(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130161
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】仮想空間コンテンツ提供システム、仮想空間コンテンツ提供方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/00 20180101AFI20240920BHJP
G16H 80/00 20180101ALI20240920BHJP
【FI】
G16H10/00
G16H80/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039721
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】仁木 一順
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宏介
(72)【発明者】
【氏名】岩井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 謙
(72)【発明者】
【氏名】開発 巳智子
(72)【発明者】
【氏名】新井 潤一郎
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】ユーザの安心感を向上させることができる仮想空間コンテンツ提供システム等を提供する。
【解決手段】仮想空間コンテンツ提供システムは、利用者における疾病の治療又は予防のための仮想空間コンテンツを提供する仮想空間コンテンツ提供システムであり、前記仮想空間コンテンツと共に前記利用者に対するファシリテーターのファシリテーター画像を表示し、前記ファシリテーターのファシリテーター画像は、仮想空間内において前記利用者から認識可能な位置に表示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者における疾病の治療又は予防のための仮想空間コンテンツを提供する仮想空間コンテンツ提供システムであり、
前記仮想空間コンテンツと共に前記利用者に対するファシリテーターのファシリテーター画像を表示し、
前記ファシリテーター画像は、仮想空間内において前記利用者から認識可能な位置に表示される
仮想空間コンテンツ提供システム。
【請求項2】
前記仮想空間コンテンツを提供中の実空間における前記ファシリテーターの顔を撮像した前記ファシリテーター画像を取得し、
取得した前記ファシリテーター画像を前記仮想空間コンテンツと共に表示する
請求項1に記載の仮想空間コンテンツ提供システム。
【請求項3】
前記ファシリテーターの利用に供する利用部を備え、
前記利用者に提供中の仮想空間コンテンツを前記利用部へ提供する
請求項1又は請求項2に記載の仮想空間コンテンツ提供システム。
【請求項4】
前記ファシリテーターの利用に供する利用部を備え、
前記仮想空間コンテンツを提供中の実空間における前記利用者の画像を前記利用部へ出力する
請求項1又は請求項2に記載の仮想空間コンテンツ提供システム。
【請求項5】
前記ファシリテーターの利用に供する利用部を備え、
前記仮想空間コンテンツを提供中の実空間における前記利用者の視線データを前記利用部へ出力する
請求項1又は請求項2に記載の仮想空間コンテンツ提供システム。
【請求項6】
仮想空間の移動に関する操作を前記利用者から受け付ける操作部を備える
請求項1又は請求項2に記載の仮想空間コンテンツ提供システム。
【請求項7】
前記仮想空間コンテンツを提供中の前記利用者の体の状態を示す生体情報を取得し、
取得した前記利用者の生体情報と、前記利用者へ提供された前記仮想空間コンテンツとを対応付けて記憶する
請求項1又は請求項2に記載の仮想空間コンテンツ提供システム。
【請求項8】
前記利用者の仮想空間における移動履歴を取得し、
取得した前記移動履歴と、前記利用者へ提供された前記仮想空間コンテンツとを対応付けて記憶する
請求項1又は請求項2に記載の仮想空間コンテンツ提供システム。
【請求項9】
前記ファシリテーターの利用に供する利用部と、前記利用者の仮想空間認識能力を評価する評価部とを備え、
前記評価部で評価した前記利用者の仮想空間認識能力を前記利用部へ出力する
請求項1又は請求項2に記載の仮想空間コンテンツ提供システム。
【請求項10】
接触による物理的刺激、温熱、気流、香り、振動及び音の少なくとも1つを出力する出力部を備え、
前記出力部は、前記利用者に提供中の仮想空間コンテンツ又はファシリテーターから受け付けた選択に応じて、接触による物理的刺激、温熱、気流、香り及び音の少なくとも1つを前記利用者に出力する
請求項1又は請求項2に記載の仮想空間コンテンツ提供システム。
【請求項11】
前記利用者に対し前記仮想空間コンテンツを表示する表示部を備え、
前記表示部は抱き枕式又は天吊り式である
請求項1又は請求項2に記載の仮想空間コンテンツ提供システム。
【請求項12】
利用者における疾病の治療又は予防のための仮想空間コンテンツを提供する仮想空間コンテンツ提供方法であり、
前記仮想空間コンテンツと共に前記利用者に対するファシリテーターのファシリテーター画像を表示し、
前記ファシリテーター画像は、仮想空間内において前記利用者から認識可能な位置に表示される
処理をコンピュータが実行する仮想空間コンテンツ提供方法。
【請求項13】
利用者における疾病の治療又は予防のための仮想空間コンテンツを提供するコンピュータに、
前記仮想空間コンテンツと共に前記利用者に対するファシリテーターのファシリテーター画像を表示し、
前記ファシリテーター画像は、仮想空間内において前記利用者から認識可能な位置に表示される
処理を実行させるためのプログラム。
【請求項14】
ヘッドバンドレスの仮想空間デバイスを覗き込んだ利用者に疾病の治療又は予防のための仮想空間コンテンツを出力し、
前記仮想空間コンテンツと共に前記利用者に対するファシリテーターの実空間画像を出力し、
前記ファシリテーターの実空間画像は、仮想空間内において前記利用者から認識可能な位置に出力される
処理を前記仮想空間デバイスが実行する仮想空間コンテンツ提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想空間コンテンツ提供システム、仮想空間コンテンツ提供方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、仮想現実(バーチャルリアリティ:VR)を利用する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、ヘッドマウントディスプレイを用いて対象者に物体を含むVR動画像を表示し、物体に対する反応に基づいて立体認知能力を定量化することのできる立体認知能力評価システムが開示されている。
【0003】
また、認知症などの疾病の予防又は療法の1つとして「回想法」が知られている。回想法とは、思い出に繋がる物や映像を見て対象者自身に自分の思い出を語らせ、対象者の脳を活性化する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術では、VRの利用におけるユーザの安心感の向上について考慮されていないという問題がある。高齢者や療養者は、VRを初めとする仮想空間の体験に不慣れな場合が多く、不安を感じるおそれがある。
【0006】
本開示の目的は、ユーザの安心感を向上させることができる仮想空間コンテンツ提供システム等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の観点に係る仮想空間コンテンツ提供システムは、利用者における疾病の治療又は予防のための仮想空間コンテンツを提供する仮想空間コンテンツ提供システムであり、前記仮想空間コンテンツと共に前記利用者に対するファシリテーターのファシリテーター画像を表示し、前記ファシリテーター画像は、仮想空間内において前記利用者から認識できる位置に表示される。
【0008】
本開示の第2の観点に係る仮想空間コンテンツ提供システムは、第1の観点に係る仮想空間コンテンツ提供システムであって、前記仮想空間コンテンツを提供中の実空間における前記ファシリテーターの顔を撮像した前記ファシリテーター画像を取得し、取得した前記ファシリテーター画像を前記仮想空間コンテンツと共に表示する。
【0009】
本開示の第3の観点に係る仮想空間コンテンツ提供システムは、第1の観点又は第2の観点に係る仮想空間コンテンツ提供システムであって、前記ファシリテーターの利用に供する利用部を備え、前記利用者に提供中の仮想空間コンテンツを前記利用部へ提供する。
【0010】
本開示の第4の観点に係る仮想空間コンテンツ提供システムは、第1の観点から第3の観点のいずれか1つに係る仮想空間コンテンツ提供システムであって、前記ファシリテーターの利用に供する利用部を備え、前記仮想空間コンテンツを提供中の実空間における前記利用者の画像を前記利用部へ出力する。
【0011】
本開示の第5の観点に係る仮想空間コンテンツ提供システムは、第1の観点から第4の観点のいずれか1つに係る仮想空間コンテンツ提供システムであって、前記ファシリテーターの利用に供する利用部を備え、前記仮想空間コンテンツを提供中の実空間における前記利用者の視線データを前記利用部へ出力する。
【0012】
本開示の第6の観点に係る仮想空間コンテンツ提供システムは、第1の観点から第5の観点のいずれか1つに係る仮想空間コンテンツ提供システムであって、仮想空間の移動に関する操作を前記利用者から受け付ける操作部を備える。
【0013】
本開示の第7の観点に係る仮想空間コンテンツ提供システムは、第1の観点から第6の観点のいずれか1つに係る仮想空間コンテンツ提供システムであって、前記仮想空間コンテンツを提供中の前記利用者の体の状態を示す生体情報を取得し、取得した前記利用者の生体情報と、前記利用者へ提供された前記仮想空間コンテンツとを対応付けて記憶する。
【0014】
本開示の第8の観点に係る仮想空間コンテンツ提供システムは、第1の観点から第7の観点のいずれか1つに係る仮想空間コンテンツ提供システムであって、前記利用者の仮想空間における移動履歴を取得し、取得した前記移動履歴と、前記利用者へ提供された前記仮想空間コンテンツとを対応付けて記憶する。
【0015】
本開示の第9の観点に係る仮想空間コンテンツ提供システムは、第1の観点から第8の観点のいずれか1つに係る仮想空間コンテンツ提供システムであって、前記ファシリテーターの利用に供する利用部と、前記利用者の仮想空間認識能力を評価する評価部とを備え、前記評価部で評価した前記利用者の仮想空間認識能力を前記利用部へ出力する。
【0016】
本開示の第10の観点に係る仮想空間コンテンツ提供システムは、第1の観点から第9の観点のいずれか1つに係る仮想空間コンテンツ提供システムであって、接触による物理的刺激、温熱、気流、香り、振動及び音の少なくとも1つを出力する出力部を備え、前記出力部は、前記利用者に提供中の仮想空間コンテンツ又はファシリテーターから受け付けた選択に応じて、接触による物理的刺激、温熱、気流、香り及び音の少なくとも1つを前記利用者に出力する。
【0017】
本開示の第11の観点に係る仮想空間コンテンツ提供システムは、第1の観点から第10の観点のいずれか1つに係る仮想空間コンテンツ提供システムであって、前記利用者に対し前記仮想空間コンテンツを表示する表示部を備え、前記表示部は抱き枕式又は天吊り式である。
【0018】
本開示の第12の観点に係る仮想空間コンテンツ提供方法は、利用者における疾病の治療又は予防のための仮想空間コンテンツを提供する仮想空間コンテンツ提供方法であり、前記仮想空間コンテンツと共に前記利用者に対するファシリテーターのファシリテーター画像を表示し、前記ファシリテーター画像は、前記利用者から認識できる位置に表示される処理をコンピュータが実行する。
【0019】
本開示の第13の観点に係るプログラムは、利用者における疾病の治療又は予防のための仮想空間コンテンツを提供するコンピュータに、前記仮想空間コンテンツと共に前記利用者に対するファシリテーターのファシリテーター画像を表示し、前記ファシリテーター画像は、仮想空間内において前記利用者から認識可能な位置に表示される処理を実行させる。
【0020】
本開示の第14の観点に係る仮想空間コンテンツ提供方法は、ヘッドバンドレスの仮想空間デバイスを覗き込んだ利用者に疾病の治療又は予防のための仮想空間コンテンツを出力し、前記仮想空間コンテンツと共に前記利用者に対するファシリテーターの実空間画像を出力し、前記ファシリテーターの実空間画像は、仮想空間内において前記利用者から認識可能な位置に出力される処理を前記仮想空間デバイスが実行する。
【0021】
本開示の第15の観点に係るプログラムは、ヘッドバンドレスの仮想空間デバイスを覗き込んだ利用者に疾病の治療又は予防のための仮想空間コンテンツを出力し、前記仮想空間コンテンツと共に前記利用者に対するファシリテーターの実空間画像を出力し、前記ファシリテーターの実空間画像は、仮想空間内において前記利用者から認識可能な位置に出力される処理を前記仮想空間デバイスに実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態の仮想空間コンテンツ提供システムの概要図である。
【
図2】利用者端末の構成例を示すブロック図である。
【
図3】ファシリテーター端末の構成例を示すブロック図である。
【
図4】コンテンツ提供装置の構成例を示すブロック図である。
【
図5】管理DBに記憶される情報の内容例を示す図である。
【
図6】利用者端末の表示部に表示される画面の一例を示す模式図である。
【
図7】ファシリテーター端末の表示部に表示される画面の一例を示す模式図である。
【
図8】コンテンツ提供システムが実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】コンテンツ提供システムが実行する利用者情報の生成に関する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図10】第2実施形態の利用者端末の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の仮想空間コンテンツ提供システム100の概要図である。仮想空間コンテンツ提供システム(以下、コンテンツ提供システムとも記載する)100は、利用者における疾病の治療又は予防のための仮想空間コンテンツを提供するシステムである。コンテンツ提供システム100は、利用者の回想法の実施を支援するためのシステムとして好適に用いられる。
【0025】
回想法とは、懐かしい物や映像を見たり触れたりしながら、昔の経験や思い出を語り合う一種の心理療法である。回想法は、認知症をはじめ、統合失調症、うつ病や双極性障害などの気分障害、不安障害、慢性疲労、ストレス等の各種の疾病の進行予防や改善につながる効果があるとされている。コンテンツ提供システム100は、上述のような各種の疾病の治療又は予防のための回想法の実施に用いる仮想空間コンテンツを利用者に提供する。例えば、認知症の治療又は予防を目的とする場合、仮想空間コンテンツは、昔の街並み、昔の家庭内等を表す映像を含んでもよい。
【0026】
コンテンツ提供システム100は、利用者端末1と、ファシリテーター端末2と、コンテンツ提供装置3とを備える。コンテンツ提供装置3と、利用者端末1及びファシリテーター端末2それぞれとは、インターネット、LAN(Local Area Network)等のネットワークNを介して通信可能に接続されている。コンテンツ提供システム100は、複数台の利用者端末1及びファシリテーター端末2を含んでもよい。
【0027】
利用者端末1は、本システムを利用する利用者に用いられる情報処理端末である。利用者端末1は、コンテンツ提供装置3から出力された仮想空間コンテンツを利用者に提供する。仮想空間コンテンツとは、例えば、VR(Virtual Reality)、AR(Augmented Realty)、MR(Mixed Reality)等を含む仮想空間に係るコンテンツである。本実施形態では、VR空間を表す画像(VR画像)を利用者に提供する例を説明する。VR画像は静止画像又は動画像のいずれであってもよい。利用者は、利用者端末1を用いて例えば昔の街並みのVR空間を体験しながら、ファシリテーター又は他の利用者に自身の過去を話すことができる。利用者端末1は、例えば利用者の自宅、介護施設、病院等に設置される。
【0028】
ファシリテーター端末2は、利用者の回想法をファシリテートするファシリテーターに用いられる情報処理端末である。ファシリテーター端末2は、ファシリテーターの利用に供する利用部に対応する。ファシリテーターとは、本システムを実施する際、すなわち回想法を実施する際、利用者を先導して支援する人を意味する。ファシリテーターは、例えば、支援者、ガイド、案内役、介助者、司会、リーダー、セラピスト、補助者、ライフパートナー等とも称される。ファシリテーター端末2は、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等である。ファシリテーター端末2は、コンテンツ提供装置3から出力されたVR画像、及び利用者の状態に関する情報をファシリテーターに提供する。ファシリテーターは、ファシリテーター端末2を用いて、利用者の状態及び利用者に提供されているVR画像と同様のVR画像を確認しながら、利用者のコンテンツ提供システム100の利用を補助する。ファシリテーター端末2は、利用者端末1と同じ施設に設置されてもよく、利用者端末1とは離れた場所に設置されてもよい。
【0029】
コンテンツ提供装置3は、例えば、サーバコンピュータ、パーソナルコンピュータ、量子コンピュータ等であり、様々の情報処理、情報の送受信が可能である。コンテンツ提供装置3は、回想法のためのVR画像を利用者端末1及びファシリテーター端末2それぞれに出力する。コンテンツ提供装置3は、利用者端末1と同じ施設に設置されたローカルコンピュータであってもよく、インターネット等を介して利用者端末1に通信接続されたクラウドコンピュータであってもよい。コンテンツ提供装置3は、利用者端末1又はファシリテーター端末2のいずれかに統合されていてもよい。
【0030】
図1に示すように、利用者端末1は、VR画像を表示する表示部14、利用者の操作を受け付ける操作部15、VR画像に連動した刺激を出力する出力部16、利用者の生体情報を検出する検出部17等を備える。
【0031】
表示部14は、例えばゴーグル型の表示装置であり、右目用の画像及び左目用の画像を表示するモニタ141を備える。モニタ141としては、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイ装置を用いることができる。表示部14は、後述する制御部11からの指示に従い、画像をモニタ141に表示する。利用者の各目がそれぞれの画像を視認すると、利用者は、両目の視差に基づき当該画像を3次元のVR画像として認識し得る。
【0032】
本実施形態の表示部14は、天吊り式として構成される。
図1に示す例にて、表示部14は、下に向かって略コの字状のフレーム142と、フレーム142の上部に設けられた吊線143,143とを備え、モニタ141の左右上部が吊線143,143に取り付けられることにより、フレーム142に支持される。モニタ141の左右下部は、弾性を有する支持部材144,144により、フレーム142に対して可動自在に取り付けられている。
【0033】
表示部14は、例えば机上に載置され、支持機構としてのフレーム142に吊り下げ状態で使用される。利用者は、椅子に座り、フレーム142に吊り下げされたモニタ141を覗き込むようにしてVR画像を視認する。利用者は、モニタ141に表示されるVR画像を視認すると、仮想空間に没入することができる。利用者の没入感を高めるため、表示部14の周囲に暗幕のような仕切りを設けてもよい。利用者の頭部の重さにより、利用者の目の周りがモニタ141に覆われた状態を自然に保つことができ、利用者に負担をかけることなく姿勢を維持することができる。
【0034】
操作部15は、例えば、ジョイスティック、トラックボール、スイッチ、ボタン、マウスやキーボード、タッチパネル等の入力インタフェースを備える。操作部15は、表示部14により表示されたVR空間内における移動又は所定動作に係る操作の入力を受け付ける。操作部15は、マイク等の音声入力装置を備え、入力される音声によって操作の入力を受け付けてもよい。操作部15は、利用者からの操作入力を受け付け、操作内容に応じた制御信号を制御部11へ送出する。
【0035】
出力部16は、利用者の嗅覚、聴覚、触覚、味覚及び皮膚感覚の少なくとも1つを刺激する刺激情報を出力する。出力部16は、例えば、温熱を出力する温熱発生装置、気流を出力する気流発生装置、香りを出力する香り発生装置、振動を出力する振動発生装置、音を出力する音声発生装置等を備え、温熱、気流、香り、振動及び音の少なくとも1つを出力する。振動は、接触による物理的刺激の一例である。出力部16は、制御部11からの指示に従い、VR画像の表示に連動させて、各種刺激情報を出力する。出力部16は、利用者の身体あるいは衣類の一部に装着可能に構成されてもよい。本実施形態では一例として、香料噴霧器を備え、香料による香りを出力する出力部16を示す。
【0036】
検出部17は、VR体験中の利用者の生体情報を検出するための検出装置を備える。検出部17の備える検出装置としては、例えば、カメラ(画像センサ)、動作センサ(例えばジャイロセンサ、加速度センサ、方位センサ、レーザセンサ等)、視線センサ、瞳孔センサ、心拍センサ、脈拍センサ、脳波センサ、筋電位センサ、温度センサ、音声センサ等を含んでよい。検出部17は、複数種類の検出装置を備えてもよい。検出部17は、例えばモニタ141と一体化されていてもよく、フレーム142に取り付けられていてもよく、利用者の身体あるいは衣類の一部に装着可能に構成されてもよい。検出部17は、検出した生体情報を制御部11へ送出する。
【0037】
検出部17により検出される生体情報とは、利用者の体の状態を示す情報であり、例えば顔、目、体動、心拍、脈拍、脳波、体温、発話等の情報を含む。顔の情報には、表情、筋肉の動き等が含まれてもよい。目の情報には、視線の動き、瞳孔の大きさ等が含まれてもよい。体動には、頭部の動き、腕又は手の動き等が含まれてもよい。
【0038】
図2は、利用者端末1の構成例を示すブロック図である。利用者端末1は、コンピュータであり、上述の表示部14、操作部15、出力部16及び検出部17に加えて、制御部11、記憶部12、及び通信部13を備える。
【0039】
制御部11は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置を備える。制御部11は、内蔵するROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)等のメモリ、クロック、カウンタ等を用い、各構成部を制御して処理を実行する。
【0040】
記憶部12は、例えばハードディスク、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)等の不揮発性メモリを備える。記憶部12は、制御部11が参照する各種コンピュータプログラム及びデータを記憶する。記憶部12は、VR画像の受信及び表示に関する処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム(コンピュータプログラム製品)を記憶している。
【0041】
通信部13は、ネットワークNを介した通信を実現する通信デバイスを備える。制御部11は、通信部13を介してコンテンツ提供装置3との間でデータを送受信する。
【0042】
制御部11、記憶部12及び通信部13は、例えばモニタ141を構成する筐体に内蔵されていてもよい。制御部11は、不図示の入出力インタフェース又は通信インタフェース等を介して、表示部14、操作部15、出力部16及び検出部17それぞれと有線又は無線により接続されてもよい。
【0043】
図3は、ファシリテーター端末2の構成例を示すブロック図である。ファシリテーター端末2は、コンピュータであり、制御部21、記憶部22、通信部23、表示部24、操作部25、及び撮像部26を備える。
【0044】
制御部21は、一又は複数のCPU、MPU、GPU等の演算処理装置を備える。制御部21は、内蔵するROM又はRAM等のメモリ、クロック、カウンタ等を用い、各構成部を制御して処理を実行する。記憶部22は、例えばハードディスク、フラッシュメモリ、SSD等の不揮発性メモリを備える。記憶部22は、制御部21が参照する各種コンピュータプログラム及びデータを記憶する。記憶部22は、VR画像の受信及び表示に関する処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム(コンピュータプログラム製品)を記憶している。通信部23は、ネットワークNを介した通信を実現する通信デバイスを備える。制御部21は、通信部23を介してコンテンツ提供装置3との間でデータを送受信する。
【0045】
表示部24は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等のディスプレイ装置を備える。表示部24は、制御部21からの指示に従い、VR画像を含む各種情報を表示する。操作部25は、ファシリテーターの操作を受け付けるインタフェースであり、例えばキーボード、マウス、ディスプレイ内蔵のタッチパネルデバイス等を含む。操作部25は、ファシリテーターからの操作入力を受け付け、操作内容に応じた制御信号を制御部21へ送出する。
【0046】
撮像部26は、ファシリテーターのファシリテーター画像を撮像するための撮像装置であり、例えばカメラである。カメラは、静止画又は動画像である画像データを生成する。生成される画像データには、ファシリテーターの発話を検出した音声ファイルが合成されていてもよい。
【0047】
図4は、コンテンツ提供装置3の構成例を示すブロック図である。コンテンツ提供装置3は、コンピュータであり、制御部31、記憶部32、及び通信部33を備える。コンテンツ提供装置3は複数のコンピュータからなるマルチコンピュータであってもよく、ソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシンであってもよい。
【0048】
制御部31は、一又は複数のCPU、MPU、GPU等の演算処理装置を備える。制御部31は、内蔵するROM又はRAM等のメモリ、クロック、カウンタ等を用い、各構成部を制御して処理を実行する。
【0049】
記憶部32は、例えばハードディスク、フラッシュメモリ、SSD等の不揮発性メモリを備える。記憶部32は、制御部31が参照する各種コンピュータプログラム及びデータを記憶する。記憶部32は、VRコンテンツの提供に関する処理をコンピュータに実行させるためのプログラム3Pと、このプログラム3Pの実行に必要なデータとしての管理DB(Data Base:データベース)321とを記憶している。
【0050】
プログラム3Pを含むコンピュータプログラム(コンピュータプログラム製品)は、当該コンピュータプログラムを読み取り可能に記録した非一時的な記録媒体3Aにより提供されてもよい。記憶部32は、不図示の読出装置によって記録媒体3Aから読み出されたコンピュータプログラムを記憶する。記録媒体3Aは、例えば磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等である。また、通信ネットワークに接続されている外部サーバからコンピュータプログラムをダウンロードし、記憶部32に記憶させてもよい。プログラム3Pは、単一のコンピュータプログラムでも複数のコンピュータプログラムにより構成されるものでもよく、また、単一のコンピュータ上で実行されても通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されてもよい。
【0051】
通信部33は、ネットワークNを介した通信を実現する通信デバイスを備える。制御部31は、通信部33を介して利用者端末1及びファシリテーター端末2との間でデータを送受信する。
【0052】
図5は、管理DB321に記憶される情報の内容例を示す図である。管理DB321は、VRコンテンツを管理するための情報を記憶するデータベースである。管理DB321は、コンテンツテーブル3211及び履歴テーブル3212を含む。
【0053】
コンテンツテーブル3211には、例えばコンテンツID、コンテンツデータ及び刺激情報等の情報を紐付けたレコードが格納されている。コンテンツIDは、コンテンツ提供装置3により提供されるVRコンテンツを識別する識別情報である。コンテンツデータは、VRコンテンツのデータである。刺激情報は、VRコンテンツとともに出力される刺激に関する情報であり、例えば刺激を出力するタイミングを示すフレーム番号と、刺激の種類を含む。フレーム番号は、動画像としてのVRコンテンツデータにおけるフレーム番号である。刺激情報が所定条件に応じて出力されるよう本システムを構成する場合には、当該所定条件を刺激情報列に格納してもよい。所定条件は、例えばVR空間内の植物に触れる、ドアを開くなど、VR空間内における所定動作の検出であってもよい。
【0054】
履歴テーブル3212には、例えば提供日時、コンテンツID、利用者ID、ファシリテーターID、生体情報、検出日時、移動履歴、及び評価スコア等の情報を紐付けたレコードが格納されている。提供日時は、VRコンテンツが提供された日時を表わす。コンテンツIDは、提供されたVRコンテンツの識別情報である。利用者ID及びファシリテーターIDは、VRコンテンツの提供を受けた利用者及びファシリテーターの識別情報である。
【0055】
生体情報及び検出日時は、VRコンテンツの提供時に取得した利用者の生体情報及び当該生体情報の検出日時である。生体情報は、時系列データとして格納されてもよい。複数種類の生体情報が検出された場合、生体情報の種類毎に時系列順で格納されてもよい。生体情報には、生体情報が検出された時点のVRコンテンツを表す情報(例えばフレーム番号)が対応付けられていてもよい。
【0056】
移動履歴は、VR空間内における利用者の移動履歴を表わす。移動履歴は、例えば操作部15の操作データ、又は検出部17の検出データに基づきコンテンツ提供装置3が自動的に収集する。移動履歴は、それら操作データ又は検出データを含んでもよく、あるいは操作データ又は検出データに応じたVR空間上の歩行履歴を含んでもよい。歩行履歴はマップ形式等の態様で記憶されてもよい。
【0057】
評価スコアは、利用者の空間認識能力の評価スコアである。評価スコアは、VR空間の体験を通じて、利用者の三次元空間における位置、形状、方向、大きさ、位置関係等の認識力を評価することにより取得される。評価スコアは、例えばVR画像を視認している利用者の頭部の動き、視線の動き、手の動き等のトラッキングに基づきコンテンツ提供装置3が自動的に判定する。評価スコアは、外部の判定装置から受け付けた判定結果を記憶してもよい。
【0058】
上述のように構成されるコンテンツ提供システム100を用いて、回想法が実施される。コンテンツ提供装置3は、利用者端末1及びファシリテーター端末2それぞれにVR画像を提供する。コンテンツデータは、ストリーミング形式で配信されてもよい。コンテンツ提供装置3は、例えば回想法の実施に際し、予め利用者端末1を通じた利用者IDによるログイン及びファシリテーター端末2を通じたファシリテーターIDによるログインを受け付け、同一グループに属する利用者及び利用者端末1と、ファシリテーター及びファシリテーター端末2とを特定してもよい。
【0059】
図6は、利用者端末1の表示部14に表示される画面の一例を示す模式図である。利用者端末1の制御部11は、コンテンツ提供装置3から送信される画面情報に基づいて、
図6に示す利用者画面40を表示部14に表示する。
【0060】
利用者画面40は、VR画像を表示するVR画像表示部41と、ファシリテーターの画像を表示するファシリテーター画像表示部42とを含む。
図6の例では、VR画像の左上にファシリテーター画像が重畳表示されている。VR画像表示部41に表示されるVR画像は、回想法の実施に用いられる画像であり、例えば昔の街並みを示すVR空間の画像である。ファシリテーター画像表示部42は、ファシリテーターの顔を含むファシリテーター画像を表示する。
【0061】
コンテンツ提供装置3は、管理DB321に記憶するコンテンツデータのうちのいずれかのコンテンツデータを選択し、選択したコンテンツデータをVR画像表示部41に表示させる。
【0062】
コンテンツ提供装置3は、利用者における表示部14の取り付け状態に応じて、VR画像の表示態様を変更してもよい。表示部14に利用者の顔を当てて使用する場合、使用開始時点において、表示部14が斜め下方向に傾く可能性が高い。従って、使用開始時点における表示部14の傾斜角度を考慮して、VR空間の水平軸を調整することが好ましい。コンテンツ提供装置3は、利用者端末1の検出部17を通じて検出された頭部の動きに基づき、使用開始時点における表示部14の傾斜角度を特定する。コンテンツ提供装置3は、特定した傾斜角度に応じてVR空間の水平面を傾ける画像処理を施した上で、VR画像をVR画像表示部41に表示させる。
【0063】
また、コンテンツ提供装置3は、ファシリテーターの顔を撮像したファシリテーター画像を取得し、取得したファシリテーター画像をファシリテーター画像表示部42に表示させる。コンテンツ提供装置3は、例えば、ファシリテーター端末2の撮像部26により撮像された、実空間におけるファシリテーターの顔を含む撮像画像を取得する。コンテンツ提供装置3は、取得した撮像画像を、ファシリテーター画像としてリアルタイムでファシリテーター画像表示部42に表示させる。このように、利用者画面40は、VR空間内において、利用者が視認可能な領域に、ファシリテーターの実空間画像を表示する。従って、利用者は、仮想空間の体験中であっても、常にファシリテーターの存在を認識することができる。なおファシリテーター画像は、少なくともファシリテーターの顔を含むものであればよく、ファシリテーターの上半身や全身の画像であってもよい。
【0064】
図6では、利用者画面40の左上にファシリテーター画像表示部42が配置される例を示したが、ファシリテーター画像表示部42は、VR画像の表示の妨げとならない位置であれば、適宜の位置に配置されてよい。また、ファシリテーター画像表示部42は、大きさ又は位置を変更可能に構成されてもよい。コンテンツ提供装置3は、例えば、ファシリテーターが発話状態にある場合には、ファシリテーター画像表示部42のサイズを大きくする、又はファシリテーター画像表示部42を中央寄りに配置する。これにより、利用者は、利用者画面40を通じてより明確にファシリテーターの状態を把握することができる。
【0065】
ファシリテーター画像表示部42は、ファシリテーターを撮像した撮像画像をリアルタイムで表示することが好ましいが、予め取得したファシリテーターの画像を表示する構成であってもよい。
【0066】
コンテンツ提供装置3はまた、ファシリテーター画像として、VR空間上にファシリテーターのアバターを表示させてもよい。ファシリテーター画像は、VR空間上で利用者の移動をガイドするガイド機能を有する。ファシリテーターのアバターは、例えばアバター表示される身体と、実空間の顔画像とを組み合わせたものであってもよい。コンテンツ提供装置3は、撮像部26により撮像された実空間のファシリテーターの撮像画像に基づいて、ファシリテーターの骨格の特徴量を反映したアバターの身体部分を生成する。コンテンツ提供装置3は、生成した身体部分と、撮像画像から抽出したファシリテーターの顔をと組み合わせることで、ファシリテーター画像を生成する。
【0067】
VR空間上におけるファシリテーター画像の表示位置は、ファシリテーターの操作に応じて変更されてもよい。ファシリテーターは、例えば利用者を誘導すべきVR空間内の場所付近にファシリテーター画像を表示させるよう、ファシリテーター端末2を操作する。コンテンツ提供装置3は、ファシリテーター端末2を通じてファシリテーター画像の表示位置の指定を受け付け、指定された表示位置にファシリテーター画像を表示させる。ファシリテーター画像により、利用者のVR空間の移動をナビゲートすることができる。
【0068】
複数人の利用者により回想法を実施する場合、利用者画面40はさらに、他の利用者の画像を表示する他利用者画像表示部を含んでもよい。他利用者画像表示部は、例えばファシリテーター画像表示部42の下側に配置されてもよい。コンテンツ提供装置3は、例えば、他の利用者端末1の検出部17により撮像された、実空間における他の利用者の顔を含む撮像画像を取得する。コンテンツ提供装置3は、取得した他の利用者の撮像画像を、利用者画像としてリアルタイムで他利用者画像表示部に表示させる。
【0069】
本実施形態のコンテンツ提供装置3は、VR画像に連動させて、利用者端末1の出力部16を通じて特定の香りを出力させる。コンテンツ提供装置3は、例えば、植物を含むVR画像フレームの表示タイミングに対応させて、当該植物の香りを出力させる出力指示を利用者端末1へ送信する。利用者端末1は、コンテンツ提供装置3から受信した出力指示に応じて、出力部16を駆動させ、植物の香りを噴霧させる。なお、刺激情報の出力指示は、刺激出力のタイミングで送信されるものに限らず、予めコンテンツデータに対応付けて送信されてもよい。
【0070】
図7は、ファシリテーター端末2の表示部24に表示される画面の一例を示す模式図である。ファシリテーター端末2の制御部21は、コンテンツ提供装置3から送信される画面情報に基づいて、
図7に示すファシリテーター画面50を表示部24に表示する。
【0071】
ファシリテーター画面50は、VR画像を表示するVR画像表示部51と、ファシリテーターの画像を表示するファシリテーター画像表示部52と、利用者に関する利用者情報を表示する利用者情報表示部53とを含む。利用者情報表示部53は、利用者の生体情報を表示する生体情報表示部531と、VR空間内の移動履歴を表示する移動履歴表示部532と、空間認識能力の評価スコアを表示するスコア表示部533とを含む。
図7の例では、利用者情報表示部53をVR画像表示部51の左側に並べて表示している。
【0072】
VR画像表示部51及びファシリテーター画像表示部52の表示内容は、利用者画面40におけるVR画像表示部41及びファシリテーター画像表示部42の表示内容と同様である。すなわちコンテンツ提供装置3は、回想法を実施する利用者の利用者端末1と、利用者に対するファシリテーターのファシリテーター端末2とに対し、同じコンテンツデータ及びファシリテーター画像を提供する。なお、ファシリテーター画像表示部52は省略されてもよいが、ファシリテーター画面50においても利用者画面40と同様にファシリテーターの画像を表示することで、ファシリテーターが所定画角内に表示されているか否かを確認することができ、好適である。
【0073】
コンテンツ提供装置3は、利用者端末1の検出部17を通じて検出された生体情報を取得し、取得した生体情報を生体情報表示部531に表示させる。生体情報表示部531に表示される生体情報は、例えば、利用者の顔を撮像した利用者画像、利用者の心拍データ、利用者の視線データ等を含む。生体情報は、時系列的に表示されてもよい。
図7に示すように、例えば視線データのような所定種類の生体情報は、VR画像上に重畳表示されてもよい。利用者画像は、実空間における利用者の顔を含む撮像画像を用いてよい。
【0074】
生体情報表示部531に表示される生体情報は、生体情報に基づき導出される利用者の状態を含んでもよい。利用者の状態は、取得した生体情報に基づきコンテンツ提供装置3が自動的に判定してもよい。利用者の状態としては、例えば心拍データに基づく自律神経バランスが挙げられる。自律神経バランスは、ストレス指標であり、心拍データのパワースペクトル解析により得られる高周波(HF:Hi Frequency)成分と低周波(LF:Low Frequency)成分との比(LF/HF)を算出することで求められる。
【0075】
またコンテンツ提供装置3は、VR空間内における利用者の移動履歴を取得し、取得した移動履歴を例えばマップ形式で移動履歴表示部532に表示する。利用者は、利用者画面40にVR画像が表示されている状態において、操作部15によりVR画像の方向を操作することで、VR空間内を自由に移動(歩行)することができる。VR空間内における利用者の移動は、例えば利用者の頭部又は視線等の動きを示す生体情報に基づき実現されてもよい。例えば、VR画像における同一領域を所定時間以上連続して視認していた場合、当該領域の方向へ移動させる構成であってもよい。コンテンツ提供装置3は、このような操作データ又は検出データに基づきVR空間内における移動履歴を導出し、移動履歴表示部532に表示させる。
【0076】
またコンテンツ提供装置3は、利用者の空間認識能力の評価スコアを取得し、取得した評価スコアをスコア表示部533に表示する。コンテンツ提供装置3は、例えば所定のVR画像を視認している利用者の頭部の動き、視線の動き、手の動き等と、基準動作情報とを比較することにより、空間認識能力を評価してもよい。コンテンツデータは、空間認識能力の評価に適した動作を促す画像や音声を含んでもよい。ファシリテーターは、利用者に対し、空間認識能力の評価に適した動作を促す声かけを行ってもよい。
【0077】
ファシリテーター画面50はさらに、
図7に示すように、刺激情報の出力要求を受け付ける受付部54を含んでもよい。ファシリテーターは、受付部54を利用して、任意のタイミングで刺激情報の出力を要求することができる。受付部54を通じて受け付けた刺激情報の出力要求は、ファシリテーター端末2からコンテンツ提供装置3へ送信される。コンテンツ提供装置3は、ファシリテーター端末2から受信した出力要求に応じて、利用者端末1に、刺激情報の出力指示を送信する。複数種類の刺激が用意されている場合には、受付部54は、出力すべき刺激の種類の選択を受け付け可能に構成されてもよい。
【0078】
なお利用者情報表示部53は、VR画像の表示の妨げとならない位置であれば、適宜の位置に配置されてよい。利用者情報表示部53に表示される情報は、各種データの取得に応じて随時更新されることが好ましい。複数の利用者を含むグループで回想法が実施されている場合、コンテンツ提供装置3は、複数の利用者それぞれに対応付けて、複数の利用者情報表示部53を生成し、ファシリテーター画面50に表示してもよい。
【0079】
利用者は、VR画像を視認しながら、VR画像に関連する経験や思い出を語ることで、回想法を実施する。ファシリテーターは、利用者の状態を確認しながら、利用者の回想法の実施を補助する。
【0080】
図8は、コンテンツ提供システム100が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。以下の各フローチャートにおける処理は、コンテンツ提供装置3の記憶部32に記憶するプログラム3Pに従って制御部31により実行されてもよく、制御部31に備えられた専用のハードウェア回路(例えばFPGA又はASIC)により実現されてもよく、それらの組合せによって実現されてもよい。
【0081】
コンテンツ提供装置3の制御部31は、VR画像の提供対象となる利用者の利用者ID及びファシリテーターのファシリテーターIDを取得する(ステップS11)。制御部31は、例えば利用者端末1における利用者のアカウント情報を用いたログイン操作と、ファシリテーター端末2におけるファシリテーターのアカウント情報を用いたログイン操作とを受け付けることにより、利用者ID及びファシリテーターIDを取得する。
【0082】
制御部31は、管理DB321を参照して、提供対象となるコンテンツデータを取得する(ステップS12)。制御部31は、管理DB321に記憶する複数のコンテンツデータの中からランダムに提供すべきコンテンツデータを抽出してもよく、ファシリテーター端末2を通じてファシリテーターの選択を受け付けることにより、提供すべきコンテンツデータを特定してもよい。
【0083】
制御部31は、ファシリテーター端末2からファシリテーターの撮像画像を受信する(ステップS13)。以降、制御部31は、所定間隔で撮像画像の受信を繰り返し実行する。
【0084】
制御部31は、利用者端末1から利用者の生体情報を受信し(ステップS14)、受信した生体情報を管理DB321に記憶する(ステップS15)。以降、制御部31は、所定間隔で生体情報の受信を繰り返し実行する。
【0085】
制御部31は、利用者画面及びファシリテーター画面を生成する(ステップS16)。具体的には、制御部31は、コンテンツデータに応じたVR画像と、ファシリテーターの撮像画像に応じたファシリテーター画像とを含む利用者画面を生成する。また制御部31は、コンテンツデータに応じたVR画像と、利用者の生体情報に応じた利用者画像、心拍データ等の利用者情報とを含むファシリテーター画面を生成する。
【0086】
制御部31は、生成した利用者画面を利用者端末1に送信するとともに、ファシリテーター画面をファシリテーター端末2に送信する(ステップS17)。利用者端末1の制御部11は、コンテンツ提供装置3から送信される利用者画面を受信し、受信した利用者画面を表示部14に表示する。ファシリテーター端末2の制御部21は、コンテンツ提供装置3から送信されるファシリテーター画面を受信し、受信したファシリテーター画面を表示部24に表示する。
【0087】
制御部31は、管理DB321に記憶する情報に基づいて、刺激情報を出力するか否かを判定する(ステップS18)。予め設定された刺激情報の出力タイミングでないことにより、刺激情報を出力しないと判定した場合(ステップS18:NO)、制御部31は、処理を終了する。
【0088】
予め設定された刺激情報の出力タイミングであることにより、刺激情報を出力すると判定した場合(ステップS18:YES)、制御部31は、所定の刺激に係る刺激情報の出力指示を利用者端末1に送信する(ステップS19)。利用者端末1の制御部11は、コンテンツ提供装置3から送信される刺激情報の出力指示を受信し、受信した刺激情報の出力指示に応じて出力部16に出力指示を出力し、刺激情報を出力させる。ステップS18において制御部31は、ファシリテーター端末2を通じて刺激情報の出力要求を受け付けたか否かを判定することにより、刺激情報の出力要否を判定してもよい。
【0089】
制御部31は、上述のステップS13からステップS17の処理を繰り返し実行し、新たなファシリテーターの撮像画像及び利用者の生体情報を受信する度、画面情報を更新する。
【0090】
図9は、コンテンツ提供システム100が実行する利用者情報の生成に関する処理手順の一例を示すフローチャートである。コンテンツ提供装置3の制御部31は、例えばVR画像の提供開始後、適宜の間隔で以下の処理を実行する。
【0091】
コンテンツ提供装置3の制御部31は、例えば利用者端末1から受け付けた操作部15の操作データ又は生体情報に基づいて、VR空間内における利用者の移動履歴を取得する(ステップS21)。
【0092】
制御部31は、評価部としての機能により、利用者端末1から受け付けた所定の生体情報に基づいて、利用者の空間認識能力の評価スコアを取得する(ステップS22)。制御部31は、取得した移動履歴及び評価スコアと、利用者端末1へ出力したコンテンツデータとを対応付けて、管理DB321に記憶する(ステップS23)。
【0093】
制御部31は、取得した利用者の移動履歴及び評価スコアに基づいて、利用者情報の更新情報を含むファシリテーター画面を生成し、生成したファシリテーター画面をファシリテーター端末2に送信する(ステップS24)。
【0094】
上記では、各フローチャートにおける一連の処理をコンテンツ提供装置3の制御部31が実行する例を説明したが、各処理の処理主体は限定されない。各フローチャートにおける各処理は、利用者端末1で実行されてもよく、又はファシリテーター端末2で実行されてもよい。
【0095】
仮想空間の体験に不慣れなユーザは、機器の使用や仮想空間体験に不安を感じるおそれとともに、仮想空間の体験をやめてしまうおそれがある。したがって、ユーザの安心を担保した上で、脳を活性化せるプログラムに集中してもらうことが重要である。本実施形態に係るコンテンツ提供システム100等によれば、ユーザの安心を担保した上で、脳を活性化せるプログラムに集中させることができる。
【0096】
本実施形態に係るコンテンツ提供システム100等によれば、利用者に提供する仮想空間コンテンツと共にファシリテーター画像を表示させることにより、仮想空間を体験中の利用者にファシリテーターの存在を認識させることができ、利用者の安心感を向上させることができる。
【0097】
本実施形態に係るコンテンツ提供システム100等によれば、ファシリテーター画像を利用して、VR空間内でファシリテーターとコミュニケーション可能なため、ファシリテーターとのコミュニケーションのためにVR体験が中断されることを抑制し得る。例えば、VRを視聴するためのVR機器に不慣れな利用者においては、VR機器の操作方法の確認や使用状態を修正するため、VR体験の途中でVR機器から目を離すおそれがある。本実施形態によれば、VR体験を中断することなく、仮想空間内でのコミュニケーションにより問題を解決することができる。
【0098】
表示部14は、ヘッドバンドフリーなVR画像の視認を可能とする。ヘッドマウントディスプレイといったヘッドバンド装着型のVR機器と比べて、ヘッドバンドによる頭部の擦れや締め付けによる不快感を低減し、使用性を向上することができる。また、ヘッドバンドの装着が不要なため、VR体験の開始及び終了が容易となる。
【0099】
表示部14に表示されるVR画像を通じた視覚刺激に加えて、出力部16により他の感覚に刺激を与えるための刺激情報を出力することで、回想法の効果をより向上し得る。また操作部15を通じて利用者の仮想空間における移動を受け付け可能なため、利用者に即したVR画像の提供が可能となり、VR画像を用いた回想法の効果を向上し得る。
【0100】
ファシリテーターに提供する仮想空間コンテンツと共に利用者情報を表示させることにより、仮想空間を体験中の利用者の状態をファシリテーターが容易且つ正確に把握することができる。ファシリテーターは、利用者の状態を確認しながら、利用者の利用者端末1の使用及び回想法の実施を好適に補助し得る。利用者の生体情報に加えて、利用者の移動履歴、評価スコアを表示させることで、利用者の状態をより詳しく把握することができる。VR画像に対応付けて、利用者の生体情報、移動履歴及び評価スコアを記録することで、利用者の回想法の実績を確認することができる。例えば、過去の回想法の実績に基づいて利用者が強く興味を示したコンテンツを特定し、特定結果に応じて次回のVRコンテンツを決定するといった処理が可能となる。
【0101】
本実施形態に係るコンテンツ提供システム100等においては、利用者端末1とファシリテーター端末2とが遠隔地にあってもよい。多様な生活環境下における利用者及びファシリテーターによるコンテンツ提供システム100の利用が可能となり、利便性が向上する。
【0102】
(第2実施形態)
第2実施形態では、利用者端末1の表示部14が抱き枕式である構成を説明する。以下の実施形態では主に第1実施形態との相違点を説明し、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0103】
図10は、第2実施形態の利用者端末1の構成例を示す図である。
図2に示すように、利用者端末1の表示部14は、抱き枕式として構成されている。
【0104】
表示部14は、表示部14本体の外殻を成す筐体147と、当該筐体147を覆うカバー148とを備える。筐体147内に、VR画像を利用者に表示するための表示器145及び光学系146が収容されている。表示部14は、筐体147にカバー148を取り付けた状態で、仰向け姿勢における利用者の両目を覆うように顔面に載せて、使用される。カバー148は、例えば動物を模したぬいぐるみ状をなす。カバー148には、不図示の開口が形成されており、当該開口から筐体147の底面の一部が露呈する。筐体147の底面とは、表示部14の使用時において、下側(利用者の顔面方向)に向く面を意味する。
【0105】
筐体147における底面の少なくとも一部であって、上述したカバー148の開口から露呈する部分には、筐体147の内部を視認可能な開口部(露出窓)149が形成されている。開口部149は、VR画像に係る虚像を作る光を通過させる領域として機能する。利用者は、仰向け状態において、カバー148から露呈する筐体147の開口部149が目に正対するよう、表示部14を顔に載置する。開口部149は、例えば利用者の両目間の中点を中心とし視線方向に垂直な円又は矩形の形状を有してもよい。なお、筐体147は、底面の少なくとも一部を光透過性部材により形成することで、筐体147の内部を視認可能に構成されてもよい。
【0106】
表示器145は、例えばバックライト付きの液晶ディスプレイ、自発光デバイス等であり、表面の表示面1451から表示光を照射する。光学系146は、表示光の光路に沿って表示面1451側から順に、平面ミラー1461、フレネルレンズ1462、及びハーフミラー1463を備える。平面ミラー1461及びハーフミラー1463は、表示光の光路を変向する。変向とは、進行方向を変えることを意味する。平面ミラー1461及びハーフミラー1463は、反射光学素子として機能する。フレネルレンズ1462は、表示光を反射屈折させて、表示光の進路を調整する。表示面1451から照射された表示光のほぼ全部を利用者の両目位置の変域内に通過させるように、フレネルレンズ1462の大きさ及びフレネルレンズ1462による表示光の光線方向の角度値を設定することが好ましい。
【0107】
表示器145から出射され、平面ミラー1461により変向された表示光は、表示光を反射屈折するフレネルレンズ1462を通過する。フレネルレンズ1462を通過後、表示光はハーフミラー1463で変向され、反射画像光となって、開口部149を通過し利用者の両目に入る。利用者は、虚像を両目で視認することで、当該虚像を3次元のVR画像として認識し得る。
【0108】
平面ミラー1461及びハーフミラー1463は、筐体147内における表示器145及びフレネルレンズ1462の位置に応じて、筐体147内における位置及び角度を適宜調整されるとよい。
図10に示す例では、平面ミラー1461及びハーフミラー1463が光軸に対して略45度回転させた状態で配置されている。なお、表示光の変向が不要である場合には、平面ミラー1461及びハーフミラー1463の少なくとも一方は省略してもよい。反射光学素子は平面ミラー1461に限らず、例えば凹ミラー又は凸ミラーであってもよい。
【0109】
筐体147の内部又は外部にはまた、
図10に示すように、一又は複数の検出部17が設けられていてもよい。利用者端末1が検出部17としてのカメラを有する場合、筐体147内においてハーフミラーの背面にカメラを設置してもよい。
【0110】
本実施形態によれば、利用者端末1を一体装置化された可搬型の抱き人形式とすることで、利用者端末1の簡便性を向上することができる。抱き人形式とすることで、利用者端末1の装飾性や携帯性、愛着性を高め、幅広い年齢層の利用者に対し、使用に対する抵抗感を低減し得る。
【0111】
本実施形態によれば、筐体147内に平面ミラー1461及びハーフミラー1463を設け、この平面ミラー1461及びハーフミラー1463によって光学系の光軸を二回折り曲げることにより、筐体147の小型化を図ることができる。さらに、フレネルレンズ1462によって表示光の変向を調整することにより、限られたサイズで精度良く受光することができ、筐体147の省スペース化を図ることができる。
【0112】
本実施形態によれば、一枚の大判なフレネルレンズ1462を用いることで、利用者の頭や目の位置ズレに対する像の乱れを抑制し、頑健性を向上することができる。利用者における目の位置合わせの負担を低減し、使用性を向上し得る。
【0113】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
各実施形態に示すシーケンスは限定されるものではなく、矛盾の無い範囲で、各処理手順はその順序を変更して実行されてもよく、また並行して複数の処理が実行されてもよい。各処理の処理主体は限定されるものではなく、矛盾の無い範囲で、各装置の処理を他の装置が実行してもよい。
【0114】
各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0115】
100 仮想空間コンテンツ提供システム
1 利用者端末
11 制御部
12 記憶部
13 通信部
14 表示部
15 操作部
16 出力部
17 検出部
2 ファシリテーター端末
21 制御部
22 記憶部
23 通信部
24 表示部
25 操作部
26 撮像部
3 コンテンツ提供装置
31 制御部
32 記憶部
33 通信部
321 管理DB
3P プログラム
3A 記録媒体