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特開2024-130159部品搭載部材、ケース、時計、および部品搭載部材の製造方法
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  • 特開-部品搭載部材、ケース、時計、および部品搭載部材の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130159
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】部品搭載部材、ケース、時計、および部品搭載部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G04B 37/11 20060101AFI20240920BHJP
   G04B 37/18 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G04B37/11
G04B37/18 Z
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039714
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(74)【代理人】
【識別番号】100171882
【弁理士】
【氏名又は名称】北庄 麗絵子
(72)【発明者】
【氏名】杉山 繁昭
(72)【発明者】
【氏名】土居 裕治
(72)【発明者】
【氏名】長澤 翔太
(57)【要約】
【課題】 金属で形成されたベース部材に端子を設けた場合でも、ベース部材と端子とが互いに導通しないようにすることができる部品搭載部材、それを備えたケース、それらを備えた時計、および部品搭載部材の製造方法を提供する。
【解決手段】 取付孔14が設けられて腕時計ケース1に取り付けられるベース部材である裏蓋8と、この裏蓋8の取付孔14に配置されて裏蓋8に取り付けられる端子取付部材12と、この端子取付部材12に露出して設けられた充電端子13と、を備え、裏蓋8は金属によって形成され、端子取付部材12は絶縁性を有する樹脂によって形成されている。従って、金属で形成された裏蓋8に充電端子13を設けた場合でも、裏蓋8と充電端子13とが互いに導通しないようにすることができる。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付孔が設けられてケースに取り付けられるベース部材と、
前記ベース部材の前記取付孔に配置されて前記ベース部材に取り付けられる取付部材と、
前記取付部材に露出して設けられた端子と、
を備え、
前記ベース部材は、金属によって形成されていて、
前記取付部材は、絶縁性を有する樹脂によって形成されている
ことを特徴とする部品搭載部材。
【請求項2】
請求項1に記載の部品搭載部材において、
前記取付部材と前記ベース部材との間には、接着層が介在されている
ことを特徴とする部品搭載部材。
【請求項3】
請求項1に記載の部品搭載部材において、
前記取付部材と前記ベース部材とは、前記取付部材の外周面および前記ベース部材の前記取付孔の内周面が接着層を介して接着された状態で、一体に形成されている
ことを特徴とする部品搭載部材。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の部品搭載部材において、
前記取付部材と前記ベース部材とは、前記取付部材の外周面および前記ベース部材の前記取付孔の内周面が前記接着層を介して接着された状態で、一体に形成されている
ことを特徴とする部品搭載部材。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載の部品搭載部材において、
前記接着層は、接着性を有する粘土状の流動体を前記ベース部材の前記取付孔の内面に塗布させてゲル状に乾燥させ、この状態で熱によって溶融させることにより、前記取付部材と前記ベース部材とを接着する
ことを特徴とする部品搭載部材。
【請求項6】
請求項2または請求項3に記載の部品搭載部材において、
前記ベース部材は、前記取付孔の内面に設けられた接合突起部を有し、
前記取付部材は、前記端子が取り付けられて前記ベース部材の前記取付孔内に配置される本体部と、前記本体部の外周部に設けられて前記ベース部材の前記取付孔の前記接合突起部が嵌合する溝部と、を備えている
ことを特徴とする部品搭載部材。
【請求項7】
請求項6に記載の部品搭載部材において、
前記ベース部材の前記取付孔内における少なくとも前記接合突起部の上下面には、前記接着層が設けられている
ことを特徴とする部品搭載部材。
【請求項8】
請求項2または請求項3に記載の部品搭載部材を備えていることを特徴とするケース。
【請求項9】
請求項8に記載されたケースを備えていることを特徴とする時計。
【請求項10】
取付孔を有するベース部材を金属によって成形する第1の工程と、
端子が取り付けられる取付部材を絶縁性の樹脂によって前記ベース部材の前記取付孔内に成形する第2の工程と、
を備えていることを特徴とする部品搭載部材の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の部品搭載部材の製造方法において、
前記第1の工程では、前記取付孔の内面に接着層を設け、
前記第2の工程では、前記取付部材を成形する際に、前記接着層によって前記取付部材と前記ベース部材とを接着させる
ことを特徴とする部品搭載部材の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の部品搭載部材の製造方法において、
前記第2の工程では、前記ベース部材と前記取付部材との間に介在される前記接着層を溶融させながら、前記取付部材を前記ベース部材の前記取付孔内にインサート成形により一体に形成する
ことを特徴とする部品搭載部材の製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の部品搭載部材の製造方法において、
前記第1の工程では、前記ベース部材の前記取付孔の内面に接着性を有する粘土状の流動体を塗布させてゲル状に乾燥させて前記接着層を形成し、
前記第2の工程では、前記取付部材を前記ベース部材の前記取付孔内にインサート成形する際に、前記取付部材の前記樹脂の熱によって前記接着層を溶融させて前記取付部材と前記ベース部材とを接着する
ことを特徴とする部品搭載部材の製造方法。
【請求項14】
請求項11に記載の部品搭載部材の製造方法において、
前記第1の工程では、前記ベース部材の前記取付孔の内面に接合突起部が形成され、
前記第2の工程では、前記取付部材が、前記ベース部材に設けられた前記取付孔内に配置される本体部と、前記本体部の外周部に設けられて前記ベース部材の前記接合突起部が嵌合する溝部と、を有して、前記接合突起部が前記溝部に嵌合した状態で前記接着層によって接着される
ことを特徴とする部品搭載部材の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、時計、携帯電話、携帯情報端末などの電子機器に用いられる部品搭載部材、それを備えたケース、それらを備えた時計、および部品搭載部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、腕時計においては、特許文献1に記載されているように、薄型化および軽量化を図るため、金属やカーボン樹脂などの導電性樹脂といった導電性の部材によって形成されたハウジングであるベース部材を備えるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-169360
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような腕時計では、ベース部材が導電性を有するので、ベース部材に端子(例えば充電端子)を設けようとすると、充電端子とベース部材とが導通してしまい、充電端子としての機能が失われてしまうという問題がある。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、例えば、金属で形成されたベース部材に端子を設けた場合でも、ベース部材と端子とが互いに導通しないようにすることができる部品搭載部材、それを備えたケース、それらを備えた時計、および部品搭載部材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、取付孔が設けられてケースに取り付けられるベース部材と、前記ベース部材の前記取付孔に配置されて前記ベース部材に取り付けられる取付部材と、前記取付部材に露出して設けられた端子と、を備え、前記ベース部材は、金属によって形成されていて、前記取付部材は、絶縁性を有する樹脂によって形成されていることを特徴とする部品搭載部材である。
【0007】
また、この発明は、取付孔を有するベース部材を金属によって成形する第1の工程と、端子が取り付けられる取付部材を絶縁性の樹脂によって前記ベース部材の前記取付孔内に成形する第2の工程と、を備えていることを特徴とする部品搭載部材の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、例えば、金属で形成されたベース部材に端子を設けた場合でも、ベース部材と端子とが互いに導通しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明を腕時計に適用した一実施形態を示した拡大正面図である。
図2図1に示された腕時計の拡大裏面図である。
図3図2に示された腕時計のA-A矢視において上下反転させて示した拡大断面図である。
図4図2に示された腕時計における裏蓋を示した拡大裏面図である。
図5図4に示された裏蓋のB-B矢視において上下反転させて示した拡大断面図である。
図6図5に示された裏蓋における部品搭載部材の要部を更に拡大して示した断面図である。
図7図5に示された裏蓋における部品搭載部材の成形品を成形用金型で成形する状態を示した拡大断面図である。
図8】この発明を適用した腕時計の裏蓋におけるプライマー層の設置位置の変形例を示した要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1図7を参照して、この発明を腕時計に適用した一実施形態について説明する。
この腕時計は、図1および図2に示すように、腕時計ケース1を備えている。この腕時計ケース1の6時側と12時側とには、時計バンド2が取り付けられるバンド取付部1aがそれぞれ設けられている。この腕時計ケース1の2時側、4時側、8時側および10時側には、スイッチ部3がそれぞれ設けられている。
【0011】
この腕時計ケース1は、図3に示すように、本体ケース4と外装ケース5とを備えている。本体ケース4は、ベースとなる樹脂にカーボン繊維またはガラス繊維を含有させた強化繊維樹脂によって、重量が軽くかつ強度が高く形成されている。また、この本体ケース4は、ベースとなる樹脂中に金属などの補強部材4aが埋め込まれている。
【0012】
この場合、ベースとなる樹脂は、剛性の高いポリアミドであっても良い。なお、この本体ケース4は、合成樹脂に限らず、金属で形成されていても良い。外装ケース5は、図1図3に示すように、本体ケース4の外周部にこれを覆って取り付けられるものである。この外装ケース5は、例えば、ステンレスやチタン合金などの剛性の高い金属、またはウレタン樹脂などの弾力性を有する合成樹脂によって形成されている。
【0013】
また、この腕時計ケース1における本体ケース4の上側開口部には、図1および図3に示すように、時計ガラス6がガラスパッキン6aを介して取り付けられている。この場合、本体ケース4の縁部(図3では6時側の縁部)の箇所には、時計ガラス6がガラスパッキン6aと共に配置される配置部4bが設けられている。また、この腕時計ケース1の下部には、図2および図3に示すように、後述する部品搭載部材7のベース部材である裏蓋8が防水リング8aを介して複数のビス8bによって取り付けられている。
【0014】
さらに、この腕時計ケース1の内部には、図3に示すように、時計モジュール9が設けられている。この時計モジュール9は、図示ないが、指針を運針させて時刻を指示表示する時計ムーブメント、時刻や日付、曜日などの各種の情報を電気光学的に表示する表示装置、これらを電気的に制御する回路部、この回路部に電力を供給する充電池などの時計機能に必要な各種の部品を備えている。
【0015】
この場合、裏蓋8は、図2および図4に示すように、3時側と9時側とが円弧状に突出するほぼ四角形状の板状に形成されている。この裏蓋8の中央部には、センサ装置10が設けられている。センサ装置10は、脈拍および血液中の酸素飽和度を検出する光学センサであり、複数の発光素子と受光素子(いずれも図示せず)とを備え、時計モジュール9の回路部(図示せず)と電気的に接続されている。この場合、複数の発光素子は、緑波長の光、赤波長の光、赤外線波長の光を発光する。
【0016】
これにより、センサ装置10は、図2および図4に示すように、複数の発光素子で発光した光を腕の皮膚内の血管に照射させ、この照射された光の反射光を受光素子で受光し、この受光した緑波長の光の受光量の変化に基づいて脈拍を検出すると共に、生体を透過した赤波長と赤外線波長との光の透過光の比率から血液中の酸素飽和度を検出するように構成されている。
【0017】
ところで、腕時計ケース1には、図2図4に示すように、部品搭載部材7が設けられている。この部品搭載部材7は、図5および図6に示すように、ベース部材である裏蓋8と、この裏蓋8の6時側に取り付けられる取付部材である端子取付部材12と、この端子取付部材12に取り付けられる複数の充電端子13と、を備えている。
【0018】
この場合、ベース部材である裏蓋8は、図2図6に示すように、ステンレスなどの導電性を有する金属によって形成されている。この裏蓋8は、例えば、ステンレスなどの金属粉末と樹脂粉末とを混合させて流動性をもたせ、これを焼結用の金型内に射出させて充填させ、この状態で加熱して樹脂粉末を蒸発させて金属粉末を焼結させた焼結金属である。
【0019】
この裏蓋8の6時側には、図5および図6に示すように、端子取付部材12が配置される取付孔14が裏蓋8の内面である上面から外面(裏面)である下面に貫通して設けられている。この取付孔14は、5時側から7時側に向けて長さが長いほぼ長方形状の貫通孔であり、四隅が円弧状に湾曲した形状に形成されている。この場合、取付孔14は、その形状がほぼ楕円形状に形成されていても良い。
【0020】
この取付孔14の内面には、図5および図6に示すように、接合突起部15が鍔状に突出して設けられている。この接合突起部15は、上下方向の長さ(厚み)が裏蓋8の上下方向の長さ(厚み)のほぼ半分程度の長さ(厚み)で、取付孔14内における上部側に位置して形成されている。また、この接合突起部15は、取付孔14の内部に向けて大きく突出する第1突起部15aと、この第1突起部15aよりも突出長さの短い第2突起部15bと、を備えている。
【0021】
この場合、第1突起部15aは、図5および図6に示すように、腕時計ケース1の内部側に位置する裏蓋8の上面側(内面側)に設けられている。第2突起部15bは、裏蓋8の上下方向におけるほぼ中間部に設けられている。また、取付孔14は、接合突起部15の上側に位置する第1孔部14aと、接合突起部15の下側に位置する第2孔部14bと、を備えている。
【0022】
上側に位置する第1孔部14aと下側に位置する第2孔部14bとは、図5および図6に示すように、その各内径がほぼ同じ大きさで形成されている。また、上側に位置する第1孔部14aは、その上下方向の長さ(深さ)が短く(浅く)形成されている。下側に位置する第2孔部14bは、その上下方向の長さ(深さ)が上側に位置する第1孔部14aの上下方向の長さ(深さ)よりも十分に長く(深く)形成されている。
【0023】
一方、端子取付部材12は、図5および図6に示すように、絶縁性を有する樹脂材料によって形成されている。この樹脂材料は、例えばポリアリレート樹脂にガラス繊維を含有させた強化繊維樹脂である。この端子取付部材12は、複数の充電端子13が取り付けられる本体部16と、この本体部16の外周部に設けられて接合突起部15の第1突起部15aが嵌合する溝部17と、を備えている。
【0024】
本体部16は、図4図6に示すように、裏蓋8の取付孔14内に配置されるように構成されている。すなわち、この本体部16は、上部側の外径が裏蓋8の取付孔14における第1孔部14aの内面の形状とほぼ同じ大きさのほぼ長方形状に形成されている。また、この本体部16は、下部側の外径が取付孔14の第2孔部14bの内径よりも小さい大きさで、かつ接合突起部15の第2突起部15bにおける先端面に対応する形状とほぼ同じ大きさのほぼ長方形状に形成されている。これにより、本体部16は、上部側の外径が下部側の外径より大きく形成されている。
【0025】
また、この本体部16は、図5および図6に示すように、その上下方向の長さ(厚み)が裏蓋8の取付孔14の上下方向の長さ(深さ)、つまり裏蓋8の上下方向の長さよりも長く(厚く)形成されている。これにより、本体部16は、その下面が裏蓋8の下面とほぼ同じ位置に配置された状態のときに、本体部16の上面が裏蓋8の内面である上面よりも上方に突出して配置されるように構成されている。
【0026】
また、端子取付部材12の溝部17は、図5および図6に示すように、裏蓋8の取付孔14内に設けられた接合突起部15の第1突起部15aが嵌合するものであり、端子取付部材12の本体部16の外周面における上下方向のほぼ中間部に設けられている。この溝部17は、第2突起部15bよりも取付孔14内に向けて突出した第1突起部15aの先端部とほぼ同じ形状の凹部形状に形成されている。この場合、溝部17は、第1突起部15aの先端部が挿入する凹部17aと、第1突起部15aの上面に配置される載置面17bと、を備えている。
【0027】
また、この端子取付部材12は、図5および図6に示すように、本体部16の下部側の外径が裏蓋8の取付孔14内における下部側の第2孔部14bの内径よりも小さく形成されている。このため、本体部16の下部側の外周面と裏蓋8の取付孔14内における下部側の第2孔部14bの内周面との間には、規制凹部12cが設けられている。この規制凹部12cは、後述する鰐口タイプの充電装置の接続部(いずれも図示せず)が嵌め込まれて充電端子13に接続された際に、腕時計ケース1に対する充電装置の位置を規制するためのものである。
【0028】
また、この端子取付部材12は、図5および図6に示すように、絶縁性を有する樹脂によって形成される際に、裏蓋8の取付孔14内にインサート成形によって一体に形成されている。この場合、端子取付部材12は、裏蓋8の取付孔14内に一体に形成される際に、接着層であるプライマー層18を介して接着されている。
【0029】
このプライマー層18は、接着性を有する粘土状の流動体を裏蓋8の取付孔14の内面に塗布してゲル状に乾燥させ、この状態で端子取付部材12を樹脂で成形する際の熱によって溶融して、端子取付部材12と裏蓋8とを接着させるものである。これにより、プライマー層18は、20気圧程度の高い防水性が確保されるように端子取付部材12と裏蓋8とを接着する。
【0030】
特に、プライマー層18を塗布してからゲル状に乾燥させることで、プライマー層18の塗布表面が比較的フラットになり、均一に伸びることとなり、ムラが出にくくなる。これにより、プライマー層18の表面状態が平滑化されることで、防水性能の信頼性を高めることができる。また、プライマー層18の粘度が低いままだと垂れ込みや不要部分への付着などのトラブル起きやすいが、乾燥させてゲル化させることで、作業性を高めることができる。
【0031】
また、このプライマー層18は、図5および図6に示すように、裏蓋8の取付孔14の内周面と端子取付部材12の外周面との間に介在されている。この場合、プライマー層18は、少なくとも取付孔14内に突出して設けられた接合突起部15のうち、第1突起部15aの上面と、端子取付部材12の本体部16に設けられた溝部17の凹部17aに嵌合する第1突起部15aの突出した先端部の下面と、に設けられている。
【0032】
これにより、プライマー層18は、図5および図6に示すように、第1突起部15aの上面および第1突起部15aの突出した先端部の下面と、これらに対向する本体部16の溝部17の対向面つまり溝部17の凹部17aの内面および載置面17bと、の間に介在されている。これにより、プライマー層18は、裏蓋8の取付孔14内に設けられた接合突起部15の第1突起部15aが端子取付部材12の溝部17に嵌合した状態で溶融した際に、裏蓋8および端子取付部材12の各外面に流出しないように設けられている。
【0033】
また、裏蓋8は、仕上処理が施されている。この場合、裏蓋8の取付孔14内に設けられた接合突起部15の上下面、つまり第1突起部15aの上面と第1突起部15aの突出した先端部の下面とには、図6に示すように、プライマー層18が確実に設けられるように、プラズマによる表面処理が施されている。
【0034】
また、端子取付部材12の本体部16には、図3図6に示すように、複数の充電端子13が取り付けられる複数の貫通孔16aが本体部16の長手方向つまり3時9時方向に沿って設けられている。これら複数の充電端子13それぞれは、端子取付部材12の本体部16に設けられた複数の貫通孔16aに挿入するほぼ丸棒状に形成されている。
【0035】
すなわち、複数の充電端子13は、図5および図6に示すように、その外径が本体部16の貫通孔16aの内径とほぼ同じ大きさで、上下方向の長さが本体部16の上下方向の長さ(厚み)よりも長く形成されている。この場合、複数の充電端子13は、ステンレスなどの金属製の丸棒状の表面に金メッキが施された構造になっている。
【0036】
また、複数の充電端子13の各下端部には、図5および図6に示すように、外径の大きい抜止め用の頭部13aがそれぞれ設けられている。このため、本体部16の貫通孔16aの下部には、頭部13aが挿入する大径の孔部16bが形成されている。また、複数の充電端子13の各上端部には、抜止め溝13bが環状に設けられており、この抜止め溝13bには、Eリングなどの抜止め部材19が取り付けられている。
【0037】
これにより、複数の充電端子13は、図5および図6に示すように、本体部16に設けられた複数の貫通孔16aに下側から挿入されて、各頭部13aが各貫通孔16aの各大径の孔部16bに配置された際に、各上端部の抜止め溝13bが本体部16の上側に露出し、この露出した各抜止め溝13bにそれぞれ抜止め部材19が取り付けられるように構成されている。
【0038】
このため、これら複数の充電端子13は、図5および図6に示すように、各下端部の頭部13aが裏蓋8の取付孔14から裏蓋8の外面である下面側に突出せずに露出し、各上端部が裏蓋8の内面側である上面側に突出して露出し、この状態で各頭部13aと各抜止め部材19とによって本体部16の各貫通孔16a内から上下方向に抜け出さないように構成されている。
【0039】
この場合、複数の充電端子13の各上端部には、図3に示すように、腕時計ケース1内の時計モジュール9の回路部(図示せず)にフレキシブル配線基板などの接続部材20によって電気的に接続される小径の接続突起13cがそれぞれ設けられている。また、これら複数の充電端子13の各外周面には、図6に示すように、複数の防水溝13dがそれぞれ環状に設けられている。
【0040】
これら複数の防水溝13dには、図6に示すように、防水パッキン21がそれぞれ設けられている。これら複数の防水パッキン21それぞれは、防水溝13dから露出する部分が本体部16の複数の貫通孔16aの各内周面に圧接して、充電端子13の外周面と本体部16の複数の貫通孔16aの各内周面との間の防水を図るように構成されている。
【0041】
また、この腕時計ケース1の部品搭載部材7は、時計モジュール9の充電池(図示せず)を充電する充電装置(図示せず)が電気的に接続されるように構成されている。すなわち、この充電装置は、腕時計ケース1を上下に挟む鰐口タイプのクリップ装置であり、裏蓋8の端子取付部材12に設けられた複数の充電端子13に接続される接続部(図示せず)を備えている。これにより、充電装置は、接続部が複数の充電端子13に接続された状態で、時計モジュール9の充電池を充電するように構成されている。
【0042】
次に、このような腕時計における部品搭載部材7の製造方法について説明する。
この部品搭載部材7の製造方法は、ベース部材である裏蓋8を金属によって成形する第1の工程と、図7に示すように、絶縁性を有する樹脂材料によって充電端子13が取り付けられる端子取付部材12を裏蓋8に一体に成形する第2の工程と、を備えている。
【0043】
この場合、第1の工程では、図示しないが、焼結用の金型によって裏蓋8を成形する。この裏蓋8は、導電性を有する金属粉末を焼結用の金型内で焼結させたものである。すなわち、この裏蓋8は、例えば、ステンレスなどの金属粉末と樹脂粉末とを混合させて流動性をもたせ、これを焼結用の金型内に射出させて充填させ、この状態で加熱して樹脂粉末を蒸発させ、金属粉末を焼結させた焼結金属である。
【0044】
この第1の工程では、図7に示すように、裏蓋8の6時側に取付孔14が上下に貫通して形成される。この取付孔14の内面には、接合突起部15が鍔状に突出して設けられる。この接合突起部15の上側には、第1孔部14aが設けられ、接合突起部15の下側には、第2孔部14bが設けられる。また、接合突起部15は、突出長さの長い第1突起部15aと、これよりも突出長さの短い第2突起部15bと、を有して形成される。
【0045】
この場合、第1の工程では、成形された裏蓋8に仕上処理を施して、図7に示すように、接着層であるプライマー層18を設ける。このときには、裏蓋8の取付孔14内に設けられた接合突起部15における上側の第1突起部15aの上面と、第2突起部15bよりも突出する第1突起部15aの先端部の下面とに、プラズマによる表面処理を施して、プライマー層18を設けやすくする。
【0046】
そして、裏蓋8の取付孔14の内面にプライマー層18を設ける際には、接合突起部15における第1突起部15aの上面および第1突起部15aの突出した先端部の下面に、接着性を有する粘土状の流動体を塗布させてゲル状に乾燥させる。このときには、接合突起部15の第1突起部15aの上面および第1突起部15aの突出した先端部の下面がプラズマによって表面処理されているので、プライマー層18の流動体が確実に塗布される。これにより、プラズマによる表面処理が施された接合突起部15の第1突起部15aの上下面にプライマー層18が確実に設けられる。
【0047】
第2の工程では、図7に示すように、成形用金型22内に裏蓋8を配置させて、裏蓋8の取付孔14内に端子取付部材12をインサート成形によって一体に形成する。この場合、成形用金型22は、上金型22aと下金型22bとを備えている。この成形用金型22は、上金型22aと下金型22bとの間に裏蓋8を配置させた際に、これらで囲われた内部に端子取付部材12と同じ形状の空洞部(キャビティ)22cが形成されている。
【0048】
この成形用金型22の空洞部22c内には、図7に示すように、複数の充電端子13がそれぞれ挿入する挿入孔である貫通孔16aを形成するための複数の挿入ピン23が配置される。これら複数の挿入ピン23は、端子取付部材12に設けられた複数の貫通孔16aおよびその各大径の孔部16bと同じ形状に形成されている。すなわち、挿入ピン23は、充電端子13とほぼ同じ大きさで形成され、且つ充電端子13の頭部13aとほぼ同じ大きさの頭部23aが設けられている。
【0049】
そして、この成形用金型22によって端子取付部材12を成形する際には、図7に示すように、成形用金型22内に裏蓋8を配置させると共に、成形用金型22の空洞部22c内に複数の挿入ピン23を配置させる。この状態で、絶縁性を有する樹脂材料を溶融させ、この溶融した樹脂材料を成形用金型22の空洞部22c内に充填させて固化させる。この場合、樹脂材料は、例えばポリアリレート樹脂にガラス繊維を含有させた絶縁性の強化繊維樹脂である。
【0050】
これにより、端子取付部材12の本体部16に複数の挿入ピン23が配置された状態で、本体部16が裏蓋8の取付孔14内に一体に形成される。このときには、成形用金型22の空洞部22c内に注入された絶縁性を有する樹脂材料の熱によって、裏蓋8の取付孔14内における接合突起部15の第1突起部15aの上下面に設けられたゲル状に乾燥したプライマー層18が溶融する。
【0051】
この溶融したプライマー層18は、裏蓋8の取付孔14内に設けられた接合突起部15の第1突起部15aが端子取付部材12の溝部17に嵌合しても、裏蓋8および端子取付部材12の各外面に流出することがない。そして、溶融したプライマー層18が固化すると、端子取付部材12の外周面と裏蓋8の取付孔14の内周面とが強固に接着される。このため、端子取付部材12と裏蓋8とが20気圧程度の高い防水性を確保して接合される。
【0052】
この状態で、上金型22aと下金型22bとを離型させて、端子取付部材12が裏蓋8の取付孔14内に形成された成形品を上金型22aと下金型22bとの内部から取り出す。そして、成形品の端子取付部材12中に埋め込まれた複数の挿入ピン23を取り出す。すると、端子取付部材12に複数の貫通孔16aが正確に形成される。この場合、複数の貫通孔16aそれぞれの下部には、挿入ピン23の頭部23aによって充電端子13の頭部13aが配置される大径の孔部16bが形成される。
【0053】
また、この部品搭載部材7の製造方法は、成形品に複数の充電端子13を取り付ける第3の工程を更に備えている。この第3の工程では、図6に示すように、成形品の端子取付部材12つまり裏蓋8の取付孔14内に一体に形成された端子取付部材12の複数の貫通孔16aに複数の充電端子13を取り付ける。
【0054】
このときには、図6に示すように、予め、充電端子13の外周面に設けられた複数の防水溝13dに複数の防水パッキン21をそれぞれ取り付ける。この状態で、端子取付部材12の複数の貫通孔16aに下側から複数の充電端子13の各小径の接続突起13cをそれぞれ挿入させて、複数の充電端子13の各頭部13aを複数の貫通孔16aの各大径の孔部16bに配置させる。
【0055】
このときには、図6に示すように、充電端子13の外周に設けられた複数の防水溝13dに配置された複数の防水パッキン21がそれぞれ複数の貫通孔16aの内面に圧接するので、複数の貫通孔16aと複数の充電端子13との間の防水性が確保される。また、このときには、複数の充電端子13の各接続突起13cが端子取付部材12の上方にそれぞれ突出するので、この突出した各接続突起13cの各下端部側に設けられた各抜止め溝13bに抜止め部材19をそれぞれ取り付ける。これにより、複数の充電端子13が端子取付部材12に取り付けられ、部品搭載部材7が形成される。
【0056】
そして、部品搭載部材7である裏蓋8を腕時計ケース1に取り付ける。この場合には、図3に示すように、予め、腕時計ケース1の本体ケース4の上側開口部に時計ガラス6をガラスパッキン6aと共に取り付ける。この状態で、腕時計ケース1に側部に複数のスイッチ部3をそれぞれ取り付けて、本体ケース4の外周部に外装ケース5を取り付ける。そして、腕時計ケース1内に時計モジュール9を組み込む。
【0057】
このときには、予め、端子取付部材12に設けられた複数の充電端子13における各接続突起13cを接続部材20によって時計モジュール9の回路部(図示せず)と電気的に接続させると共に、センサ装置10を時計モジュール9の回路部と電気的に接続させる。この状態で、腕時計ケース1の下部に裏蓋8を防水リング8aと共に複数のビス8bによって取り付ける。これにより、充電装置(図示せず)によって充電可能な腕時計が組み立てられる。
【0058】
そして、この腕時計を充電装置(図示せず)によって充電する場合には、鰐口タイプのクリップ装置である充電装置で腕時計ケース1の6時側を上下に挟む。このときには、充電装置の接続部(図示せず)を裏蓋8の6時側に設けられた端子取付部材12の複数の充電端子13に対応させて、充電装置の接続部を裏蓋8の取付孔14の下部側の内周面と端子取付部材12の下部側の外周面との間に設けられた規制凹部12cに嵌め込む。
【0059】
これにより、充電装置が腕時計ケース1に対して位置規制されて、充電装置の接続部が複数の充電端子と電気的に接続される。このため、充電装置の接続部に供給された電力が部品搭載部材7の複数の充電端子13に供給されて、腕時計ケース1内に組み込まれた時計モジュール9の充電池(図示せず)が充電される。
【0060】
このように、この腕時計の部品搭載部材7によれば、取付孔14が設けられて腕時計ケース1に取り付けられるベース部材である裏蓋8と、この裏蓋8の取付孔14に配置されて裏蓋8に取り付けられる端子取付部材12と、この端子取付部材12に露出して設けられた充電端子13と、を備え、裏蓋8が金属によって形成され、端子取付部材12が絶縁性を有する樹脂によって形成されていることにより、金属で形成された裏蓋8に充電端子13を設けた場合でも、裏蓋8と充電端子13とが互いに導通しないようにすることができる。
【0061】
この場合、この腕時計の部品搭載部材7では、端子取付部材12とベース部材である裏蓋8との間に接着層であるプライマー層18が介在されていることにより、このプライマー層18によって端子取付部材12と裏蓋8とを確実にかつ強固に接着することができ、これにより端子取付部材12と裏蓋8との間の防水性および気密性を確保することができる。
【0062】
また、この腕時計の部品搭載部材7では、端子取付部材12の外周面および裏蓋8の取付孔14の内周面がプライマー層18を介して接着された状態で、端子取付部材12と裏蓋8とが一体に形成されているので、端子取付部材12の外周面と裏蓋8の取付孔14の内周面とをプライマー層18によって、より一層、確実にかつ強固に接着することができ、これにより端子取付部材12の外周面と裏蓋8の取付孔14の内周面との間の防水性および気密性を更に高めることができる。
【0063】
また、この腕時計の部品搭載部材7では、接着層であるプライマー層18が、接着性を有する粘土状の流動体をベース部材である裏蓋8の取付孔14の内面に塗布させてゲル状に乾燥させ、この状態で熱によって溶融させて端子取付部材12と裏蓋8とを接着することにより、端子取付部材12の外周面と裏蓋8の取付孔14の内周面とを確実にかつ良好に接着することができ、これにより端子取付部材12の外周面と裏蓋8の取付孔14の内周面との間の防水性および気密性を確保することができる。
【0064】
この場合、この腕時計の部品搭載部材7では、プライマー層18を塗布してからゲル状に乾燥させることで、プライマー層18の塗布表面が比較的フラットになり、均一に伸びることとなり、ムラが出にくくなる。これにより、プライマー層18の表面状態が平滑化されることで、防水性能の信頼性を高めることができる。また、プライマー層18の粘度が低いままだと垂れ込みや不要部分への付着などのトラブル起きやすいが、乾燥させてゲル化させることで、作業性を高めることができる。
【0065】
また、この腕時計の部品搭載部材7では、裏蓋8の取付孔14内に設けられた接合突起部15の第1突起部15aの上面および第2突起部15bよりも突出する第1突起部15aの先端部の下面にプラズマによる表面処理が施されていることにより、第1突起部15a上面および第1突起部15aの突出した先端部の下面にプライマー層18を確実に且つ良好に設けることができ、これにより端子取付部材12の外周面と裏蓋8の取付孔14の内周面とを確実にかつ強固に接着することができる。
【0066】
また、この腕時計の部品搭載部材7では、ベース部材である裏蓋8が、取付孔14の内面に設けられた接合突起部15を有し、端子取付部材12は、充電端子13が取り付けられて裏蓋8の取付孔14内に配置される本体部16と、この本体部16の外周部に設けられて裏蓋8の取付孔14の接合突起部15が嵌合する溝部17と、を備えていることにより、端子取付部材12と裏蓋8とを確実にかつ強固に接合させることができる。
【0067】
すなわち、この腕時計の部品搭載部材7では、裏蓋8の取付孔14の内面に設けられた接合突起部15を端子取付部材12の本体部16の外周面に設けられた溝部17に嵌合させることができるので、端子取付部材12を裏蓋8の取付孔14内に確実にかつ強固に接合させることができる。
【0068】
また、この腕時計の部品搭載部材7では、裏蓋8の取付孔14内における少なくとも接合突起部15の上下面である第1突起部15aの上面および第2突起部15bよりも突出する第1突起部15aの先端部の下面に接着層であるプライマー層18が設けられていることにより、裏蓋8の取付孔14の内面に設けられた接合突起部15を端子取付部材12の本体部16の外周面に設けられた溝部17に嵌合させた状態で、プライマー層18によって裏蓋8と端子取付部材12とを確実にかつ強固に接着させて接合させることができる。
【0069】
すなわち、この腕時計の部品搭載部材7では、裏蓋8の取付孔14の内面に設けられた接合突起部15の第1突起部15aの上面およびこの第1突起部15aの突出した先端部の下面と、これらに対向する端子取付部材12の本体部16の溝部17における凹部17aの内面および載置面17bと、をプライマー層18によって確実にかつ強固に接着させることができるので、裏蓋8の取付孔14の内周面と端子取付部材12の外周面との間の防水性および気密性を確保することができる。
【0070】
また、この腕時計の部品搭載部材7の製造方法によれば、取付孔14を有するベース部材である裏蓋8を金属によって成形する第1の工程と、充電端子13が取り付けられる端子取付部材12を絶縁性の樹脂によって裏蓋8の取付孔14内に成形する第2の工程と、を備えていることにより、金属で形成された裏蓋8に充電端子13を設けた場合でも、裏蓋8と充電端子13とが互いに導通しないようにすることができると共に、部品搭載部材7を容易にかつ良好に製造することができる。
【0071】
この場合、この腕時計の部品搭載部材7の製造方法では、第1の工程で取付孔14の内面に接着層であるプライマー層18を設け、第2の工程で端子取付部材12を成形する際に、プライマー層18によって端子取付部材12と裏蓋8とを接着させることにより、端子取付部材12の外周面と裏蓋8の取付孔14の内周面とをプライマー層18によって確実にかつ強固に接着することができ、これにより端子取付部材12と裏蓋8との間の防水性および気密性を確保することができる。
【0072】
また、この腕時計の部品搭載部材7の製造方法では、端子取付部材12の外周面および裏蓋8の取付孔14の内周面をプライマー層18によって接着させた状態で、端子取付部材12と裏蓋8とを一体に形成するので、端子取付部材12の外周面と裏蓋8の取付孔14の内周面とをプライマー層18によって、より一層、確実にかつ強固に接着することができ、これにより端子取付部材12の外周面と裏蓋8の取付孔14の内周面との間の防水性および気密性を更に高めることができる。
【0073】
また、この腕時計の部品搭載部材7の製造方法では、第2の工程で裏蓋8と端子取付部材12との間に介在されるプライマー層18を溶融させながら、端子取付部材12を裏蓋8の取付孔14内にインサート成形により一体に形成することにより、端子取付部材12の外周面と裏蓋8の取付孔14の内周面とをプライマー層18によって確実にかつ強固に接着することができ、これにより端子取付部材12の外周面と裏蓋8の取付孔14の内周面との間の防水性および気密性を確保することができる。
【0074】
また、この腕時計の部品搭載部材7の製造方法では、第1の工程で裏蓋8の取付孔14の内面に接着性を有する粘土状の流動体を塗布してゲル状に乾燥させてプライマー層18を形成し、第2の工程で端子取付部材12を裏蓋8の取付孔14内にインサート成形する際に、端子取付部材12の樹脂材料の熱によってプライマー層18を溶融させて端子取付部材12と裏蓋8とを接着することにより、第2の工程で端子取付部材12を裏蓋8の取付孔14内にインサート成形する際に、端子取付部材12の樹脂材料の熱によってゲル状に乾燥したプライマー層18を確実にかつ良好に溶融させることができる。
【0075】
この場合、この腕時計の部品搭載部材7の製造方法では、プライマー層18を塗布してからゲル状に乾燥させることで、プライマー層18の塗布表面が比較的フラットになり、均一に伸びることとなり、ムラが出にくくなる。これにより、プライマー層18の表面状態が平滑化されることで、防水性能の信頼性を高めることができる。また、プライマー層18の粘度が低いままだと垂れ込みや不要部分への付着などのトラブル起きやすいが、乾燥させてゲル化させることで、作業性を高めることができる。
【0076】
このため、この腕時計の部品搭載部材7の製造方法では、端子取付部材12の樹脂材料の熱によって溶融したプライマー層18が固化することにより、その固化したプライマー層18によって端子取付部材12の外周面と裏蓋8の取付孔14の内周面とを確実にかつ強固に接着することができるので、これによっても端子取付部材12の外周面と裏蓋8の取付孔14の内周面との間の防水性および気密性を確保することができる。
【0077】
また、この腕時計の部品搭載部材7の製造方法では、第1の工程で裏蓋8の取付孔14の内面に接合突起部15が形成され、第2の工程で端子取付部材12が、裏蓋8に設けられた取付孔14内に配置される本体部16と、この本体部16の外周部に設けられて裏蓋8の接合突起部15が嵌合する溝部17と、を有して、接合突起部15が溝部17に嵌合した状態でプライマー層18によって接着されることにより、裏蓋8の取付孔14の内面に設けられた接合突起部15を端子取付部材12の本体部16の外周面に設けられた溝部17内に嵌合させた状態で、プライマー層18によって裏蓋8と端子取付部材12の本体部16とを確実にかつ強固に接着させて接合させることができる。
【0078】
この場合、この腕時計の部品搭載部材7の製造方法では、第1の工程で裏蓋8の取付孔14内における少なくとも接合突起部15のうち、第1突起部15aの上面および第1突起部15aの突出した先端部の下面にプライマー層18が設けられていることにより、第1突起部15aを溝部17の凹部17aに嵌合させた状態で、裏蓋8の取付孔14の内面に設けられた接合突起部15の第1突起部15aの上面および下面と、これらに対向する端子取付部材12の本体部16に設けられた溝部17の凹部17aの内面および載置面17bと、をプライマー層18によって確実にかつ強固に接着させることができ、これにより裏蓋8の取付孔14の内周面と端子取付部材12の外周面との間の防水性および気密性を確保することができる。
【0079】
なお、上述した実施形態では、裏蓋8の取付孔14内に設けられた接合突起部15の第1突起部15aの上面およびこの第1突起部15aの突出した先端部の下面にプライマー層18を設けた場合について述べたが、この発明は、これに限らず、図8に点線で示す変形例のように、接合突起部15の第2突起部15bの下面にもプライマー層18を設けても良い。このようにすれば、より一層、防水性および気密性を高めることができる。
【0080】
また、上述した実施形態およびその変形例では、裏蓋8の取付孔14内に設けられた接合突起部15の第1突起部15aの上下面および第2突起部15bの下面にプライマー層18を設けた場合について述べたが、この発明は、これに限らず、裏蓋8の取付孔14の内面における全領域に設けても良い。すなわち、プライマー層18は、接合突起部15の上下面である水平な横面のほかに、上下方向である垂直方向の縦面、つまり接合突起部15の突出した各先端面、取付孔14の第1孔部14aと第2孔部14bとの各内面にも設けても良い。
【0081】
また、上述した実施形態では、端子が充電端子13である場合について述べたが、この発明は、必ずしも充電端子13である必要はなく、通信用の端子などの接続用の端子など、どのような端子であっても良い。
【0082】
また、上述した実施形態では、腕時計に適用した場合について述べたが、この発明は必ずしも腕時計である必要はなく、例えばトラベルウオッチ、目覚まし時計、置き時計、掛け時計などの各種の時計に適用することができる。
【0083】
さらに、この発明は、必ずしも時計である必要はなく、例えば携帯電話や携帯情報端末などの電子機器にも適用することができる。この場合、上述した実施形態では、ベース部材が裏蓋8である場合について述べたが、この発明は、必ずしも裏蓋8である必要はなく、ケースに取り付けられるものであれは、どのようなものであっても良い。
【符号の説明】
【0084】
1 腕時計ケース
1a バンド取付部
2 時計バンド
3 スイッチ部
4 本体ケース
4a 補強部材
5 外装ケース
6 時計ガラス
7 部品搭載部材
8 裏蓋
8a 防水リング
8b ビス
9 時計モジュール
10 センサ装置
12 端子取付部材
13 充電端子
13a 頭部
13b 抜止め溝
13c 接続突起
13d 防水溝
14 取付孔
14a 第1孔部
14b 第2孔部
15 接合突起部
15a 第1突起部
15b 第2突起部
16 本体部
16a 貫通孔
16b 孔部
17 溝部
17a 凹部
17b 載置面
18 プライマー層
19 抜止め部材
20 接続部材
21 防水パッキン
22 成形用金型
22a 上金型
22b 下金型
22c 空洞部
23 挿入ピン
23a 頭部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-04-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
この発明は、取付孔が設けられてケースに取り付けられるベース部材と、前記ベース部材の前記取付孔に配置されて前記ベース部材に取り付けられる取付部材と、前記取付部材に挿通し且つ前記取付部材から外部に露出して設けられた端子と、を備え、前記ベース部材は、金属によって形成されていて、前記取付部材は、絶縁性を有する樹脂によって形成されていることを特徴とする部品搭載部材である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付孔が設けられてケースに取り付けられるベース部材と、
前記ベース部材の前記取付孔に配置されて前記ベース部材に取り付けられる取付部材と、
前記取付部材に挿通し且つ前記取付部材から外部に露出して設けられた端子と、
を備え、
前記ベース部材は、金属によって形成されていて、
前記取付部材は、絶縁性を有する樹脂によって形成されている
ことを特徴とする部品搭載部材。
【請求項2】
請求項1に記載の部品搭載部材において、
前記取付部材と前記ベース部材との境界の少なくとも一部には、接着層が介在されている
ことを特徴とする部品搭載部材。
【請求項3】
請求項1に記載の部品搭載部材において、
前記取付部材と前記ベース部材とは、前記取付部材の外周面および前記ベース部材の前記取付孔の内周面が接着層を介して接着された状態で、一体に形成されている
ことを特徴とする部品搭載部材。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の部品搭載部材において、
前記取付部材と前記ベース部材とは、前記取付部材の外周面および前記ベース部材の前記取付孔の内周面が前記接着層を介して接着された状態で、一体に形成されている
ことを特徴とする部品搭載部材。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載の部品搭載部材において、
前記接着層は、接着性を有する粘土状の流動体を前記ベース部材の前記取付孔の内面に塗布させてゲル状に乾燥させ状態で熱によって溶融させることにより、前記取付部材と前記ベース部材とを接着する
ことを特徴とする部品搭載部材。
【請求項6】
請求項2または請求項3に記載の部品搭載部材において、
前記ベース部材は、前記取付孔の内の少なくとも一部が内側に延びて設けられた接合突起部を有し、
前記取付部材は、前記端子が挿通され且つ前記ベース部材の前記取付孔内に挿通して配置される本体部と、前記本体部の外周部に設けられて前記ベース部材の前記取付孔の前記接合突起部が嵌合する溝部と、を備えている
ことを特徴とする部品搭載部材。
【請求項7】
請求項6に記載の部品搭載部材において
記接合突起部の上下面の少なくとも一部には、前記接着層が設けられている
ことを特徴とする部品搭載部材。
【請求項8】
請求項7に記載の部品搭載部材において、
前記接合突起部は、上部側に設けられる第1突起部と、前記第1突起部よりも下部側且つ前記第1突起部よりも外側に設けられる第2突起部と、を含み、
前記第1突起部の上下面には前記接着層が設けられ、
前記第1突起部の側面には前記接着層を設けない、
ことを特徴とする部品搭載部材。
【請求項9】
請求項6に記載の部品搭載部材において、
前記ベース部材のうち、前記接合突起部の上下方向の寸法は、前記ベース部材の上下方向の寸法の略半分の寸法であり、
前記接合突起部は、前記取付孔の内周面のうち上部側に設けられている、
ことを特徴とする部品搭載部材。
【請求項10】
請求項9に記載の部品搭載部材において、
前記接合突起部は、上部側に設けられる第1突起部と、前記第1突起部よりも下部側且つ前記第1突起部よりも外側に設けられる第2突起部と、を含み、
前記第1突起部は、前記ベース部材の上面の一部に含まれ、
前記第2突起部は、前記ベース部材の上下方向のうち中間位置に設けられている、
ことを特徴とする部品搭載部材。
【請求項11】
請求項6に記載の部品搭載部材において、
前記取付部材の上下方向の寸法は、前記ベース部材の上下方向の寸法よりも大きく、
前記接合突起部が前記溝部に嵌合している場合に、前記取付部材の下面と前記ベース部材の下面とは、上下方向において略同じ高さ位置に設けられる、
ことを特徴とする部品搭載部材。
【請求項12】
請求項11に記載の部品搭載部材において、
前記取付部材の下部側の外周面と前記ベース部材の下部側の内周面との間には、規制凹部が設けられる、
ことを特徴とする部品搭載部材。
【請求項13】
請求項に記載の部品搭載部材を備えている
ことを特徴とするケース。
【請求項14】
請求項13に記載されたケースを備えている
ことを特徴とする時計。
【請求項15】
取付孔を有するベース部材を金属によって成形する第1の工程と、
端子が取り付けられる取付部材を絶縁性の樹脂によって前記ベース部材の前記取付孔内に成形する第2の工程と、
を備えていることを特徴とする部品搭載部材の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の部品搭載部材の製造方法において、
前記第1の工程では、前記取付孔の内面に接着層を設け、
前記第2の工程では、前記取付部材を成形する際に、前記接着層によって前記取付部材と前記ベース部材とを接着させる
ことを特徴とする部品搭載部材の製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の部品搭載部材の製造方法において、
前記第2の工程では、前記ベース部材と前記取付部材との間に介在される前記接着層を溶融させながら、前記取付部材を前記ベース部材の前記取付孔内にインサート成形により一体に形成する
ことを特徴とする部品搭載部材の製造方法。
【請求項18】
請求項16に記載の部品搭載部材の製造方法において、
前記第1の工程では、前記ベース部材の前記取付孔の内面に接着性を有する粘土状の流動体を塗布させてゲル状に乾燥させて前記接着層を形成し、
前記第2の工程では、前記取付部材を前記ベース部材の前記取付孔内にインサート成形する際に、前記取付部材の前記樹脂の熱によって前記接着層を溶融させて前記取付部材と前記ベース部材とを接着する
ことを特徴とする部品搭載部材の製造方法。
【請求項19】
請求項16に記載の部品搭載部材の製造方法において、
前記第1の工程では、前記ベース部材の前記取付孔の内面に接合突起部が形成され、
前記第2の工程では、前記取付部材が、前記ベース部材に設けられた前記取付孔内に配置される本体部と、前記本体部の外周部に設けられて前記ベース部材の前記接合突起部が嵌合する溝部と、を有して、前記接合突起部が前記溝部に嵌合した状態で前記接着層によって接着される
ことを特徴とする部品搭載部材の製造方法。