(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130149
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】蓄熱システム
(51)【国際特許分類】
F28D 20/00 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
F28D20/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039699
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】後藤 功一
(57)【要約】
【課題】分割蓄熱槽を用いた蓄熱や放熱を好適に実施可能な蓄熱システムを提供する。例えば、蓄熱運転時及び放熱運転時の空気の圧力損失の小さい蓄熱システムを提供する。
【解決手段】一の実施形態によれば、蓄熱システムは、互いに直列に接続された第1~第N蓄熱槽(Nは2以上の整数)を具備する。前記システムは更に、前記第1~第N蓄熱槽に熱搬送流体を供給する流体流路であって、前記第1~第N蓄熱槽の内の1つ以上の蓄熱槽をバイパスするように前記熱搬送流体を流通させるバイパス流路を含む流体流路を具備する。前記システムは更に、前記流体流路に設けられた1つ以上の弁を具備する。前記1つ以上の弁は、前記第1~第N蓄熱槽の内の任意の第K蓄熱槽(Kは1~Nの内の任意の整数)に関し、前記第K蓄熱槽に前記熱搬送流体を供給するか、前記第K蓄熱槽をバイパスするように前記熱搬送流体を流通させるかを切替可能なように設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直列に接続された第1~第N蓄熱槽(Nは2以上の整数)と、
前記第1~第N蓄熱槽に熱搬送流体を供給する流体流路であって、前記第1~第N蓄熱槽の内の1つ以上の蓄熱槽をバイパスするように前記熱搬送流体を流通させるバイパス流路を含む流体流路と、
前記流体流路に設けられた1つ以上の弁とを具備し、
前記1つ以上の弁は、前記第1~第N蓄熱槽の内の任意の第K蓄熱槽(Kは1~Nの内の任意の整数)に関し、前記第K蓄熱槽に前記熱搬送流体を供給するか、前記第K蓄熱槽をバイパスするように前記熱搬送流体を流通させるかを切替可能なように設けられている事を特徴とする蓄熱システム。
【請求項2】
前記1つ以上の弁の開閉を制御する制御部を更に具備する事を特徴とする、請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記1つ以上の弁の開閉を制御する事で、前記第K蓄熱槽に前記熱搬送流体を供給するか、前記第K蓄熱槽をバイパスするように前記熱搬送流体を流通させるかを切り替える事を特徴とする、請求項2に記載の蓄熱システム。
【請求項4】
前記1つ以上の弁は、蓄熱運転時または放熱運転時に、前記第1~第N蓄熱槽に1台ずつまたは2台ずつ順番に前記熱搬送流体を供給可能なように配置されている事を特徴とする、請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項5】
前記1つ以上の弁は、蓄熱運転時または放熱運転時に、前記第1~第N蓄熱槽に1台ずつ順番に前記熱搬送流体を供給可能なように配置されている事を特徴とする、請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項6】
前記第1~第N蓄熱槽は、前記第1~第N蓄熱槽の順で互いに直列に接続されており、
前記1つ以上の弁は、蓄熱運転時には前記第1~第N蓄熱槽に昇順により順番に前記熱搬送流体を供給可能で、放熱運転時には前記第1~第N蓄熱槽に降順により順番に前記熱搬送流体を供給可能なように配置されている、
事を特徴とする請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項7】
前記第1~第N蓄熱槽は、前記第1~第N蓄熱槽の順で互いに直列に接続されており、
前記1つ以上の弁は、
蓄熱運転時にて、前記第K蓄熱槽のみに前記熱搬送流体を供給した後に、前記第K蓄熱槽及び前記第K+1蓄熱槽のみに前記熱搬送流体を供給可能で、前記第K蓄熱槽及び前記第K+1蓄熱槽のみに前記熱搬送流体を供給した後に、前記第K+1蓄熱槽のみに前記熱搬送流体を供給可能なように配置され、
放熱運転時にて、前記第K蓄熱槽のみに前記熱搬送流体を供給した後に、前記第K蓄熱槽及び前記第K-1蓄熱槽のみに前記熱搬送流体を供給可能で、前記第K蓄熱槽及び前記第K-1蓄熱槽のみに前記熱搬送流体を供給した後に、前記第K-1蓄熱槽のみに前記熱搬送流体を供給可能なように配置されている、
事を特徴とする請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項8】
前記第1~第N蓄熱槽は、前記第1~第N蓄熱槽の順で互いに直列に接続されており、
前記1つ以上の弁は、
蓄熱運転時にて、前記第K蓄熱槽のみに前記熱搬送流体を供給した後に、前記第K+1蓄熱槽のみに前記熱搬送流体を供給可能なように配置され、
放熱運転時にて、前記第K蓄熱槽のみに前記熱搬送流体を供給した後に、前記第K-1蓄熱槽のみに前記熱搬送流体を供給可能なように配置されている、
事を特徴とする請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項9】
蓄熱運転時に前記第1~第N蓄熱槽に前記熱搬送流体を搬送する第1流体搬送部と、
放熱運転時に前記第1~第N蓄熱槽に前記熱搬送流体を搬送する第2流体搬送部と、
を更に具備する事を特徴とする請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項10】
前記流体流路は、
前記第1~第N蓄熱槽を互いに直列に接続し、前記第1~第N蓄熱槽に前記熱搬送流体の主流を供給する主流流路と、
前記第1~第N蓄熱槽の内の1つ以上の蓄熱槽をバイパスするように前記熱搬送流体の前記主流を流通させるバイパス流路と、
前記主流流路と前記第1~第N蓄熱槽との間に設けられ、前記主流流路から前記第1~第N蓄熱槽に前記熱搬送流体の傍流を流入させる傍流流入流路と、
前記第1~第N蓄熱槽と前記主流流路との間に設けられ、前記第1~第N蓄熱槽から前記主流流路に前記熱搬送流体の傍流を流出させる傍流流出流路と、
前記傍流流入流路に設けられた1つ以上の傍流流入弁と、
前記傍流流出流路に設けられた1つ以上の傍流流出弁とを具備し、
前記1つ以上の傍流流入弁及び前記1つ以上の傍流流出弁は、前記第1~第N蓄熱槽の内の任意の第M蓄熱槽(Mは1~Nの内の任意の整数)に関し、前記第M蓄熱槽に前記熱搬送流体の前記主流が供給されていない場合に、前記第M蓄熱槽に前記熱搬送流体の前記傍流を流入させるか否か、及び前記第M蓄熱槽から前記熱搬送流体の前記傍流を流出させるか否かを切替可能なように設けられている事を特徴とする、請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項11】
互いに直列に接続された第1組の第1~第Na蓄熱槽(Naは2以上の整数)と、
互いに直列に接続された第2組の第1~第Nb蓄熱槽(Nbは2以上の整数)と、
前記第1組の第1~第Na蓄熱槽及び前記第2組の第1~第Nb蓄熱槽に熱搬送流体を供給する流体流路であって、前記第1組の第1~第Na蓄熱槽の内の1つ以上の蓄熱槽をバイパスするように前記熱搬送流体を流通させる第1バイパス流路と、前記第2組の第1~第Nb蓄熱槽の内の1つ以上の蓄熱槽をバイパスするように前記熱搬送流体を流通させる第2バイパス流路とを含む流体流路と、
前記流体流路に設けられた1つ以上の弁とを具備し、
前記1つ以上の弁は、前記第1組の第1~第Na蓄熱槽の内の任意の第Ka蓄熱槽(Kaは1~Naの内の任意の整数)と、前記第2組の第1~第Nb蓄熱槽の内の任意の第Kb蓄熱槽(Kbは1~Nbの内の任意の整数)とに関し、前記第Ka蓄熱槽に前記熱搬送流体を供給するか、前記第Ka蓄熱槽をバイパスするように前記熱搬送流体を流通させるかを切替可能、且つ、前記第Kb蓄熱槽に前記熱搬送流体を供給するか、前記第Kb蓄熱槽をバイパスするように前記熱搬送流体を流通させるかを切替可能なように設けられている事を特徴とする蓄熱システム。
【請求項12】
前記第2組の第1~第Nb蓄熱槽は、前記第1組の第1~第Na蓄熱槽と並列に接続されている事を特徴とする、請求項11に記載の蓄熱システム。
【請求項13】
前記1つ以上の弁は、
前記第Ka蓄熱槽に前記熱搬送流体を供給するか、前記第Ka蓄熱槽をバイパスするように前記熱搬送流体を流通させるかを切替可能なように設けられた1つ以上の第1弁と、
前記第Kb蓄熱槽に前記熱搬送流体を供給するか、前記第Kb蓄熱槽をバイパスするように前記熱搬送流体を流通させるかを切替可能なように設けられた1つ以上の第2弁と、
を含む事を特徴とする、請求項11に記載の蓄熱システム。
【請求項14】
前記1つ以上の弁の開閉を制御する制御部を更に具備する事を特徴とする、請求項11に記載の蓄熱システム。
【請求項15】
前記制御部は、前記1つ以上の弁の開閉を制御する事で、前記第Ka蓄熱槽に前記熱搬送流体を供給するか、前記第Ka蓄熱槽をバイパスするように前記熱搬送流体を流通させるかを切り替え、且つ、前記第Kb蓄熱槽に前記熱搬送流体を供給するか、前記第Kb蓄熱槽をバイパスするように前記熱搬送流体を流通させるかを切り替える事を特徴とする、請求項14に記載の蓄熱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蓄熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電や風力発電といった自然エネルギによる発電が増加しており、季節や時間帯によっては、発電量が電力需要より大きくなる地域が発生している。一方、季節や時間帯によっては、電力需要が大きくなる事で、発電量が電力需要より小さくなり、電力不足が生じる場合もある。そこで、蓄熱を用いて電力調整を実施する以下の第1従来技術が用いられる事がある。
【0003】
図14は、第1従来技術の蓄熱システムの構成を示す模式図である。
【0004】
図14の蓄熱システムは、蓄熱槽1と、電気ヒータ2と、送風機3と、送風機4と、空気流路5と、水流路6と、蒸気流路7と、復水ポンプ8と、ボイラ9と、蒸気タービン10と、復水器11と、弁12と、弁13と、弁14と、弁15とを具備する。
図14は更に、
図14の蓄熱システム内を循環する空気101、水102、及び蒸気103を示している。この空気101は、熱搬送流体である。
【0005】
電力が余剰である場合、
図14の蓄熱システムは、送風機4、復水ポンプ8、及び蒸気タービン10を停止し、弁12、13を開き、弁14、15を閉じ、余剰電力を用いて電気ヒータ2及び送風機3を稼働させる。送風機3は、空気流路5を介して空気101を蓄熱槽1と電気ヒータ2との間で循環させる。空気101は、電気ヒータ2が発生した熱により加熱され、その熱を蓄熱槽1まで輸送し、蓄熱槽1内の蓄熱物質を加熱する。蓄熱物質は、固体顕熱蓄熱材であり、例えば岩石である。空気101が輸送した熱は、蓄熱物質により蓄熱される。このようにして、蓄熱運転が実施される。
【0006】
一方、電力が余剰でない場合、
図14の蓄熱システムは、電気ヒータ2及び送風機3を停止し、弁12、13を閉じ、弁14、15を開き、送風機4及び復水ポンプ8を稼働させる。送風機4は、空気流路5を介して空気101を蓄熱槽1とボイラ9との間で循環させる。空気101は、蓄熱槽1の蓄熱物質により加熱され、その熱をボイラ9まで輸送する。ボイラ9は、水流路6を介して復水ポンプ8により搬入された水102を、空気101からの熱により加熱する。その結果、ボイラ9内にて水102から蒸気103が製造され、空気101は温度低下してボイラ9から流出する。このようにして、放熱運転が実施される。
【0007】
放熱運転の際、蒸気103は、蒸気流路7を介して蒸気タービン10に流入する。蒸気103は、蒸気タービン10内を低温低圧になりながら流通する事で、羽根車である蒸気タービン10を回転駆動させる。その結果、蒸気タービン10に機械的に接続させた発電機(不図示)が発電する。蒸気タービン10から排出された蒸気103は、蒸気流路7を介して復水器11に流入する。復水器11は、冷却水(例えば海水)により蒸気103を冷却する。その結果、復水器11内にて蒸気103が水102に変化し、水流路6に水102が排出される。水102及び蒸気103は、水流路6及び蒸気流路7を介して循環する。このように、蓄熱槽1内の蓄熱物質に蓄熱されていた熱は、蒸気103を発生させ、蒸気103を用いた発電により電気エネルギに変化する。
【0008】
図14の蓄電システムは、電力が余剰である場合は、余剰な電力を用いて蓄熱し、電力が余剰でない場合は、蓄熱された熱を用いて発電する。このようにして、電力調整が実施される。
【0009】
図15は、第2従来技術の蓄熱システムの構成を示す模式図である。第2従来技術の説明にて、第1従来技術と同じである部分の説明は適宜省略する。
【0010】
図15の蓄熱システムは、蓄熱槽1と、電気ヒータ2と、送風機3と、送風機4と、空気流路5と、水流路6(不図示)と、蒸気流路7と、復水ポンプ8(不図示)と、ボイラ9(不図示)と、蒸気タービン10(不図示)と、復水器11(不図示)と、弁12と、弁14と、弁16と、弁17と、弁18と、三方弁19と、三方弁20と、三方弁21とを具備する。
図15は更に、
図15の蓄熱システム内を循環する空気101及び蒸気103を示しており、
図15の蓄熱システム内を循環する水102の図示は省略している。
【0011】
図15の蓄熱槽1は、3つの分割蓄熱槽1a~1cに分割されている。また、
図15の空気流路5は、分割蓄熱槽1a~1cの内のいずれかをバイパスして空気101を循環させるためのバイパス流路を含んでいる。バイパス流路には、弁17、18が設けられている。分割蓄熱槽1a~1c内に描かれている線は、分割蓄熱槽1a~1c内の温度分布を模式的に表している。例えば、分割蓄熱槽1b内に描かれている横線は、分割蓄熱槽1b内の温度が、空気101の上流側と下流側との間にて比較的低い温度で一定になっている事を表している。また、分割蓄熱槽1a、1c内に描かれている折れ線は、分割蓄熱槽1a、1c内に高温の部分と低温の部分とが生じている事を示している。
【0012】
図15の蓄熱システムでは、放熱運転時に、放熱する分割蓄熱槽1a~1cを自由に選択できる。例えば、分割蓄熱槽1aのみから放熱させたい場合は、弁14、17を開き、弁12、16、18を閉じ、三方弁19を分割蓄熱槽1aとバイパス流路との間で開き、三方弁20を閉じ、三方弁21を蓄熱槽1と送風機4との間で開き、電気ヒータ2及び送風機3を停止し、送風機4及び復水ポンプ8を稼働させる。一方、分割蓄熱槽1bのみから放熱させたい場合は、弁17、18を開き、弁12、14、16を閉じ、三方弁19を分割蓄熱槽1bとバイパス流路との間で開き、三方弁20を分割蓄熱槽1bとバイパス流路との間で開き、三方弁21を蓄熱槽1と送風機4との間で開き、電気ヒータ2及び送風機3を停止し、送風機4及び復水ポンプ8を稼働させる。しかし、この場合の空気101は、分割蓄熱槽1bだけでなく、分割蓄熱槽1bと並行しているバイパス流路にも流通できるため、空気101の大部分はバイパス流路の方に流通してしまい、分割蓄熱槽1bから良好に放熱されない。これは、空気101の通風抵抗が、分割蓄熱槽1bにおいては大きく、バイパス流路においては小さいからである。
【0013】
また、
図15の蓄熱システムでは、2つの分割蓄熱槽1a、1bのみから放熱させる場合や、2つの分割蓄熱槽1b、1cのみから放熱させる場合も、分割蓄熱槽1bから良好に放熱されない。また、
図15の蓄熱システムでは、蓄熱運転時に、分割蓄熱槽1bのみに蓄熱する事や、分割蓄熱槽1cのみに蓄熱する事や、2つの分割蓄熱槽1b、1cのみに蓄熱する事はできない。これは、
図15の蓄熱システムが、電気ヒータ2で加熱した空気101が必ず分割蓄熱槽1aを流通するよう構成されているからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際特許出願公開WO2017/055525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
蓄熱槽1を分割蓄熱槽1a~1cに分割する場合、分割蓄熱槽1a~1cの各々に好適に蓄熱する事や、分割蓄熱槽1a~1cの各々から好適に放熱する事が難しい事が問題となる。また、固体顕熱蓄熱材で充填されている蓄熱槽1は、蓄熱槽1内を流通する空気101の圧力損失が大きいという問題を有する。蓄熱槽1内を流通する空気101の圧力損失が大きいと、送風機3、4の負荷が高くなるため、送風機3、4の消費電力が多くなってしまう。
【0016】
そこで、本発明の実施形態は、分割蓄熱槽を用いた蓄熱や放熱を好適に実施可能な蓄熱システムを提供する事を課題とする。例えば、蓄熱運転時及び放熱運転時の空気の圧力損失の小さい蓄熱システムを提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
一の実施形態によれば、蓄熱システムは、互いに直列に接続された第1~第N蓄熱槽(Nは2以上の整数)を具備する。前記システムは更に、前記第1~第N蓄熱槽に熱搬送流体を供給する流体流路であって、前記第1~第N蓄熱槽の内の1つ以上の蓄熱槽をバイパスするように前記熱搬送流体を流通させるバイパス流路を含む流体流路を具備する。前記システムは更に、前記流体流路に設けられた1つ以上の弁を具備する。前記1つ以上の弁は、前記第1~第N蓄熱槽の内の任意の第K蓄熱槽(Kは1~Nの内の任意の整数)に関し、前記第K蓄熱槽に前記熱搬送流体を供給するか、前記第K蓄熱槽をバイパスするように前記熱搬送流体を流通させるかを切替可能なように設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態の蓄熱システムの構成を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態の蓄熱システムの蓄熱運転時の動作を示す模式図(1/2)である。
【
図3】第1実施形態の蓄熱システムの蓄熱運転時の動作を示す模式図(2/2)である。
【
図4】第1実施形態の蓄熱システムの放熱運転時の動作を示す模式図(1/2)である。
【
図5】第1実施形態の蓄熱システムの放熱運転時の動作を示す模式図(2/2)である。
【
図6】第1実施形態の変形例の蓄熱システムの構成を示す模式図である。
【
図7】第2実施形態の蓄熱システムの蓄熱運転時の動作を示す模式図である。
【
図8】第2実施形態の蓄熱システムの放熱運転時の動作を示す模式図である。
【
図9】第3実施形態の蓄熱システムの構成を示す模式図である。
【
図10】第4実施形態の蓄熱システムの構成を示す模式図である。
【
図11】第5実施形態の蓄熱システムの構成を示す模式図である。
【
図12】第5実施形態の蓄熱システムの蓄熱運転時の動作を示す模式図(1/2)である。
【
図13】第5実施形態の蓄熱システムの蓄熱運転時の動作を示す模式図(1/2)である。
【
図14】第1従来技術の蓄熱システムの構成を示す模式図である。
【
図15】第2従来技術の蓄熱システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1~
図15において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の蓄熱システムの構成を示す模式図である。本実施形態の蓄熱システムの説明にて、第1または第2従来技術の蓄熱システムと同じである部分の説明は適宜省略する。
【0021】
本実施形態の蓄熱システムは、蓄熱槽1と、電気ヒータ2と、送風機3と、送風機4と、空気流路5と、水流路6と、蒸気流路7と、復水ポンプ8と、ボイラ9と、蒸気タービン10と、復水器11と、弁12と、弁13と、弁14と、弁15と、弁22と、三方弁23と、三方弁24と、三方弁25と、三方弁26と、制御部31とを具備する。
図1は更に、本実施形態の蓄熱システム内を循環する空気101、水102、及び蒸気103を示している。送風機3、送風機4、空気流路5、及び空気101は、それぞれ第1流体搬送部、第2流体搬送部、流体流路、及び熱搬送流体の例である。弁22及び三方弁23~26は、1つ以上の弁の例である。
【0022】
本実施形態の蓄熱槽1は、分割蓄熱槽1aと、分割蓄熱槽1bと、分割蓄熱槽1cとを含む。分割蓄熱槽1a~1cは、第1~第N蓄熱槽(Nは2以上の整数)の例である。また、分割蓄熱槽1a~1cの各々は、任意の第K蓄熱槽(Kは1~Nの内の任意の整数)の例である。本実施形態の空気流路5は、バイパス流路5aと、バイパス流路5bと、バイパス流路5cとを含む。
【0023】
本実施形態の蓄熱槽1は、空気101の流れ方向に2つ以上の分割蓄熱槽に分割されており、
図1では3つの分割蓄熱槽1a~1cに分割されている。蓄熱槽1は、
図1では3個に分割されているが、3個以外のN個に分割されていてもよい。分割蓄熱槽1a~1cは、空気101の流れに関し、互いに直列に接続されている。分割蓄熱槽1a~1cは、各々が蓄熱物質を含んでいる。本実施形態の蓄熱物質は、固体顕熱蓄熱材であり、例えば岩石である。
【0024】
空気流路5は、蓄熱槽1、電気ヒータ2、及び送風機3を含む蓄熱用回路部分と、蓄熱槽1、送風機4、及びボイラ9を含む放熱用回路部分とを含んでいる。蓄熱用回路部分では、弁13、電気ヒータ2、送風機3、及び弁12が直列に配置されている。放熱用回路部分では、弁14、ボイラ9、送風機4、及び弁15が直列に配置されている。これらの回路部分の共通部分では、三方弁23、分割蓄熱槽1a、三方弁24、分割蓄熱槽1b、三方弁25、分割蓄熱槽1c、及び三方弁26が直列に配置されている。一方、水流路6及び蒸気流路7を含む循環流路では、復水ポンプ8、ボイラ9、蒸気タービン10、及び復水器11が直列に配置されている。
【0025】
本実施形態の空気流路5は、分割蓄熱槽1a~1cをバイパスして空気101を循環させるためのバイパス流路5a~5cを含んでいる。バイパス流路5aは、三方弁23と三方弁24との間に分割蓄熱槽1aと並行して設けられており、分割蓄熱槽1aをバイパスするために使用される。バイパス流路5bは、三方弁24と三方弁25との間に分割蓄熱槽1bと並行して設けられており、分割蓄熱槽1bをバイパスするために使用される。バイパス流路5cは、三方弁25と三方弁26との間に分割蓄熱槽1cと並行して設けられており、分割蓄熱槽1cをバイパスするために使用される。弁22は、バイパス流路5b上に配置されている。
図1では、空気流路5が、バイパス流路5aとバイパス流路5bが重複している流路部分と、バイパス流路5bとバイパス流路5cが重複している流路部分とを含んでいる。
【0026】
本実施形態のバイパス流路5a~5c、弁22、及び三方弁23~26は、分割蓄熱槽1a~1cの各々を空気供給対象とするかバイパス対象とするかを切替可能なように配置されている。例えば、分割蓄熱槽1aに空気101を供給し、分割蓄熱槽1bをバイパスするように空気101を流通させ、分割蓄熱槽1cをバイパスするように空気101を流通させる場合は、三方弁23を弁12、14と分割蓄熱槽1aとの間で開き、三方弁24を分割蓄熱槽1aとバイパス流路5bとの間で開き、弁22を開き、三方弁25を閉じ、三方弁26をバイパス流路5cと弁13、15との間で開く。これにより、分割蓄熱槽1aのみに空気101を供給する事が可能となる。同様に、本実施形態によれば、弁22及び三方弁23~26の開閉を制御する事で、分割蓄熱槽1bのみに空気101を供給する事や、分割蓄熱槽1cのみに空気101を供給する事が可能となる。更に、本実施形態によれば、弁22及び三方弁23~26の開閉を制御する事で、分割蓄熱槽1a~1cの内の2つのみに空気101を供給する事が可能となる。
【0027】
制御部31は、本実施形態の蓄熱システムの種々の動作を制御する。制御部31は例えば、コンピュータである。制御部31は例えば、電気ヒータ2、送風機3、4、復水ポンプ8、ボイラ9、蒸気タービン10、及び復水器11の動作や、弁12~15、22及び三方弁23~26の開閉や開度を制御する。これにより、本実施形態の蓄熱システムの蓄熱運転や放熱運転を制御する事が可能となる。制御部31は例えば、弁22及び三方弁23~26の開閉を制御する事で、分割蓄熱槽1a~1cの各々を空気供給対象とするかバイパス対象とするかを切り替える。
【0028】
(1)蓄熱運転
図2及び
図3は、第1実施形態の蓄熱システムの蓄熱運転時の動作を示す模式図である。
【0029】
図2(a)~
図3(d)の各々は、本実施形態の蓄熱システムにおける三方弁23から三方弁26までの空気流路5を示している。
図2(a)~
図3(d)を参照して、蓄熱運転時に、温度躍層(クライン)104の通過に合わせて弁22及び三方弁23~26を開閉し、空気101を太線ラインのみ流通させる事を説明する。温度躍層104は、
図2(a)~
図3(d)にて上流側から下流側に移動していく。
【0030】
図2(a)は、蓄熱運転開始時の状態を示している。
図2(a)では、弁22及び三方弁23~26がいずれも閉止されている。ここでは、
図2(a)は、放熱運転終了後、充分な長時間が経過し、わずかに残った残熱が外界への熱漏洩により、なくなった状態を示している。
【0031】
次に、
図2(b)のように、蓄熱運転時の最上流である分割蓄熱槽1aのみ空気101を流通させ、分割蓄熱槽1b、1cをバイパスする。
図2(b)において、空気101は左から右へ流れる。分割蓄熱槽1a内の固体顕熱蓄熱材は、上流側にて温度上昇し、流れ方向に急な温度傾斜を示す温度躍層104が分割蓄熱槽1a内に形成される。
【0032】
蓄熱が進むと、
図2(c)のように、温度躍層104が、分割蓄熱槽1a内を空気101の流れ方向に移動し、分割蓄熱槽1aの下流側に到る。そうしたら、
図2(d)のように、分割蓄熱槽1a、1bに空気101を流通させ、分割蓄熱槽1cのみをバイパスする。このとき、温度躍層104が、分割蓄熱槽1aから分割蓄熱槽1bに移動する。
【0033】
図3(a)では、温度躍層104が、分割蓄熱槽1aを通過し、分割蓄熱槽1b内のみに存在している。そうしたら、
図3(b)のように分割蓄熱槽1bのみ空気101を流通させ、分割蓄熱槽1a、1cをバイパスする。
【0034】
その後、温度躍層104が、分割蓄熱槽1b内を空気101の流れ方向に移動し、分割蓄熱槽1bの下流側に到る。そうしたら、
図3(c)のように、分割蓄熱槽1b、1cに空気101を流通させ、分割蓄熱槽1aのみをバイパスする。このとき、温度躍層104が、分割蓄熱槽1bから分割蓄熱槽1cに移動する。
【0035】
その後、温度躍層104が、分割蓄熱槽1bを通過し、分割蓄熱槽1c内のみに存在するようになる。そうしたら、
図3(d)のように分割蓄熱槽1cのみ空気101を流通させ、分割蓄熱槽1a、1bをバイパスする。
【0036】
その後、蓄熱運転を終了基準に基づき終了させる。この終了基準は例えば、分割蓄熱槽1cから流出する空気101の温度が、送風機4の耐熱温度まで上昇した事である。
【0037】
以上のように、本実施形態の蓄熱運転時には、分割蓄熱槽1a~1cに1台ずつまたは2台ずつ順番に空気101が供給される。
図2(b)、
図2(c)、
図3(b)、及び
図3(d)では、分割蓄熱槽1a~1cの1台に空気101が供給されている。
図2(d)、
図3(a)、及び
図3(c)では、分割蓄熱槽1a~1cの2台に空気101が供給されている。本実施形態の蓄熱運転時には、分割蓄熱槽1a~1cに昇順(1a→1b→1c)により順番に空気101が供給される。このような制御は、制御部31により行われる。
【0038】
(2)放熱運転
図4及び
図5は、第1実施形態の蓄熱システムの放熱運転時の動作を示す模式図である。
【0039】
図4(a)~
図5(d)の各々は、本実施形態の蓄熱システムにおける三方弁23から三方弁26までの空気流路5を示している。
図4(a)~
図5(d)を参照して、放熱運転時に、温度躍層(クライン)104の通過に合わせて弁22及び三方弁23~26を開閉し、空気101を太線ラインのみ流通させる事を説明する。温度躍層104は、
図4(a)~
図5(d)にて上流側から下流側に移動していく。
【0040】
図4(a)は、放熱運転開始時の状態を示している。
図4(a)では、弁22及び三方弁23~26がいずれも閉止されている。ここでは、
図4(a)は、蓄熱運転終了直後の状態を示している。
【0041】
次に、
図4(b)のように、放熱運転時の最上流である分割蓄熱槽1cのみ空気101を流通させ、分割蓄熱槽1b、1aをバイパスする。
図4(b)において、空気101は右から左へ流れる。分割蓄熱槽1c内の固体顕熱蓄熱材は、上流側にて温度低下し、流れ方向に急な温度傾斜を示す温度躍層104が分割蓄熱槽1c内に形成される。
【0042】
放熱が進むと、温度躍層104が、分割蓄熱槽1c内を空気101の流れ方向に移動し、分割蓄熱槽1cの下流側に到る。そうしたら、
図4(c)のように、分割蓄熱槽1c、1bに空気101を流通させ、分割蓄熱槽1aのみをバイパスする。このとき、温度躍層104が、分割蓄熱槽1cから分割蓄熱槽1bに移動する。
【0043】
その後、温度躍層104が、分割蓄熱槽1cを通過し、分割蓄熱槽1b内のみに存在するようになる。そうしたら、
図4(d)のように分割蓄熱槽1bのみ空気101を流通させ、分割蓄熱槽1a、1cをバイパスする。
【0044】
その後、
図5(a)のように、温度躍層104が、分割蓄熱槽1b内を空気101の流れ方向に移動し、分割蓄熱槽1bの下流側に到る。そうしたら、
図5(b)のように、分割蓄熱槽1b、1aに空気101を流通させ、分割蓄熱槽1cのみをバイパスする。このとき、温度躍層104が、分割蓄熱槽1bから分割蓄熱槽1aに移動する。
【0045】
図5(c)では、温度躍層104が、分割蓄熱槽1bを通過し、分割蓄熱槽1a内のみに存在している。そうしたら、
図5(d)のように分割蓄熱槽1aのみ空気101を流通させ、分割蓄熱槽1c、1bをバイパスする。
【0046】
その後、放熱運転を終了基準に基づき終了させる。この終了基準は例えば、分割蓄熱槽1aから流出する空気101の温度が、放熱された利用先の利用下限温度まで下がった事である。
【0047】
以上のように、本実施形態の放熱運転時には、分割蓄熱槽1a~1cに1台ずつまたは2台ずつ順番に空気101が供給される。
図4(b)、
図4(d)、
図5(c)、及び
図5(d)では、分割蓄熱槽1a~1cの1台に空気101が供給されている。
図4(c)、
図5(a)、及び
図5(b)では、分割蓄熱槽1a~1cの2台に空気101が供給されている。本実施形態の放熱運転時には、分割蓄熱槽1a~1cに降順(1c→1b→1a)により順番に空気101が供給される。このような制御は、制御部31により行われる。
【0048】
なお、蓄熱及び放熱に用いる流体は、空気101以外の流体でもよい。また、分割蓄熱槽1a~1c内の蓄熱物質は、岩石以外の蓄熱物質でもよい。
【0049】
前述した第2従来技術では、蓄熱運転時に、分割蓄熱槽1bのみに蓄熱する事や、分割蓄熱槽1cのみに蓄熱する事や、2つの分割蓄熱槽1b、1cのみに蓄熱する事ができない。一方、本実施形態では、分割蓄熱槽1a~1cの内の任意の1つに蓄熱する事や、分割蓄熱槽1a~1cの内の任意の2つに蓄熱する事が可能である。理由は、このような蓄熱が可能となるように、本実施形態のバイパス流路5a~5c、弁22、及び三方弁23~26が配置されているからである。本実施形態によれば、各時点で、蓄熱が必要な分割蓄熱槽に空気101を供給し、蓄熱が不要な分割蓄熱槽に対し空気101をバイパスさせる事が可能となる。これにより、分割蓄熱槽をバイパスした分、空気101の圧力損失を低減し、蓄熱運転時の送風機3の消費電力を低減する事が可能となる。
【0050】
これは、放熱運転時においても同様である。本実施形態では、分割蓄熱槽1a~1cの内の任意の1つから放熱する事や、分割蓄熱槽1a~1cの内の任意の2つから放熱する事が可能である。この際、放熱する分割蓄熱槽には空気101を供給し、放熱しない分割蓄熱槽に対しては空気101をバイパスさせる事が可能である。よって、前述した第2従来技術のように、放熱運転時に分割蓄熱槽1bから良好に放熱されないという問題を抑制する事が可能となる。本実施形態によれば、各時点で、放熱が必要な分割蓄熱槽に空気101を供給し、放熱が不要な分割蓄熱槽に対し空気101をバイパスさせる事が可能となる。これにより、分割蓄熱槽をバイパスした分、空気101の圧力損失を低減し、放熱運転時の送風機4の消費電力を低減する事が可能となる。
【0051】
なお、本実施形態の蓄熱システムは、上述のような制御が可能であれば、バイパス流路5a~5c、弁22、及び三方弁23~26と異なる態様のバイパス流路、弁、及び三方弁を具備していてもよい。また、本実施形態の蓄熱システムは、上述のような制御を、制御部31が自動で行う代わりに、人間が手動で行ってもよい。また、本実施形態の蓄熱システムは、発電システム以外のシステム内に設けられていてもよく、例えば、放熱された熱を用いて空調を行う空調システム内に設けられていてもよい。以上は、後述する第2~第5実施形態でも同様である。
【0052】
図6は、第1実施形態の変形例の蓄熱システムの構成を示す模式図である。
【0053】
図6は、本変形例の蓄熱システムにおける三方弁23から三方弁26までの空気流路5を示している。本変形例の蓄熱システム(
図6)は、本実施形態の蓄熱システム(
図1)と同様の構成を有している。ただし、本実施形態の蓄熱システムは、
図1に示す構成要素に加え、6つの温度センサ41を具備する。これらの温度センサ41は、分割蓄熱槽1aの2つの出入口付近、分割蓄熱槽1bの2つの出入口付近、及び分割蓄熱槽1cの2つの出入口付近に配置されている。
【0054】
本変形例によれば、これらの温度センサ41により、各々の分割蓄熱槽1a~1cの温度躍層104の状態(例えば位置)を検出する事が可能となる。制御部31は、このような検出結果に基づいて、蓄熱運転や放熱運転を制御してもよい。また、本変形例の蓄熱システムの運用者は、これらの温度センサ41に検出された温度に基づいて、その運転経験から、各弁や各三方弁の切り替え時間などの運転シーケンスを定めてもよい。
【0055】
(第2実施形態)
本実施形態の蓄熱システムは、第1実施形態の蓄熱システムと同様に、
図1に示す構成を有する。
【0056】
(1)蓄熱運転
図7は、第2実施形態の蓄熱システムの蓄熱運転時の動作を示す模式図である。
【0057】
図7(a)~
図7(d)の各々は、本実施形態の蓄熱システムにおける三方弁23から三方弁26までの空気流路5を示している。
図7(a)~
図7(d)を参照して、蓄熱運転時に、温度躍層104の通過に合わせて弁22及び三方弁23~26を開閉し、空気101を太線ラインのみ流通させる事を説明する。
【0058】
第1実施形態では、分割蓄熱槽1a~1cの内の1つに蓄熱する場合と、分割蓄熱槽1a~1cの内の2つに蓄熱する場合とがある。しかし、分割蓄熱槽1a~1cの内の2つにしか蓄熱していなくても充分に空気101の圧力損失が高い場合があり、その場合には圧力損失をもっと下げる事が望ましい。そこで、本実施形態の蓄熱運転時には、常時、分割蓄熱槽1a~1cの内の1つのみに蓄熱し、分割蓄熱槽毎に蓄熱運転を終了基準に基づき終了させる。本実施形態では、この終了基準は、各分割蓄熱槽から流出する空気101の温度が、送風機4の耐熱温度まで上昇した事とし、その温度を終了基準温度とする。
【0059】
本実施形態では、例えば、(1)で説明する蓄熱運転と、(2)で説明する放熱運転とを交互に実施する。放熱運転の終了時点では、分割蓄熱槽1a~1c内に温度躍層104が残っている。この場合、分割蓄熱槽1a~1c内の温度分布は、長時間経過すると、空気101の流れ方向に温度が一定になるように変化していく。本実施形態では、放熱運転の終了直後から蓄熱運転を開始するとする。
【0060】
図7(a)は、蓄熱運転開始時の状態を示している。
図7(a)では、弁22及び三方弁23~26がいずれも閉止されている。
図7(a)では、分割蓄熱槽1a~1c内に温度躍層104が残っている。
【0061】
次に、
図7(b)のように、蓄熱運転時の最上流である分割蓄熱槽1aのみ空気101を流通させ、分割蓄熱槽1b、1cをバイパスする。
図7(b)において、空気101は左から右へ流れる。蓄熱が進むと、
図7(b)のように、温度躍層104が、分割蓄熱槽1a内を空気101の流れ方向に移動し、分割蓄熱槽1aの下流側に到る。
【0062】
分割蓄熱槽1aの流出空気温度が終了基準温度に達したら、
図7(c)のように分割蓄熱槽1bのみ空気101を流通させ、分割蓄熱槽1a、1cをバイパスする。蓄熱が進むと、
図7(c)のように、温度躍層104が、分割蓄熱槽1b内を空気101の流れ方向に移動し、分割蓄熱槽1bの下流側に到る。
【0063】
分割蓄熱槽1bの流出空気温度が終了基準温度に達したら、
図7(d)のように分割蓄熱槽1cのみ空気101を流通させ、分割蓄熱槽1a、1bをバイパスする。蓄熱が進むと、
図7(d)のように、温度躍層104が、分割蓄熱槽1c内を空気101の流れ方向に移動し、分割蓄熱槽1cの下流側に到る。その後、分割蓄熱槽1cの流出空気温度が終了基準温度に達したら、蓄熱運転を終了させる。
【0064】
以上のように、本実施形態の蓄熱運転時には、分割蓄熱槽1a~1cに1台ずつ順番に空気101が供給される。
図7(b)、
図7(c)、及び
図7(d)では、分割蓄熱槽1a~1cの1台に空気101が供給されている。本実施形態の蓄熱運転時には、分割蓄熱槽1a~1cに昇順により順番に空気101が供給される。このような制御は、制御部31により行われる。
【0065】
(2)放熱運転
図8は、第2実施形態の蓄熱システムの放熱運転時の動作を示す模式図である。
【0066】
図8(a)~
図8(d)の各々は、本実施形態の蓄熱システムにおける三方弁23から三方弁26までの空気流路5を示している。
図8(a)~
図8(d)を参照して、放熱運転時に、温度躍層104の通過に合わせて弁22及び三方弁23~26を開閉し、空気101を太線ラインのみ流通させる事を説明する。
【0067】
第1実施形態では、分割蓄熱槽1a~1cの内の1つから放熱する場合と、分割蓄熱槽1a~1cの内の2つから放熱する場合とがある。しかし、分割蓄熱槽1a~1cの内の2つからしか放熱しなくても充分に空気101の圧力損失が高い場合があり、その場合には圧力損失をもっと下げる事が望ましい。そこで、本実施形態の放熱運転時には、常時、分割蓄熱槽1a~1cの内の1つのみから放熱し、分割蓄熱槽毎に放熱運転を終了基準に基づき終了させる。本実施形態では、この終了基準は、各分割蓄熱槽から流出する空気101の温度が、放熱された利用先の利用下限温度まで下がった事とし、その温度を終了基準温度とする。
【0068】
本実施形態では、例えば、(1)で説明した蓄熱運転と、(2)で説明する放熱運転とを交互に実施する。蓄熱運転の終了時点では、分割蓄熱槽1a~1c内に温度躍層104が残っている。この場合、分割蓄熱槽1a~1c内の温度分布は、長時間経過すると、空気101の流れ方向に温度が一定になるように変化していく。本実施形態では、蓄熱運転の終了直後から放熱運転を開始するとする。
【0069】
図8(a)は、放熱運転開始時の状態を示している。
図8(a)では、弁22及び三方弁23~26がいずれも閉止されている。
図8(a)では、分割蓄熱槽1a~1c内に温度躍層104が残っている。
【0070】
次に、
図8(b)のように、放熱運転時の最上流である分割蓄熱槽1cのみ空気101を流通させ、分割蓄熱槽1b、1aをバイパスする。
図8(b)において、空気101は右から左へ流れる。放熱が進むと、
図8(b)のように、温度躍層104が、分割蓄熱槽1c内を空気101の流れ方向に移動し、分割蓄熱槽1cの下流側に到る。
【0071】
分割蓄熱槽1cの流出空気温度が終了基準温度に達したら、
図8(c)のように分割蓄熱槽1bのみ空気101を流通させ、分割蓄熱槽1c、1aをバイパスする。放熱が進むと、
図8(c)のように、温度躍層104が、分割蓄熱槽1b内を空気101の流れ方向に移動し、分割蓄熱槽1bの下流側に到る。
【0072】
分割蓄熱槽1bの流出空気温度が終了基準温度に達したら、
図8(d)のように分割蓄熱槽1aのみ空気101を流通させ、分割蓄熱槽1c、1bをバイパスする。放熱が進むと、
図8(d)のように、温度躍層104が、分割蓄熱槽1a内を空気101の流れ方向に移動し、分割蓄熱槽1aの下流側に到る。その後、分割蓄熱槽1aの流出空気温度が終了基準温度に達したら、蓄熱運転を終了させる。
【0073】
以上のように、本実施形態の放熱運転時には、分割蓄熱槽1a~1cに1台ずつ順番に空気101が供給される。
図8(b)、
図8(c)、及び
図8(d)では、分割蓄熱槽1a~1cの1台に空気101が供給されている。本実施形態の放熱運転時には、分割蓄熱槽1a~1cに降順により順番に空気101が供給される。このような制御は、制御部31により行われる。
【0074】
本実施形態によれば、分割蓄熱槽1a~1cへの空気101の供給を1台ずつ順番に行う事で、空気101の圧力損失を更に低減し、送風機3、4の消費電力を更に低減する事が可能となる。
【0075】
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態の蓄熱システムの構成を示す模式図である。
【0076】
本実施形態の蓄熱システム(
図9)は、第1実施形態の蓄熱システム(
図1)と同様の構成を有している。ただし、本実施形態の蓄熱システムは、弁22の代わりに、三方弁27、28を具備する。三方弁27は、バイパス流路5a、バイパス流路5b、及び三方弁24の間に配置されている。三方弁28は、バイパス流路5b、バイパス流路5c、及び三方弁25の間に配置されている。本実施形態の三方弁23~28は、1つ以上の弁の例である。
【0077】
本実施形態のバイパス流路5a~5c及び三方弁23~28は、分割蓄熱槽1a~1cの各々を空気供給対象とするかバイパス対象とするかを切替可能なように配置されている。例えば、分割蓄熱槽1aに空気101を供給し、分割蓄熱槽1bをバイパスするように空気101を流通させ、分割蓄熱槽1cをバイパスするように空気101を流通させる場合は、三方弁23を弁12、14と分割蓄熱槽1aとの間で開き、三方弁24を分割蓄熱槽1aと三方弁27との間で開き、三方弁27を三方弁24とバイパス流路5bとの間で開き、三方弁28をバイパス流路5bとバイパス流路5cとの間で開き、三方弁25を閉じ、三方弁26をバイパス流路5cと弁13、15との間で開く。これにより、分割蓄熱槽1aのみに空気101を供給する事が可能となる。同様に、本実施形態によれば、三方弁23~28の開閉を制御する事で、分割蓄熱槽1bのみに空気101を供給する事や、分割蓄熱槽1cのみに空気101を供給する事が可能となる。更に、本実施形態によれば、三方弁23~28の開閉を制御する事で、分割蓄熱槽1a~1cの内の2つのみに空気101を供給する事が可能となる。
【0078】
本実施形態によれば、制御部31により三方弁23~28の開閉を制御する事で、第1実施形態と同様の蓄熱運転及び放熱運転を行う事が可能となる。本実施形態では、第1実施形態と同様の蓄熱運転及び放熱運転を行う代わりに、第2実施形態と同様の蓄熱運転及び放熱運転を行ってもよい。
【0079】
(第4実施形態)
図10は、第4実施形態の蓄熱システムの構成を示す模式図である。
【0080】
本実施形態の蓄熱システム(
図10)は、第1実施形態の蓄熱システム(
図1)と同様の構成を有している。ただし、本実施形態の蓄熱システムは、
図1に示す構成要素に加え、弁22’と、三方弁23’と、三方弁24’と、三方弁25’と、三方弁26’とを具備する。弁22’及び三方弁23’~26’は、空気流路5上に、弁22及び三方弁23~26と同様の配列で配置されている。弁22、22’及び三方弁23~26、23’~26’は、1つ以上の弁の例である。また、弁22及び三方弁23~26は、1つ以上の第1弁の例であり、弁22’及び三方弁23’~26’は、1つ以上の第2弁の例である。
【0081】
本実施形態の蓄熱システムは更に、蓄熱槽1’を具備する。蓄熱槽1’は、分割蓄熱槽1a’と、分割蓄熱槽1b’と、分割蓄熱槽1c’とを含む。分割蓄熱槽1a’~1c’は、空気流路5上に、分割蓄熱槽1a~1cと同様の配列で配置されている。本実施形態の蓄熱システムは、分割蓄熱槽1a~1c及び分割蓄熱槽1a’~1c’という2組の分割蓄熱槽を具備する。分割蓄熱槽1a~1cは、第1組の第1~第Na蓄熱槽(Naは2以上の整数)の例であり、分割蓄熱槽1a~1cは、第2組の第1~第Nb蓄熱槽(Nbは2以上の整数)の例である。また、分割蓄熱槽1a~1cの各々は、任意の第Ka蓄熱槽(Kaは1~Naの内の任意の整数)の例であり、分割蓄熱槽1a’~1c’の各々は、任意の第Kb蓄熱槽(Kbは1~Nbの内の任意の整数)の例である。
【0082】
本実施形態の蓄熱システムは更に、空気流路5内にバイパス流路5a’、バイパス流路5b’、及びバイパス流路5c’を具備する。バイパス流路5a’~5c’は、空気流路5内に、バイパス流路5a~5cと同様のレイアウトで含まれている。バイパス流路5a~5cは、第1バイパス流路の例であり、バイパス流路5a’~5c’は、第2バイパス流路の例である。
【0083】
本実施形態の蓄熱槽1’は、空気101の流れ方向に2つ以上の分割蓄熱槽に分割されており、
図10では3つの分割蓄熱槽1a’~1c’に分割されている。蓄熱槽1’は、
図10では3個に分割されているが、3個以外のN個に分割されていてもよい。分割蓄熱槽1a’~1c’は、空気101の流れに関し、互いに直列に接続されている。加えて、分割蓄熱槽1a’~1c’は、空気101の流れに関し、分割蓄熱槽1a~1cと並列に接続されている。分割蓄熱槽1a’~1c’は、各々が蓄熱物質を含んでいる。当該蓄熱物質は、固体顕熱蓄熱材であり、例えば岩石である。
【0084】
本実施形態の空気流路5は、分割蓄熱槽1a’~1c’をバイパスして空気101を循環させるためのバイパス流路5a’~5c’を含んでいる。バイパス流路5a’は、三方弁23’と三方弁24’との間に分割蓄熱槽1a’と並行して設けられており、分割蓄熱槽1a’をバイパスするために使用される。バイパス流路5b’は、三方弁24’と三方弁25’との間に分割蓄熱槽1b’と並行して設けられており、分割蓄熱槽1b’をバイパスするために使用される。バイパス流路5c’は、三方弁25’と三方弁26’との間に分割蓄熱槽1c’と並行して設けられており、分割蓄熱槽1c’をバイパスするために使用される。弁22’は、バイパス流路5b’上に配置されている。
【0085】
本実施形態のバイパス流路5a’~5c’、弁22’、及び三方弁23’~26’は、分割蓄熱槽1a’~1c’の各々を空気供給対象とするかバイパス対象とするかを切替可能なように配置されている。本実施形態によれば、弁22’及び三方弁23’~26’の開閉を制御する事で、分割蓄熱槽1a’~1c’の内の1つのみに空気101を供給する事や、分割蓄熱槽1a~1cの内の2つのみに空気101を供給する事が可能となる。
【0086】
本実施形態によれば、制御部31により弁22及び三方弁23~26の開閉を制御する事で、分割蓄熱槽1a~1cについて、第1実施形態と同様の蓄熱運転及び放熱運転を行う事が可能となる。また、本実施形態によれば、制御部31により弁22’及び三方弁23’~26’の開閉を制御する事で、分割蓄熱槽1a’~1c’について、第1実施形態と同様の蓄熱運転及び放熱運転を行う事が可能となる。本実施形態では、第1実施形態と同様の蓄熱運転及び放熱運転を行う代わりに、第2実施形態と同様の蓄熱運転及び放熱運転を行ってもよい。
【0087】
本実施形態の蓄熱システムは、空気101を蓄熱槽1用と蓄熱槽1’用とに分岐させ、蓄熱槽1用の空気101を分割蓄熱槽1a~1c用に使用し、蓄熱槽1’用の空気101を分割蓄熱槽1a’~1c’用に使用し、使用済みの前者の空気101及び後者の空気101を合流させる。本実施形態の蓄熱システムは、蓄熱運転時に、蓄熱槽1、1’の両方に空気101を供給してもよいし、蓄熱槽1、1’の一方のみに空気101を供給してもよい。また、本実施形態の蓄熱システムは、放熱運転時に、蓄熱槽1、1’の両方に空気101を供給してもよいし、蓄熱槽1、1’の一方のみに空気101を供給してもよい。本実施形態によれば、2組の分割蓄熱槽1a~1c、1a’~1c’を用いる事で、運転の自由度や柔軟性を向上させる事が可能となる。
【0088】
なお、本実施形態の蓄熱システムは、分割蓄熱槽1a~1c及び分割蓄熱槽1a’~1c’という2組の分割蓄熱槽を具備しているが、更に1組以上の分割蓄熱槽を具備していてもよい。この場合、更なる各組の分割蓄熱槽は、分割蓄熱槽1a~1cや分割蓄熱槽1a’~1c’と同様に構成可能である。
【0089】
(第5実施形態)
図11は、第5実施形態の蓄熱システムの構成を示す模式図である。
【0090】
図11は、本実施形態の蓄熱システムにおける三方弁23から三方弁26までの空気流路5を示している。本実施形態の蓄熱システム(
図11)は、第1実施形態の蓄熱システム(
図1)と同様の構成を有している。ただし、本実施形態の蓄熱システムは、
図1に示す構成要素に加え、後述する構成要素を具備する。
【0091】
本実施形態の蓄熱システムは、放熱運転時、バイパス流路5a~5cを用いる事で、分割蓄熱槽1a~1cから選択した分割蓄熱槽のみ放熱させる事ができる。このような蓄熱システムでは、蓄熱運転終了後、放熱運転を開始するまでの長時間、蓄熱状態を保持する事が多い。この場合、分割蓄熱槽1a~1cは、その周囲を断熱材で囲まれていても、長時間放置の間に、蓄熱した熱が分割蓄熱槽1a~1cから配管や地面や大気といった外界へ少しずつ漏洩していく。
【0092】
図11は、放熱運転時に分割蓄熱槽1aのみ放熱していて、分割蓄熱槽1b、1cは熱漏洩で温度低下している状態を示しており、蓄熱運転直後の温度111が、蓄熱運転直前の温度112に変化している。その後の蓄熱運転にて、どの分割蓄熱槽1a~1cも充分に蓄熱された状態まで蓄熱するのならば、分割蓄熱槽1aへの加熱量に比べ、分割蓄熱槽1b、1cへの加熱量は非常に小さい。
【0093】
そこで、本実施形態の蓄熱システムは、
図12(a)~
図13(c)の各々に示すように、空気流路5内に傍流流入流路5d及び傍流流出流路5eを具備し、傍流流入流路5d上に弁51、53、55を具備し、傍流流出流路5e上に弁52、54、56を具備する。弁51~56の開閉は、制御部31により制御される。弁51、53、55は、1つ以上の傍流流入弁の例である。弁52、54、56は、1つ以上の傍流流出弁の例である。
図12及び
図13は、第5実施形態の蓄熱システムの蓄熱運転時の動作を示す模式図である。
【0094】
図12(a)~
図13(c)の各々は、各弁の流通させる側を白抜きで示し、各弁の流通させない側を黒塗りで示している。これは、各三方弁についても同様である。以下、
図12(a)について説明し、その後に
図12(b)、
図12(c)、
図13(a)、
図13(b)、および
図13(c)について説明する。
【0095】
図12(a)は、傍流流入流路5d上に設けられた弁51、53、55と、傍流流出流路5e上に設けられた弁52、54、56とを示している。弁51は、三方弁23の上流から分割蓄熱槽1aに空気101を流入させるために使用される。弁53は、三方弁23の上流から分割蓄熱槽1bに空気101を流入させるために使用される。弁55は、三方弁23の上流から分割蓄熱槽1cに空気101を流入させるために使用される。弁52は、分割蓄熱槽1aから三方弁26の下流に空気101を流出させるために使用される。弁54は、分割蓄熱槽1bから三方弁26の下流に空気101を流出させるために使用される。弁56は、分割蓄熱槽1cから三方弁26の下流に空気101を流出させるために使用される。傍流流入流路5dを流れる空気101を、分岐空気113と呼ぶ。傍流流出流路5eを流れる空気101を、分岐空気114と呼ぶ。
【0096】
図12(a)では、空気流路5が、バイパス流路5a~5cと、傍流流入流路5dと、傍流流出流路5dと、その他の部分とを含んでいる。この「その他の部分」は、分割蓄熱槽1a~1cに空気101の主流を供給する主流流路であり、分割蓄熱槽1a~1cを互いに直列に接続している。バイパス流路5a~5cは、分割蓄熱槽1a~1cの内の1つ以上をバイパスするように空気101の主流を流通させる。傍流流入流路5dは、主流流路と分割蓄熱槽1a~1cとの間に設けられており、主流流路から分割蓄熱槽1a~1cに空気101の傍流(分岐空気113)を流入させる。傍流流出流路5eは、分割蓄熱槽1a~1cと主流流路との間に設けられており、分割蓄熱槽1a~1cから主流流路に空気101の傍流(分岐空気114)を流出させる。弁51~56は、分割蓄熱槽1a~1cの内のある分割蓄熱槽に空気101の主流が供給されていない場合にて、その分割蓄熱槽に空気101の傍流(分岐空気113)を流入させ、その分割蓄熱槽から空気101の傍流(分岐空気114)を流出させるか否かを切替可能である。この分割蓄熱槽は、第1~第N蓄熱槽(Nは2以上の整数)の内の任意の第M蓄熱槽(Mは1~Nの内の任意の整数)の例である。
【0097】
図12(a)では、分割蓄熱槽1aに空気101を主流として流通させて、分割蓄熱槽1aに通常の蓄熱を実施する。分割蓄熱槽1aより上流位置にて空気101を分岐し、分岐空気113を傍流流入流路5dに流通させて分割蓄熱槽1bに流入させる。分割蓄熱槽1bは熱漏洩した熱量の分、分岐空気113により補充蓄熱される。分割蓄熱槽1bを流出した分岐空気114は、傍流流出流路5eを流通して、分割蓄熱槽1cより下流位置に流出する。分割蓄熱槽1cも同様にして、熱漏洩した熱量の分、分岐空気113により補充蓄熱される。分割蓄熱槽1aを流通する空気101の流量に比べ、分割蓄熱槽1b、1cを流通する分岐空気113、114の流量は充分に小さい。即ち、分割蓄熱槽1aへは大量の空気101で大量蓄熱し、分割蓄熱槽1b、1cへは小量の分岐空気113、114で小量蓄熱する。
【0098】
なお、分割蓄熱槽1aに通常の蓄熱を実施し、分割蓄熱槽1bに熱漏洩分の蓄熱を実施し、分割蓄熱槽1cには蓄熱を実施しない場合は、
図12(b)のように弁51~56を開閉する。
【0099】
また、分割蓄熱槽1bに通常の蓄熱を実施し、分割蓄熱槽1aに熱漏洩分の蓄熱を実施し、分割蓄熱槽1cには蓄熱を実施しない場合は、
図12(c)のように弁51~56を開閉する。
【0100】
また、分割蓄熱槽1bに通常の蓄熱を実施し、分割蓄熱槽1a、1cに熱漏洩分の蓄熱を実施する場合は、
図13(a)のように弁51~56を開閉する。
【0101】
また、分割蓄熱槽1cに通常の蓄熱を実施し、分割蓄熱槽1a、1bに熱漏洩分の蓄熱を実施する場合は、
図13(b)のように弁51~56を開閉する。
【0102】
また、分割蓄熱槽1aに通常の蓄熱を実施し、分割蓄熱槽1b、1cには蓄熱を実施しない場合は、
図13(c)のように弁51~56を開閉する。
【0103】
本実施形態によれば、多量に蓄熱する分割蓄熱槽における空気101の圧力損失を低減する事が可能となる。本実施形態によれば、熱漏洩分を補充する分割蓄熱槽には、小量の分岐空気113、114のみを流通させる事で、分岐空気113、114の圧力損失を低減する事が可能となる。これらにより、蓄熱運転時の送風機3の消費電力が低減されるという効果がある。
【0104】
なお、本実施形態の蓄熱システムは、第1実施形態の変形例(
図6)で説明したような複数の温度センサ41を具備していてもよい。この場合、これらの温度センサ41により、各々の分割蓄熱槽1a~1cの熱漏洩や熱補充の状態を検出し、この検出結果を上記変形例のように運転に利用してもよい。
【0105】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定する事を意図したものではない。本明細書で説明した新規なシステムは、その他の様々な形態で実施する事ができる。また、本明細書で説明したシステムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行う事ができる。添付の特許請求の範囲及びこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0106】
1:蓄熱槽、1a:分割蓄熱槽、1b:分割蓄熱槽、1c:分割蓄熱槽、
1’:蓄熱槽、1a’:分割蓄熱槽、1b’:分割蓄熱槽、1c’:分割蓄熱槽、
2:電気ヒータ、3:送風機、4:送風機、5:空気流路、
5a:バイパス流路、5b:バイパス流路、5c:バイパス流路、
5a’:バイパス流路、5b’:バイパス流路、5c’:バイパス流路、
5d:傍流流入流路、5e:傍流流出流路、
6:水流路、7:蒸気流路、8:復水ポンプ、9:ボイラ、10:蒸気タービン、
11:復水器、12:弁、13:弁、14:弁、15:弁、
16:弁、17:弁、18:弁、19:三方弁、20:三方弁、
21:三方弁、22:弁、22’:弁、23:三方弁、23’:三方弁、
24:三方弁、24’:三方弁、25:三方弁、25’:三方弁、
26:三方弁、26’:三方弁、27:三方弁、28:三方弁、31:制御部、
41:温度センサ、51:弁、52:弁、53:弁、54:弁、55:弁、56:弁、
101:空気、102:水、103:蒸気、104:温度躍層、
111:蓄熱運転直後の温度、112:蓄熱運転直前の温度、
113:分岐空気、114:分岐空気