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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130170
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】電力システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20240920BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240920BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240920BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J13/00 311R
H02J3/38 110
H02J3/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039735
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】大堀 彰大
(72)【発明者】
【氏名】花尾 隆史
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064CB12
5G064DA07
5G066HB06
5G066HB09
5G066JB03
(57)【要約】
【課題】処理装置の演算負荷を低減することができる電力システムを提供する。
【解決手段】電力システムS1は、各々に電力機器Xが接続され、接続された電力機器Xの出力制御を行う複数の電力制御装置B1と、複数の電力制御装置B1と通信可能な処理装置A1と、を備える。処理装置A1は、調整対象電力を取得する第1取得部11と、目標電力を取得する第2取得部12と、調整対象電力および目標電力を用いて制御情報を生成する生成部13と、制御情報を送信する送信部15とを含む。複数の電力制御装置B1の各々は、制御情報を受信する受信部21と、制御情報を用いて誘導指令値を算出する第1算出部22と、接続される電力機器Xの出力電力の目標値である機器目標を誘導指令値を用いて算出する第2算出部23と、接続される電力機器Xの出力電力が機器目標となるように当該電力機器Xを制御する電力制御部24と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々に電力機器が接続され、接続された電力機器の出力制御を行う複数の電力制御装置と、
前記複数の電力制御装置と通信可能な処理装置と、
を備え、
前記処理装置は、調整対象電力を取得する第1取得部と、目標電力を取得する第2取得部と、前記調整対象電力および前記目標電力を用いて制御情報を生成する生成部と、前記制御情報を前記複数の電力制御装置の各々に送信する送信部とを含み、
前記複数の電力制御装置の各々は、前記制御情報を受信する受信部と、前記制御情報を用いて誘導指令値を算出する第1算出部と、接続される前記電力機器の出力電力の目標値である機器目標を前記誘導指令値を用いて算出する第2算出部と、接続される前記電力機器の出力電力が前記機器目標となるように当該電力機器を制御する電力制御部と、を含む、電力システム。
【請求項2】
前記生成部は、前記調整対象電力と前記目標電力との差を、前記制御情報として生成する、請求項1に記載の電力システム。
【請求項3】
前記生成部は、前記調整対象電力と前記目標電力とを、前記制御情報として生成する、請求項1に記載の電力システム。
【請求項4】
前記複数の電力制御装置の各々は、電力系統に接続されており、
前記第1取得部は、前記電力系統との接続点における接続点電力の計測値を、前記調整対象電力として取得する、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電力システム。
【請求項5】
前記複数の電力制御装置は、前記電力機器としての発電機器が接続されたものと、前記電力機器としての蓄電機器が接続されたものと、前記電力機器としての負荷が接続されたものとの、少なくともいずれか1つを含む、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統に接続された複数の電力制御装置を管理して、電力系統からの受電を制御する電力システムが普及しつつある。例えば、特許文献1には、複数の電力制御装置と処理装置とを備えた電力システムの一例が開示されている。処理装置は、所定の調整対象電力を目標電力に制御するための誘導指令値を算出する。各電力制御装置は、処理装置が算出した誘導指令値を用いて、分散的に出力電力を制御している。このとき、各電力制御装置は、誘導指令値を用いた最適化問題に基づいて、出力電力の目標値を算出する。そして、出力電力が当該目標値となるように、出力電力を制御する。このようにして、電力システムのエネルギー管理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-150690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電力システムでは、複数の電力制御装置の各々が、誘導指令値を用いて、個別に出力電力の目標値を算出する。これにより、処理装置で各電力制御装置の出力電力の目標値を算出する必要がないので、処理装置の演算負荷が低減される。このような電力システムであっても、処理装置の演算負荷を低減させる上で、未だ改善の余地があった。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、処理装置の演算負荷を低減することができる電力システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によって提供される電力システムは、各々に電力機器が接続され、接続された電力機器の出力制御を行う複数の電力制御装置と、前記複数の電力制御装置と通信可能な処理装置と、を備え、前記処理装置は、調整対象電力を取得する第1取得部と、目標電力を取得する第2取得部と、前記調整対象電力および前記目標電力を用いて制御情報を生成する生成部と、前記制御情報を前記複数の電力制御装置の各々に送信する送信部とを含み、前記複数の電力制御装置の各々は、前記制御情報を受信する受信部と、前記制御情報を用いて誘導指令値を算出する第1算出部と、接続される前記電力機器の出力電力の目標値である機器目標を前記誘導指令値を用いて算出する第2算出部と、接続される前記電力機器の出力電力が前記機器目標となるように当該電力機器を制御する電力制御部と、を含む。
【0007】
前記電力システムの好ましい実施の形態において前記生成部は、前記調整対象電力と前記目標電力との差を、前記制御情報として生成する。
【0008】
前記電力システムの好ましい実施の形態において、前記生成部は、前記調整対象電力と前記目標電力とを、前記制御情報として生成する。
【0009】
前記電力システムの好ましい実施の形態において、前記複数の電力制御装置の各々は、電力系統に接続されており、前記第1取得部は、前記電力系統との接続点における接続点電力の計測値を、前記調整対象電力として取得する。
【0010】
前記電力システムの好ましい実施の形態において、前記複数の電力制御装置は、前記電力機器としての発電機器が接続されたものと、前記電力機器としての蓄電機器が接続されたものと、前記電力機器としての負荷が接続されたものとの、少なくともいずれか1つを含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示の電力システムによれば、複数の電力制御装置の各々が誘導指令値を算出するので、処理装置は、誘導指令値を算出するための制御情報のみを生成して、各電力制御装置に送信するだけである。したがって、本開示の電力システムは、処理装置の演算負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の電力システムの全体構成例を示す図である。
図2図1に示す電力システムの処理装置、各電力制御装置および受電設備の詳細な構成例を示すブロック図である。
図3】変形例に係る電力システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の電力システムの好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。以下では、同一あるいは類似の構成要素に、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0014】
図1および図2は、一実施形態に係る電力システムS1を示している。電力システムS1は、図1に示すように、電力線90、処理装置A1、複数の電力制御装置B1および受電設備C1を備える。
【0015】
電力システムS1は、接続点Kを介して、電力系統Dに連系されている。電力システムS1は、電力系統Dから受電可能である。電力システムS1は、電力系統Dに送電可能(逆潮流できる)であってもよいし、送電不可能(逆潮流できない)であってもよい。本開示において、電力システムS1から電力系統Dに電力が出力されているとき、すなわち、逆潮流しているとき、接続点電力が正の値となるものとする。一方、電力系統Dから電力システムS1に電力が出力されているとき、接続点電力が負の値となるものとする。当該接続点電力とは、電力システムS1と電力系統Dとの接続点Kにおける電力のことである。
【0016】
電力システムS1は、処理装置A1と複数の電力制御装置B1とが協調して、調整対象電力が、当該調整対象電力の目標値(以下「目標電力」という)となるように、電力制御を行う。本実施形態では、接続点電力を、調整対象電力とする。つまり、電力システムS1は、接続点電力が目標電力となるように、電力制御を行う。電力システムS1が行う電力制御には、例えば、出力抑制制御、ピークカット制御、逆潮流回避制御およびスケジュール制御などがある。出力抑制制御では、電力会社から指示される出力抑制指令に従い、電力システムS1から電力系統Dに出力する電力(売電電力)を抑制する。ピークカット制御は、電力系統Dから供給される電力(買電電力)のピーク値を抑える。逆潮流回避制御では、逆潮流の発生を抑制する。スケジュール制御は、電力システムS1の出力電力を利用者によって設定された電力値にする。電力システムS1は、処理装置A1に設定される制御モードに応じて、これらの電力制御のいずれかを行う。
【0017】
電力負荷Lは、供給される電力を消費するものである。電力負荷Lは、電力系統Dや各電力制御装置B1から電力が供給される。電力負荷Lは、一般負荷と重要負荷とを含む。一般負荷は、例えば、災害時に電力が遮断されても、比較的影響が少ない電気機器であり、例えば、空調機器である。重要負荷は、災害時でも電力を継続して供給する必要性がある重要な負荷であり、例えば、非常用のエレベータ、連続運転が必要な電気機器および建屋の照明などである。
【0018】
電力線90は、電力システムS1における電力ネットワークを構築するものである。電力システムS1は、電力線90によって、電力系統Dに接続される。
【0019】
受電設備C1は、配電盤および分電盤を含んで構成されている。受電設備C1は、電力システムS1を電力系統Dに連系するための各種保護装置も含んでいる。例えば、電力システムS1が電力系統Dへの逆潮流を禁止されたシステムである場合、保護装置として、逆電力継電器を含む。受電設備C1は、電力系統D、各電力制御装置B1(後述の負荷制御装置20Eを除く)、および、電力負荷Lから、電力線90を介して入力される電力を受電する。受電設備C1は、受電した電力を、電力系統D、各電力制御装置B1(後述の負荷制御装置20Eを除く)、電力負荷Lなどに供給する。受電設備C1は、処理装置A1と通信可能である。
【0020】
受電設備C1は、図2に示すように、計測部31および通信部32を含む。計測部31は、電力システムS1と電力系統Dとの接続点Kに設置され、接続点電力を検出する。計測部31は、例えば電力トランスデューサである。通信部32は、計測部31の計測結果、すなわち、接続点電力の計測値を、処理装置A1に送信する。
【0021】
処理装置A1は、複数の電力制御装置B1が分散的に電力制御を行うための情報(後述の制御情報)を生成する。処理装置A1は、各電力制御装置B1および受電設備C1とそれぞれ通信可能である。この通信は、無線方式であってもよいし、有線方式であってもよい。処理装置A1は、図2に示すように、第1取得部11、第2取得部12、生成部13、受信部14および送信部15を含む。
【0022】
第1取得部11は、調整対象電力を取得する。本実施形態では、第1取得部11は、受信部14を介して、受電設備C1から接続点電力の計測値を受信することで、調整対象電力を取得する。
【0023】
第2取得部12は、目標電力を取得する。例えば、第2取得部12は、受信部14を介して、電力会社のコンピュータ(図示略)または処理装置A1の設定を入力するコンピュータ(図示略)から目標電力を受信することで、目標電力を取得する。あるいは、第2取得部12は、処理装置A1に設けられた記憶部(図示略)に記憶された目標電力を読み出すことで、目標電力を取得してもよい。第2取得部12は、処理装置A1に設定される制御モードに応じた目標電力を取得する。
【0024】
生成部13は、第1取得部11が取得した調整対象電力(接続点電力)と、第2取得部12が取得した目標電力とを用いて、制御情報を生成する。本実施形態では、生成部13は、調整対象電力(接続点電力)と目標電力との差を、制御情報として生成する。つまり、制御情報は、調整対象電力(接続点電力)と目標電力との差である差分値ΔPを含む。本実施形態では、差分値ΔPは、目標電力Pcから調整対象電力Pを減算した値(ΔP=Pc-P)である。
【0025】
受信部14は、受電設備C1との通信により、当該受電設備C1から接続点電力の計測値を受信する。また、受信部14は、先述の各コンピュータから目標電力を受信する。送信部15は、複数の電力制御装置B1との通信により、制御情報を送信する。送信部15は、複数の電力制御装置B1への制御情報の送信を、例えばブロードキャスト(一斉送信)で行うが、ユニキャストで送信してもよい。
【0026】
複数の電力制御装置B1はそれぞれ、受電設備C1に接続された電力機器Xに接続され、当該電力機器Xの出力制御を行う。なお、後に詳述される構成から理解されるように、複数の電力制御装置B1には、電力ネットワーク(電力線90)により電力機器Xが接続されるものと、通信ネットワークにより電力機器Xが接続されるものとがある。複数の電力制御装置B1はそれぞれ、処理装置A1と通信可能である。複数の電力制御装置B1は、太陽光パワーコンディショナ20A、蓄電池パワーコンディショナ20B、EVスタンド20C、発電機制御装置20Dおよび負荷制御装置20Eを含む。以下の説明および図示において、パワーコンディショナを「PCS」と略する。なお、太陽光パワーコンディショナ20A、蓄電池パワーコンディショナ20B、EVスタンド20C、発電機制御装置20Dおよび負荷制御装置20Eの数はそれぞれ、1つではなく、2つ以上であってもよい。
【0027】
太陽光PCS20Aには、制御対象の電力機器Xとして、太陽電池SCが接続される。図示された例では、1つの太陽光PCS20Aに、1つの太陽電池SCが接続されているが、複数の太陽電池SCが接続されていてもよい。太陽光PCS20Aは、接続された太陽電池SCが発電した電力(例えば直流電力)を、系統連系に適した電力(例えば交流電力)に変換して出力する。太陽光PCS20Aは、太陽電池SCが発電した電力を受電設備C1に出力する。太陽光PCS20Aは、太陽電池SCの発電量を制御することで、接続される太陽電池SCの出力電力の制御を行う。
【0028】
蓄電池PCS20Bには、制御対象の電力機器Xとして、蓄電池BTが接続される。図示された例では、1つの蓄電池PCS20Bに、1つの蓄電池BTが接続されているが、複数の蓄電池BTが接続されていてもよい。蓄電池BTは、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、鉛蓄電池などの二次電池であってもよいし、電気二重層コンデンサなどのコンデンサであってもよい。蓄電池PCS20Bは、接続された蓄電池BTの充放電を行う。蓄電池PCS20Bは、受電設備C1から入力される電力を、接続される蓄電池BTに供給することで、当該蓄電池BTの充電を行う。また、蓄電池PCS20Bは、接続される蓄電池BTに蓄積された電力を受電設備C1に出力することで、当該蓄電池BTの放電を行う。蓄電池PCS20Bは、接続される蓄電池BTの充電量および放電量を制御することで、当該蓄電池BTの出力電力の制御を行う。
【0029】
EVスタンド20Cには、制御対象の電力機器Xとして、電気自動車Vが接続される。図示された例では、1つのEVスタンド20Cに対して、1つの電気自動車Vが接続されていてもよいし、複数の電気自動車Vが接続されていてもよい。本開示における電気自動車Vとは、電動機を動力源として走行可能な自動車をいい、内燃機関が併設された自動車(例えばプラグインハイブリッド車)などを含む。なお、電動機は、電気自動車Vに備えられた蓄電池に蓄積された電力によって動作する。電気自動車Vは、エネルギー回生システムを搭載していてもよい。EVスタンド20Cは、接続された電気自動車Vの充放電(詳細には電気自動車Vに備えられた蓄電池の充放電)を行う。EVスタンド20Cは、受電設備C1から入力される電力を、接続される電気自動車Vに供給することで、当該電気自動車Vの充電を行う。また、EVスタンド20Cは、接続される電気自動車Vに蓄積された電力を受電設備C1に出力することで、当該電気自動車Vの放電を行う。EVスタンド20Cは、接続される電気自動車Vの充電量および放電量を制御することで、当該電気自動車Vの出力電力の制御を行う。なお、EVスタンド20Cは、電気自動車Vの充放電を行うものではなく、電気自動車Vの充電または放電のいずれか一方のみを行うものであってもよい。
【0030】
発電機制御装置20Dには、制御対象の電力機器Xとして、発電機EGが接続される。図示された例では、1つの発電機制御装置20Dに対して、1つの発電機EGが接続されているが、複数の発電機EGが接続されていてもよい。発電機EGは、例えば、石油、石炭、ガスなどの燃料がもつ熱エネルギーを機械的エネルギーに変換し、この機械的エネルギーによって発電するものである。なお、発電機EGは、太陽光以外の再生可能エネルギー(例えば、風力、水力、バイオマス、地熱など)を利用した発電装置であってもよい。太陽電池SCが太陽光エネルギーを直接電気エネルギーに変換するのに対して、発電機EGは、電気エネルギー以外のエネルギーを力学的エネルギーに変換した後、当該力学的エネルギーを電気エネルギーに変換する。発電機制御装置20Dは、接続された発電機EGが発電した電力を、系統連系に適した電力に変換して出力する。発電機制御装置20Dは、接続された発電機EGが発電した電力を受電設備C1に出力する。発電機制御装置20Dは、接続された発電機EGの発電量を制御することで、当該発電機EGの出力電力の制御を行う。
【0031】
負荷制御装置20Eには、制御対象の電力機器Xとして、電力負荷Lが接続される。なお、負荷制御装置20Eと電力負荷Lとは、例えば電力ネットワークではなく通信ネットワークにより接続される。負荷制御装置20Eは、受電設備C1に接続された電力負荷Lの制御を行う。負荷制御装置20Eは、例えば、ビル内エネルギー管理システム(BEMS)や工場内のエネルギー管理システム(FEMS)などである。図示された例では、負荷制御装置20Eは、1つの電力負荷Lを制御するが、複数の電力負荷Lを制御してもよい。負荷制御装置20Eは、電力負荷Lの消費電力を監視して、電力負荷Lの消費電力を調整する。なお、負荷制御装置20Eは、例えば、電力負荷Lのうちの先述の一般負荷の消費電力を制御するが、先述の重要負荷の消費電力も制御可能であってもよい。負荷制御装置20Eが行う電力負荷Lの消費電力の調整としては、例えば、電力負荷L(例えば一般負荷)のオンとオフとの切り替え、電力負荷Lが空調設備であれば風量の変更や設定温度の変更など、電力負荷Lが照明装置であれば調光制御などがある。電力負荷Lは、電力を消費する際に生じた、電気エネルギー以外のエネルギー(例えば熱エネルギーなど)を蓄積し、蓄積したエネルギーを電気エネルギーに変換する発電機構を備えていてもよい。この場合、電力負荷Lは、発電機構によって発電した電力を受電設備C1に出力可能である。負荷制御装置20Eは、電力負荷Lの消費電力を制御することで、電力負荷Lの出力電力(消費電力)の制御を行う。
【0032】
本開示において、複数の電力制御装置B1は、太陽光PCS20A、蓄電池PCS20B、EVスタンド20C、発電機制御装置20Dおよび負荷制御装置20Eのすべてを含む構成に限定されない。本開示の複数の電力制御装置B1は、電力機器Xとしての発電機器(上記太陽電池SCおよび上記発電機EGを含む)が接続されたもの、電力機器Xとしての蓄電機器(上記蓄電池BTおよび上記電気自動車Vを含む)が接続されたもの、あるいは、電力機器Xとしての負荷(電力負荷L)が接続されたものを少なくとも1つを含んでいればよい。例えば、複数の電力制御装置B1は、電力機器Xとしての発電機器が接続されたものだけを2つ含む構成であってもよい。同様に、複数の電力制御装置B1は、電力機器Xとしての蓄電機器が接続されたものだけを2つ含む構成であってもよいし、電力機器Xとしての負荷が接続されたものだけを2つ含む構成であってもよい。あるいは、複数の電力制御装置B1は、電力機器Xとしての発電機器が接続されたものと、電力機器Xとしての蓄電機器が接続されたものとを含む構成であってもよい。また、電力機器Xは、上記した5種類(太陽電池SC、蓄電池BT、電気自動車V、発電機EGおよび電力負荷L)に限定されない。
【0033】
複数の電力制御装置B1(太陽光PCS20A、蓄電池PCS20B、EVスタンド20C、発電機制御装置20Dおよび負荷制御装置20E)の各々は、図2に示すように、受信部21、第1算出部22、第2算出部23および電力制御部24を含む。以下で説明する受信部21、第1算出部22、第2算出部23および電力制御部24はそれぞれ、特段の断りがない限り、複数の電力制御装置B1(太陽光PCS20A、蓄電池PCS20B、EVスタンド20C、発電機制御装置20Dおよび負荷制御装置20E)の各々で共通する。
【0034】
受信部21は、処理装置A1との通信により、当該処理装置A1から制御情報(差分値ΔP)を受信する。受信部21が受信した制御情報は、第1算出部22に出力される。
【0035】
第1算出部22は、制御情報を用いて、誘導指令値を算出する。誘導指令値は、各電力制御装置B1が出力目標値を算出するための値である。例えば、第1算出部22には、下記(1)式および下記(2)式に示す状態方程式(連立微分方程式)を解くことで、誘導指令値pr(t)を算出する。下記(1)式および下記(2)式において、P(t)は調整対象電力、Pc(t)は目標電力、λ(t)は状態変数、pr(t)は誘導指令値、εは勾配係数である。本実施形態の第1算出部22は、下記(1)式および下記(2)式の演算におけるPc(t)-P(t)に、制御情報(差分値ΔP)を用いる。この状態方程式は、各電力制御装置B1に設定されている。本実施形態では、各電力制御装置B1の第1算出部22は、下記(1)式および下記(2)式が共通で設定されているため、各電力制御装置B1で算出される誘導指令値は、同じ値となる。つまり、誘導指令値は、各電力制御装置B1で分散的に算出されるが、算出される値は、複数の電力制御装置B1で共通する。第1算出部22は、誘導指令値の算出を所定時間(例えば1[sec])毎に行う。第1算出部22が算出した誘導指令値は、第2算出部23に出力される。
【数1】
【0036】
第2算出部23は、誘導指令値を用いた最適化問題に基づいて、対応する電力機器Xの出力電力の目標値(機器目標)を算出する。よって、誘導指令値は、機器目標を算出するための値である。この最適化問題は、評価関数と制約条件とを含む。当該評価関数は、例えば特許文献1に記載されたものと同じである。本実施形態では、第2算出部23は、特許文献1の記載と同様に、評価関数から導出される下記(3)式および下記(4)式の演算を行う。下記(3)式および下記(4)式において、Prefは電力制御装置B1の機器目標、prは誘導指令値、prlmtは誘導指令値限界、a1~a4はそれぞれ、設計パラメータである。誘導指令値限界prlmtおよび設計パラメータa1~a4は、特許文献1に記載されたものと同じである。そして、特許文献1の記載と同様に、その演算結果を制約条件によって補正することで、機器目標を算出する。制約条件は、特許文献1に記載された制約条件と同様である。これとは異なり、第2算出部23は、制約条件の下で評価関数を解くことで機器目標を算出してもよい。第2算出部23が算出した誘導指令値は、電力制御部24に出力される。
【数2】
【0037】
電力制御部24は、対応する電力機器Xの出力電力(以下「機器電力」という)が機器目標となるように当該電力機器Xの機器電力を制御する。太陽光PCS20Aの電力制御部24は、機器目標に基づいて、太陽電池SCの発電電力を制御する。蓄電池PCS20Bの電力制御部24は、機器目標に基づいて、蓄電池BTの充電電力および放電電力を制御する。本開示では、蓄電池PCS20Bの電力制御部24は、機器目標が正の値のとき、蓄電池BTを放電させ、機器目標が負の値のとき、蓄電池BTを充電する。EVスタンド20Cの電力制御部24は、機器目標に基づいて、電気自動車Vの充電電力および放電電力を制御する。本開示では、EVスタンド20Cの電力制御部24は、受信した機器目標が正の値のとき、電気自動車Vを放電させ、受信した機器目標が負の値のとき、電気自動車Vを充電する。発電機制御装置20Dは、機器目標に基づいて、発電機EGの発電電力を制御する。負荷制御装置20Eは、機器目標に基づいて、電力負荷Lの消費電力を制御する。
【0038】
以上のように構成された電力システムS1においては、処理装置A1は、調整対象電力(接続点電力)および目標電力を取得し、制御情報を生成する。そして、処理装置A1は、制御情報を、複数の電力制御装置B1の各々に送信する。各電力制御装置B1は、処理装置A1から制御情報を受信し、受信した制御情報を用いて、予め設定された状態方程式(上記(1)式および上記(2)式)により、誘導指令値を算出する。各電力制御装置B1は、算出した誘導指令値を用いて、予め設定された最適化問題に基づいて、制御対象の電力機器Xの機器目標を算出する。そして、制御対象の電力機器Xの出力電力が、機器目標となるように、出力電力の制御を行う。これより、電力システムS1は、調整対象電力(接続点電力)が目標電力となるように、電力制御を行っている。本実施形態においては、各電力制御装置B1によって算出される誘導指令値が大きいほど、接続点電力が小さくなり、誘導指令値が小さいほど、接続点電力が大きくなる。
【0039】
本開示の電力システムS1の作用および効果は、次の通りである。
【0040】
電力システムS1では、処理装置A1は、制御情報を生成して、生成した制御情報を複数の電力制御装置B1の各々に送信する。複数の電力制御装置B1の各々は、制御情報を受信し、受信した制御情報を用いて、誘導指令値を算出する。そして、算出した誘導指令値を用いて、機器目標を算出し、出力電力を制御する。この構成では、複数の電力制御装置B1の各々が、誘導指令値を算出する。このため、処理装置A1は、誘導指令値を算出するための制御情報のみを生成して、各電力制御装置B1に送信するだけである。したがって、電力システムS1は、特許文献1に記載の電力システムよりも、処理装置A1の演算負荷を低減できる。
【0041】
電力システムS1では、処理装置A1は、調整対象電力として、受電設備C1から接続点電力を取得する。この構成では、処理装置A1は、複数の電力制御装置B1の各々と個々(一対一)に通信することなく、制御情報を生成することができる。なお、処理装置A1が行う制御情報の送信は、各電力制御装置B1への一斉送信(ブロードキャスト)であり、電力システムS1の通信ネットワークに繋がる全ての電力制御装置B1に対して送信される。したがって、処理装置A1は、送信先の電力制御装置B1を指定して、制御装置を送信する必要がないため、電力制御装置B1の追加および削減を容易に行うことができる。したがって、電力システムS1は、システムの拡張性を高めることができる。
【0042】
上記実施形態では、生成部13は、調整対象電力と目標電力との差(差分値ΔP)を、制御情報として生成する。この構成と異なり、生成部13は、調整対象電力と目標電力とを、制御情報として生成してもよい。つまり、制御情報は、差分値ΔPではなく、調整対象電力と目標電力とを含むものであってもよい。この構成によれば、処理装置A1は、取得した調整対象電力(接続点電力)と目標電力とを、そのまま制御情報として、各電力制御装置B1に送信するだけである。したがって、本変形例に係る電力システムは、上記電力システムS1よりも処理装置A1の演算負荷をさらに低減することができる。
【0043】
上記実施形態では、処理装置A1は、調整対象電力として、接続点電力の計測値を用いる。この構成とは異なり、処理装置A1は、調整対象電力として、接続点電力の推算値を用いてもよい。図3は、このような変形例に係る電力システムS11を示している。電力システムS11は、電力システムS1と比較して、各電力制御装置B1が送信部25を含んでいる点で異なる。
【0044】
送信部25には、電力制御部24から、電力制御部24に接続された電力機器Xの出力電力の値が入力される。電力制御部24は、出力電力の制御において、出力電力の値を検出しているので、その値を送信部25に出力すればよい。送信部25は、入力された出力電力の値を処理装置A1に送信する。つまり、処理装置A1に、各電力機器Xの出力電力の値が送信される。処理装置A1は、複数の電力制御装置B1の各々から出力電力の値を受信し、受信した値の総和を、上記接続点電力の推算値として、算出する。そして、調整対象電力に、算出した接続点電力の推算値を用いる。
【0045】
電力システムS11から理解されるように、本開示の電力システムにおいては、調整対象電力は、接続点電力の計測値だけではなく、接続点電力の推算値とすることも可能である。なお、本開示の電力システムにおいて、処理装置A1は、設定される制御モードに応じて、調整対象電力に、接続点電力の計測値を用いるか接続点電力の推算値を用いるかを切り替えるようにしてもよい。
【0046】
本開示に係る電力システムは、上記した実施形態に限定されるものではない。本開示の電力システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0047】
S1,S11:電力システム、A1:処理装置、11:第1取得部、12:第2取得部、13:生成部、15:送信部、B1:電力制御装置、21:受信部、22:第1算出部、23:第2算出部、24:電力制御部、X:電力機器、SC:太陽電池(発電機器)、EG:発電機(発電機器)、BT:蓄電池(蓄電機器)、V:電気自動車(蓄電機器)、L:電力負荷(負荷)、D:電力系統、K:接続点
図1
図2
図3