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  • 特開-飛灰炭酸化装置及び飛灰処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130158
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】飛灰炭酸化装置及び飛灰処理方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/70 20220101AFI20240920BHJP
   B09B 101/30 20220101ALN20240920BHJP
【FI】
B09B3/70 ZAB
B09B101:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039713
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸田 朝子
(72)【発明者】
【氏名】川崎 翔太
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 直之
(72)【発明者】
【氏名】三浦 崇
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA37
4D004AB03
4D004CA34
4D004CA35
4D004CC01
4D004CC03
4D004DA02
(57)【要約】
【課題】飛灰の炭酸化処理に要する水の量を抑え、炭酸化処理を効率よく進める。
【解決手段】飛灰炭酸化装置8は、廃棄物焼却炉1から排出された排ガスを除塵する除塵装置3から排出された飛灰を格納する。飛灰炭酸化装置8は、格納した飛灰を内部で移動させ、蒸気発生装置7から送られる水蒸気と、除塵装置3により除塵されて送風機6Aにより送られる排ガスとを飛灰に接触させる。飛灰に対して蒸気発生装置7からの水蒸気が接して飛灰の表面に水が付着し、水が付着した飛灰に排ガスが接することにより、排ガス中の二酸化炭素と飛灰は、飛灰粒子の表面の水を介して炭酸化反応が進行し、飛灰が炭酸化される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物焼却炉から排出された排ガスを除塵する除塵装置から排出された飛灰を格納する容器と、
前記容器内の前記飛灰を移動させる移動手段と、
水蒸気と、前記除塵装置により除塵された排ガスとを前記飛灰に供給する供給手段と、
を備える飛灰炭酸化装置。
【請求項2】
前記供給手段は、前記水蒸気と前記排ガスとを前記飛灰に交互に供給する
請求項1に記載の飛灰炭酸化装置。
【請求項3】
前記水蒸気を前記飛灰に供給する位置と前記排ガスを前記飛灰に供給する位置が同じである
請求項2に記載の飛灰炭酸化装置。
【請求項4】
廃棄物焼却炉から排出された排ガスを除塵する除塵装置から排出された飛灰を格納し、
格納した前記飛灰を移動させ、
水蒸気と、前記除塵装置により除塵された排ガスとを前記飛灰に接触させる
飛灰処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛灰炭酸化装置及び飛灰処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物を焼却する廃棄物焼却炉から排出される排ガスには多量の煤塵(飛灰)が含まれており、バグフィルタ等の除塵装置で排ガスは除塵される。除塵して排出された飛灰には鉛、カドミウム等の重金属類が含まれており、埋立処分する際には重金属類の溶出量が所定の規制値以下となるように、重金属類を固定し安定化処理して重金属類の溶出抑制処理を施すことが定められている。
【0003】
一般的な重金属類の安定化処理としては、例えば、アルカリ剤を飛灰に混合し重金属類を固定し安定化することが行われている。しかし、アルカリ剤を飛灰に混合する処理方法では、使用するアルカリ剤が高価であるため処理コストがかさむという課題があった。アルカリ剤を飛灰に混合する方法以外の処理方法としては、飛灰中のアルカリ成分を炭酸化してアルカリ飛灰の水素イオン指数(pH)を低くする方法(炭酸化処理)がある。特許文献1には、炭酸イオンを含む溶液を焼却灰に散水して焼却灰を洗浄した後、二酸化炭素を含有するガスを洗浄された焼却灰に供給することにより、焼却灰を炭酸化することが記載されている。特許文献2には、炭酸イオンを含む溶液を焼却灰に散水する散水処理と二酸化炭素を含有するガスの供給とを併行して行う、又は二酸化炭素を含有するガスの供給と散水処理とを交互に行うことにより焼却灰を炭酸化することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6663316号公報
【特許文献2】特許第6792964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
焼却灰に溶液の散水を行う特許文献1、2に開示された方法では、焼却灰に対して溶液を行き渡すためには散水を多くする必要があるが、散水を多くすると焼却灰同士が溶液によって結合して塊となり、焼却灰の粒子とガスとの接触面積が小さくなるため、炭酸化の効率が悪くなる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、飛灰の炭酸化処理に要する水の量を抑え、炭酸化処理を効率よく進めることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る飛灰炭酸化装置は、廃棄物焼却炉から排出された排ガスを除塵する除塵装置から排出された飛灰を格納する容器と、前記容器内の前記飛灰を移動させる移動手段と、水蒸気と、前記除塵装置により除塵された排ガスとを前記飛灰に供給する供給手段と、を備える。
【0008】
本発明に係る飛灰炭酸化装置においては、前記供給手段は、前記水蒸気と前記排ガスとを前記飛灰に交互に供給する構成としてもよい。
【0009】
本発明に係る飛灰炭酸化装置においては、前記水蒸気を前記飛灰に供給する位置と前記排ガスを前記飛灰に供給する位置が同じである構成としてもよい。
【0010】
また、本発明の一側面に係る飛灰処理方法は、廃棄物焼却炉から排出された排ガスを除塵する除塵装置から排出された飛灰を格納し、格納した前記飛灰を移動させ、水蒸気と、前記除塵装置により除塵された排ガスとを前記飛灰に接触させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、飛灰の炭酸化処理に要する水の量を抑え、炭酸化処理を効率よく進めることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る飛灰処理装置と、飛灰処理装置を備える廃棄物焼却システムの概略構成を示すブロック図である。
図2図2は、飛灰炭酸化装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0014】
[実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る飛灰処理装置100と、飛灰処理装置100を備える廃棄物焼却システム1000の概略構成を示すブロック図である。飛灰処理装置100は、廃棄物焼却炉1と煙突2との間に設けられている。
【0015】
廃棄物焼却炉1は、廃棄物を焼却する焼却炉である。廃棄物焼却炉1で発生した排ガスは、ボイラ1Aへ流通する。ボイラ1Aは、後述するエコノマイザ1Bで予熱された水を廃棄物焼却炉1から流通した排ガスで加熱して水蒸気を発生させる。ボイラ1Aで発生した水蒸気は、蒸気タービン21へ流通する。
【0016】
蒸気タービン21は、図示省略した発電機に連結されており、ボイラ1Aから送られた水蒸気により回転して発電機に発電を行わせる。蒸気タービン21へ供給された水蒸気は、復水器22へ排出される。復水器22は、蒸気タービン21から排出された水蒸気を冷却して凝縮させ、水に戻す。復水タンク23は、復水器22で水蒸気から戻された水を貯蔵する。脱気器24は、復水タンク23に貯蔵されている水に含まれる酸素を除去する。脱気器24で酸素が除去された水は、エコノマイザ1Bへ供給される。エコノマイザ1Bは、脱気器24から供給された水をボイラ1Aから流通した排ガスで加熱する。エコノマイザ1Bで加熱された水は、ボイラ1Aへ流通する。
【0017】
エコノマイザ1Bを流通した排ガスは、エコノマイザ1Bに接続された上流側煙道Aを流通する。上流側煙道Aには、アルカリ剤供給装置4が接続されている。アルカリ剤供給装置4は、上流側煙道A内の排ガスにアルカリ剤を供給する装置である。アルカリ剤供給装置4が供給するアルカリ剤は、例えば消石灰である。上流側煙道Aを流通する排ガスは、アルカリ剤供給装置4から供給されたアルカリ剤と共に飛灰処理装置100へ流通する。
【0018】
飛灰処理装置100は、上流側煙道Aから供給される排ガスの除塵処理と、飛灰と排ガスを接触させて飛灰のpHを低下させる炭酸化処理と、炭酸化された飛灰からの重金属類の溶出量を所定の規制値(基準値)以下にする安定化処理を行う装置である。
【0019】
飛灰処理装置100で行われる炭酸化処理は、廃棄物焼却炉1から排出される排ガスを飛灰に接触させることにより行われるものであり、飛灰中に含まれるCa(OH)やCaOなどのアルカリ成分に排ガス中の二酸化炭素を反応させて炭酸化させる。この炭酸化により、飛灰のpHを低下させて重金属類の溶出を抑制するとともに、飛灰中の鉛に排ガス中の二酸化炭素を反応させて難溶性の炭酸鉛を生成する。
【0020】
飛灰に含まれる重金属のうち、特に含有量が多い鉛の溶出量の規制値(基準値)は、飛灰を埋立処分する場合、0.3mg/Lである。また、飛灰を資源として有効利用する場合、土壌の環境基準が求められており、0.01mg/Lである。このため、飛灰を埋立処分したり、資源として利用したりする場合には、飛灰を上記の規制値以下の性状にするための処理をしなければならない。鉛は両性金属であり、pHが12を下回る領域においては、溶解度が大幅に低下し難溶性となるため、飛灰と炭酸ガス(二酸化炭素)との反応による炭酸化処理を行って飛灰のpHを12以下にすることにより、鉛の溶出量を極度に減少させることができる。また、鉛などの重金属が炭酸化され難溶性物となる反応も進行して、重金属の溶出が抑制される。
【0021】
また、飛灰処理装置100で行われる安定化処理は、炭酸化処理が行われた飛灰に安定化剤を混合し、飛灰中に含まれる重金属類を固定・安定化して重金属類の溶出量を所定の規制値(基準値)以下にする。本発明では、飛灰のpHを低下させ重金属類の溶出を抑制する処理と、鉛の炭酸塩を生成せしめ難溶化する処理を行うことにより、重金属類の固定・安定化処理のための安定化剤の使用量を低減させて飛灰処理コストを低減することができる。
【0022】
飛灰処理装置100は、除塵装置3、下流側煙道B1、煙道C1、煙道C2、送風機6A、蒸気発生装置7、ダクトD、飛灰炭酸化装置8及び飛灰処理設備9を有する。
【0023】
除塵装置3は、例えばバグフィルタ等により構成されており、上流側煙道Aを流通してアルカリ剤を供給された排ガスが進入する。除塵装置3は、進入した排ガス中の飛灰を集塵して排ガスを除塵する。この排ガスには水分(水蒸気)が含まれている。除塵装置3には、飛灰炭酸化装置8と下流側煙道B1が接続されている。除塵装置3で除塵された排ガスは、下流側煙道B1へ流通する。除塵装置3で集塵された飛灰は、飛灰炭酸化装置8へ供給される。
【0024】
下流側煙道B1には、煙道C1が接続されている。除塵装置3から下流側煙道B1に進行した排ガスは、煙道C1へ分岐する。煙道C1には、送風機6Aが接続されている。送風機6Aは、下流側煙道B1から排ガスの一部を抽出し、抽出した排ガスを飛灰炭酸化装置8に接続された煙道C2へ供給する。送風機6Aにより抽出された排ガスは、下流側煙道B1から抽出されたときには、200℃以下(例えば、160~180℃)の温度となっている。ここで、排ガスの温度が200℃以下とされているのは、廃棄物焼却炉1における排ガスに含まれるダイオキシン類対策のため、バグフィルタにより構成される除塵装置3の入口における排ガス温度を概ね200℃以下にするという指針が定められているためである。煙道C2へ供給された排ガスは、飛灰炭酸化装置8に吹き込まれる。
【0025】
蒸気発生装置7は、外部から供給される水を加熱して水蒸気を発生させる装置である。蒸気発生装置7で発生した水蒸気は、ダクトDを流通して飛灰炭酸化装置8に吹き込まれる。
【0026】
飛灰炭酸化装置8は、除塵装置3から排出された飛灰、蒸気発生装置7で発生した水蒸気、及び送風機6Aにより供給される排ガスを受けて飛灰を炭酸化する装置である。飛灰炭酸化装置8は、上流側煙道Aに接続されている帰送管11に接続されている。本実施形態では、蒸気発生装置7から供給される水蒸気と、送風機6Aにより飛灰炭酸化装置8へ供給される排ガスは、除塵装置3から供給される飛灰との接触による飛灰の炭酸化反応に利用される。
【0027】
図2は、飛灰炭酸化装置8の模式図である。飛灰炭酸化装置8は、容器80、撹拌翼81、吹出口82、投入口83、分散板84、除塵装置85、排出口87、及びヒータ88を備えている。容器80は、除塵装置3から排出された飛灰を格納する容器であり、煙道C2、投入口83、及び排出口87が接続されている。投入口83は、除塵装置3から排出された飛灰FAを容器80内へ投入する。煙道C2は、容器80の下部に接続されている。容器80において煙道C2の接続部は、排ガスを飛灰FAに供給する供給手段の一例である。送風機6Aにより煙道C2を流通した排ガスは、容器80の下部に吹き出される。分散板84は、上面から下面へ貫通した複数の孔を有した板である。煙道C2から容器80内に流通した排ガスは、分散板84の孔を通って分散板84の上側へ流通する。排ガスが分散板84を通って上側へ流通することにより、容器80内で飛灰FAの流動層が形成される。撹拌翼81は、分散板84の上方に位置し、図示省略した駆動手段により回転させられて飛灰FAを撹拌する。吹出口82は、ダクトDに接続されており、ダクトDから供給される水蒸気を飛灰FAの流動層に吹き出す。本実施形態では、吹出口82は、分散板84の上方で撹拌翼81より下に配置されている。吹出口82は、水蒸気を飛灰FAに供給する供給手段の一例である。除塵装置85は、容器80内に供給された排ガスを除塵する装置であり、容器80の上部に設けられている。なお、除塵装置85は、容器80の外部に設けられていてもよい。除塵装置85で除塵された排ガスは、帰送管11を流通して上流側煙道Aに戻る。排出口87は、飛灰炭酸化装置8で炭酸化された飛灰FAを容器80の外へ排出する。排出口87から排出された飛灰FAは、飛灰処理設備9へ送られる。ヒータ88は、容器80内を加熱し、飛灰FAを所定温度に均一に加熱する。
【0028】
飛灰炭酸化装置8においては、容器80内で煙道C2から排ガスが供給されて飛灰FAの流動層が形成され、形成された流動層が撹拌翼81により撹拌されて撹拌層が形成される。即ち、容器80において煙道C2の接続部から供給される排ガスにより飛灰FAが流れて動いて移動するため、容器80において煙道C2の接続部は、飛灰FAを移動させる移動手段の一例である。また、撹拌翼81の回転によっても飛灰FAが移動するため、撹拌翼81も飛灰FAを移動させる移動手段の一例である。また、飛灰炭酸化装置8においては、水蒸気が吹出口82によって飛灰炭酸化装置8の内部に吹き出されることにより、吹出口82の周辺に水蒸気分圧が高い領域が形成され、この領域にて効率よく反応場が形成される。また、供給した水蒸気は容器80内で拡散して飛灰の層全体の水蒸気分圧が高くなることで、この領域外においても反応場の形成が行われる。
【0029】
なお、飛灰炭酸化装置8に分散板84を設けない構成において、容器80内部の平均ガス流速(m/s)をV、吹出口82から供給される水蒸気の流速(m/s)をv1、水蒸気を供給していないと仮定した場合の吹出口82周辺のガス流速(m/s)をv2、煙道C2から供給される排ガス流速(m/s)をv3とした場合、v2はv3より小さい値であることが望ましい。なぜなら吹出口82が煙道C2から供給される排ガスの流れの影響が大きい位置、特に煙道C2に近い位置に配置されるほどv2はv3に近い値となり、吹出口82から供給された水蒸気は煙道C2から供給される排ガスに希釈されながら排ガスと同時に素早く拡散されるため、水蒸気分圧が高い領域を十分に形成することができないためである。一方、排ガスが煙道C2から供給されたのちに分散板84などによって拡散されて灰層に均一に供給され、分散板84から供給される排ガス流速がv3より小さい場合には吹出口82の配置場所による水蒸気供給への影響はほとんど無視してよい。
【0030】
飛灰炭酸化装置8において飛灰の炭酸化反応に用いられた後の排ガスは、帰送管11を流通して上流側煙道Aに戻る。上流側煙道Aに戻された排ガスは、廃棄物焼却炉1から排出された排ガスとともにアルカリ剤供給装置4からアルカリ剤を供給されて再び除塵装置3へ送られる。また、飛灰炭酸化装置8において炭酸化処理された飛灰は、飛灰処理設備9へ送られる。
【0031】
飛灰処理設備9は、安定化剤が外部から供給され、安定化剤と飛灰炭酸化装置8から供給された飛灰とを混合(混錬)することにより、飛灰中に含まれる重金属類を固定・安定化(安定化処理)し、重金属類の溶出量を基準値以下とする。
【0032】
次に飛灰処理装置100の作用及び効果について説明する。本実施形態においては、廃棄物焼却炉1から排出された排ガスは、上流側煙道Aにてアルカリ剤供給装置4からアルカリ剤の供給を受けて中和された後、200℃以下(例えば、160~180℃)の温度のもとで除塵装置3に送られて除塵される。このとき、除塵装置3では、排ガス中の飛灰と共にアルカリ剤も捕集される。除塵装置3で除塵された排ガスは、下流側煙道B1、送風機6B、及び下流側煙道B2を経て、適宜、無害化処理を受けて煙突2から大気中へ放出される。
【0033】
また、下流側煙道B1中の排ガスの一部は、送風機6Aにより下流側煙道B1から煙道C1へ分岐される。煙道C1へ分岐された排ガスは、送風機6Aにより煙道C2を流通して飛灰炭酸化装置8へ送られる。また、蒸気発生装置7で発生した水蒸気がダクトDを流通して飛灰炭酸化装置8へ送られる。
【0034】
なお、蒸気発生装置7で発生する水蒸気は、凝縮しない温度と圧力であればよく、蒸気タービン21へ供給する水蒸気のように高温高圧である必要がないため、蒸気発生装置7へ供給される水を脱気する必要がない。また、蒸気発生装置7は、ボイラ1Aと比較して小型であるため、煙道内に設置することが可能であり、蒸気発生装置7を備えていない廃棄物処理システムに対して、後付けで容易に取り付けることができる。また、ボイラ1Aから蒸気タービン21へ流通する水蒸気を分岐して飛灰炭酸化装置8へ供給した場合、発電に用いる水蒸気が減ってしまうため発電の効率が落ちてしまうが、本実施形態においては、飛灰炭酸化装置8へ供給する水蒸気は、発電に用いる蒸気とは別系統で生成されるため、蒸気タービン21による発電の効率を落とさずに電力を安定的に供給しつつ、炭酸化処理を行うことができる。
【0035】
飛灰炭酸化装置8においては、除塵装置3で捕集されて排出された飛灰FAに対して蒸気発生装置7からの水蒸気が接して飛灰FAの表面に水が付着する。ここで飛灰炭酸化装置8へ供給される排ガスの温度は、100~200℃であるため、飛灰炭酸化装置8の内部へ吹き出された水蒸気が炭酸化反応時に凝縮することなく飛灰粒子に接触して表面水として存在する。水蒸気は容器80内で拡散し、広く均一に飛灰FAの表面に供給されるため、水を飛灰FAに散水する構成と比較すると、効率良く水を飛灰FAに供給し、飛灰炭酸化装置8に供給する水の量を少なくすることができる。
【0036】
また、供給される排ガスの水分濃度はごみ焼却の状況によって変動するため、飛灰炭酸化装置8内部の水分濃度も変動する。本実施形態では蒸気発生装置7から飛灰炭酸化装置8へ供給される水蒸気と煙道C2を流通して飛灰炭酸化装置8へ送られる排ガスとを個別に流量調整・供給することができる。したがって、飛灰炭酸化処理中に供給される排ガスの水分量が変動した場合には供給する水蒸気量を調整し、装置内の水分濃度を一定に保ち、安定的に操業することが可能である。
【0037】
水蒸気が飛灰FAの表面に接触することで飛灰FAの粒子の表面水、すなわち炭酸化反応の反応場が効率よく形成される。表面水が形成された飛灰FAに煙道C2からの排ガスが接することにより、排ガス中の二酸化炭素と飛灰FAは、飛灰粒子の表面水を介して炭酸化反応が進行し、飛灰が炭酸化される。具体的には、飛灰中のアルカリ成分であるCaOやCa(OH)が排ガス中の炭酸ガス(二酸化炭素)と反応して炭酸化し、CaCOとなることで飛灰のpHが低下する。本実施形態では、飛灰炭酸化装置8の内部へ吹き出された水蒸気が凝縮して多量の水滴となって飛灰と共存することがないので、飛灰同士が水分を介して結合し塊状となって炭酸化反応の反応性が低下し、炭酸化反応に長時間を要するということがない。また、表面水が形成された飛灰FAが撹拌翼81によって撹拌されており、表面水が形成された飛灰FAと排ガスとの接触が良好となるため、飛灰FAの炭酸化反応が促進され、炭酸化反応にかかる時間を短くすることができる。また、排ガスを飛灰炭酸化装置8へ供給する煙道C2と、水蒸気を飛灰炭酸化装置8へ供給するダクトDとが分かれているため、煙道C2において排ガスの加湿による水蒸気分圧の上昇がなく、煙道C2において加湿による排ガスの酸露点低下が起きない。したがって、排ガスを加湿して飛灰炭酸化装置8へ供給する構成と比較すると、排ガスの供給路の腐食を抑えることができる。
【0038】
この結果、飛灰および飛灰中の鉛の炭酸化反応が効率的に進行し、飛灰の炭酸化処理が促進される。また、この炭酸化反応により、飛灰に含まれる鉛が難溶性を示す難溶性領域となり、鉛の溶出が抑えられる。また、飛灰に含まれる鉛が排ガス中の炭酸ガスと反応して炭酸化し、鉛の形態が易溶性のPbClやPbOから難溶性のPbCOに変化し、鉛の溶出が抑制される。このように、飛灰処理装置100で飛灰のpHを低下させて重金属類の溶出を抑制する処理と鉛の炭酸鉛を生成せしめ難溶化する処理を行うことにより、重金属類の固定・安定化処理のための安定化剤の使用量を低減させて飛灰処理コストを低減することができる。
【0039】
飛灰炭酸化装置8で飛灰の炭酸化に用いられた後の排ガスは、アルカリ剤供給装置4によってアルカリ剤が供給される位置の上流側へ帰送管11によって送られ、上流側煙道Aに戻される。ここで、排ガスは、アルカリ剤供給装置4によってアルカリ剤が供給される位置の下流側かつ除塵装置3の上流側に送られ、上流側煙道Aに戻されてもよい。この、上流側煙道Aに戻される排ガスは、廃棄物焼却炉1から排出された排ガスよりも大幅に少ない量であり、除塵装置3以降の機器への影響は無視できるレベルである。
【0040】
また、飛灰炭酸化装置8で炭酸化した飛灰は、飛灰処理設備9で安定化剤と混練される。その結果、飛灰中の重金属類が固定・安定化(安定化処理)され、重金属類の溶出量が基準値以下となる。安定化処理された飛灰は、飛灰処理設備9から排出された後、埋立処分される。本実施形態では飛灰処理設備9で使用される安定化剤の量を大幅に削減することができる。
【0041】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。上述した各実施形態及び各変形例の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態や変形例に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0042】
蒸気発生装置7は、除塵装置3から下流側煙道B1を流通する排ガスの熱により水蒸気を発生する構成であってもよい。また、飛灰炭酸化装置8へ供給する水蒸気は、ボイラ1Aで発生した水蒸気であってもよい。
【0043】
飛灰炭酸化装置8は、上述の形態に限定されず、種々変更が可能である。例えば、図2では、飛灰炭酸化装置8は一つの吹出口82を有しているが、飛灰炭酸化装置8は、複数の吹出口82を有する構成であってもよい。また、飛灰炭酸化装置8は、容器内へ飛灰、排ガス、及び水蒸気の供給を受けて、容器が軸線まわりに回転するキルンとすることも可能である。また、飛灰炭酸化装置8は、容器内へ飛灰、排ガス、及び水蒸気の供給を受けて、容器内で撹拌翼が軸周りに回転する撹拌装置としてもよい。また、飛灰炭酸化装置8は、飛灰、排ガス、及び水蒸気を受ける移動層を形成するようにしてもよい。また、飛灰炭酸化装置8は、吹出口82により飛灰FAの上方から水蒸気を供給する構成、あるいは飛灰炭酸化装置8の下方から水蒸気を供給する方式であってもよい。また、飛灰炭酸化装置8においては、排ガスが吹き出される位置の近傍に吹出口82を設置してもよい。この構成の場合、水蒸気の吹き出しと排ガスの吹き出しとを交互に行うことが好ましい。
【0044】
水蒸気の吹き出しと排ガスの吹き出しとを交互に行う場合、水蒸気が供給される間は排ガスの供給量が少ない、あるいは排ガスが供給されない。これにより、供給された水蒸気が排ガスに希釈されず、水蒸気分圧が高い領域を広く形成することができるため、煙道C2とダクトDとを飛灰炭酸化装置8の近傍で合流させ、排ガスと水蒸気とを容器80の同じ位置から吹き出すようにしてもよい。
【0045】
本発明においては、廃棄物焼却炉1から排出される飛灰を、灰を溶融する施設やセメントで固化する施設などの中間処理施設に搬出するために飛灰処理設備9にて安定化剤を添加し混練する必要がない場合には、飛灰炭酸化装置8で炭酸化された飛灰を、飛灰処理設備9を経ずに排出してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 廃棄物焼却炉
1A ボイラ
1B エコノマイザ
2 煙突
3 除塵装置
4 アルカリ剤供給装置
6A、6B 送風機
7 蒸気発生装置
8 飛灰炭酸化装置
9 飛灰処理設備
11 帰送管
21 蒸気タービン
22 復水器
23 復水タンク
24 脱気器
81 撹拌翼
82 吹出口
100 飛灰処理装置
1000 廃棄物焼却システム
A 上流側煙道
B1、B2 下流側煙道
C1、C2 煙道
D ダクト
図1
図2