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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130171
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/025 20060101AFI20240920BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240920BHJP
   B65H 20/08 20060101ALI20240920BHJP
   B41J 11/42 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B65H23/025
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B65H20/08
B41J11/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039736
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130535
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 明
(74)【代理人】
【識別番号】100183025
【弁理士】
【氏名又は名称】大角 孝一
(72)【発明者】
【氏名】山藤 宏之
(72)【発明者】
【氏名】甘利 朋紀
【テーマコード(参考)】
2C056
2C058
3F103
3F104
【Fターム(参考)】
2C056EB13
2C056EB36
2C056EB37
2C056EC12
2C056EC13
2C056EC28
2C056HA42
2C058AB18
2C058AC07
2C058AC11
2C058AD01
2C058AE04
2C058AE08
2C058AF06
2C058AF19
2C058GE22
3F103AA02
3F103BB02
3F103BB04
3F103EA15
3F104AA02
3F104BA02
3F104BA07
3F104BA10
3F104JA03
3F104JA07
3F104JB01
3F104JB05
3F104JD01
3F104JD20
(57)【要約】
【課題】前処理をしてから記録する媒体において、しわが発生した状態で前処理液の塗布が行われることを抑制する。
【解決手段】搬送ベルト5を有する媒体Mの搬送部20と、媒体Mにインクを吐出するインク吐出部101と、媒体Mにインク吐出部101からインクを吐出することに先立って媒体Mに前処理液を塗布する前処理液塗布部101と、搬送方向Aにおいて前処理液塗布部101の上流に配置され搬送ベルト5に媒体Mを押し付ける加圧ローラー6と、搬送方向Aにおいて加圧ローラー6の上流に配置され媒体Mのしわを伸ばすしわ伸ばしローラー30と、を備える記録装置1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ベルトを有する媒体の搬送部と、
前記媒体にインクを吐出するインク吐出部と、
前記媒体に前記インク吐出部から前記インクを吐出することに先立って前記媒体に前処理液を塗布する前処理液塗布部と、
前記媒体の搬送方向において前記前処理液塗布部の上流に配置され、前記搬送ベルトに前記媒体を押し付ける加圧ローラーと、
前記搬送方向において前記加圧ローラーの上流に配置され、前記媒体のしわを伸ばすしわ伸ばしローラーと、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、
制御部を備え、
前記制御部は、前記搬送部による前記媒体の搬送速度に基づいて、前記しわ伸ばしローラーの回転を制御することを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の記録装置において、
前記搬送部は、前記媒体を搬送する搬送動作と前記媒体の搬送を停止する停止動作とを繰り返すことで前記媒体を間欠搬送することが可能に構成され、
前記制御部は、前記間欠搬送の前記停止動作時の前記しわ伸ばしローラーの回転速度が前記搬送動作時の前記しわ伸ばしローラーの回転速度よりも遅くなるように前記しわ伸ばしローラーの回転を制御することを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項1に記載の記録装置において、
制御部と、前記媒体のしわの状態を検出する検出部と、を備え、
前記制御部は、前記検出部の検出結果に応じて、前記しわ伸ばしローラーの回転を制御することを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の記録装置において、
前記しわ伸ばしローラーの表面には、前記媒体に対して引っ掛かる引っ掛かり部が螺旋状に設けられていることを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の記録装置において、
前記媒体に対してテンションを付与するブレーキローラーを備え、
前記しわ伸ばしローラーは、前記ブレーキローラーを回転させることで回転するように前記ブレーキローラーに対して連結されていることを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載の記録装置において、
前記しわ伸ばしローラーは、前記搬送方向と交差する幅方向に複数並んで配置されることを特徴とする記録装置。
【請求項8】
請求項7に記載の記録装置において、
前記しわ伸ばしローラーのうちの少なくとも1つは、前記幅方向における位置を変更可能に構成されていることを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクの定着性を向上させることなどを目的として媒体に前処理を行うことがなされており、前処理が行われた媒体に記録する記録装置が使用されている。一方、近年、このような前処理を別の装置などで行う必要性をなくすため、前処理を行うことが可能な記録装置が開示されている。例えば、特許文献1には、往復移動可能なキャリッジに前処理液を吐出する前処理ヘッドが搭載されたインクジェット記録装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-183384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前処理を行うことが可能な従来の記録装置においては、これまで前処理と同様に別の装置で行っていたガミング処理と呼ばれる媒体の端部に糊付けすることで媒体の幅方向における端部のしわを解消する処理が行われないために、しわが発生した状態で前処理液の塗布が行われることがあった。しわが発生した状態で前処理液の塗布が行われると、前処理液の塗布ムラなどが発生し、所望の記録物が得られない虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の記録装置は、搬送ベルトを有する媒体の搬送部と、前記媒体にインクを吐出するインク吐出部と、前記媒体に前記インク吐出部から前記インクを吐出することに先立って前記媒体に前処理液を塗布する前処理液塗布部と、前記媒体の搬送方向において前記前処理液塗布部の上流に配置され、前記搬送ベルトに前記媒体を押し付ける加圧ローラーと、前記搬送方向において前記加圧ローラーの上流に配置され、前記媒体のしわを伸ばすしわ伸ばしローラーと、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施例1に係る記録装置の側面図。
図2図1の記録装置におけるしわ伸ばしローラーからキャリッジまでの間の領域を表す平面図であって、ヘッド内部を透視してノズル列の配置を表す図。
図3図1の記録装置におけるしわ伸ばしローラーを表す正面図。
図4図1の記録装置におけるしわ伸ばしローラーの引っ掛かり部周辺を表す正面断面図。
図5】本発明の実施例2に係る記録装置の側面図。
図6】本発明の実施例3に係る記録装置の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
最初に、本発明について概略的に説明する。
上記課題を解決するための本発明の第1の態様の記録装置は、搬送ベルトを有する媒体の搬送部と、前記媒体にインクを吐出するインク吐出部と、前記媒体に前記インク吐出部から前記インクを吐出することに先立って前記媒体に前処理液を塗布する前処理液塗布部と、前記媒体の搬送方向において前記前処理液塗布部の上流に配置され、前記搬送ベルトに前記媒体を押し付ける加圧ローラーと、前記搬送方向において前記加圧ローラーの上流に配置され、前記媒体のしわを伸ばすしわ伸ばしローラーと、を備えることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、搬送方向においてインク吐出部及び前処理液塗布部の上流に、媒体のしわを伸ばすしわ伸ばしローラーを備える。このため、前処理をしてから記録する媒体において例えしわが発生したとしても、しわ伸ばしローラーで前処理液の塗布や記録の前にしわを伸ばすことができ、しわが発生した状態で前処理液の塗布や記録が行われることを抑制することができる。
【0009】
本発明の第2の態様の記録装置は、前記第1の態様に従属する態様において、制御部を備え、前記制御部は、前記搬送部による前記媒体の搬送速度に基づいて、前記しわ伸ばしローラーの回転を制御することを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、制御部は搬送部による媒体の搬送速度に基づいてしわ伸ばしローラーの回転を制御する。媒体の搬送速度に拘らずしわ伸ばしローラーを速い回転速度で回転させ続けるなどすると媒体に損傷を与える虞を生じるが、このような制御をすることで、媒体に損傷を与える虞を抑制することができる。
【0011】
本発明の第3の態様の記録装置は、前記第2の態様に従属する態様において、前記搬送部は、前記媒体を搬送する搬送動作と前記媒体の搬送を停止する停止動作とを繰り返すことで前記媒体を間欠搬送することが可能に構成され、前記制御部は、前記間欠搬送の前記停止動作時の前記しわ伸ばしローラーの回転速度が前記搬送動作時の前記しわ伸ばしローラーの回転速度よりも遅くなるように前記しわ伸ばしローラーの回転を制御することを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、制御部は、間欠搬送の停止動作時のしわ伸ばしローラーの回転速度が搬送動作時のしわ伸ばしローラーの回転速度よりも遅くなるようにしわ伸ばしローラーの回転を制御する。このような制御をすることで、しわ伸ばしローラーと媒体との摩擦を低減することができ、媒体に損傷を与える虞を特に効果的に抑制することができる。
【0013】
本発明の第4の態様の記録装置は、前記第1の態様に従属する態様において、制御部と、前記媒体のしわの状態を検出する検出部と、を備え、前記制御部は、前記検出部の検出結果に応じて、前記しわ伸ばしローラーの回転を制御することを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、制御部は検出部の検出結果に応じてしわ伸ばしローラーの回転を制御する。制御部がこのような制御をすることで、しわの状態に合わせて、例えば大きなしわが発生している場合などにおいてはしわ伸ばしローラーの回転を速くして効果的にしわを抑制することができるとともに、しわがないか小さなしわしかない場合などにおいてはしわ伸ばしローラーの回転を遅くしてしわ伸ばしローラーと媒体Mとの摩擦を効果的に低減することができ、媒体Mに損傷を与える虞を特に効果的に抑制することができる。
【0015】
本発明の第5の態様の記録装置は、前記第1から第4のいずれか1つの態様に従属する態様において、前記しわ伸ばしローラーの表面には、前記媒体に対して引っ掛かる引っ掛かり部が螺旋状に設けられていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、しわ伸ばしローラーの表面には媒体に対して引っ掛かる引っ掛かり部が螺旋状に設けられている。このような構成のしわ伸ばしローラーを使用することで、しわを効果的に伸ばすことができる。
【0017】
本発明の第6の態様の記録装置は、前記第1から第4のいずれか1つの態様に従属する態様において、前記媒体に対してテンションを付与するブレーキローラーを備え、前記しわ伸ばしローラーは、前記ブレーキローラーを回転させることで回転するように前記ブレーキローラーに対して連結されていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、しわ伸ばしローラーはブレーキローラーを回転させることで回転するように前記ブレーキローラーに対して連結されている。このため、しわ伸ばしローラーを回転させるための駆動源を別途用意する必要性をなくすことができ、装置構成を簡単化できるとともに装置を小型化することが可能になる。
【0019】
本発明の第7の態様の記録装置は、前記第1から第4のいずれか1つの態様に従属する態様において、前記しわ伸ばしローラーは、前記搬送方向と交差する幅方向に複数並んで配置されることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、しわ伸ばしローラーは幅方向に複数並んで配置される。媒体のしわは媒体の幅方向の端部に発生しやすいが、例えば、媒体の幅方向の端部に対応する領域のみにしわ伸ばしローラーを設けることで、しわ伸ばしローラーを媒体幅全体にカバーするように幅方向に延設させる必要性をなくすことができ、しわ伸ばしローラーを小型化でき、ひいては、装置を小型化することが可能になる。
【0021】
本発明の第8の態様の記録装置は、前記第7の態様に従属する態様において、前記しわ伸ばしローラーのうちの少なくとも1つは、前記幅方向における位置を変更可能に構成されていることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、しわ伸ばしローラーのうちの少なくとも1つは、幅方向における位置を変更可能に構成されている。このような構成とすることで、媒体幅の異なる媒体を使用した場合でも、媒体幅に応じてしわ伸ばしローラーの幅方向における位置を変更することができ、媒体幅に応じて好適に媒体のしわを伸ばすことができる。
【0023】
[実施例1]
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。
最初に、本発明の記録装置1として、実施例1の記録装置1Aの概要について図1及び図2を参照して説明する。図1で表されるように、本実施例の記録装置1Aは、媒体Mを搬送方向Aに搬送可能な搬送部20を備えている。
【0024】
搬送部20は、ロール状の媒体Mをセットして回転方向C1に回転することで媒体Mを繰り出すことが可能な繰り出し部2を備えている。また、搬送部20は、繰り出し部2から繰り出された媒体Mを搬送方向Aに搬送可能な搬送ベルト5を備えている。搬送部20は、搬送方向Aの上流側に位置する従動ローラー3と、搬送方向Aの下流側に位置する駆動ローラー4と、該従動ローラー3及び該駆動ローラー4に架け渡された無端ベルトである搬送ベルト5と、を備えている。
【0025】
ここで、搬送ベルト5は外側表面である媒体Mの支持面に粘着剤が塗られた外周面5aを有する粘着性ベルトである。図1で表されるように、外周面5aに媒体Mが貼り付けられた状態で、媒体Mは搬送ベルト5に支持されて搬送される。本実施例の記録装置1においては、搬送ベルト5における媒体Mの支持領域は、従動ローラー3と駆動ローラー4とで架橋された上側の領域である。また、駆動ローラー4はモーター15の駆動力により回転するローラーであり、従動ローラー3は駆動ローラー4を回転させることに伴う搬送ベルト5の回転に従動することで回転するローラーである。
【0026】
また、本実施例の記録装置1Aは、搬送方向Aにおける繰り出し部2と搬送ベルト5との間に、媒体Mが搬送されることに伴い従動回転する従動ローラー8及び従動ローラー18を備えている。そして、従動ローラー8と従動ローラー18との間に、ブレーキローラー7を備えている。ブレーキローラー7は、駆動ローラー4と同様にモーター15の駆動力により回転するが、搬送ベルト5に支持されて搬送される媒体Mの搬送速度よりも、ブレーキローラー7が回転方向C1に回転することでブレーキローラー7により媒体Mが搬送される搬送速度のほうが遅くなるように回転する。ブレーキローラー7がこのように回転することで、媒体Mは、ブレーキローラー7から搬送ベルト5までの間で搬送方向Aにテンションがかかり、搬送方向Aにテンションがかかった状態で搬送ベルト5に支持される。このように、ブレーキローラー7は媒体Mに対してテンションを付与することが可能な回転ローラーである。なお、ブレーキローラー7の構成はこれに限定されず、例えば、駆動ローラー4を駆動するモーター15とは別体で設けられるモーターの回転力によって回転する構成であってもよい。
【0027】
また、図1及び図2で表されるように、本実施例の記録装置1Aは、搬送ベルト5と対向する領域に、搬送ベルト5に媒体Mを押し付ける加圧ローラー6を備えている。そして、本実施例の記録装置1Aは、搬送方向Aにおけるブレーキローラー7と加圧ローラー6との間に、媒体Mのしわを伸ばすしわ伸ばしローラー30を備えている。なお、しわ伸ばしローラー30の詳細については後述する。
【0028】
また、本実施例の記録装置1Aは、搬送ベルト5の幅方向Bに往復移動可能なキャリッジ100と、キャリッジ100に取り付けられたヘッド101と、を備えている。ヘッド101は、搬送方向Aに搬送される媒体Mに画像を記録可能な記録部、別の表現をすると、媒体Mにインクを吐出するインク吐出部、として機能する。さらに、ヘッド101は、媒体Mにインクを吐出することに先立って前処理液を吐出可能な構成となっている。ヘッド101は、搬送ベルト5における媒体Mの支持領域と対向する位置に設けられ、インク及び前処理液を吐出可能である。
【0029】
ここで、ヘッド101は、図2で表されるように、ノズル列R1、ノズル列R2、ノズル列R3、ノズル列R4、ノズル列R5、ノズル列R6、ノズル列R7、ノズル列R8及びノズル列R9を備えている。ノズル列R1及びノズル列R9は前処理液を吐出可能なノズル列であり、ノズル列R2及びノズル列R8はシアンインクを吐出可能なノズル列であり、ノズル列R3及びノズル列R7はマゼンタインクを吐出可能なノズル列であり、ノズル列R4及びノズル列R6はイエローインクを吐出可能なノズル列であり、ノズル列R5はブラックインクを吐出可能なノズル列である。
【0030】
そして、本実施例の記録装置1Aは、搬送方向Aと交差する幅方向Bにキャリッジ100を往復移動させながら、搬送される媒体Mにヘッド101から前処理液を吐出すること、並びに、搬送される媒体Mにヘッド101からインクを吐出して画像を形成すること、が可能である。このような構成のキャリッジ100を備えていることにより、本実施例の記録装置1Aは、所定の搬送量で媒体Mを搬送方向Aに搬送させることと、媒体Mを停止した状態でキャリッジ100を幅方向Bに移動させながら前処理液及びインクを吐出させることと、を繰り返すことで、媒体Mに所望の画像を形成可能である。
【0031】
なお、ノズル列R1からノズル列R9は図2で表される配置で並べられているが、キャリッジ100を幅方向Bのうちの往方向B1に移動させる際は、ノズル列R1から前処理液を吐出し、ノズル列R2からシアンインクを吐出し、ノズル列R3からマゼンタインクを吐出し、ノズル列R4からイエローインクを吐出し、ノズル列R5からブラックインクを吐出する。一方、キャリッジ100を幅方向Bのうちの復方向B2に移動させる際は、ノズル列R9から前処理液を吐出し、ノズル列R8からシアンインクを吐出し、ノズル列R7からマゼンタインクを吐出し、ノズル列R6からイエローインクを吐出し、ノズル列R5からブラックインクを吐出する。すなわち、キャリッジ100を往方向B1に移動させる際及び復方向B2に移動させる際の両方において、前処理液はインクよりも先だって吐出されることとなり、各々のインクの吐出順序も同じとなる。
【0032】
ヘッド101からインクを吐出することで画像が形成された媒体Mは、本実施例の記録装置1Aから排出されると、本実施例の記録装置1Aよりも後段に設けられた、媒体Mに吐出されたインクの成分を揮発させる乾燥装置や画像が形成された媒体Mを巻き取る巻取装置などに送られる。
【0033】
ここで、媒体Mとしては、被捺染材を好ましく用いることができる。被捺染材とは、捺染の対象となる布地や、衣服や、その他の服飾製品等のことを言う。布地には、綿、絹、羊毛等の天然繊維やナイロン等の化学繊維あるいはこれらを混ぜた複合繊維の織物、編物、不織布等が含まれる。また、衣服や、その他の服飾製品には、縫製後のTシャツ、ハンカチ、スカーフ、タオル、手提げ袋、布製のバッグ、カーテン、シーツ、ベッドカバー等のファニチャー類等の他、縫製前の状態のパーツとして存在する裁断前後の布地等も含まれる。ただし、上記被捺染材の他、普通紙、上質紙、及び光沢紙などのインクジェット印刷用専用紙等も用いることができる。
【0034】
媒体Mとして被捺染材を用いた場合、被捺染材は媒体Mに吐出されたインクが裏側の面まで滲む現象であるインクの裏抜けをし易いので、搬送ベルト5がインクで汚れる場合がある。そこで、本実施例の記録装置1Aには、裏抜けして搬送ベルト5に付着したインクを清掃するための清掃部9を備えている。本実施例の清掃部9は、清掃液が貯留される貯留部14と、清掃液が浸されて搬送ベルト5と接触する清掃ローラー10と、搬送ベルト5に付着した清掃液をワイプするブレード部11と、を備えている。
【0035】
本実施例の記録装置1Aは、駆動ローラー4を回転方向C1に回転させることで媒体Mを搬送方向Aに搬送可能である。また、本実施例の記録装置1Aは、駆動ローラー4を回転方向C1とは逆方向である回転方向C2に回転させることで媒体Mを搬送方向Aとは逆の方向に搬送させることも可能である。また、図1で表されるように、本実施例の記録装置1Aは制御部40を備えており、制御部40は本実施例の記録装置1Aの各構成部材の全体の制御を行う。
【0036】
上記のように、本実施例の記録装置1Aは、搬送ベルト5を有する媒体Mの搬送部20と、媒体Mにインクを吐出するインク吐出部としてのヘッド101と、を備えている。ここで、ヘッド101は、媒体Mにインクを吐出することに先立って媒体Mに前処理液を塗布する前処理液塗布部の役割を兼ねている。そして、図1及び図2で表されるように、本実施例の記録装置1Aは、搬送方向Aにおいてヘッド101の上流に配置され、搬送ベルト5に媒体Mを押し付ける加圧ローラー6と、搬送方向Aにおいて加圧ローラー6の上流に配置され、媒体Mのしわを伸ばすしわ伸ばしローラー30と、を備えている。
【0037】
このように、本実施例の記録装置1Aは、搬送方向Aにおいてヘッド101の上流に、媒体Mのしわを伸ばすしわ伸ばしローラー30を備えるため、前処理をしてから記録する媒体Mにおいて例えしわが発生したとしても、しわ伸ばしローラー30で前処理液の塗布や記録の前にしわを伸ばすことができる。したがって、本実施例の記録装置1Aは、しわが発生した状態で前処理液の塗布や記録が行われることを抑制することができる構成になっている。
【0038】
次に、本実施例の記録装置1Aの要部であるしわ伸ばしローラー30について詳細に説明する。上記のように、本実施例の記録装置1Aは、制御部40を備えている。ここで、制御部40は、駆動ローラー4の回転速度などに基づいて搬送部20による媒体Mの搬送速度を把握でき、媒体Mの搬送速度に基づいてしわ伸ばしローラー30の回転を制御することができる。例えば、媒体Mの搬送速度が速い場合にはしわ伸ばしローラー30の回転も速くし、媒体Mの搬送速度が遅い場合にはしわ伸ばしローラー30の回転も遅くすることができる。媒体Mの搬送速度に拘らずしわ伸ばしローラー30を速い回転速度で回転させ続けるなどすると媒体Mに損傷を与える虞を生じるが、本実施例の記録装置1Aは、このような制御をすることで、媒体Mに損傷を与える虞を抑制することができる。なお、本実施例の記録装置1Aにおけるしわ伸ばしローラー30の回転方向は、回転方向C2である。
【0039】
本実施例の記録装置1Aにおいては、搬送部20は、媒体Mを搬送する搬送動作と媒体Mの搬送を停止する停止動作とを繰り返すことで媒体Mを間欠搬送することが可能に構成されているが、このような間欠搬送をする場合、制御部40は、間欠搬送の停止動作時のしわ伸ばしローラー30の回転速度が搬送動作時のしわ伸ばしローラー30の回転速度よりも遅くなるようにしわ伸ばしローラー30の回転を制御することができる。制御部40がこのような制御をすることで、しわ伸ばしローラー30と媒体Mとの摩擦を低減することができ、媒体Mに損傷を与える虞を特に効果的に抑制することができる。なお、間欠搬送の停止動作時のしわ伸ばしローラー30の回転速度を遅くすることにはしわ伸ばしローラー30の回転を停止させることも含まれ、本実施例においては間欠搬送の停止動作時においてはしわ伸ばしローラー30の回転を停止する。
【0040】
また、本実施例の記録装置1Aは、搬送ベルト5を動かす駆動源であるモーター15を備えているが、上記のように、ブレーキローラー7は、モーター15の回転力により回転する回転ローラーである。そして、図1で表されるように、しわ伸ばしローラー30は回転軸31を有し、回転軸31はブレーキローラー7の回転軸71と無端ベルト12で接続されている。別の表現をすると、しわ伸ばしローラー30は、ブレーキローラー7を回転させることで回転するようにブレーキローラー7に対して連結されている。このため、本実施例の記録装置1Aは、しわ伸ばしローラー30を回転させるための駆動源をモーター15とは別に新たに用意する必要性をなくすことができており、装置構成を簡単化できているとともに装置を小型化することができている。なお、ブレーキローラー7を駆動するためのモーターをモーター15とは別体で設ける場合であっても、しわ伸ばしローラー30とブレーキローラー7とを共通の1つのモーターで回転させることができるため、しわ伸ばしローラー30を回転させるための駆動源を新たに用意する必要性をなくすこができており、装置構成を簡単化できているとともに装置を小型化することができている。
【0041】
また、本実施例の記録装置1Aにおいては、図2で表されるように、しわ伸ばしローラー30は、第1しわ伸ばしローラー30A及び第2しわ伸ばしローラー30Bと、搬送方向と交差する幅方向Bに2つ並んで配置されている。媒体Mのしわは媒体Mの幅方向Bの端部に発生しやすいが、本実施例の記録装置1Aのように、媒体Mの幅方向Bの端部に対応する領域のみにしわ伸ばしローラー30を設けることで、しわ伸ばしローラー30を媒体幅全体にカバーするように幅方向Bに延設させる必要性をなくすことができ、しわ伸ばしローラー30を小型化でき、ひいては、装置を小型化することが可能になる。
【0042】
また、本実施例の記録装置1Aにおいては、第1しわ伸ばしローラー30A及び第2しわ伸ばしローラー30Bの各々を回転軸31に沿って幅方向Bに沿って移動可能に構成されている。このように、複数のしわ伸ばしローラー30のうちの少なくとも1つが幅方向Bにおける位置を変更可能に構成されていることが好ましい。このような構成とすることで、媒体幅の異なる媒体Mを使用した場合でも、媒体幅に応じてしわ伸ばしローラー30の幅方向Bにおける位置を変更することができ、媒体幅に応じて好適に媒体Mのしわを伸ばすことができるためである。
【0043】
また、本実施例の記録装置1Aは、図3で表されるように、しわ伸ばしローラー30の表面32に、媒体Mと接触した際に媒体Mに対して引っ掛かる引っ掛かり部33が螺旋状に設けられている。このような構成のしわ伸ばしローラー30を使用することで、しわを効果的に伸ばすことができる。なお、図3は、しわ伸ばしローラー30のうちの第1しわ伸ばしローラー30Aを表しているが、第2しわ伸ばしローラー30Bも螺旋の方向が逆となっているだけで同様の構成をしている。また、いずれのしわ伸ばしローラー30にも、回転軸31を通す孔部34が設けられている。本実施例のしわ伸ばしローラー30は、媒体Mに対して引っ掛かり部33が引っ掛かるようにして接触し、回転方向C2に回転することで幅方向Bにおける端部に向かう力が引っ掛かり部33から媒体Mにかかることでしわが延ばされる構成となっている。
【0044】
特に、本実施例の記録装置1Aのしわ伸ばしローラー30においては、図4で表されるように、媒体Mと接触した際に媒体Mに対して好適に引っ掛かるように、引っ掛かり部33は、表面32に対して庇状に突出するオーバーハング部331を有している。このような構成のしわ伸ばしローラー30を使用することで、しわを特に効果的に伸ばすことができる。
【0045】
[実施例2]
次に、実施例2の記録装置1Bについて、図5を用いて説明する。なお、図5は実施例1の記録装置1Aにおける図1に対応する図である。図5において上記実施例1と共通する構成部材は同じ符号で示しており、詳細な説明は省略する。ここで、本実施例の記録装置1Bは、下記で説明する部分の構成以外は実施例1の記録装置1Aと同様の構成をしている。このため、下記で説明する部分以外に関しては、本実施例の記録装置1Bは、実施例1の記録装置1Aと同様の特徴を有している。
【0046】
上記のように、実施例1の記録装置1Aにおいては、ヘッド101が前処理液塗布部を兼ねる構成であった。一方、本実施例の記録装置1Bは、図5で表されるように、加圧ローラー6とインク吐出部としてのヘッド101との間に、媒体Mにヘッド101からインクを吐出することに先立って媒体Mに前処理液をシャワー状に塗布する前処理液塗布部50が設けられている。このため、本実施例の記録装置1Bにおいては、ヘッド101は、前処理液を吐出するノズル列R1及びノズル列R9が設けられていない。このように、前処理液塗布部をインク吐出部と別に設けることで、前処理液がインク吐出部のインクを吐出するノズル列などに付着することを抑制することができる。
【0047】
また、本実施例の記録装置1Aは、図5で表されるように、しわ伸ばしローラー30は、ブレーキローラー7に対して連結されておらず、モーター15とは別のモーター13を駆動源として回転可能な構成となっている。また、本実施例の記録装置1Aは、図5で表されるように、媒体Mのしわの状態を検出する検出部51を備えている。なお、検出部51は、媒体Mの幅方向Bの端部のしわの状態を検出可能な位置に設けられている。そして、制御部40は、検出部51の検出結果に応じて、モーター13の駆動を制御してしわ伸ばしローラー30の回転を制御することができる。制御部40がこのような制御をすることで、しわの状態に合わせて、例えば大きなしわが発生している場合などにおいてはしわ伸ばしローラー30の回転を速くして効果的にしわを抑制することができるとともに、しわがないか小さなしわしかない場合などにおいてはしわ伸ばしローラー30の回転を遅くしてしわ伸ばしローラー30と媒体Mとの摩擦を効果的に低減することができ、媒体Mに損傷を与える虞を特に効果的に抑制することができる。
【0048】
[実施例3]
次に、実施例3の記録装置1Cについて、図6を用いて説明する。なお、図6は実施例1の記録装置1Aにおける図1に対応する図である。図6において上記実施例1及び実施例2と共通する構成部材は同じ符号で示しており、詳細な説明は省略する。ここで、本実施例の記録装置1Cは、下記で説明する部分の構成以外は実施例1及び実施例2の記録装置1と同様の構成をしている。このため、下記で説明する部分以外に関しては、本実施例の記録装置1Cは、実施例1及び実施例2の記録装置1と同様の特徴を有している。
【0049】
上記のように、実施例1の記録装置1Aにおいては、ヘッド101が前処理液塗布部を兼ねる構成であった。また、実施例2の記録装置1Bは、シャワー状に塗布する前処理液塗布部50を有する構成であった。一方、本実施例の記録装置1Cは、図6で表されるように、加圧ローラー6とインク吐出部としてのヘッド101との間に、前処理液収容部53に接続され媒体Mにヘッド101からインクを吐出することに先立って媒体Mに前処理液を塗布する、ローラー状の前処理液塗布部52が設けられている。このため、本実施例の記録装置1Cにおいても、実施例2の記録装置1Bと同様、ヘッド101は、前処理液を吐出するノズル列R1及びノズル列R9が設けられていない。このように、前処理液塗布部の構成には特に限定は無い。なお、前処理液塗布部をローラー状とすることで前処理液塗布部に加圧ローラーの役割を担わせることもできる。
【0050】
なお、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0051】
1…記録装置、1A…記録装置、1B…記録装置、1C…記録装置、2…繰り出し部、3…従動ローラー、4…駆動ローラー、5…搬送ベルト、5a…外周面、6…加圧ローラー、7…ブレーキローラー、8…従動ローラー、9…清掃部、10…清掃ローラー、11…ブレード部、12…無端ベルト、13…モーター、14…貯留部、15…モーター(駆動源)、18…従動ローラー、20…搬送部、30…しわ伸ばしローラー、30A…第1しわ伸ばしローラー、30B…第2しわ伸ばしローラー、31…回転軸、32…表面、33…引っ掛かり部、34…孔部、40…制御部、50…前処理液塗布部、51…検出部、52…前処理液塗布部、53…前処理液収容部、71…回転軸、100…キャリッジ、101…ヘッド(インク吐出部、前処理液塗布部)、331…オーバーハング部、M…媒体、R1…ノズル列、R2…ノズル列、R3…ノズル列、R4…ノズル列、R5…ノズル列、R6…ノズル列、R7…ノズル列、R8…ノズル列、R9…ノズル列
図1
図2
図3
図4
図5
図6