(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130143
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】導光板、透明板の製造方法及び導光板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/58 20060101AFI20240920BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20240920BHJP
F21V 8/00 20060101ALI20240920BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240920BHJP
B29C 43/30 20060101ALI20240920BHJP
G02B 5/02 20060101ALN20240920BHJP
G02F 1/13357 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
B29C43/58
G02B5/00 Z
F21V8/00 100
F21S2/00 435
B29C43/30
G02B5/02 B
G02F1/13357
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039687
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】522229204
【氏名又は名称】株式会社イルミナ
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】上片野 充
【テーマコード(参考)】
2H042
2H391
3K244
4F204
【Fターム(参考)】
2H042AA02
2H042AA26
2H042BA01
2H042BA12
2H042BA15
2H042BA20
2H391AA13
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3K244AA05
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4F204FG08
4F204FJ09
4F204FN11
4F204FN15
(57)【要約】
【課題】生産性の低下を抑えつつ、転写率の高い成形性を求められる精密な導光板を製造する。
【解決手段】実施形態の導光板は、透明材料からなる少なくとも2層を含み、その内の1層の外表面に設けられた凹凸状の反射要素を構成要素とし、外部からの照明によって全体として特定の表示パターンを表示する導光板において、前記導光板は、前記2層として、前記反射要素を含む第1層と、前記反射要素を含まない第2層と、を備え、前記第1層の熱変形温度は、前記第2層の熱変形温度よりも50℃以上低い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明材料からなる少なくとも2層を含み、その内の1層の外表面に設けられた凹凸状の反射要素を構成要素とし、外部からの照明によって全体として特定の表示パターンを表示する導光板において、
前記導光板は、前記2層として、
前記反射要素を含む第1層と、
前記反射要素を含まない第2層と、を備え、
前記第1層の熱変形温度は、前記第2層の熱変形温度よりも50℃以上低いことを特徴とする導光板。
【請求項2】
前記第1層の厚みは、前記第2層の厚みの1/5以下であることを特徴とする請求項1に記載の導光板。
【請求項3】
前記第1層の厚みは、10μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の導光板。
【請求項4】
前記第1層は、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリ塩化ビニル、又は、アクリル樹脂とエラストマーとの共重合体で形成され、
前記第2層は、ポリカーボネート、シクロポリオレフィンポリマー、ガラス、アクリル樹脂、又は、ポリスチレンで形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の導光板。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の導光板の原形となる透明板の製造方法であって、
前記第2層の材料からなる板に前記第1層の材料からなるフィルムを加熱圧着又は接着するか、
前記第1層の材料と前記第2層の材料とを共押出で成形することを特徴とする透明板の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の導光板の製造方法であって、
前記反射要素が反転転写された形状の金属板又は樹脂板を金型として、前記第1層の材料と前記第2層の材料とを含む少なくとも2つの層で形成された樹脂板を、前記第1層の材料の熱変形温度以上かつ前記第2層の材料の成形温度以下でプレス成形することを特徴とする導光板の製造方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の導光板の製造方法であって、
前記反射要素が反転転写された形状の金属板又は樹脂板を金型として、前記第1層の材料からなるフィルムをプレス成形した後、前記第2層の材料からなる板に前記フィルムを接着することを特徴とする導光板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光板、透明板の製造方法及び導光板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、透明材料からなる導光板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、導光板の量産方法としては、金型を使ったUV硬化樹脂成型、射出成型、熱プレス成型等が代表的に挙げられる。
UV硬化樹脂成型は、熱を加える必要がないので、射出成型や熱プレス成型よりも転写率を高くすることが可能である。このUV硬化樹脂成型は、液状のUV硬化樹脂を透明基板に塗布して金型を押し当て、その状態でUV光を当てて樹脂を硬化させた後に離型し、その後に外形加工する工程となる。そのため、UV硬化樹脂成型は、射出成型や熱プレス成型と比べて、工程が複雑で高コストとなりやすい。
射出成型は、溶融した樹脂を箱状の金型内に高圧で射出して成形するので、外形加工する必要がない。そのため、射出成型は、成形時間を短くできる点ではコスト的に有利であるが、射出圧力に耐える金型は高価となる。この射出成型は、生産数量が多くないと逆にコスト的に不利となる。
熱プレス成型は、透明樹脂を加熱して軟化し、平板状の金型(スタンパ金型)で加圧プレスし、その後に外形加工する工程となる。そのため、熱プレス成型は、UV硬化樹脂成型や射出成型よりもコスト的に有利である。
なお、UV硬化樹脂成型、熱プレス成型では、使用する金型は平型だけではなく、ロールタイプの金型を使用する場合もある。
しかしながら、射出成型及び熱プレス成型は、転写率を高くするためには透明樹脂を相当な高温に加熱して粘度を下げて、加圧圧力を高くする必要がある。そのため、冷却時間を長くする必要があり、生産性が低下し、結果的にコスト上昇の要因となる。
【0005】
そこで本発明は、生産性の低下を抑えつつ、転写率の高い成形性を求められる精密な導光板を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様に係る導光板は、透明材料からなる少なくとも2層を含み、その内の1層の外表面に設けられた凹凸状の反射要素を構成要素とし、外部からの照明によって全体として特定の表示パターンを表示する導光板において、前記導光板は、前記2層として、前記反射要素を含む第1層と、前記反射要素を含まない第2層と、を備え、前記第1層の熱変形温度は、前記第2層の熱変形温度よりも50℃以上低い。
【0007】
(2)上記(1)に記載の態様において、前記第1層の厚みは、前記第2層の厚みの1/5以下であってもよい。
【0008】
(3)上記(1)又は(2)に記載の態様において、前記第1層の厚みは、10μm以上100μm以下であってもよい。
【0009】
(4)上記(1)から(3)の何れかに記載の態様において、前記第1層は、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリ塩化ビニル、又は、アクリル樹脂とエラストマーとの共重合体で形成され、前記第2層は、ポリカーボネート、シクロポリオレフィンポリマー、ガラス、アクリル樹脂、又は、ポリスチレンで形成されていてもよい。
【0010】
(5)本発明の一態様に係る透明板の製造方法は、上記(1)から(4)の何れかに記載の導光板の原形となる透明板の製造方法であって、前記第2層の材料からなる板に前記第1層の材料からなるフィルムを加熱圧着又は接着するか、前記第1層の材料と前記第2層の材料とを共押出で成形する。
【0011】
(6)本発明の一態様に係る導光板の製造方法は、上記(1)から(4)の何れかに記載の導光板の製造方法であって、前記反射要素が反転転写された形状の金属板又は樹脂板を金型として、前記第1層の材料と前記第2層の材料とを含む少なくとも2つの層で形成された樹脂板を、前記第1層の材料の熱変形温度以上かつ前記第2層の材料の成形温度以下でプレス成形する。
【0012】
(7)本発明の一態様に係る導光板の製造方法は、上記(1)から(4)の何れかに記載の導光板の製造方法であって、前記反射要素が反転転写された形状の金属板又は樹脂板を金型として、前記第1層の材料からなるフィルムをプレス成形した後、前記第2層の材料からなる板に前記フィルムを接着する。
【発明の効果】
【0013】
本態様の導光板、透明板の製造方法及び導光板の製造方法によれば、生産性の低下を抑えつつ、転写率の高い成形性を求められる精密な導光板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】第1実施形態の導光板の製造方法の一例を示す図。
図2(A)は熱プレス成型前の一例を示す図、
図2(B)は熱プレス成型中の一例を示す図、
図2(C)は熱プレス成型後の一例を示す図。
【
図3】第2実施形態の導光板の製造方法の一例を示す図。
図3(A)は熱プレス成型中の一例を示す図、
図3(B)は熱プレス成型後の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態について各図を基に説明を行う。各図には、必要に応じてX-Y-Z座標系を記載した。本明細書においては、これらの座標系に沿って各方向を定め説明を行う。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0016】
<第1実施形態>
図1に示すように、表示装置1は、導光板3と、この導光板3の端面3cに配置された光源4とから概略構成されている。
【0017】
一般に、導光板とは、外部から照射された光を、透明な板に施された加工物により反射散乱することで、あらかじめ設計された角度と強さで光らせるものである。代表的な導光板としては、液晶パネル用バックライト導光板がある。この導光板は、透明板に形成された微細な凹凸構造により、導光板端面からLED等により入射した光を反射散乱することで、導光板自体を一様な面光源として機能させるものである。例えば、導光板は、透明板に凹凸構造を適宜配置することにより、特定のデザインが光るようにすることも可能である。例えば、導光板は、非点灯時にはほぼ透明であり、点灯時には加飾照明として使用される場合もある。
【0018】
本実施形態の導光板3は、対向する2つの表面である前面3a及び後面3bと、端面3cとを有する。導光板3は、方形状に形成されている。なお、導光板3の形状は、矩形板形状に限定されず、任意の形状としてもよい。また、導光板3は、平板が代表的な形状であるが、それに限定されるわけではなく、例えば曲面形状であってもよい。
【0019】
本実施形態の反射要素2は、導光板3の前面3aと対向する面である後面3bに形成された切欠(窪み)である。反射面2aは、反射要素2の光源4に対向する側の面に形成されている。光源4から照射された光Lは、端面3cから導光板3に入射して、導光板3の内部を通過する。さらに、この光Lは、反射要素2の反射面2aで反射され、導光板3の前面3a側に反射光Lとして射出され、観察者(視点E)によって認識される。
【0020】
導光板3は、透明材料からなる少なくとも2層101,102を含み、その内の1層101の外表面に設けられた凹状でかつドット状の反射要素2を構成要素とし、外部からの照明によって全体として特定の表示パターンを表示するものである。導光板3は、2層101,102として、反射要素2を含む第1層101と、反射要素を含まない第2層102と、を備える。
【0021】
第1層101の熱変形温度は、第2層102の熱変形温度よりも50℃以上低い。ここで熱変形温度とは、試験規格ASTM D648に基づく熱可塑性樹脂の熱変形温度を意味する。なお、第1層101の成形温度は、第1層101を成形する際に第1層101の成形材料(第1母材層111)を加熱して軟化状態又は溶融状態にするために必要な温度を意味し、熱変形温度よりも50℃以上(通常80℃から150℃以上)高い。
【0022】
具体的な導光板3の構成材料としては、反射要素2を含む第1層101は、透明で成形温度が低いことが望ましいが、使用環境では安定で且つある程度の強度が必要である。一方、反射要素2を含まない第2層102は、透明で且つできるだけ高温での強度が高いことが望ましい。
【0023】
具体的に、第1層101は、EVA(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)、PVC(ポリ塩化ビニル)、又は、アクリル樹脂とエラストマーとの共重合体で形成されていることが望ましい。一方、第2層102は、PC(ポリカーボネート)、シクロポリオレフィンポリマー、ガラス、アクリル樹脂、又は、PS(ポリスチレン)で形成されていることが望ましい。
【0024】
これらの材料の熱変形温度は、材料の組成や重合度などにより変化するが、試験規格ASTM D648に基づく熱可塑性樹脂の熱変形温度を下記に例示する。代表例としてPVCの熱変形温度は64℃、PCの熱変形温度は130℃、PSの熱変形温度は104℃、アクリル樹脂の熱変形温度は90℃である。なお、同じ種類の材料であっても、組成や重合度によって熱変形温度は異なる。また、ガラスに関しては樹脂材料ではないため、樹脂材料に対して用いられる熱変形温度という定義は厳密には適用できないが、ここでは非常に熱変形温度の高い材料として、他の樹脂材料と同様の扱いとしている。
【0025】
第1層101の成形温度は、第2層102の熱変形温度よりも低くすることが望ましいが、成形を行う時間内で板に変形を生じなければよいので、板の厚み方向の応力しかかからないプレス成形においては、第1層101の熱変形温度が第2層102の熱変形温度よりも50℃程度以上低ければ、第2層102を変形させることなく第1層101を成形することが可能である。
【0026】
例えば、第1層101の材料がPVCであり、第2層102の材料がPCである場合は、熱変形温度の差が130-64=66℃であり、例えば成形温度を120℃とすれば、PCを変形させることなく成形が可能となる。例えば成形温度が150℃でも、成形時間が短時間であれば成形可能である。
【0027】
第1層101の成形材料としてのEVA、PVC、アクリル樹脂とエラストマーとの共重合体は、透明で且つ熱変形温度が低いという特徴とともに、可撓性も有している。そのため、第1層101の成形材料がEVA、PVC、又は、アクリル樹脂とエラストマーとの共重合体であれば、熱プレス成型による導光板3の製造において離型時に欠けや割れが発生しにくい。
【0028】
第1層101に使用できる材料は、熱的、光学的特性からEVA、PVC、又は、アクリル樹脂とエラストマーとの共重合体等に限られてくる。これらの材料は透明ではあるが、一般的に導光板に使用されるPC、アクリル樹脂等に比較すると透明性に劣る。したがって、第1層101の厚みt1はできるだけ薄い方が良いが、当然反射要素2の高さ(深さ)よりも薄くすることはできない。ここで、第1層101の厚みt1は、導光板3の厚み方向(Z方向)において第1層101の上面(第2層102に対向する面)と下面(導光板3の後面3bにおいて反射要素2である凹状部を有しない平面)との間の距離に相当する。反射要素2の高さ(深さ)は、反射要素2が凹状部である場合は導光板3の厚み方向(Z方向)において凹状部の最大深さに相当する。
【0029】
反射要素2の高さ(深さ)は導光板3の用途により様々である。例えば、精密精細な反射要素2を有する導光板3では、反射要素2の高さ(深さ)は約10μm程度である。そのため、反射要素2を含む第1層101の厚みt1は10μm以上100μm以下であることが望ましく、30μm以上50μm以下であることがより望ましい。
【0030】
一方、反射要素2を含まない第2層102の厚みt2はできるだけ厚い方が良いが、これは使用用途により異なるので一義的に決めることは困難である。ここで、第2層102の厚みt2は、導光板3の厚み方向(Z方向)において第2層102の上面(導光板3の前面3a)と下面(第1層101に対向する面)との間の距離に相当する。
【0031】
例えば、第1層101の厚みt1は、第2層102の厚みt2の1/5以下であることが望ましい。第1層101の材料は熱変形温度が低いため、通常使用環境温度での強度が低く、導光板3としての全体的な強度を保つためには、第2層102の厚みt2は第1層101の厚みt1の最低5倍以上とすることが望ましい。
【0032】
なお、図の例では導光板3を2層としているが、第1層101と第2層102との間に、この2つの層の接着性を増すための接着層(例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤等)を設けてもよい。第2層102は、1種類の材料だけである必要はなく、例えばPCとアクリル樹脂の2層からなる構造でもよい。つまり、導光板3の層数は、3層以上であってもよい。
【0033】
<導光板の製造方法>
次に、第1実施形態の導光板3の製造方法の一例として、熱プレス成型による導光板3の製造方法の一例を説明する。第1実施形態の熱プレス成型は、プレス機120自体は加熱せず導光板3の母材(透明板110)を別途加熱しておく(熱プレス成型中には加熱しない)、いわゆるコールドプレス成型である。
図2(A)は熱プレス成型前の一例を示す図、
図2(B)は熱プレス成型中の一例を示す図、
図2(C)は熱プレス成型後の一例を示す図、である。なお、
図2(A)から
図2(C)の説明では、鉛直方向上側を「上側」とし、鉛直方向下側を「下側」とする。
【0034】
第1実施形態の導光板3においてドット状の反射要素2は、導光板3の後面3b側(
図2(C)では上側)に配置された凹状部である。第1実施形態の導光板3の製造方法は、透明板110を第1層101の熱変形温度以上に加熱した後プレス機120に設置し、第1母材層111の上面(外表面)に前記熱変形温度以下の金型121(スタンパ金型)を押し当てて、第1母材層111の上面に凹状でかつドット状の反射要素を賦形する。第1実施形態の導光板3の製造方法は、
図2(A)から
図2(C)の順に行う。
【0035】
スタンパ金型は通常金属であるが、本発明の実施形態においては、比較的低温(例えば150℃)での成形が可能となるので、UV硬化エポキシ樹脂のような比較的高温に耐える樹脂材料を使用することも可能となる。なお、一般的には「金型」という用語は金属製のものに対して使用されるが、ここでは金属製、樹脂製双方に対して使用するものとする。
【0036】
まず、少なくとも2層の透明材料層からなる透明板110を準備する(
図2(A)参照)。図の例では、透明板110は、反射要素2を含む第1層101となる第1母材層111と、反射要素2を含まない第2層102と、を備える。透明板110は、第2層102の上面に第1母材層111の下面が接合された2層構造である。
【0037】
例えば、導光板3の原形となる透明板110の製造方法は、第2層102の材料からなる板に第1層101の材料からなるフィルムを加熱圧着又は接着する。または、導光板3の原形となる透明板110の製造方法は、第1層101の材料と第2層102の材料とを共押出で成形する(二色押出成形)。
【0038】
図の例では、導光板3を熱プレス成型により製造するためのプレス機120を構成する金型121と架台122を示す。金型121は、透明板110の上側に位置して第1母材層111に対応し、架台122は透明板110の下側に位置する。
【0039】
金型121は、第1母材層111の上面に凹状でかつドット状の反射要素2を賦形するための複数の凸部123を有する。図の例では、複数の凸部123のうちの3つの凸部123を示す。凸部123は、金型121のスタンパ124(平板状の部分)の下面から下側に突出している。図の例では、凸部123は、金型121のスタンパ124の下面に形成された逆三角形状を有する。凸部123は、反射要素2である凹状部に対応する形状を有する。
【0040】
図2(A)に示す工程では、金型121と架台122との間に透明板110を設置する。具体的に、金型121と架台122とを離間させた状態で、架台122の上面に透明板110を載置する。この状態では、金型121及び架台122は常温(例えば5℃以上35℃以下)である。一方、透明板110は予め全体を第1層101の熱変形温度以上でかつ本工程の間に第2層102が変形しない温度で加熱しておく。第1層101の熱変形温度が第2層102の熱変形温度よりも50℃以上低ければこのような温度設定が可能である。この時透明板110において第1母材層111は予め軟化状態となっている。
図2(A)に示す工程の後、
図2(B)に示す工程に移行する。
【0041】
図2(B)に示す工程では、第1母材層111の上面に常温(第1層101の熱変形温度以下)の金型121を押し当てる。図の例では、第1母材層111の上面に向かって金型121を下方に移動させる。これにより、第1母材層111の上面に凹状でかつドット状の反射要素2を賦形する。
図2(B)に示す工程の後、
図2(C)に示す工程に移行する。
【0042】
図2(C)に示す工程では、金型121と架台122とが離間した状態に戻す。図の例では、第1母材層111の上面から離間するよう金型121を上方に移動させる。例えば、金型121の移動前に、透明板110が常温になるまで放置してもよい。例えば、透明板110が常温になるまで、プレス機120に冷却水を流してもよい。
【0043】
図2(C)に示す工程を経ることにより、第1母材層111の上面に凹状でかつドット状の反射要素2が賦形されたものが得られる。つまり、2層の透明材料層101,102の内の1層101の外表面に凹状でかつドット状の反射要素2が形成されたものが得られる。以上の工程により、本実施形態の導光板3が得られる。
【0044】
<作用効果>
以上説明したように、上記実施形態の導光板3は、透明材料からなる少なくとも2層101,102を含み、その内の1層101の外表面に設けられた凹状の反射要素2を構成要素とし、外部からの照明によって全体として特定の表示パターンを表示する導光板3において、導光板3は、2層101,102として、反射要素2を含む第1層101と、反射要素2を含まない第2層102と、を備え、第1層101の熱変形温度は、第2層102の熱変形温度よりも50℃以上低い。
この構成によれば、第1層101の熱変形温度が第2層102の熱変形温度よりも50℃以上低いことで、転写率を高めるために成形温度を上げたとしても、第2層102は熱変形しないため、導光板3全体としての強度を保ちつつ熱プレス成型が可能となる。そのため、ワークとなる導光板3の母材(透明板110)のセッティング、ハンドリングが容易となり、生産性を落とすことなく導光板3を製造することが可能となる。したがって、生産性の低下を抑えつつ、転写率の高い成形性を求められる精密な導光板3を製造することができる。
【0045】
上記実施形態では、第1層101の厚みt1は、第2層102の厚みt2の1/5以下である。
例えば、第1層101の透明性を考慮すると、第1層101の厚みt1はできるだけ薄い方が良い。また、熱プレス成型による導光板3の製造において、成形後の変形(特に反り)や導光板3の使用環境温度における強度を考慮すると、各層101,102の材料によって線膨張係数や弾性率に違いはあるが、第2層102の厚みt2はできるだけ厚い方が良い。この構成によれば、第1層101の厚みt1が第2層102の厚みt2の1/5以下であることで、第1層101は十分に薄いため、第1層101の透明性を確保することができる。また、第2層102の厚みt2が第1層101の厚みt1の最低5倍以上であり、第2層102は十分に厚いため、導光板3の使用環境温度における十分な強度を確保することができる。
【0046】
上記実施形態では、第1層101の厚みt1は、10μm以上100μm以下である。
この構成によれば、第1層101は十分に薄いため、第1層101の透明性を確保することができる。
【0047】
上記実施形態では、第1層101は、EVA、PVC、又は、アクリル樹脂とエラストマーとの共重合体で形成され、第2層102は、PC、シクロポリオレフィンポリマー、ガラス、アクリル樹脂又はPSで形成されている。
例えば、具体的な導光板3の構成材料としては、反射要素2を含む第1層101は、透明で成形温度が低いことが望ましいが、使用環境では安定で且つある程度の強度が必要である。一方、反射要素2を含まない第2層102は、透明で且つできるだけ高温での強度が高いことが望ましい。この構成によれば、第1層101及び第2層102の材料を上記の組み合わせとすることで、導光板3の透明性を確保しつつ、使用環境では安定で且つ高い強度を得ることができる。
特に、第1層101がアクリル樹脂とエラストマーとの共重合体で形成されている場合は、透明度が高く、成形も行いやすいため、より望ましい。
【0048】
上記実施形態の導光板3の製造方法は、上記の導光板3の製造方法であって、第1層101となる第1母材層111を第1層101の熱変形温度以上に加熱した後、第1母材層111の上面に前記熱変形温度以下の金型121を押し当てて、第1母材層111の上面に凹状の反射要素2を賦形する。
この方法によれば、熱プレス成型の中でも特に生産性の高いコールドプレス成型(プレス機120自体は加熱せず導光板3の母材を別途加熱しておき熱プレス成型中には加熱しない方法)を行うことにより、生産性を更に高めることが可能となる。
また上記実施形態の導光板3の製造方法は、導光板3の母材を加熱するのではなく、スタンパ124を加熱する方法で製造してもよい。この場合コールドプレス成型よりも生産性は劣っても、別途の導光板3の加熱設備を必要としないので、全体としては安価で導光板3を製造できる可能性がある。
【0049】
上記実施形態の表示装置1は、上記の導光板3と、導光板3の端面3cに配置された光源4と、を備える。
この構成によれば、導光板3の入光方式がエッジライトタイプの表示装置1において、生産性の低下を抑えることができる。
【0050】
<第2実施形態>
次に第2実施形態について説明する。
上述の第1実施形態においては、熱プレス成型時に平型の金型(スタンパ金型)を使用する例を説明した。これに対し、第2実施形態では、熱プレス成型時にロールタイプの金型を使用する点で第1実施形態と相違する。このような第2実施形態について
図3を基に説明する。
【0051】
第2実施形態の導光板の製造方法の一例として、熱プレス成型による導光板の製造方法の一例を説明する。
図3(A)は熱プレス成型中の一例を示す図、
図3(B)は熱プレス成型後の一例を示す図である。なお、
図3(A)から
図3(B)の説明では、鉛直方向上側を「上側」とし、鉛直方向下側を「下側」とする。第2実施形態の導光板の製造方法の構成要素において、第1実施形態と同一態様の構成要素には同一符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0052】
第2実施形態の導光板3の製造方法は、第1母材層111の上面(外表面)に第1層101の熱変形温度以上のロール金型521を押し当てながら回転させて、第1母材層111の上面に凹状でかつドット状の反射要素2を賦形する。第2実施形態の導光板3の製造方法は、
図3(A)から
図3(B)の順に行う。ロール金型521は、スタンパを円筒状に巻き付けた状態で形成されている。ロール金型521は、反射要素が反転転写された形状の金属板又は樹脂板を円筒状にした金型である。
【0053】
ロール金型521は、第1母材層111の上面に凹状でかつドット状の反射要素2を賦形するための複数の凸部523を有する。複数の凸部523は、ロール金型521の外周面から外側に突出している。図の例では、凸部523は、ロール金型521の外周面に形成された三角形状を有する。凸部523は、反射要素2である凹状部に対応する形状を有する。
ベース522は、第2層102の下面に沿う上面を有する。
【0054】
図3(A)に示す工程では、ロール金型521を第1層101の熱変形温度以上に加熱する。その後、第1母材層111の上面に第1層101の熱変形温度以上のロール金型521を押し当てる。すると、第1母材層111は軟化状態又は溶融状態となる。一方、第2層102は固体状態のままである。上述の通り、第1層101の成形材料(第1母材層111)の熱変形温度は、第2層102の熱変形温度よりも50℃以上低いためである。
【0055】
なお、
図3(A)に示す工程では、ロール金型521を第1層101の熱変形温度以上に加熱することに替えて、第1母材層111(導光板3の母材)を第1層101の熱変形温度以上に加熱してもよい。例えば、
図3(A)に示す工程では、第1母材層111及びロール金型521の少なくとも一方を第1層101の熱変形温度以上に加熱してもよい。例えば、
図3(A)に示す工程の前に、予め第1母材層111及びロール金型521の少なくとも一方を第1層101の熱変形温度以上に加熱しておいてもよい。例えば、熱プレス成型における加熱の順序や対象は、設計仕様に応じて変更可能である。
【0056】
図3(A)に示す工程では、軟化状態又は溶融状態となった第1母材層111の上面にロール金型521を押し当てながら回転させることにより、第1母材層111の上面に凹状でかつドット状の反射要素2を賦形する。
図3(A)に示す工程の後、
図3(B)に示す工程に移行する。
【0057】
図3(B)に示す工程では、ロール金型521が所定の範囲(反射要素2を賦形する範囲)を回転しきった状態となる。図の例では、第1母材層111の端部側にロール521が移動している。例えば、ロール金型521の移動後に、第1母材層111が常温になるまで放置してもよい。
【0058】
図3(B)に示す工程を経ることにより、第1母材層111の上面に凹状でかつドット状の反射要素2が賦形されたものが得られる。つまり、2層の透明材料層101,102の内の1層101の外表面に凹状でかつドット状の反射要素2が形成されたものが得られる。以上の工程により、第2実施形態の導光板3が得られる。
【0059】
<変形例>
次に実施形態の変形例について説明する。
例えば、導光板を構成する2層の透明材料層の内の1層の外表面に設けられた凸状でかつドット状の反射要素を構成要素としてもよい。例えば、反射要素は、ドット状でなくてもよい。例えば、反射要素は、凹凸状であればよい。例えば、反射要素の構成態様は、設計仕様に応じて変更可能である。
【0060】
例えば、導光板の製造方法は、反射要素が反転転写された形状の金属板又は樹脂板を金型として、第1層の材料からなるフィルムをプレス成形した後、第2層の材料からなる板に前記フィルムを接着してもよい。
この方法によれば、2層の熱変形温度の差を利用して導光板を製造することができる。低温成形できる材料は通常柔らかく、単独では導光板として使いづらいということと、透明度も通常の導光板に使用される材料と比較すると低いので、2層導光板の製造方法として実益が大きい。
【0061】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能であり、上述した変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0062】
1…表示装置、2…反射要素、3…導光板、3a…前面、3b…後面、4…光源、101…第1層(透明材料層)、102…第2層(透明材料層)、111…第1母材層、121…第1金型(スタンパ金型)、t1…第1層の厚み、t2…第2層の厚み