後であっても、開口部E1およびE2によって、コンデンサモジュール70の接続端子70aを、半導体モジュール11の端子11cに固定するための作業を容易に行うことができる。
【0093】
また、本実施形態では、上記のように、絶縁性樹脂62は、導電板61の開口部E1の内周面を覆うように形成されている。これにより、導電板61の開口部E1において、半導体モジュール11の制御端子11aと導電板61との間を確実に絶縁することができるとともに、導電板61の開口部E1において、固定部V1と導電板61との間を確実に絶縁することができる。
【0094】
また、本実施形態では、上記のように、電力変換装置100は、半導体モジュール11から装置外部の負荷210に供給される電流値を検出する電流センサ30を備える。そして、固定板60の導電板61および絶縁性樹脂62には、電流センサ30を制御基板50に接続するための開口部G1およびG2がそれぞれ設けられている。これにより、半導体モジュール11と制御基板50との間に配置される固定板60を迂回するように、電流センサ30と制御基板50とを互いに接続するための配線を設ける場合に比べて、配線をより短くすることができる。
【0095】
また、本実施形態では、上記のように、基板固定部61cは、制御基板50と固定板60とが対向するZ方向におけるZ2方向側に突出するように、一体的に形成される筒状部Pを含む。そして、筒状部Pの内周面には、めねじが形成されている。これにより、基板固定部61cの筒状部Pに直接ねじN1を締結固定することができる。その結果、ねじN1と、めねじが形成されたナットなどの部材とを用いて、固定板60へ制御基板50を取り付ける場合と異なり、ねじN1の締結の際にナットなどの部材を、作業者が保持する必要がないので、固定板60への制御基板50の取り付けを容易に行うことができる。また、筒状部Pが、基板固定部61cに一体的に形成されることによって、めねじが形成されたナットなどの部材を、導電板61とは別個に設ける必要がないので、固定板60に制御基板50を取り付けるための部材の点数が増加することを抑制することができる。
【0096】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0097】
たとえば、上記実施形態では、固定板60は、絶縁性樹脂62に導電板61がインサート成形されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、固定板は、個別に成形された絶縁性樹脂と、導電板とを組み合わせることによって、固定板を構成されてもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、制御基板50は、導電板61を介して基台部40に電気的に接続されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御基板は、導電板を介さずに、ねじなどを介して基台部に電気的に接続されてもよい。また、制御基板は、基台部に直接接続されてもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、絶縁性樹脂62は、導電板61の基台固定用孔61aおよび基台固定用孔61aの周縁部を露出させる第1露出部62aを有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、絶縁性樹脂は、導電板の基台固定用孔のみを露出させてもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、絶縁性樹脂62は、第2露出部62bの周縁部が制御基板50側(Z1方向側)に向かって筒状に突出して延びるボス部Bを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、絶縁性樹脂は、制御基板側に向かって筒状に突出して延びるボス部を含まずに、導電板が、制御基板側に向かって筒状に突出して延びてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、基台部40は、導電板61との位置決めを行うために、導電板61に係合する突出部40a(第1位置決め部)を含み、導電板61は、基台部40の突出部40aと互いに係合する位置決め孔61b(第2位置決め部)を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、導電板は、位置決め孔を含まずに、基台部の第1位置決め部と互いに係合する切り欠きが設けられてもよい。また、基台部が位置決め用の穴を含み、基台部の位置決め用の穴に導電板が係合してもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、制御端子11aに対応して設けられる開口部(端子用開口部)と、固定部V1を露出させるための開口部(固定部用開口部)とが一体的に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、固定板(導電板および絶縁性樹脂)には、端子用開口部と固定部用開口部とが別個に設けられてもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、固定板60の導電板61および絶縁性樹脂62には、制御端子11aに対応して設けられる開口部E1およびE2(端子用開口部)がそれぞれ設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、固定板の導電板および絶縁性樹脂の各々に端子用開口部を設けずに、固定板を迂回するように設けた配線によって、制御端子が制御基板に接続されてもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、絶縁性樹脂62は、導電板61の開口部E1(端子用開口部および固定部用開口部)の内周面を覆うように形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、導電板の端子用開口部の内周面は、絶縁性樹脂から露出してもよい。また、導電板の固定部用開口の内周面は、絶縁性樹脂から露出してもよい。
【0105】
また、上記実施形態では、固定板60の導電板61および絶縁性樹脂62には、固定部V1を露出させる開口部E1およびE2がそれぞれ設けられるとともに、固定部V2を露出させる開口部F1およびF2がそれぞれ設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、固定板の導電板および絶縁性樹脂の各々には、複数の導体配線を半導体モジュールの端子に固定するための固定部を露出させる開口部、および、平滑コンデンサを含むコンデンサモジュールの接続端子を、半導体モジュールの端子に固定するための固定部を露出される開口部のうち、いずれか一方の開口部のみが設けられてもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、固定板60の導電板61および絶縁性樹脂62には、電流センサ30を制御基板50に接続するための開口部G1およびG2(センサ用開口部)がそれぞれ設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、固定板の導電板および絶縁性樹脂の各々に、電流センサを制御基板に接続するためのセンサ用開口部を設けずに、固定板を迂回するように設けた配線によって、電流センサが制御基板に接続されてもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、筒状部Pは、制御基板50と固定板60とが対向するZ方向におけるZ2方向側に突出する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、筒状部は、制御基板側(Z1方向側)に突出してもよい。
【0108】
また、上記実施形態では、導電板61の筒状部Pの内周面には、めねじが形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、導電板の筒状部の内周面に、めねじを形成せずに、ねじとナットとによって、導電板と制御基板とが締結固定されてもよい。
【符号の説明】
【0109】
11 半導体モジュール
11a 制御端子
11b 端子
11c 端子
30、31、32 電流センサ
30a 端子
40基台部
40a 突出部(第1位置決め部)
50 制御基板
60 固定板
61 導電板
61a 基台固定用孔(基台固定部)
61b 位置決め孔(第2位置決め部)
61c 基板固定部
62 絶縁性樹脂
62a 第1露出部
62b 第2露出部
70 コンデンサモジュール
70a 接続端子
90 導体配線
100 電力変換装置
210、210a、210b 負荷
B ボス部
C2 平滑コンデンサ
E1、E2 開口部(端子用開口部、固定部用開口部)
F1、F2 開口部(固定部用開口部)
G1、G2 開口部(センサ用開口部)
N1 ねじ
N2 ねじ
P 筒状部
Q1~Q6 半導体スイッチング素子(電力変換用スイッチング素子)
V1 固定部
V2 固定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17